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2009年10月 9日 (金)

急転回する医療行政 しかし大丈夫なのか…?

すでにあちこちで報道されていることですが、民主党新政権発足に伴い前政権下で決まった補正予算の類があちこちで見直されています。
それ自体は政権公約として以前から言われていたことでしたので当然ではあるのですが、問題は予算という既得権を絶対に手放したがらない役所を相手にどこを削るのかということですよね。
本来的には費用対効果が乏しいであるとか、昨今の状況下では不要不急の事業であるとかいったところから削っていくのが筋なのでしょうが、どうも見ていますと単に削りやすい(あるいは、背後の利権関係が少ない?)ところから削っているのではないかという気がしないでもありません。

地域医療基金の見直しを検討(2009年10月8日NHK)

厚生労働省は、政府の行政刷新会議から今年度の補正予算をさらに見直すよう指示されたのを受けて、地域の医療機関で医師を確保するためなどに設けた基金の一部を執行停止にすることを検討することになりました。

今年度の補正予算をめぐって、政府の行政刷新会議は7日、執行を停止する予算の総額をさらに上積みするため、各省庁に対し、あらためて検討し、9日までに回答するよう指示しました。これを受けて厚生労働省は、地域の医療機関で医師を確保したり、新生児の集中治療室などの医療設備を整備したりするために設けた「地域医療再生基金」は、ほかの政策に比べて緊急を要するものではないとして、一部を執行停止にすることを検討することになりました。ただ、省内には、地域の医療態勢の維持に悪影響が出かねないとして、来年度必要な予算を確保できるめどがつかない現状では執行を停止すべきではないという意見もあり、さらに調整を進めることにしています。

未承認薬・未承認適応の開発支援が急ブレーキ(2009年10月7日CBニュース)

 今年度補正予算・基金の執行停止を受け、厚生労働省の未承認薬・未承認適応問題の解消に向けた対策は、大幅な見直しを迫られることになった。厚労省は今年度補正予算で、開発費を援助する「未承認薬等開発支援事業」として753億円を獲得していたが、政治主導による見直しで100億円まで削り込まれた。

 同事業は、がんや小児用など海外で承認されているものの、国内で開発が進んでいない未承認薬、未承認適応の治験実施費用を助成することなどが目的。日本製薬工業協会(製薬協)の未承認薬等開発支援センターが管理する「未承認薬・新型インフルエンザ等対策基金」2074億円のうち、753億円を占めていた。

 既に10月1日の厚労省の「未承認薬使用問題検討会議」では、12品目の開発に753億円の一部を充当することを決定。さらに未承認適応問題の解消に向けては、厚労省が6月から8月にかけて学会や患者団体などから要望を募り、集まった約370件について関係企業に開発の意志などを確認している最中だった。

 今回の大幅減額により、未承認適応の開発支援は厳しくなり、厚労省医政局研究開発振興課の佐藤岳幸・治験推進室長は10月7日に東京都内で開かれた製薬協主催のセミナーで「未承認適応に関する要望を整理して現状を正しく理解することは決して無駄な作業ではなく、行政として何ができるか考える材料に活用したい。この問題の解消に向けた取り組みは今回で終わりというわけではない」と述べた。

適応外使用薬の開発支援653億円が執行停止‐補正予算見直しで(2009年10月7日薬事日報)

 長妻昭厚生労働相は6日、2009年度第一次補正予算の厚生労働省分の執行停止・返納見込み額を公表した。新薬開発支援事業に係る基金事業753億円については、未承認薬の開発支援100億円は確保したものの、適応外使用薬の開発支援分653億円は執行停止となった。

 厚労省分の執行停止総額は4359億円で、内訳は▽緊急人材育成・就職支援基金3534億円▽未承認薬・新型インフルエンザ等対策基金679億円▽独立行政法人・国立大学法人及び官庁の施設整備費6億円▽その他141億円――となっている。

 未承認薬・新型インフルエンザ等対策基金については、適応外使用薬の開発支援分のほか、医薬品医療機器総合機構の審査員増員など、医薬品等の審査迅速化に充てる42億円のうち25億円が執行停止となる。

医療機関や薬局に対するレセプトオンライン化支援事業は盛り込まれなかった。ただ、鳩山由起夫首相は各大臣に対し”さらなる組み替え再配分”を求めており、閣議決定までには新たな”切り込み”が行われる可能性がある。

まあ削った予算額を上積みしていくことが目的化している、なんてこともないんだろうとは思いますが、何をもって「ほかの政策に比べて緊急を要するものではない」とするかはまた異論のあるところでしょうね。
地域医療再生基金に関しては既に先頃足立政務官より、地域を限定して補助するのではなく診療報酬か税金を投入して全体のベースアップを図るべきというコメントが出ていたわけですから、ある程度予定されていたところかなと思いますが、このところ患者団体からもっと早く!とせっつかれている未承認薬使用に関わる費用を削ってしまうとは思い切りましたね。
さらに気になるのはこれらを削った一方で、全く急ぎでも何でもないとしか思えない上に以前から医療現場の反対論が根強く裁判沙汰にまでなっているレセプトオンライン化は残ったようなのですが、これはいったいどういう方針のもとに決められた話なのでしょうか?

