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2010年5月 6日 (木)

成長のけん引産業と期待される時代に、未だ十年一日な改革路線もどうかと

何やら唐突に鼻炎症状が出現して難渋しています…
それはともかく、時の政権の掛け声もあって、近頃医療=経済成長の牽引役という役割が世間的にも大きく期待されるようになってきているようです。
ひと頃日経などと言えば医療に金を使うなどケシカラン!と言わんばかりの論調が目立新聞でしたが、最近ではもっと医療を成長させるにはなんて記事が載るというのですから、隔世の感がありますよね。

(「元気な経済」考) 介護・保育・医療を規制改革で伸ばそう(2010年5月4日日本経済新聞)

 需要がどんどん増えていく介護、保育、医療で経済の成長を促すには、どんな仕組みが必要だろうか。

 介護保険が導入されて10年。当初は保険を使ってサービスを受けるのに慎重だった要介護の高齢者も、最近は利用率が8割に高まった。団塊の世代がすべて65歳以上になる5年後は、利用者がさらに増え450万人を超すと予測される。

供給を促す策を

 介護に限らず保育や医療を含め、社会保障の分野はサービスを必要とする人が急増しているのに、供給が追いつかない。規制や既得権に阻まれて、民間企業などが参入しにくい官製市場になっているからだ。

 これらの分野を本物の成長産業にするには、参入障壁を低くする規制改革が不可欠だ。株式会社、非営利組織(NPO)などサービスの担い手を広げることが経済の成長を促し、雇用の場を増やす。

 政府も介護や医療を成長分野に位置づけるが、どう伸ばすのか、はっきりしない。菅直人財務相は「増税しても使い方を間違えなければ成長に資する」と、社会保障による分配政策で需要を増やす考えを示した。

 これは正しくない。官が需要をつけようとすると、国民や企業の税負担を増やして結局、民需成長の妨げにもなる。民がサービスの供給を競い、その創意工夫を引き出すよう促す策が肝心だ。人々の将来への不安を和らげるには制度設計を急ぎ、早く改革に着手するのが王道である。

 介護で大切なのは、施設の新増設を促す規制緩和だ。有料老人ホームなどは、厚生労働省が総量を規制している。有料老人ホーム事業を手がける民間企業の経営者は「利用者が多い地域でも、経営が傾いたホームを買い取って再生させるのがせいぜいだ」と語る。これらの施設の総量規制は早急に撤廃すべきだ。

 介護サービスを担う人材も足りない。要介護者の増加を考えると、政府は介護士を年に5万人程度ずつ増やす必要があると試算する。しかし仕事の内容がきつい割に給料が低いなどの理由で、なり手が大きく増える見通しは立たない。人材を日本人に頼る考え方を改める必要がある。

 経済連携協定に基づくインドネシアとフィリピンからの人材受け入れは数百人にとどまる。日本人介護士の待遇が下がるのを恐れる業界団体に配慮して厚労省が制限しているからだ。数千人単位で受け入れなければ年5万人増の達成は不可能だ。

外国人に資格試験を課すのも過剰規制だ。2月に実施した看護師の国家試験は、外国人の合格率がたった1%余りだった。日本人は9割が合格する。日本語の壁が主因だ。

 介護士、看護師とも母国で専門教育を受けている。高齢者らと対話するための語学を磨くのは当然だが、振り落とす試験では日本で介護職に就こうという外国人は減る。

 保育分野の供給不足も介護と同じだ。社会福祉法人が経営する保育所は税の優遇や建設費補助が行き届いている。株式会社だとこうした優遇が受けられない。施設・人員などの基準を満たす保育所は母体が株式会社であっても、社会福祉法人と同じ優遇をするのが当然だ。民間企業を悪者扱いするのはやめてほしい。

 保育所に入れない子供は潜在的に100万人。安心して子供を預けられる施設の増加は、企業経営者に女性社員の活用を促す。仕事ができる女性が子育てのために職場を離れる「損失」を食い止めれば、女性の働き手が増え成長を下支えする。

