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2010年5月26日 (水)

5月27日はテロ船長の初公判です

いよいよ明日5月27日はテロリスト船長ピーター・べスーン被告の初公判ですが、それを目前にしてこんなニュースが飛び込んできました。

シー・シェパード抗議船、2隻ともオランダ籍に(2010年5月25日20時49分  読売新聞)

 【バンダルスリブガワン(ブルネイ)=岡崎哲】日本の捕鯨船団への妨害活動を繰り返す米反捕鯨団体シー・シェパードは25日、抗議船ボブ・バーカー号がオランダの船籍を取得したと発表した。

 日本政府は同船に船籍を与えないよう繰り返しオランダに要請していた。これでシー・シェパードの2隻の抗議船はいずれもオランダ船籍となった。

 シー・シェパードは声明で「日本の首相は船籍剥奪を要請したがオランダは屈しなかった」としてオランダに「謝意」を表明。12月から日本の捕鯨船団への妨害を再開すると宣言した。

 ボブ・バーカー号はトーゴ船籍だったが、トーゴは2月、日本の要請を受け船籍を剥奪。妨害活動を防ぐため、日本はバーカー号に船籍を与えないよう各国に働きかけていた。

元々強力な反捕鯨派諸国の一つとして知られているオランダですが、昨年末には日本政府の要請を受けて「捕鯨を妨害すれば船籍剥奪」とする船籍法改正案が提出され、今春にも成立する見込みと言われていました。
オランダ政府としてもテロ支援国家の肩書きは避けたいと言うポーズを示した形でしたが、残念ながらこの2月で同国政権が崩壊したことから同法案の成立の見込みは当面立たない状況となったと言うことで、いわばその間隙をついての今回の事態であるということです。
もちろん「法律がない以上は申請されれば船籍を与えざるを得ないじゃないか」などと言い訳のネタは色々とあるのでしょうが、何にしろ同国政府の意志や国民感情といったものがこうした事態の背景にあったと考えておいてまず間違いはなさそうですよね。

国連海洋法条約によれば、公海上で船舶の取り締まりを行う場合は船籍国の同意が必要なっていて、要するに船というのはそれ自体が他国の領土と同じような扱いになっていることから取り締まりも非常に面倒くさい手続きがいるというわけですが、これが船籍がないということであれば無国籍であるのと同じことですから、海保なども扱いが非常に簡単であるということになります。
もともと同船が船籍を置いていたトーゴに対して日本が強力に働きかけたのもそういう事情があるわけですが、仮に今後オランダで船籍剥奪法が成立したとしても「法律の不遡及の原則と言うものがあって」云々とまた処分を避ける言い訳を色々と言ってくるようであれば、これはオランダとしても旗色を鮮明にしたと解釈するしかなさそうですから、日本としても外交上何らかの更なる対応が必要でしょうね。
いずれにしても次の捕鯨再開までにはまだ少し時間がありますが、この間に以前紹介しました「商業捕鯨再開か?!」という例のIWCでの議長提案の行方がどうなるのかといったことを含めて、国際的に議論を進めておくべき話題は多々あるわけですから、こちらの方面にも注目しておかなければならないでしょう。

さて、ちょうど同時期に日本と海外で同じような趣旨の記事が掲載されましたけれども、並べて見てみますと何やら面白いところもあるように思いますね。

起訴されたシー・シェパード活動家、NZ紙に心境語る(2010年05月23日AFP)

【5月23日 AFP】日本の調査捕鯨船団の監視船に侵入して障害など5つの罪で4月に起訴された米環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society、SS)」のピーター・ベスーン(Peter Bethune)被告が、ニュージーランド紙に現在の心境を明かした

 同被告は東京拘置所(Tokyo Detention Centre)からニュージーランド紙サンデー・スタータイムズ(Sunday Star-Times)に対し、「95%の確率で」有罪になり、長期の懲役刑を受けるだろうと語った。

 また100人を超える捜査当局者が参加して侵入時の様子を調べた実況検分の際に頭からフードをかぶせられたことについて、自分が「性格異常の殺人鬼」のように扱われたのは異様だと述べた。

 ベスーン被告は最高で15年の懲役刑を受ける可能性がある。

「シー・シェパード代表は間違っている」「家族恋しい」拘留の被告が激白(2010年5月23日産経新聞)

