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2010年2月24日 (水)

久しぶりに医学部新設?

かねてそろそろと噂にはなっていたところですけれども、先日とうとうこういうニュースが出てきたことを皆さんもご承知ではないかと思います。

医学部新設、3私立大が準備 認可なら79年以来(2010年2月21日朝日新聞)

 医師不足が言われるなか、国内の三つの私立大学が、医学部新設を目指し、準備を進めていることが分かった。設置認可を国に申請する手続きのため、すでに学内に検討組織を立ち上げた大学もある。医学部新設は30年以上なく、認可されれば1979年以来となる。

 医師増員を掲げる民主党は看護コースと病院を持つ大学の医学部新設を後押しするとしており、政権交代で機運が高まったかたちだ。医師養成学部・学科については、自民党政権時代の82年や97年の医学部定員削減の閣議決定を受け、新設の審査は行わない規定になっているが、今後撤廃されるとみられる。設置基準の緩和も進めば、他大学にも動きが広がる可能性がある。

 設置を検討しているのは、国際医療福祉大(本校・栃木県大田原市)、北海道医療大(北海道当別町)、聖隷(せいれい)クリストファー大(浜松市)の3大学。いずれも看護や福祉系学部を持ち、大学病院や関連病院もある。

 看護や薬学、福祉系の6学部を持つ国際医療福祉大は学内組織で、教員確保策や文部科学省への認可届け出の準備をしている。開設場所は大田原キャンパスなど複数案を検討。入学定員は、現在の設置基準の上限である120人程度を想定している。開設時期は未定だが、取りまとめ役の開原成允大学院長は「早ければ早いほどいい。可能なら2011年度を目指し、地域医療の担い手となる臨床医を養成したい」とする。

 北海道医療大も今年1月に学内検討委員会を設けた。やはり地域医療に貢献できる医師の養成を目指し、定員は80人規模を想定。多様な人材を集めるため、学士編入枠も検討中という。小野正道経営企画部長は「これまで道内には私大の医学部がなかった。医療過疎解消に役立つ人材を育てたい」と話した。

 日本で初めてホスピスを開いた聖隷三方原病院と同グループの聖隷クリストファー大も、理事長がトップの検討委員会を設置。「医学部あるいはメディカルスクール(医師養成大学院)に向けて前向きに考えている」としている。

 医学部は79年の琉球大の設置認可以来、新設はない。医師が供給過剰になるとの将来予測や、医療の質低下につながるとする日本医師会の抑制主張を受け、国は80年代初期から入学定員を削減し、全国79校全体でピーク時81年度の8280人から、2007年度には7625人にまで減った。しかし、地方の医師不足が深刻化したため、「骨太の方針2008」などに基づき増員策に転換。10年度の定員は8846人にまで増えた

 ただ、医学部新設には定員80人でも最低200億円弱の建設・設備費用が必要などハードルは多い。また、既存の大学や医療界からは「医師の質が保てない」「医療崩壊をかえって増幅する」との反発もある。22日には全国の大学の医学部長と付属病院長が集まり、医学部新設と定員増に「慎重な対応を求める」請願を政府に提出する予定だ。(石川智也)

しかし先行するロースクールにおいても新設校のレベルの低さが大きな問題になっていますが、医療系学部を揃えているとは言え正直今までの評価的にあまり…な三大学が真っ先に手を挙げてきたというのは、「定員拡大は医師のレベル低下を招く」と主張する反対派ならずともなかなかに微妙なところではあります。
あまり受験偏差値でどうこう言うのもアレですけれども、参考までに三大学の偏差値というものをちょっとググらせていただくと同じ私学の川崎医大あたりと似たような水準ということなんですが、下手をするとあまりの司法試験合格率の低さから「学費詐欺」などと呼ばれる一部ロースクールの後追いになりませんかね?(川崎医大というところはしかし、ググッてみると付属高校からスパルタ?で学生を鍛えているんですね…)
いずれにしてもこの医学部新設の是非は卒業医師の質の懸念や費用対効果であるとか、あるいはそもそもそうまで医学部定員を急増させるのが良いかどうかも含めて諸説異論あるところだと思いますけれども、とりあえず某所界隈では某大先生のおかげであると専らの評判のようですね。

781 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/21(日) 16:49:27 ID:kOc7qUAB0
本田宏氏のせいで医学部新設定員増に主題すり替えで
医師待遇改善はもはやほぼ語られず
開業医撲滅再診料下げまで行われている。

