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2009年12月 4日 (金)

事故調議論 他方面での教訓を活かしましょう

先日はこういう記事が出ていましたけれども、ご覧になりましたでしょうか。

未健診出産:危険性大  08年に道内で70件、NICU入院も26%に /北海道(2009年12月1日毎日新聞)

 事前の健診をほとんど受けない妊婦による出産が、道内で08年に少なくとも70件あったことが産科医らのグループによる道内初の調査で分かった。新生児集中治療室(NICU)入院も26%に上り、健診を受けないままの出産は危険性が高いことが裏付けられた。

 北海道周産期談話会のプロジェクトチームが今年4月、道内115の全分娩(ぶんべん)施設を対象に08年の実例についてアンケートをとった。51施設(44・3%)から回答を得て、11月の道の研修会で公表した。

 健診を全く受けないか、妊娠初期に1、2回しか受けない妊婦による出産は70件。全分娩数に占める割合から推計すると、道内の全体では145件程度と推計される。

 新生児の状態は、低出生体重が19・7%で、07年の全国の新生児の平均8・2%と比べ倍以上。早産が15・7%で、全国平均の5・8%の3倍弱に上った。子宮内感染や低血糖など新生児異常が16%あり、NICU入院は26%。いずれも通常の5~10%を大きく上回る

 母親についてみると、未婚者が54%に達し、出産回数が4回以上が12・7%と、道全体(07年)の0・8%を大幅に上回ることが特徴。胎位異常など母体異常の割合も24%で高い

 医療機関が把握している未受診の理由(複数回答)は「経済的理由」(50・0%)が最も多い。「産むかどうか迷った」(26・8%)や、「妊娠の経験があり、健診を受けなくても大丈夫」と自己判断したなど、「意図的」なケースも16・1%となった。医療費の未払いは26%で、医療機関には財政的な負担も生じている

 北大病院産科の山田俊・診療准教授は「『未受診はふまじめ』とは片づけられない。母子ともにハイリスクであり、医療と行政が、学校・地域社会と連携しリスクの啓発や経済的な助成制度の充実などに取り組むことが大事」と話している。

 未受診の妊婦による出産は全国で相次ぎ、病院が対応できないなどの問題も起きている。札幌市でも07年に自宅で出産した未熟児が病院をたらい回しにされた後、死亡したケースがあり、市が対策に乗り出している。【堀井恵里子】

内容自体はそんなものなのかなという話ではあるのですけれども、こういうリスクというものを妊婦や行政を含めた一般国民がどう評価し、行動に反映させていくのかということが重要なデータではないかという気がしますね。
医療業界では医療業界なりに安全性向上ということに対してそれなりに意を払ってきた、その結果例えば周産期死亡率が過去半世紀で2ケタ減少したといった輝かしい成果を収めてきたことは事実ですけれども、一昔前の文学では主人公を産んで母親が亡くなっているなんて設定がデフォだったものが、今ではお産は病気ではないと過度に安全性ばかりが強調される時代になってきました。
もちろん患者不安を除くという意味から医療従事者が先頭に立ってそうした安全性を喧伝してきた時代もあったわけですが、逆に今の時代ではインフォームドコンセントなどの要請からも客観的データに即して正しく危険性を評価し伝えることが要求されている(最近の医者は言うことがきつくなった、なんて良くクレームもつきますが…)、そこに患者である国民サイドとの認識のギャップが生まれてきているわけです。

昨今では全国各地でADR(裁判外紛争解決手続)などの活動が盛んになってきていますけれども、医療におけるリスクに対する認識が医療従事者と患者ら被医療側とで極端にかい離したままでの議論ということになりますと、これはあまり実のあるものとならないだろうとは想像できるところですよね。
最近では医療安全ということになりますと単に医療従事者のみならず弁護士らも議論に加わってくるようになってきましたけれども、単に法的責任の認識といった話にとどまらず、外部目線の導入という意味でもこうしたことは意義があるように思いますね。
それに関連して先の「医療安全推進週間」に厚労省主催のシンポジウムが開かれたということなのですが、ここでもいくつか興味深い話題が出ていたようですので紹介しておきましょう。

医療安全めぐり弁護士、医師らが討論-厚労省シンポ(2009年11月30日CBニュース)

 厚生労働省が主催する医療安全推進週間シンポジウムが11月28日、東京都内であり、医療事故調査の在り方や、事故の死因究明などを行う第三者機関の設置をめぐり弁護士や医師、市民団体代表者などパネリスト8人が意見を戦わせた。

 シンポジウムではまず、厚労省の塚原太郎・大臣官房参事官が「安心・納得・安全な医療の確保に向けた取り組みがこれまで以上に求められている」とあいさつし、医療事故情報収集等事業や産科医療補償制度の導入など、医療安全の10年の歩みを振り返った。

