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2009年10月27日 (火)

救急搬送問題 本質を離れつつある議論

以前にも紹介しました消防法改正との絡みで、自治体に救急搬送に関するルール制定が義務づけされたのに伴って、そのガイドラインなるものが近く公表される予定です。
相変わらず救急搬送を取り巻く環境は改善する様子をみせない中で最近また救急搬送問題に関連した記事が出てくるようになりましたが、まだまだ実際の課題は山積しているという状況を示す記事をいくつか紹介してみましょう。

救急患者の受け入れ・搬送ルールガイドライン、月末に都道府県に通知へ(2009年10月16日ロハス・メディカル)

 総務省消防庁と厚生労働省は16日、「傷病者の搬送及び受け入れの実施基準等に関する検討会」(座長=山本保博・東京臨海病院院長)を開催し、改正消防法が施行する30日までに都道府県宛に通知する救急患者の受け入れ・搬送ルールのガイドライン案を大筋で取りまとめた。ルール策定に関する議論の場が、国から都道府県に移ろうとしている。(熊田梨恵)

■「救急搬送・受け入れルール」とは何か、なぜ策定する必要があるのかなど、詳細はこちら

 今回の会合はガイドラインの内容を了承するために開かれた場であるため、医療機関のリストアップや搬送・受け入れ状況の調査・分析など中身に関する議論はこれまでの会合でほぼ出尽くした。このため、ガイドラインの内容を知りたい方は、こちらこちらを参照。検討会自体は存続し、新しい協議会の設置状況やルールの策定状況などを調べ、情報共有する予定。

 消防庁は10月30日の改正消防法施行に向けて、近くガイドラインの内容を都道府県に通知する。搬送受け入れ・ルールの実施に向けて、具体的な議論の場は国から都道府県に移ることになるが、自治体関係者からはルール策定に向けて不安の声も多く聞かれている。会合中に川部英則委員(香川県防災局長)は「レアケースや重要な課題について、全国と情報共有を図りたい。文書だけでなく意見交換の場を設けて頂きたい」と述べ、都道府県担当者の情報共有の場を今後設置していくよう求めた。

 消防庁救急企画室の開出英之室長も、今後の課題は都道府県がいかに実効性あるルールを策定していくかにかかっているとの見方を示す。会合終了後、「地域によってかなり取り組みの差があります。法律ができて国からの情報も届き、これを受けて都道府県は策定していきますが、その実効性をいかに持たせるか。"魂"を吹き込んでいくか」と話し、国として情報の周知や、ルール策定状況など情報共有の方法を工夫していきたいといた。

 また、小児救急医療の啓発活動などを行っている阿真京子委員(「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会代表)も会合中、「どういう背景で、どういうルールなのかを、どう伝えればいいかと考えていた」と前置きし、自治体からの情報提供の方法を提案。保健センターや消防機関で行われている様々なテーマの住民向けの公開講座などで、講師が短時間でもこのルールについて情報提供できれば情報が伝わるとして、「住民に説明する機会がある人に講習しては。キーになる人が各地で場を持っているので、患者会や私たちのような団体に理解してもらうよう説明していくといいと思います」と述べた。

 大阪府健康医療部保険医療室医療対策課の金森佳津氏(笹井康典委員(大阪府健康医療部長)の代理出席)は会合終了後、「根本的にとても難しいことだから、今ある医療資源を使って何とか良くしていこうというのはどの都道府県も切実に思っています。ガイドラインで示されなくても都道府県も何らかやっていたとは思いますが、こうして全国ベースで示されて浸透していくのは良いことだと思います。地域によって実情はかなり違いますが、救急医療はどこにいても一定の質が担保されるべきものだとも思うので、こういうガイドラインが示されるのは良いと思います」と話し、都道府県はルール策定について真摯に取り組んでいく姿勢だとした。隣接している都道府県との情報交換についてはまだほとんど行われていないとしたが、大阪府でもドクターヘリでの搬送など今後は救急医療の広域が進むとして、今後は行政も搬送・受け入れルールについて近隣の自治体と情報交換をしていくとの見方を示した。ただ、救急医療体制は地域によってかなり差があるとして、「医療資源が十分にあって組織体制も整っている地域ならいいと思いますが、そうでなければ大変なところもあると思います」と述べた。

[たらい回し問題から1年]妊婦搬送、工夫進むが…(2009年10月25日読売新聞)

医師不足は変わらず

 脳出血を起こした妊婦が8病院で受け入れを断られ、東京都立墨東病院で死亡した問題が発覚してから約1年。

 東京都では、最重症の妊産婦は、必ず受け入れる新たな搬送システムを整備した。だが、全国的にも産科医療を取り巻く環境は依然厳しく、新生児を受け入れる新生児集中治療室(NICU)不足も続いている。(医療情報部 館林牧子、社会部 石川剛)

