« 何でも昔どおりが一番いいと言うわけでもなく お産の話題に事寄せての雑感 | トップページ | 今日のぐり:「カフェレストラン アンジュール」 »

2010年4月28日 (水)

国が進める医療立国政策 その先に見えてくるものは?

ちょうど世間では第二弾の仕分け作業と言うことで医療の世界もなかなか面白い話も出てきているようですが、何にしろ医療というものも経営的な視点を全くなしでやっていられる時代ではないと言うことではあるのでしょうね。
そんな中で先日こういう記事が出ていましたわけですが、一般紙にも出たくらいですから結構大きな関心を呼んでいるということなんだと思いますが、面白いことにお隣韓国の方でより大きく取り上げられているようですね。

日本の高度医療で成長戦略 外国人患者に医療ビザ創設へ(2010年4月26日朝日新聞)

 鳩山内閣は26日、治療や検査を目的に日本に来る外国人患者が滞在しやすいようにするため、「医療滞在ビザ(査証)」の創設を検討することを明らかにした。6月にまとめる新成長戦略に盛り込む方針。外国人患者が病院を選ぶための基準となる認証制度の新設も今後、検討する。

 内閣府の津村啓介政務官によると、医療滞在ビザの具体的な発給について、(1)短期ビザの特定活動の目的に「医療」を追加(2)来日後の期間延長手続きを簡素化、治療中の本人の代理人も申請できるようにする(3)現行の短期滞在ビザの期間を弾力化して延長する、なども協議するという。従来の短期滞在ビザは、期間が短いなどの問題が指摘されていた。

 厚生労働省も、世界的に評価されている高度先進医療や高度な医療機器を使った検査などで外国人患者の需要があるとして、受け入れを促す仕組みの検討を進める考え。医療ビザの創設をにらみ、外国人患者に対応できる病院の認証制度や、海外の医療保険を国内でも利用できる仕組みを成長戦略に盛り込むよう要望するという。

日本、海外の富裕層患者を誘致へ(2010年4月26日中央日報)

   日本政府が中国など外国の富裕層患者を誘致するため、医療ビザの新設を検討し始めたと、日本経済新聞が25日報じた。医療サービス産業の育成に積極的な韓国やインドと競争するためだ。

  長妻昭厚生労働相は医療ビザの新設を6月に発表される政府の「新成長戦略」に、厚生労働分野の核心政策として打ち出すことにした。近いうちに法務省や外務省など関係省庁と協議に入る予定だ。

  報道によると、医療ビザを受けて日本に入国した外国人患者は、医療機関の証明書さえあれば自由に滞留期間を延ばせる。手術後の経過をチェックするために再入国する場合の手続きも簡素化される。外国人が安心して日本の医療機関を選択できるように、国が医療機関の医療サービス水準を保証する認証制度も準備する計画だ。

  これは、高い医療レベルが検証され、通訳・翻訳者を確保するなど、外国人患者を受け入れる態勢を整えた病院を「外国人受け入れ医療機関」(仮称)として認める制度。観光庁などと連係し、医療に関する専門知識を備えた通訳・翻訳者の養成も検討中だ。

  現行の短期滞在ビザでは最大90日まで日本滞在が認められる。検診の結果、長期入院が必要なら、滞在期間の延長を申請しなければならない。病気によっては延長が難しいケースも多い。

  日本政府は日本の病院が磁気共鳴画像装置(MRI)など医療装備面では世界最高レベルのインフラを備えていると考えている。特に内視鏡手術など先端医療技術を利用した治療や健康診断を希望する外国人患者を誘致できると期待している。

  政府省庁は外国人患者の誘致に向けて共同で政策を検討している。経済産業省は最近、「国際メディカルツーリズム調査事業報告書」をまとめた。報告書は地理的に日本と近いロシア・中国市場を狙った国レベルの医療広報活動を提案した。▽潜在顧客層に対する直接広報▽現地メディアの活用▽海外医療機関との交流提携関係の構築--などだ。

  経済産業省は今年、シンガポール・タイ・中国・ロシアでアンケート調査を実施した。中国とロシアではそれぞれ「平均的な医療サービス水準は日本が世界最高」「モスクワ・韓国などの医療サービスと比較した場合、日本は競争力がある」という肯定的な声が多かった

  観光庁は先月30日、厚生労働省・経済産業省と共同でメディカルツーリズム政策推進のため「観光連帯コンソーシアム」を構成した。外国人患者の入国・誘致環境などの業務は観光庁が、診断書の翻訳・通訳を担当する「医療言語人材」の育成は経済産業省が、医療機関の質的向上は厚生労働省が担当する具体的な計画案をまとめた。健康診断・治療・美容など分野別に観光と連係するパッケージも研究することにした。

