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2009年11月 2日 (月)

聖地奈良より 生駒総合病院廃院の経緯とその後

奈良県生駒市と言えばいまだ救急「たらい回し」報道が盛んであった2009年3月に、突然倒れた新聞販売店従業員の男性が県内6病院に受け入れられずに大阪まで搬送されたが結局亡くなったという事件があり、「ここでも救急崩壊が!」と盛んに報道されたという事例があったところです。
元々この地域には200床クラスの生駒総合病院があり救急医療の中核施設として機能していましたが、2005年に同病院が廃院になった結果なかなか救急医療体制もうまくまわっていないようです。
この廃院に絡んだ経緯というのもなかなか興味深いもので、色々と情報を羅列してみるとこんな感じらしいんですね。

・生駒総合病院は11診療科を有する国保病院だが患者数は多く、当時の経常収支は黒字であるなど経営はまずまず堅調だった
 →生駒市から総計1.5億の補助金が出ていたようですが、この時代としてはこれはかなり少ない方だと思いますね。

・施設老朽化で立て替えを検討していたところ、唐突に「国保病院の役割は終わった」と更地にして近大に無償譲渡する話がもちあがった
 →ちなみに当時の市長さんは近大OBだったそうですが、その後2007年に別の土地売買が絡んだ業務上横領罪で逮捕されました。

・近大側では11診療科から3診療科程度への大幅な業務縮小を計画、当然折り合わないまま廃院だけ予定通り実施しいきなり病院消滅
 →生駒市が開いた「生駒総合病院後医療に関する検討委員会」によれば、厚労省からはこんなコメントをいただたそうです。
  「このような後医療を検討していない病院の廃院のしかたは日本で初めて

もうすでにこれだけでもお腹いっぱいという気がしないでもないのですが、いずれにしても堅調な運営を続けてきた市の基幹病院がいきなり消えてしまったのですから、これは市民や医療関係者にすれば寝耳に水と言いますか、さぞや混乱することになるだろうとは想像に難くない話ですよね。
早急に後継の病院をということで、生駒市側は当初医師会と交渉を進めていたようですがどうもうまくいかない、ケチの付いた病院に指定管理者で応募してくる団体もないと難航していたところ、唯一名乗りを上げてきたのがあの団体であったということで、2008年初めにこういう記事が流れました。

生駒市新病院、徳洲会が運営主体に正式決定 奈良(2008年1月19日産経新聞)

 奈良県生駒市の新病院建設問題で、市は18日、12月から交渉を続けてきた医療法人「徳洲会」が新病院の運営主体に正式決定したと発表した。これにより、同市東生駒の民有地を市が借り受け、診療10科の総合病院が新たに開院する方向性が固まった。病院建設は市が行い、徳洲会が指定管理者方式で運営する形態。市は、平成19年度内にも開かれる県医療審議会に事業計画を提出し、許可が得られれば20年度中の着工、22年内の開院を目指すとしている。

 18年2月に就任した山下真市長が選挙公約に掲げながら難航した同問題にようやく道筋がついた形。山下市長は「就任から2年がたち、迷走していたのでほっとした」と話した。

 計画によると、新病院には内科や外科、小児科、産婦人科などを設置し、開院時のベッド数は174床。医師や看護師は徳洲会がグループ内で確保するとしている。同会が提案した「年中無休24時間」の救急医療体制については、今後、市医師会などと調整を行う。

用地は、所有者の近鉄から市が借り受け、建物は市の負担で建設。建設費は約50億円と見込まれ、企業債で賄う方針。市は、用地の賃貸借契約についても近鉄との間で合意に至ったことを明らかにしたが、具体的な地代については「市議会で報告する」としている。

