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2009年12月 3日 (木)

銚子市立総合病院再建計画 始まる前から頓挫?!

昨年8月に400床クラスの基幹病院が突然閉鎖!?と話題になった銚子市立総合病院に関して、ちょうど一年前のこの時期に市長リコールが確実?!という話題を紹介したことがありました。
別に市長の首を切ったから病院が再生するというわけでもないと思いますけれども、医療の確保という問題が少なくとも地方自治体レベルでは首長の首をも左右するような重要事になったのだと世に示した事例であったのは確かですよね。
この銚子市立病院、とりあえず来年春に再開予定というスケジュールばかりは決まったようなんですが、案の定前途多難という状況のようなんですね。

銚子市立総合病院:休止問題 再生機構が提案、来年4月再開を /千葉(2009年10月1日毎日新聞)

 銚子市立総合病院の診療休止から丸1年の30日、「市立病院再生準備機構」(木多良輔代表、6人)が診療再開に向けた基本構想を市に提案した。10月から医師を募集し、来年4月に内科、外科、整形外科の3診療科で「暫定再開」するという。

 記者会見した田中肇事務局長によると、「公設民営」方式で経営し、最終的に「おおむね10診療科、200床」とする。(1)老朽化している病院の早期新築(2)看護大学の設置(3)医科大学大学院の新設などを目指し、医師確保策については「6大学と交渉する」としている

 野平匡邦市長は「県や市議会とも相談しながら検討する」と語った。市は30日、県に病院再開のための工程表を提出した。【新沼章】

銚子市立総合病院閉鎖から1年 暫定再開へ医師確保に奔走(2009年10月9日産経新聞)

 深刻な医師不足や経営難により、千葉県の銚子市立総合病院(同市前宿町)が昨年9月末に診療を休止してから1年。注目される再開時期について、同市は来年4月の「暫定再開」を明記した工程表を県に提出した。市の委託で病院再開業務を進める「銚子市立病院再生準備機構」(木多良輔代表)は、医師の確保に向けた募集活動を10月から本格化させている。

 病院再生準備機構は、病院再開に不可欠な医師や看護師の確保を目的に、ベテラン医師や病院経営関係者などでつくる組織。市との委任契約で7月から業務に着手し、2カ月間の検討結果からまとめた「再生基本方針」を市側に提出した。

 基本方針によると、経営形態は「公設民営」を中心に検討。「救急医療体制の確保」「産婦人科、小児科の充実」を理念の柱に据え、10診療科、病床数200床の総合病院を将来構想としている。ただ、医師確保などの面から、まずは内科や外科など3科程度で来年4月に暫定再開し、3~4年後をめどに最終完成形を目指すという。

 銚子市に対しては「老朽化が激しい病院施設の早期新築」「医療従事者の宿舎の見直し」などを提案している。同機構の田中肇事務局長は「具体的な将来構想を見せないと若い人材は集まらない」と、待遇面での配慮を盛り込んだ理由を説明する。

 同機構では7月末から千葉大医学部や自治医大系の社団法人「地域医療振興協会」などと接触。田中事務局長は「6つの大学医学部と医師募集の具体的な交渉に着手していく」としており、同市によると、大学側との直接交渉も今月から始まっているという。

 機構側の基本方針に対して、野平匡邦市長は「異論はない。病院の新築については、県の補助金制度などを活用し、できるだけ現在の場所に建て替える方向でいきたい」と話した。

まあ、その…今時の自治体病院の常でここも元々経営も待遇もさほど良くなかったわけで、それをたかだか開院前半年程度のにわか募集運動でほいほいと人が集まって総合病院が出来上がるなどと本気で考えていらっしゃったのだとしたら、幾らなんでも見通しが甘すぎると思うのですけれどもねえ…
さて、とりあえず院長予定者として一人だけは医者が見つかりましたよという記事がつい先日掲載されていたのですが、新院長に内定した笠井源吾氏は昭和38年日本医大卒で循環器内科医だということなんですけれども、正直一体いつまで働かせるつもりなのかといささか敬老精神に感じるところなしとしないような話です。

市立病院再開へ医師採用 銚子市 (2009年12月1日読売新聞)


