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2010年2月15日 (月)

診療報酬改定の答申出る

この2月12日に中医協から長妻厚労相に診療報酬改訂の答申があり、2010年度改訂の要点がまとまった形になります。
医師会権益に切り込んだとか、政権が変わっても大差がなかったとか色々と言われてきましたけれども、CBニュースで改訂の要点を取り上げていますので紹介しておきましょう。

【参考】2010年度診療報酬改定のポイント(1)(2010年2月12日CBニュース)

【参考】2010年度診療報酬改定のポイント(2)(2010年2月12日CBニュース)

【参考】2010年度診療報酬改定のポイント(3)(2010年2月12日CBニュース)

病院と診療所の再診料統一であるとか、急性期医療への手厚い配分であるとかの話ばかりに話題が集中していましたけれども、総額で横ばいということが決まっている以上はどこを増やしたという話よりも、どこを削ったのかという話の方を注目していかなければいけないと思いますね。
CBニュースの記事からこのあたりで関連するところを拾い上げていきますと、目につくところと言えばこんな感じになるのでしょうか、何やら非常に判りやすい構図になっている印象です。

・診療所の再診料(71点)を2点引き下げ
・一般病棟の15対1入院基本料(1日につき954点)を934点に下げ
・90日を超えた入院に対する減額措置の対象を75歳以上から全年齢に拡大
・療養病棟入院基本料の最低点を現行の入院基本料E(750点)から入院基本料2(722点)に切り下げ
・DPCの調整係数を段階的に廃止(うち1/4は新係数に置き換え)

診療報酬が引き上げられている領域と比べていただけるとよく判りますが、沢山の患者を短期間で裁いている急性期専門の大病院に対して手厚い報酬増額が図られている一方で、アクティビティーの低い慢性期や中小病院・診療所に対しては冷遇するという対比があからさまになっていますよね。
要するにさっさと患者を家に帰すのが良い病院、いつまでもズルズルと患者を抱え込んでいるのが悪い病院と言う図式が公的に確定したということになりますけれども、後期高齢者医療制度を「うば捨て山」と非難していた民主党政権だけに、捨てる山自体をなくす策に出てきたかとも受け取れるところではあります。
このあたりは現場がどう受け取るかですが、中医協の遠藤久夫会長が「事務局のサポートに感謝したい」と満足感を漂わせているのに対して、開業医の代弁者を自認している京都府医師会の安達秀樹委員が診療所再診料引き下げに抗議の退席をしたことは予定の行動だとしても、報酬を引き上げられる側の山形大の嘉山孝正委員も「安達先生の意見は、我々(診療側)皆同じ意見」と同調する気配を示したことは注目されるところでしょうか。

さて、この中医協の答申を受けて各社から色々と意見が出ていますけれども、今回の改訂をどう見ているのかといったところには注目が集まります。
各社社説クラスの記事として取り扱っているところに感心の高さも伺われますけれども、まずはかねて医療問題といえば一家言なしではいられないという読売新聞から見てみましょう。

【社説】診療報酬改定 中医協の変化を医療改革に(2010年2月14日読売新聞)

 中央社会保険医療協議会(中医協)で、2年に1度改定される診療報酬の配分が決着した。

 保険医療の価格である診療報酬の総枠については、政府が昨年末に、医師の技術料など「本体」を1・55%引き上げると決めている。

 歯科を除く「医科」の報酬枠が4800億円拡大することになるため、医療の危機が叫ばれる中でこれをどう効果的に配分するかが問われていた。

 急性期入院医療には、このうち4000億円が振り向けられ、救急や産科、小児科など過酷な勤務を強いられる分野に手厚く配分された。難しい手術の報酬を3~5割引き上げるなど、ある程度のメリハリをつけたと言えよう。

 今回の改定作業では長年の懸案も二つ、決着させた。

 一つは再診料の統一である。現在は中小病院の600円に対して診療所は710円と大差があり、開業医優遇の象徴と長く批判されてきた。これを病院は90円上げ、開業医を20円下げることで690円にそろえた。