混合診療認めよ

 医療分野も改革すべき規制が山積している。医療費は年3~4%の割で増えている。支出を公的な健康保険にだけ頼っては制度を持続させるのが難しい。公的保険が責任を持つ範囲を定め、自費診療とうまく組み合わせ需要に対応する工夫がいる。

 まず、保険が利かない先進的な治療法や医薬品と、保険診療とを合わせて受けられる混合診療を原則、解禁するのが不可欠だ。病院の勤務医らの負担を減らすために、看護師に一部の医療行為を認める規制緩和や、医療に関する事務作業を専門とする「医療秘書」の増員も課題だ。

 自公政権は医療機関へのレセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求を義務化しようとしていた。だが現政権は関連予算を削るなど義務化に後ろ向きだ。レセプト電子化は各種の疾病データの分析や治療法の標準化に欠かせないインフラである。

 海外から患者を受け入れるルールを定め、IT(情報技術)を活用し遠隔診断を可能にするのも課題だ。これらは規制改革に後ろ向きな日本医師会の意向を気にしがちな厚労省では、なし得まい。国家戦略に値する改革なのだから、文字どおり国家戦略室が主導すべきである。

日経の言説の是非はともかくとして、医療を取り囲む様々な規制が経営的感覚に乏しい医療業界を守ってきたと同時に、あいも変わらず意識改革を妨げてきたという側面もあるのは確かだと思います。
一昔前は公立病院と言うと赤字額を如何に大きくするかを競っているのかと感じるくらいに経営センスの乏しい運営をしてきた施設も多かったものですが、昨今では議会からも赤字を少しでも減らせと言われる、地域住民からはもっと医者を増やせ、診療科を充実させろと無茶な要求で突き上げられるということで、ようやく何がしかの経営改善ということを考え始めている気配もあります。
見ていますと民間ならとっくにやっていたレベルの話をようやく始めましたという出遅れ組やら、ちょっとそれはどうなのよと思われるような勘違い組やらとバリエーションも豊富ですが、とりあえず現状はどうやら良くないらしいぞという自覚を持ち始めた点は評価しておくべきなんだと思いますね。

経営黒字へ改革プラン/公立病院力(上)/山口(2010年04月22日朝日新聞)

◆ベッド減・備品代節約…各地で試み

  医師が不足し、診られる患者が減ったために収入が減る――。採算のとりにくい医療や過疎地での医療を担う公立病院が、こんな悪循環で岐路に立っています。昨春、国の旗振りで、経営を黒字に換えようと各病院が「改革プラン」をつくりました。ベッドを減らしたり、備品代を節約したり。各地で試行錯誤が続いています。地域の「公立病院力」を2回にわけて見ていきます。
(錦光山雅子)

◆患者減・医師不足響く

  「我々の先輩の血のにじむ頑張りで生まれた病院。我々で何とか支えられないか」

  3日、東広島市安芸津町地区の公民館。集まった約250人を前に、大木昇三さん(69)が訴えた。

  「病院」とは、公民館の隣にある県立安芸津病院(1948年設立)。大木さんは住民がつくった「支援する会」の会長を務める。この日、病院が開いた公開講座に合わせて講演会を開き、参加者に病院の現状と協力を訴えた。

  同病院は患者数の減少などから収益の減少が続く=グラフ。2009年度で約3億円赤字となる見込みだ。収益の柱となる入院患者数(延べ)は08年度までの10年間で1万人近く減った。ベッドの利用率も01年度は9割を超えたが、08年度は7割を切った

  病院は昨春、全3病棟(150床)のうち1つ(50床)を閉鎖。大木さんたちは約3万3千人分の署名を集めて反対したが、変わらなかった。「このまま小さくなって、なくなってしまうんじゃないか」。大木さんは心配する。

  患者が減る一因は、周辺の人口減と高齢化だ。安芸津町地区の人口は1万1444人(09年)。5年前から約800人減った。高齢者の比率は高まり、今は約3割。慢性疾患のお年寄りが増え、すぐ治療が必要な患者を想定した病院の機能とずれも出てきた。

  加えて医師不足。週数回の外来をみる非常勤医師は確保できても、入院患者をみるのに必要な常勤医師が足りず、入院を制限せざるを得なかった。特に響いたのは01年秋の産科の休止。翌年度の入院患者数は、約5千人減った。