参与として 院長代理候補
 銚子市は30日、茨城県神栖市の社会福祉法人・済生会波崎診療所顧問の笠井源吾氏(71)を12月1日付で市参与(非常勤特別職)として採用すると発表した。来年4月の市立病院の再開に向け、医師を確保したのは初めて。市は来年3月末の任期終了後、同病院長代理に就任してもらう意向だ。

 笠井氏は国立横須賀病院循環器医長、社会福祉法人・済生会波崎済生病院長、同法人・神栖済生会病院名誉院長などを歴任。今年4月から診療所顧問を務めている。記者会見した笠井氏は「市立病院を放置したままではもったいない。これまでに病院の再生に取り組んだ経験があり、市立病院再開のお役に立ちたい」と抱負を語った。

 市は市立病院再生準備機構(代表=木多良輔・大阪回生病院顧問)に医師確保などの業務を委託し、千葉大医学部や県の協力も受けて準備を進めている。笠井氏は同機構と連携して、医師の確保に取り組む。

いやあの、「放置したままではもったいない」って、あまりに老朽化が進んでさっさと立て直さないと人が来ないというくらいにボロいという話だったのではないかと思ったのですけれども、結局あれもハコモノ行政のための為にする議論だったということを言っていらっしゃるわけなんでしょうか?
失礼ながら笠井氏の医師集めに関する力量あるいは人望というものがどの程度なものかは存じ上げませんけれども、このまま結局医師確保はできませんという話に終わったとしたら、笠井氏も随分とさみしい診療に従事しなければならなくなりそうなんですが。
まあそうした突っ込みどころはともかくとして、こちらに病院崩壊後一連の市長選の経緯とも絡めた話題が豊富に掲載されているんですけれども、この中でも大衆日報2009年10月07日第17638号に掲載された記事というのがなかなか興味深いんですよね。

医療関係者に悪評高い銚子市と銚子市民 (2009年10月8日銚子市民サイドのホームページ)より抜粋

 「みなさん一応の話は聞いてくれるが、具体的に『(銚子に)行ってあげよう』という医師はまだいない。今はまだ『竦(すく)み合い』の状態。竦み合いのまま誰も4月に来ないということもあるかも知れない」と医師確保の交渉状況を話すのは野平匡邦・銚子市長で、いったん全面休止してしまった市立病院の再開という「超難問」にどう立ち向かうのか? 9月30日(水)、銚子市保健福祉センターで開催された「第1回市民報告会」は、225名の市民が訪れ満員となった。
(略)
▼野平匡邦・銚子市長
(略)
 もう一つは、「決して絶望しないで下さい。県も自分の問題として真剣に考えています」という心強い言葉をいただいた。だからと言って来年4月に何人医者を出すということではない。しかし千葉大・旭中央病院・銚子・他の病院で連携しながら、それぞれの特徴を出しながら、お互いを補い合いながら、復元・再生していこうという話。私はそういう言葉が県から聞けるとは思っていなかった。
 従来から言ってきたように、医者の確保については県はあてにならない厚生労働省にも医者はいない。医者の確保は銚子市が地域医療振興協会と一緒になって本気でやらなければいけない。県や国はお金は何とか助けてくれるだろうと言ってきた。しかし逆にお金は少し渋くなってきて、「医師の確保については、県も一緒になってやりますから」と言われ、少し見えてきたのかあという印象。

いや、失礼ながらこの状況で何がどう「少し見えてきた」のかと思うような話なんですけれども、この後も例の徳洲会進出の噂であるとか色々と読み応えのある記事が続く中で、ひとつ注目しておくべきなのが病院再生の財源方面の話題で、例の地域医療再生基金というものを非常に当てにしていたのだなと思わされるような話なんですね。

