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2009年12月24日 (木)

診療報酬0.19%のアップで確定

ということなんですが、まずは記事から紹介してみましょう。

診療報酬改定率:10年ぶり引き上げ 0.19%(2009年12月23日毎日新聞)

 財務省と厚生労働省は23日、10年度の診療報酬全体の改定率を0.19%引き上げることで合意した。医師不足が目立つ産科や小児科などを充実させるため、医師の技術料にあたる「本体部分」を1.55%引き上げる一方、薬の公定価格「薬価」などを1.36%引き下げた。全体のプラス改定は2000年度以来、10年ぶり

 患者や公的保険から医療機関に支払われる診療報酬は、「本体」「薬価」を合わせたものだ。0.19%増は医療費ベースで約700億円増となる。厚労省の試算によると、年収374万円の中小企業の平均的な会社員の場合、保険料が年間285円程度、外来の窓口負担(3割)は1カ月当たり7.8円上がるという。

 10年度改定を巡っては、減額を迫る財務省と、増額を求める厚労省との間で調整が難航。平野博文官房長官は23日午前、首相官邸に藤井裕久財務相と長妻昭厚労相を呼んで改定率の素案を示し、両者を納得させた。
(略)

昨夜からネット上のあちこちでこの件に関して書き込みがありますけれども、総じて皆さん冷めた反応かなという感じですかね。
一番大笑したのがこちらの書き込みですけれども、確かに何らの実がないまま「プラス改定」という名だけを取ったと言う印象が強い結論ではありました。

581 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/12/23(水) 18:24:05 ID:1rr+g+6B0
>>572

 僻地医療の自爆燃料を語る146
 200 :卵の名無しさん[sage]:2009/11/25(水) 20:08:07 ID:YgImVEck0
 (中略)
 厚労省が+3%、財務省が-3%ということは、プラスマイナス0%に
 民主党が恩着せがましく+0.2%くらい上乗せで決着かな。
 で、新聞には大々的に「診療報酬プラス改定」「最後は政治決着」
 「求められる医療の質と効率化」などの見出しが踊ると。

先月の俺の書き込み。
この程度、俺でも予言できたぜ。

ネットの反応はともかくとして、記事中にもありますように厚労省と財務省とのトップ同士のやり取りというのは最後まで相当にこじれていたようですよね。
直前の報道ではこんな感じであったようですけれども、正直財務省の言うゼロ回答だろうが厚労省の言う限りなくゼロに近いプラス回答だろうが実際上どれほどの違いがあるのかと考えた場合に、まさしく「恩着せがましく」「最後は政治決着」というシナリオ通りであったのかなとも思われるところです。

藤井財務相「厚労相は政治論ばかり」 診療報酬巡り激突(2009年12月22日朝日新聞)

 来年度改定される診療報酬をめぐり、財務、厚生労働両省の攻防が激化している。全体の改定率で意見が折り合わず、藤井裕久財務相が長妻昭厚労相を「政治論ばかり」と異例の批判。長妻氏も主張を曲げない姿勢で、着地点はなお見えていない。

 21日に初めて閣僚間で行われた診療報酬の協議では、長妻氏が全体でプラスになる改定を求めたのに対し、藤井氏は財政状況の厳しさを理由にマイナスで譲らなかった。藤井氏は22日の閣議後会見で、「プラスになるのは多くの人を味方にし、マイナスは多くの人を裏切る、と(長妻氏は主張する)。大臣折衝はそういうものではない」と長妻氏の姿勢を批判した。

 これに対し、長妻氏は同日の会見で「全体でプラスということが医療を再生するためには必要であるという結論になっている。決して過大な要求をしているわけではない」と「政治論」を取り下げず、「財務省と交渉が続いているので、そういう主張を極力具体的に申し上げていきたい」と宣戦布告をした。この日の厚労省政務三役による協議でも、全体でプラス改定を獲得する方針を確認した。

