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2009年9月 7日 (月)

現場だけではもう限界なだけに

今どき疲れがたまっているのは皆さん同じという声もありますが、やはり現場の医者もそれなりに疲れがたまっているようで、先頃にはこんな調査が出ていました。

勤務医9%、心身の疲れ「深刻」 日本医師会調査(2009年9月4日朝日新聞)

 病院勤務医の9%が、心身に疲れの兆候がみられ、医学的にメンタルヘルスの支援が必要な状態にある、という調査結果を2日、日本医師会が公表した。背景に、休日返上の長時間勤務など、勤務医の厳しい労働環境がある。

 調査は、同会の勤務医の会員約8万人のうち、1万人(男性8千人、女性2千人)を対象に郵送で実施。3879人から回答を得た。

 寝つきの悪さや、食欲の有無、集中力の低下など、精神的な疲れをみる16項目の回答を点数化した。その結果、9%が中程度以上の深刻な状態にあり、メンタルヘルスの支援が必要だと判定された。5%は1週間に何回も数分以上、自殺や死について考えていた。1%は「具体的な計画を立てたり、実際に死のうとしたりした」という。

 1カ月の休日は4日以下が46%。8日以上は男性が18%、女性で32%。病院の規模が大きいほど、睡眠時間が短く、休日も少ない傾向だった。

 53%は、自分の体調不良を「他人に相談しない」と答えた。理由として、「自分で対応できる」という自信や、「同僚に知られたくない」「自分が弱いと思われそう」と、孤立しがちな状況もうかがわせた。(権敬淑)

医師の6% 自殺考える…日本医師会調査(2009年9月2日産経ニュース)

 6%の医師が死や自殺について考える-。こんなショッキングな調査結果が2日、日本医師会が実施したアンケートで明らかになった。医師会は今年2月、会員の勤務医1万人を対象に調査を行い、3879人から回答を得た。「医療崩壊」が叫ばれる勤務医の過酷な勤務実態が改めて浮き彫りになった。医師らはメンタルヘルスの支援や休日増を求めている。

 調査結果によると、回答した医師の年齢は40代と50代がそれぞれ約30%を占め、30代(18・5%)、20代(2・3%)と続いた。

 1カ月の休日は、「4日以下」が最も多く46・3%、「5~7日」が30・4%だった。「8日以上」の人が20・1%いる一方で、「なし」も8・7%いた。

 「自殺や死について1週間に数回考えることがある」と回答した人は5・3%。「実際に自殺を計画したり、死のうとした」と答えた人(0・4%)と合わせると約6%いた。

 72・3%が「メンタルヘルスを支援する態勢整備」について「必要」と回答し、「少なくとも週に1回の休日」を求める人は89・1%を占めた

 「患者や家族からの不当なクレームやトラブルがあった」と答えた人は44・4%。医師会の今村聡常任理事は「患者からのクレームが医師にとってストレスになっている」と訴えた。

勤務医の4割が「不当なクレーム」経験-日医調査(2009年9月3日CBニュース)

 病院などに勤務する医師の約4割が、患者やその家族からの不当なクレームやトラブルを経験していることが、日本医師会の「勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査」の結果から分かった。これらの経験がある医師の割合は病床数の多い病院で高く、日医では、不当なクレームへの組織的な対応など7か条を病院に提言するリーフレットを作成した。

 調査は今年2月20日-3月6日、日医会員の勤務医1万人(男性8000人、女性2000人)を対象に実施。3879人から回答があった。

 この半年間に、患者やその家族からの不当なクレームやトラブルを受けたことがあるかを尋ねたところ、「1-3回」が39.0%(1511人)、「4回以上」が5.4%(210人)で、これらを合わせると計44.4%(1721人)が受けたことがあったと答えた
 男女別では、男性勤務医の46.3%(1384人)、女性勤務医の40.3%(332人)が経験していた。
 また、年代別では、「30歳代」が51.7%(365人)と最も多く、以下「20歳代」50.5%(45人)、「40歳代」49.3%(559人)など。一方、「70歳代以上」は15.8%(43人)で最も少なかった。
 勤務先の医療機関の病床数別に見ると、「500床以上」が48.7%(488人)で最多。以下「100-499床」45.2%(993人)、「50-99床」43.9%(178人)などの順で、病床数が多いほど経験した医師の割合が高かった

 調査ではまた、自殺や死について週に数回考えたり、具体的な自殺の計画を立てて、実際に死のうとしたりしたことがある勤務医が合わせて約6%いることも分かった。日医の今村聡常任理事は9月2日の定例記者会見で、「一般国民の割合から比べると非常に高く、衝撃的なデータだと考えている」と述べた。

 調査結果を受け、日医は「医師の休息が医師のためにも患者のためにも大事と考える」「暴力や不当なクレームを予防し、組織として対応する」など勤務医の健康を守るための7か条の提言を盛り込んだ病院向けリーフレットを作成。今後、病院に配布し、組織的な取り組みを促す。

