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2010年3月 9日 (火)

相変わらず忌避され続ける介護業界 その打開への道は

先日何気ない芸能ニュースの一つとしてこんな記事が出ていましたけれども、御覧になりましたでしょうか。

三原じゅん子が介護事業所を三鷹にオープン(2010年3月2日オリコン)

 女優の三原じゅん子がデイサービス施設を東京・三鷹にオープンさせたことが1日、わかった。三原は自身のブログの2月28日付エントリーでも「明日からスタートする介護事業所のメンバーです」とスタッフ8名の写真を掲載し、「私にとって、これが夢でした」と介護事業の立ち上げを発表。所属事務所によると、三原がオーナーとして運営していくという。

 現在、芸能プロダクション「T-JACK」の代表も務める三原だが、次に手掛けたのは介護事業だった。キッカケは「約15年前、父が倒れ、それからずっと介護する母を見て来ました。そして一昨年、自分が癌(がん)になり介護される側になりました。命が助かった時、本気で介護施設を作ろうと動き出しました」という。

 三原はブログで「今まで好き勝手して生きてきましたから、これからは少しでも人の役に立ちたい!」と決意を述べ、今回、新たな夢の一歩を踏み出したことで「これから、まだまだ2つ3つと事業所を増やして行くつもりです」と意欲十分。さらに「利用者さんやご家族の皆様に喜んで頂ける施設作りにする為、スタッフ一同精一杯努力していく所存であります。皆さんも温かく見守ってくださいね」としている。

著名人がこういうところでスポンサー役をしてくださるというのは結構な話だと思いますけれども、現実問題として真面目にやればやるほど介護業界はあまりうま味もないところだと思いますから、よほど強い意志を持ってやらないことには大変だろうなという気はします。
介護業界の問題に関しては当「ぐり研」でも久しく以前から取り上げてきたところですけれども、何しろこれだけ社会的需要があって将来的にも成長産業として国が音頭をとって力を入れようと言っているにも関わらず、この不景気でも全く人が来ないというくらいにまで不人気な職種というのもそうそうはないんだろうなと感じるところですよね。
その理由も幾つかあるのでしょうけれども、少なくともイメージだけの問題ではなく実際にやってみても大変だった、割に合わないという声が続出しているというのも事実ではあるようで、せっかく参入したスタッフが次々と逃げ出して行くのは大きな問題でしょう。

介護職を辞める理由「仕事の割に給与が低い」が最多

 人材サービス・インテリジェンスが27日、自社が運営する求人情報サービス『an』で、医療・介護系、理美容系の有資格者を対象に、就業に関する意識調査を実施。介護職従事者が仕事を辞める理由として、「仕事の割に給与が低い」がもっとも多かったことがわかった。人材不足を補うには、給与、勤務時間など条件面の改善が改めて浮き彫りとなった

 同調査では、医療・介護系、理美容系の有資格者を対象に、就業に関する意識調査を実施。仕事を辞める理由について聞いた質問では、「業務内容の割に給与が低いから」が【介護系】30.5%、【理美容系】23.2%で最多理由に。【医療系】でも20.8%と、「職場や社員の雰囲気が悪いから」(29.0%)に次ぐ多数回答となっている。

 また、仕事を探す際の重視点としては、3職すべてで「やりがいのある仕事であること」が最多となった。「やりがい」を重視した人は、全職種の平均で 4.0%なのに対し、【医療系】16.1%、【介護系】15.7%、【理美容系】21.5%と、いずれも高い割合となっている。高い志を持って職に就くも、肉体的にも精神的にも過酷さを極める職種だけに、早期離職してしまう人も多いのが現実のようだ。

 そのほかの重視点として、「正社員、または正社員に近い雇用形態であること」が【介護系】13.0%、【医療系】8.7%と、全職種平均(5.2%)を上回っており、より正社員志向が強いことが分かった。

