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2010年6月15日 (火)

相変わらず厳しい地域医療 しかし風向きはすこしずつ変わりつつあって?

のっけから話に無関係な余談ですが、何やらオシム氏の危惧した通りになりつつあるんじゃないかと言う気配もある今日の報道各社の過熱ぶりですけれども、私見では昨夜の影のMVPか?とも思えるほどの活躍だった阿部あたりが全く注目されずに終わっているのは面白いというか、もったいないですよね。

さて、先日あったちょっと愉快なニュースがこちらなんですが、最近では各地でこういう病院応援団?というのも地味にブームになっているようですね。

八鹿病院にエール 「応援する会」が応援旗寄贈 /兵庫(2010年6月9日神戸新聞)

 公立八鹿病院(養父市)を支える活動に取り組む市民組織「公立八鹿病院を応援する会」は、医師や職員にエールを送る応援旗を同病院に寄贈した。大漁旗を模したもので、応援メッセージと協賛する会員の名前が書かれている。このほどあった会員と病院が交流する催しで宮野陽介院長に手渡された。応援旗は約1年間、病院のロビーに展示されるという。

 「応援する会」は昨年、市内の若手商工業者を中心に設立。病院と市民の交流事業を通して、医師不足などに直面する病院を支える方法を探るのが目的で、現在100人を超える会員が参加している。

 5日夜の交流会には約30人の会員が出席。宮野院長が医師不足の原因などを説明した後、手術室や画像診断施設など、普段見ることができない場所を見学した。その後の贈呈式で縦1・4メートル、横2・1メートルの応援旗がお披露目された。旗には「市民の意識改革をもって 公立八鹿病院を応援しています」というメッセージと、109人の会員名が記されている。

 応援旗作成は、会設立当初から会員の意思を伝えるために企画されていた。守本竜司会長は「自分たちの病院を支えたいという会員の思いが形にできた。賛同者を増やすだけでなく、医師や病院スタッフを力づける旗になれば」。宮野院長も「市民みなさんの応援で、医師や職員のモチベーションが上がる。影響力は大きく、本当にありがたい」と話していた。

友人が参加していた関係で学生時代に応援団というものを間近で見ていたことがありますが、あの応援旗ってのもやたらとでかくて重いものを決して地面に倒しちゃいけないらしいですね。
それはともかく、こういう話を聞くと「応援なんて一文の得にもならない」なんてネガティブなことを言う人も居ますけれども、地域医療というものは地域住民の民度に支えられているわけですから、住民間で自主的に病院を支援していこうという動きを盛り上げていくということは、逆に言えばそれに反する行動に対しては住民相互の規制が働くことが期待できるわけで、ひいてはそれが民度と呼ばれるものになっていくわけです。
もちろん応援旗なるものは応援団が必死で支えるものであって、選手自身が支えるものではないわけですから、誰が行動の主体であるかということを当事者が十分に理解した上でのことでなければ意味がないということは強調しておきたいと思いますね。

それはともかくとして、長年全国各地の地域医療を担ってきた自治医大で、先日こんな集まりがあったそうです。

地域医療で意見交換 自治医大で元気フォーラム /栃木

福田富一知事と県民が県政について意見交換する「とちぎ元気フォーラムin自治医科大学」が11日、下野市の同大地域医療情報研修センターで開催された。医学部や看護学部の学生約200人が参加。地域医療や離職看護師の復職支援などについて、意見や質問が出された。

 フリートークで福田知事は、医師不足対策について「即時解消には至っていない」とした上で「自治医大の地域枠拡大や医学生への修学資金貸与など対策は講じており、将来を見通している」と答えた。

