« 今日のぐり:出石蕎麦その三「そば処 天通」&「おうち」&「南枝(なんし)小人店」 | トップページ | 医療問題の議論すなわち診療報酬をめぐる攻防って図式はどうなのか »

2009年11月30日 (月)

産科・小児科待ったなし!と、誰に訴えます?

先日赤旗にこういう記事が出ていましたけれども、共産党さんも「国民目線」民主党の思わぬ裏切り行為に涙目ということなんでしょうか?

都立3小児病院廃止容認へ転換 都議会民主 公約どこへ(2009年11月19日しんぶん赤旗)

 都議会民主党は18日の総会で、第4回定例都議会(12月1日開会)に東京都が廃止を決めた都立3小児病院(清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院)を存続させる条例案を提出せず、廃止を容認する方針を確認しました。存続条例案は日本共産党都議団が民主党に働きかけ、共同提案することで合意し、具体案を協議してきたものです。

 日本共産党都議団の大山とも子政調委員長は同日、同党の対応について「都民の切実な願いに背を向けるばかりか、同党が都議選前後にとってきた立場とも矛盾しており、きわめて遺憾」とし、病院存続の立場を貫くよう再検討を求める談話を発表しました。

 民主党は、3月の都議会で3小児病院廃止条例に共産党、生活者ネットとともに反対しました。7月の都議選では、小児病院存続を掲げて当選した都議もいます。
(略)
 存続を求め活動している多摩地域の母親(39)は「都議選で病院存続公約を掲げていたから民主党に投票したのに…。都立病院がなくなったら大変になると娘の主治医も言っています。あきらめずにがんばりたい」と話しています。

都立病院の行方はともかくとしても、全国的に見ても産科、小児科はますます状況が悪化する一方のようです。

産科・産婦人科、3年間に9%減…厚労省(2009年11月26日読売新聞)

 厚生労働省は26日、2008年の「医療施設調査」を公表した。

 全国の産科・産婦人科のある医療施設(病院と診療所)は5451施設で、05年に比べると546施設(9%)減少し、1990年より3割減、98年よりは2割減で、減少傾向が続いている。

 施設別では、病院が1496施設(05年比約8%減)で、診療所は3955施設(同10%減)。分娩(ぶんべん)に対応できる医療施設は2713施設にとどまり、産科・産婦人科のある医療施設のうち、半数は分娩に対応していないこともわかった。

小児科と産婦人科、減少傾向続く=08年医療施設調査-厚労省(2009年11月26日時事ドットコム)

 厚生労働省は26日、2008年の医療施設・病院に関する調査結果を発表した。医師不足が深刻化している小児科、産婦人科のある病院の割合は、小児科が前年度比1.0%減の37.7%(2905施設)、産婦人科が同0.2%減の17.1%(1319施設)となり、依然として減少傾向が続いている
 08年10月1日現在、全国の病院数は同0.8%減の8794施設、一般診療所は同0.5%減の9万9083施設だった。
 3年に1度の分娩(ぶんべん)に関する調査では、08年9月中に分娩を実施した施設数が2567施設と前回に比べ366施設減った。少子化に加え、リスクの高い分娩を避ける傾向があるためとみられる。帝王切開の割合は高齢出産などの影響で増加を続けており、分娩件数に占める割合は病院で23.3%だった

事業仕分けという行為が必ずしも悪いというわけではなく、むしろ財政状況などを考えるとこういう行為は必須であるとも思いますけれども、もちろん無駄というに近い事業もあれば、迂闊に予算カットをすればそれだけで終わってしまう領域というものもあるわけです。
現在も続く診療報酬改定をめぐる議論でも産科・小児科については手厚くという方針では諸方面の認識が一致しているようですが、現代の医療は特定部門だけで成立するという性質のものではないだけに、果たして一方を削って他方に回す式のやり方で対応できるのかどうかは何ともいいかねるところでしょうね。
早い話が産科・小児科がいくら手厚く遇されても病院自体が大赤字でつぶれてしまえば周産期の難症例受け入れなど到底かなわないわけで、それで本当によいのかという部分もちゃんと国民にインフォームドコンセントをとっておいていただかなければ困るという話ですよ。

非常によろしくない傾向だなと思うのは、どうもこの仕分けが事業の重要性や意義づけというより、その場でのプレゼンテーションの在り方によって結論が左右されているように思えることで、その意味で残念ながら仕分け人はあまり良好な「予習」ができているようには見えません。
医療の中でも産科、小児科といったあたりはすでに半分以上終わっているというくらいに危ない領域なわけですから、こうしたところで対応を誤ると大変なことになると、東京都副知事の猪瀬直樹氏が警鐘を鳴らしていますが、こちらから引用してみましょう。

