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2009年12月 7日 (月)

診療報酬引き上げ議論 今更知らぬ存ぜぬが通用しそう?

仕分け人と財務省が主体となって推進する医療費削減政策に対して、先日は厚労省と長妻大臣がそろって医療費引き上げを主張したという話を取り上げました。
また民主党にとって医療費引き上げは公約ということで、これを実施するよう求める議員連の発足もお伝えしたところですけれども、このところの厚労省関係者ら診療報酬引き上げ派の動きを中心に記事を拾い上げてみましょう。

「診療報酬プラス改定を」=長妻厚労相と初の意見交換-知事会(2009年12月4日時事ドットコム)

 地域医療再生に関する長妻昭厚生労働相と全国知事会との意見交換会が4日、同省内で開かれた。知事会側が来年度の診療報酬改定について「地域医療再生のためにプラス改定をしてもらわなければいけない」と訴えたのに対し、厚労相は「上昇幅が大きいと国民負担も増える。適正な形でプラスを確保する考えだ」と応じた。
 厚労相と知事会の意見交換会は鳩山政権発足後初めて。知事会の神田真秋社会文教常任委員長(愛知県知事)は、今年度補正予算の執行停止に「地域医療再生臨時特例交付金」750億円が含まれたことに懸念を表明。厚労相は「診療報酬でその部分を確保する」と強調した。
 知事会側はさらに、医師不足解消やへき地医療の充実、経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士受け入れへの国の支援などを求めた。

医療水準維持に「診療報酬引き上げ不可欠」―仙谷担当相(2009年12月2日CBニュース)

医療連携や診療報酬体系に関するフォーラム「どうする、日本の医療『新しい医療提供体制の構築に向けて』」が12月2日、医療フォーラムの主催で開かれ、仙谷由人行政刷新担当相や厚生労働省の審議官、医療団体のトップらが講演した。この中で仙谷担当相は、事業仕分けで「診療報酬の配分」などが「見直し」と結論付けられたことに関して、「医療費全体を減らすこととイコールではない」と述べ、医療水準の維持には診療報酬の引き上げが不可欠との見方を示した。

フォーラムでは仙谷担当相のほか、医療保険、医政、医療・介護連携を担当する厚労省の唐澤剛審議官、日本医師会の唐澤祥人会長、全日本病院協会の西澤寛俊会長らが講演した。

仙谷担当相は講演で、医療、介護、医薬品業界は、「産業として大きく伸ばさなければならない」とした上で、現状については「ほとんど改善に向かっていない」と指摘。重点的に改善すべきとの認識を示した。
診療報酬については、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)への評価や技術料の充実などを含め、全体的に点数を引き上げなければ「医療水準を維持できない」と指摘。将来的には、国民から理解を得た上で窓口負担を増やすことも検討すべきとした。

診療報酬は0.4%引き上げ 厚労政務三役が要求へ(2009年12月4日産経新聞)

 長妻昭厚生労働相ら厚労政務三役は3日、来年度の診療報酬の改定率について、財務省に対し総額で0・4%程度の引き上げを求める方針を固めた。すでに「薬価部分」の引き下げで約1・4%分の財源を確保しており、医療費以外の財源投入で医師の技術料にあたる「本体部分」の約1・8%引き上げを目指す。

 7日にも三役で最終調整し、次期診療報酬改定の基本方針とともに財務省へ要求する改定率を公表する。同省は診療報酬全体で3%の引き下げを求めており、厚労省として具体的根拠を示し対抗する狙いがある。

 厚労省は医師不足の深刻な産科や救急といった勤務医対策を中心に、本体部分で約6500億円の財源が必要と試算。このうち「薬価部分」引き下げで約5000億円を手当てできたため残り約1500億円(うち国庫負担は約400億円)を新たな財源投入で賄う必要があるとしている。

 診療報酬全体の引き上げで国民健康保険や全国健康保険協会(協会けんぽ)、健保組合は負担増となる。厚労省は、協会けんぽについて財務省に国庫負担増を求め、健保組合と共済組合には後期高齢者医療制度への支援金の国庫負担分を肩代わりしてもらう方針だ。

診療報酬、総額で3%以上アップを-民主議連(2009年12月3日CBニュース)

「適切な医療費を考える民主党議員連盟」は12月3日、国会内で第4回勉強会を開き、診療報酬の総額3%以上引き上げなどを求める決議文を大筋でまとめた。同議連は4日、同党の幹事長室に決議文を提出する予定。

同議連の会長を務める桜井充参院議員は勉強会後、記者団に対し、「4年のうちに診療報酬改定は2回しかない」ため、その間に対国内総生産(GDP)比医療費を経済協力開発機構(OECD)加盟国並みにしていくのは「かなりきついだろう」と指摘。その上で、「3回の改定でOECD並みにするとなると、1回3%くらいにしないと追いつかない」と、引き上げ幅を「3%以上」とした理由を説明した。
診療報酬の配分などについては、「何をどう上げるかは、(議連で)コンセンサスが取れていない」として、決議文に盛り込まなかった。