さて、ここで急に話は変わりますが、このところ民主党新政権下で医療行政からの医師会外しということが盛んに画策されているということは以前にもお伝えしました通りです。
一部報道によれば既に長妻大臣は中医協から医師会出身の委員を外すということを決めたとも言いますが、要するに民主党政権としては医師会との関係修復よりも完全な縁切りを選択したということなのだと思いますね。

そこで考えてみるべきことなのですが、例えば前述の予算温存が言われているレセプトオンライン化関連の事業については、日本医師会が義務化に反対の声明を出していることが知られています。
一方で予算削減が決まった地域医療再生基金に関しては地域医療にとっては非常に大きな額のお金が動く話であって、それに関連して例えばこのような報道が出ているわけなのですね。

地域医療再生基金 県と県医師会が現場の要望を"封殺" 千葉(2009年9月18日ロハス・メディカル)

 今年度補正予算に総額3100億円が計上され箇所付け待ちになっている地域医療再生基金に関して、千葉県医師会が125億円の獲得を目指すことを理由に、「敢えて各二次医療圏に要望ならびに計画を出していただくことは控える」との文書を、総選挙投票2日前の先月28日に会員に送っていたことが分かった。「インチキだ」との強い批判が現場から出ている。(川口恭)

千葉県医師会がファクスで送った文書はこちら

 医療再生計画を策定する際には「管内のすべての二次医療圏における中核的な医療機関の意見を聴いた上で地域医療再生計画において対象とする地域を選定」するよう、厚生労働省から通知が出ていた。これを意図的にサボタージュしたもので、千葉県も県医師会の確信的共犯だったと言える。しかも県医師会がファクスで送った文章中では2度に渡って直後に行われる総選挙に言及しており、もし旧与党が政権を守った場合には、旧与党候補が議席を取った所に箇所付けすると暗に匂わせたものでないかと見る向きもある。

 計画提出の〆切は10月16日とまだ先のことだが、現段階まで現場からの意見聴取をしておらず、しかもそれを堂々とカミングアウトしてしまった千葉県に100億円が箇所付けされる可能性の限りなく低いことだけは間違いない。ただし、地域医療再生基金そのものが民主党政権で執行停止される可能性もまだ残っている。

千葉県医師会のやっていることがどうかという話はさておき、このように見ていきますと「医師会が反対しているからやってやろう」「医師会が関わっているから中止しよう」と、ある意味非常に分かりやすい構図になっているようにも思えてくるのは自分だけでしょうか?
まあ予算に関してそこまで子供じみた意趣返しをしているかどうかはともかくとしても、この政権と医師会との決別路線がかなり確定的となっていることを象徴するような出来事が、思いがけない方向から出てきていたりするのですね。

接種開始、ずれ込む見通し=医師会への協力依頼遅れる-厚労省がミス・新型インフル(2009年10月8日時事通信)

 厚生労働省が19日から開始を予定する新型インフルエンザ用ワクチンの接種が、一部の都道府県でずれ込む見通しの高いことが8日、分かった。同省による日本医師会への協力依頼が遅れたのが原因で、自治体側は対応に苦慮している。
 同省は都道府県の担当者を集めた2日の会議で、接種に向けたスケジュールを公表。9日にワクチンを初出荷し、19日の週から医療従事者への接種を始めるとした。これに先立ち、7日までに接種を行う医療機関を選定するよう求めた。
 医療機関の選定は、地域単位の医師会を通じて行う計画だが、国の要請が医師会側に伝わっていなかったことが判明。自治体の指摘を受け、同省は6日夜になって文書で協力依頼を行った。
 同省は初出荷のワクチン納入を希望する場合、接種の10日前までに都道府県へ登録するよう医療機関に求めている。
 しかし、依頼が遅れた医師会に配慮し、選定期限を週明けに延ばした自治体もあり、都市部を中心に接種の開始を遅らせる動きも出ている。 

