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2010年3月19日 (金)

医療の世界にも押し寄せる貧困問題 その解決はすでに待ったなし

未だ不景気と言われ続けているこの時代にあって、先日民医連の調査でこういう話が出ていましたがご覧になりましたでしょうか。

困窮で受診遅れ、43人死亡 国保料滞納の「無保険」(2010年3月11日47ニュース)

 国民健康保険(国保)の保険料を滞納して保険証がない「無保険」になるなどの理由で、受診が遅れ死亡した人が2009年の1年間に少なくとも17都道府県で33人いたことが11日、全日本民主医療機関連合会(民医連、東京)の調査で分かった。正規の保険証を持ちながら経済的理由で死亡した人も6都県で10人に上った。

 年金生活の高齢者や「派遣切り」などによる失業者らが多く、民医連は「景気悪化で貧困や格差の問題が広がる中、低所得者層は医療さえ受けられない厳しい状況があらためて浮き彫りになった」と指摘している。

 調査は、全国の民医連の加盟医療機関から報告を求める形で行われた。

 保険料の滞納などが理由で亡くなった33人は男性27人、女性6人。無保険は23人で、有効期間が短い「短期保険証」を発行されていた人が6人。いったん医療費全額を支払わなければならない「資格証明書」は4人。

 都道府県別では、石川、福岡、沖縄4人、北海道、神奈川3人など。

 一方、正規の保険証を持ちながら窓口で支払う自己負担金が支払えずに受診が遅れ死亡した10人は、東京4人、沖縄2人、埼玉、神奈川、長野、岐阜が1人ずつだった。

これをどう考えるべきかはなかなか解釈の余地がありそうなんですが、調査に引っかかってきていない部分が相当数あるとは思われるものの、それを込みで考えても幸い他の死因に比べても今のところかなり少数派なんだなということは言えるかと思います。
そうなると昨今は医療の世界も金勘定にもっとシビアにならなければならないと世間的圧力も厳しい時代ですから、単純にコストパフォーマンスという点で見れば他の部分にお金を使った方が国民健康状態の向上に寄与するという考えもありかも知れません。
しかし他方ではどんな貧乏人でも金持ちでも一票の価値は同じということからしても、政治とは常に社会的関心の大小に左右される性質を持っていますから、今の時代の政治家にとって極めて多くの国民に関わってくる社会保障政策というものは、今後ますます無視出来ない大きな存在になってくるのも当然でしょう。

日本では今まで右肩上がりの経済成長が続いて、一方で一億総中流なんて言われるくらいに比較的深刻な貧困問題も表沙汰になっていなかったという歴史的経緯がありますけれども、そうした前提条件がことごとく失われてきている今の時代ともなれば、世界中の国々と同じように低所得者医療というものも決して避けては通れない問題だと言うことを国民も理解しなければならないでしょうね。
海の向こうのアメリカでは自前の医療保険に加入している富裕層と、メディケア・メディケイドの対象となる貧困層との間で数千万人規模の無保険者層が存在していて、医療費負担が個人破産の最大要因になっているという現実がある、これを何とかしなければと国民皆保険制度導入を図っているのが今のオバマ政権ですけれども、これも様々な反対論が噴出していてなかなか難しい事になっている状況のようです。

アメリカと比べると日本の医療は恵まれているなんて言っていたものですが、実のところ気がつけば同様の問題が日本でも日々顕在化していて、健康保険証を保持出来る層と医療費全額公費負担の生活保護者層との間に、保険証を失ってしまったり医療費自己負担分を支払えないという低所得者層が次第に大きなマスを形成しつつあるわけです。
ただアメリカと違うのは「なんで他人の医療費まで俺が負担してやらないといけないんだ!」という声は少なくとも現時点の日本では大きくなってはいないという点で、皆保険制度が当たり前、医療は誰でも同じように受けられて当然という認識が未だ多数派であるとは言えると思いますね。
そうした国民世論も受けて、為政者の方ではアメリカなどよりはよほど動きやすい状況にはあるし、動かないではいられない状況にもあると言えるのでしょうが、最近立て続けにこの方面での報道が相次いでいます。

失業者の国保保険料、4月から軽減(2010年3月5日読売新聞)

