« 人は石垣、人は城と言いますが、やはり働きやすい環境整備も重要なようで | トップページ | そんな餌で俺様が釣られクマー…って、あれ…? »

2010年4月21日 (水)

今どき救急と言えば誰にとっても難しいものです

昨今では地域の公立病院と言えば非効率・不採算医療を一手に引受ざるを得ない時代で、しかも「スポンサーたる市民様は神様」の精神で現場無視の「改革」が相次いで行われていたりするものですから、金銭的な収支は元より医師らのモチベーションの面でも非常に厳しいものが多々あることは周知の通りです。
神奈川県平塚市に位置する平塚市民病院も400床クラスの地域基幹病院ですが、近年は医師・看護師が減ったことに伴なう収入減が進み、そこに例によって出てきた病院建て替え計画やら「市民ニーズに応えた」24時間救急センター構想やらと、まさにテンプレ通りの経過を辿ってきている施設という印象ですよね。
その平塚市民病院が医師が増えたので救急センター機能を強化しますと言うのですが、記事を見ているとこれがまた無謀な計画という気がしてなりません。

平塚市民病院が救急医療強化へ、医師ら増員で実現(2010年4月17日カナコロ)

 平塚市民病院(同市南原、石山直巳病院長)は今春から、地域の医療ニーズに応えるため、24時間休みなく急患を受け入れる「救急医療(ER)」の体制を強化していく。4月から救急専任医を1人から2人に増員し、今秋ごろに3人とする。7年以内に、より高度で専門的な医療を施せる「救命救急センター」を目指し、平塚周辺の医療サービスを充実させる。

 市消防本部によると、市内の救急搬送者は過去3年で年間1万人余り。同病院が受け入れている割合は2009年は36・6%で民間の平塚共済病院(追分)の41・7%を下回る。さらに07年実績と比べても、1ポイント余り下がっているという。全国的な問題でもある医師や看護師の不足が大きな要因で、十分な緊急診療体制を築けていない状態が続いてきた。

 平塚市民病院では夜間は当直医2人が急患に対応しているが、専門外の疾患を診断せざるを得なかったり、緊急手術時にはほかの患者を受け入れられなかったりするケースもあるという。こうした課題を解決するために今後、医師や看護師など医療スタッフを増員し、できるだけ多くの急患を受け入れ、地域住民の信頼を回復するのが狙いだ。

 4月からは救急専任医が2人、秋までには3人となり、いずれは5人体制を目指す。現在計画が進む新病棟建設後の2016年度ごろには、高度で専門的な医療が必要な重症患者を24時間365日体制で受け入れる「救命救急センター」として機能させる方針だ。

 県が指定する県内の救急医療センターは、東海大学医学部付属病院(伊勢原市)や藤沢市民病院、小田原市立病院など14カ所ある。

いやまあ、救急専任医がいないよりはいた方がいいのは言うまでもないでしょうが、本格的に24時間365日のERをやる気ならこんな人数でやるのは到底無理ではないかという気がして仕方がないのですがね(なんちゃって救急専門医で他科丸投げというなら別ですが)。
どうもこの病院、同じ市内に存在している共済病院との間に何かとライバル心を発揮しているらしくて、「あっちはこんなことまでやっているのに市民病院は何だ!」なんて言ってるらしいことが議事録などを斜め読みしていても読み取れるのですが、一人増えたからとそれ以上に過酷な業務を押し付けるようなことをしていたのでは、増えるどころか一気に逃散が進むというお約束の経過をたどってしまいかねないのではないかとも思うのですけれどもね。
この平塚市民病院と言うところ、ちょっと調べてみるだけでも事故のみならず事件も起きていたり、院外でも妙なところで新聞沙汰となっているのですが、逆に事故防止の取り組みがテレビに取り上げられてみたりと、一見ありきたりな公立病院のように見えてなかなかにオンリーワンな病院であったりするようですから、あるいは思いがけないウルトラC炸裂なんてこともあるのかも、ですかね?

平塚市民病院の将来はそれとして、最近救急医療ということでちょっと気になったのが先日のこちらの記事なんですが、この時期厚労省の出す調査結果としては非常に意味ありげな内容ではありますよね。

臨床研修で救急医療の能力向上…修了医師調査(2010年4月18日読売新聞)

 6年前に義務化された臨床研修制度を修了した医師は、それ以前の医師に比べ、救急医療の能力が高く、緊急時対応にも自信を持っていることが、厚生労働省研究班(主任研究者=徳田安春・筑波大教授)の調査で明らかになった。

