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2010年3月24日 (水)

医療費が増え続けるという割に、何やらずいぶんと小さな話ばかりですが

あらためて言うまでもありませんが、年度末ということは新年度が間近に迫っているということでもあります。
診療報酬改訂作業の結果がいよいよ4月から実施される段となりましたが、これを受けてあのお方が「勝利宣言」を出していらっしゃるようですね。

病院領収書:治療明細を記載 来月から原則、全施設で(2010年3月24日毎日新聞)

 病院などの医療機関で治療を受けた際に窓口でもらえる領収書が、4月から大幅に充実する。これまで書かれていなかった詳しい検査内容や薬の正式名称と、それぞれの診療報酬の点数が明記されるのだ。こうした医療情報の透明化は、大阪の市民団体や薬害被害者らの長年の運動の成果だ。【野田武】

 健康保険制度に基づく医療は、検査や手術の内容ごとに「診療報酬点数表」が細かく決められている。診療報酬は1点につき10円。医療機関は点数表をもとに患者ごとに医療費を計算。実施した医療行為と投薬量などを明記したレセプト(診療報酬明細書)を作って、健康保険組合へ請求する。うち一部は患者本人(被保険者)が窓口で支払う。だが、そのときにもらえる領収書は「投薬料」「検査料」など項目ごとの診療報酬点数しか分からない。

 これに対し、レセプトはより詳細で、買い物でもらえるレシートのようなもの。レシートには普通、「トマト 1個 90円」というように商品名と個数、値段が並ぶ。同じようにレセプトにも検査・薬品名、診療報酬点数が記載されている

 97年まで旧厚生省は「患者に告知していない病気を知らせてしまう恐れがある」「医師のプライバシーにかかわる情報も含まれる」などを理由に、健保組合や自治体などに対し、レセプトを患者に見せないよう指導していた。97年以降は、請求すれば開示されるようになったが、一般には知られていない。

 今でも請求しても開示されないケースがある。神奈川県内の女性(35)は、治療に疑問を持ち、自宅のある市へ昨年、レセプト開示を請求した。ところが「今後の治療に支障をきたす」と拒否された。女性は市民団体「医療情報の公開・開示を求める市民の会」(事務局・大阪市)へ相談。同会が市と交渉し、今年になって開示された。「すぐ開示されると思ったのに、理不尽な理由で拒否された」と女性は話す。4月からは領収書にレセプト並みの情報が記載され、苦労をしなくても見られるようになる。

 ◇自分の病気、知っておこう--情報開示求めてきた大阪の市民団体

 レセプト開示を求めて長年、活動してきた大阪府立牧野高校(枚方市)の教諭、勝村久司さん(48)は、レセプト並み領収書の病院窓口での無料発行について、「医療の情報開示という点で、レセプトは原点。実現した意味は大きい」と強調する。

 勝村さんは90年、枚方市の枚方市民病院に入院中の妻が陣痛促進剤を投与され、仮死状態で生まれた長女・星子ちゃんを生後9日目に亡くした。市を相手に起こした裁判の証拠とするためレセプトを手に入れようとしたが、プライバシー侵害や目的外使用との理由で開示されなかった。93年、他の薬害被害者たちと旧厚生省へ交渉し、レセプト開示要求を始めた。96年には「市民の会」も設立。その結果、国も97年にレセプト開示へと方針転換した。

こうした活動に注目した連合から05年、診療報酬の改定について審議・答申する厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」の委員に推薦され、就任。請求しなくても窓口でレセプト並み領収書をもらえるよう訴え続けた結果、08年から全国8カ所の国立高度専門医療センターが無料発行するようになった。翌年には国立病院機構の病院にも広がり、今回の原則全医療機関での発行につながった(レセプト請求が電子化されていない一部病院を除く)。

 勝村さんは「自分の病気に関する薬や治療の名称は知っておいた方がいい。領収書を保管しておけば調べる手がかりになる」と助言。さらにこう願っている。「これからは領収書を見て『何でこの治療がこんなに高いの?』と思ったら、ぜひ声を上げてほしい。医療費が普通の人の価値観に合うようになれば、いい医療になっていくと思う」