793 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/02/21(日) 21:46:22 ID:agVI246p0
10年後の本田宏の評価が楽しみだな。

795 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/02/21(日) 21:51:01 ID:T5UM9BhR0
>793

既に、こちらの大学系列でも、名指しだぞwww

公的な動きで言いますと、まさしく当事者とも言うべき医科大学系の団体である全国医学部長病院長会議がさっそく「反対」の意思表明をしてきたのが目につくところですが、この反対の理由と言うものに注目していただきながら以下の記事を御覧下さい。

全国医学部長病院長会議:医学部新設「反対」 「教員増で勤務医減る恐れ」(2010年2月23日毎日新聞)

 大学医学部で作る全国医学部長病院長会議(会長・小川彰岩手医大学長)は22日、医学部の新設に反対する請願を民主党や関係省庁に提出したと発表した。同会議は一貫して国に医師数を増やすよう求めているが「医学部定員が急激に増えると、教育確保のため病院勤務医が減り、医療崩壊を助長する」と主張している。

 政府は80年代から続けてきた医師養成数の抑制方針を08年度から改め、全国80大学の医学部定員は3年間で1221人増えた。同会議は政策転換を評価する一方、大学医学部の新設には▽現場の臨床医を教員として招かねばならない▽数十年後に医師数が充足した時に定員を減らせなくなる--などの問題があると主張。「これ以上の定員増は医師不足対策として逆効果だ」と指摘している。

 大学医学部の新設は、現時点では文部科学省告示により認められていないが、将来の規制緩和を視野に、複数の私立大学が検討している。【清水健二】

ここでは「学生教育のために教官として呼び戻されることで勤務医が減り、だらに医療崩壊を助長する」という、なかなか迂遠なロジックで反対論を唱えていますけれども、教育を担当する側としては教官の名目で現場から医師を引っ張ってこれるわけですから、必ずしも悪くない話のようにも思えるのですがね。
このあたりは実際のところ今までの医学部教育というものの実態を考えてみた場合に、多少学生が増えた程度でどの程度の影響があるのかとやや無理目な話のようにも思えますけれども、とりあえずかの大先生はこの反対表明におかんむりの御様子ですね(苦笑)。
個人的にはむしろこの大学教官と臨床現場との関係と言うことで非常に興味深いなと思ったのが、同日付けの地方紙にひっそりと出ていたこちらの地味なニュースなんですが、一体これは何なのでしょうね?

八幡浜に4月から4医師派遣 愛媛大(2010年2月23日愛媛新聞)

 愛媛大学が市立八幡浜総合病院を救急医療教育の実習現場とし、医師を派遣する計画について、愛媛大学大学院医学系研究科の桧垣実男副研究科長は22日、外科医、循環器内科医、小児科医、内科医の4人が内定し4月からの活動を目指すと明らかにした。八幡浜・大洲医療圏域の医療対策協議会で説明した。会終了後の取材で、2008年から続いている週2日の八幡浜病院の内科救急受け入れ制限については「確信はない」としながらも「(4月からの)解除の可能性はある」と前向きな姿勢を示した。
 桧垣副研究科長は取材に「医師はあくまで大学の教員としての派遣で100%の労働力ではない。(八幡浜病院の医師と)どういう形で仕事を組み合わせるか、これからすり合わせる」と語った。同協議会に出席していた八幡浜市の橋本顕治副市長は制限解除について「まだ合意していない」と話した。

これ、学外実習に名を借りた教官の現場動員とどう違うのかという話なんですけれども、派遣を受けて救急受入れ制限解除を云々しているというくらいですから、どう見ても労働力として期待する気満々だというのが見え見えではないですか。
医学部長病院長会議も教育によって医療崩壊がどうこうと言うのであれば、こういうあからさまな裏技に対してこそしかるべく抗議なりをしていくのが筋でしょうに、無理筋の論理で妙なところから絡んでいくから「既得権益を守ろうとする学閥の抵抗?!」なんて痛くもない?腹を探られることになるのではないでしょうか(苦笑)。

まあそうした余談は置くとしても、医学部新設の是非はともかく、時代の要請ということを考えても学部定員の大幅増はやむなしですが、どうもこの大幅定員増ということで思い出されるのが、近年各方面で行われてきた資格職の大幅増加政策がことごとくよろしくない結果を招いているということなんですよね。
すでに司法試験以外に歯科医師過剰問題などについても当「ぐり研」でも取り上げてきたところで、実際に増やしてみると現場はとんでもないことになってしまったという話なんですが、どうも近頃似たような話は幾らでもあるらしいのですね。

