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2010年1月18日 (月)

次第に姿を現し始めた診療報酬改定の内容

本日まずは今更と言う記事ですけれども、こちらの紙面記事から引用させていただきましょう。

患者も勤務医も限界 外科医不足→患者集中→激務で疲弊 「このままでは崩壊」拠点病院に危機感(2010年1月12日付中日新聞)

拠点病院の勤務医たちは、押し寄せるがん患者の治療で休む暇がない。特に大都市圏以外では外科医が不足気味で、疲労感は強い。

岐阜県立多治見病院。呼吸器外科医伊藤正夫医師(44)は、肺がん手術を担当する同病院唯一の医師だ。「年々手術数が増え、私一人で担当するのは限界。将来のことを考えるときつくなるから、目の前の患者のことだけ考えるようにしている」と顔を曇らせる。
肺がんや気胸、交通事故の外傷患者など年間90~95件の手術を執刀している。手術前の説明や執刀、術後の容体管理、保険請求書類や紹介病院への報告書作成まで、土日や早朝深夜に関係なく追われ続ける。
このままでは自分がつぶれる」。こう感じた昨年は、仕事を何とかやりくりし、年間の休日を前年までの二倍に増やした。それでもたった十日間でしかない。
秋田県で生まれ育った子ども時代、体の弱かった母親の病気を治したいと医者を志した。二十、三十代は手術がどんどんうまくなるスキルアップの喜びが仕事の大変さを上回っていた。しかしこの数年、手術後に目がチカチカするなど異様な疲れを感じるようになった。
「さらに患者が増えたらどうするか? うーん、医者を増やすしかないが大学の医局にも呼吸器外科医は少ない。自分で責任がとれる範囲以上のことは難しいですね」

アンケートの回答でも、医師の勤務の過酷さを訴える声は多かった。
以前より患者への説明や治療準備、経過観察の負担が増加した。このままでは地方のがん医療は崩壊する」(岐阜県の病院)
働くほど訴訟リスクは高まる。患者とコミュニケーションを十分とることが求められるが、忙しい医師には対応できない」(同)
患者集中の背景には、地域の中堅病院が外科医不足などで手術数を減らしている事情もある。
「近隣の医師が減少し、今後ますます患者が集中するだろう」(静岡県の病院)、「処理能力で限界に来た」(愛知県の病院)のほか「医師不足で手術件数に制限を付けた」という石川県の病院も。

多忙さや訴訟リスクにより燃え尽きる医師も出ている。愛知県の病院は「医師は当直で寝られなくても、翌日には8時間かかる肝臓手術をしなければならない場合がある。燃え尽きて中堅クラスが辞めていく」。
責任の重さに外科を選ぶ若い医師が減り、外科医8人すべてが40歳以上。将来手術できるのか心配」(富山県の病院)と、外科医不足がさらに深刻化することを危惧する声も出ている。

こういうものを見ますとやはり現場の疲弊と言うのは一過性のものなどではなく、少なくとも10年、20年といったスパンでの構造的問題であるということははっきりしているかと思いますけれども、となればそれに対する対策も一朝一夕ののもので済むはずがなかろうというのは現場を知る人間の等しく共有する認識ではないかと思います。
先日はすったもんだの末に診療報酬の大枠がほぼ横ばいということで決着しましたが、たとえ総枠が増えずとも不足する勤務医対策などを手厚く行っていくことで崩壊叫ばれる医療への対策は十分に可能であるというのが、財務省筋の強く主張するところでした。
となれば、今後その配分がどうなるのかといったあたりに関心が移ろうと言うものですが、そろそろそうした部分の議論も進んできているようなのですね。

勤務医の処遇改善を明記 中医協が診療報酬改定の骨子(2010年1月15日朝日新聞)

 厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)は15日、2010年度の診療報酬改定の骨子をまとめた。医療崩壊を止めるため病院勤務医の処遇改善を明記した一方、意見が対立している病院と診療所で110円の差がある「再診料」については、「統一する方向で内容を検討」とするにとどまり、具体的な水準は今後の議論に委ねられた。