 第1部「国民の目から見た医療安全」では、厚労省が事前に行ったアンケート調査の集計結果が示され、パネリストらからは、「質問が漠然としている」「代表性に問題がある」などの意見が出た。コーディネーターを務めた中京大法科大学院の稲葉一人教授は厚労省に対し、今後アンケート調査を実施する場合は、サンプリングの在り方などを検討するよう求めた。

 第2部「徹底討論 医療事故調査のあり方を考える」では、パネリストがそれぞれ持論を展開した上で、テーマごとに意見を戦わせた。進行役の稲葉氏は、▽院内と院外(第三者機関)の事故調査の在り方▽法的責任の問題▽第三者機関の設置場所▽今後の議論の仕方-の4点を主なテーマに挙げた。
 稲葉氏は、院内と院外事故調査の関係や法的責任の問題、現在実施している「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の活用方法について今後、議論する必要があるなどと討論を総括。また、政権与党である民主党を交え、医療全体の「設計図」も議論すべきだとの考えを示した。

 厚労省は、医療関係者や国民の医療安全に関する意識向上につなげる狙いで、毎年11月25日を含む一週間を「医療安全推進週間」に定めており、期間中はシンポジウムなどの行事を開催している。今年は22日から28日が同週間だった。

医療事故の法的責任、行政処分のあり方含め検討を-医療安全推進シンポ(2009年12月1日CBニュース)

 厚生労働省がこのほど開いた医療安全推進週間シンポジウムでは、「徹底討論 医療事故調査のあり方を考える」と題し、医師や弁護士らが意見を交わした。論点の一つとなった法的責任の問題については、行政処分のあり方を含めて今後検討すべきとの声が上がった。

 医療事故の法的責任について木ノ元直樹弁護士は、「事故調査の報告などが刑事、民事の責任追及のレールに乗ることには反対だ。制度的にそういうものを立ち上げるのは間違っている」などとし、法的責任は切り離すべきと主張した。
 一方、永井裕之氏(医療の良心を守る市民の会代表)は、責任追及に対する医療者からの反発を批判。「同僚評価や自浄能力の向上に取り組むつもりがないのではないか」と述べた。

 これまでの医療事故調査について鈴木利廣弁護士は、専門家の判断を離れ、法的な判断が先行する混乱があったとし、「専門的な判断を優先するという意味で、医療界が刑事責任論のあり方自体を考えていくことが大事」と強調した。
 堤晴彦氏(埼玉医科大高度救命救急センター長)は、医療行為が全面的に免責されるわけではないとした上で、「何が医療行為の業務上過失致死罪に相当するかは、法曹側が明らかにする義務がある」と述べた。

 鈴木弁護士は、厚労省の大綱案、第三次試案でも言及されている警察への通知に関連して、「今までは『刑事責任先行型行政処分』だった。行政処分を医療の質の確保に沿った形にし、専門職能集団の懲戒権などを先行させることはあり得ると思う」との見方を示した。また、大綱案作成時は行政処分のあり方まで十分議論が進んでいなかったとし、それを詰めた上で、警察への通知の必要性を二段階的に考えることも「あり得る選択」と述べた。
 これについて髙本眞一氏(三井記念病院長)は、「各学会がいろいろとやるべき。行政処分に関しては、医学会が中心となっていかなければいけないと思う」などと述べた。

 第三者機関の設置場所については、堤氏が「調査する場所と処分する場所が同じであると非常にまずい」と指摘した上で、行政処分が個人に対する罰としての処分ではなく、医療機関をよくする立場での行政指導であれば、厚労省でもよいとの考えを示した。このほか、医療行政を担う厚労省に設置すべきとの意見や、誰でも文句や意見が言える独立した機関にすべきなどの意見が出た。
 また、シンポジウムを傍聴し、医療従事者を代表する立場として発言を求められた日本医学会の高久史麿会長は、「将来的には、専門職である医師のグループが中心となって第三者機関をつくり、そこで自律的な処分を行いながら、かつ判定をするという体制に持って行く必要があるのではないか。厚労省や内閣府に置くよりも、それが本来のあるべき姿だと思う」などと述べた。

 今後の議論の仕方について鈴木弁護士は、「困難な局面を乗り切るために、学際的な検討が必要」などと述べた上で、「皆が安心できるようなものができて初めてスタートするのではなく、実践の中から思考錯誤していくことが重要だと思う」との考えを示した。

例によって厚労省が恣意的データを出してきたんだろうなとは想像できるところですけれども(苦笑)、まさに持論の応酬となっただろうこの議論の中でも注目しているのが、今も難航する医療事故調絡みで行政処分というものについて言及されていて、その行使の主体については医療の側が中心になっていくべきであると言及されているところです。
これに関連してまたこういう厚労省の調査が出ているのですが、要するに事故調なるものの設立には医療従事者を含めてほぼ全国民が必要だと思っている、そして一方で事故調なるものを作ってしまえば調査結果に関わらず何もおとがめなしということは社会的に受け入れられるところでないということであって、ここが事故調と処罰を切り離すよう訴えてきた医療業界の思案のしどころではないかと思いますね。

