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2010年1月22日 (金)

面子が変わると今までにない話も出てきます?

診療報酬は総枠横ばいということで今後は業界内部で報酬の奪い合いになるのでは…とは誰しも予想しているところだと思いますが、実際に細部を詰める作業となってきますとこの辺りの立場の違いがくっきりと現れてきているようですね。
先日出た話で面白いなと思ったのはこちらの記事なんですが、嘉山先生いくらなんでもそれは言い過ぎというものでしょう(苦笑)。

【中医協】勤務医対策、病院側の立場の違いくっきり(2010年1月18日CBニュース)

 「病院の人件費率を下げないことを条件に、チーム医療に診療報酬を付けてほしい」(嘉山孝正委員)、「病院の人件費率に縛りを掛けるのは、病院を経営する上で無理な話だ」(西澤寛俊委員)―。来年度に実施する診療報酬改定の「現時点の骨子」を取りまとめた1月15日の中央社会保険医療協議会(中医協)・総会では、診療報酬上の勤務医対策をどう盛り込むかが焦点になり、病院側委員の立場の違いが鮮明になった。

 最終的には、厚生労働省による当初案で「負担を軽減するための取組を推進」としていた文言を、「処遇を改善し、負担を軽減するための取組を推進」に修正することで決着。その上で、負担軽減と共に処遇改善につながる体制づくりを要件にする点数を拡大する方向性が示された。

 山形大医学部長の嘉山委員は意見交換で、これまでの診療報酬改定で病院の勤務医のモチベーション向上に直結する仕組みを担保せず、病院からの「立ち去り」を防げなかったことが、病院医療の崩壊につながったと主張。厚労省が提示した当初案に対し「勤務医対策と書いてあるが、何のための対策か。病院の収入が増えるだけだ」と指摘し、人件費率を下げない病院に算定を認める点数をつくって対策を促すなど、より具体的な文言を「現時点の骨子」に盛り込むよう求めた。
 全日本病院協会の会長で、自らも札幌市内で民間病院を経営する西澤委員がこうした点数の設定に難色を示すと、嘉山委員は「“悪徳病院経営者”がもうかるシステムではなく、現場で働いている人に(報酬が)行くような制度をどこかに入れていただきたい」とさらに強く求めた。

 全国公私病院連盟の副会長で、公立病院の経営に長年携わってきた邉見公雄委員は、「嘉山委員の言う方向は正しい」と理解を示す一方で、「どういう方策を取るかが難しい。われわれ自治体病院は『人件費率を下げろ』と言われている。地方の病院では、雇おうにも人がいなくて雇えない場合もある」とも述べた。

 すると、茨城県内で民間病院を経営する鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事)が、「自治体病院の先生方は、たとえ経営が赤字になって事実上倒産するような状態になっても、自分の財産を全部投げ出すようなことはない」「われわれ民間病院では、(経営者個人が)責任を負って経営している」などと強調。嘉山委員が主張する点数の設定に、「経営者だったらお分かりいただけると思うが、ちょっと難しい」と難色を示した。

 これに対して嘉山委員が「病院経営の目線ではなく、患者目線で見てほしい」「ここまで言いたくはなかったが、先生(鈴木委員)の病院が国民に必要とされているのかどうかもまだ評価されていない」と述べるなど、病院側の足並みは最後までそろわなかった。

 しかし、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は、「個人診療所の経営者なので、黙って聞いていた」としながらも、「2号側(診療側)が建設的な意識の中で議論をしているのは大変に意義がある」と、一連のやりとりを評価した。

嘉山先生と言えば先ごろ11月6日に開かれた中医協の診療報酬基本問題小委員会でも、各方面から悪評高い外来5分ルールについて「まるで人頭税のような概念を持ってくるのは非人道的だ」などと発言して長妻大臣直々に廃止の腹を固めさせたなんて話がありますけれども、相変わらず飛ばしてますよねえ(苦笑)。
しかしここで注目すべきは邉見医員の発言にある「われわれ自治体病院は『人件費率を下げろ』と言われている」の部分で、確かに医師の待遇改善を評価する上で人件費率をその指標としてしまうと、これはこれで特に公立病院においては実態を見誤る元になるのではないかという気がします。
個人的にはとりわけどの立場に肩入れするというわけではありませんけれども、例えば嘉山先生のいらっしゃるような大学病院であるとか各地の自治体病院が慢性的な赤字を計上しているのは、多少の診療報酬分配のさじ加減でどうこうなるものではない問題なのだという認識は議論の前提としておかなければならないとは思いますね。

