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2010年1月29日 (金)

救急医療 意外なところから意外な方向へ話が進んでいたりするようで

またもたらい回しか!なんて見出しが踊るのが見えるようですけれども、こういうニュースが出ていました。

東京消防庁が救急搬送ミス 5カ所断られた男性死亡(2010年1月28日産経新聞)

 東京消防庁が昨年12月下旬、東京都目黒区の男性(73)を救急搬送した際、救急隊員が搬送先の医療機関と連絡を取らずに搬送し、受け入れを断れていたことが28日、都などへの取材で分かった。男性は同病院を含む計5病院で受け入れを断られ、死亡した。第3者の医師らで作る「都メディカルコントロール協議会」がミスと死亡との因果関係を調べている。

 都救急災害医療課によると、昨年12月24日午後3時25分ごろ、男性の搬送を求める119番通報があり、救急隊が出動。救急隊員は搬送先に決めた東邦大大橋病院(目黒区)の連絡先を間違え、目黒病院(同)に受け入れを要請した。

 救急隊員はミスに気付かないまま大橋病院に搬送したが、大橋病院は他の救急患者の治療があったため、受け入れを断ったという。

 その後、目黒病院に向かったが、病状から医師の判断で転院を勧められるなど、計5病院で搬送を断られた。男性は119番通報してから約1時間45分後に6か所目の病院(同)に搬送されたが、大動脈解離で死亡した。

 東京消防庁は「救急搬送時に救急隊員がPHSの操作を誤り、病院連絡にミスがあったことは事実。遺族に説明し、謝罪した」としている。

ちなみに目黒病院のHPを見てみましたが、訪問看護などをやっている60床の小さな病院ですから、さすがにここにダイセクを受け入れろと言うのは無理がありそうですね(逆に言えば目黒病院への間違い電話でどういう情報を伝えていたのか、ですが)。
やはりとっさの時にはこういう間違いが起こりやすいということですが、いち早く謝罪をしたという消防庁がこの件に関して、どんな再発防止策を立ててくるのかといったことにも注目すべきかと思うところです。

救急搬送というものはもちろん全国どこでも同じような態勢であれば不公平感もないのでしょうが、医療資源や道路資源、地理的状況など各種の前提条件が異なっている以上は現実的に無理な話ですよね。
最近では何でも治療の標準化が進んでいるのは基本的にいいことなのでしょうが、あまりそのハードルが高すぎると「帝王切開は30分以内に」なんて話と同様、現場がついてくることが出来ず自分の首を絞める結果となってしまう場合もあるわけです。
最近ではt-PAだ、3時間ルールだと脳梗塞も時間との戦いですが、先ごろ脳梗塞急性期の救急搬送には(当然ながら)地域差が大きいという調査結果が一般紙に出ていまして、こういう現実の存在は存在として「医療水準に地域格差があってはならない」、故に格差是正の対策をと総括することが必ずしも正しいことなのかどうか、個人的にはいささか疑問無しとしません。

純粋に搬送の地域差をなくすためというのであれば、医療体制整備に金を使うより田舎の道路なり救急搬送用のヘリなりの整備に金を使った方が有効でしょうが、当然ながら財政難の折に土建行政に金をかければかけるほど医療行政に回ってくる金は減る道理で、各差は減ってもトータルの医療水準はかえって下がってしまうでしょう。
医療リソースが豊富な地域から貧弱な地域へ(国が強制的に?)再配置を行って医療水準を均一化した方が地域差はなくなる理屈ですが、基幹病院のレベルが引き下げられる結果、全体が低い水準の方に統一されてしまう可能性も考えないといけないでしょう。
医療提供体制を均一化することと医療の水準を引き上げることは全く別な話であるはずですし、多少遠くともいざとなったら何でも送れる高度なセンター施設が後ろに控えていた方が、どこも何かしら力量不足な中小施設が身近に林立しているより実際問題医療はやりやすいと思うのですが、格差是正という判りやすいキーワードが実戦的な医療システム構築の妨げになったのでは仕方ないと思いますね。

