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2010年5月14日 (金)

行き着くところは現代の姥捨て山かと、思考停止してしまうのが一番よくありません

もっと大きな話題になってもよさそうなのに意外に軽く流されたなと感じていたこちら国民健康保険法改正のニュースですけれども、さすがに各紙とも一通りの記事にはしてきたようです。
色々な意味合いがありそうな今回の改正ですけれども、非常にキャッチーなコピーで攻めて来たのがこちら毎日新聞の記事で、まずは最初に紹介してみましょう。

健康保険法改正案:保険料「肩代わり」法、あす成立 健保組合が反発(2010年5月11日毎日新聞)

 大企業中心の健康保険組合(約1460組合)の負担を増やし、中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ、約162万事業所)の保険料アップ幅を抑える健康保険法改正案が12日の参院本会議で成立する見通しだ。財政難の折、協会けんぽ支援に要する税金(1800億円)の半分近い850億円を、事実上健保組合や公務員の共済組合に「肩代わり」させる内容で、7月にスタートする。だが、健保側も不況にあえいでおり、強く反発している。

 不況下での給与減に伴い、保険料収入は激減している。中小・零細企業の多い協会けんぽは影響が大きく、09年度は6000億円の赤字を見込む。年収の8・2%の保険料率(全国平均、労使折半)を9・9%にアップしないと財政が破綻(はたん)する見通しとなり、政府は現在13%の国庫補助率を16・4%に高め、保険料率を9・34%に抑えることにした。

 ただ、国も補助率を増やす財源を、所要額の半分、900億円しか捻出(ねんしゅつ)できなかった。そこで健保・共済組合が75歳以上の後期高齢者医療制度に拠出している支援金について、健保は500億円増、共済は350億円増とし、それで浮く税を新たに財源とすることにした。税で賄えない分を健保と共済に「つけ回し」する構図だ。

 具体的には、後期医療への支援金(10年度計3兆5500億円)の算定方法を変える。今は健保、共済とも加入者数に比例した支援金額となっているが、一部を給与に応じた金額とし、人数にかかわらず給与総額が高ければ負担が増える仕組みに改める。中小企業中心の協会けんぽの支援金(1兆6600億円)は850億円減る。

 協会けんぽの支援金も16・4%は国費だ。新制度では、給与総額に応じて支払う支援金への国庫補助がなくなるため、900億円分の国費が浮く。これを協会けんぽの保険料率抑制に充てる。

 全体では500億円の負担増となる健保組合も、給与水準の低い3分の1強は負担減となる。しかし、健康保険組合連合会(健保連)によると、10年度は新制度抜きでも約9割、1295組合が赤字という。赤字総額は過去最大の6600億円に上り、352組合は保険料アップを予定している。健保連の白川修二専務理事は「国の責任で賄うべきだ」と批判している。【鈴木直】

まあ身も蓋もないと言ってしまえばそれまでなんですが、やはり世間が一番注目するポイントとしては大企業主体の健保組合に協会けんぽの負担を肩代わりさせるという、以前から健保組合側としては断固反対と主張してきた部分に他ならないということでしょうね。
その健保組合にしても昨今では「こんなに保険料を高くしなければならないのであれば自前で持つ意味がない」と解散して政管健保に移行する動きも出ているくらいですから、あまり負担を押し付けすぎると結局は国庫で全部を丸抱えしなければならなくなるというなかなか難しい話です。
弱者の味方的立場が好きな(笑)朝日新聞などは当然という考えなのか比較的軽い記事を掲載しているだけのようですが、こういう話になりますとさて日経あたりの反応はどうなのかと気になりますよね。

改正健保法成立、健保6割強が負担増  (2010年5月12日日本経済新聞)

財政難の協会けんぽ救済

 改正健康保険関連法が12日、成立した。中小企業の会社員らが加入する協会けんぽの財政難を助けるため、7月から大企業の会社員らが加入する健康保険組合と公務員などの共済組合に負担増を求める。全国の健保組合のうち6割強が負担増になる見通し。だが健保と共済に「肩代わり」を求めることには批判も強い。高齢化社会に対応した制度の再設計を急ぐ必要がある

財政に比較的ゆとりのある健保と共済の負担を増やし、協会けんぽの財政負担を減らすことが法改正の狙いだ。協会けんぽは景気低迷に伴う保険料収入の減少などで2009年度は約6000億円の赤字見通し。

 具体的には75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度への被用者保険の支援金(3兆6000億円)の算定方法を変える。現在は健保、共済、協会けんぽが加入者数に応じて負担しており、加入者数が最大の協会けんぽ(3470万人)が1兆6600億円(47%)を負担している。

 これを支援金総額の3分の1に当たる1兆2000億円について、加入者の年収に比例して負担する仕組みに変える。協会けんぽより健保と共済の方が年収水準は高く、結果的に多くの支援金の拠出を迫られる