 同市では、平成17年の旧生駒総合病院閉院に伴い、新病院の建設問題が浮上。市は当初、同病院跡地での建設を目指したが、所有者の県国民健康保険団体連合会との間で希望売買価格に開きがあり、交渉が決裂。その後市は、指定管理者方式での運営を念頭に、5つの医療機関と交渉を行った。しかし、支援体制や病床数などで条件が折り合わず、山下市長が「最後の勝負」として昨年11月に行った公募でようやく徳洲会が名乗りを上げていた

徳洲会と言えば(主にはアレな意味での)噂が絶えることがない有名な団体ですけれども、とりあえず24時間救急医療や僻地・離島診療を熱心にやっている組織であること、そして伝統的に医師会という組織と折り合いが悪いということは確かな事実であるようですね。
病診連携といったことを考えても新病院は既存の地域中小医療機関との関わりが欠かせないでしょうが、こういう組織が割って入ってくるということになりますと、当然ながら地元の医師会としては面白くないということでしょう。
それでもこれで病院が出来てくれれば市民としては一安心だったのでしょうが、議会での与野党攻防も絡めてこれでもかと思えるくらいに議論は紛糾してしまったようです。

生駒の新市立病院:徳洲会指定案否決 市長、再提案も--生駒市議会委 /奈良 (2009年9月15日毎日新聞)

生駒市の新病院設立問題で、同市議会市民福祉委員会(矢奥憲一委員長、6人)は14日、新病院の指定管理者を医療法人徳洲会とする案を否決した。同案は25日の本会議で採決されるが、可否は不透明な状況だ。山下真市長は、本会議で否決された場合、12月定例市議会への再提案も視野に、即座に計画を凍結しない方針を示した。

委員会では、樋口清士議員(民主・草創)が「徳洲会との協定書案などが示されておらず、市民が望む病院事業をやってくれるか不安。判断材料が十分でない」などと主張。指定管理者を決める前に、市が設置する病院事業推進委員会で、事業計画策定などを先行させるよう求めた。

山下市長は「推進委で事業計画案をまとめても、その後に指定管理者が否定されれば議論が無駄になる」などと反論した。

委員会は、樋口議員が提案した継続審査の動議を否決。続いて、市が提出した徳洲会を指定管理者とする案も反対多数で否決した。

終了後、山下市長は「徳洲会自体に反対なら事業を進める意味がないが、時期尚早という理由なら、市として凍結を宣言する段階ではない」と発言。今議会で否決や継続審査となった場合、病院事業推進委員会での議論を先行させ、12月議会で再度判断を求める可能性を示唆した。

一方、樋口議員は「病院事業を動かすのが私たちの思いだが、今の段階では判断できない」と述べ、今議会での採決は時期尚早との考えを示した。【中村敦茂】

生駒の新市立病院:「徳洲会」管理者案を撤回 12月市議会に再提案へ /奈良(2009年9月26日毎日新聞)

 生駒市の新病院設立問題で、同市議会は25日、新病院の指定管理者を医療法人徳洲会とする案の撤回を承認した。同案は市が提案したが、可決される見込みがないとして、山下真市長が今月18日の全員協議会で撤回を申し出ていた。市は、諮問機関「病院事業推進委員会」の答申を踏まえ、12月定例市議会に再提案する方針。
 推進委の10人の委員については、8月の臨時議会で徳洲会専務理事だけが否決されたため、代わりに公募で決めた元私立病院事務長の男性(61)を委員にする案を追加提案し、可決された。また、樋口清士議員(民主・草創)が提案した、病院事業開始に向けて取り組むよう市に求める決議案も可決した。
 山下市長は市議会終了後、報道陣に対し「県からは年内に開設許可申請書を出してほしいと言われており、12月議会が最後の場になる。指定管理者案の成立を目指し、推進委で実のある答申を出してもらえるよう全力を尽くしたい」と話した。
 市は10月に推進委の第1回会合を開き、答申を受けた上で年内にも県に事前協議書と開設許可申請書を提出する方針。しかし、徳洲会の指定管理者案には反対意見が根強く、12月議会でも曲折が予想される。【石田奈津子】

