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2009年10月30日 (金)

岩手県立病院再編問題 あれから半年が過ぎました

本日まずはこちらの記事をご紹介しましょう。

「医療へのアクセス」でシンポ(2009年10月9日CBニュース)

 財団法人医療科学研究所は10月9日、提供と保障の面から医療へのアクセスに関する問題を考えようと、「医療へのアクセス―その実態と対応」と題した第 19回シンポジウムを東京都内で開いた。シンポジウムでは、日本福祉大社会福祉学部の近藤克則教授による基調講演の後、阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長)ら3人のシンポジストが、医療へのアクセスに関してそれぞれの視点で講演した。

 近藤教授は基調講演の冒頭、シンポジウムの背景と狙いを説明。健康保険証があればどの医療機関でも受診できる「フリーアクセス」を日本の医療の長所とする一方で、医師の偏在や病院の閉鎖など医療を提供する側の問題や、無保険者の存在や医療費の自己負担の増加といった医療保障制度に関する問題など、医療へのアクセスをめぐってさまざまな問題が生じていると指摘した。
 その上で、▽医療提供面▽医療保障面▽海外での医療の公平への対応―の3つの側面から医療アクセス問題を考え、原因や対応策を探りたいと述べた。

 3人のシンポジストによる講演のうち、貧困や社会保障の分野に詳しい阿部氏は、「医療保障面におけるアクセス問題」と題して、「国民皆保険」の崩壊や受診抑制などを現在の医療保障に関する問題点として指摘した。
 阿部氏は、無保険状態の世帯が33万世帯(全世帯の0.7%)、国民健康保険料の滞納世帯数が382万世帯(同0.8%)であることなどを指摘し、「国民皆保険」が崩壊していると主張。また、家計支出が少ない世帯では医療費が低いことや、総家計支出が同じでも家計が苦しいと考えられる母子世帯の方が医療費の支出が少ないことなどを挙げ、低所得層で受診抑制が行われている可能性を示した。

 シンポジウムの最後に、近藤教授は「政権交代した今、どういう日本にしたいかを考えるチャンスだ」と述べ、医療へのアクセスを考える今後の論点として、求める医療保障や社会保障の水準、財源の負担のあり方などについて検討する必要性を示した。このほか、医師の養成や配置のあり方に関して、「医療界による提言が問われている」とし、「『これなら納得できる』という制度を医師がつくっていくべき」と強調した

医療崩壊という現象が叫ばれる中で、「『これなら納得できる』という制度を医師がつくっていくべき」というのは非常に示唆に富んだコメントだと思いますし、崩壊を続ける現場としても全く同意するしかないところだと思うのですが、問題はその文章の「主語が誰なのか」なんだと思うのですね。
財政赤字に喘ぐ国政担当者が納得できる制度、高い税金を払いながら身近な医療が破綻しつつある国民が納得できる制度、日々の業務に忙殺される最前線奴隷医が納得できる制度、長年地域医療を行ってきた町のお医者さんが納得できる制度などなど、これら全ては全く異なったものであるのは当然であって、並立し得るものかどうかすら明らかではありません。
今まで医療政策決定の場において、日本医師会という団体が「いやそんな制度にしたら”患者が”困るから」なんて業界圧力団体として意味不明の論を張ってきた経緯がありますけれども、まさに医療が冬の時代であるからこそ医師の養成や配置のあり方に関して、医師自身による「医師自身が」納得できる制度の提言が問われているのではないかという気がします。

さて、以前から岩手県立病院問題に関しては当「ぐり研」でも久しく経過を取り上げてきました。

救うべきか、救わざるべきか ~ 全国に広がる公立病院の病根(2)
医療現場にはびこる既得権益
岩手県立病院無床化計画のその後と関連して
再び岩手県と関連する話で
岩手県立病院再編計画 さらにその後
岩手県立病院再編計画、さらに斜め上に疾走中!?
県立病院再編問題で岩手県知事が議場で土下座
岩手県立病院再編計画続報と絡めて
岩手県立病院再編問題続報 誰も何も突っ込まないのか?
岩手県立病院再編問題、ついに無床化決定か?!

