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2010年3月15日 (月)

診療報酬改訂 厚労省が語るその内容とは

各地で来年度改訂の説明会が開かれている真っ最中というこの時期、実際に話を聞いてみての口コミ情報があちこちから出ているところだと思います。
今回の改訂作業の大きな特徴として、まさにこれからという時期に政権交代が起こった、そして人事の上でも時間的にも今までにない環境の中で行われたものであったわけですが、当然ながら細部に色々と突っ込みどころはあろうと思われる作業を一応の形としてまとめ上げていく上で、今まで以上に厚労省官僚の関与もあったのではないかと推測できるところですよね。
そんな中で、最大の当事者とも言える厚労省の佐藤敏信医療課長がこの件に関してインタビューに答えている記事がありましたので引用してみますが、これはこれでなかなか面白い示唆に富む内容になっているようにも思えます。

来年度改定、厚労省・佐藤医療課長に聞く(2010年3月12日CBニュース)より抜粋

【第100回】佐藤敏信さん(厚生労働省保険局医療課長)

  3月5日に官報告示された来年度の診療報酬改定。政権交代に伴い、昨年秋の中央社会保険医療協議会(中医協)の人事が難航し、9月末から1か月間、改定をめぐる協議は事実上ストップした。本格的な議論に入った年明け以降、中医協は毎回5時間以上に及ぶ長丁場となり、厚生労働省側は連日、資料作成などの対応に追われた。事務局で中心的な役割を担った保険局医療課の佐藤敏信課長は、「とにかく大変だった」と急ピッチで進んだ半年間の議論を振り返る。佐藤課長に、来年度改定と今後の中医協の在り方について聞いた。(敦賀陽平)

 ―来年度の改定では、入院と外来の財源枠があらかじめ示されましたが、財政中立でやらざるを得なかったため、これが議論を阻害したとの見方もあります。

 官邸主導と言うのか分かりませんが、そういうふうに物事が決まるとなると、役所はそれに合わせ、与えられた条件の中でやっていくしかありません。枠が決まったから、決まってないからとか、そんなことは言っていられないというのが正直なところですね。そんなことを言い出したら、前回の改定では診療所を事実上マイナスにせざるを得なかったし、病院に回せる財源も少なかった。それを考えれば、プラス改定なりの多少の制約が付いたのではないでしょうか。

―入院基本料については、病院団体が要望している底上げには至りませんでした。

 入院分、4400億円の財源枠の中でそれをやると、他の部分に財源を回せなくなってしまうので、やむを得なかった面もあります。また、すべての病院が等しく素晴らしい医療をやっているわけではありません。仮に入院基本料の底上げですべてが解決するのであれば、まさに入院基本料を上げて、それで終わりなんでしょうけれど、現状では必ずしもそうでないでしょう。患者さんのニーズや医療関係者の要望に柔軟に応じることができない、機動的な経営のできていない病院があるのも事実だと思います。例えば、しばしば勤務医の過重労働や、その労働の質と量の割に低い給与が話題になりますが、診療報酬に給与体系を年功序列にすべしとは書いてありませんし、また労働に見合う手当を出してはいけないとも書いてないのですが、多くの公的病院では旧態依然とした処遇となっているようです。
 中医協の議論の中でも、病院が自身の考え方に沿って、機動的、弾力的、柔軟な経営をするので、入院基本料を一気に引き上げてほしいという声があったように思います。
 なお、14日以内の入院早期の加算については、引き上げを行いましたので、これは評価していただきたいと思いますね。