 骨子は同日から22日まで、一般から意見を求める「パブリックコメント」の手続きにかけられる。

 骨子の取りまとめで最後まで議論が白熱したのは、重要課題の一つとされた「病院勤務医の負担軽減」。病院への報酬を手厚くする項目が並ぶ原案に対し、山形大医学部長の嘉山孝正委員は、「病院の収入が上がるだけでは、勤務医は何にも喜ばない」と指摘。「職場環境をきちんとしていないから医療崩壊した」と強調した。

 最終的に、勤務医の負担を軽減する体制を整えた場合に報酬を厚くする項目の拡大に加え、「処遇改善」につながる体制を要件とした報酬支払いを明記。メッセージを強く打ち出すことで決着した。

 再診料をめぐっては、診療所(710円)と病院(600円)の格差について、診療側委員が「710円を引き下げての統一には同意しない」との立場を強調。一方、支払い側は診療所を引き下げて統一するよう主張しており、溝は埋まっていない。

 長妻昭厚労相は同日、来年度の改定について中医協に諮問。中医協は2月中旬に答申する予定で、4月の改定実施を目指す。

民主党政権になって医師会を外して中医協改革だと大騒ぎしていた割には、結局あまり代わり映えしない光景だなという印象もないでもないんですが、総枠で現状維持の一方一部を優遇ということになれば当然どこかが今までよりも削られるというのは自明である一方、優遇すると言っても具体的にどう優遇するのかといったあたりにも興味がわくところです。
嘉山委員の言う通り、診療報酬を幾ら重点配分したところで全く勤務医の処遇改善には結びつかないとは現場を知る人間の等しく強調するところですけれども、そうした要求を入れた結果が「勤務医の負担を軽減する体制を整えた場合に報酬を厚くする項目の拡大に加え、「処遇改善」につながる体制を要件とした報酬支払いを明記」ということであれば、その内容がどうなるかが注目されるところですよね。
そこで打ち出されてきた具体的な処遇改善策というのがこちらだと言うんですが…まああくまで患者負担金が増えると言うことであれば、医療財政が緊迫している折でも国の懐は痛まないという点では良い考えだと考えているのでしょうか?

症状軽い救急外来患者から特別料金 中医協が検討開始(2010年1月15日朝日新聞)

 症状が軽いのに救急外来を受診する患者から特別料金を徴収できるよう、中央社会保険医療協議会(中医協=厚生労働相の諮問機関)が15日、検討を始めた。救急医療に携わる病院勤務医の負担を軽くする狙い。2010年度の診療報酬改定に合わせて、4月から導入される可能性がある。

 救急医療の現場では、軽症患者が自分の都合で休日や夜間に受診することが問題化している。07年中に救急搬送された約490万人の過半数は軽症と診断された。高齢者の軽症患者は07年までの10年間で2.5倍近くになった。こうした状況が医師らの負担を増やし、医療崩壊を招いたと指摘されている。

 中医協で検討されている案では、救急外来に来た患者の状態を医師らが事前に確認し、軽症の場合には特別料金がかかることを説明する。それでも患者が希望して受診すれば、特別料金を徴収することができるようにする。

 対象機関は、重度の患者を受け入れる救急救命センター(全国で221施設)に限定。救急外来での診療の優先順位を決める「トリアージ」を参考に各医療機関が判断基準を決め、値段もそれぞれ設定する。

 現在も200床以上の大規模病院では初診料への上乗せが認められているなど、特別料金を導入している医療機関もある。例えば、昨年8月から診察料とは別に5250円の「時間外診療特別料金」を徴収し始めた鳥取大学医学部付属病院では、軽症患者が減っているという。

 中医協では、幅広く特別料金を課すことで救急医療現場への軽症患者を抑制する方向で検討する。ただ、中医協の患者代表ら支払い側委員には導入に慎重な意見が強い

まだまだ決定には遠い案の段階ですけれども、まず救命救急センターに対象施設を限定という時点でどの程度実効性があるのかはっきりしないのではないかという危惧が一つありますよね。
そしてもう一つ、「救急外来に来た患者の状態を医師らが事前に確認し、軽症の場合には特別料金がかかることを説明する。それでも患者が希望して受診すれば、特別料金を徴収することができるようにする」といったあたりの運用面がポイントですかね。

