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2010年2月22日 (月)

特定看護師制度は推進の方向で議論がまとまりつつあるようです

最近では看護師業務拡大ということも各方面で言われていますけれども、少し前にこういう話がありましたことをご存知でしょうか。

看護師の業務範囲拡大の要件で議論(2010年1月21日CBニュース)

厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」(座長=永井良三・東大大学院医学研究科教授)は1月21日、第9回会合を開き、これまでの論点を整理した。看護師の業務範囲拡大の要件に関して、委員からは「一定のレベルアップを図る上で、(資格の)議論は避けられない」「資格がないと、チーム医療ができなくなることが心配」などの意見が飛び出し、資格を要件に入れることの是非をめぐって議論となった。同省は2月18日に開かれる次回会合で報告書の骨子案を示す方針だが、現行法で可能な業務範囲の整理を求める声が多く、法改正への慎重論が高まっており、骨子案がどのように示されるかは不透明だ。

厚労省が整理した論点は、▽チーム医療の推進に係る基本的な考え方▽看護師の役割の拡大▽その他のメディカルスタッフの役割の拡大▽多職種の連携の推進―の 4項目。このうち「看護師の役割の拡大」の基本方針では、高度な教育を受けた看護師とそうでない看護師のどちらか一方の裁量や業務範囲を広げる案のほか、両方の役割を拡大する案も示された

意見交換では看護師の役割拡大の要件について、「要件と評価はセットで議論すべき」「今やれることができなくなり、現場が困ることがないように整備してほしい」など、現行法の「診療の補助」の範囲内で行える業務に支障が出ないよう求める声が上がった。また、資格を要件に入れることに関しては、「今まで高い看護実践をしてきた看護師が力を発揮できなくなると困る」と、資格の“独り歩き”にクギを刺す意見も出た。

坂本すが委員(日本看護協会副会長)は、日本看護系大学協議会が推進する「高度専門看護師」と、日本NP協議会が資格化に取り組んでいる「診療看護師」に言及し、患者のニーズや看護師のキャリア形成などの観点から、早急に検討することを要望。さらに、「認定看護師」や「専門看護師」など、さまざまな資格が混在している現状を踏まえ、「(これらの)整合性をどのようにするかに着手してほしい」と求めた。また、現行法の範囲内で可能な業務要件や看護師の業務範囲について整理し、高度な能力を持つ看護師も含めて評価した上で、それを基に法改正の議論を進めることも要望。老健施設などで働く看護師の役割に関しても議論するよう求めた。

資格を要件に入れることに関して、永井座長は「モデル事業のようなトライアルが必要」との考えを繰り返し強調。「今の体系の中で何ができるか。今後、何か特定の技能を担ってもらうのであれば、どういう要件が必要なのか。それらを検討した上で、法改正を考えるのが順番だと思う」と述べ、現段階での法改正に慎重な姿勢を示した。

しかしこの話、一部の看護畑の方々はずいぶんと熱心に推進されてますけれども、おそらく多くの現場臨床医の実感としては「業務範囲拡大云々より、現行法下でやれる範囲のことをまずきっちりやるのが先だろうjk」というのが正直なところではないかとも思いますがどうでしょうか?
例えばお上からの通達でようやく「看護師が注射をしたってなんにも問題ありませんよ」と公的に確認されたのも最近の話ですけれども、おかげさまで各地の大学病院や公立病院で「近ごろは看護師が点滴をとってくれるようになった!」なんて医者達の感涙にむせぶ声?が聞こえてくるようになりましたが、考えてみればまともな医療機関では当たり前にやっていることの事後確認に過ぎないわけです。
あの人達が当たり前の業務すらこなさない(こなせない?)件に関しては昔から色々な考察がなされていますけれども、明らかなことはこういうところで不必要な医者のマンパワーを囲い込んでいるから末端医療機関における医者不足が深刻化してきたのだと不満に思っている人間も多いと思うのですね。

マンパワーの有効活用という観点からしても、専門性の低い職種で可能な業務はなるべくそちらに移譲していくという方向性は今後ますます推進していかなければならないのは確かだと思いますが、一方で長年の業界におけるこうしたしがらみが業務移譲の阻害要因として存在しているのも確かでしょう。
しかしながら実際問題医師の人手が足りていないことが医療のボトルネックになっているという現場の実情もありますから、このあたりに関しては質的な担保を行いながら業務以上を行っていくにはどうしたらいいかという、そろそろ実施レベルでの話に軸足を移していかなければならないのでしょう。
先日は厚労省での議論もかなり煮詰まってきたという報道が各社からなされたのは皆さん御記憶に新しいところではないかと思いますが、実際こちらでもやる、やらないの観念論は通り過ぎて、現場での機能低下をどう防いで行くのかという方向に話が進んでいるようですね。

高度な医療行為できる看護師資格新設へ 厚労省が素案(2010年2月18日朝日新聞)