 新研修制度は医師不足を加速させたと批判されているが、徳田教授は「幅広い診療能力を若手医師に身につけさせることができた」と利点を強調している。

 研究班は昨年11月、臨床研修を修了した4~6年目の医師(救急医を除く)103人と、制度導入前に卒業した7~9年目の医師(同)105人を対象に、救急外来を想定した26場面で、正しい治療方法を六つの選択肢から選ばせる質問を出した。その結果、約3か月間の救急医療研修を受けた医師の平均点は26点中15・3点で、制度導入前の医師の平均点(12・8点)よりも高かった。また、自信も臨床研修修了者の方が高いことがわかった。

先程の平塚市民病院の記事にも出ていますけれども、救急というものは真面目にやればやるほどその大変さが判ってくるというもので、とりわけとっさに手が動くかどうかが重要なだけに正直こうしたベーパーテストでどれくらい正しく評価できるか疑問無しとしませんけれども、注目すべきはローテートをした人たちの方が救急に自信を持っているという点ですよね。
ネガティブに見れば初期研修医となれば救急とは言っても見ているだけであったとか、せいぜいが下働き程度の仕事しかしていない場合も多いでしょうし、救急医療最大のキモである「誰もいない場所で一人決断しなければならない怖さ」というものはほとんど経験していないでしょうから、もともと万能感の強い4、5年目くらいの先生が輪をかけて俺様TUEEE!な状態になっているだけなのかも知れません。
そんなこんなでネット上では例によってネガティブな評価が主導的なようですけれども、今までマイナー科などの能力のある人でも基本的な手技や知識を経験していないばかりに救急の場で役立たずといった場合も多かったわけで、強制的に最低限の経験を積ませるということはそれなりには意味があるんじゃないかとは思っているのですが、問題はそれが救急医療のレベル向上とイコールではない点です。

308 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:20:29 ID:N89y7y0e0

ったく現場を知らぬアホなアンケートだな。
普通の医師なら経験を積めば積むほど安易に救急に自信が持てるなどとほざけないもんなのに。

309 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/04/19(月) 00:01:07 ID:7c/8eXLl0

救急医療の能力が向上するのと、救急医療に従事するかは別問題で、
救急の現場を見たために、余計に救急はやりたくないと思う人が増えそう
外科を強制的にローテーションさせたために、外科志望が減ったように。

319 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/04/19(月) 09:21:06 ID:dgQG/+CR0

救急を避けるやり方をならったんだろ!

先輩の救急担当医師たちが、どのようにめんどくさい症例を他科に渡すかのノウハウを学んだとか?
たまに、安易にDQN症例を引き受けて袋小路に陥ってるところとかを反面教師にできて喜んでるとか

323 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/04/19(月) 11:48:44 ID:aqrgnhdx0

実力がつく=地雷が見分けられるようになる=爆発前に避難

不発弾を解体しようとしてハンマーで叩くようなレベルの奴だけ現場に残る

355 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/04/20(火) 19:05:26 ID:ssSciA3S0

特にプレホスピタル救急なんて、何もできないってことをわかってない奴は手を出したがる

救急2か月回ったばっかりの研修医とか、茄子とか。
とくに茄子は事故だとか急病の機内放送とかにすぐ出て行くよね

秋葉原事件のとき、ビッグサイトで臨床救急医学会があったんだが、絶対かえりに秋葉に
繰り出してた奴多かったと思うよ。だけど手を出したのは数人だけでしょ

まあ不発弾をハンマーで叩く人材だけが残るかどうかは別としても(苦笑)、「実際に回ってみて大変さがよく判った」と新臨床研修制度導入以来各診療科の新入局者数に激変があったなんてことも言いますから、単にあこがれや漠然としたイメージだけで救急に進んで後でデプったりするよりは、実際に経験して最低限のセレクションを受けておいた方がかえって安心という側面はあるかも知れませんね。
これは新臨床研修に関する全くの個人的な意見ですが、やはり医療の基本は全身的に一通りの状態把握が出来る内科診療であって、例え眼科医や皮膚科医だろうが最低限の内科的知識は持っておくべきだろうし、同様に外科や麻酔科的な知識も様々な局面で役立つ場合はあるだろうし、産科や小児科の基本的な考え方も承知しておいて損はない、そういう意味ではローテート研修も意味があるでしょう。
ただ現状の卒後直ちに初期ローテート研修、その後に後期の専門研修という流れはしばしば学生の臨床実習が延長されただけといった新鮮味のないものにもなりがちな面があって、むしろ最初期の段階では何科であれある程度ストレートな研修で基軸となる知識や技能を身につけておいた方が、ローテートをするにしても実が上がるんじゃないかという気もするんですけれどもね。

