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2009年11月24日 (火)

新型インフルエンザ 結局あれはどうだったのか

すでに新聞報道などで御存じの方も多いかと思いますが、新型インフルエンザワクチンに関して色々と副作用報道が相次いでいます。
まずはカナダからこんな話題を紹介してみましょう。

新型インフルワクチン、カナダで副作用相次ぐ 厚労省、調査団派遣(2009年11月23日日経ネット)

 英グラクソスミスクラインが製造、カナダ国内で接種された新型インフルエンザのワクチンの一部で重い副作用が相次ぎ、同社が同国州政府に使用中止を要請していたことが23日、分かった。中止要請の対象は同国内の工場で製造した約17万回分で、日本も同じ工場で作ったワクチンを輸入する予定。厚生労働省は今後カナダに調査団を派遣するなど情報収集を進める。

 関係者によると、カナダ中部の州で同社製のワクチンの一部で、アレルギー性のショックなど重い副作用が、通常の発生割合より高い6例発生したという。症状はいずれも短時間で治まり、すべての患者が既に回復しているという。

 日本は同社と約7400万回分のワクチンを輸入する契約を結んでおり、来月に輸入し、安全性を確認したうえで手続きを簡略化した「特例承認」を適用して来年1月から供給する予定。このため長妻昭厚生労働相は23日、「遅くとも12月上旬までに現地に調査団を派遣、情報収集を進める」と述べた。

カナダと言えば以前にも「季節性インフルエンザワクチン接種で新型に罹患しやすくなる?!」という話が出てきたところですけれども、何かしらワクチンの副作用に対して厳しい視線でもあるということなのでしょうかね?
ちょうど医療従事者に対する先行投与のデータがそろそろ出てきたところで、厚労省は今のところ国産ワクチンに関しては安全性には特に問題ないという見解をとっているようですけれども、気になるのは高齢者においてワクチン接種後の死亡例報告が相次いでいるところです。
いずれも接種と死亡との直接の関連については否定的という話になっているようですが、そもそも高齢者を優先接種対象に含めるべきかどうかという議論もあって、今後さらに疑わしい症例が増えてくるようですとさすがに何らかの社会的対応が要求されるのではないかという気がします。

新型インフルエンザ:ワクチン接種後、医療従事者の424人から異常(2009年11月21日毎日新聞)

 厚生労働省は20日、医療従事者約2万人を対象にした新型インフルエンザワクチン副作用調査の中間報告をまとめ、入院相当の6人を含め424人に接種後の異常(有害事象)が見られたと発表した。因果関係が疑われると医師が判断したのはうち337人で後遺症が残る事例はなかったとしている。入院相当の異常は▽意識低下▽嘔吐(おうと)・吐き気--など。

 また2万人調査とは別に、ワクチン接種を受けた基礎疾患のある高齢者3人の死亡が新たに報告され、接種後の死亡は計13人になった。厚労省は21日に専門家検討会を開きワクチンの安全性を改めて議論する。【清水健二】

ワクチンの安全性議論=厚労省、接種後死亡例を検討-新型インフル(2009年11月21日時事通信)

 新型インフルエンザのワクチンについて、厚生労働省は21日、副作用検討会の第1回会合を開いた。持病のある高齢者ら21人が接種後に死亡したとの報告などを基に、研究者や医師がワクチンの安全性を検討。「急速に悪化する持病を持つ場合は注意が必要」「在宅療養中でほとんど外出しない患者にまで打つ必要があるのか」などの意見が出された。

 持病のある人への接種では、がんや肺気腫の持病を抱える50~90代の男女計21人が接種後に死亡したことが判明。大半は持病による死亡で、ワクチンとの明確な関連はないと報告されているが、一部はワクチンが持病を悪化させ死亡につながった可能性があると報告されている。

正直この時期は何もなくとも基礎疾患のある高齢者にとっては死亡率が上がってくる時期ですから評価が難しいところもあるかと思いますが、担当医が一応安定していると判断してワクチン接種を行い急変したのだとすれば、それが期待される死亡確率を上回っているのかどうかを調べてみないことには結論が出そうにないですね。
近日中に結論が出る問題でもないとは思いますが、その間も臨床現場においては特に接種対象者の厳密な選別を行うと同時に、やはり本人、家族に対して事前に十分なインフォームドコンセントを得ておくことが重要なのではないかと思われます。

さて、最近新型インフルエンザの疫学絡みでいくつか面白いなと思ったデータが出ていましたので紹介しておきましょう。
まずはこちら、臨床の現場でも小児患者が増えているとお考えの先生も多いのではないかと思いますけれども、実際そうらしいという話のようです。

新型インフル、流行の中心が9歳以下に 国立感染研(2009年11月10日朝日新聞)

