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2010年1月26日 (火)

動き始めた地域医療再生 問題はどこに向かって動いているのか?

地域の病院の診療科が縮小するだとか、病院自体が崩壊するだとか言った話は昨今珍しくありませんが、逆に一度崩壊した病院が復活したという事例は比較的珍しいと言えますね。
以前から「市長が医者の引き抜き?!」なんてネタを提供いただいたりして、時々その消息が報道されていました榛原総合病院ですが、ようやく救急再開に向けて動き出したようです。

榛原総合病院:救急再開にめど 牧之原市長「3月の民営化から」 /静岡(2010年1月16日毎日新聞)

 牧之原市、吉田町が運営する「榛原総合病院」(牧之原市、茂庭将彦院長)が3月1日を目指す民営化に合わせ、救急患者の受け入れ再開のめどがつきつつあることが15日分かった。同市の西原茂樹市長が同日、市議会全員協議会で「3月1日から民営化できる場合、救急診療ができるようにしたいと考えている」と述べた。同病院は医師不足で新規の救急患者の受け入れを先月からストップしており、隣接する島田市の島田市民病院の診療を圧迫するなどの問題が出ていた。【浜中慎哉】

 病院で実務を取り仕切っている茂庭院長は15日、取材に対し、同病院の指定管理者になることを受諾した医療法人「徳洲会」が診療態勢を整えるため内科と外科の医師数人を派遣する見通しだと説明。病院に残る見込みの勤務医と徳洲会の派遣医と合わせ、救急診療の再開に必要な約20人の医師を確保できるめどがついたという。

 一方、看護師約100人の多くが民営化に反発して辞める意向を示しており、看護師不足に陥る事態も否めない。

 茂庭院長は、この問題について「医師がいても、看護師がいなければ診療はできない。徳洲会と協力して今後、看護師を募集するとともに、今の看護師の慰留にも努めたい」と強調した。

 また茂庭院長は島田市民病院の負担を軽減するため、8日に同病院に入院患者の受け入れを打診し、現在18人を榛原総合病院に転院させる方向で調整中であることも公表した。

さすがの徳洲会、こういう時には地域住民にとって頼りになるという話ですけれども、逆に言えば徳洲会が受けたということは医師を補充すればまだ目があると判断したということなんでしょうか?
この記事を見ていただいてもお分かりかと思いますけれども、こういう病院経営がうまく行っていないというのは必ずしも顧客が来ないからというわけではなく、例えば競合施設が潰れてウハウハであるはずの島田市民病院がかえって連鎖崩壊の危機にあるのを見ても判るように、いわゆる一般的な経営問題とはまた少し別な視点からの立て直し策が必要になってきます。
昨今では公立病院民営化などと言ってあちこちで民間からも参入していますけれども、オリックスの参入で有名な高知医療センターのようにスキャンダル続きは論外としても、畑違いからの参入例で劇的にうまくいっているという話もあまり聞かないだけに、こと病院経営に関しては強力なノウハウを持つ徳洲会というのも一つの落とし所ではあるのかも知れません。
しかし永年勤続してこそ旨みのある公立病院看護師ですから、それは確かに民営化、しかも徳洲会なんて話が出てきた時点で辞めざるを得ないでしょうが、そのあたりの地方公立病院独特な土着スタッフがどのくらい残るものかも今後色々な意味で注目すべきところではあるのでしょう。

ところでまさにこの種の事例を対象に国が主導するところの地域医療再生計画ですが、かつての医療に吝い(笑)自民党政権時代の計画でも「一兆円規模の基金を設立、雇用対策なども含め総額で四~五兆円規模」なんて大きな話が出ていたくらいで、これが医療再生を掲げ政権を奪取し、医療を経済成長の牽引産業にと意気込んでいる民主党政権ともなればどんな話になっていくのかと期待されるところですよね。
ところがこの壮大な計画、実施の初動の段階からしてすでに迷走しているんじゃないかという話が最近あちこちから聞こえてくるのですが、すでに例の100億円プランが消えて25億円プランのみに切り下げられた時点で「民主党になってもそれか!」と失望を招いた一方で、そもそも各地の自治体から上がってくる計画自体が杜撰で「これでは単なる壮大なバラマキだ」という批判もあったものでした。
ところが政権交代の余波ということなのでしょうか、今度は金を出す側も問題なしとしない状況のようで、例えばこんな話があります。

