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2010年2月10日 (水)

事故はいずれ起こってしまうものであるが故に、その対処が問題となります

制度設立が言われて久しい事故調ですが、そろそろ本格的な議論をという声が日増しに高まっているようには感じられます。
政権交代の余波もあって、先ごろは足立政務官が「厚労省案を政府は推奨しない」と過去の議論の白紙撤回とも取れるような発言をしていますけれども、それならそれで何かと混迷が予想される今国会でこういう異論数多のものがきちんと議論できるかどうかが問題ですよね。

医療事故調「今国会で議論を」(2010年2月8日CBニュース)

明大法科大学院教授の鈴木利廣弁護士は2月6日、都内で開かれた「患者の権利オンブズマン東京」の総会で記念講演し、医療事故の死因究明などを行う第三者機関について、「重要な医療施策の一つとして、是非とも今国会で議論してほしい」と訴えた。

 鈴木氏は第三者機関を、医療事故が起きた際、すべての医療機関が院内で高いレベルの再発防止策をつくるための監督機関と位置付けた。その上で、医療機関が設置する院内事故調査委員会や第三者機関の在り方を議論するに当たっては、事故対策で医療者がどのような責任を負うのかを明確にする必要があると指摘した。

 また、裁判によらずに医事紛争を解決する「医療ADR」については、紛争当事者が話し合いを繰り返して解決に至る「対話自律型」と、話し合いではなく第三者が決定する「法志向型(裁断型)」があると説明。東京弁護士会などが運営する「紛争解決センター」を活用した医療ADRでは、医療事故紛争に長けた弁護士が専門性を発揮し、対話を促進することで実績を上げていることを明らかにした。鈴木氏は一方で、「本当に問われるのは紛争解決力」だとも指摘。紛争を未然に防止するスキルを学ぶ上でも紛争解決センターの活用が必要だとの見方を示した。

 鈴木氏はまた、「患者の権利」の概念の普及が進む一方、「体系的な整理ができないまま、いろいろなところに散らばっている」と指摘。医療政策の中に患者の権利を位置付けたり、医療側への責任追及を緩和したりするために、医療基本法の制定を訴える声が上がっていると説明した。

しかし皆がそういうものがあった方がいいと総論賛成しながら一向に進まないのは、やはり「再発防止のための原因究明」などという額面通りのものにはならないだろうと本音の部分で判っているから、なんでしょうかね。
この記事にしてもそうなんですが、こうした法律畑の人間が主張するところの事故調と患者側から主張されている事故調、そして医療関係者が言っている事故調というものがそれぞれビジョンが異なっているものを、同じ事故調として一括りにして語っているから混乱もしようというものです。
個人的には異論が噴出して早晩まとまるとも思えない責任追及のシステムよりもまず先に、北欧スタイルの広範な無過失補償のシステムを立ち上げるべきだろうと思っているのですが、何しろどこもかしこもお金が無いという時代ですからなかなか難しいということなんでしょうか(苦笑)。

患者側と医療側との対立関係が固定化されてしまうシステムよりは、まず患者側と医療側が協力関係を築き上げることで機能するシステムを優先すべきだということは、まさに医療が崩壊しているというこの時期にこそ必要とされるものであると思いますね。
一応は世間においてもある程度そうした認識はあるようで、例えば近年一足先に立ち上げられた産科の無過失補償制度ですが、これもまず先に医療訴訟リスクが極めて高いという現実が産科医の疲弊と産科医療の荒廃を招き、回りまわって妊婦の側の不利益になっているという現実を社会が認識した結果ですよね。
しかしこちらも制度的にも非常に限定的なものとしてスタートしたのはやはりお金の問題もあるのでしょうが、実際の運用面で見ても更に限定的な認定が行われているのが実情のようですね。

産科補償制度、初年の補償対象者は12人―診断医に迷いも(2010年01月21日CBニュース)

 昨年1月にスタートした産科医療補償制度の初年の補償認定者は12人だったことが、1月21日までに明らかになった。事務局は当初、補償認定後に行う重度脳性まひ発症の原因分析の開始を早ければ昨年9月と想定。それ以降4半期の補償認定者数を30人と見込んでいたが、これを下回った。同制度では、診断医が制度独自の診断基準を基に「身体障害者障害程度等級一級または二級に相当する脳性まひ」か否かを診断するものの、「再認定」は行わないことから、「診断医らに迷いがあるのではないか」と事務局の担当者は指摘している。