 10年度は改正法が施行される7月から8カ月分の適用となり、健保と共済はそれぞれ330億円、230億円の負担が増える。11年度からはそれぞれ500億円、350億円を負担する。一方で協会けんぽの負担は850億円減る。

 協会けんぽへの国庫補助率を13%から16.4%に上げる内容も改正法に盛り込まれた。国は協会けんぽへは10年度に610億円、11年度には920億円の公費(税金)を投入する。

 厚生労働省は1478組合ある健保のうち、6割強の922で負担増になると試算。年収の低い556の組合では負担は逆に減る見込み。

 協会けんぽの救済策は10年度から3年間適用する。厚労省は13年度から後期高齢者医療制度を廃止した後の新しい高齢者医療制度に移行する方針だ。

 大企業の健保組合の運営に与える影響は大きい。たとえばある大手家電メーカーの組合は10年度に約5億円の負担増になると試算する。日産自動車やNECなど352組合は保険料率を引き上げる見通し。事業主、加入者ともに負担増になる。

 「協会けんぽへの助成は国が負担すべきだ」などと法案成立に反対運動してきた健康保険組合連合会の平井克彦会長は12日、「成立は遺憾」とのコメントを発表した。健保連によると、10年度の健保全体の予算は6600億円の赤字になる見通し。赤字は3期連続法改正の影響で赤字幅はさらに膨らむとみられ、負担を肩代わりする余裕のないところが多い。

 改正法には会社員に扶養されていた75歳以上の保険料の軽減措置を続ける内容や、保険料の滞納世帯でも高校生以下には短期の被保険者証を交付し、医療機関の窓口で3割を負担して医療を受けられるようにする項目などが盛り込まれた。

基本的な論調としては予想通り批判的というところですけれども、一応それでも協会けんぽよりは健保組合の方が余裕があるということは認めているようで、その上で「こっちも厳しいんだから他人のツケを回すな!」と言っているわけですから、これはこれで筋が通っている話ではあるように見えます。
健保組合に余裕があるといっても実態は赤字続きで随分と厳しいものであると言うことは記事からも判りますけれども、筋論からしても運営実態からしてもこれは新たな破綻の芽をうむようなものだという指摘は、日経ならずとも根強いようですね。

大企業サラリーマンら負担増?改正健保法成立(2010年5月12日読売新聞)

 75歳以上の後期高齢者医療制度に対する支援金を、高収入の人がより多く負担するよう算定方法を改める改正国民健康保険法が、12日午前の参院本会議で与党などの賛成多数で可決され、成立した。

 来週にも施行される。

 改正法は、2010~12年度の3年間、支援金総額3・6兆円のうち3分の1に関し、定額だった負担を被保険者の年収に比例する負担に変える内容だ。同時に、中小企業のサラリーマンらが加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)への国庫補助を10~12年度、13%から16・4%に引き上げる。その結果、協会けんぽは850億円の負担減となる。一方、大企業のサラリーマンらが加入する組合健康保険は500億円、公務員らの共済組合は350億円の負担増となり、保険料増につながる可能性が出てくる。

 健康保険組合連合会によると、組合健保の10年度の赤字額は、今回の措置がなくても6600億円と過去最悪になる見通しで、同連合会では「負担を肩代わりさせられるのはおかしい」と反発している。この日の採決でも自民党が反対し、同党の中村博彦参院議員は「一時しのぎのつけ回しだ」とする反対討論を行った

一応このあたりの反対論に対する弁解のつもりなのか長妻大臣などは、独立行政法人が加入している健保組合では法人側が保険料を負担しているのはケシカラン、是正しろとツッコミを入れたりしているようですが、理屈がつけにくい話であるというのは確かでしょうね。
アメリカの自動車業界などでは給料は増やせない代わりに医療保険を手厚くしましょうということで、長年の労使協議の結果一度業界に入ると死ぬまで手厚い医療を受けられるようなシステムが出来上がってしまったことが過度の人件費負担増大の大きな要因になったとは指摘されるところで、先のGMの破綻なども結局このあたりのこじれを一度リセットするために行われたことだとも言います。
日本でもそのあたりを間近で見ていたトヨタなど自動車業界では、こういうところで同じ轍を踏まないよう警戒感が根強いとも聞きますが、そうなりますと今回の改正の一つの主要要因ともなった後期高齢者医療制度の行方がどうなるのかということにも議論が及ばずにはいわれませんよね。

民主党では衆院選のマニフェストにおいて後期高齢者医療制度はさっさと止めますと言っていた、一方でいざ政権についてみるともう少し続けますなんてことを言い出した、金銭的負担の割り当てなどの面はともかく海外からも日本はうまい制度を考えたと評価されるこのシステムも、よくよく見れば実は結構悪くないんじゃないかと改めて気がついたということなのかも知れません。
そうは言っても一応は政権公約という扱いであればいつまでも華麗にスルーを決め込むわけにもいかないのでしょうが、ようやくそのあたりについても話が実務的な方向へ進み始めているようで、ちょうど先日こういう記事が出ていました。

