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2010年3月30日 (火)

動き始めた医療の規制緩和 それは医師会に対する踏み絵となるか

朔日ニュースで流れた話ですので既にご存知の方も多いかと思いますが、今回初めて開かれた行政刷新会議の分科会で新たな規制緩和の話が取り上げられました。
ここでもキーワードは「国民目線の改革」ということになるのでしょうが、なかなか面白そうな話が出てきているようですよね。

政府 50項目の規制を検討(2010年3月29日NHK)

政府の行政刷新会議の下に新たに設けられた規制改革に関する分科会の初会合が、29日夜開かれ、保険診療と保険外診療を併用する、いわゆる混合診療の禁止など、およそ50項目の規制について検討を進め、ことし6月に結論を取りまとめることになりました。

鳩山政権は、政治主導で規制改革を進める必要があるとして、平成19年に発足した政府の規制改革会議を廃止し、行政刷新会議の下に新たに分科会を設けました。29日夜開かれた分科会の初会合で、枝野行政刷新担当大臣は「利用者の視点から規制を見直すため、政治主導で立ちふさがる壁を乗り越えていきたい」と述べました。

会合では、環境と医療、農業を重点分野に、利用者の立場から見て、質の高いサービスを妨げていないかどうかや、国の許認可で、行政のむだを生んでいないかどうかなどを基準に、およそ50項目の規制を検討対象とすることを決めました。具体的には、保険診療と保険外診療を併用する、いわゆる混合診療の原則解禁や、太陽光発電などの導入促進に向けた建築規制の見直しなどを検討することにしており、関係者からの聞き取り調査などを行ったうえで、ことし6月に結論を取りまとめることにしています。

こんなところでさりげな~く出ている混合診療の原則解禁という話ですけれども、かねて話だけは何度も出ていながら部分的になんて小さいことは言わずいきなり原則解禁とは、また大きな話が出てきたなという感じでしょうかね。
実は既に昨年末の段階で行政刷新会議では混合診療を医療情報の電子化と並ぶ「緊急課題」として早急に議論を進めるよう言っていた経緯があり、これに例によって日医あたりが反対の論陣を張るというお約束の展開が繰り返されていたところではありました。
今回の分科会に関する各方面のレスポンスもおいおい詳細が報道されてくるものと思いますけれども、まずは今回の初会合についてCBニュースの方ではもう少し医療畑方面に詳しい記事を載せていますから参照してみましょう。

「消費者、患者の観点で規制見直しを」-行政刷新会議分科会が初会合(2010年3月29日CBニュース)

 政府の行政刷新会議(議長=鳩山由紀夫首相)は3月29日、規制・制度改革に関する分科会の初会合を開催した。冒頭にあいさつした枝野幸男行政刷新担当相は「この開催をスタートに、本格的な規制改革にかじを切る」と述べた上で、「消費者であるとか、患者さんであるとか利用者の観点で規制を見直していただきたい」と強調した。分科会は早ければ5月末までに結論をまとめ、行政刷新会議に報告する。分科会は下部組織として、特定分野を検証するワーキンググループ(WG)を設置。医療分野を議論するライフイノベーションWGは4月5日に初会合を開く予定だ。

 同分科会の分科会長には、大塚耕平内閣府副大臣(規制改革担当)が就任。このほか田村謙治内閣府大臣政務官や、ジャーナリスト、税理士、有識者など15人の民間人が参加する。
 初会合では、規制改革会議の検討結果や「国民の声」の集中受け付け期間に寄せられた規制改革提案などを基に事務局が洗い出した、議論のたたき台が示された。それによると、ライフイノベーションWG の検討テーマには、▽保険外併用療養の原則解禁▽一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和▽医行為の範囲の明確化-など13項目が掲げられた。

 分科会終了後の記者会見で大塚分科会長は、3か月間である一定の成果を上げていくことを前提とした上で、4月は担当分野や検討課題に関する情報収集やヒアリングを実施し、5月は改革の方向性を議論、5月末か6月初めに検討結果を行政刷新会議に報告することを目指すとした。
 また大塚分科会長は、「委員でまとまらない場合は、関係者を集め公開の場で『規制仕分け』をする」と述べ、議論の場を「規制仕分け」に移して政治判断する可能性を示した。