まずここまでは総論ですけれども、ここで佐藤課長の言及している医師の待遇問題について、厚労省の立場としては「それは各病院が勝手に決めていること」という基本認識となっていることが判ります。
逆に言えば診療報酬を幾らか引き上げたところで勤務医の待遇改善に直結するわけでもないことを、当の厚労省自体も認めているとも受け取れる話ではありますけれども、少なくともここで言えることは厚労省としては全ての医師なり病院なりについて全く同列に語るつもりはない、それぞれの働き具合に応じて優遇冷遇の差をつけるのが当然であるという認識が示されているということでしょうね。
このあたりは医療系諸団体が少なくとも表向きは全ての医師、医療機関を優遇すべきであると言っている、少なくとも優遇するかしないかの差はつけても冷遇することは認めないと主張している点とは好対照ではないかと思いますが、財源総枠が限定されているという前提条件を絶対視するならば、「役所はそれに合わせ、与えられた条件の中でやっていくしか」ないという認識ではあるのでしょう。
いろいろともめたところもあった診療報酬の細部に関する言及もありますが、ここでも目立っているキーワードは「メリハリを付ける」「頑張ったところが上がり、そうでないところは下がる」という、「競争の時代」ということを強調している点にあるように思えますね。

■明細書発行、「いろんな方法があっていい」

―療養病棟入院基本料の点数が、看護配置と重症度に応じて2段階になります。

 複雑になったように見えますが、従来の仕組みを明確にしただけとも言えます。具体的には、医療区分2、3が8割以上の場合は、今でも看護職員および看護補助者の配置を「20対1」にする必要があるので、そういう意味では、それを点数にしただけです。つまり、メリハリを付けたということです。

―DPC では、来年度の改定で新たな機能評価係数が25%導入され、現在の調整係数は、おおむね4回の改定を経て廃止されることが決まりましたが、今後の方向性についてどのようにお考えですか。

 本当の意味で今後、DPCのよさが発揮されると思います。別の言い方をすると、競争の時代になる。来年度の改定は、その第一歩になるでしょうね。
 病院の先生方は、今より下がるとご不満かもしれませんが、頑張ったところが上がり、そうでないところは下がるというのが、理想の姿ではないでしょうか。国民の皆さんが期待されているのも、そういうことなんじゃないでしょうか。ただ単に、どの病院も収入が増えて終わりという話ではないと思います。

―来年度から、診療報酬明細書(レセプト)をオンライン請求している医療機関のレセプト並み明細書(明細書)の無料発行が原則義務化されますが、現在、多くの医療機関がこの対応に苦慮しています。これについて、どのような運用を想定していますか。例えば、頻繁に来院する外来患者に対しては、毎回ではなく月1回の発行も可能なのでしょうか。

 原則無料で発行ということです。もちろん、希望しない患者さんに無理にお渡しいただく必要はありません。渡し方やその頻度も含めて患者さんの了解が得られるのであれば、個々の医療機関でいろんな方法があっていいと思います。
 なお、現在お使いのレセコン(レセプトコンピューター)が、明細書の即時、自動発行などに対応していない場合や、自動会計機が対応していない場合には、猶予が設けられています。例えば、次の機器更新時期やリース契約の更新の時期などに、対応されていればいいのではないでしょうか。

まあ競争ということはよろしいんでしょうが、競争するというのであれば当然競争に破れて消え去っていく病院が出ることを制度を決めた厚労省から国民にちゃんと説明と同意を取っておいていただくのが当然ですし、そもそも全て公定価格で頑張ろうがプラスの上限も設定されている中で何の競争だという声もあるでしょう。
一方ここで注目すべきは基本的に厚労省としては各病院がそれぞれ違った方向性で動くことを認めている(推奨している?)ということだと思うのですが、要するに金は出すつもりはないけれども裏技を勝手に開発してくれる分には勝手にどうぞというスタンスなのでしょうか。
制度設計をした厚労省の方針はそれでいいとして、問題は実際に金を支払う保険者の側がそうした病院の自由を認めるかどうかということであって、各施設が創意工夫して頑張った結果「こんな勝手は認められない!」と後でばっさり査定されようが、厚労省が保険者に指導するなり翻意を促すなりなんてことは全く考えられないという点では「絵に描いた餅」というしかない話ですよね。