同じく韓国紙の朝鮮日報によれば、今回の医療ビザ制度導入の狙いは「中国の富裕層患者を獲得」するためであって、「現在、こうした患者は大半が韓国やインドに向かっている」ものを日本に呼びこもうと言う意図があるとしていますから、それは確かに韓国からすれば商売敵ということになりかねない話でしょう。
ちょうど先日は観光庁から民間旅行会社までも巻き込んで医療ツーリズム推進の動きがあるということをお伝えしたところですけれども、実際にこうして国をあげて医療で外国人顧客を呼びこもうという動きが本格化してきたということですから、実際どれくらいの経済効果があって実施面での問題はどうなのかと興味が出るところですよね。
ちょうど朝日新聞でまさにそれという記事を取り上げていますから、こちらから「医療観光」の実態についてみてみることにしましょう。

医療観光 受け入れ着々 外国人患者に高水準アピール(2010年4月26日朝日新聞)

 このところ「医療観光」という言葉をよく耳にします。治療や健康診断のため、外国に出かけることです。海外では、医療費の安さや満足できる技術を求め、患者が抵抗感なく国境を越えるようになっています。日本でも、高水準の医療を売り物に外国人を誘致する取り組みが始まっています。

■がん手術、依頼はメール

 「具合は良さそうですね」。今月中旬、東京都江東区の癌(がん)研有明病院の診察室で、比企直樹医師が米ロサンゼルスから来た女性患者(59)に英語で語りかけた。女性は2年前、同病院でおなかを大きく切らずに済む早期胃がんの腹腔(ふくくう)鏡下手術を受けた。この日は半年に1度の検診の日だった。

 がんと分かった後、女性は体への負担が少ない手術方法を探した。インターネットで見つけた論文で比企医師を知り、メールで手術を依頼した。これまでの数度の来日で新宿、原宿を見て回り、伊勢丹で買い物をした。鎌倉も訪れたという。今回は同行した息子(36)も胃がんの検診を受けた。

 150万円程度とみられる手術代は全額自費。毎回の検診時の渡航費用もかかる。だが、女性は「比企医師や看護師たちの対応もすごくいい。術後の経過も順調で、非常に満足だ」と話す。

 有明病院では同じような患者が増えている。「医療観光」の患者は2008年度が9人だったのが、09年度には22人に。患者の国際化に対応するため、昨年11月に院内に「国際医療チーム」を立ち上げ、月1回の会合を開いている。外国人患者の受け入れや治療費支払いに関する基準作りなどにあたっている。

 千葉県鴨川市の「亀田メディカルセンター」でも、海外からの患者が増加し、昨年は約50人にのぼった。海外からの問い合わせのメールは、ほぼ毎日5、6通届く。

 同センターは昨年8月に日本で初めて、国際病院評価機構(JCI)の認証を取得した。JCI認証は医療機関の国際的な信頼度を担保する指標の一つで、外国人の患者や国外の保険会社が病院を選ぶ際の目安になる。

 現在、日本の看護師資格の取得を目指す4人のフィリピン人が働いている。今夏までには、中国人で既に資格取得済みの看護師を複数雇う予定だ。将来は13階建ての入院病棟のワンフロアを「外国人専用」とする構想もある。

 亀田隆明理事長は「他病院のJCI取得にも協力していきたい。医療の国際化は、結果として医療レベルの引き上げになり、日本の国民にも喜ばれるはずだ」と語る。

■通訳・ツアー業界動く

 「医療観光」の関連ビジネスも盛り上がりつつある。

 大阪市北区にある通訳者・翻訳者養成学校「インタースクール」大阪校では21日、「医療通訳コース」の年間講座が始まった。生徒たちは「触診」「視診」などの医学用語の英訳を学ぶ。生徒の大曽根知美さん(37)は「きちんと医学的知識を持った通訳ができるようになりたい」と話す。

 昨年から、大阪や東京など全国5校で本格的な医療通訳の講座を始め、約80人が受講した。今春からは中国語コースも設けた。

旅行業界も動く。日本旅行は昨年4月、中国の富裕層向けに、全身を一度で診る陽電子放射断層撮影(PET)検診ツアーの販売を始めた。観光とセットで費用は100万円を超すが、今年2月末までに43人が参加した。藤田観光も今春からPET検診ツアーの募集を始めた。最大手のJTBも「医療観光」を専門に手がける部署を設立した。

 政府も後押しする。経済産業省は09年度まで、医療通訳や入国制度で問題がないか探る実証試験として、中国などから24人を招き、健康診断を受けてもらった。今後、成果を生かし、改善に役立てる方針だ。観光庁は6月、上海で開かれる旅行博覧会(ALTM)で、医療観光のブースを設ける予定だ。関係者たちは10年を「医療観光元年」と位置付ける。