地域医療再生臨時特例交付金

 地域医療再生臨時特例交付金だが、100億円の玉が10カ所、25億円の玉が80カ所。県庁が来月、厚生労働省に申請する。
 2つの医療圏で計画を策定することが県の医療審議会で決まり、9月30日に2地域で出すことが決まった。それを精査して来月半ば、10月16日に厚生労働省に持っていく。香取海匝と山武長生夷隅の2圏域で、銚子は25億円の方かと思っていたが、100億の方でよかった。そのかわり競争は厳しい。25億円の方は80カ所あるが、100億円の方は10しかない。しかし千葉県は本気でやると言ってくれた。
(略)
 県の計画を受けて、厚生労働省で判定会議が開かれる。そこでめでたく銚子の100億円が決まれば、来年2月県議会の頃には県の金庫に100億円がポンと来る。お金が入って実際に使うのは来年4月から。この100億円を4年間で使う。
 100億円のうち50億円が銚子市に来るということは基本的にない。銚子市の病院だけを再開するためのお金ではない。
「連携のためのお金」だ。厚労省が資料で具体的に書いているのは、例えば千葉大学に50億円をポンと寄付する。地域医療公団を作る。教授・准教授・講師・助手に給与を払ってあげる中で、協力してくれたので、この地域に医者をずっと送るという気の長い話。医学部の学生・看護師にあげる奨学金のようなものをどこかに作り、「銚子に行って下さいね」と言うようなものをこれから作るわけだから、来年4月にすぐ役立つお金だけではない。
 県の部長が言っていたのは、「暫定開業に必要な暫定的な建設費は対象になります」ということ。「ここは治さなければならないというお金は、最低限数億かかるだろう。それくらいは対象になります」と言っていた。このような状況で、まだまだ先は見えていない。

ところが以前にもご紹介しましたように千葉県医師会絡みでのゴタゴタがあって千葉が落選する可能性が限りなく高まっている、加えてそもそもこの100億の方の事業自体をもう全てやめにしてしまって全部25億に切り下げましょうなんて話もすでに出ているわけですから、これはどう考えても「とらぬ狸の皮算用」に終わる気配が濃厚で、一体それでは資金面でどうするんだとすでに頓挫しかねないような話です。
この地域医療再生基金絡みの諸問題というのは全国各地で色々と持ち上がっていて取り上げると面白いなと思うのですが、お金を出す方もずさんなら受け取る方もずさんという、これは一体この財政緊迫のおりにこんなことで良いのかと、仕分け人ならずとも疑問に感じるところなしとしないような話が山積しているようですね。
中でも千葉というところはどうもあまりに急ぎ過ぎた計画を立てていたらしく、それは確かに自治体にとっては降ってわいたようなお金ではあるところでしょうけれども、こういうことこそ無駄なお金のばらまきにならないようにもう少ししっかりした検討が必要なところだと思います。

バラマキかクリーンヒットか 地域医療再生基金が抱える火種(2009年11月30日週刊ダイヤモンド)より抜粋

崩壊する医療の立て直しを目的とする地域医療再生基金。なにしろ、都道府県に配られるおカネは各50億円、事業期間は5年間とあって、自治体は熱い視線を注ぐ。だが、再生の美名とは裏腹に、その効果には医療関係者からも疑問が投げかけられている。プランを作成した自治体、病院、厚生労働省の舞台裏を探った。

「5年間の中期計画を、5ヵ月でつくるのは非常に難しい。県の医療審議会や議会に話を通す必要もあったため、実際には2ヵ月しか時間がなかった。地域医療再生基金から100億円プランが消えたときは、喪失感しかなかった」

 ある自治体の医療担当者は、翻弄され続けたこの5ヵ月間をこう振り返った。

 今年の6月5日、厚生労働省が各都道府県に通知した地域医療再生基金の計画に、各地の医療担当者は色めき立った。「医師の確保」「救急医療」、さらに病院間の「機能再編」など現在、地域医療が抱える課題は少なくない。地域医療再生基金とは、こうした課題を解決する再生プランを各都道府県が作成し、これを厚労省が認めれば、交付金が支給されるというものだ。

 ターゲットは、全国に369ある“二次医療圏”(通院から入院まで、一定の医療が提供されることを目指す地域の単位)のうち、都道府県ごとに2つのエリア、合計94の地域である。

 当初の計画では、このうち全国の10地域に各100億円、84地域に各25億円、総額で3100億円の交付金が支給されるはずだった。

 しかし、再生プランの提出期限は、10月16日とあまりに短かった。基金が「前政権の選挙対策」と指摘されるゆえんである。

 短期間で再生プランをつくるとあって、もらえるカネを使い切る予算の策定が第一の優先事項で、その中身は当然、ずさんなものとなった。40弱の自治体で練られていた100億円プランの実態は、そのほとんどが新病院建設など大型の“ハコモノ計画”である。

