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2009年9月16日 (水)

本日誕生・民主党政権下での医療政策の行方は?

よほどの異変でもなければ新政権発足の日となっているであろう本日は、言ってみれば昨日の続編とも言うべき話題でもあるのですが、まずはこんな話から紹介してみましょう。
今は国務長官をやっているヒラリー氏は昔から熱心な国民医療保険の導入論者として知られていますが、オバマ政権もその流れをくんでか現在医療保険導入に奮闘中(かつ国を挙げての大騒動中)と言います。
その大統領が少し前にはこんなコメントを出して話題になりましたが、これも白黒つけるアメリカ流ということなのでしょうが、日本であればそれなりに大騒ぎになりそうな内容ではありますよね。

オバマ氏、国民は保険業界の人質  抵抗勢力に反攻(2009年8月11日47ニュース)

 【ワシントン共同】オバマ米大統領は11日、ニューハンプシャー州での対話集会で、焦点の医療保険改革に反対する保険業界や保守派が、既得権益を守るため虚偽情報を流して世論をミスリードしていると非難。多額の補助金を受給する同業界は不当な巨利を得ているとして「米国民は保険会社の人質だ」と述べるなど、従来にない激しさで “抵抗勢力”の切り崩しに攻勢を強めた。

 オバマ政権は公的保険の導入と希望者全員の保険加入を目指しているが、保守派は「政府が介入すれば医療の選択肢が狭まる」と反対。民主党議員が開く対話集会で厳しい質問を連発し、電子メールやテレビCMで宣伝戦を展開している。

 オバマ氏は「改革で高齢者医療の質が低下する」とのデマが出回っていると指摘。特定の利益団体が政治力を駆使し「現実の法案とは似ても似つかない不正確な内容」を流布して「米国民を脅し、道を誤らせる」と警告した。

 また、現行制度では保険業界に1770億ドル(約17兆円)の無駄な補助金が流入していると批判。加入者の病状悪化などを理由にした保険金支払いの停止が横行して「保険会社だけが利益を得ている」と述べた。

こうしてみると日本は医療費が安い時期に皆保険制度を導入できて幸いだったとも思えるような話ですが、逆にそのことが毎年膨れあがる一方の固定的出費としての医療費支出を招いているのだと考える人もいることは、それなりに理解できるところです。
実際には膨れあがったところで国際的に比較してみればさほど大きな金額でもないし、そのうち政府支出分はもっと少ないわけですけれども、人間誰しも一度手にしたものは手放したがらないものですから、医療が高度化していくほど国民全てに同じ医療を保証すると言うシステムでは支出は増えていくということは確かですよね。
いずれにしてもかつてヒラリー氏からも手本にされかけたという日本の医療保険制度も、やはり近ごろでは様々なほころびが目立ち始めているようで、特に近ごろ話題になるのが医療崩壊の一因とも言われる医療費削減政策というものの見直しということになるのでしょうか。

長年続いた自民党政権下では、厚労省などが中心に主に診療報酬の増減(もっぱら減?)によって医療をコントロールするという手法をとってきたわけですが、こういう金銭的モチベーションを主体としたやり方は現場にある程度弾力的に対応できる経済的、能力的余力がなければ、生き残るための最善解以外は選択できないという硬直化をもたらすものでもあるのですね。
近年の医療費削減政策の結果、一部の勝ち組や赤字を気にしない公立病院を除く多くの医療機関では儲けにならないことに手を出す余力がない状態となってしまいましたから、例えばいつ来るかも知れない救急患者のためにベッドを空けておくなどという「非合理的な無駄」を残そうと思えば、そろそろ医療機関に栄養を与えて少し太らせてやらなければならないというわけです。

