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2009年9月 4日 (金)

常識の通用しない時代の非常識のあり方

つい先日にも政権交代が見込まれるこの時期にこんな先走ったこと言っちゃっていいの?と懸念されていた厚労省らの時期診療報酬改定作業に向けた動きなんですが、どうも予想通りと言いますか、予算から何から全てやり直しになりかねない勢いのようです。
民主党側では医療に関してもゼロから徹底的にやり直すくらいのつもりでいるようなんですが、医療業界に限らず不景気で余裕のない現場に齟齬を来さないよう円滑な運用を期待したいところですかね。

財務省、予算編成ストップの状態続く(2009年9月2日TBSニュース)

 民主党が「予算の組み替え」を宣言するなか、財務省では例年なら本格始動しているはずの予算編成がストップした状態となっています。

 自公政権時代、霞が関の秋は「予算の季節」。9月に入ると財務省主計局は、説明に訪れる各省庁の官僚たちであふれかえるはずでした。

 ところが、民主党が予算の組み換えを宣言しているため、今年は説明に訪れる官僚の姿は全く見当たりません。例年なら廊下に並べられる椅子も隅に置かれたままです。

 民主党からは新しい予算編成についての具体的な指示はなく、財務省での編成作業は完全にストップしています。

 さらに民主党は、自民党が景気対策として補正予算に盛り込んだ46の基金への支出4兆3000億円分について待ったをかける方針で、財務省幹部は困惑の色を隠せません。

 「すでに基金に支出が済んでいるものも多くて、どれだけ戻せるかを調査するだけでも膨大な作業になる」(財務幹部)

 「新しい政権をスタートするまで、大きな決定は待つようにとお願いする」(民主党 岡田克也幹事長)

 子ども手当や農家の個別補償など、今回の概算要求に含まれていない項目は今後改めて提出される見通しで、霞が関では手探りの作業が続きそうです。

医療政策を国民で決めるため徹底的に情報公開 民主党・足立信也参院議員(2009年9月2日ロハス・メディカル)

 民主党の足立信也政調副会長(参院議員)は2日、今後の医療政策を決定するにあたって「国民の合意による負担と給付の関係を築くために、一部の人が決めるのでなく国民全体で議論する仕組みをいかに構築するかが重要だ。そのためにも、まずは徹底した情報公開を行いたい」と述べた。(川口恭)

 ロハスメディアの取材に答えた。「それと同時に喫緊の課題にも対応しなければならない。現下では新型インフルエンザだ」とも述べた。

社会保障国民会議報告書「まったく関係ない」―民主党・仙谷由人衆院議員(2009年9月2日ロハス・メディカル)

 民主党の仙谷由人衆院議員(医療再建議員懇談会会長、がん治療の前進をめざす議員懇談会会長)は2日、社会保障国民会議が昨年11月にまとめた報告書について、今後の民主党の医療政策には影響しないとの見解を示した。(熊田梨恵)

 民主党の医療政策に関するロハスメディアの取材に答えた。仙谷議員は「前の政権下でできたものは全く我々には関係ない。医療に関しては『知らないよ』と言える」と述べた。

ちなみに「社会保障のあるべき姿について、国民に分かりやすく議論を行うことを目的として、平成20年1月25日に閣議決定により開催が決ま」った社会保障国民会議が出してきました最終報告とはこちらにあります通りですが、すでに見慣れたものになった内容ですので改めて言及はしません。
そう言えば先日「三日後に大きな変化があるが、大丈夫でしょうか?」の名言?を吐かれた樋口恵子氏も同会議のメンバーでしたが、委員名簿を見るだけでも「いつものアレか…」と結論が見えそうな会議ではありましたけれどもね。

民主党が一から(ゼロから?)作り上げてくるだろう医療政策なるものは医療従事者のみならず関心のあるところだと思いますが、せっかく国民も行政も医療業界の言うことに耳を傾けようという姿勢を示し始めている時代なんですから、舛添大臣の言葉ではありませんが業界側でも要望ははっきりと声に出していくべきですよね。
特に注意すべきは「そんなこと、言わなくても当たり前の常識だろう?」と思いこんでいることが、実は世間から見れば全く当たり前でも常識でもなかったという話はいくらでもあるわけで、下手をすると全く違う常識のもとに妙な配慮をされてしまい、かえって話がややこしくなる可能性すらあるということなのです。
そうした認識の違いを示す一例として、最近ちょっとした話題になったこちらの記事などを紹介してみましょう。

「一般病院」医師の月給に8万5千円の“逆”地域格差(2009年8月24日CBニュース)