  今年4月、病院は改善に乗り出した。100床のうち10床の用途を切り替え、手術や治療を終えた患者が自宅に戻れる程度に回復するまでの入院用にした。独り暮らしのお年寄りが、なかなか自宅に戻れないケースが目立つためだ。自宅で暮らす慢性疾患のお年寄りに対応するため、看護師による訪問看護も始めた。医師による公開講座の開催を周辺市町に提案し、利用増につなげようとしている。

  ベッド利用率の目標は9割。4月中旬には87%まで回復した。「潜在的なニーズはある。待っているだけでなく、必要な見直しはしたい」と杉原正夫事務長は話す。

◆新たな収入確保策も

  経営が苦しいのは、安芸津病院に限らない。総務省の「地方公営企業年鑑」によると、08年度決算では公立病院の約7割が赤字だった。

  同省は07年末、公立病院の経営改革のための「ガイドライン」を策定。経営の効率化▽周辺病院との再編・ネットワーク化▽経営形態、の3点から実態を見直し、3年以内をめどに黒字化を目指すためのプランを08年度中に作って09年度から取り組むよう促した。

  ガイドラインでは、07年度までの3年間のベッド利用率が70%に満たなかった場合は、ベッドの削減や、診療所(19床以下)への縮小が「適当」とした。ベッドを減らした病院の運営自治体には、今後5年間、削減前のベッド数に見合う額の地方交付税を配分するという「あめとムチ」策で誘導した。

  こうした動きを受け、中国地方でも、ベッドの削減や新たな収入確保策などが進んでいる=地図。

  例えば、鳥取県智頭町の国保智頭病院は08年度末、約7億円の資金不足があった。プラン策定に合わせ、深刻な不良債務を抱える病院向けの「特例債」や銀行からの借り入れで不足を埋めて再出発。職員の給料を減らしたり、医薬品の購入先を1社に絞ったりして節約した。病院のベッドを減らした分を、介護が必要なお年寄りをみる「老人保健施設」のベッドに振り向けたり、健診センターを開いて受診者を増やしたりして収入増を図った。こうした取り組みで、当初の想定を上回る早さで業績が改善している。

  ほかにも、ベッドを持たない地元の開業医に、空いている手術室やベッドを貸したり、通常よりも高額な個室ベッドを増やしたりして収入を増やそうとする病院もある

存続へ 光の2病院再編/公立病院力(下)/山口(2010年04月30日朝日新聞)

◆診療機能を分担…不利益な住民も

  地域にいくつかある公立病院を一つに統合したり、似たような診療科を持つ近隣の病院同士で機能を分担したりする動きが進んでいます。医師不足や経営の悪化に加え、高齢化によるニーズの変化に応えきれなくなっている面もでてきたからです。ただ、こうした動きで不利益を被る住民もいます。今回は再編統合で変わる「公立病院力」をみていきます。
(錦光山雅子)

◆手術・救急やめる例

  1通の請願書を抱え、山口県光市で農業を営む小川泰治さん(79)は2月、市議会に出向いた。

  小川さんは2004年に光市と合併した旧大和町に住む。地元住民でつくる「大和病院の存続・充実を願う会」の副会長。かつての町長や収入役も名を連ねた請願書で求めたのは、市立大和総合病院の機能の存続だ。

  市は2月、大和総合病院(以下「大和」)と光総合病院(以下「光」)という似通った機能を持つ二つの市立病院を再編する方針を掲げた。

  「光」はこれまで通り急病や手術などで入院する患者のための機能を主に担う。
「大和」は、高齢者を中心とする長期の入院患者向けの療養病床に大きく比重を移す。現段階では基本的に手術はせず、救急病院の看板も下ろす方針だ。

  04年の合併時、それぞれの病院は「存続」と決まった。2病院で市内の病院ベッドの半数を占めているが、収益の柱となる入院ベッド利用率(一般病床)は低迷している。08年度でみると、「光」が67%、「大和」は52%にとどまった。だが、光市の国民健康保険に入っている人の4割以上は、市外の病院に入院していることが市の調べで分かっている。