 ただ、地方を中心に医師不足による「医療崩壊」が指摘されている中、海外の富裕層患者を優先することで、国内医療にしわ寄せが行くことを心配する声もある。

 「医療観光」に関する著書がある医師の真野俊樹・多摩大学教授は「現状では外国人患者が治療を求めて大挙押しかけるとは考えにくい」としながらも、「民間病院を中心にどこが担っていくかの選別と整理はきちんとすべきだ」と指摘する。(高野真吾)

    ◇

 〈医療観光(メディカルツーリズム)〉 治療目的で外国に行き、滞在先で観光もする。医療といっても、がんや心臓手術などの高度医療から美容整形、健康診断まで幅広い。外国人患者の受け入れ数が世界で最も多いのはタイで、年間約140万人(2008年)。医療観光による年間収入は約1920億円に上る。政府の後押しと治療費の安さが理由だ。米民間会社の推計では、10年の医療観光の世界市場は1千億ドル(約9兆3千億円)規模とされる。

最近では中国などの富裕層が非常に数も増えてきていると言いますから、日本などアジア諸国としてはこのあたりでパイの奪い合いを演じるということになるのかと思いますが、すでに医療通訳の養成も始まっているというのですから本格的に経済活動として始動しているということですよね。
話だけを聞いていると国も結構本気でやろうとしているように見えますが、実際どれほど来るのかということもさることながら、商業的に持続させると言うことになれば今までのように質の追求だけでなくコストと利益との兼ね合いもあるでしょうから、サービス内容と価格設定などの判断も今後の成否の分かれ目になるんでしょうね。
ただパイが大きくならなければ産業として成立しない(最悪受講料だけ取られたという無職有資格者が街にあふれるということにもなりかねませんが)一方で、多くなるようであれば記事中にもあるようにただでさえ不足している国内医療リソースを食いつぶすということになりかねませんが、ものは考えようで先日も話題になった外国人医師導入論と絡めてみるという話もありだと思います。

例えば中国人患者の診療に中国人医師を雇うとなれば、中国からの顧客とすればわざわざアキバまで来てみたら売ってるものはmade in Chinaばかりだった、みたいながっかり感もあるかも知れませんが、人間ドックなどであればともかく高度医療となれば医者数人でチームを組むのが当たり前ですから、チームに同国人医師の一人でも入っている方がお互いいろいろと安心感も出てくるという考え方もあるでしょう。
医者に限らず専門職同士の会話というものは大体がテクニカルターム中心で、言語学的な意味での正確性などと難しいことを言わずとも概ね通じてしまうところがありますから、あらかじめ施設としての医療コンセプトさえチーム内でしっかり周知徹底を図っておけば、患者への細かい説明などはnativeのスタッフに任せた方がむしろ間違いは減るかも知れません。
そういう時代になりますと亀田のような規模も大きく資本力もある施設にますます有利になりそうですが、今後の経済成長を牽引する一大産業として考えれば今までの個人経営的小資本主体から大資本主体へと移行していくのも当然でしょうし、国庫負担像に神経を尖らせる財務省や医療リソース集約化を持論とする厚労省にしても、敢えてそれを止めるという理由もないわけですよね。

しかしこういう搦手からの保険外医療の拡大路線といい、最近政府のやり方がどうも一昔前のそれと比べて妙に合理的でスマートな上に、一見無関係のようでいて結果として国策推進に貢献しそうなおいしい話が多い気がするのですが、厚労省外からの口出しが増えているということで今までにないブレインがついているのでしょうかね?
特定看護師制度なども医師会が反対論をぶっていたことなど眼虫にないようにあっさり実験的に施行してみようと話がまとまりましたが、特定の対象に対する限定的な制度ということでまず実績を積み重ねていくという手法で、最終的には実績を元に抜本的な制度改変を目指してくるということなのでしょうか。
今までにない知恵の出処から今までにないアイデアが出てくるということになれば、これは今後思っても見ない医療の変化も起きてくるのかも知れませんが、何しろあのアメリカで皆保険制度が実現するような時代ですから、どんなことが起こっても不思議ではないというつもりで構えていた方がいいのでしょうね。

|

« 何でも昔どおりが一番いいと言うわけでもなく お産の話題に事寄せての雑感 | トップページ | 今日のぐり:「カフェレストラン アンジュール」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/48202970

この記事へのトラックバック一覧です: 国が進める医療立国政策 その先に見えてくるものは?:

« 何でも昔どおりが一番いいと言うわけでもなく お産の話題に事寄せての雑感 | トップページ | 今日のぐり:「カフェレストラン アンジュール」 »