 病院に手厚く報酬が配分されるため、過酷な勤務医の待遇改善が期待される。一方で、地域のかかりつけ医として時間を問わず対応する開業医にも、新たな報酬の仕組みを作った。

 二つめは、受けた医療の費用細目が分かる「診療明細書」を、原則としてすべての患者に無料で発行するよう、医療機関に義務づけたことだ。

 事務処理の電子化が進んでいない医療機関は義務づけられないものの、発行しない理由などを掲示させる。「原則」を骨抜きにさせぬよう注意が必要だが、医療の内容と費用が細かく患者にチェックできるようになる。

 二つの懸案はいずれも、診療報酬改定の年が巡ってくるたびに議論となりながら、開業医の立場を重視する日本医師会などの反対で実現できなかったものだ。

 それが進展したのは、政権交代が結果として中医協での日医の影響力を低下させたことによる。

 政府・民主党は、これまで自民党を支持してきた日医執行部の推薦委員をはずし、民主党に近い日医非主流派の医師や大学医学部長を委員に起用した。医療機関側の委員に組織代表色が薄れ、議論の幅が広がった。

 ただし、今回の診療報酬改定で山積する医療の課題が解決するわけではない。中医協の変化を、医療界全体で取り組む制度改革の議論へと向かわせるべきだろう。

基本的に診療報酬改訂については厚労省のアナウンス通りという感じの記述でいささか突っ込み不足にも思えますが、日医の衰退ぶりにかなり大きな字数を割いているのが目に付くところですかね。
このあたりにもう少しストレートに切り込んでいるのが、医療関連記事でいつも素晴らしい卓見ぶりを発揮している産経新聞です。

【主張】診療報酬改定 開業医に甘すぎては困る(2010年2月14日産経新聞)

 民主党政権で初となる来年度の診療報酬改定について中央社会保険医療協議会(中医協)が答申を行った。昨年末、10年ぶりに総額0・19%の引き上げが決まった。

 民主党の政権公約に掲げた「入院診療の増額」を実現するために、引き上げ財源5700億円のうち4400億円を入院診療に配分した。

 過酷な労働条件を嫌って病院を辞める医師は後を絶たない。地域の中核病院でさえ、閉鎖を余儀なくされる診療科がある。勤務医の労働条件や待遇の改善は待ったなしだ。病院に財源の多くを振り向けたことは評価したい。

 患者側からの要望が強かった明細書付きの領収書発行についても、今回の改定に伴って医療機関に義務づけられることになった。中医協は「患者本位の医療を実現する」という根本部分を忘れてはならない。

 病院600円、診療所(開業医)710円と差のあった再診料を690円に統一したことも前進だ。「同じ診察なのに差があるのはおかしい」との批判が強かったが、開業医中心の日本医師会(日医)の反対で見直しが進まなかった。この分野に切り込んだのは、政権交代の成果といえよう。

 とはいえ、統一後の価格は診療側委員の強い抵抗で、診療所を20円下げただけの小幅に終わった。再診料引き下げは「開業医の優遇是正」を狙いとしていただけに、メリハリ不足は否めない。

 それどころか、患者からの電話問い合わせに時間外で24時間対応する場合や、明細書の無料発行を行う診療所の再診料は加算する措置も設けた。これらが加算されれば、引き下げ分を取り戻すどころか、再診料は逆にアップする。

 診療所は地域医療の支え手である。極端に収入が減って経営が行き詰まれば、困るのは患者だ。患者のために頑張る診療所の収入が増えるのは当然だろう。

 だが、再診料の具体的な加算要件は定まっていない。「24時間対応できる」というのはあいまいだ。大半の診療所が算定できる可能性すらある。「結局は診療所の焼け太り」とならぬよう、厚生労働省は拡大解釈を許さない厳格な基準を示さなければならない。