さて、特にこの改訂作業でどこを減らすのかという議論になってきた場合に、真っ先にターゲットになることがほぼ確定的なのが地域の開業医だとはもっぱら噂されているところですけれども、例えば現行では診療所の方が高くなっている再診料統一の問題一つ取ってみても、これを統一するのに病院側に合わせて下げるか、診療所側に合わせてあげるのかで大騒ぎになっていますよね。
そもそもどれだけ患者が来るかも判らない外来業務で予算が先に決まっているというのもおかしな話だと思うのですけれども、具体的に支出切り下げ効果についても数字を出して検証中ということですから、これは本気で削りにかかってくるのだろうとは予想されるところです。
ところでこの再診料に関しても非常に興味深い話が出てきていますが、まずは一般紙の記事から引用してみましょう。

再診料「地域医療へ貢献なら加算」 厚労政務官(2010年1月19日朝日新聞)

 来年度の診療報酬改定で焦点となっている、再診料の病院(600円)と診療所(710円)の格差見直しについて、厚生労働省の足立信也政務官は19日、診療所の再診に対する報酬水準を下げて、時間外対応など地域医療に貢献する診療所には加算する意向を明らかにした。

 再診料の価格差は、開業医に手厚い報酬体系の象徴として批判されており、統一する方向で議論が進んでいる。

 足立氏はこの日の記者会見で、「時間外で電話に応じたり、自分が診察できなくても他の病院を紹介するなど、地域医療で頑張っている方々の診療料を下げるつもりは全くない」と強調した。そのうえで、「薬だけ処方されているようなところや、9時~5時でいなくなって、その後は連絡の取りようがないところ」と例示し、こうした診療所は「若干の低下はあるだろう」と述べた

 厚労相の諮問を受けて、中央社会保険医療協議会(中医協)が具体的な報酬配分について協議を始めたが、診療側委員が再診料引き下げに強く反対している。

再診料統一問題に関してやはり開業の診療所側では切り下げで病院側水準に統一されるのではないかと危機感を抱いている、それに対して必ずしも診療所を切り下げるわけではありませんよという足立政務官の発言は、自民党支持基盤であった医師会排除に続く民主党の医師票取り込み策の一環だろうとは容易に想像できるところではあるところです。
問題は「地域医療で頑張っていれば切り下げない」云々の発言が意味するものですが、いったいこれはどういうことなのか、診療所の中でも報酬に格差をつけていくということなのかと誰しも疑問に思うところですよね。
このあたりはいつものロハス・メディカルさんの方でもう少し詳しい発言内容が掲載されていますから、そちらを引用させていただきましょう。

地域医療しっかりやる開業医は診療報酬減らさない 足立政務官(2010年1月19日ロハス・メディカル)

 厚生労働省の足立信也政務官は19日、15日に中央社会保険医療協議会(中医協)に諮問した来年度診療報酬改定案の基本的考え方として「地域医療をしっかりやっている開業医の再診料と外来管理加算の合計額を減らすつもりはない」と述べた。来年度改定では、診療所(71点)と病院(60点)とで異なっている再診料を同一に揃えることが決まっており、開業医らからは診療所の点数が引き下げられるのでないかと警戒する声も多く出ている。(川口恭)

 ロハスメディアの取材に応じた。発言の要旨は以下の通り。
「中医協に諮問した診療報酬改定案について、今は諮問してパブリックコメントもいただいている段階なので、強制するわけではないが考え方を少し説明しておきたい。開業医の再診料を全部下げるとかいう報道もなされているが、そんなに狭い話ではない。

 地域医療をしっかりやっている所。たとえば24時間とまでは言わないまでも時間外の対応や紹介、日常の診療や説明もしっかりやっている開業医について、再診料と外来管理加算の合計額を減らすつもりはない。しかし、そうじゃない人たち、今後、退院後の紹介管理や通院での検査や化学療法などが重視されるという流れの中で、ほとんど投薬しかしてなくて9時5時であとの時間は連絡も取れないというような、その人たちと同じ評価でいいのかが問題だ。

