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2010年1月25日 (月)

医師不足という言葉には二つの意味がある?

年明け早々にいつもの話題が飛び込んできたなといった感じなのですが、地方病院における典型的なドミノ現象の一例として非常に判りやすい症例ですので、少し古い前振り段階からの記事も含めて紹介しておきます。

大田市立病院、外科医師が10月から1人減員(2009年8月5日山陰中央新報)

 大田市大田町の大田市立病院(岡田和悟同病院長)で10月以降、3人いる常勤外科医師のうち1人が退職することが5日までにわかった。同病院によると現時点で補充の見通しはなく、同病院の外科や救急医療の機能低下は避けられず、市は医師確保に全力を尽くす。

 同病院には現在、広島大学医学部第1外科から30代の外科医師3人が派遣されている。これまで3、4年をめどに退職するケースが多く、今回も2006年4月から常勤する医師が一定の在職期間を経ての退職。

 同病院によると、7月上旬に第1外科から医師1人の退職と、補充派遣を行わない意向の連絡があったという。今まで退職時には補充派遣が行われてきたが、今回は第1外科の所属医師が減少したため、との理由の説明があったという。

 10月以降は外科や救急医療を残る外科医師2人が、退職する医師が担当した患者を含めて担当することになるが、市も現場負担が大きいと認識しており、さらなる医師減員につながりかねないと医師確保を急ぐ考え。

 同病院の外科医師は05年時の6人をピークに年々減少。同病院は、新卒医師が研修先を自由に選べるようになった04年度の臨床研修制度改正や、同病院で08年度から消化器系専門医師が不在のため、人間ドッグが中止となり、手術患者数が減ったことが影響したと見ている。

 市は補充派遣の実施を要請するため、近く竹腰創一市長や同病院関係者が、第1外科を訪れる予定。竹腰市長は「市民の安全、安心が損なわれる恐れがある。医師確保にあらゆる努力をする」とした。

外科医3人が全員退職へ 大田市立病院(2009年8月5日中国新聞)

 ▽救急機能低下を懸念

 島根県の石見地方東部の拠点病院である大田市立病院(339床)で、3人の外科医師が全員、来春までに退職することが4日、分かった。現時点で補充見通しはなく、人口4万人の市で唯一の救急病院としての機能低下も危ぶまれている。

 3人を派遣してきた広島大医学部の第1外科が、所属する医師の激減などに伴い、引き揚げの意向を伝えた。1人は9月末、残る2人も来年3月末で退職する予定だ。

 同病院の外科の常勤医師はピーク時の2003年度、6人いた。だが、派遣元の広島大第1外科の入局者が年平均10人だったのが、ここ4年は同2・5人と激減。開業や内科転向も相次ぎ、計120人いた医局員が5年で約20人減り、派遣が難しくなったという。

 背景には、新卒医師が研修先を自由に選べるようになった04年度からの臨床研修制度がある。東京の大病院などが人気の半面、地方の大学や、外科や産婦人科など勤務のハードな診療科では志望者が減った。

 さらに大田市立病院では、内視鏡検査のできる専門医が不在となった08年度から人間ドックも中止し、手術の必要な患者が減った事情もある。第1外科の末田泰二郎教授は「医局員が減る中、腕を磨けない病院に若い医師を派遣する余裕はない」と説明する。

 竹腰創一市長は「救急医療もきわめて厳しくなる。一自治体の努力では限界だ」とし、「松江や出雲に偏在する外科医を石見にも回してもらうよう大学や県に働き掛けるとともに、国にも臨床研修制度の根本的な見直しを求めていく」と話している。(馬場洋太)

 ■腕磨けぬ環境に見切り 大都市集中是正を

 【解説】外科の常勤医師がゼロになる恐れも出てきた大田市立病院。来春までに退職予定の3人は伸び盛りの30代。専門医不在で内視鏡検査のできない同病院にはがん患者などが集まらず、若い外科医が腕を磨けない環境に、派遣元の広島大も医師不足の中で見切りをつけた。

 市も医師確保に努めてきた。昨年7月には一般会計からの繰り出しで手当の新設や増額をし、医師収入を2割増やした。12月には女性医師・看護師向けに院内保育所を開設。コンビニ感覚の救急受診抑制もPRし、医師の負担軽減に努めた。