決議文ではこのほか、▽医療クラークなど10万人の雇用(約2000億円)▽へき地や離島、産科や小児科などの医師確保対策の実施(約1000億円)▽漢方薬の保険適用継続-を要望。
医療クラークなどの雇用は、「緊急雇用創出事業」の枠組みで実施し、雇用期間は半年間とするとした。半年間とした理由に関しては、「(診療報酬改定で)3%アップを勝ち取れていれば、病院の収入は大幅に増えているはずなので、そこから回してほしい」と述べた。

この日の勉強会では決議文の取りまとめのほか、整形外科診療所や漢方薬の現状について、関係者からヒアリングを行った。

■財務・厚労三役への提出は不透明
また桜井氏は、「党の中のシステム上、(決議文はまず)幹事長室を通すのがルール」となっていることから、財務省と厚生労働省の政務三役らに決議文を提出できるかどうかは不透明との認識を示した。
桜井氏は1日の勉強会後、週内にも両省の政務三役に決議文を提出する方針を示していた。

こうしてみますとひと口に診療報酬引き上げ派と言ってもそれぞれに温度差があるのはもちろんのこと、その目指すところもどうもずいぶんと異なっているようで、結局それぞれに何を目標として引き上げを主張しているのかはバラバラであるということですよね。
そしてその結果として当然のことではあるのですけれども、それぞれに挙げている引き上げ目標の数字というものも全く違ったものであって、しかも正直「その数字合わせにどんな意味が…?」と疑問に感じざるを得ないような話ばかりというのはどういうものなんでしょうか。
「OECD平均並みにするにはこれくらいは」なんて話を聞きますと、それではいったん平均並みになった以上は現場がどれほど困窮しようが二度と引き上げはあり得ないのかと逆に心配になってきますが、どうも皆さん目的とそのための手段ということをもう少し整理された方がよいのではないかという印象ですよね。

もともと医療崩壊という現象があった、その一つの側面として現場の困窮があったのも確かなんでしょうが、それを折からの医療費削減政策の帰結だと結び付けるところまではまだしも、それでは医療費を増やせば問題も解決すると要約してしまうとそれは明らかなミスリードであって、現場の人間は「おいおい、勝手に何言ってんの?」と言わざるを得ない話でしょう。
一方で民主党政権が誕生するにあたって医療崩壊を何とかします、そのための手段として医療費は引き上げますと公約してきたということはありますから、たとえ医療費引き上げに実効性があろうがなかろうがやらないわけにはいかないはずでもあるわけなんですよね。
心ある議員にとっても、単に公約違反が嫌という人々にとっても、そしてもちろん支出を切り下げたい向きにとってもなかなか興味深い状況になってきたというところですが、このあたりに関連して面白い記事がロハス・メディカルさんに出ていましたので紹介しておきましょう。

民主党は「医療」でまとまれるのか(2009年12月2日ロハス・メディカル)

 「民主党の上の方の人たちは大学病院とかは見ているけど、本当の意味での現場、地域のところは見ていないんだよ」―。民主党の国会議員でつくる「適切な医療費を考える議員連盟」の桜井充会長(参院議員)は1日、現政権が考える医療政策に対する不満をあらわにした。桜井会長は今週末にも医療費増額を求める要望を行い、その後は医療・介護政策全般を幅広く扱っていく考えだ。ただ与党内からは、「議連がうまくやれば身動きが取れなくなっている政務三役を助ける連携プレーになるが、ヘタしたらただの内ゲバ」との声も聞かれる。(熊田梨恵)

 同日開いた議連の会合終了後の記者会見で、桜井会長は「例えば医療事故の問題一つ取ったって、元々の政府案、今内閣に入っている人達の案じゃ不安なところがいっぱいある」と言い放った。
 
 桜井会長に「不安なところ」について取材すると、「3次救急の問題じゃないんだよ。2次救急の問題なんだ。2次救急が崩壊しちゃったら、3次救急の問題になっちゃう。在宅で何が問題かというと有床診療所を潰しちゃったでしょう。だから問題なんだ。要するに、民主党の上の方の人たちは大学病院とかは見ているけど、本当の意味での現場、地域のところは見ていないんだよ」と答えた。
 
 加えて、議論が棚上げされたままになっている、厚労省が創設を検討中の死因究明制度についても、民主党案には足りない部分があると指摘。「医師法21条をやめるかどうかは分からないけど、いろんなことを言わせるだけ言わせておいて、今度はそれ(調査報告書)を証拠として使っていいんでしょう。それはないよね。『証拠として使っていいです』と言ったら本当の事を誰も言わないでしょう。普通はそれとこれは別個にして免責にしてもらわないと話にならないと思う。正直に言うからある部分は免責にしてください、ということ」と述べた。民主党案では、遺族が医療事故について納得できない場合、事故原因を調べる第三者機関「医療安全支援センター」に調査を頼める。遺族はここで発行される調査報告書を刑事告発などの手続きに利用することができる
 
