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2009年10月29日 (木)

民主党政権の医師会外しは意外なほど世間の注目を集めている

…ようです。
前回お伝えしました中医協からの日本医師会(以下、日医)執行部枠を撤廃した民主党政権の人事に関して主要メディアが一斉に取り上げていますが、しかし今さらながらにこうも各紙がそろって医療ネタ、その中でも更にマイナーなこういう話を取り上げるというのはちょっとした壮観でしょうかね。
本日まずはやはり異例の事態だったのだなと感じさせる、こちらの記事を紹介してみましょう。

中医協人事で、全国紙が一斉に社説(2009年10月28日CBニュース)

 日本医師会(日医)執行部の推薦枠がなくなった中央社会保険医療協議会(中医協)の人事について、全国紙朝刊は10月28日、一斉に社説を掲載した。「(医療機関の診療報酬増額の)公約実現に向けて一歩を踏み出した」(朝日)、「政権交代を改めて印象づける人事」(毎日)など、長妻昭厚生労働相の決断を評価する論調が多かった一方、先の衆院選で民主党支持に回った茨城県医師会の理事らを新委員に起用したことから、「論功行賞」(日経、産経)とならないようクギを刺す主張も見られた。中医協人事をめぐって、全国紙が一斉に社説を掲載するのは極めて異例だ。
(以下略)

長らく存在感を失ってフェードアウトしつつあった日医という組織が、その歴史の最後に放った光芒ということに後世評される事件だったのかも知れませんが、確かに日医という組織がこういう「極めて異例」の扱いを受けるということも久しくなかったことです。
これも純然たる医療行政の問題というよりは民主党政権となって行われた最も判りやすい自民党路線からの方針転換の象徴として扱われているようなところがあって、各紙の論調も現政権に対するスタンスとともにそのあたりを割り引いて読んでいく必要があるかと思うのですが、基本的に「日医外しは自民党の負の遺産の精算だ。民主党はよくやった」という論調で押し出してきているように見えるのが朝日と毎日でしょうか。

中医協人事―医療の抜本改革につなげ(2009年10月28日朝日新聞)

 医療行為や薬の値段を決めてきた中央社会保険医療協議会の人事を長妻昭厚生労働相が発表した。長妻氏は「医療崩壊を食い止める」ために診療報酬を見直すとし、その考えに沿って委員を選んだと会見で述べた。
 民主党は政権公約で、医療再生のために医師の増員とともに「医療機関の診療報酬の増額」を掲げた。開業医に比べて病院勤務の医師らの待遇の改善が遅れている、との認識だ。鳩山政権はこの公約実現に向けて一歩を踏み出したことになる。
 来春に控えた報酬改定では、従来の配分方式を改め、地域の医療を支える病院に大胆に上積みすることが期待される。その意味で、中医協の人事も大切なことだ。
 今回の人事では、これまで3人いた日本医師会の執行部メンバーが外され、代わりに茨城県と京都府の医師会幹部2人と大学医学部長1人が入る。新委員はいずれも日医の推薦を受けていない。
 日医をはじめ関連団体が推薦した人が委員に就く慣例だったが、政権交代で一変した。医師委員5人のうち病院を代表する医師が3人になったことも大きな変化だ。
 開業医の意見が強く反映される日医の影響力をそぐ。そこに狙いがあると思われる。
 報酬改定については、自民党を支持してきた日医が強い力を持ち続けた。その結果、開業医に比べて病院の再診料は低く抑えられてきた。
 近年は医師不足や救急患者の受け入れ能力の低下など、病院の厳しい実態が明らかになるにつれ、救急医療の報酬を増やすといった病院経営への配慮がなされたが、根本解決には遠い。今後の改定が注目されるところだ。
 問題は、財源をどうするかである。長妻氏は診療報酬全体を増やす意向を示しているが、今回は病院の勤務医などに手厚く配分する一方で開業医にもある程度は上積みする、ということが可能かどうか。
 実際には、病院経営を助けるために開業医の再診料を引き下げられるかが問われるのではないか。
 報酬を考える上で負担のあり方をめぐる論議も避けて通れない。現在の仕組みでは、報酬を上げると患者の負担や税、保険料もかさむ。厳しい不況の中で患者にも負担増を求めることができるのか。さまざまな工夫が検討されなくてはならない。
 見直しが必要なのは医師の報酬に限らない。技師など高い技術をもつ医療従事者を含めて病院がきちんと評価され、それに見合う報酬を受けるようにするための改革が求められる。
 中医協人事は手順のひとつであり、医療再生に結びつけなくては意味がないことを長妻氏は肝に銘じてほしい。