 同制度では、昨年9月に5人の重度脳性まひ児に対して初めて補償を認定。その後、11月に3人、12月は4人に認めた。

 同制度の補償認定を請求する際には、▽「肢体不自由の認定に係る小児の診療等を専門分野とする医師」▽日本小児神経学会が認定する小児神経科専門医―のいずれかの要件を満たす医師が作成する「専用診断書」が必要となる。
 同制度が補償対象としている重度脳性まひについては、標準補償約款の中で「身体障害者福祉法施行規則に定める身体障害者障害程度等級一級または二級に相当する脳性まひ」と規定している。一方で、身体障害認定基準が「すべての障害を対象」「再認定がある」「主として18歳以上の者の診断を想定、乳幼児に係る障害認定はおおむね3歳以降に行う」としているのに対し、同制度では「対象を脳性まひに特化」「補償対象と認定した場合、再認定は行わない」「1歳(重症時6か月)から5歳になるまでの間のできるだけ早い時期に診断」とする独自の診断基準に基づいて専用診断書を作成する。

 事務局の担当者は当初予想数を下回った理由について、同制度の診断基準が再認定を行わないとしていることに触れ、「判定は生涯にわたって、障害が残ると判断したということになる。もっとリハビリをすれば歩けるようになるかもしれないという気持ちにより、それをしないうちに補償の申請に踏み込むことに迷いが生じるのではないか」と指摘。問い合わせは相当数あるものの、「思い切るのは別次元の判断」と話している。

このあたりは今後制度が普及してくると自然と落ち着いてくる可能性もありますけれども、むしろ喫緊の課題として行政側の対応が問われるところだと思いますね。
支払対象が予想よりもずいぶんと少ないことになるということであれば以前から言われているように大きな「儲け」が生じる、それは還元しませんと言ってはいますがほぼ強制的な制度における社会的感情としてやはり釈然としないものは残るわけですから、五年と言わずに早急に補償対象を拡大するなどの見直しを行っていただきたいところです。

さて、本日むしろここからが本題なのですけれども(笑)、2月7日付けの「エチカの鏡」という番組で「今なぜ妊婦殺到?江戸時代式お産に完全密着!!」という放送があったそうで、各方面でちょっとした話題になっています。
「感激出産シーンに涙&驚きセレブ医院&水中出産」なんてもうテンプレ級のキーワード満載で見るからに針太すぎなんですが、これに関連してこういう面白いブログ記事がありましたので紹介しておきましょう。

何故、マスコミは助産院や自宅出産を好むのか(2009年12月17日ブログ記事)より抜粋

先日、TV局のディレクターで報道番組制作経験ありの女性、出産後は番組作りの一線を退いているという方(以下Qさん)からご連絡を頂き、個メールでご意見を伺わせてもらいました。
私としては、TVで扱われる助産院や自宅出産は美化されるばかりだという批判の気持ちが高まるばかり(最近はどうでしょうか、あまりテレビを見られずにいるので、今現在がどうなのかは把握出来ていません)でしたので、ついつい、マスコミ批判が話の中心になってしまいました。
(Qさんのお言葉のままは緑色です)
Qさん自身、助産院や自宅出産が美化され、賞賛されることに問題を感じているということで、少し期待が持てました。
しかし、なかなかそうも簡単には変わらないというか、結局はマスコミにとって助産院や自宅出産は丁度良いネタってことなんですよね…
Qさん、有難うございます。

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活字媒体は取材した話を本人の了承さえあれば書くことができますが、TVの場合、取材対象が顔出しOKかどうかで企画の採否が
大きく左右されることが多いです。
もちろん顔を隠すなどの配慮は出来るのですが、TV局の価値観は 
顔だしOK>顔を隠す>顔も声も隠す
 
です。
重大な案件であればもちろん「顔を出さなくてもOK」ですが、取り上げるべきか意見が分かれるような案件なら顔出しなしなら通らない、ということがよくあります。
話している人の顔が見える、というのはそれだけでものすごく説得力を上げることなのです。
なので顔出しOKの人物には取材が集まります
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時に、ご遺族の方が顔を堂々と出されて、インタビューに答えられている場面があります。