安易な事業仕分けが周産期医療の悲劇を招く 1つの事業につきわずか1時間のヒアリングでは危ない(2009年11月17日日経BP「猪瀬直樹の「眼からウロコ」」)より抜粋

結論ありきのパフォーマンス

 事業仕分け作業では、1つの事業につきわずか1時間のヒアリングで、事業仕分け人が判定を下している。結論ありきの誘導尋問だから意味がない。これではただのセレモニーである。

 447の対象事業のなかには、いかにもムダとわかる独立行政法人関連の事業も含まれているけれども、緊急性を要するような重要な事業までが乱暴にカットされている。短時間で個別の事業についての是非を決めるのはおかしい。

 たった1時間で削られたのは「医師確保、救急・周産期対策の補助金等」で、NICU(早産児などを受け入れる新生児集中治療室)を増床するための予算が半分に減らされたことについて、僕は腹を立てているのだ。以前も書いたが、NICU増床には次のような経緯があることを知ってほしい。

 昨年発生した、重症妊婦を複数の病院が受け入れ拒否した問題に対応するため、僕が座長を務める東京都の「周産期医療体制整備プロジェクトチーム(PT)」は、収支モデル分析をして、NICU増床に伴うコストを算出した。NICUを増やせば増やすほど膨らむ赤字に対して、「診療報酬を実態に合わせて大幅に引き上げること」と同時に、「補助金を充実させる」ことで、周産期センターにNICUを増床するインセンティブを与えることを提言した。

 厚生労働省も出生数1万人あたり20床というNICUの整備方針を見直し、出生数1万人あたり25~30床を目標とする、という方針を打ち出しているが、そのための補助金制度が整っていなかった。厚労省の周産期センターへの補助金はNICUに対して出されておらず、M-FICU(母体・新生児集中治療管理室)という別の病床に対してのみ補助を出していた。これでは、インセンティブが働かない。

 東京都のPTが4月24日に提出した報告書では、NICUを補助金の対象にするだけでなく、GCU(回復した新生児を受け入れる回復期治療室)というNICUの出口にあたる後方病床に対しても「診療報酬上の再検討をするなど、その確保について抜本的な対応を図る必要がある」との提言を盛り込んだ。こうすることで、NICUをめぐる新生児の流れがよくなり、NICUの満床状態がより改善されることになる。

事業仕分け人は周産期医療の実態を把握しているのか

 病院にインセンティブを与えなければ、行政がいくら「増床しろ」と言っても事態は進展しない。わかりやすくするために、NICU病床数12床の平均的な総合周産期母子医療センターをモデルとして説明しよう。NICU1床あたり赤字額745万円に対して、従来の補助金は、国から57万円、都から57万円が支給されていた

 PTの提言を受けて、厚労省は概算要求でこの補助金を2010年度予算から引き上げて、国から175万円に引き上げる案を示した。都もこれと同じく引き上げて175万円とすれば、赤字額を507万円に低減することになっていたのである。

 しかし、その補助金が事業仕分けでカットされた。東京都では予算を計上する予定だが、国の補助金が減るとなると、効果が薄まるのではないかと危惧している。事業仕分け人は、どれだけ周産期医療の実態を把握しているのか。

 事業仕分けでは、「本来、病院の収入確保は診療報酬で対応すべき」という論点整理がされていた。もちろん、そうなればよい。PTでもその点は提言している。

 しかし、診療報酬の引き上げには、診療報酬体系全体を考慮した調整が必要であり、すぐにできることではない。それまでのあいだ、補助金で対応する必要がある。重症妊婦の受け入れ拒否問題は待ってくれない。

細かい異論は別として猪瀬氏の意見が傾聴に値すると思うのは、以前にも引用しました東京都NICU整備に関する問題でそれにかかる経費は幾ら、これに対する収入は幾らでこれでは作れば作るほど病院の赤字はかさむ一方であると、きちんと数字を挙げて看破するところから議論をスタートさせていたところです。
一般に医療にもっと金を出せ!と主張している人は大勢いますけれども、どこに幾ら金がかかってどれだけ足りない、あるいはこれこれのことをするためにここにこれだけの金がいるのだときちんと数字をもって検証しているのは稀であって、相変わらず診療報酬がマイナスになるのはけしからん!といったレベルの話に終始しているわけですよね。
今もし仮に大逆転で診療報酬大幅増!なんて話が出てきたとして、「それで、どこに幾ら出せばいいんですか?」と問われてきちんと答えられる人間がどれほどいるのかということを考えた場合に、診療報酬増額要求派はまずそのあたりの理論武装をもっとしておかなければならないのではないかと思います。