日医外す中医協 医療再構築の転機に(2009年10月28日毎日新聞)

 医療行為や薬の価格である診療報酬を決める中央社会保険医療協議会(中医協)から日本医師会(日医)の代表委員が外されることになった。自民党を歴史的に支持してきた開業医の団体で診療報酬改定に強い影響力を握ってきたのが日医だ。自民党による族議員政治のシンボル的存在でもあっただけに、政権交代を改めて印象づける人事といえる。
 表向きの理由は病院勤務医の待遇改善である。激務の割に報酬が少ない勤務医は疲弊しており、病院を辞めて開業に転じる人が増えている。その一方で医師不足に悩む病院は診療科の閉鎖や廃院を余儀なくされている。厚生労働省は前回(08年度)の診療報酬改定で、開業医に比べて低い勤務医の再診料をアップすることを目指したが、日医が開業医の報酬ダウンに抵抗し、中途半端な改定に終わった。このため、民主党は来年度の診療報酬改定に向け、日医の影響力の排除を図ったといわれる。
 これまでの日医の推薦枠には茨城県医師会理事、京都府医師会副会長、山形大医学部長が任命される。今回の衆院選で茨城県医師会の政治団体は民主党を支持し、京都府医師会も一部自民離れをするなど日医執行部と距離を置いている。自民党政権下で診療報酬が4回連続マイナス改定されたことへの反発からだった。次の日医会長選には茨城県医師会長が立候補することも表明している。中医協人事の真のねらいが「自民党の支持基盤を覆すため」「日医への報復」とも言われるのはそのためだ。
 いずれにせよ、国民にとっては医療崩壊に歯止めをかけることが何よりも重要だ。勤務医や産科、小児科などに手厚い診療報酬の改定に向けて論議してもらいたい。ただ、医師不足は診療報酬だけでなく、新医師臨床研修制度によって都市部の総合病院に医学部卒業生が集中し、若い医師が足りなくなった大学病院が地方の病院から派遣医を呼び戻したことが大きいとも言われている。
 日医枠に新たに任命される3人は開業医を主力とする地方の医師会や大学医局が出身母体だが、中医協の場でそれぞれの団体の権益の主張に徹するのでは、日医に代わる圧力団体が登場するだけのことになる。代表委員の入れ替えだけでなく、利害関係者が集まって診療報酬を決める中医協のあり方についても検討すべきかもしれない。
 急速な高齢化に伴い医療費は毎年1兆円ずつ膨張している。限られた財源の中で、高齢者医療をどうするのか、大学病院の専門医療と身近な医療機関による総合診療の役割分担、在宅医療の拡充などについて論議し、国民が安心できる医療の再構築に努めてほしい。

「日医=開業医の代弁者」であり「勤務医偏重に軸足を移すために抵抗勢力たる日医外しは当然」という朝日の視点はさらに一歩進んで、開業医の再診料は引き下げろとまで踏み込んでいますけれども、相変わらず病院への報酬増と勤務医への報酬増を混同しているかのような論調が見られるあたり、まあ朝日ならこんなものかなという内容ではあります。
自民党支持団体である日医外しは当然というスタンスで共通している朝日と毎日を比べて興味深いのは、朝日はどうやら医療費は増額ではなく配分の問題として決着したいらしく、今は国民の負担増となっても医療を優先すべき時期であると言いたげな毎日とはいささか方向性が異なるのではないかと感じられるところですかね。
このあたり、医療崩壊という現象の実際を誰よりも熟知しているだろう(笑)毎日新聞の方がやや医療の現状に対する危機感が勝っているところなのかと思われますけれども、それ以上に興味深いのは基本的に「社会的弱者の味方」というスタンスを取りたがる朝日にとって医療というものは未だ弱者扱いされるに値しないんだなと再認識させられたことでしょうか(苦笑)。

