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2009年12月22日 (火)

医師養成は一気に体制強化されつつあるようですが

少し前にこんなニュースがありましたが、ご覧になったでしょうか。

医師養成体制強化で補正予算112億円―鈴木副大臣(2009年12月13日CBニュース)

 鈴木寛文部科学副大臣は12月11日、来年度の医学部入学定員増に伴い、今年度の第2次補正予算で「112億円の手当てをすることで、医師養成体制の強化を図る」との考えを示した。設備や機器など環境整備への支援が中心になるという。東京都内で開かれたシンポジウム「今後の医療政策」で述べた。

 文部科学省が公表している増員計画によると、来年度の国公私立大医学部入学定員(公立大は文科相への届け出)の増員数は360人となる見通し。現在は諮問中で、18日に開かれる大学設置・学校法人審議会分科会の答申・回答を経て正式に認可される。鈴木副大臣は、「ほぼこの通りの数字で答申をいただけると信じている」と述べた。
 また、新規医学部の新設については「来年から議論を深めていく」とし、議論する場を設けることは決定しているが、その方向性については今後議論するとした。

 さらに鈴木副大臣は来年度の診療報酬改定について、大学病院の診療報酬としての収入は「相当額」引き上がるとの見方を示した。具体的な数字は明言しなかったものの、「これまでに病院運営費交付金が600億から200億に減らされてしまった。そうしたことをカバーし、疲弊を極めている大学病院の立ち直りの兆しとなる実収入増につながる」改定となるよう、最終的に詰めていると述べた。
 運営費交付金については、「削減を止め、ここから『V字』で(上げて)いきたい」と強調。「ここで下げ止まるということをしないと政権が変わった意味がない。文部科学大臣以下は(削減方針を掲げる財務省との折衝で)火の玉となって頑張っている」と述べた。

民主党政権は医師養成数を大幅に増やすと言っているわけですから、医師養成にきちんと予算をつけていくというのは当たり前の話だと思いますけれども、問題はその予算のつけ方ですよね。
正直極めて非効率な医療を行っている大学病院という組織に巨額な金をつぎ込んで救済するのもどうかという気はするのですが、箱物にではなくスタッフなどのマンパワーにきちんとお金が回るようになるということであれば悪い話でもないのかなという気もするところです(実際には名目はどうあれ、末端の医員あたりには相変わらずお金は回ってこないのでしょうけれどもね)。
大学病院と言うと医師が無給どころか下手すると金まで差し出して奉公するところと言うことで、臨床研修制度も変更になった昨今では全く人気がないと言いますけれども、医師の世界においてはとりわけ大学の教官職というのも安月給で働かされるポストということになっていますから、将来を大学で身を埋めるというような人でない限りはあまり魅力的とも言えないものとなっているのは気になるところですね。
もちろん待遇が悪いとなれば優秀な人材は集まらないというのは当然のことですし、今後学生が増えれば教官職も多忙になるはずでますますストレスも溜まろうかという話ですから危機感をいだいている人は多いようですけれども、モチベーションの低い教官や先輩医師の存在というものは確実に学生の士気や意欲にも影響しますから、大学病院スタッフの待遇というものはこれからますます重要になってくるのではないかという気がします。

それに加えて、ヘタをするとそれ以上に深刻な影響を与えそうなのが、最近ますます現実味を帯びてきた新設医学部の件です。
既存の医学部定員を例えば20年ほど前の削減以前の水準、ないしプラスアルファ程度まで増やすと言う話であればこれはまだ何とか対応できるとしても、全くの新規となると数多くの教官職(その多くが医師でしょうけれども)をどこから引き抜いてくるのかという話も考えざるを得ませんが、引き抜かれる方の既存施設では一気に医師・教官の不足が顕在化する可能性があるわけですね。
幸いにも?現在の特に国公立大学における教官職の待遇は多くの場合さほど良いものではありませんから、引きぬく方としては条件提示はやりやすいという話ですけれども、そうなるとよほどコネや資金力に余裕のある設置母体でなければ難しいのではないかと思われるところです。
これに関して文科省の鈴木副大臣は来年から設置議論を本格化するという意向のようですけれども、話を聞いていますとなかなか興味深い示唆をしているようですよね。

新設医学部は、立派な病院を持つ所に 鈴木・文科副大臣(2009年12月17日ロハス・メディカル)

 鈴木寛・文部科学副大臣は16日、個人的意見と断ったうえで、来年度から検討を始める医学部新設について、その設置主体は「立派な病院と看護師養成校を持つ所がふさわしい」と述べた。(川口恭)

 鈴木氏は11日に来年度から医学部新設の検討をすると述べており、そこからさらに踏み込んだ形だ。この日、癌研究会研究所で行われた講演会の中で「このように妄想している」と以下のように述べた。

既存医学部のキャパシティは、かなり目いっぱいになりつつあると思う。どこも大体、学生が80~120人程度という前提の指導体制でデザインされているので。そうなると、どうしても新しい医師養成機関のあり方を考えざるを得ない。

 その時は一から医学部をつくるのは大変。かつまた、医師養成に絶対不可欠な要素とは何かと言えば立派な病院だ。であれば既存の立派な病院と一体となった医師養成の機関を考えていかなければならないのでないか。もっと言うと、看護師養成課程を持つ所で、立派な病院を持つ所、そういう所が次なる医師を輩出できるポテンシャルのある所の一つだろう。座学は、極端なことを言えば、ここ程度(癌研吉田記念講堂)の教室が何個かあれば何とかなる。医師養成のボトルネックは常に臨床教育のできる病院だ。

