« 今日のぐり:「こだわり麺や 丸亀田村店」 | トップページ | とある医療事故の後日談を見ての雑感 »

2010年5月31日 (月)

失礼ながら思わず失笑してしまいました

以前にちょっとした話題になったことがありますが、こういう企画を覚えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

高齢化する豪雪地帯、奥会津は除雪ボランティアを募集(2006年12月18日読売新聞)

 本格的な降雪シーズンを前に、東北や北信越などの豪雪地帯で、昨冬の「平成18年豪雪」を教訓に、新たな除雪対策に知恵を絞っている。

高齢化率が50%超の村もある福島県・奥会津地方では首都圏の若者らをターゲットに雪かきボランティアを募集。青森市は、優秀な除雪業者に契約額の5%相当の報奨金を支払う。

 このほか、除雪車に全地球測位システム(GPS)を搭載し、除雪作業の進行状況を瞬時に把握する(秋田市)など、情報技術を駆使して過酷な雪を乗り切る作戦も考案されている。

 昨シーズンの最大積雪が約170センチに達した福島県・奥会津地方の金山町と、近隣の柳津町、三島町、昭和村と県は近く、雪かきを手伝う「奥会津雪かたし交流ボランティア」の募集を始める。

 4町村の高齢化率(11月1日現在)は37・3%(柳津町)~54・1%(昭和村)。金山町は、住宅の周りの消雪装置の設置工事費を補助したり、除雪機材を地区ごとに貸し出したりしてきたが、昨シーズンはそれでも間に合わず、県がNPO法人や自衛隊に除雪を依頼した。

 雪かたし交流ボランティアの参加者は県会津振興局に登録。交通費や宿泊費などは自己負担だが、町村は、温泉や雪祭りに招待し、「感謝の気持ち」を表すことを検討している。県会津振興局は「スキーなどと組み合わせて楽しみ、住民との交流も広げて」と話す。

 気象庁が先月発表した3か月予報では、日本海側各地とも降雪量が「少ない」可能性は40%、「平年並み」が40%、「多い」が20%。昨冬も同時期の予報では今冬とほぼ同じ数字だった。

何が話題になったかといってこの福島県で募集された雪かきボランティア、募集しているNPOのホームページを見ると二泊三日のコース設定で参加費が郡山駅からの往復交通費、宿泊費、食費込みで26000円+ボランティア保険加入料が必要で、その結果何が得られるかと言えば「感謝の気持ち」を表わしていただけるんだそうです。
ネット上では「ただ働きどころか金まで取るw」だとか「雪かきさせた上に地元に金まで落としてくれるなんてウハウハ杉だろjk」だのと色々言われていましたけれども、幸いなことに?このボランティアツアーは好評らしく現在にいたるまで続いているということですから、会津の方々にとっては良いことだったということなのでしょうね。
それでもボランティアというのはあくまで自発的意思で参加する好意の現れというものですから、傍目にどんなトンデモに見えても当事者が納得しているということであれば何も問題はないわけですが、これが業務の一環として強制参加と言うことになりますと話がややこしくなってきます。

研修医の農作業「待った」=厚労省「医療に該当せず」-大分大、中止へ(2010年5月29日時事ドットコム)

 大分県九重町の町立飯田高原診療所が大分大学付属病院から受け入れた研修医に行っていた農家や旅館での研修について、厚生労働省が「内容が研修目標に当てはまらない」として、中止を指示したことが29日、分かった。これを受け、大分大は研修を取りやめるとともに、既に研修した2人には別の医療機関で再研修させる方針を決めた。
 飯田高原診療所は今年度、大分大付属病院の研修医4人を受け入れる予定だった。4月にはこのうち1人が1週間、九重町の農家で搾乳や苗代づくり、ラベンダーの植え替え作業などを体験。もう1人も5月に2週間程度、温泉旅館に泊まり込んで接客や配膳(はいぜん)、風呂掃除をしたり、自然保護施設での活動を経験したりした。
 野瀬善明所長は「医師が患者の心情を理解できないと信頼関係は生まれない。地域の人と触れ合うことで、人間性を磨く機会になる」と研修の狙いを説明する。
 これに対し、厚労省医事課は同省局長通知「臨床研修の到達目標」で規定した「地域医療」に該当しないと判断。28日に九州厚生局を通じて大学側に中止を求めた。