 今村常任理事は会見で、日医として勤務医の労働環境整備などを行政や政界に働き掛け続けていく方針を示した。

この数字をどう見るかもまた色々と議論のあるところではありますが、諸外国と同様に日本においても医師の自殺率は非医師に比べて高いことが知られ、その原因としても一般的な健康問題や経済問題よりもうつ状態によるものが多いのではないかというレポートが出ています。
これに加えていわゆる過労死も多い、医学部生の自殺率も普通の四年制大学より高いと、どうも医者という仕事はひどく健康に悪いものであるらしいんですね(苦笑)。

80年代あたりから「スパゲッティ症候群」だの「薬漬け医療」だの「三時間待ち三分診療」だのと医療が批判に晒され続け、それに対応しようとして現場が疲弊し、結局かえって患者側にとっては悪い状況になっているのが今の医療とも言えるでしょう。
最近は医療崩壊だの何だのと言う騒ぎで医者の労働環境も悪化する一方だと言い、とりわけ地方における地域医療というものはどこも良い状況にはありませんが、今どき医療現場の尻を叩いていればよいという認識では全く通用しない時代です。
逆に考えてみれば医療を受ける側にとっては現場に対して非常に「恩を売りやすい」状況とも言えるわけで、ここでうまく「今後はちょっと違うから大丈夫」とアピールできれば医療従事者受けが一気に好転!という一発逆転の目も出てきていると前向きに考えてみてはどうでしょうか。

しかし状況を改めるべく住民側も努力すると言っても、間違った方向に努力したところで甲斐がないわけですから、しっかりと医療現場のニーズを把握するということが重要になってきます。
ひと頃からこうした状況に危機感を覚えた地域住民の方々が「○○の医療を守る会」などというものを結成し、多くの署名を揃えて自治体首長に「医者を集めてこい!」と要求する署名活動なるものが盛んに行われるようになってきましたが、あまりああいう行動が実を結んだという話も聞きませんよね。
某所界隈では「それだけの住民が一人幾らかずつでも出せば医者の一人や二人雇えるのでは?」などと揶揄されていたようですが、「現場の人間は別に署名を求めているわけではない」とか、「求心力のない自治体首長が何を言おうが医者は集まらない」という当たり前のことを理解していなかったのが敗因とも言えるわけです。
さすがに最近では「これはあまり効果がない」ということが知られてきたのでしょうか、少しばかり方針転換が行われてくるようになったようです。

以前には兵庫から県立柏原病院市立西脇病院で住民運動によって医者集めに成功したという事例を紹介しましたが、医療崩壊の根本原因の一つとして現場の疲弊があるということがようやく理解され始めた結果、地域医療を守るのは地域住民自身であるという認識が広がってきているように見えるのは良い傾向だと思いますね。
本日は各地のこうした話題を幾つか拾い上げてみますが、まずはこちら、行政も巻き込んでの勉強会を開いたという話題です。

地域医療をみんなで守ろう 緊急以外、平日の昼間受診を訴え 菊川で公開シンポ /静岡(2009年8月11日中日新聞)

市民や行政、600人参加

 菊川市と市立総合病院は9日、市民公開シンポジウム「これからの地域医療を考える-築こう住民・行政・医療者の輪」(中日新聞東海本社後援)を同市本所の菊川文化会館アエルで開き、市内外の行政・医療関係者や市民ら約600人が参加した。

 太田順一市長は「市立総合病院は、開設から59年が経過し地域医療の中心的役割を果たし続けている。全国各地で地域医療の崩壊といった現象が起きているが、東遠地域の医療を確立させなければいけない」とあいさつした。

 城西大の伊関友伸准教授の基調講演では、医師の過酷な勤務状況などを説明。住民ができることとして「できるだけ平日の昼間に受診し、休日や夜間は真に必要な治療だけにする。そのために病気、自分の体に関する知恵を持つ」と訴えた。

 シンポジウムでパネリストを務めた市立総合病院の村田英之院長は、昨年策定した同病院の中期計画に基づき、御前崎市立御前崎総合病院との連携や回復期リハビリ病棟の開設など地域連携の推進、病院機能の強化、経営改善に取り組んでいることを強調した。

 コーディネーターを務めた小林利彦浜松医科大付属病院副院長は「医療資源は限りあるもの。蛇口をひねれば出るが、ずっと開いていると枯れてしまう。このことをご理解ください」と締めくくった。 (中野吉洋)