 医師不足の解消や医療の質の向上を目的に、厚生労働省は、従来より幅広く高度な医療行為ができる新資格「特定看護師(仮称)」を導入するとした素案をまとめた。18日に開かれる同省の「チーム医療の推進に関する検討会」で法制化も視野に議論し、3月までに方向性を決める

 医療が高度化し、多くの医療機器をつけて在宅療養する人が増えるなどで、看護師は、さまざまな医療行為に応じるよう迫られている。

 現状でも看護師は医師の指示があれば、診療の補助としての医療行為はできるが、範囲はあいまいで解釈を巡って議論が続いてきた。そうしたなか2002年に静脈注射が、07年には薬の量の調節などが、それぞれ現状を追認する形で認められた。看護師の医療行為を適切に管理できるようにする狙いもある。

 素案では、特定看護師の条件として、(1)看護師免許がある(2)一定以上の実務経験がある(例えば5年以上)(3)第三者機関を設け、そこが認めた大学院修士課程を修了(4)大学院を修了後、第三者機関で知識や能力の評価を受ける――の4点すべてを満たしていることを掲げた。

 医療行為はあくまで医師の指示が前提だが、患者の重症度の判断(トリアージ)や機器をつけて在宅療養する患者らに対応できることを想定して、動脈血の採血や超音波検査、人工呼吸器の酸素量の調節、薬の変更、簡単な傷の縫合などを例示している。

 ただ、性急な法制化は混乱を招くとして、現行法下でモデル事業から開始する。米国などで導入され、独立して診療行為をする看護師(ナースプラクティショナー)とは一線を画すが、特定の医療行為とはいえ、自律的にできるようになる点では、医療現場での役割分担が大きく変わる。

 これまでの検討会の議論では、新たな看護職種の導入について、日本医師会などが反発しており、議論の行方が注目される。(権敬淑)

医師の指示で高度医療、「特定看護師」導入へ(2010年2月19日読売新聞)

 経験豊富な看護師を活用することで医師不足に対応しようと、厚生労働省は従来の看護師より業務範囲を拡大した「特定看護師(仮称)」制度を新設する方針を大筋でまとめた。

 来月、厚労省の検討会が報告書に盛り込む見通しで、これを受けて、同省は来年度中に同制度のモデル事業を開始する。

 厚労省が検討会に示した素案によると、看護師としての実務経験が一定期間あり、新設される第三者機関から知識や能力について評価を受けることなどが、特定看護師になる条件。新たに可能になる業務としては、医師の指示があることを前提に、気管挿管や外来患者の重症度の判断、在宅患者に使用する医薬品の選定といった高度な医療行為を想定している。

 厚労省は、モデル事業での検証を経て、新たな看護職を創設するための法改正に着手する。米国などでは、医師の指示なしで、一定の医療行為ができる「ナースプラクティショナー」という看護職があり、検討委でも導入が議論されたが、今回は、医師の指示を前提とした業務範囲の拡大にとどめた。

こうして報道から見てみますと、一方では業務の範囲をどこまで広げるかと言う議論が一つ、そしてもう一つの論点として前提となる資格をどう認定して行くのかという部分も大いに異論を呼びそうではありますよね。
とりわけ朝日新聞の報道では素案として「、(1)看護師免許がある(2)一定以上の実務経験がある(例えば5年以上)(3)第三者機関を設け、そこが認めた大学院修士課程を修了(4)大学院を修了後、第三者機関で知識や能力の評価を受ける」の四点を満たすべき要件としていますけれども、この要件が多忙な現場のまじめな実務家には厳しいと感じる方も多いのではないかと思います。
まあ早い話が、某界隈で年中看護研究(笑)とやらに精出しているようなお暇な方々ばっかりが認定されるような、実務に縁遠い者の資格であっては何の意味もないだろうという話なんですけれども(苦笑)、このあたりの認定要件に関しての議論はCBニュースの方がもう少し詳しく取り上げているようですので紹介しておきましょう。

「特定看護師」創設、モデル事業実施へ(2010年2月18日CBニュース)

厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」(座長=永井良三・東大大学院医学研究科教授)は2月18日、第10回会合を開き、同省がこの日示した報告書の素案について協議した。素案では、看護師の業務範囲を拡大するため、現行法の医師の「包括的指示」のもと、侵襲性の高い特定の医行為を担う「特定看護師(仮称)」を創設することが盛り込まれ、大筋で了承された。焦点となっていた「ナースプラクティショナー」については、特定看護師の評価を踏まえ、今後、資格化の是非を検討する。また、「フィジシャン・アシスタント」の導入に関しても、「引き続き検討することが望まれる」としている。同省では、来年度からモデル事業を実施する方針で、年度内に報告書を取りまとめた後、大分県立看護科学大など、先行して高度な看護師を養成している大学院を選定するため、その要件の作成に着手する。