しかし今さらの素朴な疑問なんですが、日医が開業医の利権団体であるという主張は確かに否定はし難いとことだと思いますけれども、しかし中医協という場が開業医優先の姿勢であったとまで言われると、それなら新規開業など自殺行為で大赤字を抱え込んで自己破産まっしぐらとまで言われている今の開業医の境遇は何なのかという疑問は残りますよね。
日医を外せ、開業医はもっと報酬を削れと主張されるのは良いのですが、こういう路線で世の中統一されてきますとさすがにこれは開業という奴隷勤務医の逃げ道を塞ぐためにどうやっても儲けが出ない状態にまで開業医を締め付けるという国策なのかと勘ぐりたくもなってくるのですけれども(苦笑)。
このあたりは医師強制配置論者の動向とも併せて、今後の各紙の論調を見ていくと面白いのかも知れませんね。

これら革新系二紙が民主党政権の政策には総じて好意的であろうとは予想されたところですが、対していささか批判的な論調をかかげているのが他紙の社説です。
東京・中日新聞および日経の論調は、今回の人事が医療行政よりも報復人事・論功行賞優先ではないかという疑問をテーマにしているようですね。

中医協人事 多様な声を反映させよ(2009年10月28日東京・中日新聞)

 診療報酬を決める中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)における日本医師会の影響力を弱めることには異論はない。だが、人事が恣意(しい)的にならないように透明なルールが必要だ。
 中医協委員の人事で長妻昭厚労相は、日医が推薦する三人の委員の再任を拒否し、代わりに地方医師会から二人、大学病院から一人を任命することを決めた。その理由について厚労相は、病院勤務医の待遇改善や疲弊した地域医療の再生の担い手の声を反映させることなどを挙げた。
 中医協の最大の任務は、個々の医療行為や薬剤費などの具体的な価格(診療報酬)を決めることである。委員は診療側、健康保険組合連合会など医療費の支払い側、公益委員の三者構成となっているが、問題は、診療側の中で日医の発言力が強すぎることだ。
 以前は診療側委員八人のうち歯科医師二人、薬剤師一人を除く医師五人はすべて日医推薦のため、開業医の立場を尊重し病院の主張が反映されにくいとの批判が強かった。二〇〇四年に発覚した中医協汚職事件をきっかけに委員の選任方法の問題が指摘され、支払い側と同様に診療側も委員を一人減らして七人とし、医師五人のうち二人は病院団体が推薦した医師が任命されることになったが、開業医優先の姿勢は変わらなかった。
 現在の医療崩壊は、激務を強いられる病院勤務医が次々と退職していくことが大きな原因とされる。とりわけ地方では深刻な医師不足を招いている。医療崩壊を防ぐには、勤務医の待遇改善を図る必要があり、開業医重視の診療報酬体系を改めなければならないが、日医の反対に遭って配分の見直しはなかなかできなかった。
 今回の人事は日医の影響力を排除し、勤務医に手厚く報いようというのが狙いとみられる。
 だが、新たに任命された委員は先の衆院選で民主党候補を支持した茨城県医師会と日医の現執行部に距離を置く京都府医師会の医師で、論功行賞と見られても仕方がない。どの開業医、勤務医も納得できるだけの透明性の高い公平な選任を行うためには明確なルールを設けなければならない
 医療を取り巻く状況は変化し、医師だけで医療が成り立たず、チーム医療の重要性が強調されるようになっている。今後は、看護師など他の医療職にも委員への道を開くなど、医療者全員の声が適切に反映されるように委員構成を抜本的に見直すことも課題だ。

患者本位の中医協に生まれ変わるか(2009年10月28日日本経済新聞)

