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2009年9月28日 (月)

知ってますか?近ごろの新型インフルエンザ関連情報

新型インフルエンザ絡みの話題は既に事欠かないという状況になってきましたが、情報量が増えてくると「え?そうだったの?」という少しばかり意外性のある話題も多くなってきます。
今日は現場臨床家の日常診療にも役立つ(かも知れない)そんな意外性のある最近のニュースを集めてみました。
まずはこちらなんですが、「え?話違うじゃん」と言う方針転換の話題から紹介しておきましょう。

予防目的では飲まないで WHOがタミフルで新指針(2009年9月25日47ニュース)

 【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)は25日、新型インフルエンザの主力治療薬であるタミフルなど抗ウイルス剤の処方について「予防目的での使用はWHOとして推奨しない」とする新たな見解を発表した。予防的な使用がタミフルなどに対する耐性のあるウイルスを発生させる危険性が高いためと説明している。

 新型インフルエンザはワクチン普及が遅れているため、タミフルなどの抗ウイルス剤の早期処方が最も有効とされている。日本を含む多くの国で予防的に服用している人は多いとみられ、今後、抗ウイルス剤の処方方針について医療現場などに影響もありそうだ。

 WHOは「症状が出た後の早期の処方は重症化のリスクを減らす」と指摘。

 しかし(1)免疫力が低下し、タミフルを投与されても体内のウイルス活動が収まらない(2)他のインフルエンザ患者に接触した後、タミフルを服用しても症状が重くなる―といった状況の場合、耐性ウイルスが発生している可能性が高いとした。

 既にタミフルを予防服用した患者には、別の抗ウイルス剤であるリレンザの服用を推奨している。

今までは患者と接触すれば予防的にタミフル投与ということもやってきたわけですが、こういう流行の状況になってきますと耐性化云々以前に始終予防的投与を続けなければならないという話になりかねませんから、薬剤備蓄の面からもこれは致し方ないところだと思いますね。
つい先日の9月15日には感染症学会から、患者と濃厚接触をした医療従事者は予防投与を検討するべきという提言が出ているようですが、今後も医療従事者に関してそうした方針を継続するとすれば一般市民との間の格差、不公平感といったものにも留意する必要はあるのでしょう。
しかし記事を読んで今さらながらの素朴な疑問なんですが、予防的に使うなら重症患者では使いにくい吸入薬のリレンザを用いた方が薬の使い分けとして効率が良いんじゃないかと言う気がするのですが、そのあたりマネージメントしている人はいないものでしょうかね?

お次は既に厚労省からの症例発表で多くの方々が感じておられることだと思いますが、やはりそうだったのかという話題です。

アジア太平洋でも基礎疾患なしの死亡例25%! (2009年9月23日新型インフルエンザ・ウォッチング日記)より抜粋

(略)
さて、こちらはシルバーウィークと無関係なWHOアジア太平洋事務局(WPRO)、葛西健氏が「アジア太平洋地域での死亡者の25%は基礎疾患の無い人。本当に困りました」と困惑の声をAFPに語っておられます。

    * アジア太平洋地域では、9月19日までに犠牲になった352例中25%(!)が基礎疾患なし
    * この事態に非常に困惑しており、現在調査中。他の地域でも基礎疾患なしの(死亡例中に)占める割合は20~50%
    * 有力な仮説に、(基礎疾患なき死亡例では)ウイルスがより急速に増殖しているのではというものがある。
    * WHOは青年層の死亡例に注目。
    * WHO西太平洋地域の受持ち範囲は中国からオーストラリア・ニュージーランド、フランス領ポリネシアに至る37カ国。

(略)
ソースはAFP↓
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5g-Czu2Er1oqIqAsMwkt1MUOiS9fg
http://www.flutrackers.com/forum/showthread.php?p=297025#post297025

従来型であれば小児の脳症はともかくとして、インフルエンザそれ自体で健常成人が亡くなるというのは極めて例外的な話ですから、やはり単なる弱毒型といったものではない新型特有の経過があって、特に一部症例では感染後あっという間に重症化し、中にはいわゆる突然死に近い経過を辿る場合もあるということなんだと思いますね。
この辺りは例のサイトカインストームで説明できることなのかどうかですが、どうも伝え聞く症例の経過からするとこれだけでは説明が難しいのではないかなという印象も抱いています。