合格増やしたら不況…“計算外”公認会計士の卵、就職難(2010年2月20日読売新聞)

異例の企業説明会開く

 弁護士と並ぶ難関国家資格、公認会計士の試験合格者が未曽有の就職難に直面している。企業などで2年以上会計実務を経験しないと公認会計士として登録できないため、就職は業務に就く必須条件だが、国が合格者を増やしたところに不況が襲い、金融庁は昨年の合格者2229人のうち数百人が就職できないと予測。近畿でも、合格者の約4割に当たる約150人が未定という。日本公認会計士協会近畿会(大阪市)は異例の企業説明会を開くなどして、採用を呼びかけている。

 金融商品取引法の改正で2008年から、四半期ごとの決算が義務づけられるなど、上場企業に対する規制が強化された。同庁は、公認会計士の需要が増えると見込み、公認会計士の総数を18年頃までに、06年時点の約3倍の約5万人に増やすことを計画。年間約1000人程度だった合格者は、07年に4041人、08年は3625人となった。

 しかし、リーマン・ショック後の長引く不況で、今年は求人を3~5割程度減らす監査法人が目立つ。東京の大手監査法人の採用担当者は「顧問先の会社が減り、急な繁忙にも対応できる。劇的に求人を増やすことは考えにくい」と話す。

 一般企業の採用も思うように伸びないことから、日本公認会計士協会近畿会は1月に説明会を開催し、上場企業など27社が参加した。産業機械メーカーの経理担当者(62)は「四半期の決算で、年がら年中、決算作業に追われている。公認会計士を社内で育てたい」と前向き。一方で機械工具メーカーの採用担当者(49)は「数年後に独立するかもしれないと思うと二の足を踏む」と話した。

 同会の佐伯剛・大量合格対応特別委員長は「公認会計士を雇うことが市場で信頼を得る設備投資だと考えてほしい」と訴える。

 4年がかりで昨年の試験にパスした男性(25)は「合格前から就職活動を始め、監査法人を中心に10社以上を回ったが、内定がもらえない。大学時代から試験合格だけを考えて頑張ってきたのに」と落胆していた。

 同庁は、昨年12月に試験制度などの見直しを行う有識者の懇談会を設置。今年の試験から合格者を2000人程度に抑制する方針を示している。

 懇談会メンバーの平松一夫・関西学院大商学部教授(国際会計)の話「総数5万人は多すぎる。基礎試験に通った者が実務を経て公認会計士試験を受けられるようにしてはどうか。そうすれば公認会計士の数も絞られる」

 公認会計士 監査、会計の専門家で、企業の資産や財務状況を第三者の立場でチェックする。金融庁の公認会計士・監査審査会が年1回、試験を実施しており、09年の合格率は10・5%。有資格者は約1万9900人。

連載「医療貧困」① 薬剤師 10年後は「3割失業」(2008年7月21日AERA)より抜粋

国家資格のお墨付きを得ても、もはや「安定」は約束されない。格差社会のひずみは、医療の世界にも押し寄せている。

薬剤師の資格手当込みで手取 り19万8000円-。

昨年4月、東北地方の民間病院に就職したヨシオさん(37)は、 薬剤師として初めて受け取った 給料の額に少し落ち込んだ。

「国家資格を持っているのだから25万円ぐらいはいくかな」と想像していた。そもそも、収入を安定させたい、と一念発起しての転職だったのだ。
(略)
ヨシオさんは昨年結婚し、数年後に子どもができたらもう少し給料のいい調剤薬局かドラッグストアに転職しようと考えていた。しかし、その人生設計が大きく狂いそうなのだ。

「今度始まる『登録販売者』ですよ。これで薬剤師の転職の条件は相当厳しくなると思う」

登録販売者とは、2006年に成立した改正薬事法に基づく新制度だ。医薬品には①医師の処方が必要な医療用医薬品②市販される一般用医薬品①販売規制がない医薬部外品があり、現在は薬剤師が常駐していないと①と②は販売できない。新制度はこのうち②を三つに分類し、薬の効 き目が強い第1類以外は登録販売者が店舗にいれば販売できる ようにする
今年8月以降、都道府県が資格試験を実施し、来生皮から現場に導入される。つまりドラッ グストアにとどまらず、コンビ ニやスーパーでも従業員がこの資格を取得すると、薬剤師がいなくても大半の薬を販売できるようになるのだ。受験には1年以上の医薬品販売の実務経験などが必要だが、大卒でなくても構わない。すでに大勢の従業員に受験の準備をさせているドラッグストアやディスカウントストアも現れており、「手当」が高い薬剤師に取って代わる可能性もある。ヨシオさんの心配はもっともなのだ。