 加えて各自治体が、2つの二次医療圏を交付金支給のエリアとして選ぶ際、エリア選定や再生計画の立案がかなり強引に進められたケースもあった。

 千葉県で対象エリアに選ばれた山武長生夷隅エリア(県東南部)では、病院が入院や手術などが必要な救急患者を輪番で受け入れるための、機能強化が盛り込まれた。だが、「この計画は、誰も聞いていなければ同意もしていない。地区医師会の幹部だけが知っていた」と、当事者となる病院の院長は不満タラタラだ。

 100億円プランの中身を決めるに当たり、「医師を派遣するからと、高額な医療機器の購入台数まで派遣元の大学に決められた」(ある病院院長)ところもある。

 大混乱のなか、再生プランの作成は急ピッチで進められていたが、政権交代により、さらなる波乱が起こる。再生プラン提出の締め切りが近づいた10月9日、厚労省は補正予算の見直しの一環として、100億円プランの執行停止を決定。エリアごとに支給する交付金の金額をすべて25億円に統一し、基金の総額を2350億円まで減額したのだ。

 100億円の獲得を目指していた自治体は、交付金の減額で再生プランの練り直しを迫られた。だが、提出の締め切りは、わずかに3週間延びただけである。

5億円のプランも内訳と積算根拠なし

 11月6日、再設定された再生プランの締め切り日を迎えた。

 そもそもの期間設定に無理があったところに、無理を重ねて新たな再生プランはつくられた。

 今回、各都道府県は、「専門医の確保」「急患センターの新築」「検査装置の導入」など、さまざまな事業計画を提出。だが、再生プランの書面には、2億円、3億円はおろか、5億円を超える事業でも、その内訳金額と積算根拠が示されていないケースがいくつもあった。「国からは事前にお墨付きを得ている」とある県の担当者は説明するが、内訳金額や積算根拠なしに、計画が妥当かどうか、まともな審査ができるはずもない。なかには「積算根拠なしの事業もある」と認めた県もあった

 再生プランの中身にも疑問符が付く。今回、多くの都道府県が医師の確保に向けて、大学への「寄付講座」を予定している。講座を担当する指導医と研修医を囲い込んで、地域の病院で研修と診療を行なってもらう目論見だ。交付金は、その人件費や研修センターの建設などに使われる。

 だが、「組織として協力すると言われている」「各大学の了解はこれから」と、協力してくれる大学と人数の確約を得ぬまま提出された寄付講座のプランも少なくない

 そもそも、寄付講座を使った医師の囲い込みにしても、その効果を認める関係者は皆無に近い。「医師引き揚げの抑止力」(関係者)というのが関の山だろう。

 いくら再生基金で医療の機能や体制を整備しても、医師が揃わなくてはムダガネに終わる。
(略)

審査は1回のみ 事後検証は破綻

 12月の中旬以降、有識者による協議会で各都道府県が提出した再生プランが審査される。明示されていなかった各事業予算の内訳金額と積算根拠についても厚労省医政局指導課は「全県から取る」と11月13日に明言した。

 だが、事前に全プランを委員に渡すとはいえ、協議会の開催は、わずか1回のみ。これでは、まともな審査ではなく、単なる“追認”にほかならない

 行政刷新会議の評価委員(仕分け人)を務める長隆氏(東日本税理士法人・公認会計士)が指摘する。「この基金は、このままでは単なるバラマキになってしまう。交付後に効果のないものは、停止や返還をすべき」。

 対する厚労省は、各県の数値目標を基に「事後検証の実施」を力説する。再生プランには、たとえば救急なら圏外搬送率を「30%」から「10%」に減らすと明記する決まりだ。

 しかし、数値目標を記していない県がいくつもあるのだ。事後検証の仕組みは、ハナから破綻している。この“火種”を取り除かない限り、再生基金の交付は停止すべきだろう。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬

色々な面を総合して考えるところ、正直来春の再開などという話どころではない暗雲だらけという印象なんですけれども、果たしてこの状況で無理な見切り発車をして遠からず再び崩壊に追い込まれることになるのか、それとも一から計画を見直すのか、自治体にも一度冷静に踏みとどまる勇気というものも必要になってきたようにも思えるんですけれどもね。

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コメント

ため息しか出ない話。
「勤務医対策」の美名のもとに、血税が湯水の様に費やされて、全然勤務医の待遇は改善しない悪夢。。。

投稿: 18R-GEU | 2009年12月 4日 (金) 01時01分

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