 調査捕鯨妨害事件で東京拘置所勾留され、27日に初公判を迎える米団体シー・シェパード(SS)のメンバー、ピーター・ジェームス・ベスーン被告(45)=ニュージーランド国籍=は23日までに、産経新聞との接見に応じた。同被告は、自身を「ラストサムライ」と呼び徹底した法廷闘争を叫ぶSS代表のポール・ワトソン容疑者(59)=カナダ国籍=は「間違っている」と語り、ミゾをうかがわせた

 ワトソン容疑者はベスーン被告が拘束されて以来、「日本は違法な捕鯨を終わらせるための(抗議行動の)結集地となる」と主張し、法廷闘争のための寄付を募り、各国の日本大使館で抗議デモを行うよう支持者らに呼びかけてきた。ベスーン被告には「クジラのために命をかけることを誓ったのであれば、刑事被告人として扱われる脅威など些細(ささい)なものだ」と、徹底した法廷闘争を求めていた。

 だが、度重なる接見で同被告は「日本の捕鯨は許せないが、私は家族をもつ普通の人間であり、サムライのような闘士ではない。ワトソンは間違っている」と述べた。

 被告のもとには各国から数千通もの便りが寄せられ、そのほとんどは日本を強く非難する内容だ。しかし、同被告は「日本人は礼儀正しく、過酷な扱いを受けたことは1度もない。憎むべき国ではないと言いたい」と話した。拘束から3カ月が経過し「家族が恋しい」とも漏らし、「法廷では真実を話すが、裁判のことを考えると不安になる。できれば長く勾留されたくない」と裁判の長期化は避けたいとの考えを示した。

 また「私は自分の信じる道を突き進んだ余り、多くのものを犠牲にした。妨害はボランティアであり、昨年は収入が全くなかった。生活を考えなくてはならない」と話し、捕鯨妨害活動に参加し続けることに否定的な考えも示した。

 ベスーン被告の言動について、かつて捕鯨船団の団長として南極海でSSから妨害を受けた日本鯨類研究所の石川創・調査部次長は「SSのクルーは長期間、船に乗っている間にワトソン船長にそそのかされ、善悪の判断が麻痺(まひ)していく。被告は、危険な行為を行ったことを、冷静に見つめ直しているのではないか」と話している。(佐々木正明)

一見するとかなり対照的なコメントのようにも見えるこれら二つの記事ですが、一つの考え方としては自国民が逮捕・起訴されているニュージーランドとしては元々反捕鯨派であることもあって、今回の一件を面白からぬ思いで見ている、そうであるが故に否定的なコメントをことさらに抜き出してみせているという可能性もあって、両記事の情報量の差がそうした推測を裏付けるという考え方も出来るでしょう。
逆にベスーン被告としては本音では「ふざけんなこの糞野郎!」と思っていても、裁判をやる日本での心証を考えると日本紙の取材に対しては猫をかぶって見せざるを得ないという可能性もあって、一部には「後日の宣伝活動のために”日本人に無理やりこんなことを言わされた!奴らは俺を脅したんだ!”なんて言うためのネタが欲しいのだ」との見方もあるようで、どちらが正しいのかは現時点で何とも言えません。
この記事を書いた産経の佐々木正明記者は以前からテロリスト問題を追求してきていて、同記者のブログなどにも随時情報がアップされているのを紹介させていただいたりもしましたけれども、記事からも伺われる通り佐々木記者の見解によればこれはベスーン被告の真情そのものであって、同被告の行動においては主義主張より何より経済的問題が大きな要因となっていたのだという立場のようです。

SS船長ベスーン被告の妻「昨年、彼とは別れた」「2人の娘がいるのに、彼はセルフィッシュ」(2010年5月25日ブログ記事)より抜粋

(略)
 シー・シェパード代表のポール・ワトソンは、ベスーン被告の裁判を、日本の捕鯨に圧力をかける国際キャンペーンの場にしようと画策していました。
 ホームページ上では、大々的にキャンペーンを行ってきました。
 しかし、肝心のベスーン被告はそのつもりはないようです。
 彼がワトソンと初めて会ったのが昨年夏です。ベスーン被告ももともと船乗りであり、ワトソンと深い意思疎通を図っているわけではなく、バリバリの活動家でもありません