 薬学部は46から74に

だが実は、「薬剤師余り」はすでに顕在化している。

薬剤師の需要は年々増加し、 1990年の15万人から、2006年には25万人に膨らんだ。下のグラフは厚生労働省が行った試算で、試験合格率が現在の水準で続いた場合の薬剤師の需要と供給の推移だ。育児などで一時的に職を 離れている「無職」のペーパー薬剤師を需要に含めても、すで に供給過多で、10年後の総数は 36万人、20年後は40万人と予測 している。「受け皿」は新しい職種などが増えない限り、27万~28万人レベルでほぼ横ばい。単純計算で、10年後は薬剤師全体の約27%が過剰になる。つまり、約3割の薬剤師が失業しかねないのだ。

こうした事態に至ったのは、小泉純一郎政権下で進められた大学設置基準の規制緩和でしている。2002年時点で46だった 薬学部は、現在74を数える。昨 年5月に聞かれた厚生労働省の 「薬剤師需給の将来動向に関する検討会」初会合で同省は、「新規の薬剤師が30%減っても、薬剤師不足が生じることはない」との見解を示した。医薬分業が進み病院外の調剤薬局とともに薬剤師の需要が増えているが、それを上回る供給が続いていくのである。

「甘い時代は終わった」

大学関係者などによると、病 院勤務の薬剤師の平均初任給は年約350万円、30代でもおお むね400万円台という。人気 が高い大学病院や国公立病院で も似たり寄ったりだ。
ある病院の関係者は、さらにこう指摘する。

「医薬分業が進み、病院内の調剤業務が減ったこともあり、薬剤師の地位は決して高くない」

薬剤師はおのずと、人件費削減の対象とみなされるようだ。
もちろん病院以外の薬剤師も厳しい現実に直面している。

「国家資格を取得したからといって高収入を得られるなんて甘い時代は終わった」
(略)

さて、こうした相次ぐ他の資格職の崩壊ぶりが医師免許所持者の未来絵図として簡単に想像できるという話にもなってくるわけですが、問題は医師もそうなったとしていったい誰が困るのかということですよね。
給料が切り下げられる当事者にとってみれば「国がいい加減なことをやって大迷惑!」という話になるわけですが、仮に今後医者が激増し「相場」が崩壊したとして、医療費をこれ以上増やしたくない国にすれば有資格者を安く買いたたけることは全く苦にならないどころか、ジェネリック使用促進と同じ程度に医療の効率化の一環として織り込み済みである可能性すらあるわけです。
問題はその国の政策の是非を判断する国民の動向ですけれども、「大勢いる医者の中からあなたに一番合った医者を選べる方がいいでしょう?」「身近な病院にも大勢の先生が揃ってるなんて素敵だと思いませんか」なんて甘い言葉でささやかれれば、これまた積極的に資格職の稀少性崩壊に反対する理由もないでしょうね。
もちろん医師大幅増を訴え続けるかの大先生にしても病院の管理職をなされているわけですから、幾らでも増える新卒者の中から好き放題に引っ張って来れる、しかも供給過剰で安く買いたたけるとなれば何ら不都合はないとは計算していらっしゃるのでしょう(苦笑)。

こうして見てみますといつの間にか進んできたこの医師大量養成という話、反対論者にとってはなかなか世論にアピールする良い論点がなさそうなんですが、そういう目で見ると前述の医学部長病院長会議のこじつけ気味な反対論も、なかなか苦しい中を頑張ってひねり出してきたものなのかとも思えてくるところです(彼らの真意がどこにあるのかは別としてですが)。
医者余り時代というものが本当に到来するかどうかはまだ判りませんが、今の医療崩壊という状況は医師の人権を認めよ!せめて労働環境を人並みに!と主張するにはまたとない好機である一方で、もしこれが超買い手市場になった時には今更待遇改善などと主張するのもなかなかに厳しいだろうなとは予想出来るところで、その意味ではタイムリミットは設定されてしまったとも言えるかと思います。
大先生などは医者が余るようになれば自然に労働条件も改善するかのように主張していますが、昨今の超就職難とも言われる時代において、他業界の労働環境が悪化しこそすれ改善したなどと言う話は一向に聞いたことがないことを考えたとき、好き放題吠えまくっているようでもそのあたりに言及しないだけの分別はあるということなんですかね(苦笑)。

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