 藤井氏も同日朝には、記者団にこう言い放った。「デフレの時にどうして上げるの? それは保険料にもかかってくる。私は曲げません

デフレの時にどうして上げるの?と言われれば、それじゃ景気が拡大基調にあったというこの十年でひたすら診療報酬を削減してきたのはなんだったのかって話にもなるんですけれどもね(苦笑)。
まあしかし、これはこれで財務省系の方々の認識というのがよく判る話ではありますが、逆にそれを突き崩せるだけの説得材料を厚労省側が用意できなかったのも事実だと思います。
例えば0.3%なんて小幅な引き上げじゃ駄目だ、3%は必要だなんてことを言う人達もいましたけれども、それでは3%になると出資者である国民にとって何がどう変わってくるのかというところが結局見えてこなかったのは傍から見ていても気になったところで、結局「今医療が大変だからもっと診療報酬を手厚くしないと」という以上の具体性のある話ができる人がどこにもいなかったわけです。

何しろ助教授クラスが飛んでくるという破格の金額を出そうが逃げる時には医者は逃げるわけで、仮に様々なしがらみを乗り越えて現場の医者達に実際いくらか余分な金が回るようになったとしても、それによって医療崩壊という現象のどこがどう改善されるのかと言えば、逃げ出していっている当事者にとっても疑問符が付く話なんじゃないかと言う気がします。
例えばあり得ない話ですが診療報酬を倍増すれば全国津々浦々の僻地病院に医者があふれ、救急車は最短時間で病院に収容され、外来待ち時間は限りなくゼロに近づき、行き場の無いお年寄りには適切な施設が用意され云々の理想郷が実現するのかと考えた場合、そんな夢物語を信じている方がむしろ頭の中身を疑われかねないですよね。
診療報酬を増やせば史上空前のペースで倒産していく病院経営は多少改善するのかも知れませんが、そんな経営危機問題はいまどき医療業界に限った特別な話でも何でもないわけで、上げた場合のメリットが具体的に提示できないとなれば、なるほど結局スポンサーであり医療の受益者である国民から診療報酬増額に明確にノーを突きつけられたのも仕方がないと言うしかないでしょう。

逆に診療報酬を引き上げないメリットは何かと考えた場合に、まず財政上の要請と言うのはもちろんですけれども、例えば経営体力のない病院が倒産していった結果医療資源の集約化が進む、すなわち長年厚労省が持論として思い描いてきた病院再編が労せずして実現するという副次的効果があるわけです。
このところ病院経営側としては医者に破格の高給を提示してでも医者を数集めた方が経営が改善するという認識が広まりつつありましたが、それによる医師の相場の高騰を懸念する声があったのも確かであって、国が診療報酬はこれ以上上げません!と明確に示してくれた方が「いや先生、国の政策がこうですからこれ以上はさすがに」と値切りやすくなる効果もありそうですよね。
国民にとってはもちろん懐に優しいということは言うまでもありませんけれども、いずれにしても少々余計にお金を出したところで結局大差ないのだとなれば特別財布のヒモを緩める理由もないという話ですから、少なくとも財務省の方針に反対する理由もないわけです。

さて、こうして考えていきますと今回は仕分け人に対するプレゼンテーションがまずかったからとか空前のデフレで時期が悪かったからといったレベルにとどまらず、診療報酬引き上げを主張する人々は何かしら根本的な戦略を練り直さない限りは次回以降も全く同じことを繰り返すんじゃないかという想像が成り立ってくるように思うのは自分だけでしょうか。
今の時代何事にも分かりやすさを求められるのは仕方ないところですが、例えば医者が足りないんだからとにかく医者を増やせ!という話と比べても、今医療が大変だからとにかく診療報酬を上げろ!という話はずいぶんと具体性を欠いて何ともイメージしにくく、アピールも弱いと思いますね。
もともと採算性の乏しい地方においてはとっくの昔から大赤字を垂れ流しながら公立病院が何とか医療を維持してきたという現実を前にして、単に経営が厳しいから何とかしてくれでは「他の業界はもっと厳しいんだ!甘えるな!」と言われて終わりだと思いますけれども、まずはこの瞬間にも逃げていく現場の医者達が要求しているのは本当に何がしかの診療報酬引き上げなのかといった辺りから再検討してみるべきなのかも知れません。
病院の収入が増えて経営者が喜んだところで、それが現場スタッフの士気改善に結びつかないということであれば、結局のところ医療崩壊という現象の根本的解決にはならないんじゃないかと思うのですけれどもね。

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