  二つの市立病院に人気がないのはなぜか。

  背景の一つは医師の減少。「光」の場合、入院患者の多い脳神経外科は08年、常勤医がいなくなった。週2回の外来だけになり、入院は受け入れられなくなった。

  市は「ベッドが余り、医師は不足しているのに、似たような機能をこのまま維持したのでは共倒れになる」と危惧。「地域全体で療養病床が不足している」として、その機能を「大和」が担う方針にした。すでに「大和」にある60床の療養病床に限っては利用率が9割近く、高齢者を中心にニーズはあるとみている。

  ただし、「大和」の地元住民は納得していない。

  小川さんは反論する。「大和町には後継者のいない診療所1カ所しかなく、大和病院の担う役割が大きい」

  同会のメンバーでもある土橋啓義市議は病院再編後の地域を心配する。「どんな診療科が残るにせよ、手術をしない病院に、外科医は残ろうとはしないだろう。1日約千人の出入りがある今の大和病院が、高齢者の多い療養病床ばかりになれば、さびれる一方だ」

◆最大の要因 医師不足

  総務省は07年末に「公立病院改革ガイドライン」を出し、近くの病院同士で役割を整理したり、地域でのベッド数を調整したりするよう求めている。各地で再編や統合が進む理由の一つだ。

  高齢化が進み、これまでのような入院中心の医療から、慢性の病気を抱えながらも自宅などで暮らすお年寄りらを意識した医療に比重を移していく流れもある。

  しかし、公立病院が再編統合を迫られる最大の要因は、やはり医師不足だ。現在の医師数に見合った形に病院の体制を整えているのが実態。こうした再編は今後広がっていきそうだ。

  広島県の中山間地にある世羅町の公立世羅中央病院と三原市の公立くい病院の場合、医師不足とベッド不足の両方を再編で補う方法をとる。

  くい病院には現在、内科や外科など4診療科があるが、常勤医師は院長1人のみ。世羅中央病院も含めて非常勤医の応援をもらい、往診や当直もこなしている。

  一方、くい病院から車で約30分の世羅中央病院は、外科医が比較的充実していることなどもあり、常にベッドは満員状態。このため、救急で運ばれてくる患者を受け入れるベッドが足りない。救急患者に多い脳卒中や循環器系の病気をみる医師も足りない。

  このため10月、2病院の機能を再編する。くい病院から45床を世羅中央病院に移し、救急患者に対応できる医師を増やして、これまで断っていた救急患者もみられるようにする。くい病院はベッドのない「診療所」になるが、外来の診療科は維持する。

  こうした取り組みで、地元消防が搬送する患者の5割しか受け入れられていない現状を6割に近づけるのが目標だ。世羅中央病院の宮川哲二事務長は「地域全体で効率的に医師とベッドを配置し、医療の質を保ちたい」と話す。

以前に紹介しました岩手県立病院の再編問題でもそうでしたが、こうした公立病院の改革と言うと何をおいても自治体のスポンサーとも言える住民対策が一番の鍵となってくることは言うまでもありません。
地域住民とすれば俺たちは税金を払っているのになんだと言う意識は当然あるでしょうが、一方で消防や警察などと比べて医療というものは純然たる社会インフラと考えるにはその経営的側面を期待されるという中途半端な面もあって、幾らでも税金を値上げしてでも最善の医療をなんてことはあり得ないですし、実際リソースを考えれば不可能だと言うことを理解してもらうべきだし、理解させないといけないわけです。
あれもこれもと分不相応に欲張った挙句借金は増えた、医者は逃げた、病院はなくなったとなるのがいいのか、それとも身の丈に合った範囲で最もニーズの高い部分に限り有るリソースを集中させるのがいいのか、冷製に考えれば損得勘定は誰にでも判る話であるはずなんですから、自治体の方でもきちんと住民教育をしていかなければならないでしょうね。

まあそうは言っても、こうして新聞記事になってくるのは比較的改革のうまくいった成功例とも言える病院だと言えるのではないかと思いますし、地域のニーズや施設の能力に応じて出来る範囲で最善をという姿勢はある意味王道ですよね。
ところが一方では、誰が考えてもそれはうまくいかないだろうというやり方を敢えて押し通した挙句に予想通りの結末を迎えて新聞ネタになった施設もあるようですが、こちらの記事を引用してみましょう。

