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2009年12月 1日 (火)

医療問題の議論すなわち診療報酬をめぐる攻防って図式はどうなのか

仕分け作業で色々なところに影響が出ていますけれども、医療行政を統括する(はずですが)厚労省にしてもそれは例外ではありません。
あちこち削られる中で何を受け入れ何を温存するかというのも判断の分かれるところだと思いますけれども、今回の厚労省は診療報酬に関しては譲らずという決意を固めたようですね。

厚労省、事業仕分け8割受け入れ 金額ベースで3360億(2009年11月29日47ニュース)

 政府の行政刷新会議による事業仕分けの結果を受け、厚生労働省がまとめた対応方針案が29日判明した。対象となった51事業のうち診療報酬の配分見直しなど20事業は「対応困難」としたが、金額ベースで8割に当たる計約3360億円の事業廃止や予算削減、基金の返納などを受け入れる

 各府省の対応方針が判明するのは初めて。厚労省はこれに沿って財務省と来年度予算の折衝を進める考え。

 仕分け通り対応する主な事業は、約5億円を要求していた「女性の健康支援対策事業委託費」(廃止)、約9億円の「仕事と生活の調和推進事業」(予算計上見送り)など。

 基金2787億円全額を国庫に返納するよう求められた独立行政法人「福祉医療機構」についても返納に応じ、基金の運用益による高齢者や障害者の支援事業は国の補助事業に衣替えする。

 一方、「政治銘柄」だった診療報酬については、収入の高い開業医と勤務医の格差是正や診療科間の収入平準化などを求められたが、「中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)での検討が必要」とした

 市販類似薬を保険適用外とするよう求めた判定は、患者の負担増につながるため拒否した。

医療分野の仕分けに関してはあちらからもこちらからもそれはもう不平不満が殺到という状況ですけれども、それはもう財政状況からこれ以上出せませんよと言われるのであればそろそろ腹をくくって予算の範囲内で仕事をしていくしかないのかも知れません。
一方であまり国民の受けはよろしくない診療報酬引き上げについて、近年財務省の前に屈してきた印象の強かった厚労省がこのところ妙にやる気を出しているように見えるのが何なのかなと思いますね。
特に面白いのが厚労省も厚労相である長妻氏もそろって診療報酬引き上げを主張して財務省に反論し始めているように見えるのですが、長妻氏などは総額引き上げに対して慎重派だったようにも思うのですけれども、これはテレビ向けのリップサービスなのか、それとも何かしら省内での官と政との意思統一が図られたということなんですかね?

診療報酬引き下げ、長妻氏が異論 「医師数は少ない」(2009年11月29日朝日新聞)

 長妻昭厚生労働相は29日のテレビ朝日の番組で、医療行為や薬の公定価格である診療報酬について「全体のパイを上げたうえで中の配分を大きく見直すことが必要不可欠だ」と強調した。財務省が診療報酬全体を引き下げて配分の見直しを求めていることに反論した。

 長妻氏は「日本の医療費、医師の数は先進7カ国で最低」と指摘したうえで、「今回の政権交代の大前提は、コンクリートから人。医療崩壊を立て直すためには、一定の金額が必要だ」と診療報酬全体の底上げを改めて求めた。一方で「配分も変える必要がある」とも述べ、開業医と勤務医の収入格差の見直しや、医師不足が目立つ産婦人科や小児科などへの重点配分を目指す考えを示した。

「医療費、国際的には低水準」厚労省、財務省に反論(2009年11月28日朝日新聞)

 厚生労働省は27日、医療予算の圧縮を求める財務省の見解への反論をまとめ、ホームページ(HP)上で公表した。日本の医療費の水準は国際的に低いと主張。鳩山政権が目指す医療再生のため、十分な予算の確保を求めた。年末の予算編成に向けて論争が始まった。

 発端は19日の野田佳彦財務副大臣の記者会見。物価や給与水準が下がる中で「ドクターだけ高止まりでいいのか」などと述べ、医療行為や薬の公定価格である診療報酬の引き下げを求め、財務省のHP上で見解を示す方針を表明した。

 これに対し、厚労省の政務三役は「正しい情報を伝えないといけない」と、反論をまとめるよう指示した。

 厚労省の見解では、日本の医療費が対GDP(国内総生産)比で経済協力開発機構(OECD)の30カ国の中で21位の低水準だと指摘。連立3党の政権合意の「医療費の先進国並みの確保を目指す」という記述を引用した。

 さらに、診療報酬を医師の給料に結びつけた財務省に対して、「診療報酬=医師の報酬ではない」と記載。「公立病院の総費用のうち医師の給料は1割だけ」というデータで牽制(けんせい)したうえで、診療報酬の配分見直しだけで財源をひねり出すのでは不十分だとしている。(中村靖三郎)

財務省の医療予算査定方針への見解を発表―厚労省(2009年11月27日CBニュース)

 厚生労働省は11月27日、財務省が19日に公表した医療予算の査定方針についての見解を発表した。厚労省の担当者は「財務省への反論ではなく、医療費や診療報酬に関する客観的な事実を国民に向けて発信するために示した」としている。

 財務省の来年度予算編成に向けた医療予算の査定方針では、開業医の年収(約2500万円)と病院勤務医の年収(約1500万円)との間に1.7倍の格差があることや、診療科によって収支差額や医師数に偏りがあることなどを示しており、医療費を増やすよりも診療報酬の配分を抜本的に見直すことで、医師不足問題に対応すべきとしている。