しかしまたぞろ公開での吊し上げ…もとい、仕分けですか(苦笑)。
ちなみに他の報道によれば、この分科会のメンバーというのはこんな感じになっているようですが、医療問題を討議する割には医療関係者はまともに含まれていないという点を置くとしても、顔ぶれがいかにも消費者、患者の視点という感じですよねえ(笑)。
ちなみに唯一医療系っぽい肩書で並んでいる黒岩氏と言えば過去に何度か当「ぐり研」でも取り上げさせていただいた通り、医療とは縁もゆかりもない元フジテレビのアナウンサーという徹底ぶりですから、確かに今までにない議論が期待できそうではあります。

大塚耕平(会長) 内閣府副大臣
田村謙治(会長代理)  内閣府政務官
草刈隆郎 日本郵船相談役
相沢光江 弁護士
安念潤司 中大法科大学院教授
大上二三雄 エム・アイ・コンサルティンググループ社長
大畑理恵 税理士
翁百合 日本総研理事
樫谷隆夫 公認会計士
木村修 農業組合法人伊賀の里モクモク手づくりファーム社長理事
黒岩祐治 国際医療福祉大大学院教授
寺田千代乃 関経連副会長
速水亨 速水林業代表
八田達夫 政策研究大学院大学長
仏田利弘 ぶった農産社長
松井道夫 松井証券社長
山崎福寿 上智大教授

冒頭にも登場する枝野行政刷新相に関しては、すでに先日混合診療導入に関して「早急な結論は危険」などと、それは行政刷新相としていささかどうよと思われるような後ろ向きのコメントを出したことが報道されていますけれども、会議の方向性としては基本的に混合診療推進の方向で問題点や障害を洗い出すという方向に進みそうであるのは明らかですよね。
となるとかねて強硬に混合診療導入に反対してきた日医がどういう反応に出てくるのかが注目されるところですけれども、今回の場合彼ら自身も会長選の追い込みでそれどころではないという事情があるということはご存知の通りですよね。

ところでこの日医会長選、今までは自民党支持、現行路線継承をうたう現会長一派と、民主党支持に鞍替えを公言している対抗馬という図式で語られることが定番だったわけで、実際政党との距離感を基準に候補者を統合しようなんて動きもあったくらいなわけです。
そこへ来て政権与党側の動きとしてこうした日医既存路線に真っ向から反対するかのような混合診療解禁の話が出てきたとなると、これは単に支持政党鞍替えに終わらない大きな日医の路線変更への布石ともなってくる可能性がありますよね。

日本医師会会長選で演説会 与党との距離で見解(2010年3月27日47ニュース)

 4月1日投開票の日本医師会(日医)会長選で、立候補届け出締め切り後初めての演説会が27日午後、岡山市であり、候補者が政権与党との距離について見解を示した。

 原中勝征・茨城県医師会長はすでに構築した民主党との関係を強調。「4年間政権を取っているのは確かだ。次の診療報酬改定時に医療費を上げる力があると信じている」とアピールした。

 一方、現職の唐沢祥人会長と森洋一・京都府医師会長は、与野党問わず政策提言する立場を鮮明に。唐沢氏は政界再編の可能性を指摘し、「どのような政権が誕生しようとも、医療政策の方向性を提示することが日医の使命だ」と主張した。

 森氏は「政権に左右されず、国民の声を背景に強く訴えていく。自民党もしっかりした野党になるように、われわれの声を反映させていかなければいけない」と訴えた。

 会長選には、京都府医師会員の金丸昌弘氏も立候補している。

永田町顔負けの権力闘争 日医会長選(2010年3月27日中国新聞)