 全国病院経営管理学会がまとめた「病院給与・勤務条件実態調査」によると、「私的病院」のうち、「地方」の「一般病院」に勤務する非管理職の医師の2008年7月の給与は、「都市」の医師よりも8万5372円高い「逆地域格差」が生じていた

 調査は昨年6-8月に実施。「08年7月分職種別給与」や「職種別年間給与」など6項目を774病院に質問し、153病院が回答した(回答率19.8%)。

 集計結果によると、病院に勤務する医師の08年7月の所定内・外給与は、平均96万3777円(平均年齢38.2歳)だった。経営主体別に見ると、厚生連、済生会、日赤関係病院を含む「公的病院」(9病院が回答)が93万7430円(34.3歳)、その他の「私的病院」(144病院)が97万1436円 (39.3歳)

 「私的病院」を最も多い病床種別に「一般病院」(123病院)と「精神病院」(21病院)に区分すると、「一般病院」の医師の給与は97万426円(39.2歳)、「精神病院」は97万8542円(40.5歳)だった。
 「一般病院」を地域別に見ると、東京都や医育機関所在地の「都市」(81病院)では95万1556円(39.5歳)、その他の地域を示す「地方」(42 病院)では103万6828円(38.0歳)で、「地方」が8万5272円高かった。これに対し「精神病院」では、「都市」(9病院)が104万3362 円(42.5歳)、「地方」(12病院)が96万4653円(40.0歳)で、都市が7万8709円高かった=表=。

 また、07年度の非管理職の医師の年収は、「公的病院」が1073万3000円(32.9歳)、「私的病院」が1311万5000円(39.7歳)。「私的病院」の「一般病院」が1287万4000円(39.5歳)、「精神病院」が1449万8000円(40.6歳)だった。

全般的に見ると公的病院より私的病院が給与が高い、都市部より地方の方が給与が高いという「至って当たり前」の結果に見えるわけですが、平素から医療系ニュースを配信しているCBニュースさんがわざわざ「”逆”地域格差」なんて大層なタイトルをつけていただいているあたりがミソですよね。
医者の皆さんにしてみれば「田舎なんて誰も好きで行きたいと思わないんだし、給料高くしてでも人を集めるのは当然なんじゃないの?」と思いがちですが、世間では逆に「都市部では生活にかかる費用も高いし、給料は高くて当たり前」という考え方の方が常識であって、医者の世界こそ非常識ということになるわけです。
一般企業に限らず公務員自衛隊などでも都市部の方が地方より高いわけですが、一方で医療業界においては医師に限らず薬剤師などでも地方の方が給与が高いという逆転現象が見られるようで、もし世間並みの常識に従って医師給与を「改善」されてしまったりすると、これはあっという間に地方の医療崩壊になるかも、ですよね。

医療の世界では当たり前の常識じゃないかと思っていたものが実は世間の非常識だったと言う話は海外にもあって、こういう話も考えてみると世間の常識から外れた不思議な話ではありますよね。
しかし日本でも医療のみならず介護業界でも全く同様の現象が当たり前に起こっているわけですから、これは何も他人事ではないということには留意しなければならないでしょう。

失業率は上がる一方のご時世に…NHSは人手不足! /英国(2009年8月12日UK TODAY)

英国の国民医療サービス(NHS)では、看護師や医師の人手不足が問題になっていることが伝えられた。

「NHS情報センター」の調査によると看護師、助産師、医師、歯科医の欠員状況が悪化したのは5年ぶり。現在、20のポストにつき1つの割合で欠員となっており、看護師の間からは堪え難いストレス下での労働を強いられているとして、強い抗議の声が上がっているという。

またNHSでは今冬の新型インフルエンザ対策に向けさらなるスタッフ増員が求められていることを受け、人材派遣会社へ多額の費用を支払わざるをえない状況にあるとされている。

「Royal College of Nursing」の最高責任者であるピーター・カーター博士は「長期に渡る人手不足が心配されるのはもちろんのこと、短期間の欠員さえスタッフの負担を増やし、医療ケアの質の低下を招く」と懸念を示している。

