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2009年12月29日 (火)

連鎖的に崩壊しつつある社会保障とその歪み

不景気の中で少しでも手に職をつけようと資格取得を目指して頑張っている人も多いと思いますが、最近ではこうした方面でのハウツー本というのも結構人気なんだそうですね。
しかし中には制度の趣旨的に少しばかり誤解を招きかねないものもあるようで、やはりこの方面でも内容の吟味は必要なのではないかと思わされるところです。

障害年金:「攻略本」ネット販売、うつ病患者「2級」狙い(2009年12月19日毎日新聞)

 うつ病患者を対象に障害年金2級を受給することを目指したマニュアルが複数のウェブサイトで販売されている。2級に認定されやすくなるような診断書を主治医に書いてもらうための方法が書かれているが、不正請求を誘発する恐れもあり、関係者からは「攻略本のようで好ましくない」と問題視する声が上がっている。【奥山智己】

 障害年金は、厚生年金が1~3級、国民年金が1、2級に分かれている。厚生年金の場合、平均標準報酬月額と加入月数によるが、平均支給額は月額で1級約16万円▽2級約12万円▽3級約7万円。国民年金の場合、年額で1級約99万円▽2級約79万円で、さらに子どもがいれば人数に応じて加算される。申請には医師の診断書が必要だ。

 ウェブサイト上で販売されているマニュアルは少なくとも6種類ある。数十~100ページで販売価格はほとんどが1万円前後だ。

 あるマニュアルでは、1級は寝たきり状態でなければ認定されにくいとして、2級を目指すことを提案。認定されやすい診断書を書いてもらうポイントを紹介している。

 例えば、診断書には食事を自分で取れるかや、お金を管理できるかなど日常生活能力を尋ねる六つの設問があり、「自発的(適切)にできる」「自発的に(おおむね)できるが援助が必要」「自発的にはできないが援助があればできる」「できない」という内容の四つの選択肢がある。マニュアルは、6問のうち3~4問で「自発的にはできないが援助があればできる」との選択肢にマルをつけてもらうことが望ましいとしている。

 さらに、こうした診断書を書いてもらうため、医師に過去の受診歴や症状などを書いた書類を提出することが重要と指摘。作成の際には「もちろんウソは書けません」と断りながら、2級の基準を満たすような表現になるよう「多少オーバーに」「医師を誘導する感じに」書けばよいとしている

 別のマニュアルを作製・販売している40代の男性は「年金の受給経験があったので、うつ病患者のため、他のマニュアルを参考にしながら作った。悪用は想定していない」と説明している。

 元東京都精神保健福祉課長で「まいんずたわーメンタルクリニック」(渋谷区)の仮屋暢聡(のぶとし)院長は「マニュアルは違和感を感じる。年金制度を詳しく知らない医師もおり、不正を招きかねない」と指摘する。社会保険庁年金保険課は「マニュアルによる不正請求の例は聞いたことがないが、攻略本のようで好ましくない」と話している。

余談ながら最近ちょっと専門的にも世間的にも問題になっているのがこのうつ病診断なんだそうで、患者がその気になって症状を訴えるとほとんどの人がうつ病と認定されてしまう可能性があるという先生も言うくらいで、時折聞く傷病手当不正受給事件などでうつ病という病名が結構多用されるのもこのあたりに理由があるのでしょうか。
一昔前には学部教育でも「うつは励ましてはいけない」なんて教えられていたものですけれども、近ごろは叱咤激励すべきうつというのもあるのだと言うくらいで、なかなかこの方面も大変なんだなと思わされる話です。

ま、そうした余談はともかくとしても、前述の障害年金にしても本来障害で困っている人を助けるための制度であって、逆に困ったときに救済してくれるはずの社会的救済制度がきちんと機能していないということであれば、国民としてはいざというとき安心して生活していくことが出来ないということになりかねません。
年末というと近頃各地で派遣村などという救済活動が繰り広げられるようになっていますけれども、不景気の中にあっても比較的安定していた東海地方なども最近ではいよいよ宜しくないということで、そうなりますと各地の自治体でも社会保障関連の支出を本格的に切り詰めにかかっているようですよね。
もちろん何でもかんでも公的扶助に頼り切りという姿勢もそれはそれで問題ではあるのでしょうが、一方で求職者がいて求人を出している業界もあるのにうまくマッチングしないという現状をよくよく見ていると、そこには根深い社会保障の歪みが隠されていたりもするのです。

怯える失業者 担当者は暴言「100回面接断られたら…」(2009年12月25日スポニチ)

 年の瀬が迫り、職を失った人たちに冬の寒さと、雇用情勢の厳しさが一層こたえる。25日発表の11月の完全失業率。「公設派遣村に世話になるのでは」。派遣切りなどで職と住まいを失った失業者計92人を1年前に受け入れた横浜市泉区の県営団地にはなお15人がとどまり、路上生活に転落する恐怖におびえながら職探しを続けている

 16年間、派遣労働者として自動車部品工場などで働き、昨年末に契約を中途解除された男性(55)は1月に入居。簡易ベッド一つだけが置かれ、家具もない部屋で毎晩ラーメンをすする。ハローワークに通い続けるが、「年齢を伝えた途端、断られる」。

 生活保護を申請しようとして、市の担当者から「100回面接を受けて断られたら認めてやる」と暴言を吐かれたこともある。失業保険は11月に給付切れになった。神奈川県は「追い出すことはしない」としつつ、年末が期限というのが基本姿勢だ。「いつホームレスになるか」。男性は防寒用の擦り切れた帽子に手をやりながら話した。