 長妻厚生労働相は5日の閣議後の記者会見で、倒産や解雇などで職を失った人の国民健康保険(国保)の保険料を4月から軽減すると発表した。

 失業した状態でも保険料を払い続けられるようにするための措置で、厚労省は3月末までに国民健康保険法施行令を改正する予定だ。

 市町村が運営する国保は、被保険者の前年の所得を基にして保険料が決まる。軽減策は、その算定基準となる所得を3割に減額して、保険料が低くなるように設定する。

 例えば、妻と子ども1人を持つ中小企業勤務の男性(給与収入500万円)の場合、これまでは全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)に保険料を年23万4000円支払っていたのが、倒産や解雇で失業し、国保に移ることで年34万7000円になる。この場合、14万8000円に軽減される。

 長妻厚労相は、「多くの人の国保保険料が半分程度になる。それ以下になる人もいる」と語った。

 厚労省の推計では2010年度で、失業者とその家族で約87万人が対象になるという。

首相「医療費の窓口負担、軽減必要」(2010年3月19日日経新聞)

 鳩山由紀夫首相は18日の参院予算委員会で、低所得者らの医療費の窓口負担軽減が将来は必要との認識を示した。
 「海外と比較して数割高いとの思いもある。必ずしも今すぐではないが、窓口負担が高くて十分な医療が受けられず亡くなることが極力なくなる社会をめざすため、新たに検討していきたい」と述べた。
 共産党の山下芳生氏への答弁。

絶対的な負担額が高いか安いかという議論はまた別の機会に委ねるとしても、やはりワーキングプア問題というものがこれだけ身近なものとなっている現在、国民感情としてもちゃんとしっかり働いている低所得者が一番苦労するというのは釈然としないところでしょう。
以前にも紹介しましたように各自治体で保険料減免措置というものが用意されていますから、適応を受けられる方々は是非とも遠慮なく活用していただくのは当然なんですが、この生保をとらずに頑張って働いている低所得者層の医療費問題というものは、下手をすると医療制度のみならず国が破綻する大きな要因ともなりかねない恐れが多分にあると思いますね。

一方では少ない所得の中から健康保険の保険料を納め、窓口では医療費自己負担分も支払わなければ医療が受けられない労働者がいる、他方では生保になれば保険料免除、自己負担分も免除、入院中は一切支払いもないはずなのに保護費の支給は続くということで「そろそろ金がなくなってきたから入院させてくれ」なんて病院に貯蓄?にやってくる方々もいらっしゃる。
こんな「逆転現象」があるようでは真面目に汗水たらして働いている方が馬鹿馬鹿しい、俺も一つ生保でももらってみようかなんて気になる人間が増えてくるのも当たり前の話で、ただでさえ税収減に喘ぐ国としてはなんとしても働いて自前で稼いだ方がお得であるというインセンティブを、国民に対して示していかなければならないという道理です。

医療保険に限らず年金問題も似たような未収問題が近年ますます大きくなっていますけれども、一方ではこうした問題に対して間接税増税によって保険料徴収を税金化してしまうという方向性も考えられると思いますが、その場合でも低所得の労働者にとっては間接税の負担増のみならず引き続き直接税も負担しなければならないわけで、やはり間接税負担だけの生活保護層との不公平感は残るでしょうね。
このあたりと併せて課税最低額の引き上げという話も出てきておかしくないと思いますが、日本の課税最低額は国際的に見てもかなり低い水準(すなわち、貧乏人からも容赦なく取り立てている)ということになっていますから、これだけワープアが問題化している今の時代にあった程度まで引き上げということを考えていく必要もあるかと思います。
しかしこうして待ったなしとなりつつある貧困問題、「サラリーマンの給料が減ってる?今いくら?1000万くらい?」なんて名言?が残っているくらい低所得なんて言葉と縁遠い総理閣下がどれだけ適切な現状認識をお持ちであるのか、いささかの危惧無しとしないところがあるのですけれども(苦笑)。

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コメント

医療の貧困、わかります。
うちも未だに不況の影響を受けているのですが、子供はさておき自分の歯医者や皮膚科などは
躊躇してしまいますもん。
軽いものなら…。と。

投稿: 入院保険の支払条件 | 2010年5月 7日 (金) 11時26分

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