まあ、短期の僻地研修にやってきたど素人の研修医に田んぼや牛の世話をさせたところでさして労力の助けになるとも思えませんから、これは純粋に学習というつもりでやったことなんだろうとは思いますけれども、上記の「雪下ろしさせてやるぞツアー」と併せて、何かしら僻地というと体験学習だの住民との交流だのという発想しかないのかと、思わず突っ込みたくなる話ではあります。
「でもそれって医療行為じゃないよね?」という厚労省の冷静なツッコミがなかなかナイスだと思いますけれども、往年であれば馬車馬のように使い潰されていただろう研修医という身分でこうものんびりした生活を送ることが出来る田舎時間というものを実感する一方で、率直にいって高原診療所での暮らしはよほど仕事もなくて暇なのか?とも言いたくなりますよね。
同期の人達が日々多忙な中で研鑽に勤しんでいる中、こんな僻地で研修の実を上げることもなく無為に時間を潰すことを強いられた挙句、「それは研修として認められない」と再研修を命じられた研修医達こそ随分と悲惨な境遇だったとも言えそうですが、一方でこの所長のコメントはなかなか興味深い示唆を含んでいるようにも思えますね。

「医師が患者の心情を理解できないと信頼関係は生まれない」とは一面の真理なのかも知れませんが、要するに所長としては地域住民はこんな生活をしている、その日々生活の中で何をどう考えているのかを知るべきだと言う考え方ではあるのでしょう。
もちろんこうした知識というのはそれなりに役に立つ局面があるのは同意ですが、地域の人と触れ合い人間性を磨くなんてことは仮にも専門職たる研修医となってから行うべきことでもなくて、学生時代の通過儀礼としてでも済ませておくべき話だと思いますね(色々な職種のアルバイトなどを経験している人間ほど結構潰しが効くものです)。
所長の考え方は田舎に限らずどこの職場に行っても通用する話で、それなら街の病院の研修医達も地域のあらゆる職種を経験し患者の心情を理解することに努めなければならないという話になりますし(そうなると歓楽街の病院などは色々と、その…)、逆に地域医療研修としてわざわざ僻地に出向いてまで学ぶべきものだという根拠も乏しいという気がします。

そして素朴な疑問ですけれども、僻地研修の一環とは言えせっかくやってきた研修医が毎日こんなことをやっていると言う状況を目の当たりにして、地域住民がどう考えるだろうかということですよね(僻地公立病院勤務医ともなれば、その一挙手一同に到るまで地域住民に注目されていると考えておかなければなりませんからね)。
「なんだあの新しい医者は!ろくに仕事もせずに何やってるんだ!」なんて面と向かって言う人間もいないでしょうけれども、町立施設に研修医を受け入れるという話を聞いてOKを出した側もまさかこんなことをやりにやってくるなどとは思わなかったでしょうし、話が違うじゃないかと釈然としないものを感じた人も大いにいそうに思います(案外、そういうところからこうして指導を受けることになったのかも知れませんが)。
そして何より、都市部の多忙な基幹病院では研修医の一人と言っても遊ばせておくような余裕はないという施設が多いと思いますが、こんなところで仕事もなく囲いこんでいるくらいなら一人でもこっちに回せと、こんな事情を知るほどに恨み節の一つも言いたくなりそうなものでしょうね。

色々な意味で突っ込みどころ満載の話で、おそらく野瀬善明所長としてはそれなりにポリシーもあってやっていることなのでしょうが、正直医療現場の実情というものに関してもう少し理解と考えの及ばないところがあったのではないかなとも思うところで、妙なところで全国に名が知られてしまった九重町の住民こそ一番の迷惑だったのかも知れませんね。

|

« 今日のぐり:「こだわり麺や 丸亀田村店」 | トップページ | とある医療事故の後日談を見ての雑感 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/48504219

この記事へのトラックバック一覧です: 失礼ながら思わず失笑してしまいました:

« 今日のぐり:「こだわり麺や 丸亀田村店」 | トップページ | とある医療事故の後日談を見ての雑感 »