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2010年6月28日 (月)

三重県伊賀地方続報 いまだ実行の目処が立たない病院統合・再編計画

今大会の若いドイツには勢いがあるとは思っていましたが、あそこまでやるとは正直思っていませんでしたね。

それはそれとして、三重といえばかの有名な聖地・尾鷲を要するなど、かねて医療の方面では注目されてきた土地柄ではありますけれども、もともと人口あたり医師数も少ない上に県土も広く人口が分散していると、なかなかに厳しい医療環境に置かれていることも知られています。
その三重県の中でも最近救急医療が崩壊するかどうかと言われているのが伊賀地域ですが、常勤医が減り続ける中で上野総合市民、名張市立の公立二病院統合と再編の計画がどうもなかなか進む気配がないなど、何やら状況改善の見込みすら立っていないらしいということは以前に紹介したとおりですよね。
この伊賀地域の医療問題ですが、この新年度から更に深刻化してきているらしいと話題になったのが先日出ましたこちらのニュースですが、一応申し添えておきますと今や日本で安心して救急医療を受けられる地域などどこにあるの?という話で、そこに安心を求めるのは何か違うのではないかなという気はするところです。

瀬戸際の救急医療:/上 伊賀地域、医師不足深刻 /三重(2010年5月25日毎日新聞)

 ◇公立病院機能分担、具体的な姿見えず

 「助かった命ではなかったのか。安心して救急医療を受けられないのは深刻な問題だ」--。今年3月、伊賀市の自宅で倒れて救急搬送された女性(当時78歳)が、県内外の7病院に「処置多忙」などで受け入れを拒否された問題。女性は約2時間後に運ばれた津市内の病院で、翌日に亡くなった。近所に住む第一通報者の男性(66)は当時の状況を振り返り、こう話した。

 男性などによると、倒れた女性は当日朝から体調を崩していた。夕方、心配した別の住民が郵便受けから家をのぞき込み、女性が玄関先で倒れているのを発見。通報した男性は消防団長の経験もあり、救急車と救助工作車を呼び、女性が救出されたのを見届けて現場を離れた。

 ところが、救急車は受け入れ先が見つからず、その後も現場を1時間以上離れられなかった。後で聞いた男性は「伊賀の救急事情の大変さは分かっていたが……。早く搬送先が見つかってほしいと願うしかなかった」と振り返る。

 ×  ×  ×

 大型連休前半の5月1日。伊賀市立上野総合市民病院が、同月の輪番制シフトで唯一24時間連続の救急受け入れを担当する日となっている。過酷な勤務実態を知ろうと、内科外科計2人の医師が対応にあたる救急外来の待合室で一日の流れを見学させてもらった。

伊賀市、名張市双方からの救急車が朝から何度も到着し、夜10時ごろにも待合室には治療を待つ患者の家族ら10人ほどが詰め掛けていた。待合室から人気が消えたのは、翌日の明け方ごろ。ところが、朝には患者の家族1人が怒り出す一幕もあり、自宅で待機中だった同病院の事務長が駆け付けて対応した。24時間で診察したのは26人だが、実際に入院したのは3人だけだった。

 川口寛・上野総合市民病院院長職務代理者は「7月以降には内科医が異動で村山卓前院長1人だけになる可能性もあり、そうなれば内科系の入院患者は受け入れられない。機能分担の議論も進んでいるが、医師不足のままでうまく機能するだろうか」と疑問視する。

 ×  ×  ×

 伊賀地域の救急医療体制の深刻化に歯止めがかからない。特に上野総合市民病院の勤務医減少が顕著で、04年度に最大26人いた常勤医は、今年4月現在で15人にまで急減。同30人でほとんど変動のない岡波総合病院(同市)、同24人でピーク時から4人減にとどまる名張市立病院と比べ突出している。