 またへき地医療を希望する医師が増えるための環境整備を問われると、「学生自身がへき地医療に携わった際に経験する職場環境の不都合を行政に伝えてください」と述べた。

 このほか、地球環境や保育園整備、公共交通などについても意見交換した。

このところ自治医大の卒業生の地元定着率は平均7割程度だそうですが、毎年平均1.5人ずつ増えて行く人材だけで地域医療を回していけるかと言えばこれはなかなか難しく、とりわけ派遣機能の低下した各地方大学医局から引き上げを食らった地方の零細施設では、医師数純減を補充する当てが全く立たないところも少なからずあるようですね。
そんな中で開かれたこのイベントも知事自身が出てきているんですが、国ではなく地方行政がこうしたところで医療行政について声を出し、現場や住民の声に耳を傾けるという姿勢を示してきていることが最近の傾向のようで、今まで大学任せ、国頼りと何から何まで他人に依存してきた地方がようやく自分で動く意志を示し始めたのは良い傾向かと思います。
あいも変わらず大学医局への陳情というところも未だにあるようですが、独自のシステムを構築すべく努力してきているところも出てきているようで、その手駒として今後活用が期待されているのが各地の大学独自に募集をしている地域枠の存在です。

医師派遣の仕組み、本格協議スタート 広島県推進機構(2010年6月10日中国新聞)

 ▽設立検討委が発足

 医師の人材確保や派遣機能などを担う広島県地域医療推進機構(仮称)の設立検討委員会の初会合が9日、県庁で開かれた。2011年度の設立に向けて、県内の医療や自治体関係者が、過疎地域への医師派遣の仕組みづくりなどについて本格的な協議に入った。

広島大や県医師会、公的病院の幹部のほか、市町の首長たち計20人が出席し、機構の役割や地域医療が抱える課題などを確認した。来年3月までに計5回の会合を重ねるほか、小規模の作業部会で課題を整理するなどして事業の詳細や組織体制を固める。

 検討委では、派遣医師の配置・調整の在り方が大きな論点になる。県が広島大、岡山大と連携して設けた医学部の地元優先枠は、14年度に第1期生が卒業し、機構が期限付きで人事権を握る。24年度には機構が派遣可能な医師が最大143人に達する見込みで、過疎地域の医療体制に大きな影響を及ぼす。

 委員長に選出された桑原正雄県立広島病院長は「地域医療を守るために活発な議論を交わし、各機関の連携の場となる機構にしたい」と述べた。(藤村潤平)

この地域枠というものは自治医大と同じ発想で各大学が募集している定員ですけれども、折からの不景気だ、就職難だといった世間の波風の中で超売り手市場の医学部人気が高まっているという割には、当初期待されたようには定員枠が埋まらず各大学とも苦戦しているようですね。
以前にも少しばかり紹介しましたように、受験業界の方ではこの地域枠というものを狙い目ということで結構ターゲットにしていて、実際そんな偏差値であの大学に!と驚くような入学例も結構あるやなしやに聞きますけれども、逆に入学の敷居も低く学資も出してくれるという美味しい話においそれと飛びつく人間が少ないというのは、受験生の情報収集能力も侮りがたいものがあるんだろうなと思います。
そんな中でちょっとそれはどうよと思ったのがこちらのニュースなんですが、まずは記事を紹介してみましょう。

欠員の「地域枠」に2人追加 岡山大医学部 一般枠から確保(2010年6月9日山陽新聞)

 石井知事は8日、過疎地などの医師確保対策として岡山県が岡山大医学部に設けたものの、2010年度入試で3人の欠員が出ていた「地域枠」(定員7人)について、一般枠の合格者から2人を追加で確保したことを明らかにした。県議会代表質問に答えた。

 地域枠は県が卒業までの6年間、月額20万円の奨学金を支給。卒業後は9年間、県指定の医療機関で勤務すれば返済を免除する。初年度の09年度は定員5人の枠が埋まったが、10年度は応募26人に対し4人の合格にとどまっていた。