このあたりは現場から遠い厚労省官僚の限界(あるいは、確信犯でしょうか?)という見方も出来ることなのかも知れませんが、厚労省側としても全く現場の実情を把握せずにいたのは何かとやりにくいという自覚は昨今出ているらしいことは、このところ言葉の端々から感じられるところではありますよね。
最近では例の現場の実態データ収集の話があって、超勤簿を事務が勝手に書き換えたりしている医療現場から実際どの程度実態を反映したデータが出てくるのかとか色々と言われているのも確かな一方で、医療側は定性的な話ばかりで結局定量的な話が出来ていないじゃないかという批判は、以前にも東京都副知事の猪瀬直樹氏などからも提出されていたところです。
本来は「我々はこんなに苦労しているんだ!」と平素から熱弁を振るう日医ら医療系諸団体こそ率先してこういうデータを出した上で、これを改めるにはどこに幾らと国民が納得できる見積もりを出してくるのが筋なんだろうと思いますが、厚労省官僚に言われるまでもなく「それじゃどこに幾ら出せば何がどう変わるんですか?」と問われて口篭らざるをえないようでは説得力の欠如を言われても仕方がないですよね。

■部門別収支のデータ活用、「やらなければならない」

― 「医療機関のコスト調査分科会」が試行的に行った医療機関の部門別収支に関する調査について、来年度の改定でのデータの活用は見送られました。

 結論から言えば、病院の科学的、合理的な運営・経営はまだまだ先が長いということでしょうね。病院の経営者の方にお会いすると、「救急部門が赤字です」とか「小児科部門が赤字です」とかおっしゃるんですが、「では、診療報酬項目のどの部分がもう少し上がると、その部門の経営が改善されると思いますか」と尋ねると、みんなあんまりはっきりとはおっしゃらないんですね。つまり、「どうも赤字らしい」「赤字らしいけど、正確な数字は持っていない」というのが本音のようですね。
 中医協の議論を実のあるものにするためにも、部門別収支計算は今後ますます重要になっていくと思います。また、部門別収支計算そのものではありませんが、外保連(外科系学会社会保険委員会連合)のような取り組みはすごく重要だと思います。外科系の、それも技術という領域に限定されるとはいえ、ああいう形で必要に応じてタイムスタディーをされて、人手や材料費のような標準的な資源投入量を計算して、コストを出されたということ。他の分野や領域でも参考になるのではないでしょうか。

―2年後の報酬改定で活用する可能性はありますか。

 それは難しいと思います。今回、どこがネックになっているか調べたんですが、「医師の勤務実態の把握」との回答が多かったんです。つまり、どうも病院側が医師の勤務実態を定量的に把握できていないようなんですね。もちろん定量的に正確に把握すると、それはそれで労働基準法との関係から問題になるのでしょうが。それにしてもデータが取れない、取れないから過重労働の実態や、給与や手当のコストが正確に把握できないということのようなんです。
 ただ、難しいけれど、やらなければならないでしょうね。病院のIT化が進み、医師やコメディカルの勤務実態がリアルタイムで、疑似リアルタイムでも構いませんが、そういう感じで把握できるようになれば、意外にすんなりいくかもしれません。

いやしかし「定量的に正確に把握すると、それはそれで労働基準法との関係から問題になる」は良かったですけれども(苦笑)、そこまで言うなら労働関係を所轄する省庁でもある厚労省の役人として黙って見過ごしているのも職務怠慢というものでしょう(笑)。
何にしろ今後も色々と難しい話が続くだろうというのは佐藤課長ならずとも誰しも感じているところでしょうが、実際問題として現場が気になるのは明日からの医療がどう変わるのかという切実な問題の方ですよね。

その点で非常に気になるのが公式文書に記された文言よりも、むしろ実際の運用に大きく関わってくるだろう役人による文言の解釈の方なんですが、この点で各地の説明会に参加した方々から幾つか気になる話が出てきています。
例えば先日以来色々と議論のあった地域医療貢献加算の件ですけれども、結局「24時間対応」という言葉をどう解釈するべきかと訊ねてみた方々は少なからずいたということなんですが、このコメントが本当だとすればどうやら想像以上に斜め上な話になりそうですよね(苦笑)。