 長妻昭厚生労働相は日医の推薦委員を完全排除するなど政治主導を強調していたが、これでは「参院選を前に開業医に配慮した」との批判を招きかねない。

まあ、地方の病院が閉鎖を余儀なくされているのは経営面もさることながら人材が集まらないからだという話もあるわけですが、いくら病院に金を出したところでスタッフを敵に回してはどうなんだと他人事ながら危惧は覚えるところでしょうか。
それはともかく、一読して判る通り医師会はおろか診療側委員も含めて医療当事者=医療改革の抵抗勢力といった論調が目立つところで、やはり産経新聞らしい主張ではあるかなと思わされる記事です。
このあたりはよく言えば国民目線での改革推進という言い方も出来るかも知れませんけれども、現実に現場から人が逃げ出している現状にあって現場の声に耳を閉ざしてどうするのかという批判もありだとは思えますね。
一方で朝日新聞の社説では再診料問題こそが「最大の焦点」だったと主張していますけれども、医療崩壊阻止を政権公約にうたったとまで言われる鳩山政権にしても、高尚なる公約が再診料統一の是非にまで矮小化されては立つ瀬がなさすぎるというものではないでしょうか。

【社説】診療報酬改定―医療再生へさらに大股で(2010年2月13日朝日新聞)

 医療崩壊を食い止めることを公約にうたった鳩山政権のもと、初の診療報酬改定の答申がまとまった。4月から実施される。

 長妻昭厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が答申した改定の柱は、医師不足が深刻な救急、小児、産科に診療報酬を重点配分するというものだ。勤務医の負担軽減のため、人の配置を増やしたり、チームでの取り組みを後押ししたりする施策も拡充する。

 最大の焦点は、病院よりも高い開業医の再診料をどうするかだった。690円にそろえることになった。切り込み不足の感は否めないが、報酬全体を増やす中で開業医の再診料を引き下げたことは評価できる。

 休日・夜間などの診療時間外に「電話対応」する開業医の再診料には、新たに「地域医療貢献加算」を30円上乗せすることも盛り込まれた。

 開業医が夜間や休日も患者に対応すれば、病院の救急窓口への集中が緩和されるかも知れない。だが申告だけで加算されるようなことになれば、再診料の穴埋めに終わりかねない。実施状況の検証は欠かせない。

 医療費の明細書を無料で、原則としてすべての患者に発行するということも、前進だ。患者などが求めていたが、これまでは医師会の抵抗が強くて実現できなかった。

 明細書があれば、実際には行われていない診療や検査がないかを患者がチェックしたり、過大な請求やミスを防いだりする効果が期待できる。医療費を節約し、財源を医療再生策に振り向ける余地も生まれるはずだ。

 医療現場では今後、明細書をみた患者からの質問が増えるに違いない。医療機関はていねいに答えなくてはならない。診療と報酬について納得してもらうことは医療の基本だ。

 診療報酬の体系も、患者にわかりやすいような仕組みに一層簡素化されるよう望みたい。

 鳩山政権は中医協から日本医師会の代表を排除し、政治主導の姿勢を示していただけに、思い切った見直しが注目されていた。

 むろん、今回の診療報酬改定だけで医療崩壊と呼ばれる深刻な状況に歯止めがかかるわけではない。医師を育成する仕組みを抜本的に強化したり、地域や診療科ごとに偏っている医師の配置を是正したりするための政策努力が問われ続ける。

 病院と開業医、病院間の役割分担と連携を見直すことも、引き続き考えていかなければならない。

 医療の再生とそれに必要な費用と負担はどうあるべきか。財源を含む広い視野からの検討と対策が大切だ。

 この一歩から、さらに大股で進むことを「長妻厚労省」に期待したい。

一読していただければ判りますけれども、第一行目から「医療崩壊阻止」などと大上段に振りかぶっている割には、記事を最後まで読んでみても今回の改訂のどこがどう医療崩壊阻止につながるのかさっぱり理解出来ないと言うのはご愛嬌でしょうか。
まあいつものようなキーワードを書き連ねて判ったようで判っていないことを煙にまいてしまうあたりが、朝日らしいと言えば朝日らしい記事でしょうかね。
医療崩壊と言う観点でわりあい突っ込んだ視点からの記述があるのが意外にも?毎日新聞なのですが、どうもこの新聞社が何を言おうが「お前が言うな!」で終わってしまうのが難点といえば難点です。