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マスコミはそれをありがたがりますからご遺族を叩きにくくなる。
そして視聴者もごご遺族が顔出しで涙を流されると公の場ではご遺族を批判しづらくなる。
一方医師側は守秘義務もあって本人がTVカメラに向かって直接弁解することもできない。
こういうのが悪循環を招いていると思います。
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あぁなるほどなっておもいました。
そう、医師側には守秘義務があるから、簡単にテレビや新聞等、取材に応じてあれこれと患者さんについて話すことすら許されていないわけですよね。

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助産院がいつも好意的に放送されるのは、助産院の多くが取材に寛容だからというのも大きいです。
助産師は外来に追われている産婦人科医に比べ時間が豊富ですから、インタビューにもじっくり時間を割いてくれる。
それに開業助産師ともなれば自分なりの「思想」を強固に持っているから語りがうまい。(医師は職業柄学問的な説明になりがちです)

お産を間近で見た経験もないようなTV番組スタッフが
出産という「感動的なシーン」を目にしたらその場の感動の渦に巻き込まれてしまい、
「助産院のお産って素晴らしい!」
になってしまうのでしょう。
母子ともに無事であればどんなお産も感動的なのですけれど。
そんな感動の渦の中では助産院でも不幸な転帰を辿る母子がいるかもしれない、という発想にはなかなか辿りつけません

Y医院がTV局に人気なのも同じ理由ですね。
あそこも院長の個性が強くて語りがうまい。
そして妊婦の薪割りとかスクワットとか「絵になる映像」が撮れる。
そしてお産のシーンを一部始終撮らせてくれる。
大学病院の産科ではこうはいきません。
そもそもトラブルが発生して手術になったら雑菌の塊であるカメラをすぐに手術室に持ち込むことすら許されません。
(予定手術であれば滅菌処理したカメラを手術スタッフに持たせて
撮影してもらうということも可能でしょうがただでさえ医療スタッフ不足の昨今、それを頼むべきかどうかという問題があります)

現在のTV局のシステムの中で助産院や自宅出産等の抱える問題をより公正に取り上げるには適切な医療を受けられなかったという被害者が続出して一般の方の持つ危機感が強まるか、あるいは現状をさらけ出して取材させてくれる(患者側も協力的で守秘義務の問題も全部解決して)大きな病院があれば可能かもしれません。
でもこの医療資源不足の時にマスコミの取材が入ることになればそれが原因で誰かの命を奪いかねない
(撮影には一定の手間がかかりますから)
だからやっぱり厳しいでしょうね。
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被害者が続出…本当、そこまでならないとマスコミがこちら側を向いてくれないんだろうなぁって想像できちゃうのです。
エコだなんだと言いながら、12月になると民間の家が電飾で飾られることを面白がるマスコミ…期待が出来ないんです。
※そもそも、マスコミが騒ぐエコの在り方にも疑問はありますが…

助産院や自宅出産を取り扱った番組を過去、このブログでも何度か話題にしたことがあると記憶していますが、臍の緒を家族(主に夫)に切らせるのを堂々と流していたり(それも、好意的に)しています。
臍の緒を切るという行為はイベント化されていて、助産院や自宅出産で家族に切らせている数は結構多いのではないでしょうか。
それは違法行為なのに。

マスコミの方の中には問題におもっている方もいるけど、組織として違う考え方が支持されていれば、異論を唱えようにも唱えられないこともあるということでした。
想像や理解は出来なくもないのですが、残念としか言えません。
(略)

マスコミの中にもちゃんと問題意識を持っている人間がいるんだなということには救われますが、結局それが組織としてどういう形で表に出てきたかということが問われるんだと思いますね。
まあしかし、件の番組でも激賞されていたというY医院の実態をこうして見聞してみますと、何しろお産というものがとにかくトラブルになりやすい今の時代、結局は本人たちが幸せであるならそれでいいんじゃないかという考え方もありだという気にはなってくるところです。
産科医に限らず医療トラブルに悩む全国の医療従事者に向けて、こういう独自のインフォームドコンセントを行い高い顧客満足度を得ている施設の接遇スキルというものも、活用していくべきなのかも知れませんが…

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