記事からはなぜ「医療費が普通の人の価値観に合うようになれば、いい医療になっていく」のか全く理解できないのですけれども、いずれにしても病気や薬、治療に関して患者が自ら積極的に学んでいくという姿勢を示すことは、とりわけメタボなどの慢性疾患に厳しいという今の時代だからこそ重要なことだとは思います。
1980年代頃から「スパゲッティシンドローム」だの「薬漬け医療」だの「3時間待ちの3分診療」だのと盛んに医療の質について世間の関心が向いてきたという経緯がありましたが、一方で医療のコストに関しては当事者である医療従事者ですらろくに関心を払ってこなかったという経緯がありました。
言ってみればそんなどんぶり勘定でもやってこれる位には医療機関の側にも余裕があったということなのかも知れませんが、病院の半数が赤字でいつ廃業するか判らないという今の時代にあっては、例え勤務医であってもコスト意識に欠けるようでは話にならないでしょうし、ましてや一国一城の主たる開業医ともなればなおさらですよね。

今回の診療報酬改定ではとりわけその開業医冷遇ということが言われてきたことは、既に一般紙などでも報道されているような周知の事実ですけれども、ようやく各地で説明会が開かれ診療報酬改定の詳細が周知徹底され始めるに及んで、思いがけないようなその実態が漏れ聞こえてくるようになってきたのは以前にも取り上げてきたところです。
ここで非常に面白いと思うのは、以前にも取り上げましたように厚生労働省の担当者である石井安彦保険局医療課長補佐の言によれば診療所への評価は「実質的には引き上げを行っている」のであって、引き下げと「誤解」されている再診料に関しても「ほとんどの診療所が地域医療貢献加算を取ると実質的には上がる」と主張している、その一方で実際に加算をとる診療所はほとんどないと見込んでいるらしいという点です。
何故そういうことが起こるのか、その背景には業界団体による水面下の?根回しが盛んに行われているらしいというのですね。

965 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:39:00 ID:avnV3/z/0

例の3点聞いてきた。厚生労働省は3割以下の医療機関しか
手を挙げないと思っている
との事。まあ、実質7割以上の
診療所は点が下がる事になる。

980 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/03/22(月) 12:04:18 ID:Ps1EBCwB0

青森県保険医協会からの青森県内の会員に対する呼びかけです。
-------------------
2010年3月19日
会員各位
青森県保険医協会
会長 大竹  進

地域医療貢献加算の算定は慎重に!

 前略 今次診療報酬改定において、地域医療貢献加算(3点)が新設されました。3点
は電話の問い合わせがあった時だけ算定するのではなく、通院中の全患者の再診料に
加算されます。したがって、この算定を届け出た医療機関は、過去に受診した人も含
め全患者に24時間365日体制で対応することが求められています

 算定要件としては、緊急時の対応体制や連絡先などを院内に掲示し、診察券に電話
番号を記入するなど文書等で患者に周知する必要があります。
 転送/留守番電話・職員による対応も可能となっていますが、職員は速やかに医師に
伝え「医師自らが速やかに患者さんに連絡をとること」になっています。有床診療所
でも最終的に連絡するのは医師なので、医師は常時携帯電話に縛られることになりま

 即座に対応出来ない場合、特に患者さんが死亡した場合などではトラブルに発展す
る可能性もあります
。規則では「緊急の対応が必要と判断された場合には、外来診療、
往診、他の医療機関との連携又は緊急搬送等の医学的に必要と思われる対応を行うこ
と」になっています。
 もし、対応ができないで救急病院に受診した場合、当直勤務医は地域貢献加算を算
定している開業医について不愉快に感じ、勤務医と開業医の新たな対立を生む
ことに
なるかもしれません。

981 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/03/22(月) 12:04:59 ID:Ps1EBCwB0