岩手県というところは非常に県土が広く人口も地理的に分断された各地域に散らばっており、その各所に県立病院が整備されてきたという経緯から中小県立病院が極めて多数存在してきたという、いわば県全体が僻地医療を行っているような土地柄でした。
元々東北という医者の少ない地域でこうまで分散配置をしているのですから、基幹病院スタッフは人手不足で忙しい診療の合間を縫って遠い病院の応援に出かけたり、僻地の小病院では患者も来ない中であたら医者が囲い込まれていたりといった状況で、こうした労働環境のせいもあってか年々県立病院に勤務する医師数は減少する一方と言った状況であったわけですね。
こんな中で中小病院を無床診療所化するなど整理し、基幹病院に医者を集めるという同県の県立病院再編計画は、もちろん赤字病院を少しでも整理するという財政的な要因もあったにせよ、何より「このままでは県立病院から医者がいなくなる」という医療サイドからの事情が中心となって行われたという非常に興味深い事例であったと思います。

さて、その県立病院再編計画からかれこれ半年が経過し、そろそろその後の検証というものが行われるようになってきましたが、まずはこちらの記事から紹介してみましょう。

無床化半年:地域医療の行方/3 病院間の診療応援 /岩手(2009年10月22日毎日新聞)

◇変わらぬ医師の負担 4月以降も件数増加

 県立高田病院(陸前高田市)の石木幹人院長は、毎週火曜日、住田町の住田地域診療センターにいる。センター唯一の内科医が退職した4月末以降のことだ。「無床化前は住田町に行かなかった」という。病院に戻る前には、同町内にいる末期がん患者宅へ訪問診療へも行く。仕事は増えた。「入院患者も20~30人ぐらいいる。本当はあまり外を出歩きたくないんだが……」と、苦笑した。

 県医療局は、無床化の理由として「医師の過重労働解消」を挙げた。今年3月までは、地域診療センターに基幹病院から医師が派遣(診療応援)され、当直を勤めていた。医師は、休日・夜間も忙殺されていたからだ。

 しかし、県医師支援推進室によれば、今年度の診療応援の件数(8月末)は2595件と、前年度同月の2601件とあまり変わらない。中央と磐井病院は減少したが、1年間で医師が2人増えた遠野病院は35件から144件に、2人減った釜石も71件から96件、高田病院も50件から67件と増えたところが目に付く。

 ただ、応援の実数は、もっと多いとみられる。石木院長のように、住田町に住む高田病院の元入院患者への訪問診療は「応援」に数えられない。かといって、訪問診療をやめるわけにもいかない。末期がん患者の場合、自宅で看(み)取らせてあげたいと、退院させ、訪問診療で治療を続けている事情もある。無床化後、高田病院の入院患者は増え、赤字続きだった同病院の収支は改善した。住田センターで、新たに内科医1人の勤務が内定しているが、医師の多忙さが劇的に解消される見込みがない

 陸前高田市は5月、こうした高田病院を支援し、維持・存続させるため、庁内会議を作った。市立の2診療所や市内の開業医との連携策を探る。県立病院の当直の一部を地元医師会で肩代わりする宮古市の例を想定する。だが、陸前高田市は、開業医と市立診療所の医師を合わせて7人ほどだ。市内の医師団体「松風会」も高齢化のため、医師会機能を手放し親睦(しんぼく)団体に変わった。「医師の絶対数が足りない」。市民生部の清水久也部長が嘆いた。【山口圭一】

常勤医、半年で87人退職 歯止めかからず 岩手県立病院(2009年10月17日河北新報)

 岩手県医療局は16日の県議会決算特別委員会で、県立病院の常勤正規医師の退職者が9月までの半年間で87人に上ることを明らかにした。2008年度1年間分を既に上回っており、退職者増に歯止めがかからない実態が浮き彫りになった。

 87人の内訳は大学の医局人事に伴うのが37人、個人の事情など医局人事以外が27人、定年が3人、後期臨床研修医が20人。総数は07年度の96人には達していないものの、08年度の79人を、半年だけで8人上回ったことになる。

 このうち医局人事以外の退職理由については「開業医志向や都会志向などがあると考えている」と推測した。ただ、医療局は、9月末現在の常勤医総数が452人であることを挙げ、「今年2月に見込んだ449人をわずかに上回っている」と補充などで対応していることも説明した。

 医師不足への対応をめぐっては医療局が今年4月、医師の負担軽減などを理由に5カ所の地域診療センターを無床化にした。県議からは「無床化が医師を引き留めるのに役立ってはいない」と問う声も上がった。

