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2010年4月13日 (火)

実働を始めた産科医療補償制度 しかし耳に快い話ばかりでもなく

昨年に始まった産科医療補償制度ですが、昨年9月に始めて認定された症例の報告書が先日公開されています。
まだ件数としては少ないですが、今後こうした事例がどんどん増えてくることが予想されるわけですから、関係各位は今のうちから目を通して見慣れておくということも必要になってくるのでしょうね。

産科補償制度、原因分析報告書を公表(2010年3月18日CBニュース)

 昨年1月にスタートした産科医療補償制度を運営する日本医療機能評価機構は3月18日、同機構の原因分析委員会が脳性まひ発症の原因を分析し、再発防止策などをまとめた報告書の要約版を初めて公表した。同機構の担当者は「幅広い人々に読んでもらうことで、制度への理解を深めてもらい、最終的には産科医療の質の向上、報告書と同様の事例の再発防止につなげていきたい」と話している。

 公表されたのは、昨年9月に同機構の審査委員会で同制度の補償対象として初めて認定された事例の報告書の要約版で、原因分析委員会の部会が医学的な観点から原因分析を行ったもの。2月9日の原因分析委員会で承認され、同機構の機関決定を経て、既に全文版が児・家族と分娩機関に送付されている。

 要約版は、「事例の概要」「脳性まひ発症の原因」「臨床経過に関する医学的評価」「今後の産科医療向上のために検討すべき事項」について、報告書から個人を識別する情報を除外した上で、概要をまとめた。

 全文版については使用目的が、▽学術的な研究目的での利用▽公共的な利用▽医療安全のための資料としての利用―の場合に限り、個人情報などをマスキングした上で開示される。
 全文版の希望者は、同機構のホームページ上の「原因分析報告書開示請求書」をダウンロードし、必要事項を記入の上、同機構の産科医療補償制度運営部の原因分析・再発防止担当まで郵送する。1事例につき300円の手数料と郵送に掛かる実費を同機構指定の口座に振り込む。

詳細に関しては産科医療補償制度のサイトを見ていただくとして、ちょうどこのタイミングで同制度に関する現時点での総括を行っていくということなのでしょうか、各方面の有識者?を集めて産科補償制度絡みのシンポジウムが開催されているようですね。
これがまた見ていると顔ぶれといい議論の内容といいなかなか素敵なものであったらしいのですが、まずは黙って記事から紹介してみましょう。

シンポジウム:被害者の視点で安全安心な出産--渋谷で10日 /東京(2010年4月8日毎日新聞)

 安全で安心できる出産について医療事故の被害者らの視点で考えようと、市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」(出元明美代表)は10日、渋谷区神南1の「T’s渋谷アジアビル」でシンポジウムを開催する。

 小児脳性まひの子どもが生まれた場合、分娩(ぶんべん)機関が過失の有無に関係なく金銭補償をする「産科医療補償制度」が昨年1月に始まり、今年1月からは事故再発防止のための原因分析も行われている。一方、産科医療の事故はこれまで被害者らが事故防止のためいろいろ指摘をしてきたにもかかわらず、十分に生かされてこなかった面もあり、出元さんらが今回シンポジウムを企画した。

 シンポジウムでは、産婦人科医で産科医療訴訟に詳しい我妻堯さんや、同制度の原因分析委員会委員で江戸川大社会学部教授の隈本邦彦さんらが講演。このほか、参加者の意見を交えたパネルディスカッションも行う。(略)

監視や議論で「よりよい制度に」―産科補償制度でシンポ(2010年4月12日CBニュース)

 「陣痛促進剤による被害を考える会」は4月10日、「産科医療補償制度における医療事故の原因分析と再発防止のための課題」をテーマにシンポジウムを開催した。同制度原因分析委員会の委員や弁護士らが講演したほか、参加者を交えた質疑応答も行われた。講演では同制度の問題点などが指摘され、積極的な議論や監視を通じて制度を育てていくべきだとの声も上がった。

 第1部ではまず、産婦人科医の我妻堯氏が講演し、産科の医療事故は「計画分娩の概念の拡大と乱用によって起こっていることがほとんど」「子宮収縮剤の投与などで自然分娩と同じ分娩ができるとの妄信が横行している」などと指摘した。また、診療所では緊急時の対応が困難なため、診療所による分娩の再検討や、病院・分娩室のオープン制を検討する必要があるとの考えを示した。

