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2009年12月21日 (月)

誰も嘘はついていません

珍しく厚労省がやる気を見せている感のある診療報酬改定の件ですけれども、やはり仕分け人の後ろ盾を得た財務省側の圧力は強そうですね。
厚労省のみならず各省庁とも最後の折衝の真っ最中で、予算編成も越年しそうな気配が濃厚とも言われる現在の状況ですけれども、今のところ薬価引き下げ、本体引き上げ、財務省側としては差し引きで横ばいから微減という方針を崩す気はないようで、結局コンマ以下の争いに終始しそうな勢いです。

厚労省、診療報酬引き上げ苦慮…日医・財務省の板挟み(2009年12月19日読売新聞)

 厚生労働省が、診療報酬の2010年度の改定に苦慮している。

 厚労省は15日、診療報酬の0・35%の引き上げを要求する方針を発表した。救急や産科の勤務医対策などを積み上げると、医師の技術料など「本体部分」で約6300億円の新たな財源が必要になることを根拠としている。6300億円は医療費全体の約1・73%に当たり、同省の調査では薬など「薬価部分」が約1・37%の引き下げとなるため、総額では差し引き0・35%のプラスとなるわけだ。

 民主党はもともと、医療崩壊を食い止めるなどのため、診療報酬の大幅な引き上げを主張していたが、政府全体の財源が不足する中で対応に頭を悩ませ、ようやく0・35%増という「小幅要求」に落ち着いた。

 しかし、翌16日には早速、日本医師会の記者会見で、「全く不足している」と指摘された。診療報酬は過去4回の改定で計7・7%引き下げられており、日医では大幅なプラス改定への期待が高かっただけに、反発が出ている。

 民主党も、党の予算要望は本体部分の引き上げを求めただけだったが、「適切な医療費を考える議員連盟」は、総額3%以上の引き上げを強く主張している。

 一方、財務省は財政圧縮の観点から、総額でマイナス1%とするよう主張している。厚労省は板挟みになった形で、政務三役の一人は「0・35%がギリギリの要求幅だ」と苦しい胸の内を語る。両省は年内決着に向けて詰めの交渉を進めているが、まだ接点は見いだせていない。

本体部分1.73%プラスは「不十分以外の何物でもない」―民主議連・桜井会長(2009年12月16日CBニュース)

 「適切な医療費を考える民主党議員連盟」会長の桜井充参院議員は12月16日、足立信也厚生労働政務官が15日の記者会見で、来年度診療報酬改定では本体部分を1.73%引き上げる必要があるとの認識を示したことについて、「不十分以外の何物でもない」と述べた。同議連が衆院議員会館で開いた第5回勉強会後、記者団に対して述べた。

 桜井議員は、薬価がマイナスになることも考慮すると、総額では0.3%程度の引き上げにとどまるとし、「不満だ」と発言。診療報酬をさらに引き上げ、医療政策の充実を図る必要があると訴えた。
 また、同議連には160人弱の民主党議員が所属しているとした上で、議連の提言は「重いものだ」と強調。「われわれが言ったことに対してゼロ回答で、『政府与党一元化』と言われても納得できない」とした。
 
 同議連は4日、診療報酬の総額3%以上引き上げなどを求める「緊急提言」を同党の幹事長室に提出している。

民主党が来年度予算で重点要望―診療報酬引き上げも(2009年12月16日CBニュース)

 政府は12月16日、民主党との各種陳情・要望の在り方について意見交換会を開催した。この席で、民主党の小沢一郎幹事長は、鳩山由紀夫首相に来年度予算に関する18項目の重点要望を提出した。要望には診療報酬の引き上げをはじめ、介護労働者の待遇改善、障害者自立支援法の廃止などが盛り込まれている。

 重点要望は「国民の生活が第一」を基本理念に、無駄遣いや不要不急な事業を見直し、旧来の優先順位を一新して予算を組み替えながら財源を抽出するよう求めている。一方で、子育て・教育、年金・医療・介護の充実や、地域の活性化に重点を置くべきとしている。
 要望ではまた、医療崩壊を防ぐために地域医療を守る医療機関の診療報酬本体の引き上げが必要としている。特に、救急医療や不採算医療を担う大規模・中規模病院の経営環境の改善に向け、格段の配慮を求めている。このほか、看護師の待遇改善や、歯科医療についても診療報酬の引き上げが必要とした。ただし、具体的な診療報酬の引き上げ率には言及していない

日医も例によって何かしら不満げなことをコメントしてはいるようですけれども、こうして見ますと全く存在感と言うものがなくなってきたなと感じざるを得ませんかね(苦笑)。
しかし素朴な疑問として、選挙では医療再生を掲げ議会の圧倒的多数派を占める民主党がこうして診療報酬引き上げを言っている、そもそも同党は政治主導をうたい官僚から政治家に権力を移していくと主張している、そして多数の議員はもとより影のボスとも言うべき小沢さんですら引き上げを申し入れているという現状があるわけです。
それなのに何が引き上げの障害になるのかという気がするところなのですが、ここに来て非常に注目すべき発言がさりげなくニュースの片隅に出てきているわけなのですね。

診療報酬改定:厚労省と財務省が火花 予算年内決着にも影響か(2009年12月19日毎日新聞)