 さらに、上野総合市民病院で2次救急に対応できる内科系の医師3人全員が、7月には派遣元の三重大に戻るなどしてゼロになる可能性がある。伊賀、名張両市長は3月、両市の公立病院による7月以降の機能分担実施を視野に入れた確認書に調印したが、具体的な救急医療の姿はいまだに見えてこない。7月の “ヤマ場”を乗り越えても、伊賀地域での拠点病院建設という難題がひかえている。
(略)

中小自治体病院と言えば常勤医が減ってどこも自前の当直体制維持すらアップアップしているわけで、現実問題として輪番制維持が非常に厳しいことになっているということは判ると思いますが、一度こういうことになりますとますます激務から医者は逃げていく、そしてやがては病院自体が崩壊するという負のスパイラルに陥りがちであることはすでに各地で経験されている通りです。
輪番制というものも地域によってきちんと機能しているところもあれば、全く有名無実化しているところもありますけれども、一つにはそれぞれの担当病院がしっかりと輪番病院として機能できる実力があるかどうかが問題で、「いやもううちは満床で」だとか「その患者はうちでは無理ですから」なんて断りまくるような病院ばかりですと輪番の意味が無いということになってきます。
要するにある程度病院としての体力がなければ厳しいシステムであるわけですが、内科常勤医が一人(それも前院長というくらいですから、当直の役には立ちそうにないですよね)なんて半端な病院が輪番を名乗ったところで、実際には輪番以外の病院に患者が流れてしまうという有名無実の状況になってしまうわけですね。

記事から受診状況を見ますとどうやらコンビニ化しているらしいという想像も出来るところですが、こうした地域の公立病院というものは往々にして「おら達の税金で建てたもんだ。目一杯使い倒して何が悪い!」という住民感情に晒されがちであり、他方では「市民様にはくれぐれも不快感など与えないように」と(医者や看護師に)平身低頭する(ように言う)公務員事務などが根を張っていたりと、なかなか愉快な?施設も多いものです。
「おらが町にも隣町と同じような立派な病院がないと困る」なんてあちこちで自治体病院が乱立した時代の負の遺産とも言えますが、今の時代の医療がこうした小規模分散型の施設ばかりで対応できるのかということもあるでしょうし、効率性からもこうした地域の中小病院は今後統合を進めていくべきであるというのが国策でもあるというわけですから、統合話なり再編と機能分担なりを進めるなら早くしろという話ですよね。
ところが両病院で機能分担をして云々の議論が停滞している状況で市長がこんなことを言っているというのですから、これは現場の人間からすれば「おいふざけんなよ。いつまで現場にばかり犠牲を強いるつもりだ」という話にもなりかねません。

伊賀地域の2次救急輪番 7月以降も3病院で継続へ 伊賀・名張市が協議(2010年6月3日伊賀タウン情報ユー)

 伊賀市の内保博仁市長は6月3日、市議会6月定例会の所信表明演説で、伊賀地域の2次救急体制が7月以降も名張市立と民間の岡波総合との3病院による輪番制で継続させる方向で名張市と協議していることを明らかにした。内保市長と亀井利克名張市長は今月10日前後にも共同会見を開く予定。

 両市長は今年3月に、病院の経営統合と機能分担、拠点病院の整備などをまとめた確認書に調印。4月から上野総合市民病院の内科医が減るのを受け、6月までの3か月間は同病院の当番日の一部を名張市立病院がバックアップすることで輪番制を続けてきた。

 しかし、両市では上野総合病院の内科医師がさらに減少する見込みであることから、7月にも予定していた両公立病院の機能分担について、現状では「目途が立たず不可能」と判断。3輪番制は継続させるが、内保市長は7月以降「(上野総合市民病院の)当番日は減らさざるをえない」とし、両公立病院の当番割合が大きく変わる可能性も示唆した。

 また、7月以降どれくらいの期間継続させるかについては明言を避け、「当面の間」と説明。同病院内では内科の診療体制の見直しについても検討していると話した。

 両市長は共同会見までに、公立2病院の医師らの意見も考慮した上で、7月以降の体制内容をまとめ、派遣元である三重大学医学部附属病院を訪問し支援・協力を求めたいとしている。