生駒の新市立病院:推進と慎重、対立激しく--推進委会合 /奈良(2009年10月23日毎日新聞)

 ◇県医師会の委員、辞任表明も

 生駒市の新病院設立問題で、市の「病院事業推進委員会」(委員長、長瀬啓介・金沢大教授)第2回会合が21日、同市役所であった。新病院の診療科目や病床数、救急医療体制などについて、推進派と慎重派の意見が激しく対立。県医師会の委員が途中で辞任を表明する事態となった。次回は11月1日に予定されているが、今後の審議に影響が出そうだ。

 新病院の指定管理者を医療法人徳洲会とする市の案について、県医師会の大澤英一委員は「決定したプロセスが不透明で不可解」と慎重な姿勢を示してきた。この日は、審議の進め方を巡って「徳洲会ありきで進んでいて、十分に議論されていない。辞めさせていただく」と述べ、途中で退席した。

 市病院設立条例は、推進委の委員に県医師会の代表者を含めることを規定している。医師会が代わりの委員を出さなければ、推進委が成立しなくなる可能性が出てきた。山下真市長は終了後、「正式に辞表を受け取っていない。慰留させていただく」と話した。

 市は推進委の答申を踏まえて、徳洲会案を12月定例市議会に再提案する方針だが、「市議会の審議に影響する可能性がある」(病院建設課)と懸念を示している。

 会合では、徳洲会の医療態勢について、慎重派から「小児科医が2人では、救急までとても対応できない」「NICU(新生児集中治療室)がないのは、皆が期待している市民病院とは違う」などの声が上がった。

 これに対し、事務局席の徳洲会関係者は「全国に65病院を持っており、人員が足りないなど困ったら十分に対応できる」と説明。別の委員から「市民のために必要なことをやると言っている」と肯定的な意見もあった。このほか、県外の徳洲会病院を視察することが決まった。【岡奈津希】

徳洲会というところは収支計算にはかなりシビアだという話も聞きますけれども、逆に言えば生駒市での病院運営には十分な勝算を見込んでいるということなんでしょうし、実際に経過を見る限りそれなりにお買い得な物件のようにも見えます。
救急医療に関して言えばもともと近大奈良病院などもあるからいいんじゃないかなんて声も一部であるようですけれども、徳洲会の先生方というのは心身ともに平素から厳しい環境で揉まれている(苦笑)ことには定評がありますから、ことこの方面に関して言えば医師会などが前面に立ってくるよりは安心感はあるのではないかという気がしますね。
いずれにしても市民としては誰が指定管理者になるかよりも医療体制がどうなるのかということの方に興味が向くところだと思いますけれども、こうまで揉めてしまってはいずれにしても病院の空白期間はまだまだしばらく続きそうで、タイムリミットとされる今年中に議論がまとまるのか、続報が待たれるところだと思いますね。

開業医から信頼 連携へ ◆生駒市立病院問題 徳洲会進出、宇治の場合は(2009年09月24日朝日新聞)

◎小児救急受け入れが突破口

生駒市立病院の建設計画が難航している。指定管理者の全国公募に唯一応じた医療法人「徳洲会」に地元医師会が反発し、市議会も慎重な姿勢を崩さないため だ。救急医療態勢の弱さが指摘されるなか、徳洲会を軸にした計画はなぜ進まないのか。奈良から近く、開院後は市立病院との連携が想定されている宇治徳洲会 病院(京都府宇治市)の状況を知るため訪ねた。(下司佳代子)

住宅や大型チェーン店などが並ぶ宇治市の繁華街に、宇治徳洲会病院はある。79年に開院し、現在は30診療科、400床を備える。年間約6千件、一日当たりに換算すると16件もの救急搬送を受け入れ、府内では屈指の多さだという。

年中無休・24時間オープンをうたう徳洲会は、国内65病院のほか、診療所や老健施設などを多数運営する。理事長の徳田虎雄氏(71)はかつて医師会批判を公然と展開。こうしたこともあって、病院計画が持ち上がった各地で地元医師会と衝突したという。