822 名前:51 ◆uDqqjmAuEI [] 投稿日:2010/03/12(金) 22:44:22 ID:LbxEF7560
今度の説明会、とりえあず抗政局の役人に聞こうと思っています。
地域なんとか加算とっていた場合、ウンコしてるときに電話かかってきたらどうしたらいいんですか?って。
おしりを拭かずにトイレからでてでも電話を取らないといけないのか?
あるいは、ウンコしたい状況で電話かかってきたときは、ウンコをもらしててでも出ないといけないのか?
開業医は常におまるの上に座って電話番をしないといけないのか?
いろいろ疑義があるから聞こうと思っています。

826 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/03/13(土) 13:36:05 ID:4QCKi4580
>>822
51先生へ。
すでにほぼ、同じ内容のことを訊いております。
回答「携帯電話に転送するようにして下さい。そして携帯電話を常に肌身離さず、
入浴中でも出られるように防水タイプにしておくと良いです」だ、そうな。w
ちなみに少子化対策として子作りの最中でも、「電話に出ないと言うのは認められません
だ、そうです。w

832 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/03/13(土) 20:34:05 ID:VzJ6s7ph0
>>826
地下鉄とか場所によって電波届かない場合は?
映画館とか病院とか電源切らなきゃいけない場合は?
他の電話に出ていて出られない場合は?
かけ直すにしても相手が非通知でメッセージも何も残してない場合は?
実はワン切りでかけなおしたらおかしなとこにつながったりしたら?

833 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/03/13(土) 21:48:19 ID:4QCKi4580
>>832
たいてい、似たようなことを訊いているもんですね。

>地下鉄とか場所によって電波届かない場合は?
私「電波が届かない山間の谷で釣りをしていた時は?」と訊きました。
答えは「そのような所に出歩かないようにして下さい

>映画館とか病院とか電源切らなきゃいけない場合は?
私は「飛行機で出張中、機内で電源切っている場合は?」
答え「代理の方に携帯を預けて、何時に飛行場に到着するから、こちらの携帯に
かけるように、と携行している携帯電話の電話番号を教える

>他の電話に出ていて出られない場合は?
これはほとんど同じ内容。
答え「今かかっている電話にちょっと待って貰って、新たにかかってきた
携帯に待って貰うように言う

>かけ直すにしても相手が非通知でメッセージも何も残してない場合は?
私「非通知の相手がすぐ電話を切ってしまった場合は?」
答え「かかってくるのを待って、無礼を詫びる

>実はワン切りでかけなおしたらおかしなとこにつ>ながったりしたら?
済みません。これに類するものは訊いていません。

…ネタですか?と思うような話ですけれども、ネット上での便所の落書きとして話半分だとしても、とりあえず厚労省としては24時間対応という文言をまさしく文字通りに解釈するつもりである、少なくともそういうスタンスであることをこうして公に示したということなんでしょうね。
実際にたまたま何らかの事情で一件だけ電話がつながらなかったことが、即厚労省なり保険者なりへの直接クレームにつながるものでもないでしょうし、一回のクレームで即加算の認定取り消しとなるかと言えば過去の事例から考えてまずはイエローカードからということになるのでしょうが、逆にこうまで厳しいことを公の場で表明してくる厚労省の意図がどこにあるのかですよね。
恐らくこの加算を取るような診療所の先生方は多くが一人でやっているような零細診療所なんだと思いますが(時間内だけで儲かっていればこんなもの誰もやりたくないでしょうしね)、そんな先生方が説明会でこういう話を聞けばまず普通は「うわっ!うちじゃそんなの到底無理だわ…」とすくみあがってしまうだろうということは想像に難くないところでしょう。

厚労省としてはどうぞ加算を取ってください、今まで通りの収入になりますよなんてことを言っていましたけれども、実際にこういう方針を見てみれば「”押すなよ!絶対押すなよ!”は”押せ”と同義」という話を思い出さざるをえない話ではありますよね。
厚労省の方針はそれとして、現場の臨床家としてはきちんと情報収集をしてそうしたお上の方針もちゃんと知った上で、言外の含みに臆することなくどこまで図太くやっていけるかが「競争の時代」に生き残れるかどうかの分かれ目になってくるのでしょう。

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