いずれにしても省内の意向が反映されると考えて間違いないこの種の調査でこういう絶賛とも言えるレポートをわざわざ出してきたという意味は、昨今医師不足だ、いや医師の偏在だといった議論の背景として何かと槍玉に挙がる機会の多い新臨床研修というものを、当面厚労省としては辞めるつもりはないという意思表示であるとも受け取れそうですね。
となれば総務省あたりも巻き込んで医師強制配置計画を推進してくるのかといった推測も成り立つわけですが、折衷案的に臨床研修の定員枠を地方優位になんて話も出ているようですけれども、これがまた市中病院ではなく地方の大学病院に研修医を集中させて医局派遣機能を強化しようなんて「今どきそれなんて白い巨塔?」な話なんですから恐れ入るしかありません。
御用学者のセンセイ方の結論ありきなレポートではなく、きちんとした客観的指標に基づいて新臨床研修制度の功罪を再検証し、改めるべきは改めていったら良いだろうにと思うのですけれども、現状では各人が自分の損得勘定だけで好き勝手なことを言っているように見えるのは残念なことではありますよね。

当事者である研修医の先生方も色々と言いたいことはあるのでしょうが、他人に全責任を押し付けて好き放題な医療が出来るのは研修医の時期だけの特権(苦笑)なんですから、分別のある大人の医者になってからでは到底出来ないような無茶の一つもやって経験値を貯めまくってやろう、くらいのつもりでいた方がスキルアップの早道にはなるんじゃないでしょうかね。

|

« 人は石垣、人は城と言いますが、やはり働きやすい環境整備も重要なようで | トップページ | そんな餌で俺様が釣られクマー…って、あれ…? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

ジェネラル・ルージュのドラマでは大学病院QQセンターを4人の常勤と2人の研修医でやってるから、ウチならこれくらいでできるんじゃね?って程度の考えなんじゃないでしょうか(笑)。

現場のやり方を知らない事務方は、仕事量を人数割で考えるようですが、一人が二人になっても倍の仕事をこなせるわけではありません。でも、五人になったら5倍かというと、10倍くらいの仕事ができてしまうこともあります。

そういうことが分かってくれてたらいいんですが、そういう病院がほとんどないのが現実でしょうね。

投稿: Seisan | 2010年4月22日 (木) 10時37分

おっしゃるとおりで、公立病院の一番の敗因は事務方がアレなことだと思います。
噂では公務員の中でも役場勤めが一番の出世頭で、病院に回ってくるのは一番アレな人材だなんてことも聞きますが、病院内では事務が仕事をしなくても専門職の努力で何とか回ってしまうという理由もあるのでしょう。
地方の小さな公立病院では稀に若くて熱心で能力もある事務方が仕切っていて、そういうところでは公立にあるまじき働きやすさで仕事が廻っていたりもしますが、大病院ほどそういう希少な人材が年功序列の壁に埋もれていきますのでね…

投稿: 管理人nobu | 2010年4月22日 (木) 11時06分

> 救急医療最大のキモである「誰もいない場所で一人決断しなければならない怖さ」というものはほとんど経験していないでしょうから、もともと万能感の強い4、5年目くらいの先生が輪をかけて俺様TUEEE!な状態になっているだけなのかも知れません。

まったく仰るとおり。自分もスーパーローテート世代なんで人のことはあまり言えませんが、
4~5年目はできないくせに自信を持ってた気がしますね。その後身の程を思い知って現在に至ってるわけですが。
ま、有名研修病院の初期研修医も、大して責任なくトリアージしたつもりになって自信満々になったりしてますし。
現場で動けるようになって、自分ができるからと勘違いする。システムが優れていて、その歯車になっただけなのに。

投稿: はまぐり | 2010年4月22日 (木) 22時01分

昔の医者に比べると新卒~初期研修くらいの段階まででは知識量は多いように思えるんですけどね。>新臨床研修対象世代
単に初期研修のシステムが変わっただけのはずが結構意識の変化に結びついてるように見えるのは面白いなと思いますが、上の世代の上司からはそういうのが可愛くないと見える局面も多いようですけどね(苦笑)。
今の若手が中堅以上になって現場の実権を握ってくる頃には、医療現場が劇的に変わっているかも知れないです。

投稿: 管理人nobu | 2010年4月23日 (金) 10時01分

>Q8.現在の医療界を四季に例えると・・・?
>A8.新春。今後暖かくなる。
http://hiratsuka-city-hospital.jp/info/incyou.html

この院長の季節感は壊れているようです
新春だったら、これから寒くなるだろうに・・・・・
冬を越す前に、凍死しそうに思えます

投稿: Med_Law | 2010年4月27日 (火) 01時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/48143416

この記事へのトラックバック一覧です: 今どき救急と言えば誰にとっても難しいものです:

« 人は石垣、人は城と言いますが、やはり働きやすい環境整備も重要なようで | トップページ | そんな餌で俺様が釣られクマー…って、あれ…? »