 愛育病院の加部一彦・新生児科部長は、「現状の事故調査の在り方は非常に未熟」との認識を示し、現場が「教訓」にできる事故調査や報告書の在り方を追求する必要性を強調した。また、医療側が事故を初めから「コンフリクト」(紛争)と捉えて対応していることを問題視し、「コンフリクトは前提ではなく、回避すべきもの」と指摘した。

 原因分析委員会の委員を務める隈本邦彦・江戸川大教授は、「医療側が身内を厳しい目でチェックする初めての試み」と、同制度に期待感を示した。一方で、脳性まひの「回避可能性」に原則言及しない同制度の原因分析の在り方を疑問視したほか、最大年800事例をチェックし切れるかや、効果的な再発防止策を打ち出せるかなどの点に不安感を示した。

 弁護士の松井菜採氏は、医療問題弁護団の分娩事故判例研究会が分析した判例を基に、カルテなどの記録や説明義務、医療提供体制などの問題点を指摘した。その上で、同制度の原因分析を充実させるために患者側に求められる対応として、▽原因分析を「お任せ」にしない▽意見、疑問、質問を原因分析委員会に確実に伝える―などを挙げた。さらに、同制度を監視し続けることで大きく育てていくべきだとの考えを示した。

 第2部のパネルディスカッションでは、講演者らが会場からの質問に答えた。シンポジウムを傍聴した原因分析委員会の岡井崇委員長は、同制度の欠点として、▽(医師などへの)ペナルティーがない▽補償額が少ない-の2点を挙げた。その上で、「裁判で争っても医者は言うことを聞かない。原因分析委員会で専門家が集まって判定し、『間違っている』と言えば聞いてくれるだろうと望みをかけている」と述べ、それが事故の再発防止につながるとの認識を示した。

 司会を務めた「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」の勝村久司氏は、これまで裁判になったのは「あまりにひどい事例」ばかりだと指摘。その上で、「産科医療補償制度や産科医療全体が信頼されるか否かは、あまりにひどい事例にどう対処するかに尽きると思う」と述べた。

「再発防止へ原因分析を」 東京で産科医療補償制度シンポ(2010年4月11日日本経済新聞)

 出産で赤ちゃんが重度の脳性まひになった際にミスがなくても補償金を受けられる「産科医療補償制度」のあり方を考えるシンポジウムが10 日、東京都内で開催された。同制度は昨年1月開始で、補償金の支払い例が出ている。制度導入で原因分析がおろそかになるとの懸念もあっただけに、産科医や弁護士から「再発防止に役立つ事故分析が不可欠」との声が相次いだ。

 シンポジウムは患者団体「陣痛促進剤による被害を考える会」(出元明美代表)が主催、約70人が参加。

 同制度はほぼすべての出産施設が加入、補償金は総額3千万円。運営する日本医療機能評価機構(東京)が昨年から補償金支給を始めるとともに原因分析を実施、2例について報告書の要約版を公表している。

 同制度の原因分析委員の隈本邦彦・江戸川大学教授は「委員会として、報告書では医学的評価で『脳性まひを防げた可能性が高い』などと書かないことになってしまった」と報告。同教授は議論の過程で反対しており、「回避できた可能性を言及しないで再発防止につながるのか」と疑問を投げかけた。

 事故原因の分析をしている愛育病院(東京)の加部一彦医師も「医療者の責任追及を避けたいとの思いが強く出る部分もあるが、事故を教訓として生かせる報告書が必要」と発言。産科関連の訴訟で鑑定書を多数作成している我妻尭医師も「脳性まひの原因は『断定できない』とする医療機関が多く、分析が十分ではない」と指摘。英米の産科医療体制に比べ、「日本では人員や設備が不十分な施設でもリスクの高い出産が行われている」という。

 過去の産科訴訟を分析した松井菜採弁護士は「医学的な原因だけでなく、体制を含めた検討が必要。原因分析に患者側もきちんと疑問を伝え、よりよい制度に育てるべきだ」と求めた。