 4月からは診療内容のわかる明細書の発行が義務づけられました。全ての明細書に
「地域貢献加算3点」と記入されますので、医師の義務と責任がことさら強調される

とになります。ボランティアで電話対応をしている現在とは全く違う状況が生まれま
す。もしトラブルになった時には、即座に謝罪のマスコミ発表が必要になるでしょう。
患者通報による個別指導の対象になり、自主返還、監査に発展する可能性すらありま
す。
 そもそも「勤務医支援のために,何もしていない開業医にも汗を流させる」という発
想自体が誤りです。特に、各地の小児科開業医も勤務医と一緒に、地域の小児救急を
担っている事実を全く評価していないことに失望せざるを得ません。
 元来、私たち医師は社会的資本としての医療を全うするために、使命感や責任感か
ら時間外対応はもちろん夜間、休日診療、健診・保健事業などに参加しています。そ
れに参加している診療所が算定できることが要件であれば何ら問題はありません。
 しかし、本制度は、どこにいても「24時間応召義務を課す」全く新しいルールとなっ
ています。今後も、条件や内容は通知一つで官僚の思うように変えることができます
 24時間、365日対応することになれば、心身の休まる時はなくなります。ただでさえ
過重労働になっている本県の開業医の状況を勘案すれば、最悪の場合過労死という事
態もあり得ます。医療崩壊に更に拍車をかけ地域医療を大きく後退させることは自明
です。
 今大切なことは30円を得ることではなく、「落とし穴」のようなルールを否定し、
医療崩壊を防ぐ適切な医療政策を政府に求めて行くこと
ではないでしょうか。
 診療所再診料の引き下げに抗議します。厚労省は開業医の貢献を正しく評価するべ
きです。草々

982 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/03/22(月) 12:06:50 ID:Ps1EBCwB0

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考えられるトラブル(個別指導に直結する)

1.対応できない場合
  ・旅行中、学会出席中、飛行機内........連携医師、医療機関が必要
  ・誤って携帯の電源が切れていた
  ・マナーモードで気づかなかった
  ・枕元に携帯電話をおいて寝なかった
  ・夜間睡眠中で気づかなかった
2.医師の飲酒中の対応:
   飲酒中は連携医師、医療機関が必要と考えられます。
3.緊急時の対応にも問題があります
 「緊急の対応が必要と判断された場合には、外来診療、往診、他の医療機関との連
携又は緊急搬送等の医学的に必要と思われる対応を行うこと」となっています。
  ・医師が「救急車を読んでください。」と指示した場合
    向かう先を医師が準備するのか?救急隊に任せるのか?連携先か?
    救急病院が受け入れ不可能の時に「診察の義務」があるか?(応召義務)
  ・精神科救急......ほぼ対応不可能か?
   「これから自殺する」「深夜になっても眠れない」という電話対応は可能か?
  ・患者さんが旅行先等から電話してきた場合はどうするのか?
4.カルテを見ないで診察の問題点
  ・最悪の結果になった時に法的にどのように判断されるのか?
  ・医師賠償責任保険は使えるのか?
5.飲酒患者への電話対応は断れるのか?
6.他人が本人に「なりすまして」個人情報を取得しようとした時は見抜けるか?
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986 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/03/22(月) 16:43:55 ID:1WU7N3gn0

どこの医師会も慎重になっている、と言うよりは、こういう加算で縛られたくないから、みんな取るなよ
って感じの説明が多い
な。

青森県保険医協会の見解については各方面から異論もあるところでしょうが、勤務医対策の財源として開業医の外来報酬を切り下げるという大方針が既に組み込まれている以上、「みんなが申請すれば以前と同じですよ」なんて話があり得ないということは誰にでも判る話ですよね。
今後加算をとる診療所が増えてくるほど個別指導が熱心に入ってくるようになる、さらには「便所に入っていて電話に出られなかった?!けしからん!」と返還を迫られ世間からは吊し上げられるという未来図は目にみえていますから、それくらいなら最初から申請をしないほうが…と自主規制する先生方もさぞや多くなるということでしょう。
もちろん厚労省にしろ財務省にしろ、医者の側から自主的に加算を辞退するということであれば何ら問題はなく「いや制度上は前と同じ報酬はもらえるようにしています」と言えるという理屈です。