NHS(National Health Service、国民保健医療サービス)と言えばイギリス医療制度の象徴として日本でも有名ですが、ごく簡単に言えば国民はまず家庭医を受診して判断を経なければ専門医にはかかれないという「非常に平等な」医療システムです。
この家庭医というものが日本の開業医のようなものを想像していただいていると激しく期待を裏切られるものでして、何しろ日本の町医者と言えばレントゲン、エコーから果てはCTの装備率まで断然世界一というトンでもないシロモノですが、あちらでは文字通り聴診器一本で診療していたりするわけです。
救急搬送が丸一日放置されてたとか、予定手術は半年待ちだとか数々の伝説もある彼の地の医療の状況において、何より当の医者達が志気崩壊で先を争って国外逃亡しているというシステムでしたが、それでも(金銭的に見れば)非常に効率も良く、何より「平等である」という点で意外に国民の受けは良かったとも言います。
さすがに最近では彼の国でも多少これはヤバいのではないのか?という認識が出てきているとも聞きますが、こういう記事が出てくるところを見ると国民の方では「この不景気に何を贅沢な!食っていけるだけでもありがたく思え!」という感覚が根強いのかとも想像されます。
本邦でも折からの不景気もあって「将来、生活に不自由する心配がなく安心」と医学部が大人気なんだそうですが、ちょうど定員も大幅に増やすなんてことを言っているようですからどんどん入学していただけば皆が幸せになれるかも知れませんね。
ところで不景気と言えばリストラが行きすぎたせいか、一部業界ではかつてない過酷な労働を強いられるようになったという話も漏れ聞こえてきますが、そんな中でこんな話が出てきて何故か一部医療関係者に受けているようです。

「km」国際自動車を国交省聴聞 超過勤務問題(2009年7月17日朝日新聞)

 運転手の超過勤務などが発覚した大手タクシー・国際自動車(東京都港区)に対し、国土交通省関東運輸局は16日、事業許可を取り消すかどうかを判断するため、言い分を聞く聴聞手続きをした。同社は「徹底的な再発防止をはかる。寛大な措置を」と訴えた。処分は8月中にも出される。許可が取り消されれば、大手では初めてとなる。

 聴聞で同社は、勤務の管理システムを見直す▽災害時にけが人らを搬送する協定を東京消防庁と結んでおり、許可取り消しの影響が大きい――などと述べ、事業停止など処分を軽くするよう求めた

 一方、必要な休息時間を与えなかったとの指摘については「見解の違い」と違法性を否認。政府が昨夏に規制緩和路線を改めて増車を規制し、増車した同社などへの違反罰則を強めたことが影響した、との見方も示した。

 今回、主に問題となったのは、運転手の過労対策。2日間で21時間という拘束時間規定の超過などがあちこちの営業所で発覚。今年2月の監査でも違反が見つかり、3年間の累積違反点数が道路運送法の許可取り消し基準の80点に達した。

     ◇

 「km」マークで知られる国際自動車は、関連会社や提携会社を含めると首都圏を中心に約3500台が走る。業界4位の規模だ。

 このうち、今回処分の対象となったのは本体のタクシー321台とハイヤー589台。許可が取り消されればこれらは営業できず、2年間は再申請もできない。

 しかし、今年4月に従前からの計画で分社化して本体の規模を縮小しており、「結果的に利用者への影響は限定的になった」との見方もある。特に増車の制限がないハイヤーは、関連会社が増車することも可能だという。

 だが、菅原信一社長は「大勢の従業員を抱え、地域の生活交通への影響も大きい」と処分の軽減を強く主張。処分された場合の従業員の処遇について同社は、「現時点では答えられない」としている。(佐々木学)

「運転手に超勤強いる」国際自動車の事業許可を取り消し (2009年9月2日産経新聞)

 大手タクシー会社「国際自動車」(東京都港区)が運転手に超過勤務を強いるなど、道路運送法上の違反を繰り返していた問題で、国土交通省関東運輸局は2日、一般乗用旅客事業許可を取り消しを国際自動車社に通知した。大手タクシー会社の事業許可取り消しは初。再申請が認められる2年後まで、国際自動車社は所有するタクシーとハイヤー約910台を稼働させられなくなる

 関東運輸局によると、国際自動車は、2日間で21時間が限度とされる運転手の拘束時間を超過する違反を繰り返していたという。2月に国際自動車に監査に入った際、業務日誌などから判明した。

 道路運送法では過去3年間で累積違反が80点以上になると、事業許可が取り消される。国際自動車は同様の超過勤務違反などが重なり、取り消し基準に達したという。

 国際自動車は、規定によって、最低2年間は約910台を稼働できなくなるというが、グループ子会社や提携会社は対象外。また、ハイヤーについては、グループ子会社などへ移すことが可能で、実質的に制裁を受けるのは、タクシー分の計321台とみられる。