いきなり監視とはすごいですねとしか言いようがない話ですけれども、記事のタイトルを見ても分かる通り、この産科医療補償制度なるものはこの方たちにとってはあくまで被害者の立場から捉えるべき制度であって、大野も大淀も「あまりにひどい事例」ということになっているという現実を、良い悪いは別として医療関係者はまず認識しておかなければならないでしょうね。
制度の出発点として色々と議論が賑やかでしたけれども、全国から相次いだ現場医療関係者からの見解というものはおおよそ的外れであったということが改めて浮き彫りになった形ですけれども、当然ながらネット上においても一言なしとはいかない様子です。
しかし面白いのはこういうものに顔を出してきて自称医療の専門家としてコメントしている方々がまた見るからにピント外れなことを言っている場合が多いのですけれども、なるほどその実態を見てみれば納得と言いますか、こういう人間を担ぎださずにはいられない方々の苦労というものが察せられるところではありますよね(苦笑)。

819 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/04/11(日) 12:05:31 ID:pWPjXkzqP

>>809

南京大虐殺や従軍慰安婦と同じやり方ですなあ
小児麻痺が分娩時の事故によって生じるなんて証拠はいったいどこに
あるんでしょうか

825 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/04/11(日) 18:53:02 ID:6tR38FZrO

>>809の我妻って何者?
臨床してるの?

826 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/04/11(日) 19:02:23 ID:v4YR1L3/0

>>825
http://www3.ocn.ne.jp/~mmic/doctor.htm#003

827 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/04/11(日) 21:08:19 ID:6tR38FZrO

>>826
サンクス
今年80歳ねw

しかし我妻氏も医療訴訟鑑定のプロフェッショナルを自認していらっしゃるようですけれども、それはさすがに昭和一桁世代に今の時代の医療鑑定をさせる方もさせる方だろうし、逆にこういう鑑定人ばかりが法廷に登場してくるという今の医療訴訟制度とは何なのかと改めて考えさせられる話ではありますよね。

我妻堯さん
1930年、東京生まれ。55年、東京大学医学部医学科卒業。60年、同大学大学院生物系研究科終了。文部教官助手。62年、英国文化振興会給費留学生としてロンドン大学留学。Hammersmith Hospitalにて妊娠中毒症の研究に従事。64年、米国留学。JohnsHopkins大学産婦人科にて子宮収縮の研究に従事。66年帰国後文部教官助手。68年、日本総合愛育研究所愛育病院産婦人科部長兼母性保健部長。71年、文部教官、東京大学講師、付属病院病棟医長。翌年、東京大学医学部助教授に昇任。76年、国立病院医療センター産婦人科医長。86年、同センター国際医療協力部長に昇任。93年、国立国際医療センター国際医療協力局長に昇任。現在に到る。

「戦後、米国の占領政策でいろいろなことが改革されました。しかし医療制度だけはほとんど手をつけなかったんですね。それによる歪みは大きいと思います。例えば米国と日本とを比較してみた場合、米国の方が公衆衛生的な施策は非常に悪いんですよ。妊婦検診を一度も受けずにお産が始まったら病院に飛び込んできたりします。日本ではまず100パーセント妊婦検診を受けていますね。それなのに日本の方が今でも妊産婦死亡が多いのは、医療制度の違いにあります。」

「非常に不愉快なのは、例えば医師側に不利な鑑定が出た場合、医師側の代理人が私の鑑定人としての資格を疑わせようとして、「今臨床をやってないでしょう」ということを言う。これは法廷作戦なのかもしれないけれど、裁判所が鑑定を依頼してきたということは両方の代理人はそれに同意しているわけです。それをいまさら経歴や臨床経験がどうのこうのと言うことは、鑑定人に対する侮辱です。」

それはともかく、我妻氏も絶賛する米国の産科医療制度がどんなことになっているかと言えば、ちょうど先ごろもこんな記事が出ていますけれども、別にこれは遠い外国の話でも何でもなくて、日本においても帝切率が年毎に右肩上がりで上昇を続けていることは、医療被害の最小化を目指す勝村氏らからすればこれ以上ない素晴らしいことということになるのでしょう。
しかし医療被害の最小化と言うことと、医療による利益の最大化ということは全く異なる概念であるにも関わらず、今や後者は全く無視され前者のみを考えた医療を行わざるをえない状況になりつつあることこそ、勝村氏ら有識者がもたらした最大の功績とも言えるのかも知れませんね。

米国の帝王切開出産、07年は過去最高に(2010年3月24日AFP)

米国立衛生統計センター(NCHS)が23日発表した調査結果によると、米国では2007年に帝王切開によって誕生した新生児が全体の32%、人数にして140万人と過去最高に達していたことが分かった。