「必ず受け入れ」都内3施設指定 「病院探し」コーディネーター制

 「お産後、出血が止まらない。命の危険がある」。8月のある夜。日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)に、産婦人科病院からの連絡が入った。

 同センターでは、直ちに自宅待機中の産科医1人を呼び出して院内の妊婦の対応に当たらせるとともに、3人いる産科当直医が全員で、この女性の搬送を待った。運ばれてきた女性は大量出血を起こしていたが、輸血と、子宮の周囲の動脈を縛るなどの緊急止血手術で一命を取り留めた。

 都内での妊婦の救急搬送はそれまで、かかりつけ医を通して産科医が電話で受け入れ先を探す仕組みだった。昨年10月の妊婦死亡問題を機に、「再発」を防ごうと都が設置したのが、重症の妊産婦を必ず受け入れる「スーパー総合周産期センター」だ。日赤医療センターのほか、昭和大病院、日大板橋病院の3か所が指定されている。

 近くの病院で受けられない場合、かかりつけ医が119番通報すると、東京消防庁が「スーパー周産期」に運ぶ手はずを整えつつ、病院を探す。毎日いずれかの「スーパー周産期」が、輪番制で緊急搬送に備える。

 運用を開始した今年3月から、これまでに24人の重症妊産婦がこのシステムで運ばれた。このうち、救命できなかったのは搬送前に心肺停止に陥ったケースなど2人。「すべての妊婦さんを救えるわけではないが、搬送先探しに手間取ることはなくなったと思う」(日赤医療センターの杉本充弘産科部長)という。

 「スーパー周産期」に運ぶほど重症でない場合にも対応する「搬送コーディネーター」制度もスタート。計16人の助産師、看護師が24時間態勢で東京消防庁に交代で詰め、地域内で受け入れ先が見つからない場合に、コーディネーターが仲介役となって都内の別の地域の病院を探す。8月末の運用開始から50日間で、59件の搬送にかかわった。

 しかし、問題がすべて解消されたわけではない。読売新聞が今月、全国の総合周産期母子医療センターに行ったアンケートでも、今年に入って東京から群馬、栃木などに搬送された例があった。また、都内に搬送される妊婦の約3割は周辺の県から運ばれている

 都立墨東病院(墨田区)では、医師の事務書類作成などを補助する事務職員を雇うなど、「職場環境の改善をアピールして」(都幹部)、常勤医を4人から6人に増員。それでも定員には3人足りず、開業医の応援を受けて、当直体制を維持している。ある都幹部は「根本的な問題は解決していない」と漏らした。

 東京都周産期医療協議会長として新体制の整備に当たった岡井崇・昭和大産婦人科教授は「あくまでも今の態勢でできる緊急措置。長期的には医師の確保が不可欠」と話す。

 都立墨東病院の妊婦死亡問題 昨年10月、脳出血を起こして緊急搬送先を探していた都内の妊婦(当時36歳)が8病院から「当直の産科医が1人しかいない」「NICUが満床」などの理由で受け入れを断られ、最終的にいったん断った東京都立墨東病院に運ばれたが、出産後に死亡した。

新生児ICU 病床数に地域差

 読売新聞は全国47都道府県に対してもアンケートを実施した。搬送コーディネーターは、東京など10自治体が導入し、医師や看護師らを中核となる総合周産期母子医療センターなどに配置している。また近畿地方と徳島、福井、三重の9府県が2007年、府県境を越えて妊産婦を搬送する広域連携体制を結ぶなどの取り組みも進んでいる。

 アンケートによると、全国のNICUの合計数は2429床と、1年前に比べ145床増えていた。とはいえ、都道府県別にみると、厚生労働省の有識者会議が今年2月に示した必要病床数(出生数1000人当たり2・5~3床)を満たしていたのは16自治体(34%)だった。多いのは山口(4・67床)、鹿児島(3・5床)、少ないのは徳島(1・02床)、茨城(1・22床)などで、地域差がみられた。

 文部科学省は、全国の大学病院のうち、保険認可のNICUがなかった7大学病院に6床ずつの新設を計画。ところがこのうち、来年4月に開設する予定の弘前大では専任の医師が1人しかおらず、准教授、講師ら3人の医師を公募中だ。9床のNICUを持つ富山大では増床を視野に、新設の教授を募ったが見つからなかったという。