 だが、目先の待遇より症例や手術件数の多さを求める若手医師も多い。新卒で研修先を自由に選べる2004年度からの臨床研修制度で、地方大学の医局に入る医師が減ったのは、症例の少ない田舎の病院への派遣が敬遠されるためでもある。

 島根大でも医師は激減。勤務のハードな外科では顕著だ。大田市立への派遣も本年度から中止しており、退職する広島大の3人の後任を送る余力はない。

 国もようやく、大都市の病院の研修医の人数制限など臨床研修制度見直しに乗り出したが、効果はまだ先だ。なんらかの強制力を伴う全国的な医師再配置の仕組みをつくらないと、大田市立のような地方病院の医師確保はできない。(馬場洋太)


大田市立病院の常勤整形外科医4人が3月末で全員退職へ(2010年1月21日山陰中央新報)

 大田市立病院(大田市大田町、岡田和悟同病院長)の救急医療を担う常勤の整形外科医4人が、連携して急患に当たる外科医が不在になるのに合わせ、3月末で大学病院に引き揚げることが21日、分かった。市立病院は島根県中部の1市3町をカバーする大田医療圏の中核医療機関。救急告示病院の指定取り下げの検討も迫られており、深刻な医師不足を背景にした異常事態に、関係自治体は危機感を募らせている。

 整形外科医を派遣している島根大医学部の内尾祐司教授は「医療過誤のリスクのある現場に整形外科医をとどまらせるわけにはいかず苦渋の判断をした」としている。

 大学側によると、今回の引き揚げは、広島大医学部から派遣されている常勤の外科医2人が3月末までに退職する見通しを受けた対応。整形外科医だけでは安全な医療サービスの提供が担保できないと判断し1月上旬、病院側に方針を伝えた。

 引き揚げ後の対応については整形外科外来は週に数日、非常勤の整形外科医を派遣するという。

 市立病院の救急医療は現在、整形外科医を加えた外科系と内科系の診療科医師27人でカバー。主に大田医療圏から搬送され、緊急手術や救命措置、入院などが必要な急患に対応している。同医療圏には救急告示病院機能を持つ公立邑智病院(邑南町)があるが、常勤の外科医はいない。

 市立病院によると、外科医と整形外科医計6人の退職方針の最終確認はできていないとし、岡田院長が28日開かれる市議会全員協議会で現状報告するという。岩谷正行・市立病院事務部長は「外科と整形外科の常勤医に退職の可能性があると認識しており、医師確保に全力で取り組んでいる」と話した。

整形外科医が全員退職 大田(2010年1月21日中国新聞)

 島根県中部の拠点病院、大田市立病院(339床)に4人いる整形外科医が3月末で全員、退職することが20日分かった。派遣元の島根大が引き揚げを通告した。同様に3月で退職する広島大からの外科医2人(全員)の補充見通しもないため、同病院は4月から救急告示病院の指定を取り下げる方針を決めた。

 整形外科医の引き揚げは、外科医不在だと救急などで専門外診療に関与して医療ミスを招く恐れを否定できない、として島根大医学部の整形外科学教室が判断した。週に数日、非常勤の医師を送ることで整形外科の外来は維持する考えだ。

 病院関係者によると、救急告示を取り下げる4月以降も夜間・休日などの救急外来は存続させる。ただ、内科系が中心で、外科系の処置が必要と分かった患者は救急車の段階で受け入れを断る方針という。重傷外傷などでは、市中心部から30~40キロ離れた出雲市や江津市の病院への搬送を余儀なくされる。

 救急告示の指定取り下げは、外科系医師が現在の15人から9人に激減して手術対応が難しくなることや、救急病院の看板を掲げながら受け入れを断ると混乱を招きかねないため、という。

 大田市と邑智郡からなる人口約6万人の大田医療圏では4月以降、公立邑智病院(邑南町)が唯一の救急病院になるが、同病院も常勤の外科医がおらず、開腹を伴う手術はしていない。