【社説】診療報酬答申 抜本改革へつなげよ(2010年2月13日毎日新聞)

 中央社会保険医療協議会(中医協)は10年度の診療報酬改定案を長妻昭厚生労働相に答申した。民主党は昨年の総選挙前、診療報酬の大幅増を主張していたが、実際には総枠で0・19%という微増にとどまり、配分でどのような方向性を打ち出せるかが注目されていた。

 争点になったのは外来の再診料である。財源がない中で病院(200床未満)の再診料(600円)を上げるため、診療所の再診料(710円)を下げる案に開業医中心の日本医師会(日医)は猛反発した。従来ならここで妥協するところだが、押し切って690円に統一できたのは、自民党の支持母体だった日医を中医協から排除したからである。民主党にとっては政権交代の効果を改めて印象づけることになった。

 救急、産科、小児科、外科など医師不足が指摘される診療科への配分も手厚くした。ただ、多くの病院は経営難に陥っており、増収分は赤字の補てんに充てられるのではないかとも見られている。過重労働が問題になっている勤務医の負担軽減という面では、医師を補助する職員を多く配置した病院への加算上限を3550円から8100円に引き上げた。こちらの方が直接的な効果を期待できるかもしれない。また、休日や夜間の外来対応を開業医に手伝ってもらう体制を敷いた病院に新たな診療料を設けることは、医療機関の機能分担と連携を進めていく上で現実的な方策の一つであろう。

 病院の報酬を引き上げるためにターゲットにされた診療所だが、在宅医療の拠点として夜間や休日も地域の患者を支えている診療所は多い。都心のビルの一室で開業し、夜間・休日は対応しない診療所と同じ報酬体系に位置づけるのは不合理ではないか。軽い症状の患者が病院に殺到することで勤務医を疲弊させ、医療費も圧迫している現状を改善するためには、やはり在宅医療の質を高めてプライマリーケア(初期診療)を充実させる路線を推し進めるべきだ。再診料は一律引き下げるが、24時間電話で応対する診療所への加算が盛り込まれたのは一定の歯止めになるかもしれない。

 今回の改定が医療崩壊を防ぐのにどのくらいの効果があるのか、まだ判断できない。ただ、国内総生産に占める日本の公的医療費は先進諸国に比べて低いことを指摘しておきたい。ドイツ並みにするには7・5兆円、フランス並みには10兆円の上乗せが必要だという試算もある。雇用が不安定になり賃金水準も下がる中では負担から目をそらしたくなるものだ。しかし、医療を抜本的に立て直すには何が必要か、次回の改定に向けて今から議論を深めたい。

一応こういう会社の言説でも公平に評価しておきたいのは、他紙が明細書発行などおしなべて患者側の利益という視点のみから記述している中で、軽症患者の過剰受診が医療を疲弊させるだとか、国際水準と比較しても日本の医療費には更なる負担増が必要だろうとか、受益者にも応分の負担をという視点が見られるというところでしょうかね?
当然ながら?この対極にありそうなのが、かねて支払側のロジックを前面に押し出してきた日経のスタンスということになりそうですが、同紙にしては珍しく押さえ気味な論調の中でもきっちり医療批判を盛り込んでくるあたり、キーワードは「医療界の非常識」ということになるのでしょうか?