特にこの「医師らが事前に確認」という文言が例によって「そんなこと私たちには判断出きませんから先生がしてください!」なんてことになりますと、ことに国公立系病院では何の医師処遇改善かと新たに問題化しそうですけれどもね(苦笑)。
そうでなくとも事前確認ということになれば、来院時に症状を偽って重症を装い、後で「聞いてないぞゴラ!」なんて騒ぎになってきそうに思いますけれども、病院側の対応としては原則的に全患者に対して「診療の結果軽症と判断され特別料金が必要になる可能性もある」ということで事前に説明と同意を得ておくということになるんでしょうか。
昨今では救急医療にどこまでインフォームド・コンセントを要するかなんてことでたびたび議論になりますけれども(心肺停止の人を相手に説明と同意に基づく医療も何もないですよね?)、こういう新しい話が出てくるたびに何ともますます殺伐とした救急外来になってきそうな気がしないでもないんですよね。

どうせ重症であればそちらの対応だけで特別料金分どころではなくお金もたっぷりかかるわけですから、救急医待遇改善が期待される折りですから来院患者は全例特別料金を徴収としても全く問題ないんじゃないかと思うんですが、こうして新たな手間をかけさせることで現場の負担をますます増大させるというのはどうなんでしょう?
何故こんな面倒くさく現場に負担と混乱だけ広げかねないシステムにしたがるのかと言えば、やはり記事中にもありますように「中医協の患者代表ら支払い側委員には導入に慎重な意見が強い」といったあたりがポイントということになるのでしょうか。
しかし考えてみればこのシステム、おそらく保険側からの支出ではなく全額患者負担になるんじゃないかと思いますけれども、そうなりますと患者代表ということになっているあの方などはともかくとして、保険者側の代表としてはむしろ不要不急の受診が減って総支払額が減るという、支払側には歓迎すべき事態になるんじゃないかという気もするところなのですけれどもね。

何にしろこの件も含めて、診療報酬改訂作業の詳細に関してはもう少し情報を待っていく必要があるのかと思いますし、その実効性がどうなるのかということは新年度以降の現場で証明されていくことになるのでしょうね。
今のところあまり画期的なアイデアというものもないように見えるだけに、今まで通りの流れを突き崩すような劇的な変化というものは到底期待出来そうにないという感じではありますけれども…

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コメント

> 今のところあまり画期的なアイデアというものもないように見えるだけに、今まで通りの流れを突き崩すような劇的な変化というものは到底期待出来そうにないという感じではありますけれども…

医療需要を減らす方向での改革は大きな変化が考えられます。

> 症状が軽いのに救急外来を受診する患者から特別料金を徴収できるよう、中央社会保険医療協議会(中医協=厚生労働相の諮問機関)が15日、検討を始めた。救急医療に携わる病院勤務医の負担を軽くする狙い。2010年度の診療報酬改定に合わせて、4月から導入される可能性がある。

上の話くらいでもすでに救急件数が各地で減っています。需要を減らすのは混合診療の導入につきるでしょう。保険診療ではすべての医師の技術料はほぼ一律ですが、この部分に自由に価格設定できる部分導入すれば需要は確実に減ります。すべての技術料関連を混合診療解禁すると一気に負担が増えますので、参院選もあるので今年は一部の手術料だけ導入でしょうか。外科勤務医の負担軽減という話は前振りではないかという予感がしています。混合診療分は医師に直接入るようにする。技術料を別途請求するには認定医などの一定の資格要件を満たすこととするというところでしょうか。嘉山委員は脳外科出身なので、これはいかにもありそうなのです。医療、介護を成長戦略の一環に位置づけるのであれば混合診療導入は必然です。今回導入されなければ、参院選後の次の改訂でとなるでしょうか。

投稿: ya98 | 2010年1月18日 (月) 22時46分

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