無床化があまり労働環境改善に役立っていない、そして労働環境が改善されない以上は医師退職にも歯止めがかからないと、ここまではあまり状況に変化がないということなのですが、その原因はと実態を見てみますとこれはなかなか厳しい状況のようですね。
本来在宅患者の訪問診療など基幹病院医師ではなく地域の開業医などが担当すべきものだと思いますが、病診連携を図ろうにもここには依頼すべき開業医自体が存在しない(というより、そうした(準)無医地域だからこそ県立病院が不可欠だったのでしょうが)、結果として基幹病院の医師は入院も外来も紹介患者の診療もこなし、なおかつ外へ応援にも出かけるということになります。
開業医志向などと言うと激務に嫌気がさした逃散組が逃げ出したようにも聞こえますけれども、こうした地域ではそもそも開業医自体が足りていないわけですから需要は幾らでもある、それならば病院の余計な雑用的義務から解放されて自分の得意なところに的を絞りたいという「やる気のある医者」すら逃げ出していくという末期的状況にあるのだろうと推察出来るところですよね。

一方で住民の側からすれば今まで近くにあった病院が無床診療所化した、それでは医療サービスが低下するのではと心配になってくるのは当然だろうと思うところで、県当局としてもそうした事態を見越して様々な対策を用意してきたわけですが、どうもこの対策というものも空回りしている気配なのですね。
遠くなった病院への無料送迎、無床化した病院の施設への転換、地域連携の推進など、およそどこの自治体でも自治体病院改革となれば思いつきそうなアイデアが実際にやってみると案外役に立たないものなんだなという、これは壮大な社会実験としても非常に興味深い話ではないかと思います。

県立地域診療センター:無料送迎と夜間・休日の看護師配置、利用者低迷で廃止 /岩手(2009年10月12日毎日新聞)

 ◇県医療局、わずか半年で方向転換--花泉、住田、九戸

 県医療局は12日、花泉(一関市)と住田、九戸の県立地域診療センターで4月に始めた患者や家族の無料送迎、夜間・休日の看護師配置を廃止する。残る紫波、大迫も廃止の予定。いずれもセンターの無床化に伴う激変緩和策で、急病時の対応に不安を抱く住民の理解を得る目的だった。利用の低迷を理由に、わずか半年で方針転換されることになった。

 県医療局管理課によると、各センターに夜間や休日、急病の相談に備えて看護師2人を配置。患者や家族らの足を確保するため、タクシーを手配して基幹病院との間を無料送迎していた。3センターでは13日以降、夜間や休日の電話は基幹病院に転送して病状相談や問い合わせに応じる。送迎体制も見直し、路線バスの無料券を配る。高齢者や体が不自由な人は従来通り、タクシーを使える。

 看護師の配置や無料送迎には、住民の指摘を受け、医療局が計画に盛り込んだ経緯がある。無床化前の説明会などで、「急病時に対応が遅れれば命取りになる」「入院先が遠くなれば、車を運転できない高齢者は見舞いもできない」といった意見が出ていた。

 一方、4月から9月末までの問い合わせは、5センター合わせて1日平均3・4件にとどまり、無料送迎の利用も同1・5人と少なかった。医療局では、看護師も人手不足が続いており、救急搬送を受け入れる他の県立病院での当直勤務に回す狙いもある。

 管理課の大槻英毅総括課長は「各センターには従来通り警備員を置く。病状の相談は、医師がいる基幹病院で受け付けたほうが良い」と理解を求める。

 無床化された九戸地域診療センターがある九戸村の川戸茂男・住民生活課長は「他の医療機関がない村では、夜間・休日は医師不在になる。住民が不安にならないよう配慮してほしい」と話す。【山口圭一】

無床化半年:地域医療の行方/2 施設の民間移管 /岩手(2009年10月21日毎日新聞)

 ◇引受先見つからない 30分で終えた村の打診

 8月25日、九戸村役場に、村内唯一の社会福祉法人「九戸福祉会」の関口誠治理事長らが岩部茂村長らを訪ねた。村から打診を受けていた無床化された県立九戸地域診療センターの空きスペース利用について、関口理事長は答えた。「経営上、難しい」。村も予想した通りの結果。会談は30分ほどで終わった。