審議の前に交付額内示を強行 バラマキ優先の医療再生基金(2010年01月13日ダイヤモンド・オンライン)

 厚生労働省のドタバタ劇は、いったいいつまで続くのか──。

 崩壊する医療の立て直しを目指す地域医療再生基金の混乱は収まる様子もない。この基金は、医師の確保、急患センターの設置や検査機器の導入など、都道府県(各2エリア)がつくった再生プランに対して、国が50億円ずつ交付するもの。本来は、昨年12月中旬に有識者会議(6人)で各プランの審議を行なった後に交付額を内示・決定し、各自治体が基金条例を議決する段取りだった。

 ところが、厚労省は昨年12月18日、有識者会議を開く前にいきなり交付額を内示する“反則技”を繰り出した。計画どおり1月中に交付決定するための苦肉の策である。医政局指導課は、役所の事情を楯にこう弁明する。

「補正予算の見直しの影響もあり、時間が足りない。内示を18日に出さないと、2月議会の議決にも間に合わない。1月下旬に有識者会議を開いて交付決定する」

 そもそも厚労省には、各県の再生プランを事前審査する段階でもずさんさが目についた。5億円を超える事業でも、内訳金額と積算根拠が示されなくてもお咎めなし。事後検証のために設定する各事業の数値目標がないケースもあった。

 指導課は、内示前に内訳金額や積算根拠のみならず、この数値目標についても「全県から取った」と明言したが、疑問は大いに残る。

 内示後にある県を確認すると、高度なガン治療を行なう設備の導入は、他の設備のように「圏域内の入院治療の割合(50%)を県平均の70%まで引き上げる」といった数値目標がいっさいない。

 1月下旬、わずか1回の有識者会議で審議をどう深めようというのか。再生基金が、すでにバラマキへと突き進んだことは確かだ。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)

すでにバラマキへと突き進んだことは確かなんだそうですが(苦笑)、確かにこのノリはかつてのふるさと創生資金を彷彿とさせる既視感があって、正直これだけの大きなお金をかけた話をそうまで拙速に決めてしまってよいものかと疑問は残ります。
さらに悪いことには、この資金というものは当然ながら?その向かう先は例によって箱物のオンパレードですから、要するに形を変えた土建行政であって現場で苦労している人々には全く何のメリットもない、下手をすると箱物作ってスタッフおらずということになりかねないということなのです。
となると、箱物に人間を入れていくために何かしら別なコネクションも必要になってくるということは理解出来るわけですが、そこで急遽名前が上がってきたのがあの団体だというあたりが面白いなと思いますね。

地域医療再生計画「医師会の参加が大事」-厚労省有識者会議が初会合(2010年1月25日CBニュース)

 厚生労働省は1月25日、「地域医療再生計画に係る有識者会議」(座長=梶井英治・自治医科大地域医療学センター長)の初会合を開いた。委員らが都道府県の地域医療再生計画に対する意見交換の中で、計画に医師会が参加することの大事さや、住民との合意の必要性などを指摘した。厚労省は、早ければ月内にも都道府県に地域医療再生臨時特例交付金の交付決定を通知する方針で、この日出た意見を取りまとめ、併せて都道府県に示す考えだ。

 厚労省は今年度補正予算で、地域の医師確保や救急医療の強化など、地域における医療課題の解決を図るため、地域医療再生臨時特例交付金を交付する。これにより都道府県は「地域医療再生基金」を設置し、地域医療再生計画に基づく取り組みを行う。

 有識者会議は、地域医療再生計画の開始に当たり、基金のより効果的・効率的な活用に向けて、計画に対する技術的助言などを行うほか、計画の達成状況について確認し、今後の計画改善などに向けて評価などを行うことが目的。
 メンバーは梶井座長のほか、内田健夫・日本医師会常任理事、水田祥代・九大理事・副学長、田城孝雄・順天堂大医学部公衆衛生学講座准教授、藤本晴枝・NPO法人地域医療を育てる会理事長、正木義博・済生会横浜市東部病院院長補佐の5委員。