◇厚労省、10年ぶり増額/財務省、財政難で削減
 医療関連予算を巡る厚生労働省と財務省の主張が真っ向から対立している。厚労省は「医療崩壊を食い止めたい」と、10年ぶりの診療報酬全体の増額改定を狙うが、財務省は財政難を理由に診療報酬の削減を要求している。中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)への財政支援を巡っても両省の意見の隔たりは大きく、政府は予定していた週内決着を断念し、週明けに持ち越した。年内の決定を目指す予算編成のスケジュールにも影響を与えそうだ。【佐藤丈一、坂井隆之】

 診療報酬は手術など医師の技術料にあたる「本体」部分と「薬価」の二つの公定価格で構成される。厚労省の政務三役は、薬価を1・37%引き下げて稼いだ原資(5000億円)をすべて本体部分の増額に振り向けて、本体部分を1・73%(6300億円)引き上げ、差し引き(ネット)での診療報酬全体の改定率をプラス0・35%(1300億円)にする戦略をとった。国費負担ベースで300億円の追加にとどめて、財務省の理解を得る作戦だ。

 しかし、財務省は「デフレ状況で医師だけ報酬が増えるのは国民の理解を得られない」と主張。本体部分を最低でも据え置き、薬価をさらに引き下げることで診療報酬全体の減額を求めている。民主党が16日提出した政府への要望では、本体部分の増額を求めたため、財務省は本体部分引き上げは容認姿勢に転じたものの、総額削減は譲っていない

 財務省が減額を譲らない背景には、加入者の高齢化などで財政が悪化している協会けんぽへの支援問題もある。厚労省は保険料引き上げを抑えるため国庫負担を増やす方針で、必要な財源約1800億円を見込んでいる。財務省はマニフェスト項目でないことを理由に、「診療報酬の削減で財源を捻出(ねんしゅつ)すべきだ」と訴える。1800億円を捻出するには、診療報酬を2%以上引き下げることが必要だ。

 自民党政権時代は、診療報酬は日本医師会と族議員との間で事実上決められてきた。鳩山政権が「政治主導」を掲げ、医師会や族議員の影響力を排除したことで、各省が互いの主張を譲らず事態が迷走する状況になっている。

ここで財務省がマニフェスト項目でないことを理由に診療報酬削減を主張していることに留意いただきたいのですが、確かに同党のマニフェスト2009を見ますと医療に関する項目はこのような表現になっているのですね。

医療・介護の再生

医師不足の解消、新型インフルエンザ対策等、介護労働者の待遇改
医師不足解消など段階的実施 平成22年度~23年度1.2兆円、24年度~25年度1.6兆円

確かにこれのどこを見ても「診療報酬を引き上げる」とも「診療報酬引き下げを阻止する」とも書いていないのは明白です。
ちなみに民主党の定義によると、「マニフェストは、国政選挙の都度、社会情勢等を考慮して必要な政策を検討し、国民の皆さんに党のお約束として提示するものです。従って、その内容は深化、変化していきます。」ということなんですが、診療報酬引き下げで医療再生が出来るのか等のツッコミは別としても「マニフェスト項目ではない」というのは事実ですよね。

一方でややこしいのはマニフェストとはまた別に政策集なるものがあって、政策集2009ではこのように記載しています。

国の責任で社会保障制度を維持発展


自公政権が「骨太の方針2006」で打ち出した社会保障費削減方針(年2200億円、5年間で1兆1000億円)は撤廃します。国民皆年金、国民皆保険を守り、求職者に対する新たなセーフティネットを構築します。
医療は提供する側と受ける側の協働作業です。各界・各層の代表の意見を幅広く聴取し、医療の抜本改革に関する目標と工程を定めた基本方針を策定、建議する会議体の枠組みと、政府が責任を持ってその実現を図る体制を確立します。

社会保障費削減政策は撤廃するとは書いているあたりが限りなくグレーゾーンですけれども、もちろん社会保障費と言えば医療費ばかりでもないわけですし、削減はやめると言うだけで増やすとも言っていないわけですから、少なくとも診療報酬を引き上げますなどとはどこにも書いていないということですよね。
そして同じく民主党の定義によれば 「われわれが選挙で国民に示して約束するのはマニフェストであり、政策集は公約ではない」そうですから、仮に政策集で何を書き後でどれだけ反故にしようが「公約違反ではない」とは言えるという理屈です。
一方で同政策集を細かく見ていきますと、例えば「医師養成、活用策により実働医師数を増加させるとともに、勤務医の不払い残業を是正し、当直を夜間勤務に改める」等により医療現場の労働環境を改善する(要するに金は出さない?)だとか、「地域医療を守る医療機関の入院については」「患者の自己負担が増えないように」その診療報酬を増額する(要するに他の報酬を削る?)だとか、むしろ診療報酬を増やすという言質を巧妙に避けている節が見られるのですよね。

はて、そうすると選挙の際に「民主党政権が誕生すれば(医療の)問題は解決する」なんて妙なお祭り騒ぎはなんだったのかという話になりますけれども、党のお約束として提示されたものであってもその内容はその都度変化していくというのですから、いわんや約束もしていないものを勝手に盛り上がられたところで知った事ではないと、民主党さんもむしろ迷惑だって話ですよね。
診療報酬改定についてはこのように国民との約束に反しない範囲で粛々と作業が進められていくのだと思いますけれども、その結果「医療・介護の再生」という明確な約束が達成されるものなのかどうか、あるいは達成される前に約束の方が変化してしまうのかといったあたり、今後の行方を見守っていく楽しみは多そうな気がします。

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