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2009年11月18日 (水)

聖域なき仕分け作業 さてその実態は

例の行政刷新会議による仕分け作業が大騒ぎになっているようですけれども、そんな折にかねて医療問題においては極めて斜め上方向に見識が高いと評判の産経新聞がこんな記事を載せています。

【主張】行政刷新会議 聖域なく歳出に切り込め(2009年11月11日産経新聞)
 行政刷新会議が来年度予算概算要求の無駄を削る「事業仕分け」対象を決めた。診療報酬や地方交付税、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など広範な分野が盛り込まれている。

 これらの分野は予算規模や政治判断が必要な点からみて、個別事業の要不要を判断するという単なる「事業仕分け」の域を越えており、本格的予算編成作業に近い。ならば、聖域を設けず大胆に切り込むよう求めたい

 鳩山由紀夫首相も「聖域なき見直し」を表明してはいるが、額面通りには受け取れない。民主党議員と民間有識者によるいわゆる「仕分け人」が短期間で広範な分野をどこまで判断できるか疑問だし、作業を通じて政権公約との矛盾も生じかねない。

 来年度が改定年に当たる診療報酬では、医師不足解消を目的にした大幅引き上げが民主党の主張だった。しかし、民間給与が下がる中で医師の診療報酬を上げることに国民が納得するだろうか

 本来なら優遇されすぎた開業医の報酬を削減し、その分を不足する勤務医などに配分すれば済む。その意味で配分見直しの権限を厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会から刷新会議に移したのはいいが、これにも閣内で異論が出ているという。
(略)
 このように、いざ歳出を削減しようとすれば鳩山政権は返り血を浴びる。しかも、95兆円に上る概算要求から目標の3兆円を削ったところで、国債増発を行わないとする公約は危うい。

 今年度税収は当初見込みの46兆円から30兆円台後半に落ち込むのが確実で、来年度も税収増は期待できない。国債増発の判断基準を今年度補正予算後の44兆円という甘い水準に置いたとしても、財源はまだまだ足りない。

 子ども手当や高速道路無料化など財源の裏付けが希薄な政権公約にはやはり無理がある。現実に則して見直すべきではないか。

いまどき開業医が優遇されているというのもどのようなソースに由来するものなのか興味深いところだと思いますけれども、これはあるいは先日も中医協で大騒ぎになった例の大本営発表を鵜呑みにしているということなのでしょうか(苦笑)。
いずれにしても開業医の報酬を削減し勤務医に配分すれば医師部側が解消されるというのも素晴らしいですが、かねてからの主張通り「民間給与が下がる中で医師の診療報酬を上げることに国民が納得するだろうか」というに至っては、近年国民の懸案ともなってきたこの問題に対する快刀乱麻ともいうべきその卓見ぶりには毎度のことながら恐れ入るしかありません。
もちろん聖域なく切り込んだ末に出てきた結果というものも等しく国民が享受するという大前提に立った上で、国民の信を得た政権与党が大胆な改革をなすことは結構なのですが、問題はその改革なるものの話の出所がいささか怪しいものとしない点です。

事業仕分けで極秘マニュアル=財務省の視点を指南-政治主導に逆行・行政刷新会議(2009年11月17日時事ドットコム)

 政府の行政刷新会議が2010年度予算概算要求の無駄を洗い出す「事業仕分け」で、事務局が極秘の査定マニュアルを作成し、民間有識者など仕分け人に配布していたことが17日、明らかになった。財務省の視点に基づき、仕分け対象事業の問題点を列挙、各担当省庁の主張に対する反論方法まで具体的に指南する内容。政治主導を掲げた事業仕分けが、財務省主導で進んでいる実態が明らかになった格好だ。
 事業仕分けは、予算圧縮に向けて国会議員や民間有識者ら仕分け人が、各省庁が要求した事業項目を外部の目を通じ、「財務省には無い視点」(枝野幸男ワーキンググループ統括)でチェックする仕組み。すべて公開で実施され、鳩山政権初の予算編成に当たって導入された。
 査定マニュアルは、事業仕分け前に「参考メモ」として仕分け人に配布され、事業ごとに「論点」を提示し、問題点などが個条書きされている。マニュアルに従えば、対象事業に詳しくない仕分け人でも、厳しく問題点を指摘できる仕組みだ。