 政権交代後、初となる日本医師会(日医)の会長選は政治との距離感を焦点に、4月1日の投開票まで1週間を切り、各陣営はラストスパート。「2、3位連合」の動きが表面化するなど、かつての自民党総裁選をほうふつさせる手練手管が繰り出され、「永田町顔負けの権力闘争」(閣僚経験者)に発展している。

 ▽一致したリスト

 「連合うんぬんの話が急に出てきた。誰も予想していなかったが、私が出馬をやめることはない」―。現執行部批判を繰り返し「親民主党」を隠さない原中勝征はらなか・かつゆき・茨城県医師会長(69)は26日、都内で会見し、対峙(たいじ)する唐沢祥人からさわ・よしひと・日医会長(67)、森洋一もり・よういち・京都府医師会長(62)両陣営への不快感をあらわにした。

 その理由は、ただひとつ。26日までに両陣営が公表した副会長候補3人のリストが完全に一致したからだ。

 日医会長選では、同時に定数3の副会長も争われる。従来は、それぞれの会長候補陣営が支持を獲得した各地の医師会幹部などを副会長候補として推薦。会長選で敗れた陣営の副会長候補が降り、勝利した陣営が正副会長を独占してきた。

 日医や地方の医師会、民主、自民両党国会議員ら関係者の話を総合すると、選挙戦は「原中氏優位」で推移。唐沢、森両陣営が異例の行動に出たことで、原中氏に対抗するため、関係者間で取りざたされていた唐沢、森両氏による“合従連衡”が一気に表面化した。

 ▽2、3位連合

 唐沢、森両氏の陣営幹部は「副会長候補は偶然の一致だ」と口をそろえる。しかし、ある地方医師会会長によると、両氏の一本化も水面下で模索され、民主党支持への急旋回は、いずれしっぺ返しを食らいかねないとの認識で一致したという。

 一本化は実現していないが、原中氏周辺は、同氏が会長に当選しても、有権者である代議員の過半数を押さえないと副会長は2、3位連合側が独占する可能性を指摘。「原中の当選を見越し、会長と副会長人事で“ねじれ”をつくる気だ」と神経をとがらせる。

 2、3位連合といえば、鳩山一郎首相の後継を決める1956年の自民党総裁選で、第1回投票で2位の石橋湛山陣営が決選投票で逆転に成功した秘策だ。

 ▽もろ刃の剣

 「私は鳩山先生に申し上げた。『初年度で医療費を下げることがあったら、誰が信じるか』と。マイナスだけはやめてほしいとお願いした」―。27 日、岡山市で開かれた候補者演説会。原中氏は2010年度診療報酬改定の前提となった予算編成を引き合いに出し、鳩山由紀夫首相とのパイプをアピールした。

 しかし、政権への近さはもろ刃の剣にもなる。開業医の間では、今回の診療報酬改定で収入源の一つの再診料が20円引き下げられたことへの不満が根強い

 こうした雰囲気を察してか、原中氏は演説会で「診療所だけ下げるのは絶対に許せないと政務官と大げんかした」と説明。病院勤務医重視の厚生労働省政務三役を批判し、「民主党幹事長室との協議機関設置」など、選挙で開業医票に熱い視線を送る党側との関係強化を強調する。

 一連の「政治とカネ」問題などで、鳩山内閣の支持率は半年で30%台に転落したが、これまで日医が支持してきた自民党も展望が開けたとは言えず、日医が会長選を通じてどのような選択を示すかが注目される。

新聞記事の書き方がまた微妙で、「日医が会長選を通じてどのような選択を示すか」なんて敢えて主語をぼかした言い方にしているところがさすがにうまいなと思うのですけれども、ご存知のように日医会長選というものは代議員なるものによる極めて民主的な(笑)システムで成り立っている制度です。
代議員を選ぶのは各地自治体の医師会に委ねられているという形になっていますけれども、実際に選ばれるのは長年医師会専従でやってきたような暇な爺医ばかりという現実がありますから、それは日医がいくら会員の半数は勤務医だと主張したところで勤務医代議員がわずか数%という現実の前には、全医師ならぬ特定階層の代弁者と言われるのも当然ですよね。
要するに会長選を通じて示される選択などというものは別に日医会員の見解でもなんでもない、ましてや全国で診療に従事している医師たちの総意だなどと曲解されるなんてとんでもないという話で、まさに何やら実態がつかめない「日医」なるものの意志としか言いようが無いということです。