もちろん金を出せば全てが解決するというほど簡単な話ではありませんが、国民皆保険制度というものは性善説を前提としなければ成立しないシステムであって、長年これを続けてそれなりに安くて良質な医療が出来てきたわけですから、基本的に医療業界人とは善人なのだろう、余裕が出来ればちゃんと国民の利益のために自ら動くだろうという推測にも一定の根拠はあるわけです。
そしてなにより医療や介護と言った分野は非常に裾野が広いマンパワー集約型産業であり今一番の成長産業でもありますから、言われ初めて久しい内需主導型産業構造への転換を図るという目的の上でも大きな見返りが期待できる分野でもあるわけです。

さて、そんな事情もあって総選挙前の時点で与野党共に総論として医療費削減政策の見直しという点では一致していたようですが、厚労省筋では今までにも民主党を無視してきた経緯がありますから、当然今後の政策も従来の自民党政権の方針継続が前提で組み立てていた気配があります。
ところがこのところ民主党が何でもゼロから見直しますとぶち上げてしまったものですから各省庁とも大慌てなんだそうですが、そうなりますと早速来年に迫っている次回の診療報酬改定はどうなるのかとは誰しも気になるところですよね。
民主党としても医療にもっと金を出すという意思はあるとしても、報道されているところから見てみますとこれがなかなか心配になってくると言いましょうか、とりあえず気合いだけは入っているのは判るけれど…という状況のようなのです。

診療報酬改定めぐる議論、政権交代で先見えず(2009年9月2日CBニュース)

 8月30日の衆院選によって政権交代が実現するのに伴い、来年度に予定されている診療報酬改定に向けた議論の行方に医療関係者の注目が集まっている。昨年度に実施された前回の診療報酬改定では、前年の10月から本格的な議論がスタートしたが、新政権が発足するまで具体的な指示は伝えられないため、厚生労働省では次の報酬改定に向けた対応を決めかねている

 診療報酬の改定は通常2年に1回実施され、来年が改定年に当たる。現在の仕組みでは、社会保障審議会(社保審)の医療部会と医療保険部会が、改定で重点評価する項目などを盛り込んだ基本方針を固め、改定率は年末の予算編成の過程で内閣が決める。手術や検査など医療行為ごとの報酬の配分については、基本方針や改定率を踏まえ、中央社会保険医療協議会(中医協)が話し合うという流れ。

 社保審医療部会はこれまでに2回開催され、基本方針の策定をめぐり意見交換したが、事務局を務める医政局総務課の担当者によると、今後の流れは現時点では未定。次の部会の開催日も決まっていない。新政権の発足後、正式に方針が伝えられてから、中医協の事務局を担当する保険局医療課とも協議して段取りを決める。

 一方、中医協ではこれまで、急性期病院の診療報酬を一日当たりの定額制にするDPCの見直しなどについて、基本方針の策定に先立って話し合ってきた。昨年度の報酬改定では、前年の10月から議論が本格化したが、民主党はそもそも中医協の構成や運営自体を見直す方針を示している。
 保険局医療課は、報酬改定に向けた今後の段取りや対応については、従来通り基本方針や改定率を踏まえつつ、新大臣と相談して決める方針だ。ただ、医療課の担当者は、今後の議論の流れについて、現時点では「全く見通しが立たない」と話している。

 民主党は7月に公表した「政策集インデックス2009」の中で、▽総医療費対GDP比を今後、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで引き上げる▽ 医師確保を進め、看護師や医療クラーク、医療ソーシャルワーカーなどの増員に努め、地域医療を守る医療機関の入院による診療報酬を増額する―などの政策も掲げている。
 厚労省のある職員は、これらの方針は政策集やマニフェスト、新聞などの報道で把握している程度で、いわば「一般の人たちと全く同じ次元」と話す。来年度の診療報酬改定については、「(新政権に)具体的な指示を頂いてから、淡々と進めていく」。

 民主党は、各省庁による来年度予算の概算要求についても見直す方針を示している。厚労省は概算要求を8月28日、財務省に提出済みだが、大臣官房会計課の担当者は、「見直し」の方向性がまだ見えないため、現時点では「何もできない状態」と困惑気味だ。