 そういう方向に議論が進んだならば、そういう医師養成機関を設置した病院に対して、当然教育という役割を果たしていただくことに対して、納税者の納得をいただいて税金を投入することは考えている。

 都内を見回しても、できそうな所がいくつかある。少なくとも卒後臨床研修をできている所は考えられるだろうし、後期研修コースのあるような病院というのは既に人的にも設備的にも一定程度のものがあるので、ゼロから立ち上げるよりコストも時間もかからずにできる。エフィシェントでエフェクティブになるだろう

やはり一からは難しいだろうというのは副大臣も当然認識しているわけですが、新設医学部を作るための条件として挙げているのが「看護師養成課程を持つ所で、立派な病院を持つ所」だと言うのがポイントですかね。
そう言われてみると結構ありそうなものですが、例えば以前から医学部が一つしかなくて医者が足りないと言われている県で、全国に名高い立派な病院があり資金力もしっかりしていて、しかもメディカルスクール肯定論者の理事長さんがいらっしゃるところが…って思っていましたら、すでに条件を満たすように動き出してるんじゃありませんか(笑)。
さすが近頃ではお国の会合にも何かと顔を出していらっしゃるだけにこの辺りの情報は早いということなのか、なんともそつがないとも見える話ではありますけれども、スタッフのマンパワーもあり資金力もありというブランド病院が今後どれくらい手をあげるかは要注目ですかね。

しかし個人的にはどうせこういうスタイルでの新設が既定路線だと言うなら、いっそ病院も専属教員も一切なしで徹底的に安上がりな医師養成所みたいなものを作ってみるというくらいにハッチャケてみて欲しい気もするんですけれどもね(苦笑)。
ひところの世間では近頃医学部に入ってくる連中が偏差値だけで使命感も何もない!知識詰め込みだけが医師教育ではないはずだ!なんて話が結構言われていたものですけれども、ますます医学知識の詰め込みに徹するようなことを国が率先して言っているわけですから、時代も変わったものだとは思うのです。
そうまでしてひたすら医者の頭数を揃えたいというのであれば、別に立派な病院が必要だとか看護師養成もやっているところがいいだとか中途半端なこだわりにどれほどの意味があるのか、それよりは将来不要になったら真っ先に定員調節の対象にしやすいように軽装開業に徹してみるのも、折からの不景気時代にも見合った分相応というものかも知れませんよ。

まあしかし、医者を一気に増やすとレベルが落ちるなんてことも言う人がいますが、一部でもっと心配されているのが、こうしてせっかく作った新設医大から出てきた医者の皆さんが戦力になる頃には、そろそろ団塊世代の医療需要も終焉を迎えているということになりかねず、逆に医師過剰だなんてことを騒がれ出すんじゃないかという話です。
もちろん医療に関しては隠れた需要が多い(すなわち、医者を増やせば増やすほど需要も掘り起こされる)なんて言われていますから、個人的にはおいそれと医師過剰とはならないと思っていますけれども、むしろ気になるのがそんな時代の医師の待遇はどうなっているかということですね。

誰でもわかる話ですけれども、こうやって医師の頭数だけをどんどん増やす、一方で医療費はもうあまり増やせない(何しろせいぜいがコンマ以下の攻防ですからね)となれば、少なくとも医者の金銭的な待遇面は今後切り下げられる一方だろうとは想像できますよね(それ以前に、医者の収入はもうかれこれ四半世紀も横ばいを続けているという現実もありますが)。
そして少々医者が増えようが医療の需要も当分増え続ける一方だろう(病院が混んでいるから受診しない、なんて人も案外多いものです)と考えるとそうそう仕事が楽になるとも思えない、結局「働けど働けど(略)」なんて未来図も十分ありえるわけで、これではさすがに現場の士気回復など到底おぼつかないという話です。

仮に医者を増やせば全てが解決する!派の言う通りだとしても10年単位の時間はかかる、となるとやはり現場の待遇を改善して逃散を続ける医師達を呼び戻すのが即効性があるだろうし労使問題解決の方法論として本筋だろうと思えますが、その目的のためにも何かしら医療需要自体を抑制するとかいった話が今後出てくる可能性はあるでしょうね(中医協あたりでも軽症者の時間外受診抑制なんて話が出ているようですし)。
そしてもちろん、医療崩壊阻止というすでに空文化しつつあるお題目は置くとしても、現実問題財政上の要求から医療費はとにかく増やせないのは確定だとすると、結局需要側だけを自然の摂理に任せて放置しておくのはどうなのよという議論をいつまでも避けて通るわけにもいかないでしょう。
その方法論をどうするのか、一部で言われているように患者の自己負担分を増やして金銭的に抑制するのか、混合診療導入と絡めて患者自身に選択させる部分を増やしていくのか、いずれにしてもここまですき放題の医療政策をやっておいてその部分の議論だけをタブー視するのも妙な話だとは思います。

医療政策の失敗なんてことが公然と言われる時代に、民主党政権としてもそのツケを国民に回すような政策はなかなか取りづらいかとも思いますけれども、診療報酬総額は横ばいだ、いや0.3%増やせなんて議論に終始しているだけでは、結局民主党になっても自民党時代の医療政策と代わり映えしなかった、なんてことにもなりかねない可能性はかなり高そうなんですけれどもね。

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