 1996年と2007年を比較すると帝王切開による出産の割合は53%増加し、誕生した新生児の数では71%増加した。また2006年の1年間についていえば、米国の病院で最も多く実施された外科手術は帝王切開術だった。

 母親の腹部と子宮を切開し、母胎から胎盤など一緒に胎児を取り出す帝王切開術は広く行われているが、今回の米国の調査ではすべての年齢、人種グループで増えていた。

 ただし高年齢で出産する場合ほど帝王切開が多い点は以前と変わらず、2007年は20歳未満の出産における帝王切開は23%だったのに対し、40~54 歳での出産は48%だった。

 世界保健機構(World Health Organization、WHO)が最適としている帝王切開による出産率は15%だ。

 調査では帝王切開術の増加の理由について晩婚化を挙げている。米メリーランド(Maryland)州ボルティモア(Baltimore)近郊の聖ヨゼフ医療センター(St Joseph's Medical Center)の産婦人科医ジュディス・ロシター(Judith Rossiter)博士は、30代、40代の女性は出産によってキャリアが中断されがちなため、出産を仕事のスケジュールに合わせたがる傾向があるのも一因だと語る。

「母親から『3月24日の午前8時に生まれるようにしてほしい』というような要望が増えた。『前日は大きな会議があるし、6週間後には仕事に復帰しないといけないから』といった具合です」

 また医療的な理由というよりも、何か問題があったときに帝王切開をしなかったことで訴えられるのを恐れる産科医も増えているという。「帝王切開のほうが自然分娩よりも安全だという学術的証拠はないにもかかわらず、裁判になれば弁護士に『帝王切開をしていればこの問題は生じなかったのではないですか』と問い詰められかねません。帝王切開をしてさえいれば、その論法を使われずにすみますから」

帝切自体の安全性は元より帝切によって脳性麻痺の発症率が下がるというエヴィデンスは未だないはずですが、それでも裁判所から「問題が生じなかった可能性がある」なんてことを言われれば手を出さざるをえないという話で、別にこんなことは今どき産科方面に限った話でも何でもありませんよね。
世の中何事も正しいことばかりではないというのは当然のことではありますけれども、最近気になるのは先日も紹介した日医の生命倫理懇談会などにも象徴されるように、明らかに今世の中で何が起こっているのかも理解出来ていないような現場感覚から遠い方々がいて、現場の人間の当たり前の感覚を反映した議論をも圧殺しようとするかのような動きが見られるということです。
例えば金沢大の野村英樹氏などがこの日医の報告書を解説して「医師全体に対する信頼を損なわないために」日医の強力なリーダーシップを期待したい、なんてことを書いていますけれども、そんな話はふた昔も前の白い巨塔(笑)時代に言うべき話であって、今社会問題化している医療崩壊なる現象が何かと言えば、国民に対する医療従事者の信頼が低下しているということに尽きるわけでしょう。

プロとしての経験からも疫学的なエビデンスからもこれが最善だろうという道がある、しかし相手が信用できないからと利益最大化ではなくリスク最小化を指標にして方法論を選択する、今の時代には別に医療に限ったことではない話ですけれども、とりわけ一生に一度の選択を迫られる医療だからこそそれが大問題になっているわけで、赤の他人に体を預ける患者側こそ本来もっと必死になって最善をこそ求めて当然なんですよ。
毎年数千人も交通事故死者が出るからと自動車を全廃するとか、全ての自動車が時速5km以上は出ないようにすれば事故死者数は限りなく最小化するかも知れませんが、利便性低下などという以前に流通は崩壊しその日の食べ物にも困るような人々が全国各地で続出するだろうし、そうなることが素人目にも明らかだからこそ誰もがこれ以上ないほど確実な安全対策を取らないわけですよね。
医療を始め専門性の高い分野であっても同じように、ちょっと見には判りにくいけれどもちゃんとリスクと利益のより良いバランス点というものが存在しているはずで、サービスの利用者側こそ現場からの声にしっかりと耳を傾け、そこのところを追求していかなければ結局自分が損をするわけです。
そしてそれは世界に冠たる日本の大マスコミ(苦笑)や占領下の医学教育を受けたような方々の御高説を拝聴しているだけで理解できるものでもないし、しばしば耳に痛い言葉にも真摯に向き合う必要があるということですよね。

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