素案によると、特定看護師の要件は、▽看護師免許を保有▽看護師としての一定期間以上の実務経験(例えば5年以上)▽特定看護師の養成のため、新たに設立する第三者機関が認定した大学院の修士課程を修了▽修士課程修了後、第三者機関による知識・能力の確認及び評価―の4項目。認定については、必要とされる専門性に応じて一定の分野ごとに行い、臨床実践能力を確保する観点から、一定期間(例えば5年)ごとに認定を更新すべきとしている。
養成課程を認定する際には、医師などの実務家教員や実習病院の確保、実践的なカリキュラムの策定といった指導体制の整備に加え、質と量の両面で充実した臨床実習が行える環境に留意すべきとしており、専門職大学院のような教育機関を想定している。モデル事業を検証し、特定看護師による医行為の安全性が評価された場合は、現行の保健師助産師看護師法を改正し、特定看護師の医行為を法律上で明確に位置付ける。
一方、日本看護協会が認定する「認定看護師」については、現在の教育課程(6か月・600時間以上)を見直した上で、限定的な領域で特定看護師に位置付ける方向で検討すべきとしている。それにより、新たな職種の不足など、制度化に伴う現場の混乱を回避する。

素案では、これまで法律上の「グレーゾーン」とされてきた業務内容のうち、特定看護師に期待される特定の医行為を例示した。特定の医行為は次の通り。
◆ 検査など▽患者の重症度の評価や治療の効果判定などのための身体所見の把握や検査▽動脈血ガス測定のための採血など、侵襲性の高い検査の実施▽エコー、胸部単純エックス線撮影、CT、MRIなどの実施時期の判断、読影の補助など(エコーについては実施を含む)▽IVR時の造影剤の投与、カテーテル挿入時の介助、検査中・検査後の患者の管理など
◆処置▽人口呼吸器装着中の患者のウイニング、気管内挿管、抜管など▽創部ドレーンの抜去など▽深部に及ばない創部の切開、縫合などの創傷処置▽褥瘡の壊死組織のデブリードマンなど
◆患者の状態に応じた薬剤の選択・使用▽疼痛、発熱、脱水、便通異常、不眠などへの対症療法▽副作用出現時や症状改善時の薬剤変更・中止

文面だけから判断していくと、更新まで義務付けられそうな勢いであったりと、かなり厳しい認定条件になりそうな勢いですが、さりげな~く裏?ルートの存在が示唆されているあたりなどをどう考えるべきなのかですが…
「医師などの実務家教員や実習病院の確保、実践的なカリキュラムの策定といった指導体制の整備に加え、質と量の両面で充実した臨床実習が行える環境に留意すべき」という文言をどう捉えるかですが、これに関しては後段の特定看護師に期待される医行為の内容というものに注目して行く必要があるかと思います。
冒頭に重傷度評価や治療評価判定といったものが上げられていますけれども、基本的には今まで医師が行っていた業務の中から、特に処置業務など手を動かす作業に関して移譲していくという狙いが大きいように思えるのですが、実のところこうした手技的領域に関しては今までの医学教育においては学生時代ではなく、卒後に現場でやってみて覚えるという傾向が強いものでした。
もちろん医師なり看護師なりの免許がなければ行えない手技が多いという法的な背景もあったわけですが、このあたりを卒後の実務経験者を対象とは言えカリキュラムとした教育態勢を構築出来るというのであれば、これは学部教育などのシステム改善にもフィードバック可能な試みとはなりそうですよね。

個人的に今後期待するところとしては、この認定看護師という制度があくまでも現場で体を動かす実務家を対象とした制度であるということをもっとアピールしていただいて、手が動かない座学?専門の方々が間違っても「せっかくだから資格でも取っておくか」などと流入してこないように垣根を高くしておいていただきたいといったところになりましょうか(笑)。
しかしこれ、一番の問題は専門施設で修士レベルの教育まで必要とされるという話であれば、いっそ昨今世間で注目されている医学部社会人入学(実際には学士編入制度となりますが)なんてものにチャレンジしてみようという人も結構出てくるんじゃないかという気がするのですが、このあたり資格取得のハードルの高さと取得によるメリットのバランス調整にもなお一考の余地ありだと思いますね。
一方では資格要件を看護師免許のみならず歯科医免許なども含めるようにしてみると、そのまま昨今話題の歯科医の麻酔参加などにもつなげられそうな話ではあるのですが、いっそそちら方面へも手を伸ばしてみるなんて話も今後出てくる可能性はないものでしょうか。

まあ何にしろ全てはモデル事業の結果を見た上でということになるんだと思いますが、その結果なるものをどう評価するのかというあたりにもまた議論の余地は幾らでもありそうですから、例によって「それでは特に問題もないようですので、素案通りで」なんて軽く流されることのないようにお願いしたいですね。

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