一方で面白いのは小児医療に関連して民主党の鈴木寛・文部科学副大臣がこんなことを言い出していることで、これはどう解釈するべきなのかなかなか迷うような話ではありますよね。

小児医療提供者は市民から直接支援受ける知恵を 鈴木・文科副大臣(2009年11月8日ロハス・メディカル)

 鈴木寛・文部科学副大臣は7日、都内で開かれたシンポジウムの席上で「小児医療をやっている機関は、これまで厚生労働省に税配分を求めるロビー活動をしてきたと思うが、子供手当ての創設に伴ってお金の流れが変わるので、今後は子供を抱える家庭に対してプレゼンテーションして直接支援を求めていくということが可能になるし、そうなることを期待している」と述べた。(川口恭)

 この日開かれた『現場からの医療改革推進協議会』の席上で以下のように述べた。

「来年から子供手当てができるはず。来年はまず1万3千円だが、それでも2兆5千億円。これは大変なこと。予算の捻出が大変というのもその通りなんだが、実はその持つ意味はそれだけに留まらない。

これまで小児医療をやっている機関は厚生労働省に対して税配分を増やすようロビー活動をしてきたと思うが、これからは子供手当てを受け取った市民に対するプレゼンテーションをして、パブリックサービスに対する支持を求めることが大切になる。寄付に不慣れな国民性はあるにせよ、来年でさえ一気に15万円収入が増える。そういう子供を抱える家庭に対して、来年4月から商業界でも支出を求める競争が一斉に始まる。その中にパブリックセクターとして、こういうことをしたいのだが支援してもらえないかということが起きるだろうし、そうなることを期待している。

私ども文部科学省の分野ではコミュニティスクールというのを進めているけれど、そういうものとの良い意味での競争知恵比べになる。そういう状況が、あと数ヵ月経つと条件整備されて現れるのだということを認識していただきたい」

「素人の妄言」などと切って捨てることは非常に簡単なんですけれども、先ごろ医師集めのために商店街がお金を出し合って支度金を用意した、なんて話もあるように、今後は医療業界もこうしたスポンサー対策というものにもっと真剣になっていかなければならないのではないかと思うのですがどうでしょうね?
医療業界のプレゼンの仕方を見ていて下手だなと思うのは、どうも基本的に「俺たちは正しいことを言っているんだ」という認識で行動している、しかし実際に言うほど正しいことをやっているのか疑問なのではないかということで、国民自身もそういうあたりに胡散臭いものを感じているのではないかと思います。
例えば今までは日医などが何かにつけて「それは患者さんが困るから」などというもって回った物言いをして医療政策に口を挟んできた、しかし口ではそう言いながら実際日医の目線の先に患者というものの存在がそれほどあったかと言えばはなはだ疑問だと思うんですよね。

例の仕分け作業においてもそうですけれども、例えばスパコン関連の予算を削るなんて言えば国中を挙げて「ヤメロ!ヤメロ!」の大騒ぎになった、一方で先日も取り上げましたように、医療業界が診療報酬をあげなければと言えば国中から「ヤメロ!ヤメロ!」の大騒ぎになる、こういうのも広い意味でのプレゼン能力なんだとすれば、医療業界は全く人材を得ていないなと思いますね。
何をどう訴えかけるべきなのかという内容の再検討と同時に、誰に向かって訴えかけるべきなのかということも早めに再検討しておかなければならないんじゃないかと思いますけれども、それを誰がやっていくのかと考えた場合に適当な個人なり組織なりもなさそうなのが問題でもあります。
そういえば民主党が大躍進した背景にテレビ業界などをはじめマスコミとツーカーの議員が大勢いたということが間違いなくあげられると思いますけれども、今テレビ業界とツーカーの医師免許保持者の顔ぶれを考えてみますと…ますます「誤解」を拡大再生産しかねませんかね(苦笑)。

|

« 今日のぐり:出石蕎麦その三「そば処 天通」&「おうち」&「南枝(なんし)小人店」 | トップページ | 医療問題の議論すなわち診療報酬をめぐる攻防って図式はどうなのか »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/46897361

この記事へのトラックバック一覧です: 産科・小児科待ったなし!と、誰に訴えます?:

« 今日のぐり:出石蕎麦その三「そば処 天通」&「おうち」&「南枝(なんし)小人店」 | トップページ | 医療問題の議論すなわち診療報酬をめぐる攻防って図式はどうなのか »