【社説】新生中医協の限界みえた診療報酬改定(2010年2月12日日本経済新聞)

 病院や診療所、調剤薬局が保険診療や処方薬などの対価として健康保険と患者本人から受け取る診療報酬の改定作業が事実上、終わった。

 焦点のひとつ、外来患者の再診料はベッド数が200に満たない病院と診療所を690円にそろえることで厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会の議論がまとまった。病院を90円引き上げ、診療所は20円下げる。外来患者の窓口負担はその30%分、上下する。

 昨年10月、長妻昭厚労相は中医協のなかで医療界を代表する委員について、自民党の支持団体だった日本医師会の関係者を外すなど顔ぶれを刷新した。この人事を機に、限りある財源を効率的に配分して医療体制を患者本位に立て直す改革への期待が高まった。だが新生中医協はその期待に十分に応えなかった。

 病院の小児科、外科など一部の診療科に目立つ医師や看護師の過密勤務をやわらげたり、救急医療をより拡充させたりするには、その分野に力を注ぐ病院に財源をうまく回すしくみが欠かせない。その点で診療報酬の基本項目である再診料の診療所優位を改めたのは前進だ。

 しかし、なぜ690円で病院と統一したのか、理由がみえない。議論は「同じ医療サービスに同じ値段をつける」が出発点になったが、病院が診療所と同じ医療を提供するとは限らない。客観データに基づく検証は二の次になり、それぞれの委員が出身母体の利害を盾に感情的な議論に走った印象がぬぐえない。医師出身の民主党議員が審議に陰で介入したのもみっともなかった。

 また、ひと口に診療所といっても離島や山村で献身している医師もいれば、都市部の雑居ビルに間借りして開業する医師もいる。この「ビル診療所」は夜間は閉まり、医師は自宅に帰るところが多い。

 地域医療を担う若い医師が減っている現実を考えれば、それぞれの診療所の実情や環境に応じて診療報酬にめりはりをつける工夫が必要だ。

 期待先行で始まった中医協だが、患者と健康保険料を負担する国民や企業は議論の蚊帳の外におかれた。審議のインターネット中継は医療界側の委員の抵抗で実現せず、議事録の公開も厚労省の怠慢で遅れた。

 評価できるのは診療や投薬の明細がわかる領収書の発行を設備が整った病院・診療所に義務づける点だ。無料で明細書を出すのは困ると、世の常識から外れた主張をした医療側委員を患者代表が押し切った。受けた医療の内容を患者が理解し、コスト意識を高めるのに役立つだろう。

主要地方紙などの論調も概ねこれら全国紙の類型いずれかに近いものがあるように思えますが、中にはなかなか独自の視点から切り込んでいるところもあって、興味深いところを幾つか取り上げてみましょう。
まずはこちら赤旗からですけれども、他紙が全く言及していない診療報酬改訂のもう一つの側面に言及しているのは評価できると思いますね。

診療報酬 急性期に財源集中 10年度改定案 慢性期医療削る(2010年2月13日しんぶん赤旗)

 中央社会保険医療協議会(中医協)は12日、医療機関に支払われる医療の公定価格である診療報酬の2010年度改定案を長妻昭厚労相に答申しました。

 医師不足が深刻な救急・産科・小児科・外科に財源を重点的に配分し、▽救命救急センターの入院料加算▽妊産婦や小児の救急受け入れに対する加算▽手術料―などを引き上げます。病院勤務医の負担軽減策としては、事務作業補助者の配置に対する評価の引き上げなどを行います。

 救急車が搬送先を見つけられず妊産婦が死亡するなどの事態が相次ぎ、国民の不安と怒りが高まっていました。そうした世論を受け、緊急の手当てを行った形です。しかし、全体の改定率が0・03%と実質ゼロで医療全体の底上げには足りないため、急性期医療を担う大規模病院に集中的に財源が投入される一方で、慢性期の患者や、その医療を担う中小病院と診療所に厳しい改定となっています。

 慢性期の医療を担う療養病棟の入院基本料は、「医療の必要性が少ない」とされる患者が2割以上入院していると大幅に引き下げられます。認知症病棟の入院料も61日を超すと減額されます。一般病棟に75歳以上の患者が90日を超えて入院すると入院料が激減する後期高齢者特定入院基本料は、対象が全年齢に拡大されます。