 初会合では、医師確保関係事業、医療機関の機能分担・連携関係事業、救急・周産期・小児医療関係事業、在宅医療関係事業など、それぞれの地域医療再生計画について意見交換した。
 医師確保関係事業について梶井座長は、「県と地元の大学、医師会が、医師をどういうふうに県下に配置していくか。その議論との共同作業がなくてはいけない」と指摘。
 また、医療機関の役割分担や連携事業について藤本委員が、病院の再編・統合は、住民との合意形成が一つのポイントとし、「地域全体でどうすれば医療機能が最適化されるのか。再編・統合することで、今よりも安定した医療提供ができるという情報をきちんと出して」と求めた。
 水田委員は、計画には「強いリーダーシップが必要」とし、「医師会に絶対に参加してもらい、一緒にやっていくことがものすごく大事だ」と主張。内田委員はこれを受け、すべての都道府県医師会に対し、計画の中心となって取り組むよう要望したことを説明した。

 有識者会議は年に1回程度の開催が予定されていたが、委員からもう少し頻回に開催すべきとの意見が上がり、厚労省側は今後、検討するとした。

厚労省としても一応は箱物ばかりでもいけないという危機感はあるということなのでしょうか、マンパワーの重要性に気付いたらしいのはまあよいとして、そのための使える手駒として結局は医師会(この場合は日本医師会ではなく、地区医師会主体でしょうね)人脈しかなかったのも事実なんでしょうが、しかしこうまで公に医師会の権限を認めて都道府県に押し付けると宣言するのもどうかと思う話です。
もちろん地域の医療資源のネットワーク化を行う上で、トップに号令すれば済む病院勤務医と違って開業医らは医師会のツテでもなければ難しいのも事実でしょうけれども、医師会と地域医療再生計画と言えば例の千葉県医師会が現場の要望を握りつぶした?!なんて話を思い出してしまいますからね(しかしこの記事、コメント欄がまた面白いですね)。
こういう記事を見ますと民主党が医師会と決別すると言っている中でも、現場の厚労省では相変わらず医師会医師会と言っているのかとも取れるような話ですけれども、旧政権時代には厚労省と医師会が衝突しているかのようなシーンも多々見受けられただけに、結局あなた達は仲いいのか悪いのかはっきりしろと言いたくなるのは自分だけでしょうか(苦笑)。

一説によると厚労省としては大学の医局による医師派遣システムを潰して、自分がその後釜に座るような構想を抱いていたようで、例えばこの記事に関してもこんな書き込みが散見されます。

604 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 03:18:26 ID:wOy3IEaH0
>>県と地元の大学、医師会が、医師をどういうふうに県下に配置していくか。その議論との共同作業がなくてはいけない

全医師が自治医大の卒業生みたいな扱いになるのかな?
保険診療やめて美容にいくやつが激増しそうだな。

605 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/01/26(火) 07:52:39 ID:P9y7asZNO
ソ連の計画経済のようだなぁ。
医者の強制配置を進めるよりも
無駄に造ったハコモノを整理したほうがいいと思います。

606 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/01/26(火) 07:56:51 ID:+zTYPZzX0
昔、先輩から、卒後は行政にこないかと誘われたことがある。
公立病院の医師人事は今は大学医局に握られているが
いつか見ていろ、役所が人事権奪い取ってやる
といわれた。
あの先輩もいまは偉くなっているだろうな。

全医師派遣の自治医大化と言いますか、医師会と厚労省が強力?タッグを組んで医師の人事権を云々するような未来絵図が成立してくるということになれば、これは現場で今も汗水たらして働いている医師たちにとってはある種の悪夢かという気もしないではないんですが(苦笑)。
しかし昨今ではマスコミも巻き込んで一生懸命医師強制配置なるものを成立させようと絶賛キャンペーン中の御様子ですから、これも黙っていてはそんな方向に話が進んでいく危惧もなきにしもあらずなのでしょうが、恐らく実際に導入するとしても(医師会に配慮して?)新卒者や若手らを対象とした制度になりそうな気もします。
案外そういうことになっても、最初からその境遇しか知らない新卒の先生方はそんなものかと受け入れてしまうだろうという読みもあるのかも知れず、その意味では今どき医者になろうかという人間はストレス耐性だけは高いと認められているのかも知れませんね。

いささか脱線気味な公立病院関連の話ですが、明日以降ももう少し続けようかと思っています。

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