調査結果で注目すべきなのが、やめる理由の第一位「業務内容の割に給与が低い(30.5%)」に次ぐ第二位が「職場や社員の雰囲気が悪い(25.6%)」ということなんですが、単に物理的にというだけでなく精神的にも厳しい職場環境に置かれているということが想像できる内容になっています。
昨年末には介護の所得は全業種ワースト2だなんて寂しい話が出ていまして、実際のところ他に仕事があるなら介護よりそちらに回った方がお得という状況が続いているわけですから、元より介護という職場そのものに抵抗感がある人間が集まってくるはずがない、人手不足でますます職場の空気は悪くなっていくという典型的な悪循環に陥っているのが今の介護業界とも言えるでしょう。
厚労省の方でもこういう状況に対してそれなりに手当を考えては来ているようですけれども、実際のところ業界自体が大きな構造的赤字を抱え込んでいる状況では、多少介護報酬に色をつけたところでスタッフの待遇改善に結びつかないという、同様に「公定価格」の医療業界と似たような構図がここでも見え隠れしているわけが、すなわちこれは需給ミスマッチに見合わない低い報酬上の評価をしてきた当然の結果とも言えるでしょう。

介護報酬改定後、月9千円賃金アップ―厚労省が速報値(2010年1月25日CBニュース)

 厚生労働省は、2009年4月の介護報酬改定後、介護従事者の平均給与額が月額9058円増えたとの調査結果の速報値を公表した。1月25日に開いた「社会保障審議会介護給付費分科会調査実施委員会」の第3回会合で示した。

 調査は、09年4月の介護報酬改定が介護従事者の処遇改善に反映されているかを検証するため、厚労省が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設、介護療養型医療施設などを対象に実施。08年9月と09年9月の両方の時期に在籍していた従事者を対象とし、09年の新規雇用者や退職者は調査対象から除いた。

 調査結果によると、09年の介護従事者の平均給与額は月額23万1366円となり、08年の22万2308円に比べ9058円増えた=表1=。施設別に見ると、特養が28万1800円で1万2052円増、老健が29万6043円で1万1629円増、介護療養型医療施設が30万4505円で6136円増、訪問介護事業所が13万9473円で5868円増、通所介護事業所が19万7331円で8547円増などとなった。

 職種別では、「介護職員(訪問介護員を含む)」が19万9854円で、前年の19万935円から8919円改善した=表2=。また、生活相談員・支援相談員は1万2291円改善した一方で、「理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、機能訓練指導員」は8102円アップと開きがあった。このほか、看護職員は8393円、介護支援専門員は9852円のアップとなった。

 施設や事業所の給与などの引き上げ状況を複数回答で尋ねたところ、「定期昇給を実施」が43.7%で最も多く、次いで「介護報酬改定を踏まえて引き上げ」(23.4%)、「介護報酬改定に関わらず引き上げ」(21.0%)などと続いた。「給与などの引き上げを行っておらず、今後も引き上げ予定なし」は 13.1%だった。

 09年度の介護報酬改定を踏まえた処遇改善をめぐっては、日本介護クラフトユニオンが、月給制の介護従事者で月額6475円賃金がアップしたとの調査結果を公表している。

介護業界、厳しい春闘…待遇改善・賃上げ国頼み(2010年3月7日読売新聞)

 景気低迷で主要な労組が今春闘の賃金改善要求を見送る中、約5万8000人が加盟する職業別労組「日本介護クラフトユニオン」(NCCU)は、月給1万円以上の賃上げなどを求めて交渉している。

 低賃金にあえぐ業界にとって、待遇改善は喫緊の課題。だが、国が決める介護報酬に経営が左右される特殊事情から、「大幅な賃上げは困難」と悲観的な声が労使双方から出ている

 「30代半ば。ラストチャンスと思った」。首都圏の訪問介護事業所で働く男性(34)は昨年、上司に内緒で公務員の中途採用試験を受けた。結果は不採用だったが、「介護の仕事では暮らしが安定しない」と転職を目指した理由を語る。

 男性は、約250人の訪問介護サービスを担当する営業所の所長。約20人いる介護士の訪問先手配や利用者の苦情対応を担う。携帯電話は利用者からの問い合わせで昼夜鳴る。妻と長女の3人家族で、月給は手取り約21万円。ローン返済などを差し引くと、手元にはわずかなお金しか残らない。

 財団法人「介護労働安定センター」によると、介護労働者の平均賃金は月約21万円で、全産業平均(約29万円)を大きく下回る

 男性は、NCCU分会の書記長として経営側と交渉する立場でもあり、NCCUの要求「月給制で1万円以上、時給制で60円以上の賃上げ」を経営側に示した。だが、所長として経営の苦しさも知っているだけに「介護報酬頼みの経営は不安定。大幅な賃上げは期待できない」と語る。