 一方、過去10年間に1万1000人から約1割減った産婦人科医は、今年に入ってやや増える兆しも。日本産科婦人科学会によると、今年4月~9月の新入会員数は435人で、昨年同時期の378人に比べて57人増えた。

 ただ、読売新聞が、全国の総合周産期母子医療センターに行ったアンケートでは「産科医が増え、当直回数が軽減された」とした施設もあったが、「常に人員は綱渡り状態」(岩手医大)、「限界は超えている」(三重中央医療センター)、「勤務状況悪化」(杏林大=東京都)などと答えた施設も目立った。青森県立中央病院新生児集中治療管理部の網塚貴介部長は「人材難が深刻で、現在ある病床の維持さえ大変だ」と話す。(医療情報部 山崎光祥)

しかし、未だに「たらい回し」ですか(苦笑)。
救急搬送受け入れ問題がかつてないほど騒ぎになっている原因と言うのも諸説あって、一部には「昔からあった問題。ただ最近は報道で大きく取り上げられるようになっただけ」という意見もありますが、やはり全体としては昔より状況は悪化している、しかもなかなか改善も難しいという認識はほぼ共有されているように思いますね。
こういう末期的状況で何より重要なことは医療にしても何にしてもそうですが、問題のごく一部だけを取り上げて「ここはもっとこうすれば改善できる」と言っているだけでは駄目で、その一部を変えた結果全体のシステムとして改善できるかどうかを問題にしなければならないということでしょう。
要するに重箱の隅を突きまくった結果重箱の底が抜け器としての用を為さなくなったなどという行為は俗に愚の骨頂などと呼ばれるべき類のものであろうと言う話なのですが、こういう当たり前の理屈を理解しないまま議論を進めていくと、結果として当初の目的から退歩してしまうどころかとどめの一撃になってしまうということもままあるわけですね。

心筋梗塞 迷わず119番を…通報1割、手遅れの恐れ(2009年01月24日livedoorニュース)

胸の圧迫感などを感じて「心筋梗塞(こうそく)かな」と疑ったら、迷わず救急車を呼ぶのが医学的に正しい。しかし「すぐ119番を」と患者に正しく指示できる医師は5割に過ぎず、一般人で119番する人は1割程度でしかないことが、厚生労働省研究班(班長・野々木宏国立循環器病センター内科心臓血管部門部長)の調査で分かった。

 心筋梗塞は発症後1時間以内に専門病院に着けば救命率が高いとされる。最近は「救急車をタクシー代わりにしないで」と訴える医療関係者も多いが、野々木部長は「心筋梗塞が疑われる症状がある時は、結果的に『空振り』でもいいので119番を」と呼びかけている。金沢市で開催される日本疫学会で24日に発表する。

 心筋梗塞の症状には、胸に重いものを載せたような圧迫感のほか、息苦しさや、のどや下あご、みぞおち、背中などの痛み、頭痛などがある。まとめて「上半身に今まで経験したことのない強い不快感があった場合」と覚えるのがよいという。

 研究班は昨年1月、インターネットで全国の医師にアンケート。約1000人から回答を得た。同時期に全国の一般の男女に訪問調査し、約1200人から回答を得た。

 その結果、高血圧や糖尿病などがあり、心筋梗塞の危険が高い患者から電話を受けて発症の疑いがある場合に「すぐ119番」を指示する医師は50%。「すぐ自力でかかりつけ医へ」と指示する医師が27%、「すぐ自力で救急医療機関へ」が13%いた。

 一般への調査では、心筋梗塞のおそれがある「上半身の強い不快感」を感じた場合に、「すぐ119番する」人は平日の日中で12%、休日・夜間でも28%。「様子をみる」や「家族や知人に相談する」が約半数を占めた。

 別の調査では、心筋梗塞による死者は、半数強が病院にたどり着く前に急死しているといい、野々木部長は「自力で病院に行っては途中が心配」と話す。

この記事、何も知らないで読むと「え?そんな怖い!とにかく何かあったらすぐ救急車呼ばなきゃ!」となるのですが、判っている人が見れば「で、胸部症状を訴えた患者の中で心筋梗塞の患者はどれくらいいたの?」とすぐ突っ込み所が見えてくるような話ですよね。
別に医療の細かいことを知らない方でも想像してみていただければと思うのですが、例えば毎月毎月何日も入院して全身検索をしていれば癌なりの重病が手遅れになるまで進行する以前に早期発見できるようになるかも知れませんが、それでは厚労省では国民全てに「月のうち半分は皆で病院に入院して全身検査を受けましょう」とキャンペーンでも張るつもりですかってことですよ。
心筋梗塞といえば今は緊急カテーテルという処置を行える施設でなければ受け入れてはならないというのがJBM的に正しいとされていますけれども、逆流性食道炎から気管支炎、帯状疱疹に筋肉痛に至るまで全ての患者を循環器専門施設が初診対応してくれるというのであれば、それは他の施設にとっては楽な話であるのは確かなんですけれどもね。