 病院(200床未満)の再診料が引き上げられる一方、地域医療を担う診療所(開業医)の再診料は引き下げられました。看護師不足のもとで看護師配置の手薄(患者15人に看護師1人)な小規模病棟の入院基本料も減額。地域医療を支える中小病院や診療所の経営圧迫は、「医療崩壊」を加速させかねません。

このあたりは議会での与党攻撃絡みでネタを探しているうちに行き着いたと言う側面もあるのでしょうけれども、逆に他紙がこういうところを全く言及していないというのは何かしら背後に隠された思惑でもあるのかと感じるところですが、明細書発行などよりはるかに多くの患者に重大な影響を及ぼす問題だと思うのですけれどもね。
一方で全く異なった方向で非常にオリジナリティーあふれる論調を展開しているのがこちら琉球新報なんですが、まずは黙って一読していただきましょう。

【社説】診療報酬改定 勤務医不足に歯止めを(2010年2月14日琉球新報)

 入院医療に4400億円上積みし、勤務医の待遇改善や、病院再診料の引き上げによる診療所との一本化などを盛り込んだ2010年度診療報酬改定案を、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)がまとめ、厚労相に答申した。
 中小病院で再診料が上がり、救急、小児科、外科などで患者の負担が増えるが、過酷な労働を強いられている勤務医の負担を少しでも和らげ、医師不足に歯止めをかけるためには改定もやむを得ないだろう。
 入院医療では難易度の高い手術の報酬が30~50%引き上げられる。医師の技術が評価されたといえるが、高い報酬を目当てに、経験の浅い医師に難手術を任せるような事態は決してあってはならない。
 米国のような厳格な専門医資格制度を設けるなど、未熟な医師が執刀しないシステムづくりを検討することも今後、必要ではないか。
 救命救急センターや新生児集中治療室(NICU)を備えた施設の報酬や、早産などが対象のハイリスク分娩(ぶんべん)管理加算も増額される。ジェネリック医薬品(後発薬)の使用促進で薬局などに優遇措置が講じられる。
 後発薬は先発医薬品の特許期間が切れた後に発売され、主成分が同じ薬剤のことだ。効き目はほとんど変わらないが、価格は先発薬の3~7割と安くなる。
 日本では欧米に比べ普及が進んでおらず、医療費を押し上げる一因になっている。例えば、ある痛風治療薬の場合、後発品の薬価は5分の1近い。4月の診療報酬改定を機に、後発医薬品の利用促進を国民に啓発し、医療費の節減につなげることが急務だ。
 一方で、明らかに軽症であるにもかかわらず夜間に救急指定病院を受診する患者が後を絶たない。このようなケースが増えれば、本来の救急患者に対する手当てがおろそかになる恐れがある。医療機関を利用する側のモラルの向上も重要な課題だ。
 今回の診療報酬改定案は、勤務医不足を解消するための抜本策とは言い難い。
 救急、産科、小児科、脳神経外科などの医師は多忙な上、訴訟を起こされるリスクが高い。現実に、過労を訴えて病院を辞め、開業医に転身する医師がいる。
 繁忙な診療科の勤務医を手厚く処遇することで、これらの科を専門とする医師を増やすべきだ。

いや、正直その視点は(r

各紙なりの意見はそれとして、医療を提供する側であれ利用する側であれそれぞれの立場から言うべきことはあって当然ですから、予算的に受容出来る中で話しあって妥協点を見出すという作業は確かに必要ではあるのでしょう。
その意味では今回の中医協もこの辺りが落とし所だったのかという考え方もある一方で、今まさに崩壊と言う危機にさらされている現場からは「これで息が継げる!助かった!」と安堵するような声がさっぱり聞こえてこないのも事実なんじゃないかと思いますね。
和を以て貴しと為すとは日本人の古来美徳とするところですけれども、一方で小田原評定という故事成語もあって、結局のところ幾ら和が保たれたところで予定調和を維持したまま全てが崩壊してしまったのでは、何ら意味がないという考え方もあるわけですが、果たして今回の改訂がどの程度合目的的であったか今後は結果で判断されるということになりますかね。