診療報酬改定プロセス、12年度までに抜本見直し-民主・鈴木寛氏(2009年9月2日CBニュース)

 民主党の鈴木寛参院議員は9月2日、キャリアブレインに対し、医療行為ごとの点数配分を中央社会保険医療協議会が決める現在の診療報酬改定プロセスを、 2012年度に予定されている報酬改定までに、抜本的に見直す必要があるとの認識を明らかにした。一方で、来年度の報酬改定については、「一つ一つを根本からやるのは時間的に厳しい」と指摘し、現行の方式が継続するとの見通しを示した。

 鈴木氏は、来年度の報酬改定について「命に直結する救急や小児、産科、外科、4疾病5事業を主体にしている医療機関が存続できるよう、入院医療費を中心に増額していきたい」と強調。ただ、改定率を決める時期については、「やってみないと分からない」と述べ、新政権発足後に検討する考えを示した。(略)

民主党筋からは「改定の内容は来年(参院選)のマニフェストづくりでより具体化される」なんて声まで出ているようですが、気が長い話と言いますか何と言いますか、ある意味で素人であることを武器にしているような側面も見え隠れしているように感じられるのは自分だけでしょうか。
もちろん削減政策を改め最悪現状維持というだけでも今より悪くはならないという考え方もありますが、こうなりますと民主党を熱烈に支持した非医療関係者である一般人の方々は、彼らの掲げる医療政策というものをどう受け止めているかというところも気になってきます。

「病院寄り」ではなく「政策の社会的トリアージ」―民主マニフェストを鈴木寛参院議員が解説(2009年9月4日ロハス・メディカル)

 民主党の鈴木寛政調副会長は4日、一部の有識者から「民主党のマニフェストは病院寄り」との声が上がっていることについて、「今の地域病院の置かれている状態はまさに"瀕死の重傷"という認識なので、そこにまず"救命"をするということ。これは政策の"社会的トリアージ"」と述べ、優先順位の問題との認識を示した。(熊田梨恵)

 民主党のマニフェストについてロハスメディアの取材に答えた。財政難のために休止に追い込まれた銚子市立総合病院(千葉県)の例を引き合いに、「"予備軍"が本当にたくさんいる」と、地域医療が崩壊の危機に瀕しているとの認識を示した。その上で、「そこについて一刻も早く病院の維持存続のために策を講ずる。"止血"と"輸血"をまずする、というのが我々の現状認識。それと異なる見解をお持ちの識者がいれば、日本の医療の現状について、意見交換をしたい」と述べた。

やはり業界に媚びているなんて批判する声はあるわけですか(苦笑)と感じる話ですが、民主党側としても国民全てが「医療はヤバイ」という認識で固まってはいない、無条件で医療業界厚遇?に賛成している人ばかりではないとは承知していると見るべきでしょうね。
そしてそうした文脈で記事を眺めた場合、ここで注目すべきは医療機関へのテコ入れはあくまで緊急避難的な処置であって、未来永劫医療に飴ばかりしゃぶらせようと言うわけではないといったニュアンスが感じられるところかも知れませんね。

このあたりは民主党が来年以降目指しているという診療報酬決定の主体である中医協の改革に関連して、委員には「もうちょっと患者とか納税者が入ってくることになる」といった発言が出てきていることにも注目すべきではないでしょうか。
良く言えばどこまでも利用者側の一般人の目線でやっていくという決意表明とも取れるのですが、ひねた見方をするならば民意を粘り強く説得し導くと言うよりは、最後の局面では民意に敢えて反するよりは擦り寄る道を選ぶ、悪く言えばその責任転嫁先として民意代表を入れておきますとも受け取れる話です。
今回の総選挙で民主党は民意に担がれて上昇気流に乗ったとも言えるわけですが、そうであるからこそ民意に反する行動は取りにくいだろうとも予想されるわけですから、今後の政策を予想する上で民意の所在というものを考慮すべきなのだとすれば、例えばこうした調査結果などはなかなか興味深い話ですよね。