ただ問題はいつだれが重症化してもおかしくないと言えばその通りなんですが、健常人の死亡率として見た場合極端に高いというわけでもない現状で、全ての人が重症化する可能性があるからと全例に徹底的な手厚い加療を行っていくのが社会的にみて正解なのかどうかですよね。
先の予防投与のニュースもそうですが、費用対効果や治療薬の備蓄、耐性化の危惧やマンパワーといったものも全て含めて、このあたりは「人が死んでんねんで!」で思考停止することなく、冷静に検討すべき話ではないかと思います。

さて、お次は一見して何やら相互矛盾しているかとも思える記事を二つ紹介してみますが、まずはこちら「え?足りてるの?」という意外性のあるニュースからです。

全国病院の空床14万、新型インフルの予想必要数上回る(2009年9月26日日経ネット)

 新型インフルエンザ対策で、厚生労働省は全国の医療機関の空きベッド(空床)や人工呼吸器の稼働状況をまとめた。一般病床は約71万床のうち57 万床が使用中で、空床は約14万。人工呼吸器約3万2000台のうち、約1万6000台が使用されていなかった。いずれも新型インフルエンザの流行ピーク時に必要と想定される数を上回っているが、同省は「都道府県内で連携してほしい」と万全の対応を求めている

 調査は都道府県に9月上旬の空床や人工呼吸器などの稼働状況を確認する形で実施された。

しかし9月上旬の状況を確認と言いますが、これから寒くなってくれば肺炎なども増えてきますからベッドは埋まってくるでしょうし、相対的に暇な今の時期のデータを元にこういう楽観的予測を示したところで何かしら意味があるのかと思わされる話ではありますよね。
そもそも場末の病院まで含めて病床もレスピレーターもフル回転という状況に今のマンパワーで対応できるかと言えば難しいところだと思いますし、これで「余裕があるんだから万全の対応を取れ」なんて言われても全国自治体の関係者も困るだろうと主うところですが、案の定と言いますかこういう記事も出ています。

半数が流行時の必要数判断できず ICUと人工呼吸器(2009年9月17日47ニュース)

 新型インフルエンザの拡大で不足が懸念される集中治療室(ICU)病床と人工呼吸器について、全国の21都道府県が、流行ピーク時の必要数をまだ判断できていないことが17日、共同通信のまとめで分かった。

 厚生労働省は、各都道府県に対し、8月末に発表した「流行シナリオ」に基づいてピーク時の重症者数を推計し、必要なICUと人工呼吸器を確保するよう要請。しかし多くの都道府県は「シナリオは実情に即していない」として、対応を決めかねているのが現状だ。

 各県ともICUなどの稼働率は高水準で推移しており、重症者が急増すれば不足が懸念される。
(略)

実際に国民の間では過半数が病床確保など医療面での対策に不安を感じているわけですから、もし厚労省がこうした恣意的とも取れるデータで後は勝手にやってねとばかり手を下ろすというつもりであるならば、これはいささか無責任と言われても仕方がないところですかね。
毎年の季節性の病床数変動に関しては既にデータもあるでしょうから、せめて冬の流行ピークの時期に予想される空きベッド数などから推定した需給状況の予測くらいは出していただきたいところです。

ところでその厚労省と言えば、先頃ついに新型と季節性インフルエンザのワクチン同時接種を容認するという発表がありました。
新型に対するワクチンの予防効果に関しては今だ明確なデータがありませんが、一方で国民の過半数は新型ワクチンについて接種を希望するという調査結果(この数字は他国と比べても高い方です)が出ているように、従来型インフルエンザのワクチンと比べて非常に前向きな反応を示しているようです。
従来型に関してはある程度ワクチンの効果というものは確立されているわけですから、これを併用できるならば手間も省けて予防効果もあるだろうと期待したくなるのが人情というものですが、先頃非常に興味深い話が出ていましたので紹介しておきます。