何かどこかで聞いたような話が並んでいるなと感じられる方も多いと思いますが、特に受けているのが「2日間で21時間という拘束時間規定の超過などがあちこちの営業所で発覚」云々の下りのようなんですね。
今どきこの種の違反はどこの業界でも大なり小なりやっていることと思いますが、医療業界でも最近ようやく労基署の指導が入るようになり、多少は世間並みになってきた感があります。
しかしそのたびに違反をさせた当事者である管理者側は元より、違法な労働を強いられたはずの現場労働者である医師達からも「法律を守るのは無理」などと違法行為を積極的に擁護するコメントが出てくるところなど、やはり医者の常識は世間の非常識なのかと言われてしまうところではあるわけです。

世の中に「タクシーを拾えなかったばかりに大変なことになった!」と言う人はいくらでもいるだろうと思いますが、それでも拾ったタクシーの運転手が「お客様がたくさん待ってるんでね、もう丸二日寝ないで頑張ってるんですよ」なんてことを言いだせば普通の人はタクシー会社に一言あるべきかとも考えますよね。
患者さんがたくさん待っているからと丸二日寝ないで今日も手術をしているという先生方は世の中にいくらでもいると思いますし、そうまで自分を捨ててかかれるというのはある意味尊敬に値することなのかも知れませんけれども、もしその行為が患者に喜ばれていると思っているのであれば行為はともかく勘違いだけは早急に是正した方がいいと思います。
頑張っていることを見せるのは接客における基本的テクニックですけれども、それは業務達成の手段であって別に頑張ることが目的でも何でもないわけですから、体育会で汗を流した学生時代そのままの感覚で日々の業務に邁進している熱心な先生方ほど、人並み外れた努力が妙な方向に迷走していないかと一度立ち止まって考えてみなければならないかも知れないですね。

医者が手術台の上に載せられる立場になった時に初めて「やっぱり執刀医は今にも過労死しそうなフラフラよりは、元気いっぱいの先生の方がいい」と実感したなんて笑い話のような話も聞きますが、顧客満足度という当たり前の概念が根付いていればその程度のことはもっと早くに気付いていたかも知れないとは思うところです。
普通の商売であれば顧客に如何にものを買わせるか、満足させるかというテクニックは真っ先にたたき込まれる基本的スキルですが、驚くべき事に医師を始め医療従事者教育の過程においてこういうことはほとんどスルーされてきた結果、病院廊下で顧客たる患者とすれ違っても挨拶すらしないスタッフが珍しくありません。
最近はモンスター患者が多いと話題になりますが、患者は黙っていても自ら進んで治療を望んで来院し、言う通りに治療を受けるものだという前提でやっているようなあまりに世間知らずのスタッフが、初期対応を誤っているというのもまた事実だと思いますね。

最近ではゲーム攻略本よろしくモンスター対策本なんてものも沢山出ていますからスタッフ各自が最低限の勉強はしていて当然だと思いますが、「これは現場の状況的に無理」などと言う前にその状況を改める努力もしないとならないし、世間の非常識がまん延しているのが問題視されているならさっさと常識が通じるように務めなければならない。
「患者が多くてさばけない!」と言うなら完全予約制を検討するべきだし、「予約患者だけに制限したら経営が成り立たないんだ!」と言うなら顧客満足度向上のために診療報酬増やせと叫ぶべきだし、「でも患者が来るんだから仕方ないじゃないか!」と言うなら手術半年待ちのイギリスの医療満足度が何故日本などよりはるかに高いのかを検証すべきですよ(あくまで一例ですけどね)。
スポンサーであり顧客である国民の非常識をこれが医療の常識だと押し付けるなら、最低限「いやこれにはこんな理由があって、この方が我々もあなた達もハッピーになれるんだから」と説明できなければならないはずですが出来ていない、そして案外冷静になって見直してみればそんな改善しがたい非常識は意外に多くはないんじゃないかと言う気がします。

正しい方向への改善であれば行うべく努力するのが顧客に対する責任であるわけですが、とりわけ今のように医療サイドの声を世間が聞く気になっているこのタイミングでお互いにとって得になるようなwin-winの改善を行わずして、次は一体いつチャンスが来るかも判らないということですよね。
何にしろ国民みんなが「医療の世界も変われるだろう?変わろうよ!俺たちもそれなりに覚悟してんだから!」と大騒ぎしている最中にあって、結局一番の抵抗勢力が変化による最大の受益者となれるかも知れない当の医療関係者だった、なんてオチがついたんでは、後代の医療従事者からあの爺医たちのせいで俺らがなんて文句を言われかねないという話ですよ。

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