病院分離、経営を圧迫 藤岡市の課題/群馬(2010年04月22日朝日新聞)

 藤岡市の中心市街地にある公立藤岡総合病院から北へ約1・5キロ離れた田園地帯。2002年4月、この場所に、同病院の一般外来や人間ドック、訪問看護機能を担う「外来センター」が新たに開設された。旧来の病院は入院や救急医療を担う「入院棟」となった。機能によって病院が違う場所に分かれたことが、その後、関係者を悩ませ続けている。(泉野尚彦)

 病院は、多野藤岡医療事務市町村組合が運営し、管理者を藤岡市長が務める。

 病院機能の分離は、経営面を直撃した。初期費用に加え、同じ診療科でも2カ所に人員や機材を配置する必要があるなど、効率的な経営が難しくなったためだ。病院側によると、分離する前年度まで7年連続黒字を計上していたが、分離した02年度は一転、約14億円の赤字に陥った。

 患者の診療環境は改善されたものの、人件費の増加や新たな医療機器購入費、非効率な運営などが経営を圧迫。医師らも入院棟と外来センターの掛け持ちで負担が増した

 分離は前市長時代。計画では、手狭になった病院をそっくり現在の外来センターの場所に移転させるはずだった。しかし、当時の試算で280億円ほどの建設費に反発の声があがり断念した。

 当時は、現在の入院棟近くの消防署を移転させ、外来を併設する案もあったという。市側は後に、「経営面や効率性、医師の過重労働などの検討が不十分なところもあった」と振り返る。

 病院側は経営改善に様々な手を打ってきた。退職者の不補充をはじめ、診療報酬の加算がある地域医療支援病院の認定や医療事務・調理部門の外部化、後発薬品の利用、随意契約から入札の導入……。その結果、「一時の危機的な状況は脱した」ものの、いまも厳しい経営状況は続く。

    ■       

 機能分離による働きづらい環境が医師確保に影響を及ぼさないか、懸念する声もある。全国の公立病院が医師確保に苦労するなか、公立藤岡総合病院でも03年度の66人から08年度には56人と医師数は減少傾向にある。医師が減れば診療科目に影響を与え、経営の不安定さにもつながる。

 病院側は医療事務組合の会議の場で、出席者から問われて医師確保には即効的な対策がないことや、医師の離散を防ぐために働きやすい環境整備が必要なことなどを指摘してきた。病院側は2年前、内部の議論の中で、敷地に余裕のある外来センターへの再統合を、将来の選択肢の一つにあげている

 しかし、医療事務組合やそれを構成する市町村長の間では、再統合は正式な議論にはなっていない。病院をどちらへ再統合するのか、移転した施設の活用をどうするのか、財源の手当てや当時の建設費などの返済方法をどうするのか、幾つもの課題を抱えているからだ。

 病院は年間30万人前後の患者を受け入れる。そのうち3割、そして救急車の4台に1台は埼玉県北部からもやってくる。県境を越えた地域医療を担う病院の将来像をどう描いていくのか、問われている。