ま、腕が磨けない病院に魅力はないというのも事実なんでしょうが、ここに前提条件として存在している「どうせ医局派遣で嫌々行かされるのであれば」という一文を抜かしてしまっては、見えてくるべきものも見えてこないんじゃないかと思いますけれどもね。
それはともかく、そもそも常勤医師を飼い殺し的に置いておくことの是非が問われるほど医療需要の極めて乏しい絶対的過疎地は元より、医療圏人口数万人以下の地方中小都市圏での医療供給がどの程度であるべきかという点は議論が必要かと思いますが、その点でそもそもこの地域に外科系だけで15人も集めた「医療のデパート」が需要に見合ったものだったかどうかです。
何しろ「症例数が少なすぎて不人気」というくらいの病院だったそうですが、HPの診療科紹介を見ましても、こういう場所にこれだけ各科選り取りみどりで医者を取り揃えていては、それはさぞかし皆さん暇で症例数も揃わないだろうとは想像できるところです(と言いますか、本当にコイル塞栓やバイパスなどまでここでやっているのでしょうか?)。
ちなみにここのHPトップにも医師急募!と出ているのですが、条件面など一切公表していないところを見ましても、まあそれなりの待遇だったのだろうなあと想像してしまうところなのですが、その辺りの実情はどんなものだったのでしょうかね?

先ごろの中医協公聴会でも聖地・福島で公立病院院長をされている先生などが「地域医療がドミノ倒し的に崩壊している!」 と熱弁をふるっていらっしゃいまして、この種の問題が全国的に広がっているというのはすでに多くの一般人も含めて半ば常識化してきているのは確かでしょう。
しかし一般紙の論調を見ていますとやはりどこかで見たような話ばかりが相変わらず続いていると言いますか、何かしらこの現象における一面の真実のみが全てを表しているかのように報じられているのは、問題点の解決を図る上でむしろ逆効果になりかねないのではと危惧するところ無しとしません。

【社説】医師不足/具体的改善策見えてこない(2010年1月23日福島民友新聞)

 厚生労働省が昨年末に発表した2008年「医師、歯科医師、薬剤師調査」で、本県の医療施設で働く医師は人口10万人当たりで183.2人と、全国37位という低さだったことが分かった。全国平均に達するには、計算上であと約600人が必要になる。
 特に産科・婦人科医が不足しており、本県は10万人当たりで6.6人と、全国で42位の少なさだった。

 医師不足は住民の健康にかかわる深刻な問題だ。本県をはじめ地方では診療科がなくなり、産む環境が整わなくなって久しいが、都市部との医療環境格差は少しも縮まらない。本県でも医師確保にあの手この手で奔走するが思うように集まらないのが現状。地方自治体の医師確保は手詰まりの状況にある。

 これでは地方の医療は疲弊するばかりだ。民主党は「医療破壊を食い止める」と訴え、政権交代を果たした。鳩山由紀夫首相も所信表明演説で「地域医療や救急、産科、小児科などの医療提供体制を再建する」と明らかにしている。

 しかし、10年度政府予算案は医療分野でも削減が行われ、鳩山首相が唱える「命を守る政治」は視界不良のままだ。地方の医師をどのようにして増やすのかなど、医師不足対策の具体的な道筋を明確に示して実行する必要がある

 こうした中で、10年度から医療機関に支払われる診療報酬が全体で0.19%引き上げられることが決まった。大幅なプラス改定への期待が大きかった医療現場には、この程度ではという失望感があるかもしれない。だが、財政が厳しいという制約もある。診療報酬は小泉政権時代から引き下げが続いたが、民主党政権が10年ぶりのプラス改定を決めたことは評価したい。

 決定を受け厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は10年度診療報酬改定の骨子をまとめた。診療所が病院よりも高く設定されている再診料の統一に向けた検討などが含まれている。22日には福島市で地方公聴会が開かれたが、従来以上に効率的、効果的な配分を目指してほしい。

 ただ、崩壊瀬戸際の地域医療を立て直すには、診療報酬の増額だけでは限界があるのも確かだ。地方での医師不足に拍車を掛けたとされる新人医師を対象にした臨床研修制度の見直しも、思うように効果を挙げていない。研修制度には新たに都道府県別の定員上限が新設されたが、10年度の本県研修病院の定員充足率は50%と前年度とほぼ同じ。医師偏在の是正にはならなかった。