 ベスーン被告と妻、シャリーンさんの間には2人の子供がいます。
 ベスーン被告は、シー・シェパードの活動に参加する前、アースレース号という船(その後、アディ・ギル号に名前を変えた)に乗り、世界一周最速航行の冒険にチャレンジしていました。
 そこで、彼は世界記録を打ち立てるのですが、その分、大きな代償も払いました。
 グアテマラで死亡海難事故を起こし、多額の補償を背負うことになったのです。ベスーン被告とシャリーンさんは、家を担保にいれて、資金をまかないました

『グアテマラの死亡海難事故』

 ベスーン被告は家を空けることが多く、家庭を省みませんでした。妻は献身的に彼の冒険をサポートし、様々な仕事を行って、家計も支えていました
 日本船への乗り込みも、事前に知らされていたわけではなく、家族はニュースで事件を知っています。 
 ニュージーランド紙に、妻、シャリーンさんが家族についてこう激白しています。

Finally, the pressure of having an absent husband proved too much, and in September last year the couple separated, Sharyn revealed during an interview with the Sunday Star-Times last week.
 夫がいないプレッシャーと金銭的な問題を抱えて、妻は昨年9月、夫と別れることにしたのです。(★文中のseparateには、別居または離婚の意味があります)

 しかし、シャリーンさんは日本の拘置所にいる夫のことを今でも支えています。このように言っています。

「まだ、彼を支えています。今でも良い友達として。でも、5年間のうち彼と会ったのはたった6カ月ぐらいだった。彼は自分の道を歩むことにした。だから、私も動いたの」

 激白はさらに続きました。きっと、この記事を書いた記者は、あせらずに時間をかけてゆっくりと、シャリーンさんの人間関係を深めてから、インタビューしたのだと思います。

"It's for a single man without responsibilities. He's got two daughters, he's been away from them five years. He's got no life insurance or anything. To me it is a little bit selfish, but the girls fully support what he's doing.
 責任を持たなかった1人の男性なのです。彼には2人の娘がいる。5年間、娘たちから遠ざかったのです。彼には、自分の生活について何の補償もない。私にとってはちょっと、セルフィッシュに思えます。でも、娘たちは夫が行っていることを十分に支えています。

 ベスーン被告は、私との接見で、今後のシー・シェパードの活動に参加することについては否定的な見解を述べていました。

 「私には、昨年、何の収入もなかった。今後の生活については考えなくてはならない」

 やはり、ベスーン被告にとって、日本船への乗り込みは、無鉄砲な行動だったようです。
 きっと、抗議船スティーブ・アーウィン号に乗っている内、言葉巧みなポール・ワトソンに唆されたのでしょう。
 拘置所に入って、自分の理想の追求よりも、家族のことが大事だと思い直したのかもしれません。
 彼の言葉から、そうした後悔にも近い気持ちを強く感じました。
(略)

以前にも書きましたが、テロ組織シーシェパードはスポンサーから巨額の資金をかき集め非常に裕福な団体でありながら、南氷洋その他で過酷なテロ活動を行う現場スタッフには全く給与など支払っていないわけですが、集めた巨額の資金は一部は装備の更新につぎ込まれる一方、代表であるポール・ワトソン容疑者一人の懐にたっぷりとお金が入るという「親が総取り」の構図になっているわけです。
ベスーン被告が元々テロ組織の活動にシンパシーをどの程度感じていたのかは不明ですが、少なくとも筋金入りのテロ要員として洗脳されてきた一般構成員とは異なっていて、操船技術を見込まれて仲間に加わった専門技術職であると考えることもできそうですよね。
おそらく同被告としてはテロ組織=金満団体という認識はあったか、あるいはワトソン容疑者から巨額の報酬を約束されていたなどといった見返りを期待していたのかも知れませんが、結局船は失った上に金銭的にも何らの見返りもなかった、挙句にはテロ組織の中で自分一人だけ逮捕されてブタ箱入りという、要するに他人に良いように利用されて終わったという惨めな境遇であったとは言えるかも知れませんね。

行動力はあってもいささか頭の使いように問題があったと考えるべき御仁なのか、あるいは後先考えず突っ走る性格だからこそ良きにつけ悪きにつけ目立つことになるのだと見るべきなのか何とも言えませんけれども、こうしたベスーン被告の経歴と現在の心中を察してみるに、今後の話の持っていき方次第では面白い話が色々と聞けるようになるかも知れませんね。
そうした点にも注目しながら、明日以降の公判がどんな展開を見せていくのかを興味深く見守っていきたいと思います。

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