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2009年10月 3日 (土)

救急医療崩壊の危機…って、いやそれはちょっと待てと(笑)

最近何かと話題の中医協絡みで先日出た記事なのですが、一部方面で妙に馬鹿受けしているこちらを紹介してみましょう。

救急受け入れ不能の理由、「実は分からない」 ─ 厚労省(2009年10月1日ロハス・メディカル)

 救急患者の受け入れ状況を改善するため、厚生労働省は「ベッド確保策」に意欲を見せている。総務省消防庁と厚労省の調査では、受け入れ不能理由で最も多かったのは「処置困難」、次いで「手術中・患者対応中」「ベッド満床」などの順。これらの具体的な内容について厚労省の担当者は、「実は分からない」と答え、「ベッド満床」を解消する方針を強調したが、果たしてそれでいいか。(新井裕充)

 2010年度の診療報酬改定に向け厚生労働省は9月30日、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)の基本問題小委員会で、周産期医療と救急医療の診療報酬上の評価について「論点」を示した。

 周産期医療の「論点」を要約すると、▽NICU(新生児集中治療室)の評価 ▽合併症ある妊婦の受け入れ ▽NICUの退室支援 ▽地域連携 ▽ハイリスク分娩管理加算の要件緩和─の5点。
 救急医療の「論点」は、▽積極的に受け入る医療機関の評価(入り口の問題) ▽退院患者の紹介加算(出口の問題) ▽受け入れの実績評価─の3点。 

 同日は、まず厚労省保険局医療課の佐藤敏信課長が資料について説明。これまで何度も示した資料であるにもかかわらず、いつもの長い説明が続き、予定した1時間半の審議時間のうち約40分間がつぶれた。
 周産期医療に関する資料説明の中で佐藤課長は、母体や新生児の救急受け入れが進まない理由として、ベッドが満床であることを繰り返し強調、NICU(新生児集中治療室)など「ベッド確保策」を優先する意向を示した。

 これに対して、日本看護協会副会長を務める坂本すが専門委員は、救急患者の「出口」をめぐる問題について次のように述べ、退院支援を評価する必要性を指摘した。
 「(出口の問題は)やはり家族の受け入れ不能ということを感じていた。(入院中の)早期に家族とかかわっていくことによって成功している病院もあるので、そういうところを(診療報酬で)厚くしていくというのが大事だと思う」

 また、「入り口」の問題については次のように質問した。
 「受け入れに至らなかった理由の件数の中に、ドクターの手術中とか、患者対応中というのがあるが、これはどういう患者さんを対応されていたのか。例えば、分娩であったのか、何らかの医療事態があったのか。もし、これが手術中、患者対応中で受け入れられないということなら、患者さん、国民から見れば『受け入れられない』ということをいつも不安に思っていなければいけない。『ベッド満床』は、何らかの形で退出をサポートしていくということと、もう1つ、『入り口』のところで、『受け入れる対応』というのをどのように改善していくのかということが大変重要だと思うので教えてください」

 総務省消防庁と厚労省の調査によると、「重症以上傷病者」の受け入れができなかった理由のトップは「処置困難」、次いで「手術中・患者対応中」、「ベッド満床」などの順で、産科・周産期傷病者も同様だった。
 佐藤課長が強調する「ベッド満床」は上位ではなく、この傾向は「小児傷病者」でも「救命救急センター等搬送傷病者」でも同じだった。

 坂本委員の質問に対し、佐藤課長は「結論から言いますと、実は分からないんです」と回答、次のように説明した。
 「この調査は消防庁が何年かにわたって継続して行っている調査で、消防庁が消防庁独自の調査項目を設けて調査しているもの。もっと具体的に申しますと、各消防隊員、救急隊員が患者さんの搬送を担当して、『受け入れがなかなか難しかった』という場合に、どの項目に該当するのかを個々の救急隊員等が個人の主観的な判断でやっております」

 佐藤課長はこのように、医療機関の受け入れ状況の実態は救急隊員の「主観的な判断」であり、客観的な状況を示すものではないことを指摘した上で、次のように続けた。
 「そういう意味で言うと、救急救命士のように専門的な方もいらっしゃいますけど、必ずしも医学、医療の専門家でない方が看護師さんや、あるいはそこで応対したお医者さんに聞いて、『なぜ駄目なんですか?』、あるいは電話で『なぜ受け入れ駄目なんですか?』という受け答えがあったときに、救急隊員や救急救命士が自分の判断で、『これは手術中』『患者対応中』とチェックをしているので、本当のところはなかなか分かりません。私どもがこのデータだけ見て対応できるものは、『ベッド満床』の辺りかなということで、こういう『ベッド満床』を改善するような方策なら、このデータからでも対応できる」