 国立感染症研究所感染症情報センターは9日、インフルエンザ患者の年齢群別割合で、流行の中心が、これまでの10代前半から、9歳以下に低年齢化しているとの分析結果を発表した。ほとんどが新型の豚インフルエンザという。同研究所は、流行のピーク時期と、新型インフルワクチンの接種時期が重なって、小児科医の負担がさらに増えることを懸念し、早期のワクチン接種を求めている。

 同研究所の8月24日~11月1日の週別のまとめでは、夏休み明けには5~19歳の割合が増え、特に10~14歳が流行の中心だった。その後、9月28日~10月4日の第40週以降は9歳以下の患者の報告割合が増え、最新の10月26日~今月1日の1週間では、5~9歳が36.7%(5万8533人)となり、10~14歳(33.4%、5万3268人)と逆転した。0~4歳も11.9%(1万9053人)と増加傾向にある。

 厚生労働省は今月6日、新型インフルのワクチン接種について、1~9歳の健康な子どもの接種時期を従来のスケジュールよりも早めるように都道府県に求めている。

このデータをどう解釈するかですが、ひところ新型と言えばどうも小児よりも若年者に多いんじゃないかなんてことが言われていた、それが次第に幼児・小児にシフトしてきているというのは実際の現象というよりデータ取りのバイアスではないかという意見もあって、個人的にもそういうことなのではないかという印象を受けています。
国内では当初海外からの修学旅行帰国者や高校などでの集団発生が話題となって若年罹患者数を押し上げていたところがありますけれども、実際のところやはり患者が殺到しているのは小児科であったという話なので、この点では結局季節性インフルエンザと本質的な差はなかったという結論に落ち着きそうです。
一方でもう一つの興味深い話として、どうも日本はそれなりに頑張っているんじゃないかというWHOからのお墨付きがこちらです。

新型インフル、日本の入院・死亡率は低水準 WHO報告(2009年11月16日朝日新聞)

 世界保健機関(WHO)は、世界的に流行している新型の豚インフルエンザで入院したり、死亡したりする人の割合が日本では他の国より低いと、疫学週報最新号で報告した。

 北半球と南半球のそれぞれ5カ国の入院率や死亡率などを6日現在でまとめた。人口10万人当たりの入院患者は日本が最も低い2.9人。米国は3人で、最も高いのはアルゼンチンの24.5人だった。人口100万人当たりの死亡者でも日本は最低の0.2人。オーストラリアは8.6人。最も高いのはこれもアルゼンチンで14.6人だった。

 WHOの分析では、北半球は流行が始まってすぐ夏になったが、本格的な冬を迎えていた南半球の数値の方が、インフルが本来流行するときの実態に近い。北半球が冬を迎えれば、南半球の状態に近くなるかもしれないという。

 入院患者のうち妊婦が占める割合も日本(0.3%)が最低で、次いでチリが2.4%。それ以外の国は5~8.3%だった。

 WHOは「新型インフルが季節性と大きく違うのは、持病がないのに重症化する人が多い点」と指摘。入院患者で持病がない人は、一番少ない米国でも27%に達し、ブラジルの79%が最高だった。

 国立国際医療センターの工藤宏一郎・国際疾病センター長は「日本では発熱して具合が悪くなればすぐに医療機関を受診し、抗ウイルス薬をのむ人が多い。医療保険制度が異なる海外では、発熱だけでは受診せず、かなり重症化してから受診するケースが多いことが、死亡率が高い一因だろう」と話す。(大岩ゆり)

公衆衛生学的に見れば生活環境や国民の健康状態、そして清潔を好む国民性など色々と考慮すべきファクターは多々あるのでしょうけれども、やはり誰しも気になるのは「結局”インフルエンザとみたらとりあえずタミフル”は有効なのかどうなのか?」というところですよね。
もちろん罹病期間を短縮する効果を認められて用いられている薬なわけですから使えば有効なのでしょうが、費用の面はおくとしても今後の耐性株出現の問題なども考慮して総合的にどうなのかといった評価は、まだまだこれから先の話になってくるのではないかと思えます。
そろそろタミフルのドライシロップあたりは品切れになっているそうですけれども、ひと頃薬剤耐性菌続出で「日本は抗生物質乱用大国だ」なんて騒がれていた時代の教訓を思い出してみれば、「効くのだから遠慮なく使う」の姿勢でよいのかどうかは医学的のみならず社会的、経済的にもしっかり検討していくべきところだと思うのですけれどもね。

何にしろ、ようやく実社会からのデータが次々と上がってきつつあるわけですから、これらを適切に検討して随時方針を練り直していかなければならないのは当然ですし、それもなるべく早急に行うべきだろうということでしょう。

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