 大原則として、しっかり地域医療をやっている人の外来診療報酬は守りたい。そういうことをやってない条件を満たしてないような人のものを減らすのはやむを得ない。そこを削らないとプラスする財源が出てこないのだから」

足立氏のキャリアは純然たる勤務医のそれですから、いわゆるビルクリに代表されるような「時間が来たらハイそれまでよ」な開業医に対してそれなりに鬱積した感情を抱いているところなきにしもあらずなのではないかとも推測出来るのですが、さてこれは現実問題としてなかなか微妙な話を出してきたなと思わざるを得ないところですよね。
要するに足立氏の考えとしては今後多忙な病院業務をどんどん開業医に移していくというビジョンを描いているのかも知れませんが、そういうミニ病院的なことをやりたい人がどれほど開業という道を選択しているのかという素朴な疑問が第一点で、あるいはこれは昨今巷間でも議論盛んな逃げ道潰し作戦の一環かという穿った見方も出来そうな話でもあるわけです。
ついで一点、現実的な疑問として「しっかり地域医療をやっている人」なんて抽象的な言葉をどう診療報酬に結びつけていくかということがありますが、まさか時間外受信者数や逆紹介比率で算定しようなんて考えているのであれば、現状ですら時間外加算を切られまくりでやってられないと嘆く全国の「しっかり地域医療をやっている診療所」が全く見えていないお気楽な元勤務医の妄言とも言われかねません。

そしてもう一点、開業医というのは大勢の医者が揃っている病院と違って原則医師一人でやっているところが多いわけですから、時間外診療をやると言えば当然通常勤務をこなし、その上で時間外もやれと言うことであればこれは明らかに過重労働ということになりますが、それをどう考えるかということです。
別に時折必要があってそういうことをやるというのはもちろんどの職業でも同じことで仕方がない話でしょうが、足立氏の言うところによればこれからは「日常業務として」そうした超過勤務をこなさないと金は出しませんよと言っているわけですから、何のことはない国が率先して労基法無視で働くことを強いていきますよということですよね。
厚生労働省政務官と言うくらいで足立氏も(少なくとも形式上は)医療行政のみならず労働行政にも責任なしとしない立場のはずですけれども、「時間外労働をしっかりやらないと金は払わないぞ」なんてことを労働者のための省庁の役人が公に口にしちゃっていいのか?という素朴な疑問があります。

そもそも勤務医が疲弊している原因として労基法無視のトンでもない労働条件がある、だから民主党政権になれば医者の人権を尊重しもっと人間らしい生活が送れるようにしますと言うのが足立氏を始めとする民主党医療畑の皆さんの選挙前の売り文句だったように記憶していますし、実際それに期待して民主党に一票を投じたと言う医療関係者も多かったわけです。
ところが実際に政権を取ってみれば一番の売り文句だった医療費引き上げが空手形に終わったことは置くとしても、肝心の労働条件に関してもいつの間にか国から直々に違法労働を強要されるような話になってきているわけですから、これは話が違うぞと思い始めている人間もそろそろ増えてきているのではないでしょうか。
おそらくこの政策が実施されるとこれを良い契機にと地域の老開業医が一斉廃業することもあり得るかなと思っているのですが、そうした「ほとんど投薬しかしてなくて9時5時」の先生方でも医療業界内で一定の業務分担を果たして来たという事実に想いを馳せるとき、果たしてこれが残った医師の負担軽減になるのかどうか疑問の余地なしとはしないところです。

重い神輿などを皆で担ぐ時などもそうですけれども、一部の担ぎ手がどんなにさぼっているように見えても「いないよりはマシ」なのであって、やはり担ぎ手の頭数を減らすようなことをやっていると短期的にはいざ知らず、長期的にはうまく回っていかないということがままあるものです。
いずれにしても日本で一番働いていないレベルの医者でも多くの国における医者の水準程度には働いているんだという現実もまたありますから、足立氏も「俺並に働けない医者なんていらねえ!」なんて感覚でやってると今後もどこかで大コケする可能性がかなりあるかなと思いますけれどもね。
何にしろ中医協メンバーなどもそうですが、色々と医療行政の中核に関わるメンバーが変わってきて、今までにない視点での発想が結構出てきているというのは確かなようですから議論を眺めていても面白いですし、案外斬新な発想が思いがけない大成功につながるなんてこともあり得るかも知れないと、ここは一つ前向きに考えておくことにしましょう。

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