 診療報酬の単価や配分を決める厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)の新委員を長妻昭厚労相が内定した。医療界代表は自民党の有力支持母体だった日本医師会(日医)の執行部が推した人を外し、大学の医学部長や地方医師会の幹部に入れ替える。
 医療政策が自民党政権時代とどう変わるかは即断できないが、病院に勤める専門医より診療所に手厚いといわれる診療報酬の配分を見直すきっかけになる可能性はある。厚労相は患者の立場を第一に議論する中医協に再生させてほしい。
 中医協は、健康保険組合などの代表7人、医療界などの代表7人、公益代表と称される学者6人の計20人と、専門委員で構成する。
 旧政権時代、医療界代表のうち3人は日医の推薦者を任命していた。長妻氏は日医の唐沢祥人会長に、2人は京都府医師会副会長と茨城県医師会理事、残る1人は山形大医学部長を充てると伝えた。
 日医は16万人の医師で構成する。半数は病院勤務医だが執行部は診療所の経営者、つまり開業医の利益を重視する傾向が強いといわれる。それもあって、夜勤が続くなど厳しい労働環境にさらされている専門医に報いる診療報酬体系への改革が思うように進まなかった。日医の推薦者を漫然と委員に就けていたのを政治主導で改める意義は小さくない。
 来年度の診療報酬改定では専門医をはじめ、医師の偏在が顕著な産科や小児科、外科などに診療報酬を手厚く配分すべきだ。それは病院の専門医を頼りにせざるを得ない重篤な患者の利益になる。新生中医協はその方向で議論を深めてほしい。
 もっとも両府県の医師会幹部が適任かどうかを判断するのは早計だ。衆院選で茨城県医師会は民主党候補を全面支援した。京都府医師会も同党との親密度が高い。論功行賞でこの人事を決めたのなら論外だ。
 茨城県医師会長は来春の日医会長選に立候補する。仮に当選すれば政権党の支持基盤という日医の機能は変わらない可能性が強い。中医協の議論にも新執行部の意向が反映される。その関係が行き過ぎれば患者の利益は二の次になる心配がある。
 そうしないためにも長妻氏は医療政策への理解を深めてほしい。同相は混合診療の原則禁止を追認した東京高裁判決が妥当だと表明した。またレセプト(診療報酬明細書)電子請求の義務化に例外を認める。ともに一部の医療関係者の主張に沿う。支持基盤だけをみていては患者や納税者のための医療は実現できない

一部の利益を代弁する日医外しは当然という論調は共通ですが、その一方で東京・中日は勤務医ら病院スタッフの、日経は国民の代弁者が必要であるとも取れる論調であるのはなんだかなあとも感じられるところですがね(苦笑)。
何度も言うようですが、医師一人スタッフ数人という零細開業医であれば儲けの配分すなわち医師の取り分は診療報酬でかなり確定してくるかも知れませんけれども、病院の半数が赤字といわれる状況で病院への報酬を上げたところで勤務医が報いられるという保証など全く存在しないわけなんですが、どうも各紙ともそのあたりを(故意に?)混同して語っている気配ですよね。
東京・中日新聞では医師のみならず他のスタッフの声も反映をと主張されますけれども、どの職種であれ働いた人々には適切に報いるべきであると言うのであれば、ドクターフィーの導入など個々のスタッフを直接評価するシステムの導入もセットで議論すべきだと思うのですが、このあたりにかねて消極的なのが厚労省で、民主党政権でここらが今後どう動くかも要注目でしょうか。

全ての医療従事者に配慮をという東京・中日新聞に対して日経は患者の立場を前面に押し出した格好ですが、患者の立場を第一にと言うなら給付はより手厚く、個人負担はより薄くことで必然的に保険者たる企業の皆様方により多くのご負担をいただく形になるかと思うのですが、日経のスタンス的にそのあたりどうなんでしょうね?(苦笑)
また少し面白いなと思ったのは日経はやたらと専門医、専門医と連呼していますが(単に開業医=プライマリケア医に対して病院にいる医者=専門医と誤解している懸念もありますけれども)、全体の論調を見ても地方の医師不足、医療崩壊を強調する毎日や東京・中日とはやや目指す医療像が異なって医師集約化を目指してきた厚労省に近いのかなと言う印象も受けるところです。
このあたりは厚労省と同じ医師強制配置推進派でありながら、拠点病院への医師集約化よりも医師不足な地方への医師配置を主張してきた読売の立場とも対比されるところかと思いますが、その読売の社説がこちらです。

中医協人事 脱皮を迫られる日本医師会(2009年10月28日読売新聞)