 このように、佐藤課長は周産期・救急患者の受け入れが進まない理由として「ベッド満床」に焦点を当てている。しかし、同日の質疑で、坂本委員は「入り口」から「出口」までのスムーズな流れをつくるための体制について何度も質問した。
 坂本委員の質問は、看護師配置の評価を明確に訴えるものではなかったが、「トリアージナース」や「退院調整看護師」など、周産期・救急医療で看護師が果たす役割を診療報酬上で評価すべきとの意向がうかがえた。(略)

以下、元記事では実際のやり取りが引用されているんどえすが、まあ確かにこういう課長のプレゼンですと「いつもの長い説明」と言いたくもなるでしょうし、「傍聴席では、佐藤課長の説明中に離席する姿が目立った」のも仕方がないかなという気配は感じますよね(苦笑)。
こういうところで意味もなく時間を浪費するというのはあるいは内容に対する検証に時間を使いたくない事情でもあるのかと勘ぐりたくもなりますが、佐藤課長がベッド満床を強調する理由の一環として記者氏はこういう推測を差し挟んでいますね。

救急医療の集約化に対する医政局の執念はすざましい。佐藤課長は2008年7月、医政局指導課長から保険局医療課長に異動になった。医政局といえば、補助金がらみの箱モノ行政を繰り広げる代表格ではないだろうか。最近では、PICU(小児集中治療室)の全国整備に気合を入れている。救急医療の集約化について現場の医師に話を聞くと、賛否両論が真っ二つに分かれる。「ドカーンとつくればいいんだよ」「ドクターヘリをもっと増やせ」という声がある一方で、「ハコをつくったって医師がいなきゃ駄目でしょ」「働き続けられる環境整備が先決」などの声もある。「救急はヒトかハコか」という問題は非常に難しいが、同じ金を突っ込むなら「ハコ」にしたほうが、役所にとっては何かと都合がいいのかもしれない。

この賛否両論が真っ二つということが非常に重要なところで、確かにどちらの意見も一定数あるのは事実なのですが、では実勢としてどちらがどのくらいの割合で存在しているのかという真っ当なデータというものもない以上、語る者の主観によって「こんな意見が現場では多くて」と幾らでも結論を操作出来るわけですよね。
救急受け入れ不能問題に関しても同じことで、もちろん記事中に出ている様々な要因が複雑に絡み合ったものに間違いないわけですから、当事者にしてもおいそれと「これが正解」と言える問題ではない、しかしその中で特定の意見を敢えて強調してみせることで、ここでも「病床不足が原因」という厚労省のシナリオに向けて幾らでも操作が効くというわけです。
そしてそのあたりを少し詳細に突っ込まれた途端に「実は分からない」、「必ずしも医学、医療の専門家でない方」の「個人の主観的な判断」なのでと逃げを打つ、となれば彼らのシナリオであるところの病床不足が搬送困難の原因という結論に疑いが出てくるのは当然なのですが、ここで佐藤課長は驚くべきウルトラCを見せてくれます。

[医療課・佐藤課長]
 今日のこの時点では、長年にわたってこの項目で調査しているものであって、主観的に救急隊員等がチェックされたものを集計したものと聞いております。そういう意味で、蛇足になりますが、私どもがこのデータだけ見て対応できるものは、「ベッド満床」の辺りかなーということで、こういう「ベッド満床」を改善するような方策なら、このデータからでも対応できるのかなということで、いくつかの資料を付けた次第です。よろしくお願いします。