巨額の公費で養成される医師は国民の財産と考え、一定期間は計画的に配置するなど、これまでのやり方にとらわれない思い切った再生策を求めたい

どこから突っ込んでいいものやら突っ込みどころに迷うくらいで、本題からも大きく脱線しそうですからここでは華麗にスルーしておきますけれども、逆に医療問題というものがこうした認識の元にその解消を図られているということであれば、恐らく現場で実際に働いている医師らスタッフのストレスは今後も増して行く一方なのではないかと思います。
医療はもちろん社会インフラとしての側面もありますから、消防隊や警察のように全く仕事がなくてもある程度圏域ごとに整備しておかなければならない部分もありますが、一方で医師、看護師を始めとして資格を要する専門職ばかりであって、しかも社会全体での供給量が限定されているい上は、まず需要の多く供給が足りない場所を最優先に供給を増やしていくのが社会全体での需給ミスマッチを削減する早道ですよね。
地方の医師不足と言いますが、都市部で需要に供給が追いつかず激務の中頑張っている仲間がいるのに、自分は田舎病院で今日も勤務時間をどう潰そうかと考えているという状況は、熱心でやる気のある真面目な医者ほど耐え難い状況なのは当然であって、まずはその辺りの需給バランスの感覚を地域住民自身がもう一度検証していかなければならないでしょう。

地方においては崩壊していく病院がある一方、長年にわたってうまく廻っている病院もありますが(印象的にそうした病院はまず全例が非公立の施設のように思います)、そうした病院を見ていて感じるのは長年勤務している病院の基幹となるスタッフがしっかりしていることで、医師確保は大学医局の派遣頼みで数年もすれば全部入れ替わっているなんて病院でうまく廻ってる施設は今どきほとんどないように思います。
大学医局の人事に乗って動いている医師というのは基本的に若くて腕を磨きたい連中が多いわけですから、そうした医者に田舎病院に定着してくれと言っても無理な話で、逆に言えばそろそろ一箇所に腰をすえていこうかと考えている程よく枯れた人材こそ狙い目ということになるはずなんですが、そんな人材は大学医局に日参したところで決して出てこない、むしろ医局人事から外れた場所にいるはずなんですね。
そしてそうした人達が勤務先を決める場合に、もちろん勤務条件など待遇面はもちろんですけれども、やはり今現在働いている医者達が「まるで休みに来ているよう。失礼な言い方だが、ばかばかしいとも感じる」なんて言っている地域で骨をうずめようと考える医者がそうそういるものかどうか、社会常識的に考えても判ることではないかと思います。

判で捺したように「国が強制的に医師を送り込んでくれなければ」なんてことを言っている人たちが例外なく公立病院関係者であることを考えた場合に、そうした場所に何故医者がいなくなっていくのかと言えば、ひとつには医局人事頼りで全く自前で医者を集める努力をしてこなかった自業自得な面もあるでしょうし、もう一つは広い意味での勤務条件ということもあるでしょう。
しかし勤務条件と言っても別に仕事が忙しすぎるとか給料が安いとかで来ないわけではなく、逆に地方や僻地の中小公立病院と言えば仕事は楽で給料も割増手当がついて高いという場合がほとんどなのですから、それでは仕事が楽で儲かる職場なのに何故人が来ないの?という当たり前の疑問に思い至ってみれば、何かしらそこにおかしな事が起こっているんじゃないかと推測できますよね。
都市部の大病院も地方の中小病院も同じように医者が足りない、医者が足りないと言っていますけれども、それじゃ今いるお医者さんは年中休みなく働いて激務にヒィヒィ言っているのかと言った当たり前のところからまず実態を見ていくと、同じ医者が足りないという言葉の背後に存在する需給ミスマッチの現実が見えてくるでしょうし、「医師偏在」をどう解消していくべきなのかという議論の取っ掛かりにもなるような気がします。

さて、国をあげて国策で医師強制配置をしようなんて話が現実的なものとなった場合に、あなたが為政者ならどこに医者を送り込みたいと思いますか?ってことですよ。
症例数が少なすぎて行っても仕方がないと医者が逃げ出す病院に医者を送り込むべきなのか、それとも日夜次から次へと患者が押し寄せてきて医者が激務で倒れていく病院に医者を送り込むべきなのか、別にこれは何が正解というわけではなくて、社会的インフラ整備ということと絡めて国民全てが議論して答えを出すべき問題だと思うのですけれどもね。
ちなみに現実的な医療政策の担当者である厚労省はとっくにその答えを見つけ出していますけれども、もしそんな政策が実現すれば一番割を食いそうな人たちが最も政策実施を熱望するようなことを言っている、何かしら面白い世の中だなとは思いますね。

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