 日本医師会(日医)が岐路に立っている。
 長妻厚生労働相は「中央社会保険医療協議会」(中医協)から日医執行部の代表を排除した。医療行政への日医執行部側の影響力は、著しく低下するだろう。
 中医協は診療報酬の価格を決める重要な場だ。年間30兆円を超える医療費の配分に大きな権限を持っている。民主党は中医協の議論は開業医寄りであると批判し、委員構成の見直しを唱えてきた。
 日医は医療機関側委員に3人の推薦枠を持ち、従来は推薦通りに任命されていた。だが、9月まで委員だった日医の副会長と理事2人の任期が切れた後、後任人事が異例の凍結状態となっていた。
 結局、長妻厚労相は日医執行部からの推薦は受け付けず、日医内で非主流派と目される茨城県医師会理事と、京都府医師会副会長に就任を求めた。もう1人の枠には山形大学医学部長を起用した。
 総選挙で茨城県医師会は民主党を全面支援し、自民党を支持し続けた日医執行部と対立した経緯がある。同県医師会長の原中勝征氏は、来年4月の日医会長選に、現会長の唐沢祥人氏の対抗馬として立候補すると表明している。
 政権交代と日医の中の路線対立が連動したのが、今回の中医協人事である。
 だが多くの国民にとって日医内部の主導権争いは重要でない。問題は新しい陣容の中医協が、開業医の利益を優先してきた診療報酬体系を改革できるかどうかだ。
 2年に1度の報酬改定の議論がこれから本格化する。過酷な救急医療や産科、小児科といった分野の病院勤務医に、思い切って報酬を配分しなければならない。
 診療報酬全体を大きく引き上げることは財政上困難だ。地域医療に粉骨砕身している開業医にはきちんと報いるとの前提で、開業医全体の報酬枠に切り込むことが必要になるだろう。
 その際に、非主流派ながら医師会幹部である新委員が、やはり開業医の既得権を守ろうとするならば何も変わらない。これまでの日医推薦委員とは違う、というところを見せてもらいたい。
 中医協から締め出された日医執行部も、非主流派に対抗するならば勤務医の声をもっと組織運営に採り入れ、開業医中心の圧力団体から脱皮を図る時ではないか。
 国民は医療態勢の現状に不安を抱いている。医療界全体で改革に取り組むことが不可欠だ。その中心に日医がいたいのなら、日医は変わる必要があろう。

こちらも日医オワタを全体の基盤とした論調ですが、やはり医療費総額は増やさず配分の変更でという論調と見受けられますが如何でしょうか?
国民が医療体制の現状に不安を抱いているというのであれば、日々その現状の中で苦労している現場の人間はもっと強い不安を抱いているのは当然のことであって、そこへ「診療報酬アップはできない」が先にありきではどうなのよと更に不安になるところではありますけれどもね。
何よりいくら医療業界が厳しい状況にあろうとも業界内での報酬配分で乗り切れと言うのであれば、いくら財政が厳しい状況にあろうとも省庁間での予算配分で乗り切れというロジックも当然に通用してしかるべきだと思うのですが、自称医療に強い読売はそうしたブーメランにはお気づきでないのでしょうかね(苦笑)。

さて最後になりましたけれども、少なからぬ方々が密かに期待して待ち受けていたであろう(笑)産経の社説がこちらです。

日医排除 医療体制再建につなげよ(2009年10月28日産経新聞)