要するに国民目線の財政刷新会議などと言っていますけれども、その実態は何のことはない財務省のシナリオ通りの進行であったということですから、いやどうも民主党政権は脱官僚、政治主導ということを言っていたような気がしたのですけれども、気のせいだったですかね?
もともと財務省と言えばこと医療問題においては鬼門とも総本山ともいえるような組織ですから、その財務省主導になる財政刷新会議の仕分けぶりが医療側委員に受けが良いはずもなく、さっそく中医協は紛糾しているようです。

中医協・基本小委 行政刷新会議WGの結論巡り、一触即発状態に(2009年11月13日ミクスonline)

11月13日に開催された中医協・基本問題小委員会では、11日に開かれた政府の行政刷新会議のワーキンググループ(WG)の事業仕分けの結論を巡り、委員から多くの意見が挙がった。会議の冒頭、厚労省が事業仕分けの俎上に上がった「診療報酬の配分(勤務医対策等)」のとりまとめを報告。それに対し、委員からは中医協としての声明を出すか否かの意見が相次いだ

口火を切ったのは診療側の嘉山孝正委員(山形大学医学部長)。WGの結論が最終的なものではないため、静観する構えをみせた遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)に対し、「(WGは)中医協の議論を全く無視している」と否定的な立場を表明し、中医協として慎重な議論を希望する声明を出してほしいと主張した。

この意見に診療側、支払側の双方から賛成の意見が相次いだ。診療側では安達秀樹委員(京都府医師会副会長)が「個々の診療科の技術をどう評価するのかが診療報酬の点数設定であり、伸びたから下げるのはあまりに乱暴」、鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事)も「あらかも人民裁判でも見ているような感じがして、怖い気がした」と批判的な意見が相次いだ。また、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、膨大な資料をもとに時間をかけて議論している中医協の現状を踏まえ、「そういうところを尊重してもらわないと、わたしたちも何のために集まって議論しているのかわからない」と主張した。支払側も白川修二委員(健康保険組合連合会常務理事)が「仕分けチームがどのような法律の枠で、あのような意見を出すのか理解できない」との意見を表明し、嘉山委員の意見に賛意を示した。

一方、支払側の委員からは慎重な意見も出された。北村光一委員(日本経団連社会保障委員会医療改革部会部会長代理)は「中医協では冷静に議論を見守り、決まったら議論したらどうか」と提案。勝村久司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も「きちんとした議論をするなら資料を出して、やっていく手続きをしてほしい」とした。

遠藤部会長は「中医協の意思決定は全会一致がルール」であるため見守ることとしたが、嘉山委員が「(静観すべきと)そういう意見を言った方は責任を取ってほしい」と発言したことで議論が紛糾した。白川委員は「中医協はそれぞれの立場はあるが、委員が自由に意見を発言できる場。意見と合わないからといって、責任をとれという言葉は個人の意見を無視することになる。わたしは嘉山委員と(声明を出すべきとの)意見は同じだが、反対の人もいる。その人格を無視するというのは非常に失礼」と批判した。嘉山委員は「政策は一度決まってしまうと、変えるのは非常に困難。心のなかで責任を感じてくださいということ。人格を無視した発言ではないので、誤解しないでいただきたい」と釈明した。

行政刷新会議のWGでは、診療報酬の配分において、皮膚科や整形外科などの収入が高い診療科の見直しと開業医と勤務医の平準化を見直しの対象とすることとしていた。WGの結論は今後、同会議の本会議で最終的な結論をまとめることとしている。

中医協炎上、「激しく、時には優しく」と長妻厚労相(2009年11月14日ロハス・メディカル)

 診療報酬の配分を見直す「事業仕分け」への対応などをめぐって中医協が炎上した。診療側委員は中医協として慎重を求める声明を出すよう主張したが、支払側委員は時期尚早論。診療側委員の「責任を取ってください」との発言に支払側が逆上したところで長妻昭厚生労働相が入室、「激しく、時には優しく議論を活発に」などと挨拶した。(新井裕充)

 政府の行政刷新会議ワーキンググループ(WG)は11月11日、2010年度予算概算要求の無駄を洗い出す「事業仕分け」で、病院・診療所間や診療科ごとの点数配分を見直すことなどを決めた。