ま、それは余談としまして、周産期救急というものも近年非常にクローズアップされていまして、特に問題となっているのが以前にも墨東病院などで「たらい回しで妊婦死亡!」なんて大騒ぎになりましたけれども、「妊婦が脳出血を発症した」といった場合の対応施設をどうするかです。
各地に周産期医療センターが整備されていますけれども、これはあくまで母体と胎児の安全を図るための施設ですから当然ながら産科と小児科が整っていることが要件で、そうなりますと妊婦が重篤な他疾患を発症したという場合に対応できかねる場合も現実的にあるわけですね。
かといって例えば脳卒中専門の施設となると今度は産科や小児科がそろっていないから妊婦は対応出来ないという話になりがちで、その点で東京都が「周産期の重症は何でも受け入れます」とうたうスーパー総合の実効性にも疑問が呈されているわけですが、どうやら厚労省の方では同じような施設を全国に広げていく過程で、何やらもう少し違うことを考えているようです。

周産期母子医療センターが新指針 産科以外の救急疾患に対応(2010年1月27日47ニュース)

 厚生労働省は、出産前後のハイリスクな治療にあたる総合周産期母子医療センターが、母体の脳血管障害など産科以外の救急疾患にも対応することなどを盛り込んだ新たな整備指針を策定し、27日までに都道府県に通知した。

 東京都内で2008年に脳出血の妊婦が死亡した問題を受け、1996年に定めた指針を初めて全面改正。産科と他診療科の連携などを進め、母体救命を含む周産期医療全体の質向上を目指す。

 全国のセンター運営や態勢整備のため2010年度予算案に59億円を計上し、09年度の10億円に比べ約6倍に大幅増額した。

 新指針では、全国に77施設ある「総合センター」で、施設内外の関係診療科と協力して心疾患や敗血症などの合併症にも対応するよう明記。確保すべき職員として麻酔科医や臨床心理士、長期入院児を支援するコーディネーターを挙げた。

まあそれは、そういう施設が増えてくれれば心強いという心理は理解出来ますけれども、現実問題今現在そうした対応が出来ていない施設で、新規に何でもありに対応可能となりそうな施設がどこまであるものかという問題もあるのでしょう。
次の段階としては例によって何でもあり対応可能な施設には手厚く、そうでない施設は診療報酬を削りますという話に持って行く予定なんだと思いますけれども、一方でこうした施設を逆の視点から見た場合に、妊婦であってもあらゆる合併症に対応出来るような施設ということであれば、これは当然ながら妊婦以外のあらゆる救急医療にも対応出来るはずという理屈が成り立つわけです。
厚労省としてはかねて持論として分散配置されている医療リソースを集約化するということを掲げていますけれども、あるいはこれは周産期救急という誰でも異論を唱え難いあたりを取っ掛かりにして、救急医療体制、ひいては地域の医療システムそのものを組み替えて行くつもりであるのかなと邪推?も出来そうな話なんですが、どうもこれが邪推ではなさそうなんですね。

個人的にも(少なくともある程度の)集約化というものは医療への要求水準が高くなっていく以上は必須だと考えているのですが、そうした目で見てみますと「施設内”外”の関係診療科と協力して」云々の記述も非常に意味深に見えてきます。
実際に厚労省が出した通知では多少穏やかな内容になっていますけれども、その元ネタである「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会報告書」を見てみますと、「周産期医療体制は従来から一般の救急医療とは別に構築されてきた経緯がある」として、救急と周産期の医療リソース一体化が一つの大きな柱となっていますね。
施設内においても当然ながら周産期担当と一般救急担当との連携がうたわれているわけですが、最近問題となっているNICU長期入院児問題などとも絡めて「救急医療施設と後方施設との連携を強化」する必要があるとして、初期から高次に至る地域医療ネットワークの構築と高次施設への医師やスタッフの充実、そして低次施設への「戻り搬送」の促進を提言しています。

はて、こうして見ますとこれは単に周産期救急体制の整備などという言葉にとどまらない内容で、むしろ地域医療体制の再構築というにふさわしい、さらに言うならば厚労省の持論である医療集約化そのものを具体化していく道筋を示した話ではないかと言う気がしてくるではありませんか。
かねて厚労省は理念を唱えるだけは唱えているにしてもどうやってプランを実現させて行くつもりなのか、その道程、方法論が見えてこないなと思っていましたけれども、「周産期救急はもっと充実させなければ!」なんて言われると誰も反対しにくい話であるだけに、少なくとも行政レベルではこのままで話が進んでしまいそうにも思えてしまいます。
実際に厚労省では「一口に二次救急と言ってもレベルはさまざま」と、救急医療に手厚くすることを目指す今回の診療報酬改定の中でも、相対的に低レベルな医療しか行わない医療施設にはお金を出さない腹のようですが、医療業界を追い込んでおいての一気の再編を元から狙っていたということであれば、近年の迷走するように見えて実は筋が通っていた医療行政にもやはり理由があったということなんでしょうかね?

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