 無床化した5センターでは、空きスペースや施設の民間移管などが模索されている。花泉地域診療センターは、一関市内の医療法人白光への移管が、9月に内定した。大迫(花巻市)や紫波(紫波町)でも、地元市町が中心となって検討を開始。県立沼宮内病院(60病床)がある岩手町も、来年度予定の無床化を前に、民間移管を探る動きが出ている。

 九戸村はこうした動きから取り残されている。地域密着型介護老人福祉施設27人▽介護老人保健施設36人▽短期入所生活介護施設27人--。空室となった九戸センター2階を福祉施設に活用した場合、床面積から認められる最大の入所者数を示した医療局の試算だ。だが、九戸福祉会によれば、入所率を100%としても、人件費だけで年間1000万円程度の赤字になるという。同会が運営する折爪荘の野里典美施設長は「新たにスタッフを配置せねばならず、どうしてもコストが合わない」と打ち明ける。

 一方、内定した花泉センターも順風満帆とはいかない。「試算通り収益が得られるのか」「地域医療を任せられる法人なのか」。今月7日の県議会環境福祉委員会で、県議の厳しい指摘が相次いだ。監査報告にある監査人の署名が異なる、社会福祉法人の準備状況を示す書類がずさん……。相次ぐ不備に審議は23日に続行されることになった。

 民間移管を巡る騒がしさを横目に九戸村は9月、九戸センターの維持を第一に掲げた。当直しないことを条件に医師1人が就任し、訪問診療を復活したことや、他に医療機関がないこともある。同村住民生活課の川戸茂男課長は言う。「移管先が撤退すれば無医村になってしまう。ギャンブルはできない」【山口圭一】

無床化半年:地域医療の行方/4 地域包括支援センター /岩手(2009年10月23日毎日新聞)

 ◇医療機関との連携役 入院先探しに追われ

 7月末、住田町地域包括支援センターの主任ケアマネージャー、菅野英子さんに町内の開業医から連絡が入った。「独り暮らしのおじいさんが高熱で受診した」。89歳の男性宅を訪ねると38・7度の熱だった。3日目も熱が下がらず、肺炎の疑いもあった。菅野さんは一日3、4回は、様子を見に行きつつ入院先を探した。ある県立病院は「異常はない」とし、入院できなかった。何とか4日目に陸前高田市の県立高田病院への入院できた。「無床化前ならば、住田地域診療センターに入院できたはずなのに」。菅野さんが嘆いた。

 無床化センターのある地域では、高齢者福祉の差配役である地域包括支援センターが、医療機関との連携役として負担が増えた。

 住田町では、介護度4、5の寝たきり高齢者は60~70人、病気で日常生活に介助が必要な虚弱高齢者は200人前後いる。住田地域診療センターは4月末に内科医が不在となり、4~9月の訪問診療件数は前年同期に比べ半減した。町外の医療機関に運ぶ機会も増え、「医療機関探しに追われている」と菅野さんは言う。

 同じく無床化された大迫地域診療センターがある花巻市大迫町では、地域包括支援センターを兼ねる特別養護老人ホーム「桐の里」が、施設職員も動員して入所者らの入院に備える。介護利用者の入院先は遠野、盛岡、八幡平、北上市まで広がった。近い県立遠野病院とは週3回程度、情報交換も進める。桐の里の佐藤忠正理事は「情報を足で稼いでいる段階だ」と語る。

 一方、高田病院は陸前高田市地域包括支援センターと協力し、07年度から「地域連携パス」を導入した。介護利用者が入院する際、担当するケアマネジャーが、食事や排せつなど入院前の生活状況や注意事項をパスに記し、病院に提出。退院時は、病院が入院時の病状などを加えて返す。病院は治療に生かし、介護側も、退院後に患者のケアがしやすくなった。