 診療報酬の点数を決める厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)から、日本医師会(日医)の推薦委員が排除される。
 長妻昭厚労相は、任期切れとなった3人全員を外し、地方医師会の代表2人と大学病院代表1人とに差し替える人事を発表した。
 中医協委員30人のうち、医師など診療側委員は7人で構成される。このうち3人は日医の副会長や常任理事といった役員の「指定席」だった。医療の専門知識を必要とする中医協では、日医の委員が議論をリードしてきた。
 鳩山政権は来年の診療報酬改定で、勤務医の待遇改善を図る方針を示している。開業医の発言力が強い日医の影響力を薄め、政府の方針に理解のある委員を増やそうとの判断は、改革の意思を示すものといえなくもない。
 だが、日医の全員を一度に外すやり方は、あまりに図式的で粗雑な印象を免れない。患者はまず近所の診療所で診てもらい、高度な医療が必要と診断されたら早期に病院に紹介される。そうした「病診連携」が地域医療の基本だ。実際の医療政策もそれを目指す大きな方向性を示すものでなければならない。
 産科や小児科、救急医療をはじめ過酷な労働条件に耐えかねて辞める勤務医は後を絶たない。地域の中核病院さえ閉鎖される診療科がある。国民が安心して治療を受けられる医療体制の再建は待ったなしだ。
 日医は自民党と深いつながりを持ち、旧政権では医療政策に影響力を行使してきた。前回の診療報酬改定では勤務医不足対策の財源を確保するため、勤務医よりも優遇された開業医の再診料引き下げが提案されたが、日医の反発で実現しなかった。開業医優先とされる姿勢に根本的な問題がある。
 だからといって、有無を言わせぬ人事で開業医と勤務医の離反を招くような「荒療治」を正当化できるのか。勤務医と開業医の対立をあおるような事態となれば、迷惑を被るのは患者であることを忘れてはならない。新委員に先の衆院選で民主党候補を応援した茨城県医師会理事らを選んだことで、総選挙の「論功行賞」との声が聞かれるようではなおさらだ。
 委員の顔ぶれをどう変えようと、患者である国民を向いた議論がなければ何も変わらないことを長妻氏は肝に銘ずべきだ。

どうした産経、案外つまら…もとい、まっとうじゃないかと突っ込みを入れたくなる社説なんですが、とりあえず日医の医員に議論をリードされるような医療の専門知識って何よ?とは突っ込んでおきましょうか(笑)。
個人的に今回の社説に関して(いささか残念ではありますけれども)産経をヨイショしておきたいのは、病診連携といった表層的な話に終わっているとはいえ、勤務医と開業医とは対立する存在ではないという視点を盛り込んでいるところかなと思ったのですが如何でしょうか?
占領軍の施政において分断統治が基本であるなんてことを言われるように、本来手を組んで外圧に対抗すべき対象を相互反目から対立にまで持っていくということは古来常套手段ですけれども、実のところ近年の診療報酬削減政策が継続する中で、まさにこうした「勤務医vs開業医」という対立の構図がいつの間にか当然のように設定されていたことには留意すべきでしょうね。
その意味では長妻大臣がいみじくも「皆さん医師会所属の先生です」と言うように、新任の委員達も本来「自民支持の日医側委員」と対立する存在であるかのように語られるべき筋合いではないはずなのですが、医療費総額を抑制したい向きには「開業医=日医=潰すべき敵対的存在」というステロタイプな図式が非常に使い勝手が良いのは確かなのでしょう。

こうした視点から最近面白いなと思った記事を最後に紹介しておきますけれども、特にこうして政権交代と言う現象が実現可能なんだと立証されてしまった時代ともなりますと、対立する組織、個人間のネガティブな感情を頭の良い誰かに利用されやすい状況になってきたのは事実だと思います。
○○党の支持団体なんてことを良く言いますけれども、何十年も続くしがらみでがんじがらめになっている為政者側にすれば、案外政権交代を奇貨としてそうしたしがらみを一掃したい、なんてことを考えていても全くおかしくはないですし、まして官僚らには官僚らの思惑もあるでしょうからね。
医療に限った話ではありませんけれども、民主党政権ではあちらが潰され、自民党政権に戻ってはこちらが潰されと言った塩梅で、結局誰も彼も良い目を見ることなく関係者各位総負けという最悪の未来絵図すらあり得ない話ではないということは念頭に置いておくべきでしょうね。

病院と診療所の対立が「医療崩壊」に(2009年10月27日CBニュース)

  DPC対象病院へのコンサルティングなどを手掛けるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンは10月24日、「オピニオンリーダーに問う日本の医療はどこへ進む?」と題してシンポジウムを開催した。今後の医療費負担や配分などをテーマにしたパネルディスカッションでは、慶大大学院の田中滋教授が「医療システムを崩壊させようとする人たちが戦略を練るとしたら、一番良い方法は診療所と病院を対立させることだ」と述べ、病院と診療所が限られた医療費を取り合う構図が「医療崩壊」につながるとの認識を示した。