   ■        

 各候補者は再統合には基本的には賛成、理解を示すが――。

 塚越正夫氏は「理想は再統合。街中の活性化などを考えると、入院棟への統合だ。しかし、現実的には市債残高が200億円を超える状況で、一番のネックは財政」。

 小林長三郎氏は「統合によって患者の利便性向上と経費削減を目指す。跡地には法人による特養や保健施設、介護施設などの多機能併用の施設を設置する」。

 新井利明氏は「再統合は軽々に言えない問題。空いた方の跡地利用をつめなければならない。(分離した際の建設費の)起債の残りもある。財政の試算をする必要がある」。

紹介率を上げないと診療報酬上不利益になるということで、病院の外来機能を別施設に移すということがひと頃から結構流行っていますけれども、通常は入院施設に隣接して外来施設を用意するなりして両者の機材、スタッフが有機的に連携(平たく言えば、使い回しですよね)できるようにするところ、1.5kmも離れていたのではそれは無駄も増えるというものですよね。
こういうあからさまに馬鹿げた計画が実行に移された背景には何でも外来施設建設と市政のトップに関わる黒い噂であるとか、現場無視の経営改善策を唱えるコンサル業者に騙されたんだとか、色々と怪情報も飛び交っているようですけれども、同じ話が自治体病院運営改革の美談としても取り上げられているというのは何とも面白いですね(しかし他の成功例?が高知ってどうなんでしょう…?)。
いずれにしても利益追求ということを考えていくということであれば経営姿勢の改善は言うまでもないことですが、同様に外部から集まってくる自己利益追求を目指す方々に対する対策もまた同時進行で進めていかなければならないとは言えると思いますね。

さて、ここで冒頭の日経の記事に帰って医療がもっと産業としての成長を目指していくということであれば、混合診療導入を始めとしてより良いサービスにはそれなりの代価をという他業界では当たり前のことが、当たり前に行えるようになっていく必要もあるんだろうと思います。
現在のところは保険診療でやっている限りは全国どこでも誰がやっても医療の価格は同じという建前であって、また差をつけるべきでもないということになっていますから、うっかり裏口を探ろうなどと画策すると世間的に大きな批判を受けかねないという記事がこちらです。

東京医大八王子センター、生体肝移植前に寄付金(2010年4月28日読売新聞)

2年間に11人から計1200万円

 東京医科大八王子医療センター(東京都八王子市)が、生体肝移植手術を受ける患者に寄付金の提供を依頼し、2年余りの間に11人から総額1173万6000円を受け取っていたことがわかった。

 依頼は手術前に行われ、外部の病院から手術の応援に招いた医師への謝礼や、保険適用外の薬の購入などに使われた。生体肝移植手術は保険適用だが、それ以外の保険外負担を患者から徴収していたともいえ、保険診療と保険外診療の併用を禁じた混合診療の疑いもある。

保険外の薬購入や医師謝礼

 読売新聞が入手した資料や関係者の話によると、寄付金は2005年10月から08年1月の間に、最も多い人が300万円(最少は9000円)、8人が100万円以上を納めていた。この時期、同センターで生体肝移植手術を受けた25人全員に寄付を求め、11人が寄付した。

 寄付は、移植を担当する同センター第5外科教授(当時、既に退職)や准教授(同)が、手術前に「移植医療の振興が目的」と説明し、依頼していた。ある患者・家族は「任意とはいえ、断ると移植手術をしてもらえなくなるのではないかと考え、寄付を行った」と打ち明ける。

 寄付金の一部は、手術の指導役として招いた京都大学病院医師らへの謝礼に充てられた。患者によって肝臓移植への保険適用が認められていない薬を用いる場合があり、この薬の購入費にも患者・家族からの寄付金が使われていた

 高沢謙二センター長は「保険適用外の薬を使ったのは、治療効果が高いとされるからだ。寄付は任意なので混合診療に当たらないと思う。ただし、厚生労働省などから指摘された場合、(診療報酬の返還など)適切な対応をするつもりだ。謝礼は移植医療の振興の一環であり、問題ない。手術前に寄付を募ったことは好ましくなかった」と話す。

 同センターでは00~07年に実施した生体肝移植手術52例で20人が在院中に死亡し、09年12月「医師の技術力に問題があった」などとする報告書を発表。現在は手術を中止している。

「移植医療発展に1口100万円です」、患者の家族「断れない」

 「手術前に寄付を依頼されれば、断れない」――。家族は取材に対し、弱い立場を吐露した。寄付は任意だが、医師から手術後、寄付を催促された家族もいた。

 東京都内に住む女性患者の場合、寄付金の依頼があったのは手術の1週間ほど前。「移植医療の発展のために寄付金をお願いしたい。1口100万円です」と説明されたという。

 家族によると、お金に余裕がなかったので寄付するかどうか迷った。しかし、患者がつぶやいた「死にたくない」との言葉で支払いを決断。移植後に病院から指定された銀行口座に100万円を振り込んだ。使い道について説明はなかった。