 13日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)基本問題小委員会の冒頭、厚生労働省保険局医療課の佐藤敏信課長が結果を報告。「これで終わりではなく、恐らく本会議のほうで報告、議論されて最終的な意見が取りまとめられる」と述べ、今後の動向を見守る構えを見せた。
 遠藤久夫・中医協会長(学習院大経済学部教授)も、「最終報告」が出た段階で何らかの意見を表明する意向を示したが、診療側の嘉山孝正委員(山形大学医学部長)は早急に声明を出すことを提案、次のように述べた。
 「国家が一度決めてしまうと、それをひっくり返すことは非常に困難。会長は『まだ決まってはいませんね』とおっしゃったが、決まる前に『慎重にやれ』ということを中医協から言ったほうがいいのではないか」

 これに対して、支払側の白川修二委員(健保連常務理事)も、「行政刷新会議はどういう法律の裏付けであのような意見をおっしゃられたのか理解できない」として、WGの決定プロセスを疑問視。「法治国家だから、法律に基づいてきちんと手続きを踏んでやることを我々としては主張すべき」と述べた。

 他の委員からも、WGの議論の在り方を批判する意見が出されたが、支払側の北村光一委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長代理)、勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)がブレーキをかけた。北村委員は「中医協では清々と冷静にその動きを見守って、その結論を頂いてから議論されてはどうか」と慎重論。勝村委員は次のように述べた。
 「中医協に関連する話なので意見交換は多少はいいが、何らかの資料や文書が出ていないので、『ちょっとテレビで観た』という形での議論には一定の限界がある。(国立大学)医学部長会議などで声を出すのはいいと思うが、中医協として今この段階で意見を出すということはちょっと無理がある」

 この発言に対し、嘉山委員は「そういうことをやってきたから、この日本がおかしくなってきた」と反論。財務相の諮問機関「財政制度等審議会」が6月4日に出した建議を引き合いに、「エビデンスもなく検証もなくサイエンスもない中身のディスカッションをして、政策立案が出てきた。我々のような専門家がここで議論しているので、『慎重に』という声明を出さない限り、我々の存在意義はない」と返した。その後、嘉山委員がさらに「一言」を加えた。

 「そういう反対意見を言った方は、責任を取ってくださいね。日本の制度は、一番問題なのは、その責任の所在が明らかでないこと。『言っておけばよかった』という不作為の罪はしたくない。例えば、『慎重にしていただけないか』というぐらいの意見は言っても構わないと思うが、それすら言えないという中医協は一体どういう意味を持っているのか?」

 この発言で炎上、その最中に入室した長妻昭厚生労働相は、最後にこう挨拶した。
 「国会では、もっとさらに激しい議論がございますので、本当にご遠慮なさらず、激しく、時には優しく議論をですね、議論を活発にしていただくことがですね、論点を曖昧にせずに、詰めて詰めて合意を得ると。安易な妥協は決裂への道というふうに私は自分に言い聞かせてこれまでいろいろな活動をしておりましたので、また今後とも、ご助言を頂きますよう、よろしくお願いします」

 長妻厚労相の挨拶の後、委員席から拍手がわき起こった。拍手をしなかった傍聴者は、今回の議論をどうとらえたのだろう。議論の詳細は次ページ以下を参照。(以下略)

まあこういう話になりますと支払い側は少しでも安くすむということであればその方がありがたいというのも本音でしょうし、その意味で中医協で統一して反対声明をというのもいささか無理があるとは思うのですが、いずれにしてもその結果としてまとまった政策については国民がそのすべてを引き受けることになるわけですから、少なくとも議論の最中から興味と関心を持って注視していくべき話題ではないかと思いますけれどもね。
さて、記事中に「行政刷新会議のWGでは、診療報酬の配分において、皮膚科や整形外科などの収入が高い診療科の見直しと開業医と勤務医の平準化を見直しの対象とすることとしていた」というくだりがありますけれども、これに関して非常に興味深い書き込みがありましたのでまたしても紹介しておきます。

50 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 12:25:54 ID:UGyxoVNE0
事業仕訳で整形外科の収支差額4200万は高すぎると吉田が言ったけどどこから持ってきた資料なんだろう?
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov11-pm-shiryo/05.pdf 最後のページ
美容整形外科を無理やり持ってきたんじゃないのか?