データから現実世界で起こっている現象を見極め、それに対する適切な対策を取るのが普通の人間の考える道筋というものでしょうに、「とりあえず俺たちに都合が良い結論はこれなんで、今日はその線でまとめてみました」って、そういう本音は堂々と口にして良いものじゃないでしょう(苦笑)。
こういう人たちが医療行政の本丸とも言うべき厚労省のしかるべき地位についているというあまりに素敵すぎる現実に、いささか頭がクラクラしてきそうな感覚すら覚えるのは自分だけでしょうか。
普通ならここで突っ込みが入ってしかるべきところだと思いますが、早速意味不明の援護射撃が入るあたり厚労省官僚の同僚愛と言いますか、絆の強さというものを感じるところですよね(苦笑)。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 ありがとうございます。そのご趣旨はよく分かりますが、しかし、先ほどから坂本専門委員がおっしゃっているのは、「入り口」と「出口」で、さまざまに受け入れ困難になっている理由をもう少し明らかにしておくべきであり、それがあれば、適正な報酬もそこに付けられるのではないかということなので、(日看協副会長の坂本専門委員が)そこのところをかなり何度もおっしゃっているわけです。事務局、どうぞ。

 ▼ 佐藤課長が劣勢。しかし、すかさず援護が......。

[医政局救急・周産期医療対策室長]
 救急・周産期医療対策室長でございます。先ほど、(牛丸委員から)ご質問を頂いた件で、理由が分かったのがございましたので、この場でご紹介させていただきます。

 スライドの7、8について、11回以上の(照会)件数がスライド7では47となっていたのが、スライド8では624というところで、「なぜ違うのか」というご指摘につきまして、スライド7については、最終的に受け入れた件数ということで47。
 スライド8については、それまでに至る断った各医療機関の合計が挙がっているということになっています。当然、かなり、11倍以上になっているということでございます。

 ▼ こうして話をそらされ、のらりくらりかわされながら厚労ペースで進んでいくのが現在の中医協。本題とは関係ないが、最近、医療系記者の間で話題になるのは厚労省の役人について。「1人ひとりはとっても良い人たちなんだけど、まとまると、どうしてこうなるんでしょう」という意見でなぜか一致している。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 ありがとうございます。牛丸委員、よろしいでしょうか。はい。ほかに、周産期についてご意見、ございますか。よろしいですか。

え?ちょっと待った、そんな答弁で良いことにしちゃうんですか?>遠藤委員長。
こうまで意味不明の「援護射撃」もどうかという話ですが、それでよかったことにしてしまうから「出来レース」なんて言われることになるわけですが、こういう実態を見れば見るほど「中医協って、存在している意味あるの?」と考えざるを得なくなってくるのはどうしたものなんでしょうね。
いずれにしてもこんなぬるい議論で救急問題の本質を云々するというのもなんだかなあという話ですが、恐れ入ったのは続けてこんな話が飛び出して来ていることです。

救急受け入れ対策、「医師の適正配置もある」 ─ 厚労省課長(2009年10月2日ロハス・メディカル)

 重症の救急患者を搬送するため、救急隊が医療機関に4回以上照会した事例が大阪や東京など大都市部で多く見られることから、厚生労働省の担当者は9月30日の中医協で、「単純に医師を増やすとか単純に医療機関を増やすということだけでは難しい」とした上で、「医師の適正配置というのも、もしかしたらある」と述べた。(新井裕充)

 中央社会保険医療協議会(中医協)の基本問題小委員会が9月30日に開かれ、来年度の診療報酬改定で重点的に評価する周産期・救急医療について具体的な議論を開始した。
 議論に先立ち厚労省は、今年1月に総務省消防庁と合同で行った「平成20年中の救急搬送における医療機関の受入れ状況等実態調査」の結果を示した。

 調査によると、医療機関への照会が4回以上の事案が1万4732件(全体の3.6%)で、救急車が現場に30分以上滞在した事案は1万6980件(4.1%)だった。照会回数の多い事案の比率は大都市部で高かった。照会回数を都道府県別に見ると、奈良が12.5%で最も多く、次いで東京(9.4%)、埼玉(8.7%)、大阪(8.2%)などの順だった。

 この調査結果は今年3月に公表済み。厚労省は次期改定に向けた資料として示すため、全国平均の「3.6%」「4.1%」を上回る地域を赤く塗りつぶした日本地図のイラストを示し、保険局医療課の佐藤敏信課長が次のように説明した。
 「宮城県や茨城県など、一部の例外はあるが、4回以上問い合わせた事例、30分以上かかった事例が全国平均を上回った所は、一般的に言うと医師が多い地域に多いから、単純に医師を増やすとか、単純に医療機関を増やすということだけでは、なかなかこうした問い合わせの事例を減らすということは難しい」