 中小の事業所では、要求に対する回答さえ得られない労組もある上、そもそも労組がない事業所も多い。NCCUの組合員は全介護労働者の5%以下だ。

 ある経営者は「賃上げを統一要求すること自体、現実離れしている」と話し、労組幹部は「春闘要求は、他産業との格差是正を段階的に図るため、労使一体で国に介護報酬増を求めるスローガン的な意味合いが強い」と打ち明ける。

 民主党政権は、介護労働者の平均賃金4万円増を公約に掲げてきた。政府は昨年10月、待遇改善を行った介護事業者に交付金を支給する自民党政権時代から計画されていた新制度をスタート。正職員換算で1人月1万5000円の賃上げに相当する補正予算を組んだが、看護師や事務職が対象外となるなど、現場には不公平感が残る。4万円増についてはまだ具体化していない。NCCUの河原四良会長は「結局は、介護報酬アップなど、すべての労働者の待遇改善につながる国の政策が必要」と訴える。介護報酬 介護保険制度で定められた介護サービスの公定価格で、訪問介護や通所介護などサービスの種類ごとに決められている。報酬額の9割は保険料と税から支払われ、残り1割を利用者が負担する。3年に一度見直され、2000年の制度開始後、03、06年と引き下げられたが、昨年4月の改定では3%引き上げられた。

医療にしても介護にしてもスポンサーである国民にとっては安く使える方が便利だろうという視点もあるのでしょうが、一方で誰もかれもと需要に対して無制限に応えられるような余力は経営的にもキャパシティー的にもない、とすれば割が合わないところから切り捨てて健全経営を目指さざるをえないというのは医療でも介護でも同じことですよね。
医療においては救急、産科、小児科といった不採算部門の切り捨てが進んできた結果何が起こったかというのは今やようやく世間にも知られるようになりましたが、介護においても山間地で事業所から遠いだとか、介護度(すなわち、支払われる報酬額)に対して手がかかるといった不採算の人々は切捨てていかざるを得ない、それが出来ない真面目な事業者ほど真っ先に潰れていっているのが現状であるわけです。
物価下落だ価格破壊だと喜んでいたら、実は安くなった以上に給料が減らされてどうにもならなくなってきたという昨今の社会とどこか似たような側面もありますけれども、公定価格の医療や介護においては経営努力で質を高めることによってより高い報酬を得るという手段が存在しない以上、経営努力とはコストを削減する方向で進まざるを得ないのだという点にも注目しておくべきだと思いますね。

最終的に利益を受けるのも不利益を被るのもスポンサーであり利用者でもある国民の側であることはいうまでもないわけですから、需要の側と供給の側とのすり合わせをしてどのレベルでバランスを取っていくかという決定権も国民の側にあっていいと思うのですが、一般論として言えるのは「やってられない」と人が逃げ出すような状況で供給側に更なる改善努力を求めていくのも限界があるだろうということでしょう。
となれば需要側の制限をせざるを得ないわけで、医療の世界において近頃ようやく「不要不急の救急受診は控えましょう」などと言われ始めたことと同じように、「自分たちで出来る介護は自助努力しましょう」なんて動きが今後広まってくる可能性があるのかという話ですけれども、不景気かつ人余りの時代にあって今後そうした話がどこからか出てきてもおかしくはないのかなという気もするところです。
近頃では核家族で家庭内介護は現実的でないという声もありますけれども、同居はしていなくても大抵の人が全国いずれかの土地に年老いた親族を持っていても不思議ではないわけですから、人口減少に悩む地方自治体にとってはそういう面からのUターン促進活動というのも意外に面白いかも知れませんし、そもそも介護というものは本来がそうした地域の互助で成り立っていたものだったはずなんですけれどもね。

しかし不景気で仕事がないと言いながら確実に雇用がある領域でも案外人が回ってこないというのは介護や農業など幾らでもありますけれども、どこまで不景気が深刻化すれば介護にも人が流れてくるようになるのか、そのあたりを見極めてみたいという不謹慎な気持ちも全くないでもないんですがね…(苦笑)

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