 桜井会長の発言を聞いていると、議連の梅村聡事務局長が発足時に述べた「政務三役を応援する立場」とは思えないような発言が目立つ。これには、厚労省政務三役が新型インフルエンザの問題や予算編成で身動きが動けなくなっているこのタイミングで議連を発足させて、桜井会長が自身の立場を上げようとしていると見る向きもある。桜井会長が党内の医療政策を行っていこうとしていた矢先に、仙谷由人行政刷新相のブレーンでもあり現在は厚労省政務官を務める若手の足立信也参院議員に「ポストを持っていかれた」として快く思っていないというのは永田町や霞が関の医療関係者間では知られた話だ。

 特に、財務省が診療報酬のマイナス改定の方針打ち出したこのタイミングで発足した医療費議連は、一年生議員にとってはまさしく渡りに舟。民主党の国会議員からは、「『医療崩壊を何とかする』と言って勝たせてもらったのに、話が違うと地元の医師会の先生から責められている」との声が多く聞かれる。加えて、小沢一郎幹事長の方針で議連が精査されている中、新規に立ち上がる議連は新人議員にはありがたい存在だ。現在は約120人の民主党国会議員が関わるなど、相当な規模になっており、会長自身も記者会見で「(民主党全国会議員の)半分以上いるんじゃないか?増殖中だよ」と満足げだ。
 
 しかし、議連は「オープンな議論」と言いながら議論をマスコミ非公開にするなど、不透明な部分も多い。会合の参加者に聞くと、「選挙区の基盤を安定させるには連合の組織だけでは勝てないから、いろんな団体との窓口が必要になる。この議連で活動していれば、医師会や薬剤師会、歯科医師会も来たくなると思う」と桜井会長が話したという。また、議員立法の案をここで練っていくこともある話されたという。会長自身も発足あいさつで、「『いまや与党の医療を考えるチームの何とかなんだ』と役職を持って医師会なり、歯科医師会なり様々なところに行かれた方がいい」と述べている。
 
 一方で、ある国会議員は「このタイミングだから、特に一年生議員がこの議連に飛び付くのは当たり前。だけど、議連には何か権限があるわけではない。皆がどこまで本気でやろうと思っているのかは分からない」と話す。また、「政務三役は今は控えた行動しか取れないので、自由に動ける議連が小沢さんのところや財務省に行ったりするのはいいと思うし、そうすれば議連と政務三役のいい連携プレーになる。桜井さんが何か考えていたとしても、結果的に国民にとっても良い方向に進めばいい。でもただの内ゲバで終わったら、国民からは民主党のイメージがもっと悪くなると思う」と話す議連参加者もいた。

何かこう、結局この業界というものはこうしてどこかで見たような構図に収束していくものなんだなと、改めて感慨深い話ではあるのですけれどもね。
民主党にしてもいきなり所帯が大きくなって内部でいろいろと大変なんでしょうけれども、選挙前にあれだけ医療医療と言っていたものがいきなり単なる仕分け対象では、それは地区の医師会ならずとも「騙された!」と思う人間は少なからずいるのだと思いますよ。
非常に興味深いなと思うのはこうした一連の厚労省筋の動きに対する鳩山首相の言動なんですけれども、図らずも現在の民主党政権における医療問題というものに対する興味のあり方が表れているようで面白いですよね。

鳩山首相、長妻厚労相の対応批判…事業仕分け(2009年12月3日読売新聞)

 鳩山首相は3日、行政刷新会議による事業仕分けの評価結果の一部を長妻厚生労働相が受け入れないと表明したことについて、「よほどきちんとした理屈をたてなければ、事業仕分けの努力が報われなくなる」と批判した。

 長妻氏は2日、仕分け対象となった厚労省所管の51事業のうち、診療報酬など19事業について「評価結果通りの対応は困難だ」とする見解を発表した。

鳩山総理も各方面で存分に天然ぶりを発揮していらっしゃるようでなによりですけれども、この調子でいきますと一番報われないのは選挙向けの空手形をうっかり信用してしまった人々ということになりそうな勢いですかね(苦笑)。
まあしかし、下手に中途半端な対症療法で問題が先送りされてしまうくらいならここいらで一度根本的な対策をせざるを得ない状況にまで持っていくという考え方もあるわけですから、その意味では現政権の天然ボケが思わぬ後世に残る偉大な成果を産むということになるのかも知れませんけれどもね。
いずれにしてもこのあたり何かをやるにせよ何もやらないにせよ、民主党政権の本気度というものはもう少し経過を見ていく必要があるんじゃないかと感じています。

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