 その上で、救急受け入れ問題を「診療報酬だけで解決するのは非常に難しい」と指摘。診療報酬以外の対応策として、「ベッド満床の改善」を最も強調したほか、「ルールを変える」「体制を整備する」「補助金」「医師の適正配置」を挙げた。
 「ベッド満床」については、「ある程度、人知を尽くせば改善できる余地もあるだろう。『ベッド満床みたいなものが改善するように』というのが関係者の希望」などと述べた。(略)

おいおい、あのすっかり論破されたはずのぬるいデータから「『ベッド満床みたいなものが改善するように』というのが関係者の希望」などと結論付けるのもどうかという話なんですが、何故そこで唐突に「医師の適正配置というのも、もしかしたらある」なんて話が出てきますか?
例によってこの後に実際のやり取りが掲載されているわけですが、ここで明確にしておかなければならないのは厚労省自身が出してきたデータによれば「救急搬送で照会回数が多い(=搬送に難渋する)のは医師が多い地域」であるということが示されているということです。

[保険局医療課・佐藤敏信課長]
 この地図を見てお分かりだと思いますが、一部の例、例えば宮城県とか茨城県とか、一部の例外はありますけれども、4回以上問い合わせた事例、30分以上かかった事例が全国平均を上回った所というのは、一般的に言うと、医師が多い地域に多いということですから、単純に医師を増やすとか、単純に医療機関を増やすということだけでは、なかなかこうした問い合わせの(多い)事例を減らすということは難しい
(略)
例えば、「三次救急」という区分で見てみますと、「なんで受け入れられなかったの?」というと、「ベッド満床」が25%、つまり4分の1が「ベッドが満床でした」ということですし、「手術、患者対応中でした」というのが3分の1ぐらいで32.6%ある。それから、「二次救急以下」のところでは「処置困難」23.6%、「専門外」というのが18.8%ということ。

 で、あの......。「手術中」や「患者対応中」とか、「自分の所では手に負えません」という意味でしょう。たぶん、「処置困難」「専門外」ということについては、これはなかなか一朝一夕には解決しません。

 ▼ 「二次救急以下」のトップが「処置困難」ということは、「リスクのある患者は受けたくない」という意味ではないだろうか。ちなみに、「三次救急」のトップが「手術・患者対応中」であるのは、普通に考えれば「キャパオーバー」になっていること、つまり医師不足または救急患者が多いことを意味するのではないか。

 (診療報酬だけで解決するのは難しいという)先ほどの話で、もう少し(補足して)言うと、「ルールを変える」とか、「体制を整備する」とか、あるいは「補助金」とか、そういういろんな方法でやってもらわなきゃいけませんし、「医師の適正配置」というのも、もしかしたらあるのかもしれません

 それに対して、「ベッド満床」というところは、ある程度、人知を尽くせば改善できる余地もあるだろう。「ベッド満床みたいなものが改善するように」というのが関係者の希望のようでございます。

いや、あの、誰かこの佐藤課長のロジックについていける人はいるのでしょうか…?
普通に考えてそのデータから導き出せるのは「単純に医者を増やしたところで搬送困難は解消しない」ということまでであって、何故そこから「医師の適性配置」だのという話に結びついてくるのか、「「ベッド満床みたいなものが改善するように」というのが関係者の希望」という結論になってくるのか意味不明なのですが。
そして更に意味不明なのは、目の前で厚労省がこうまで意味不明なロジックをこねくり回しているにも関わらず、現場にいる中医協委員達の誰一人としてそれに突っ込むこともなく華麗にスルーしているということではないでしょうか。
一応は公開の場でこうまで露骨な出来レースを見せつけられては、これはもう気持ち悪いとも感じられるような話ですよね。

中医協改革と言えば医師会外しがどうとか言った話題ばかりが先行している感がありますが、こういう実態を見るに付けそもそもこの人たちに医療行政の根幹を委ねてきたこと自体が何かしら大きな問題だったのではないかという懸念が拭えないところです。
民主党政権では医療行政においても現場の声に耳を傾けるということになっていますけれども、先日の産科の分娩費直接支払いを巡るゴタゴタを見ても、関係各所間にもう少し風通しの良い関係が出来上がっていれば、ああまで現場の実情を無視した馬鹿げた話が出ずに済んでいたのではないかという気がします。
将来を見据えた医療行政改革だとか大きな話もさることながら、まず足許のこうした場でどれだけ意味不明の会議ばかりが開かれているのかということを、長妻大臣をはじめとする議員諸氏はしっかり把握していかなければならないように思いますね。

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