 内保博仁伊賀市長の発言を受け、亀井市長は「7月1日から(二次救急医療体制を)きっちりした体制でやっていこうと話し合いを進めている。途中経過の混乱があると困るので、伊賀市長と2人一緒の場で責任を持って市民に報告したい。一枚岩でやっていくことに変わりはない」と述べた。

いや、一枚板でやっていくのはいいのですが、市域を超えた機能分担などという自治体間の調整で一番行政側が仕事をしなければいけない領域では「目途が立たず不可能」の一言で切って捨てる一方、もはや物理的に当直維持が無理だと判っている現場に向かっては「当面の間」なんとか頑張ってくれでは、それは現場としてもおいおい、無理だと言ってんのに…とますます人心も離れようというものでしょうよ。
この「とりあえず現状維持でお願いします」という話でどういうことになったかと言えば、何やら輪番制というものの意義を問われかねない事態になってきているようなのですね。

公立2病院の機能分担、7月からの実施は断念 伊賀・名張両市長が共同会見(2010年6月25日伊賀タウン情報ユー)

 伊賀市と名張市は6月25日、伊賀地域の2次救急医療体制について共同記者会見を開き、7月も民間の岡波総合病院(伊賀市)との3病院による輪番制を継続させると発表した。両市が三重大学に申し入れていた内科常勤医の派遣が実現せず、7月から予定していた公立2病院での機能分担が成り立たず、断念することになったという。

 会見は伊賀市四十九町の県伊賀庁舎であり、内保博仁伊賀市長、亀井利克名張市長を始め、両公立病院や行政の関係者らが出席。発表では、伊賀市立上野総合市民病院で来月から内科医が2人に減ることが明かされ、名張市立病院との当番日の比率を変更するなどして対応すると説明した。

 7月の輪番体制表案の当番比率は、名張市立が約54%に増加、上野総合市民が約20%に減少し、岡波総合はほぼ現状維持の24%。また、8、22 日については名張と上野両病院で対応するとしているものの、2、16、30日の3日間は「調整中」となっており、内保市長は「現在、上野総合市民と岡波総合とで調整している」と話した

 両市はこの3日間について、「調整がまとまり次第、ホームページなどにも掲載する」とし、公立2病院の機能分担や経営統合などの課題も両市間で話し合いを続けていくという。

 両市では今年3月、救急医療体制を維持するため、公立2病院の機能分担や経営統合、将来的な拠点病院の整備などをまとめた「確認書」を交わし、両病院間の連携などを協議。内科医を名張市立に集約させ、上野総合市民の当番日には医師らを送る計画をまとめ、三重大学に医師の補充を要請していた。しかし、今月16日、大学側から大学の医師数も十分でないため応えられないという返答があったという。


2次救急輪番制:伊賀市と名張市、7月も継続 3日分は調整中 /三重(2010年6月26日毎日新聞)

 伊賀地域の3総合病院で運営している時間外2次救急医療の輪番制で、伊賀市と名張市は25日、7月も輪番制を継続することを決め、当番病院表を発表した。しかし、深刻な医師不足を理由に金曜日の3日分については担当病院が未定の「調整中」とされている。両市は「対応が決まり次第発表する」としているが、医師確保のめどが立たなければ、伊賀地域の時間外2次救急に空白日が生じることになる。【伝田賢史】

 両市は今年3月、7月以降に両市の2公立病院(上野総合市民病院、名張市立病院)で機能分担の実施を視野に入れた確認書に調印していた。25日の発表では、「機能分担実施に向け、三重大に名張市立病院への内科医2人増員を要望していたが『医師不足で出せない』という非常に厳しい結論に至った」と説明した。

 この日は、内保博仁伊賀市長と亀井利克名張市長、両公立病院院長らが伊賀市内でそろって会見した。「調整中」となっているのは来月2、16、30日で、伊賀市側が担当する方向で調整を急いでいるという。一方、木曜日の8日と22日は名張市立と上野総合市民の2病院が、内科系、外科系ともに各病院で受け入れる。