 県によると、一般枠の合格者に地域枠への「くら替え」を呼び掛けたところ、5月末までの期間中に2人から応募があり、面接を経て決定した。再募集は行わない方針。

 県は広島大医学部にも10年度から地域枠を設けており、定員2人の枠が埋まっている。

こういう募集枠には当然色々と条件がついているわけですが、例えば資金貸付と言ってもこの低金利時代にあり得ないような高金利で全くありがたみがない、なんて制度設計に問題がありそうな話も多く、昨今医学部学生と言えば銀行なども手堅い融資先として優遇してくれるとも仄聞するだけに学生としても身構えずにはいられないのは確かでしょう。
そもそもひと頃看護師の御礼奉公システムが現代の人買いだとさんざん社会的バッシングを受けたにも関わらず、それ以上に悪どく他人の人生を縛り付けるこのようなシステムがまるで地域社会の救世主であるかのように持ち上げられるというのもおかしな話で、無理に奴隷登録を押し付けるような押し貸し紛いのことを自治体が率先してやるのもどうなのよという話ですよね。
こうやって集められた人材のうち何割かは卒業する頃になってから大慌てということになるのでしょうが、何も知らない学生相手に「県が推進している制度だから安心だよ」なんて無知に付け込むようなことをして後々トラブるくらいなら、既存の医療資源をいかにうまく活用するかに知恵とお金を使った方がよほど社会的正義にもかなうだろうと思います。

名張市:来月から、開業医に補助金 救急搬送受け入れで--県内で初 /三重(2010年6月5日毎日新聞)

 名張市は7月から、市民が市内(伊賀市旧青山町地区を含む)の開業医(名賀医師会会員)に救急搬送された場合、開業医に一定の金額を補助する「開業医救急車受入支援補助金」を始める方針を固めた。今年度は300万円を3日に発表した一般会計補正予算案に計上しており、6月定例市議会で可決されれば、来月1日から運用を始める。市地域医療室によると、同様の取り組みは県内で初めて。

 伊賀地域の医師不足により、救急の輪番病院で患者を受け入れられなかったり、搬送に時間がかかることがあるため、軽症患者を市内で早く確実に診察するため。昨年度は月平均約28件の開業医への救急搬送があった。一般会計補正予算案では、月平均約45件を見込んで予算化したという。

 補助額は時間や曜日によって異なり、1件につき1万円または5000円。同会会員は53医療機関あるが、救急隊員らが対応可能な医院に要請したり、患者のかかりつけ医に搬送したりする。

 来年度以降も継続予定。同室は「伊賀地域の救急医療体制が整うまで続けなければならない」と話した。【宮地佳那子】

名張市、救急患者受け入れで補助金 開業医に1回1万円(2010年6月8日中日新聞)

 三重県名張市は7月から、救急患者を受け入れた開業医に、1回につき1万円または5000円を救急車受け入れ支援補助金として支払う全国的にも珍しい制度を始める。6月議会に提案する補正予算案に本年度分300万円を盛り込んだ。

 補助金は、2次救急病院になる名張市立病院の医師不足対策の一環。対象になる開業医は地元の名賀医師会会員の53医院。午後5時から翌日午前8時15分までと休日は1万円、それ以外は5000円を補助する。

 昨年1年間に救急搬送した2854件のうち患者を開業医に運んだのは334件あり、そのほとんどは患者が、病歴や体質などをよく知っているかかりつけ医に診てもらいたいと依頼するケースという。

 名張市では市立病院が医師不足で毎日の救急医療に対応できなくなり、2008年4月以降、隣接の同県伊賀市の市立上野総合市民病院と私立の岡波総合病院の3病院での輪番制を採用している。

 このため、名張市は開業医に救急患者を受け入れてもらえるよう医師会に要請。医師会が協力を決めた。今後は患者の希望だけでなく、救急隊員の判断で開業医へ搬送するケースも出てくるという。

最近ではこうして開業医をどうやって救急や時間外診療に参加させるかという話がひとつのトピックで、いろいろと揉めないではいられない診療報酬上の加算などもさることながら、開放病床による病院内診療への開業医の参加など、手を変え品を変えで開業医動員のための対策が講じられているのを感じます。
この話などは自治体独自にお金を出してやるということでなかなか斬新なアイデアだと思いますけれども、こうした地域の開業医と言えばそれなりに歳のいった先生方も多いだけに、年間300万の予算を期待してどれだけ夜間、休日にまでオンコールに応じるかといった辺りが注目されるところですかね。