日医と言えば今や医療政策に関する実効的影響力を失って久しいとはずいぶん以前から言われているにも関わらず、マスコミなどによれば未だに「日医が反対したから駄目だった」「日医が同意したから通った」などと、まるきり医療政策のフィクサーのように扱われているのは面白いなと思いますが、あるいは日医自身もそうした虚像を権威付けに有効だと考えている側面もあるのかも知れません。
しかし世間ではすっかり日医=国民利益に反する特権階級の利権団体という悪役像が定着していて、「医師会が反対しているからこれは良いことなんだろう」なんて公然と言われるようになっている時代に、もう少し空気を読むということも求められているんじゃないかとも思うのですけれどもね。
いずれにしても医師会という組織の行動原理が非常に保守的、守旧的であるということは客観的事実として認めざるを得ないわけですが、医療がかくも変革を迫られる時代にあっていつまでも武見時代を懐古しているだけの老人団体として終わるのか、それとも何かしら存在価値のある業界団体として再生するのか、今回の会長選もまた一つの試金石ということにはなりそうですし、そうでなければ意味が無いと思いますね。

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コメント

ついに来ましたか。平成16年の新臨床研修制度以来、全国各地で繰り広げられていた医療崩壊戦争の終焉を意味する「ポツダム宣言」が。

Wikipediaによると、大塚耕平は早大卒、日銀出身。留学経験はないようです。
田村謙治は東大卒、大蔵省出身。米国留学経験があります。
これだけでほぼ結論は見えています。

> 医療問題を討議する割には医療関係者はまともに含まれていないという点を置くとしても、顔ぶれがいかにも消費者、患者の視点という感じですよねえ(笑)。

マクロ経済から医療をどう扱うか、産業としての医療や医療保険をどうしていくかというという視点になるでしょうか。
ただ確実にいえるのは供給<<需要の現段階では価格は確実に上がると言うことです。もちろん強調はしないとは思いますが。

> 分科会終了後の記者会見で大塚分科会長は、3か月間である一定の成果を上げていくことを前提とした上で、4月は担当分野や検討課題に関する情報収集やヒアリングを実施し、5月は改革の方向性を議論、5月末か6月初めに検討結果を行政刷新会議に報告することを目指すとした。
 また大塚分科会長は、「委員でまとまらない場合は、関係者を集め公開の場で『規制仕分け』をする」と述べ、議論の場を「規制仕分け」に移して政治判断する可能性を示した。
> しかしまたぞろ公開での吊し上げ…もとい、仕分けですか(苦笑)。

参院選を考えると、これはかなり練られた日程です。しかも、仕分けの予定も入っています。時期的に第一の戦略目標は4月の日医の会長選で、反民主党の会長が出てくる可能性を計算に入れてのことでしょう。これは日医の献金が自民党へ行くと少々厄介なことになるので、保険をかけたかと。

第二の戦略目標は言うまでもなく、参院選勝利です。これには、仕分けに日医や厚労官僚を相手に徹底的なプロパガンダを行う。ここの仕分けは、自民派の日医会長ならばむしろやりやすい。もしここで日医が混合診療導入に、とにかくどんな経緯でも最終的に同意すれば、後々混合診療の共犯者として批判されることになる。こちらのほうが怖いです。

混合診療の全面導入は普通の診療所にはかなり厳しい。それに一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和、医行為の範囲の明確化→特定看護師の導入と3連コンボで来れば、日医が「はいその通りです。」とはいえるわけがない。政権与党と世論の袋だたきの前に、「ポツダム宣言」受諾を巡って、日医がどうなるか。どうしてもかつての旧陸軍に重なってしまうのですが。

投稿: ya98 | 2010年3月31日 (水) 21時59分

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