医療経済実態調査 平成21年6月の資料には診療科別データは無い。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/s1030-6.html

医療経済実態調査 平成19年6月
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/s0601-5.html
 資料 一般診療所集計1 第10表では、
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0601-5n.pdf
(11ページめ P140  有床診療所(個人))
収支差額 (月額)
精神科  2371万 ?
内科    247万
外科    314万
整形外科 100万
眼科    615万
・・・
平均    336万

有床診療所(その他)では赤字になってる
無床診療所では、整形外科は平均

やり玉に挙げられて整形外科はとんだとばっちりを食いそうだな。

51 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 13:08:57 ID:UGyxoVNE0
pdf の方にはあったが、たまたまサンプリングが偏っていただけみたいだな。 
サンプル数が少なすぎるよ。 こんなデータを持ち出すなんて仕訳資料としては最低だな。
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb13GS40.nsf/0/75dd15c9af02447d4925765f001e0a21/$FILE/20091102_2shiryou_all.pdf

52 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 14:19:50 ID:UGyxoVNE0
>>51 データを抜き出してみたがひどいサンプル数。
厚労省は何のためにデータをとってるんだ。
こんなひどいデータを国政に使うなんて財務省は小学生並みの数字判断能力しかないのか。
整形外科の4200万という数字は、下の数字の加重平均を使ったみたい。
(108*2 + 362*40 )/42*12=4200万 何の意味もない数字
もうバカか、あほか、故意に国民をだまそうとしている下心が見え見え
マスコミも何とか言えよ。

------------------平成21年6月
一般診療所(個人)(集計2)入院診療収益あり
サンプル不足で統計データの意味なし。(サンプル数)
内科    37万 (4)
外科   173万 (1)
整形外科 108万 (2)
眼科   408万 (3)
平均   206万 (18)

一般診療所(個人)(集計2)入院診療収益なし
こちらも信頼できるサンプル数ではない。
内科   191万 (240)
外科   154万 (21)
整形外科 362万 (40)
眼科   252万 (41)
平均   200万 (492)半数が内科なので平均の意味なし

53 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/11/17(火) 18:03:26 ID:EULmLHJn0
> マスコミも何とか言えよ。

お前はマスコミをなんだと思ってるんだ?記者クラブで教わったとおりに記事を書くのが仕事だぞ。

例の開業医の報酬を切り下げて勤務医へまわせとの主張の根拠となった平均年収の数字も実感とあまりにかけ離れすぎていると異論百出でしたが、どうもこういうところで地味にデータを操作して議論を誘導したい方々が明らかにいらっしゃるようですし、それに見事に乗せられているのが「国民目線」の方々なんだとすれば、これは国民に対する詐術ともいえるのかも知れません。
かねて勤務医平均年収はレジデントなど非常勤扱い(その実態は紛れもない奴隷労働ですが)を除外して管理職級の常勤医だけを取り上げているだとか、開業医の収入とは借金返済などの諸経費を差し引く前の数字ばかり出してくるだとかいろいろと言われていましたが、確かにこれだけネット等で現場が騒いでいてもマスコミは一切取り上げないのも伝統というものなのでしょう。
冒頭に取り上げましたような産経新聞的スタンスというのもいささか極端ではあるのかも知れませんが、それを是としているという点では国民の多くが同様の認識であるということだとすれば、ここにも大きな認識の乖離というものが存在していることを認めざるを得ないようですし、敢えてそうした情報格差を作り上げてきた方々の努力は見事に実っているということになりますかね。

行政刷新会議のメンバーの皆さんはいずれもその道では相応に名の知れた、おそらく自らの知識なり技能なりに誇るところ少なからずという方々が多いのだと思いますけれども、こうやって他人の思惑に乗せられたまま猿回しの猿を演じている現状をどう考えているのか、そのあたりも興味深いものがあります。
いずれにしても歪んだデータを元に立てられた対策なるもので医療がはたして立て直せるものなのかどうか、その結果をやがて国民は身をもって検証していくことになるのだと思いますから、長妻大臣ではありませんが遠慮せず言いたいことは今のうちに全て出し切って激しく、時には優しく議論をしておくのがよさそうに思えますね…もちろん、正しいデータに基づいての正しい議論が大前提ですけれども。

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