 これに対し厚労省は見解で、日本の医療費は諸外国と比較すると低水準であるほか、診療報酬は病院や診療所に対して支払われるものであり、医師の報酬とイコールではないとしている。
 また、これまでの診療報酬改定でも診療科間の格差是正を行っているほか、前回の改定で病院と診療所のバランスに配慮していると指摘。総額34兆円という医療費の規模を考えた場合、配分の見直しで捻出できる財源はそれほど大きくなく、「医療再生のためには、もう一段の検討や努力が必要」としている。

この中で特に注意していただきたいのが同じ現象を朝日の記事では「厚労省、財務省に反論」と掲載し、CBニュースでは当の厚労省から「財務省への反論ではない」と断言されているところ…も確かに面白いのですが、その厚労省担当者の「財務省への反論ではなく、国民に向けて発信するために示した」という下りだと思うのですね。
先日も言いましたように、診療報酬引き上げなどと主張するにしても財務省や支払い側など金を出したくない人々に一生懸命主張したところで仕方がない、鈴木寛・文部科学副大臣の言うように医療を直接給付される対象である国民に向けてプレゼンテーションをしていくべきであるという発想が、ここにも表れているのかなという気がします。

このあたりは本来であれば当事者である医療系団体が主導して行わなければならないところなんだと思うのですが、(政治力はともかく)最もネームバリューがあるだろう日医がそのあたりとことんヘタクソかつイメージ最悪(というより、世間的には悪の組織扱い?)だとくれば、これはもう何を言っても「日医が言っているから反対」と言われるのがオチというものですかね。
記事中にもありますように医療費増も一つの大きなテーマとして掲げ医療関係者の支持を獲得した民主党政権ですから、このままなし崩しに更なる診療報酬削減政策の遂行となれば詐欺と言われても仕方がありませんが、そのあたりのイメージ戦略もあってか民主党内でもこんな動きがあるようです。

医療費増を目指す民主議連が発足-「診療報酬の大幅アップを」(2009年11月26日CBニュース)

民主党が先の衆院選で方針を掲げた医療費増額の実現を目指す「適切な医療費を考える民主党議員連盟」が11月26日に発足した。当面は、来年度の診療報酬改定について集中的に話し合い、本体部分の改定率の大幅アップを厚生労働政務三役に働き掛ける方針だ。

会長に就任した櫻井充参院議員は同日の発足式のあいさつで、「産婦人科とか小児科が極めて危機的な状況に直面している。われわれは、そういうことを改革すると訴えて選挙に勝たせていただいた」と述べ、当初の方針通り医療費の増額を実現すべきだとの認識を表明した。

民主党は7月に公表した「政策集インデックス2009」の中で、総医療費対GDP(国内総生産)比を今後、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均にまで引き上げる方針を掲げた。しかし、来年度の診療報酬改定をめぐっては、厚労政務三役から改定率の引き上げを求める声が上がる一方、財務省側は本体部分を原則引き下げる方針を示すなど、政府内でも足並みが乱れている。
呼び掛け人の梅村聡参院議員は発足式終了後、記者団に対し、「医療費等はOECD先進国の平均を目指していくと、われわれは明確にうたっている。その実現に向けて政務三役を応援していく立場だ」と説明した。

当面は、本体部分の改定率について集中的に話し合い、医療関係者からのヒアリングも実施する。12月中旬に厚労政務三役に提案する見通しだ。
26日の発足式には、代理を含め同党の国会議員72人が参加。改定率だけでなく、具体的な点数配分についての議論を求める意見や、12年度以降の報酬改定でも考え方を示すべきだとの意見が出た。

もちろん民主党も今や衆院だけで300議席という巨大与党になったわけですから内部で意見の相違があって当然ではあるのですけれども、この議員連の数を見る限り一応にも公約に掲げた(まあ公約とマニフェストと政策集は違うとか色々難しいことを言うんですが…)話を支持するのがむしろ圧倒的少数派に見えてくるのは気のせいなんですかね?(苦笑)。
思うに今回頑張って診療報酬増額を勝ち取ったとして、今のやり方で続けている限り医療費総額はどんどん増加していく(小児医療充実というのも民主党の公約だった気がしますが)、一方で税収面ではむしろ今より減っていくとなれば、これはどこかで抜本的に仕組みを見直さなければいずれ限界が来ることだけは明らかな話だと思うのです。
一方では医療費医療費とひとまとめに言いますけれども、そのうち政府が出す公費負担分が幾らなのかという話をしなければ医療費支出で財政が破たんするなんて話とつながらないわけで、早い話が医療費が百兆に膨れ上がろうが政府負担分がゼロであれば財政上はむしろ巨大な税収減となっていいんじゃないかという考え方もあるわけです。

その意味では昨今一部で人気のように医療を巨大な内需ととらえ基本的に成長産業と考えていくのはよいとして、その中でどれだけを公費で負担していくべきなのかといった部分の議論はそれこそ全く不十分だと思うのですけれども、まさにそんな部分こそ国民負担との絡みで民主党初め政治家の皆さん方が公に口にしたがらないところなんじゃないかとも思うわけですよね。
この辺りは混合診療導入の話であるとか医療と介護の境界であるとか、引いては最近話題に上っている軽症患者の受診抑制問題などとも絡んでくるところだと思いますが、今回の仕分け作業を奇貨として医療の新しい方向性を探るという前向きなとらえ方もあっていいかとも思いますし、そういう方面の議論をそろそろ本格的にしていかないと小手先の手当てで延命しているだけではいずれどうにもならなくなると思いますね。

そしてもちろん、医療現場を蝕む問題はお金がらみの話ばかりというわけではないのですから、お金は出せずとも現場が気持よく働けるようになるアイデアがあるということであれば、どんどん実行していった方が結局は患者である国民の利益にもかなうということなんですよね。

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