 田中氏は、病院と診療所間だけでなく、診療科や学会間で対立が起きた場合にも医療崩壊が進むとの認識を示した。その上で医療費の配分については、病院・診療科間などでなく、地域医療への貢献度の視点から考える必要があるとの考えを示した。
 一方、日本病院会の石井暎禧常任理事は、例えば入院料の配分を、「入院料」の項目の枠内で考える従来の手法を問題視し、まずは「どこにどのくらい資源を投入すべきか」から考えるべきだと主張した。

 また、社会保険診療報酬支払基金の中村秀一理事長は、社会保障費の自然増を毎年2200億円削減する政府方針が撤廃されたことを踏まえ、「医療費を増やすというポジティブな政策目標を決めてやってきたことはこれまでなかった。どういう部分に増やしていくかの議論が必要」と述べた。
 中村氏はまた、保険者側には、医療費が増えたことで医療サービスがどれだけ質向上したかを具体的に情報開示する必要があるとの認識を示した。

■「保険者側も大変な状況」
 パネルディスカッションに先立ち、田中氏は「医療提供体制と社会保障制度―社会共通資本としての医療を支える施策とは―」と題して講演し、日本の医療費の現状を、医療提供側と財政側の視点から説明した。
 医療側の視点としては、▽今年の医療費対GDP比が米国の16%、フランスの11%に対して日本は8.1%に留まる▽一人当たりの医療費は、すべての年齢階層で減少している―などの状況を指摘した。
 一方、財政側の視点として、▽国の今年度の一般会計で、税収46.1兆円に対し歳出が102.5兆円と見込まれる▽全国健康保険協会(協会けんぽ)が保険料率を来年度から引き上げれば中小企業の負担増につながる―などの状況を挙げ、「保険者側も大変な状況にある」と指摘。医療側が主張する保険料の引き上げが、実際には簡単ではないとの認識を示した。

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コメント

開業医の既得権を守るって、まあ、中医協の中では当たり前なのではないでしょうか。
現場を見ずして削ろうとばかりする国側に対して、抵抗がなければ、好きなようにされてしまいます。
そして、今までの経過を見ても、日医からの委員が、「開業医の権益ばかり守り、その代り病院の診療報酬を犠牲にしてきた」なんて事実は実はどこにもありません。
7対1看護も、病床削減も中医協と全く別のところで決められた話です。
日医は勤務医を軽視はしてきましたが、無視はしておりません。日本の開業医のほとんどすべてが元々勤務医を十分経験しているので、時代はどうあれ「知って」いるんですよ。
本来日医という存在で開業医と勤務医は対立しているわけではないんです。

つまり、日医=開業医代表=悪、と決めつけるための報道にすぎないということです。

逆に、今、日医の首脳部が会員たる開業医や一部勤務医に叩かれているのは、自民党にあれだけ擦り寄っていたのに、全く考慮されず、医療費をがっさがっさ削られ続けてきた、すなわち「医療の既得権」を守れなかったからで、マスコミが言うところの「圧力によって、既得権を守ろうとする」のはもうできなくなっているからなんですよね。

それを敢えていまだに「日医の圧力団体としての権力」「開業医の既得権」なぞというもうすでに陽炎のごとく消えつつあるものを、さもいまだに強固であるかのように報道する目的を考えると、やはり「医療費をもっと削れ、開業医を潰せ」という方向にもっていきたいのだという裏が透けて見えてくる気がしませんか?

投稿: | 2009年10月29日 (木) 11時51分

日医と地区の医師会、そして開業医が何か統一された意思のもとに行動している一心同体の存在であるかのように思っているのだとしたらあまりに無知ですし、そう誤解させるような報道というのはジャーナリストとして失格と言われても仕方がないでしょうね。
現在の日医の一番の問題点というのはどんないい加減な偏向報道を受けようが誰も「日医さんかわいそう」と言ってもらえないほどの人望(とは言わないんでしょうが)の無さではないかと思います。
マスコミの言うことなんて穴だらけなんですから突っ込むところは幾らでもあるんですが、日医が必至になって言えば言うほど「日医が言ってることだから本当は逆なんだろう」なんて見られてしまいますし(苦笑)。
まあ今回の一連のことは日医にとっても良い機会にはなるのでしょうけれどもね。

投稿: 管理人nobu | 2009年10月30日 (金) 18時28分

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