後期医療の後継に4案、国民意識調査も実施へ 厚労省(2010年4月14日朝日新聞)

 75歳以上が対象の後期高齢者医療制度(後期医療)を廃止した後の新たな制度について、厚生労働省は14日、四つの案をまとめた。新制度を検討している有識者の意見を踏まえたもので、夏までに骨格を決める。5月には、高齢者医療制度に対する国民意識調査を実施する方針も打ち出した。

 4案は、この日の高齢者医療制度改革会議で示された。後期医療は、75歳という年齢で分けることが批判を浴びた。今回の4案は、大企業の会社員らが入る健康保険組合(健保組合)などの被用者保険の加入者が高齢者になった場合の仕組みが異なる

 「都道府県一本化」案は、被用者保険の加入者は現役で働いている場合は被用者保険に残る。被用者保険、自営業者らが入る国民健康保険(国保)は、それぞれ都道府県単位で運営する。ただ、加入者の年齢構成や所得によって財政の格差が出るため、被用者保険と国保の間で財政調整をする。

 「突き抜け方式」案は、被用者保険の加入者が退職した場合、新設する退職者健康保険制度に入る。この新制度は、被用者保険が共同で運営する。この方式は、労働組合でつくる連合が提案した。

 一方、65歳になった段階で、新たな制度に加入するのが「65歳以上別建て」案。この案は、健保組合でつくる健康保険組合連合会が示した

 「国保に一体化」案は、65歳の高齢者が国保に入る。65歳以上は別会計で保険料などを軽減。国保の運営は都道府県単位にする。

 国民意識調査は、65歳未満の成人4千人と65歳以上の4千人、さらに有識者らを対象に5月に郵送で実施する。新制度の骨格を取りまとめた後の9月には、成人3千人を対象に面接方式で調査する。

まあ健保組合とすれば退職された方々まで面倒見切れませんというのも正直なところなんでしょうが、国とすれば企業に金を出させて国庫支出を増やしたくないというのも本音でしょうし、そうなりますと企業側は組合自体を解散させるかどうかという話にもなりと、まだまだ紆余曲折は残りそうですよね。
ただしこうした制度改革の議論があくまで原資をどうするのかというレベルにとどまっているのは問題で、せっかくこの制度を契機に高齢者は単なる年齢を重ねた若年者ではないという認識にまで至ったのですから、実際に議論すべきは単にお金の問題のみならずその行うべき医療給付の内容にまでも踏み込むべきなんじゃないかと思います。
この後期高齢者医療制度の場合、とにかく拙速と言うほどに政府主導で話が進められたということが今に至る感情的反発の根本原因になっていると思いますが、それでは改めて冷静に考え直した場合に高齢者医療にとっていったいどんな制度がいいんですかという問い掛けは絶対に必要なはずなんですよね。

櫻井よしこ氏なども強力な後期高齢者医療制度擁護の論陣を張られていますが、子どもが小さな大人ではないというのと同じくらいに高齢者もまた別の存在であって、その求められる医療の実像が若年層とは全く異なる以上、単に窓口支払額の多寡や保険料負担の方法論などで話を終わってしまっていても仕方がないわけです。
若年者においては是非とも行うべきものであっても高齢者においてはさほど必要とされない医療もあれば、その逆に高齢者に特有と言ってもいいような必須の医療もあるわけですから、これらを一括りに同じ保険点数と同じ査定の基準で論じるということ自体、本来ひどく乱暴な議論であるはずなのです。
いずれにしても最初は金銭的な面での区別から始まったことが明らかな後期高齢者医療制度ですけれども、この制度に関して深く考えるほどに高齢者医療そのものに関しても色々と議論の余地があると思うし、そこをこの機会に皆で考えていかないのは非常にもったいない話なんじゃないかなという気はします。

このあたりはまさに医療の現場を知る業界団体こそが、年代別に求められている医療給付のあり方とはどうあるべきなのかと声を出していくべきところだと思いますが、高齢者切り捨てだ、混合診療導入だとこれまで反対の論陣を張ってきたあたりと非常に交錯してくる話題だけに、問題意識を持っていても迂闊に声を出すに出せないという事情もあるのかも知れませんね。
しかしこういう患者個々の状態に応じた医療給付なんてことは、本来テーラーメイド医療をなんてことを主張している患者団体あたりがもっと主張してもよさそうな話なんですけれども、あまりそういう話をしている人も見たことないのは何故なんですかねえ?
何にしろこの話題、まだまだ当分先まで尾を引きそうではありますので、また機会をみて取り上げてみたいと思います。

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