 神奈川県が派遣切りや雇い止めの救済策として失業者を受け入れ、約1年がたった。生活保護を受けるなどして77人が退去したが、15人は見通しが立たず、「自立するよう尻をたたいている」(県の担当者)という。

 一方、退去しても就職できたのは18人。多くは就職のめどが立っていない。6月に退去した男性(29)は生活保護を受けながら団地近くでアパート暮らし。ハローワークの紹介で介護の現場を見学し、厳しい仕事内容に立ち尽くした。「政府は雇用対策で介護、介護というが、誰にでもできる仕事ではないと思った」

 福祉事務所の担当者から早く仕事に就くようせっつかれ、アルバイトで引っ越しの仕事を始めたが、腰を痛めて通院中。「早くこの状態から抜け出したい」と漏らした。

何しろ高齢化社会が例のない速度で進展する一方ですから、介護業界と言えば今後需要が増えこそすれ当分食いっぱぐれることのない超成長産業で、内需主導型に転換をなんて長年大号令をかけている政府の方針にも合致する21世紀の基幹産業にもなろうかというものですけれども、その業界が「誰にでも出来る仕事ではない」と行き場の無い失業者にすらも敬遠されるというのはどうしたものかという話ですよね。
需要が大きい一方で人手不足が顕著なわけですから労働が過酷であろうことは想像に難くないのですが、それ以上に問題なのはそれだけ「誰にでも出来る仕事ではない」重労働をこなしても報われることが少ないということです。
近頃では格差社会だと大変な騒ぎですけれども、やはり他人の懐具合が気になるのは人の性と言うものなのでしょうか(苦笑)、最新年収ランキングというものが記事になっていますけれども、これを見るだけでも驚くような実態が判ろうというものではないでしょうか。

格差社会です! これだけ違う職種別年収、ワーストは?(2009年12月24日ZAKZAK)

 不況で自分の給料やボーナスが減ると、他人のフトコロ事情が気になるもの。総合人材サービスのインテリジェンス(東京)が集計した2009~10年版「職種別の平均年収ランキング」によると、トップ3には金融関連がズラリ。ただ、その背景には喜べない事情も隠れている。一方、製造業のエンジニアや総務などの間接部門ではかなりの年収ダウンとなっている。

 ランキングは、同社の転職支援サービスに登録した25~39歳の転職希望者約9万人(59職種)の給与データを基に集計。全体の平均年収は、前年より5万円減って456万円となった。

 ただ、トップ3については気前のいい数字が並んでいる。1位は、M&A(企業の合併・買収)などを手伝う「投資銀行業務」で、平均年収は880万円。この職種では年齢が35~39歳だと平均が1329万円とアップし、なかには年収が5000万円という社長級の人もいる。

 2位は「運用会社(ファンドマネジャー、アナリスト、ディーラー)」の847万円。3位が、メガバンクや地銀、証券会社の「法人営業」で716万円。

 2、3位は額もさることながら、「運用会社」が前年比191万円増、「法人営業」が同139万円増と大幅に増えている点が驚きだ。
(略)

 一方、平均年収が低い方をみると、「事務・オフィスワーク」が308万円、「福祉・介護」が370万円、「WEBデザイナー」が381万円となっており、職種による年収格差が鮮明になっている。
(略)

年収ランキングのベスト20ワースト20というものが取り上げられていますけれども、記事中にもありますように福祉・介護は堂々のワースト2という結果を残していて、ワースト1の事務・オフィスワークが非専門職であることを考えると、仮にも介護福祉士といった国家資格を持つ人々が含まれているのにこの低待遇はどうなのかと思わされるところですよね。
国は最近ようやく介護報酬値上げなどと言っていますけれども、例えば現在の報酬体系では真面目に訪問介護をすればするほど赤字になるということになっていますから、多少介護報酬を上げたところで事業者の赤字を補填するだけで精一杯でスタッフに回るお金はない、結果やってられないとますます人手不足が進行し労働環境が悪化していくというどこかで見たような悪循環が深刻化するわけです。
医療もそうですけれども、介護業界もその収入体系は介護保険による公定価格で実質決まっている状況ですから、この労働に見合わない低収入に甘んじている理由は限りなく国にその責任の所在があると言っていいはずですし、その結果介護という業界自体が崩壊の危機に日んしているのも国策の結果であると言えるのではないでしょうか。

一部では介護のような「何も生み出さない分野」に金をつぎ込むことは国家の成長を阻害するなんてことを言う人もいますけれども、介護と言うものの実際を見ているとむしろ全く逆の話で、社会的にバリバリと活躍して生産的活動を行っていてしかるべき人々が「親の介護があるから」と早期退職しては社会的に消えていってしまっている現状があるわけです。
その根本には少子化、核家族化といった現代日本社会の構造的要因が横たわっているのでしょうが、やはりどんな理屈をこねるよりも前にそれは単純にもったいないと思わされる話で、一方で失業率が上昇し社会の金回りも悪くなる中で何とか成長産業に景気の牽引役をと国中が血眼になっているというのに、国策によってそれが阻害されているというのもまたもったいない話だと思うんですよね。
社会保障関連ではあちらこちらで現在進行形にほころびが顕在化していますが、結構相互に連関している部分も多々ありそうで、それなら効果も確かでないところに闇雲に借金してまで大金を投じるくらいなら、社会的需要も将来的成長率も一番高そうなところに素直に金を突っ込んどいた方がいいんじゃないかと言う気がするのですけれどもね。

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コメント

会社が潰れました。
社員もリストラしました。
仕事がありません。
50歳過ぎました。
資格ありません。
女、好きです。
スケベです。
人には好かれません。
どうしたらいいでしょうか?

投稿: 倒産部長 | 2009年12月30日 (水) 23時49分

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