第三者機関による医療事故調、97%が「必要」-厚労省調査(2009年11月30日CBニュース)

 医療事故の原因を中立的な立場から調査する第三者機関が必要だと思う人が97%に上ることが、厚生労働省のアンケート調査で分かった。同省が一般国民を対象に医療安全に関するアンケート調査を実施するのは今回が初めてだが、担当者は「シンポジウムの企画の一環であり、施策決定の参考にはしない」と話している。

 アンケート調査は10月15日-11月8日、一般国民を対象にパソコン(PC)と携帯電話で実施。664人(PC464人、携帯電話200人)から回答を得た。このうち、「医療を提供する人」は311人、「医療を受ける人」は353人だった。
 調査結果は、11月28日に開かれた「医療安全推進週間シンポジウム」で発表された。

 それによると、「航空機事故や鉄道事故の場合と同じように、医療事故についても中立的な第三者機関が事故原因の調査を行うことが必要だと思うか」を尋ねたところ、97%が「必要である」と回答。必要と回答した割合は、医療提供者が95%、提供者以外では98%だった。
 また、医師が全力を尽くした場合でも医療事故は起こることがあると思う人は97%。医療提供者は100%、提供者以外は95%だった。

 一方、医療事故の解決方法として訴訟による手段が最も適切だと思う人は14%。医療提供者が6%だったのに対し、提供者以外では21%と3.5倍の差が見られた

 アンケートでは、回答者全体の14%にあたる98人が、自身や身内が医療事故に遭ったことがある「医療事故経験者」であることも明らかになった。
 治療が適切でも、病気やけがが完治しなかった場合は医療事故だと思う人は6%で、医療提供者5%、提供者以外8%に対し、医療事故経験者では11%と1割を超えた。
 安心して家族や知人を任せられる病院が居住地域にあると回答したのは55%。医療提供者60%、提供者以外50%に対し、医療事故経験者では41%とやや少なかった。

理念はともかくとしてここまで国民が一致団結してしまった以上は社会的にごく少数派の医療従事者が何を言おうが結局できるものはできるだろう、そしてその結果処罰に関する何らかのルールも用意されるだろう、とすれば「処罰とセットでは受け入れられない」と原則論ばかりを主張していればそれでよいという時代ではなくなってきているということです。
とすれば、社会的に受け入れられるという範囲で自分たちにより都合のいい制度を自ら提案し実現していく(まさに他業界でよくやっているように、ですね)という方向に軸足を移していくべき時期であって、その手段としては行政処分を含めた業界内部主導での処罰システムというものを、裁判沙汰になったりと社会的に大騒ぎになる前に迅速にやってしまうのがよかろうという考え方です。
別にこれは不思議なことでも珍しいことでもなくて、例えば弁護士の世界では(全員が強制加入という事情があるにせよ)業界団体の日弁連が弁護士に対する処罰権を握っているからこそ外部からは守られているという態勢になっているわけですよね。

今更日医が日弁連的立場に立つなどとはあり得ないし悪夢じみてきますけれども(笑)、別に団体と言わずとも何らかの権限を持った組織が医療側によって自主的に組織されていて、その組織が保険医資格停止など行政処分の権限を持ち、何より現状のように「裁判で負ければ行政処分」などという後追いではない処分を下せるということであれば、これは立派な業界の自律というものです。
組織の主体に関しては日医のような利権団体ではなく学問的検証が主体で、例えば各学会などから委員を集めたりするのがいいのかなど細部は詰める必要はありますけれども、早いところそうした組織でも作らないことには外部から好き放題断罪されるという悪夢が待ち受けていた、なんてことにもなりかねないと思うのですけれどもね。

上記アンケートを見ても、何かしら望まない結果に終わった時点で医療事故だという考えもある、その解消には訴訟しかないという人がいるわけで、研修でも事情聴取でもなんでも名目はいいんですが何か少なくとも医療側として迅速に動きましたと世間に示す、その結果しばらく研修に出させてお勉強させますであるとか、少し保険医資格を停止させますとか、裁判になるよりは面目の立ちやすい処分法も工夫できる気がします。
世の中何かしら顧客とのトラブルがあればまずテレビカメラの砲列の前で頭を下げて見せるというパフォーマンスがデフォになってきた時代だけに、医療業界もまずそうした世間的フォーマットに従った対応を整えていくことが結局は業界内部にとっても利益になるし、満足度も上がってくるように思うのですけれどもね。

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