無論方法論や金額の妥当性などについては実施後にも更に検証しながら随時改良していくとして、他人を働かせるつもりなら医師としての使命感はどこへ行った!なんて牟田口症候群に走るだけではなく、きちんと出すものを出さなければ仕方がないだろうと言う認識が、こうした田舎の小さな自治体にも浸透してきたのは良い傾向だと思います。
しかし地域の医師確保の情熱があまりに突っ走り過ぎますと、あるいはこの全国的な医師不足の時代にあって新たな地域間紛争の火種が…とも危惧せずにはいられないのがこちらのニュースですね。

志高い医師北海道に 高知 病院職員、呼びかけ(2010年6月6日読売新聞)

 医師不足に悩む北海道三笠市立三笠総合病院の職員が5日、高知市の市中央公園で、医師確保のためのPR活動を行った。人口10万人当たりの医師数が高知が都道府県別で全国4位であることから選んだ。職員は坂本龍馬にふんしてチラシを配り、「知り合いの医師や看護師の紹介を」と呼びかけた。

 三笠市は北海道のほぼ中央に位置し、人口は約1万人。唯一の総合病院だが、研修医が研修先に都市部や給料の高い民間病院を選ぶ傾向が高まった影響で年々医師が減り、現在12人に減少。約110人いる看護師も平均年齢48歳で今後3年で約20人が定年退職する。病院運営に支障を来しかねず、4月に医師・看護師確保対策委員会を発足。PR活動に乗り出した。

 この日、高知入りした職員3人が、委員会で制作した三笠市と同病院を紹介する映像を流し、チラシや市の観光パンフレット約200部を配った。磯辺正道・委員長は「龍馬のような志の高い医師に来てもらい、市の医療を変えたい。高知の人は気さくに話しかけてくれ、親しみやすい」と期待を込めた。
(略)

確かに人口比の医師数で見ますと北海道は医師数は平均程度で当然面積比で言えばかなり少ない一方、高知はかなり医師数に恵まれているとされていますけれども、そうではあっても別に医者が余っているわけでもなく例によって地域医療の人材不足は深刻ですから、これは下手をすると自治体間での医師の奪い合いなんてことにもなりかねない話ですよね。
高知の人間からすれば「そんな志の高い医者が遊んでいるならうちの町へ来てくれよ!」という話ですけれども、今後こうした引き抜き合戦はますます過激になっていくことも予想される中で、ひとつには超売り手市場とも呼ばれる医師の勤務環境改善が進む可能性があるというポジティブな面もあるわけです。
無論労働環境の改善はともかく、自治体病院ともなれば無制限に金銭的な優遇を図るなんてことは出来ないという話になってきますと、いずれどこかで引き抜き合戦阻止のための何らかの制度をなんて声も出てくる可能性がありますが、基本的に優秀な人材を集めるべく様々な努力をしてきた組織が報われるというのはこの世界では正しいこととなっていますから、逆行するような強権発動は問題ですよね。

以前から全国自治体病院協議会(全自病)などは国が率先して医師強制配置を推し進めるような制度を作り上げるべし、なんて恐ろしいことを平然と厚労相あたりにも出してきていますけれども、医者なんて黙っていても医局から毎年送られてくるもので、そんな連中を優遇するなんてトンデモナイなんて旧態依然な発想の自治体病院が、こうした動きを先導しているというのであれば大いに問題でしょう。
医者が足りない、これも国が悪いから責任を取れとわめくのは勝手ですが、ではその解決のためにどれだけの努力をしましたかと言えば「いや大学に何度もお願いに」なんて話しか出てこないような方々が、時代を逆行させて自分たちの長年の医師奴隷化を改めて正当化するようなことを言っているのであれば、これは何としても反対していかなければならない話です。
同じように医者が減っている病院でも「あそこは糞だから死んでも行くな」と言われる施設と、「いや行ってみればいいところなんだよ」と言われる施設では、働いているスタッフの士気の違いが患者にも感じ取れるはずですし、医師不足で社会が医者の言葉に耳を傾け始めたこの時代だからこそ、俗悪な施設はきちんと淘汰していかなければ後代に禍根を残し、後の世の先生方に恨まれるということになりかねないでしょうね。

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