心筋梗塞に対して365日24時間いつでも緊急カテが出来る施設が疲弊するからこそ一般救急病院でセレクションを行う、救急病院が疲弊し救急受け入れに難渋するからこそ開業医なども協力して患者集中を防ぐ、少ない予算とスタッフで何とか世界トップレベルを維持してきた日本の医療界では、そういう皆の少しずつの我慢と努力の積み重ねで辛うじて医療が保たれています。
その我慢と努力は何も医療従事者側だけが一方的に被るべきものではなく、「万に一つのこともあってはならない」というゼロリスクの追及は結局国民全体の不利益につながるのだという了解の元に、社会的に許容できる範囲で一定のリスクは甘受してもらわなければもはや医療自体がなくなりますよということを今一生懸命国民側に納得いただいている最中なわけですよね。
コスト的にも受け入れ能力的にももうそういうやり方は無理なんだと言っている最中に厚労省サイドの研究班からわざわざこういう話が出てくる、やはりこれは厚労省=医療崩壊の総元締めと言われるのも当然なのかなという気がしますが、例によってネット上の反応を見てみましょう。

270 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 07:26:16 ID:DxByNOBJ0
>>268
俺、緊急心カテのできない病院で当直するときは

心筋梗塞は発症後1時間以内に専門病院に着けば救命率が高い
とされているので、
胸の圧迫感などを感じて「心筋梗塞(こうそく)かな」と疑ったら、迷わず救急車を呼ぶ
ことが、厚生労働省研究班により推奨されています。

という趣旨のことを伝えて、ほぼ全例断ってる。

断らなかったのは99歳のかかりつけ寝たきり老人で
専門病院より生存の可能性が低いことを家族が納得したケースだけだな。

272 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 07:29:11 ID:DxByNOBJ0
>>268
>心筋梗塞かどうか確認する時間
70分かかったケースでは3800万の損害賠償だったかな?
加古川心筋梗塞事件。
まあ、トロポニンの結果などまたずに、電話照会の段階で「救急車でカテのできる病院へ」と対応しればよかったんだがね。

274 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 08:02:43 ID:11x9mgqo0
みんな遠慮せず救急車を使いましょう、じゃなくて典型症状を示すAMIは少ない、だろ…

>野々木部長は「自力で病院に行っては途中が心配」
そりゃ、一人の人を見たらその通りだが、現状でそれやったら破綻するだろ…
とりあえずカテ専門を部長にするんじゃなくて、公衆衛生というか、医療システム学みたいな奴を部長にしろよ。

正直、根性論で動きそうな奴よりはマシだ。

現場があまりに多忙すぎる、我が儘な患者が増えた、訴訟のリスクとJBMが原因だろう、医者の意識が昔とは変わってきた、マスコミがなんでも医者が悪いと叩くのが悪い等々、個別の理由を取り上げて言えば確かにどれも一因ではあるのでしょうが、しかし本当のところは時代の変化とも言うべき何かしら大きな流れの中でとらえるべき問題であるのかなという気がします。
根本的にはこれも需要と供給のミスマッチという問題に帰着するのではないかと思うのですが、これをこうやれば一発で解消!などという景気の良い事を言うのはたいていものを知らない人間のヨタ話か、あるいは何かしらの意図があって為にする議論とみて間違いなさそうです。
とりわけどうも最近では、こうした社会的関心の高い問題を格好の手段として何かしらの目的を達成しようと画策しているひとたちがいるようにも思えるのが気がかりなのですね。

「医療崩壊は基本法成立へのエネルギーになる」 ─ 医療基本法シンポ(2009年10月22日ロハス・メディカル)

 「医療崩壊とか救急・産科の(受け入れ困難)問題とかで多くの人が『医療に問題がある』と認識している。これは裏返せば、(医療)基本法成立へのエネルギーになる」─。医師の計画配置や患者の義務などを盛り込んだ「医療基本法」の成立を目指すシンポジウムで、長妻昭厚生労働相の政策ブレーンとされる埴岡健一氏(日本医療政策機構理事)が声高らかに語った。(新井裕充)

 「医療基本法」の成立に向けて10月18日に東京都内で開催されたシンポジウムの討論では、「医師の計画配置」などに反対する声をどのように抑えながら法案の成立に結びつけていくかが焦点になった。