勤務医の収入は高過ぎない。でも開業医は「?」(2009年9月15日日経ビジネス)

 「医師の収入は高過ぎる?」に対する、たくさんの投票とコメントありがとうございました。

 今回のテーマについては、日経メディカルオンライン(NMO)と日経ビジネスオンライン(NBO)の投票結果に、大きな差が出ました。NMOでは、「医師の給与は高過ぎる?」との問いかけに対して、「Yes」はわずか 2%。ほぼ全員が「No」と答えています。一方、NBOでは「Yes」が27%で、「No」が73%。「No」が多数派であることは同じですが、約3割は「Yes」という点が大きく異なります。

 コメントを見ると、「No」の理由は、NMOもNBOもそう違いません。「優秀な人材を集める必要性を考えれば、現状の医師の収入は決して高過ぎない」「人の命を預かるという仕事の重要性からして、決して高いとは言えない」「過重労働を強いられている今の労働環境からすれば、まだ低過ぎるのでは」といった見方が、その中心です。また、医師からは、「転勤が多いため、退職金はわずかな額。退職金を含めた生涯収入で考えれば、決して高いレベルではない」といった声も少なからず聞かれました。

 一方、NBOの「Yes」の理由として最も目立ったのは、「多忙な勤務医の収入は高過ぎるとは思わないが、開業医の収入は高過ぎる」「医師という仕事が、他の職種と比べて特別扱いされるべきものだとは思わない」との意見。このほかでは、「職業に貴賎はない。仕事は“志”ですべきで、収入で報いる必要はない」「医師が高収入であるため、理系の優秀な人材が医師に流れてしまう。製造業などの将来を考えても是正すべき」といった声のほか、感情的な非難とも思えるコメントもいくつかありました

あらゆる治療は生死につながっている

医療従事者と国民との意識の差は、この「Yes」の意見に集約されているのだと思います。私が特に注目したのは、「開業医の収入は高過ぎる」「努力している医師や優秀な医師とそうでない医師について差をつけるべき」「医師の激務に対しては、金銭面ではなく、労働環境の改善で報いる方がいいのではないか」といった意見です。

 ただ単に収入の高さを問題にしているというよりは、「医師間のある種の不公平感を正すべき」と考えている方が多いのではないかと感じました。

 “腕”の良しあしによって診療報酬に差をつけるという議論は以前からありますが、客観的な指標作りが難しいこともあり、いまだ実現には至っていません。また、労働環境の改善は喫緊の課題といえますが、医師の絶対数が限られている以上、改善を進めれば医療の供給量が下がってしまう可能性もあります。話が一筋縄にいかないのは確かですが、これらのテーマについて一歩ずつでも議論を進めることが、医療崩壊を食い止め、医師と患者の信頼関係を再構築するのにつながるのではないかと思いました。(略)

要するに一般人の少なからぬ割合が医者は儲けすぎだし、これ以上医者に金をつぎ込むなど許せないと思っている、とりわけ開業医は楽して儲けすぎでケシカランという認識を抱いていると言うことでしょうか。
その点で思い出されるのが先日は民主党側から痛烈な医師会批判のコメント続出という話がありましたが、彼らの認識的には「医師会=開業医の圧力団体」といった感じらしいことが言葉の端々から見え隠れすると同時に、そうした団体は医療政策の根幹に関わるにはふさわしくないと考えているらしい気配も察せられるところです。
となると上記のような民意の所在と併せて、一般人寄りとならざるを得ないだろう民主党政権の医療政策がどういう方向付けになっていくのか、それなりに想像図は描けそうな気がしてくるところではないか、とも思えてきます。

あくまでも全くの想像にしか過ぎない話ですけれども、政権交代でみんなで一緒に幸せになれるかと言えば、やはりここでも誰かは泣くような羽目になりそうですかね。

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