旧政権であったならばこういうことは良い悪いは別としてまず医師会を通しておくのが普通でしたから、こういう齟齬はまず起こり得なかったことではないかと思いますが、これは新政権の医師会決別路線が思わぬ落とし穴にはまったということなのでしょうか?
まさか「医師会などに連絡などしてやるものか」とわざとやった、なんてこともないのでしょうけれども、少なくとも大臣以下の医師会に対する感情温度の低下が役人の事務的な手続きを行う上にも何かしら影響を及ぼしていただろうとは想像に難くないですし、こういう状況では例え非公式に話が漏れ聞こえていたとしても医師会としても意固地に動かない可能性が高そうです。
民主党政権も医師会外しを完遂するつもりであれば彼らに頼らず国と現場を結ぶシステムを組み上げていかなければならないのは当然ですが、外野から見ていても全く組織がまわっていなさそうな現状で、もともと実務的運用面に疎いとも言われる彼ら民主党政権担当者がそこに気がつくのかどうか、そしてそれと助言してやる親切な?官僚がいるのかどうかですよね。

まあしかし、切り捨てられて立ち去る者もあれば新たに権力に擦り寄る者もいるということでしょうか、最後にこちら思わず笑ってしまった記事を紹介しておきましょう。
それにしても、こういう病院の不利益となることをもっと厳しくやれと国に説いてまわるような御仁が当の病院の権益を代表する団体のトップだと言うのですから、つくづく「医療の常識は世間の非常識」とは良く言ったものなんだろうなとは思いますね(苦笑)。

診療報酬の"裏技"を告発する病院団体(2009年10月8日ロハス・メディカル)

 「ちょっと複雑で、我々自身も知らなかったポイント」─。診療報酬が高くなるように請求する"裏技"を病院団体が告発して、厚生労働省が調査に乗り出すという奇妙なことが起きている。医療現場の改善につながるような政策を提言すべき病院団体がまるで警察犬のように嗅ぎ回り、厚労省の取り締まりに手を貸している。(新井裕充)

 問題となったのは、ケアミックス病院の再転棟。10月5日に開かれた中医協のDPC評価分科会で、小山信彌分科会長代理が「ケアミックスの病院は、何が問題なのか。何が一番、こういうようなこと(再転棟)をさせているか」と前置きした上で次のように告発した。
 「慢性療養病床に入っている患者さんが一般病棟に戻る場合に、戻った日から換算して3日間遡って出来高になる。これをあまり利用されてしまうと、本来の DPCが駄目になっちゃうので、提案ですけれども、もし、出来高にするんじゃなくて、DPC病棟に転棟するなら、3日間の算定を出来高ではなくてDPC算定にするということが必要。これがいろいろな所に知れ渡ってしまうと、全部そうなっちゃうので、DPCそのものの根幹が揺らいでしまう」

 この発言に、他の委員らは驚いたような表情でざわつき、厚労省の担当者らも慌てた様子で分厚いバインダーをめくった
 厚労省保険局医療課の長谷川学課長補佐は「(転棟)3日前までの入院に関してはまだ確認できていないが、一応、3日前までの間は、『入院基本料 E』(750点)という療養病床の(包括)点数ですが、『一番低い点数を算定することができる』という記載になっておりまして、ちょっと確認させていただければと思っております」と答え、その場をしのいだ。

 会議中、医療課の職員が資料を調べていたようだったが、結局その場では解決できず、長谷川補佐が「次回までに、ある程度調べさせていただければと思います」と正式な回答を保留。「回復期リハビリテーション、療養型病床、認知症などへの転棟に関して、支払上、何らかの問題がないか、ちょっと確認して、後日ご報告いたします」とした。西岡清分科会長も、「ちょっと複雑で、たぶん我々自身も知らなかったポイントだと思う」と述べた。

 厚労省が知らなかった"裏技"ともいえる請求方法を暴露して厚労省に調査させる─。小山分科会長代理は東邦大医療センター大森病院の心臓血管外科部長で、今年3月、日本病院会など11の病院団体が加盟する日本病院団体協議会のトップ(議長)に就任。9月からは、同分科会で「分科会長代理」を務めている。

 より高い診療報酬を得るために包括払いと出来高払いを使い分けることに対しては賛否両論がある。診療報酬で正当に評価されていない"奉仕活動"が数多くあると言われる中、一部の点数を高く取ったことをことさら取り上げて目くじらを立てることを疑問視する声もある
 診療報酬は極めて複雑であるためグレーゾーンも多く存在する。その隙間を狙う請求方法をめぐって、医療機関と厚労省との間でイタチごっこを繰り返す。
 厚労省が請求上の問題点を指摘するなら、役所という立場ゆえ理解もできる。しかし、病院団体の関係者が"仲間を売る"ような告発をして厚労省に知恵を付けているため、病院団体のような「中間団体」の存在が医療界の自律やスキルミックスを妨げているとの指摘もある。
(以下略)

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