 パネリストとして参加した元厚生労働省医政局長の伊藤雅治氏は「患者団体の横断的な組織によって統一した行動、それが今一番重要になっている」として、患者団体をうまく取り込んで進めていく必要性を訴えた。読売新聞医療情報部長の田中秀一氏も、「(患者団体を)巻き込んでいく、あるいは政権を巻き込んでいく」と賛同した。(詳しくはこちらを参照)

 これに対し、討論会の司会を務めた埴岡氏(日本医療政策機構)が「全国民対策というよりは、少数の熱い想いの人をそれぞれのセクターにつくるということがポイントかもしれない」と指摘。「本当にコアなる少数のリードする人と、反対しないで理解していただく方々を多くつくるという両面だと思う」と述べ、与野党の議員や有識者会議などで支持を取り付けて一気に成立させる方向性を示した。
 確かに、「医師の計画配置」など反発が予想される事項が含まれているため、幅広い議論をしていたのでは"各論地獄"に陥り、早期の成立が難しい。しかし、パネリストから異論が出た。

 「患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会」の会長を務める長谷川三枝子氏は、「国民全体の問題として考えていかなければ今までと同じような医療に対する考え方というのが続く」として、国民全体の幅広い議論を求めた。
 国立がんセンターがん対策情報センターの渡邊清高氏も、「国民全体として、これからの医療をどうするのかという議論に耐えるようなものでないといけない」と指摘した。

 このように、「医療基本法」について幅広い議論を求める声が相次ぐ中、総務省の小西洋之氏が"直球"を投げ込んだ。
 「医療だけが基本法がない。とにかく、とにかくつくったらいい。基本法というのは、教育基本法のように条文が20ぐらいのものから、農水省の(農業)基本法のように50ぐらいのものもある。薄いものまでいろいろある。とりあえず、(医療)基本法をつくれば議論する場ができる」

 なるほど、関係団体などにごちゃごちゃ言わせる前に、とにかく法律をつくってしまえということか。そして、細部は法律をつくってから詰めていけばいいという趣旨だろうか。表情が曇りかけていた埴岡氏に笑顔が戻る。強い口調で、次のように語った。
 「現在、いわゆる『医療崩壊』とか救急・産科の(受け入れ困難)問題とかで、多くの人が『医療に問題がある』と認識している。これは裏返せば、(医療)基本法成立へのエネルギーになるという部分がある。それをうまく普及、"見える化"、情報提供するのがプラスになる」

 今後、救急の受け入れ困難や医療事故の問題など、国民の医療不信や不安をいかに煽り立てることができるか。そして、そのために医療機関を規制すること、医師を強制配置して偏在を解消する必要性があることなどをメディアを使って刷り込むことができるか─。自公政権下のシンクタンク「日本医療政策機構」理事の埴岡氏の手腕と、「ミスター思考停止」の決断にかかっているといえる。討論会の模様について、詳しくは次ページを参照。
(以下略)

先日からお伝えしてきました「医療基本法」絡みの話題ですが、やはりどう考えてもこの種の基本法制定などという理念的な法律制定が救急搬送問題という極めて現場に近い領域の問題解決に直結するとは思えない、そうであるのに救急問題などと絡めて議論を強引に推し進めていくということは、そこに何かしら表沙汰に出来ない意図があるということです。
そしてその意図とは何かと言えば、これも先日書きましたように一番直接的な話としては医師強制配置ということの導入であって、すでに患者団体から厚労省、財務省、政策提言集団に読売新聞らマスコミと、完全なる包囲網が形成されつつあるということなんですね。
国にも厚労省にも厳しいロハス・メディカルさんなどは救急がうまくいかないのは医師が悪いのでも患者が悪いのでもない、生存権を定めた憲法25条に違反している国の怠慢であり不作為であると大上段に振りかぶっていますが、現場の医療従事者が感じているのはそうした理念ではなく、「明日目が覚めたら赤紙が来ているんじゃないか」というもう少し切実な不安なんじゃないかなと思います。

何にしろ医者などたかだか30万足らずと1億人の中ではいたって少数派ですから、公共の福祉のために黙って犠牲になれと言うのであれば多数決の原則に従って犠牲になるしかないのもやむなしですが、ただでさえ労多くして報われることが少ないと士気低下が著しい医療現場において、こうした動きがどう受け取られるかという想像力は必要ではないかと思いますね。
医療崩壊と呼ばれる現象の原因は幾らでも挙げられますが、少なくともその解消のために医療現場の志気が崩壊したままでよいと考えている人間が政策決定に関与する人々の中にもいるのだとすれば、それはとんだ心得違いであるということをやがて壮大な規模で認識せざるを得なくなりそうな予感がしています。

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