 亀井市長は8月以降の救急医療体制について「改めてこのような場(記者会見)を設けなくてはいけないと考えている」と述べ、調整が難航するとの見方を示した。

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 ■視点
 ◇「空白日」発生の恐れ

 懸案だった7月の2次救急医療体制がようやく発表された。3病院による輪番制を維持するものの、3日分は担当病院が決まらず「調整中」とされ、以前から不安視されていた「空白日」発生の恐れが強まってきた

 7月以降の体制について、内保博仁伊賀市長は「輪番制を継続」、亀井利克名張市長は「確認書に沿って機能分担を始める」と議会などで述べてきた。25日の会見でも、内保市長が「機能分担実施は、上野への医師補充と三重大の協力が前提」と述べた一方、名張市立病院長が「2人の医師増員があれば機能分担は実施できた」と述べるなど、両市間の“綱引き”とも取れる応酬があった

 伊賀市によると、05年4月に上野総合市民病院に26人いた医師が今年7月には11人にまで落ち込む。医師不足が「調整中」を生んだ格好で、同市が医師派遣を三重大のみに頼りきってきたツケが顕在化したように思えてならない。

 会見で亀井市長も述べたが、住民の生命や安全を守ることが地方自治体の最も重要な使命のはずだ。勤務医確保にあらゆる手を尽くしてほしい。【伝田賢史】

いやまあ、ねえ…既存の医者を逃がすまい、出来れば他所の医者も呼び込もうとどこも必死で待遇改善を図っている時代に、もっと馬車馬のごとく働け、医者など大学がおくってくれるの旧態依然な公務員感覚では、それは失礼ながら現状も当然の帰結というしかないように思いますが。
それでもこうした地方でもある程度勝ち組、負け組の格差というものはあって、どうやらそれがそれぞれの温度差に結びついているのだろうなという想像はできそうですよね。

こうした地方の自治体病院と言えばどこも財政的にもマンパワー的にも火の車で、雇用流動性が高い(つまり、職場を選べる)医師たちにアピールできるかどうかは一つには行政のバックアップ、そしてもう一つは地域の民度にかかっているわけですが、聖地を抱える三重が後者でアピールするのは難しいとなれば、必然的に前者がどうなのかということに注目が集まりそうですよね。
毎日さんは「勤務医確保にあらゆる手を尽くしてほしい」なんて「お前が言うな」的な名?セリフで締めていますけれども、日本全国どこに行っても医師不足で引く手あまたという状況下にあって、失礼ながらこんな行政のバックアップがハナから期待できない(それどころか、下手すると背中から撃たれて尾鷲コースにもなりかねない)ところに好き好んで来る医者がいますかね?
それよりも何よりも「両市間の“綱引き”」なんて生ぬるいことを言っていますけれども、要するに地域エゴというものをどうやって解消していくかという、医療の外側での話の方がずっと優先課題になるのではないでしょうか。

昔ながらの自治体病院は近年どこも苦戦していますが、「いざというとき身近に頼れる病院がなければ」と言ってみたところで、減り続ける医師数や更新されることもない旧式の機材で救急担当能力を喪失した病院ばかりでは、いざというときには何の役にも立たないということになりがちですよね。
実際にこうした施設の入院患者を見てみますと本当の救急は中核施設に送って、半慢性期の患者ばかりが入っているということがありがちですけれども、こうした患者は別に急を要するわけでもないわけですから多少病院が遠くなっても大きな問題はない一方、救急を離れて慢性期に特化すればそれだけマンパワーを浮かせて他に回す余裕もできるという道理です。
すでに再編に向けて自治体をまたいだ配置転換であっても被雇用歴は継続するなんて公務員の心をくすぐる条件まで出ているわけですから、あとは地域住民とその民意を受けた政治家の皆さん方が決断できるかどうかに掛かっているという話ですが、このままずるずると引き伸ばした挙句に更なる逃散が続いてしまうようでは、いずれ「もう再編しても急性期は無理」なんて話になりかねないでしょう。

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