■拒絶と歓迎

開院当初から勤める外科医の増田道彦総長(68)は、宇治徳洲会病院の開院当時について、「『徳洲会はダメ』という地元の医師を慕う市民と、救急に力を入れた大きな病院が出来るのを歓迎する市民と、対立は宇治市民を二分する感じだった」と振り返る。

当時の様子は、「徳洲会を拒む」生駒市の今の状況と似ている。だが開設から約5年で、大きな転機を迎えたという。「突破口を開いたのは、小児科の診療、特 に夜間救急だった」という。「『紹介状は書かないけど行ってきなさい』と、かかりつけ医に勧められてやって来る患者が相次ぎ、それが普通になると今度は紹 介状を持ってくる人が増えた。そのうち、当時の医師会長が私たちの姿勢を評価し、医師会への入会を勧めてくれた

増田氏はその後、地元の「宇治久世医師会」の理事に就任。「病診・病病連携」を担当し、各診療所や病院の得意分野が分かる連携マップ作りにも携わった。同 医師会事務局は「開院後は、全国の医師会から『徳洲会を受け入れて、どうか』という問い合わせが相次いだ。基幹病院として、地域連携がうまくいっている、 と答えてきた。開業医にも頼られているようだ」と話す。

生駒市は、市立病院の診療方針を決める「病院事業推進委員会」の委員候補として増田氏を挙げたが、市議会では「まだ指定管理者に決まったわけではない」と 不同意になった。増田氏は「私から特に訴えたい、ということはないが、医師会の先生たちとも直接話せば『何となく変な組織』『怪しげで宗教っぽい』などと 言われる徳洲会のイメージは変わるのではないか、と思う」と話す。

■判断は市民

生駒市立病院を運営する指定管理者を徳洲会とする議案は、9月定例会市議会の市民福祉委員会で否決され、市は本会議を前にいったん取り下げた。12月定例会で再度、市は提案するが、その可否は不透明なままだ。建設計画の今後について、増田氏はこう指摘した。

「一般的に新病院が出来ると、どの医療機関もより安く親切に丁寧にと、切磋琢磨(せっ・さ・たく・ま)し合うようになる。それは市民から見れば、いいことだろう。ただ、最終的には市民がどう判断するかに尽きる」

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コメント

御無沙汰しております。
個人的な話ですが、1年計画の救急部が、医局の政治的な圧力で
半年で終了となりました。泣く泣く10月中旬より研究になりました。
 早い話がまた遊んでください。

さてトクシュウ会ですが、以前勤めていた近くの市民病院がそこに
わたるかもという噂も出ていましたね。どうなるんだろ。まぁ、救急
はやりたくないところが多い中でがんばっているのだとは思いますが。

OKYM県の救急センターの某病院は名前だけでひどいのは救急部
にいて痛感しました。

投稿: hi-bo | 2009年11月 3日 (火) 16時50分

そういう悪いお誘いはもう少し密やかにやってください(苦笑)。

救急の場合は看板より中身、施設よりスタッフが大きいですからね。
かつては頑張っていた施設でも一度盛り下がってしまうと今の時代なかなか立て直しは難しいでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2009年11月 3日 (火) 21時03分

あまりに香ばしすぎて、ため息しか出ません…。

http://blogs.yahoo.co.jp/hidetogonmomo/22254355.html

こんな人間がいっぱいいるから医療が崩壊するんでしょうね…。

投稿: 都筑てんが | 2009年11月17日 (火) 17時29分

一般論として、ですが(苦笑)。
内部事情とかそういったものを知らない純然たる外部の利用者であるならば、業界内部の常識からするとあり得ないような要求があってもおかしくはないと思います。
そういう顧客の声にどう対応していくか、そのあたりも経営手腕の一つでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2009年11月18日 (水) 08時52分

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