最近面白いなと思うのは、医療の世界ではなんだかんだと言いながら同業者の悪口を公の場で言うということは基本的にあまりなかったものが、結構ストレートな批判が出てくるようになってきたなということです。
一つには医療業界がどこもかしこも経営的な面で余裕がなくなってきた時代にあって限られた医療予算を奪い合う競合関係が増え、上記の文書にも見られるような勤務医vs開業医といった対立の構図で語られる局面が多くなってきた、そしてもう一つは先の衆院選での政権交代を受けて政治の側から旗色を鮮明にするように迫られるようになったということもあるでしょう。
先日も公立病院の院長が集う団体である全国自治体病院協議会の会長のコメントなどを眺めておりましたら、まあ日医ら他団体とはよほど折り合いが悪いのだなと苦笑するしかないような話ばかりが並んでいますよね。

会長挨拶(全国自治体病院協議会HP)

【会長通信 Vol22】

 自治医科大学の卒業式に出席してきました。「3千人を超す指導医や多くの職種の方々が卒業生の皆様方と働くことを楽しみに待っています。誰よりも皆さまを待っているのは地域の住民です。貴方達の患者さんになり、テキストブックになってくれます」とエールを贈ってきました。学長や来賓は、全員が地域医療の崩壊と低医療費政策、政権交代に言及しました。教育や医療が、政治つまり政策によって大きく変わるのを体感したからでしょう。
 日本医師会の副会長(栃木県出身)も政権との距離について述べ、式の後の昼食時には、4月の日本医師会長選挙と7月の参議院議員選挙に話題が集中しました。参院選には医師、特に病院医師が数名民主党から出馬します。日本病院団体協議会の代表者会議からも、民間病院を中心とした候補者が推薦されました。彼のマニフェストの下書きを見て驚きました。推薦団体の会長の私見で本人は承知していないとのことですが「公立病院は高い給料で看護師を囲い込む天敵であり医療界から去るべき」とか「非効率で救急もやっていない」とか滅茶苦茶にやられています。すぐに電話をして削ってもらいましたが、そういう本心の方々が多いのは日頃の言動からも自明です。
 先の総選挙で308議席を取った民主党には、多くの医系議員がいます。選挙のマニフェストやインデックスでは、公立病院を中心とした地域の中核病院に財源を投入し、医療崩壊を防ぐと訴えていましたが、郡市医師会など地元医師会や民間病院が選挙を支え、どんどん影響力を強めてきたことは間違いありません。私が個人的に知っている方も、スタンスを両軸に変え始めました。民間病院や診療所も大変だと。
 日本医師会や民間病院が政権に擦り寄っているのを我々自治体病院は、政治活動が禁止されている公務員法の縛りなどで指をくわえて見ているしかないのでしょうか?現役の方は無理でも私はOBですし、本部や顧問を総動員して我々の存在意義を訴え、自治体病院の機能充実と行き過ぎた集約化、民間譲渡などに全力を注いで対応したいと思います。
 先日、局長同行で衆議院議員会館に公立病院医系議員を訪ねました。熱心に我々の話をお聴きいただき、ちょうど当日の夜に医系議員の夕食会があるので伝えるとのこと。めぐり合わせの良さにホッと胸を撫で下ろしました。とにかく、我々も与野党を問わず国会議員の方々に、地域医療の現状と自治体病院の役割を理解していただく努力が必要です。常務理事会のメンバーには、どんな小さな接点でも知り合いの議員名を提出していただくこととしました。会員病院の皆様方にも是非お願いしたいと思っております。

医療業界と言っても別に一枚板でも何でもないわけですし、立場の違いや見解の相違というものがあっても全くおかしくはないわけですが、武見太郎ら日医全盛期の「え?!昔の医者はそんなこともやってたの?!」なんて伝説めいた時代から比べると、失礼ながらずいぶんと器の小さい話ばかりという気がしないでもないですよね(苦笑)。
近頃の世間では価格破壊だといった話が賑やかで、競争原理こそ消費者にとって最大の利益をもたらすという論調が主導的ですから仕方がないところもあるのでしょうが、こういう対立の構図というものは分断統治をしたい側からすると一番おいしい話ではあるとは古今東西変わらぬ真理ですよね。
医療側からの医療行政への働きかけとはすなわち幾ら金を出させるかであって、その手段とは同業者からどれだけ金を奪ってくるかであるという風に医療側に認識させているのだとすれば、行政の側はなかなかうまい具合に医療業界をしつけたものだなと感心するしかないところです。

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