季節性ワクチン打ったらヤブヘビ?(新型インフルエンザ) (2009年9月24日新型インフルエンザ・ウォッチング日記)より抜粋

従来の季節性インフルエンザを接種したら、新型インフルエンザに感染しやすくなる という報告がカナダから上がっています。

    * CBCの報道。従来の季節性ワクチンを接種したら、新型インフルエンザに感染するリスクが高くなるという予備研究結果。
    * まだ予備的なものであると但し書き付き。
    * カナダにて4グループのデータ。合計で2000例対象。過去、季節性インフルエンザワクチンの接種受けたことのあるケースでは、より新型H1N1に感染しやすかった。

      Four Canadian studies involved about 2,000 people, health officials told CBC News. Researchers found people who had received the seasonal flu vaccine in the past were more likely to get sick with the H1N1 virus.

    * 理論的には、細菌やウイルスに暴露したとき、免疫系を刺激して抗体を産生する。この抗体が、他のウイルスの侵入を容易にすることがある。デング熱がその一例。
    * この研究成果から、(カナダ当局による)季節性ワクチン接種勧奨に対する疑問が呈されている。カナダ全体で、季節性インフルエンザワクチン接種キャンペーンを短縮、遅延、あるいはいっそ廃止してはと当局が議論。流行のほとんどが新型である以上、季節性インフルワクチン接種のキャンペーンを行うのは時間と資源のムダではないかと。
    * ケベック州当局では、ある種のグループ、たとえば、健常青年の季節性インフルワクチンキャンペーンを中止あるいは延期を実際に検討している。
    * 最後に、「うちには赤ちゃんがいるから毎年、(季節性)ワクチンを受けているわ。でも、(今年は)新型H1N1にかかるリスクになってしまうってわかったから、打たないわ。ただ、罹らないように注意する。それだけ」と主婦の声を紹介。

(略)
ソースは9月23日付CBCニュース↓
http://www.cbc.ca/health/story/2009/09/23/flu-shots-h1n1-seasonal.html
Seasonal flu shot may increase H1N1 risk

あくまでも可能性レベルの話で何とも言い難いところがありますが、この件については「NATROMの日記」さんのところでもう少し詳しく取り上げていただいていますので是非ご一読いただければと思います。
ただし他のウイルスでは確かにそうした現象が認められる場合がありますが、今までのところインフルエンザが属するオルソミクソウイルス科では報告されていない現象ということですから、可能性としてはかなり低いと見るべき話のように思いますね。

むしろこの記事の場合その社会的影響の方が心配ですが、実際一部の人たちにとってはそれなりにインパクトのある話ではあるようで、すでにあちこちで引用されているようです。
「ほら見ろ!こんな大規模に予防接種をするなどとんでもない!」などと接種反対の世論が巻き起こるくらいならまだしもですが、事後に何かあったときに「そら見ろ!どう責任を取るんだ!」で社会的バッシングを受けるということにでもなれば、現場の医療従事者にしてもやり切れないところでしょう。

しかし先日も乳児へのインフルエンザワクチンは接種量が少なすぎる、もっと量を増やさなければ効果はないという話が出ていましたが、あれもその昔ワクチンの副作用ということが強調されて過度に慎重に対応してきた歴史的経緯というものを思い出さずにはいられない話ですよね。
エヴィデンスに基づいた診療というものが今の時代にあっては基本的大前提ではあるのですが、同時に何かあったときに誰に責任がいくのかということも考えた場合、果たして純医学的側面だけを考えて「もっと積極的に!」と国や厚労省を突き上げるばかりで良いのだろうかと現場の先生方も頭が痛いところではないでしょうか。
かつてない大勢の国民を巻き込んでのイベントが進行しているわけですから、このあたりをとっかかりにもっと無過失補償などの議論が盛り上がってきてもいいのではないかという気がするところです。

もちろん昨日まで正しかった対応が今日には否定されているということがあるわけですから、前線で実働されている皆さんは常に知識のアップデートを行い、何かあっても誰に恥じるところもない社会的に認められた方法での対応をしていくということが大前提になることは言うまでもないことですけれどもね。

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