 だが、他の基幹病院で導入が進んでいるわけではない。高田病院の石木幹人院長は「地域全体で取り組もうと動く医師が出てこない」とため息をついた。【山口圭一】

今回の岩手の事例を通じて興味深いことは、地域住民が求める医療というものは結局何であったか、実際にこうして医療が身近な場所からなくなってみて初めて判ったという部分が多々あったのではないかということだと思いますね。
全県離島医療という、ある意味で岩手以上に究極の僻地医療を実践している沖縄では、最近専門医の退職などで血液内科をはじめとする癌・悪性腫瘍といった高度医療が非常に行いづらくなってきたとして「どこにいても高度医療を」と求める声が高まっているそうですけれども、ある意味でこれは国民皆保険制度の弊害とも言うべきものではないかと言う気がします。
全国どこでも同一料金同一内容の医療をというタテマエでお金を集めて医療を行っているわけですから、それは料金が同じなのに内容に差がつけば「詐欺だ!」と言いたくなるのは当然だと思いますが、現実問題として僻地で日曜深夜にコンビニに早売り週刊誌を並べろというのは無理ですし、離島に宅配便を送れば別料金を取られた挙げ句に翌日配送などあり得ないのも事実なのです。

花巻市:大迫診療センターの今後、住民代表と意見交換 /岩手(2009年10月27日毎日新聞)

 花巻市は26日、4月から入院が休止された県立大迫地域診療センターの在り方を考える地元住民代表との意見交換会を、同市大迫町の大迫交流活性化センターで開いた。住民は「外来、入院、救急の3機能は最低条件だ」として、市の運営による入院対応復活を求めた

 意見交換会には町内の各地区代表5人が参加した。佐々木稔副市長は「ノウハウのない市が医師を確保するのは難しく、市で運営するのはかなりハードルが高くなる」と説明した。指定管理者制度の導入についても、厳しいとの認識を示した。

 だが、住民からは「市立病院が、直営を検討し、だめなら指定管理者でもいい。民間移管は最後の手段だ。早急な結論は出してほしくない」と慎重に対応するよう要望した。

 意見交換会は11月上旬にかけて、約20人の住民代表と計4回に分けて実施される。【湯浅聖一】

全国津々浦々まで24時間365日いつでも救急も入院もという医療を保証することは今の時代既に出来なくなっていて、今後住民が「いや適当な形ばかりのなんちゃって救急でもいいから」と要求水準を下げようともJBM的にも無理だし、何より担当する医者自身が怖くてそんなことは出来ないと言い張るでしょう(聴診器一本で自信を持って救急ができる医者が今どきどのくらいいるでしょうか)。
どこでも同じ医療をという幻想が通用しなくなった原因と責任が医療業界の外側にあるのだとしても、では地域でどこまでの医療を行い得るのかという議論に関して、やはり現地住民の要求を基準にやっていくのはもう無理であって、医療をやる側の責任として現時点で「ここまでなら我々は責任を持って仕事を出来ます。それ以上は無理です」という基準を打ち出さざるを得ないと思いますね。
そして住民側もお金を出している側なんですからもちろん「あれが欲しい、これは必要だ」と言う自由は確かにある、ただしそれは医療の現場ではなく行政なりに言うべき話であって、何より医療を受ける権利を主張した挙げ句に最終的には地域の医療自体が消えてしまうことになるとすれば、やはり出していく要求というものを再考していかなければならない。

要求水準を下げてでも地域に何らかの医療を残す道を選ぶのか、それとも「全国水準並みの医療」という看板を掲げたまま無医地区に転落し遠い病院に通うのか、いずれかを選ぶのもまた自由だと言うことですが、その判断の大前提として医療側からの情報提供が不可欠なのは当然です。
医療サイドも悪いなと思うのは、今まで「この条件までだったらある程度永続的な医療サービスを提供できます」という明確な条件を住民に定時してこなかった、あるいは一部の異常にストレス耐性の高い医者に合わせて条件を設定してしまっていた、そしてただ黙って過負荷で働き続けた挙げ句にある日ぷっつり切れて立ち去っていった、その点は大いに反省し早急に改善すべきでしょう。
そうであるからこそ当たり前の善意と良識をもっているごく普通の医者であっても無理なく末永く続けられる水準の医療というものはどのレベルにあるのか、根性論で今この瞬間を乗り切ればという話ではないだけに、この面では一刻も早く現場のコンセンサスを得た「これなら納得できるという制度」を医者の側から打ち出す責任があると思いますね。

同一料金同一医療という国民皆保険の実態が骨抜きになったのは誰の責任なんだとか、国民が等しく平等に医療を受ける権利をどう考えているんだといった高尚な議論のはるか手前に、そういうもっと現実的かつ緊急に行うべき議論が先にあるべきだと思います。

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