 都内に住む別の家族の話では、手術の1か月ほど前に寄付金の依頼があった。「患者の状態が悪く、1日も早く手術してほしかった。誰もが寄付していると思った」と振り返る。

 同センター第5外科の芦沢龍人准教授は「保険外診療の費用は大学側の研究費を使っていたが枯渇してきたため、患者さんにお願いするようになった」と説明する。移植を指導してきた田中紘一・京大名誉教授は、謝礼の元が患者からの寄付金だったことについて「手術前に患者、家族から寄付金を募っていることはまったく知らなかった。本当にひどい話だ」と驚いている。

 川渕孝一・東京医科歯科大教授(医療経済学)の話
医療技術が急速に進んでいるのに対して、薬の承認などの制度が追いついていないことが、問題の背景にある。実際には、混合診療の疑いがある事例は多く行われていると思われるが、闇の中にあるのが現状。国は実態調査を実施し、どのように対策を取るべきか検討すべきだ」

 混合診療 公的な医療保険のきく保険診療と、保険のきかない自由診療を併用すること。「経済力により受けられる医療に差が出る」などの理由から、国が認めた一部の例外を除き原則禁止されている。併用した場合は、保険診療の部分も含め、すべて自費になる。一方、保険外治療との併用を希望するがん患者が原告となり、「禁止は不当」とする裁判が係争中。経済界からは再三、規制緩和の観点から、解禁を求める声が上がっている。

[解説]保険適用 迅速な拡大を

患者・家族が病院側から多額の寄付を求められていた背景には、医療制度の不備の問題がある。

 脳死移植が普及しない日本では、患者の命を救うためには生体肝移植に頼らざるを得ない。提供者となる近親者と血液型が適合しない場合、拒絶反応を抑える、ある種の薬は、肝臓移植の保険適用になっておらず、使っても保険請求できず病院側の“持ち出し”になる

 患者からの寄付金を保険適用外の薬の購入などに充てていたケースは、福島県立医科大で2004~08年度の5年間に、心臓手術や肝臓移植を受けた患者ら74人から計約2443万円を受け取ったことも明らかになっており、こういった寄付依頼は他でも行われている可能性がある。

 必要な薬であれば、迅速な保険適用を図るべきだ。説明不足のまま、患者に不明朗な費用負担を求めることはあってはならない。(医療情報部・坂上博、八王子支局・鈴木英二)

いずれにしても今回の事例の場合は、インフォームド・コンセントの不足という一点においても問題があったとは言えるでしょうし、やるならやるで組織としてきちんと制度設計も出来ていなかった点もどうかという感じでしょうかね。
皆保険制度にのって医療をしている限りとりわけこうした方面への縛りがきついのですから、こうした病院は先頭に立って混合診療導入を求めていくのも良いでしょうし、以前にも紹介しました順天堂の会員制サービスのように、合法的なやり方でこのあたりをうまい具合にクリアしていく方法は現状でも色々と考えられるわけですから、もっと頭を使ってうまい工夫もすべきということになるのでしょうか。

日医などの主張を見ていてもしばしば思うところですけれども、制度を変えるのに反対だと言っていても制度を作る側は自分たちが必要と思えば変えていくわけですから、そうであるならより積極的に自分たちにとって都合のいい制度になっていくように主張をしていく方が建設的だと思うのですが、どうも医療業界には自分たちにとって都合のいい話だとか、当り前の利益追求ということに対しては結構なアレルギーがあるようですよね。
例えば昨今は病院の未収金問題が色々と言われる中で先日もアメリカの友人と話していて、日本の病院では未だにカード決済もしていない施設が多いのはおかしいんじゃないか、売掛債権のリスクをクレジットカード会社に引き取ってもらう方が経営しやすいし、後で投資家からどうなっているんだと説明を求められた時に話がしやすいはずだと言われたのですが、全くその通りだと思いますね。

医療が経営的に厳しくなってお金の問題で診療体制が崩壊する施設も増えている時代であるからこそ、真っ当な利益を上げその半分は経営安定の為に使っていきます、半分は顧客サービス向上に還元していきますという当たり前の経営姿勢が求められているはずだし、それが医療の側にとっても患者の側にとっても望ましいwin-win関係を保った成長戦略というものではないかと思うんですけれどもね。

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