しかしこの場合、うまくいったと言う場合にはおそらく目に見えるような変化は感じられないでしょうけれども、うまくいかなかった場合には誰にでも判りやすい結果が出そうなところが面白いと言ったら不謹慎でしょうか(苦笑)。
一部ではいよいよ待ったなしだなんて言われていた今回の診療報酬改訂作業ですけれども、結局現場視点から見れば従来路線の延長線上で終わった感も濃厚で、ただ世間とマスコミだけが「日医外し」などと言うキャッチーなコピーに踊らされているだけなんじゃないかという気もしないでもないところです。

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コメント

たくさんの社説を集めてご苦労様です。

確かに下げたところに注目すると先が見えてきます。

>・一般病棟の15対1入院基本料(1日につき954点)を934点に下げ
>・90日を超えた入院に対する減額措置の対象を75歳以上から全年齢に拡大
>・療養病棟入院基本料の最低点を現行の入院基本料E(750点)から入院基本料2(722点)に切り下げ
>・DPCの調整係数を段階的に廃止(うち1/4は新係数に置き換え)

>慢性期や中小病院・診療所に対しては冷遇するという対比があからさまになっています

現行システムでの財源がないため財源を傾斜するのは仕方ないですが、90日超の入院料の減額をいきなり全年齢で適用とは驚きました。慢性期医療を保険診療からはずす?急性期医療で混合診療導入は厚労省官僚にはうまみが少ないのでなるほどです。この高齢化時代にこのようなことをすると、高齢者の救急丸投げ、ベッドの出口なしが激増する。結局救急は受け入れ不能となる。これを封じるには、長期入院者を保険診療の対象からはずすしかない。こんな議論の誘導が見えなくもないです。こうすることによって2年程度の時間稼ぎと、保険診療からはずした場合に要らなくなるであろう療養病棟のベッド数を今のうちに削減するということでしょう。混合診療というよりは、介護保険や別枠での枠組みに入れてしまえば、急性期の医療は皆保険制度でありを根幹をいじる必要がない。難病など長期療養が必要な疾患については、生活保護なども含めて保険診療とは別枠で考えるとなるでしょうか。療養病棟にかかわる医師看護師をはき出せば、戦力的には十分だということになります。

問題はこれを誰が言い出すかですが、今年4月に日医の会長選があります。これで民主党コントロール下の会長を作り、参院選後に上のことを言わせ、馬鹿なマスコミを使って日医主導で決めたすれば国民の目をそらせる。その意味で診療所の再診料引き下げは、日医をコントロール下に置くための効かしであって「大きな意味」を持つかと。

投稿: ya98 | 2010年2月20日 (土) 23時04分

後期高齢者医療制度をあれだけ叩いてきただけにどうするかと注目していましたが、こういう方向で格差を解消してきたということにどこのマスコミも突っ込まないのも面白いなと思っています。
日医はしかし、また同じような会長選をやっているようではいよいよ記事にも取り上げられなくなるかも知れませんかねえ…

投稿: 管理人nobu | 2010年2月22日 (月) 13時25分

マスコミは91日以降入院を続けさせるかどうかは、倫理の問題とかいいそうです。是非ともマスコミにはどんどん馬鹿なことを言って欲しいものです。

上の特定看護師制度は、長期療養が保険診療からはずれた場合の在宅診療の受け皿ということですか。この進み方だと、参院選以降に保険診療の枠をどうするかマジメに議論が出てきそうですが。

保険診療が狭まる痛みを国民が感じるとき、スケープゴートの役割を担うものが必要です。これが日医ということでしょう。先の大戦での「侵略を担った日本陸軍」といった図式です。今度の会長は山一證券破綻時の社長のような役割かと。運命をわかっているならば、多少同情しますが、そうではないでしょう。

投稿: ya98 | 2010年2月22日 (月) 23時02分

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