医療問題もひと頃と比べると色々な意味でマスコミの扱いも変化してきているように見えますが、どうもマスコミ自身も認めているように久しく「医療=悪=国民の敵」という構図で盛んにイメージ操作をしてきたものが尾を引いている感じですかね(マスコミの方では最近になって少しは反省するということを覚えたようですが、俗にこういうのをマッチポンプと言うのでしょうか?)。
ネット時代と言っても未だに情報と言えば新聞、テレビから流れてくるものしかないと思っている国民も多いわけですが、そうした層は未だに以前のマスコミが描いてきた「白い巨塔」だのの小説的イメージから脱却していないことも事実であって、これは何とか改善していかなければならないとは心ある関係者一同考えているところだと思います。
ただその主体としてすでに悪印象濃厚な医師会などが「いや医者もこれで大変なんですよ」なんてことをアピールしてもかえって逆効果というものですから(苦笑)、こんな感じで行政などを巻き込んでというのは非常に良いやり方ではないかと言う気がしますね。

ただしこういう話を実際の行動に移すのにはそれなりに自治体当事者も住人も危機感を共有していなければならないわけで、一部だけが先走ると議会で土下座しなければならないという騒ぎになりますから注意しなければなりません。
そこでこちら、とりあえず盛り上げてしまおうという話を紹介しておきます。

日野市立病院応援団が発足 /東京(2009年9月3日産経ニュース)

 慢性的な赤字経営で存続が危ぶまれている東京都日野市立病院(同市多摩平)を盛り上げるため、市内の法人、市民らが3日、日野市立病院応援団を発足させた。

 同病院は地域の中核病院だが、医師、看護師の欠員が続いて「患者に不十分な対応をせざるを得ない」(市担当者)のが現状で、存続が危ぶまれている。そこで日野法人会の呼びかけで、地域ぐるみで支えていくことにした。

 具体的な活動内容は(1)診療科目や得意分野などの周知(2)外来の混雑緩和のため、かかりつけ医との連携強化を応援(3)人材確保のため、看護師、医師募集への協力・紹介-など。(略)

医療と出産 充実した街願い 赤字の日野市立病院 市民らが応援団/東京(2009年9月4日東京新聞)

 経営赤字が続く日野市立病院を応援しようと、日野市内の企業を中心に、市民や各種団体などが三日、応援団を発足させた。

 発足式には馬場弘融市長や同市商工会など各種団体のメンバー、市民など約百三十人が出席。熊井浩一郎院長は「院長に就任してから医師の確保に全力を注いできた。小児科医不足で分娩(ぶんべん)を一時休止したこともあったが、当初三十九人だった医師を五十人まで増やすことができた」と成果をアピールした。

 応援団は、診察情報やかかりつけ医と同病院の役割分担などを市民に広く周知したり、看護師免許を持ちながら働いていない人を病院に紹介したりしてサポートに努める。

 日野法人会の大木茂会長は「市民、開業医、市立病院の協力体制をつくって医療や出産が充実した街をつくりたい」と話した。(略)

日野市立病院は数年前に立て替えをしたばかりの300症規模の二次救急病院で、日野市民17万人にとって中核病院という位置付けですが、例によって例の如くな経営難で総務省の話に乗って病院改革プランを策定し再建を目指しているという経緯があります。
さてこの記事、一見するとあまり実効性のなさそうなとも思える話が並んでいるわけですが、個人的にポイントなのは組織の名称を「~を守る会」などといったありふれたものではなく、「応援団」と妙に肉体派的な名付けをしているところではないでしょうかね。

地域のイベント運営などに関わったことがある人ならご理解いただけるでしょうが、結局イベントの正否を握るのはどれだけ多くの人間を巻き込んで暴走できるかという盛り上げ方次第なところがあって、その点でいかにもな正論を並べただけの「守る会」式では煙草の箱の警告文と同じで、乗りたくても乗りようがないという話なんですよね。
巻き込まれた人間にすればひとたび汗をかいて御輿を担いだ以上は無駄にしたくないという心理が働くわけですから、要するにこういうことは「お前らうるせえよ!俺は夜勤で寝てねえんだよ!」と怒鳴り込んでくる部外者を作らず全員を当事者にすることが祭りを成功させる一番のポイントになるのです。
日野市民の認識も同会の今後も今のところ何とも言いかねるところですが、ノリの良い人間がうまい具合に状況を主導できるならひょっとして面白いことになるんじゃないかなと言う期待感を、少しばかり抱いていたりもします。

さてお次は行政側の話ですが、何だかんだと言いながら時代もついにここまで来たかというニュースです。

地域医療を守る条例案提出 医師不足の宮崎県延岡市/宮崎(2009年9月1日47ニュース)

 宮崎県延岡市の首藤正治市長は1日、危機的な地域医療を守るために行政と市民の責務や理念を定めた条例案を、9月定例市議会に提出した。市によると、同様の条例は奈良県にあるが、市町村では全国初という。18日の本会議で可決される見通し。

 同市では、県立延岡病院で眼科や消化器系内科が休診となるなど、医師不足が深刻化。5月から、市内で新規開業した診療所に500万円の補助金を交付するなど、対策に躍起だ。

 条例案には、市や市民、医療機関が一体となって地域医療を守るとの理念を明記。それぞれの責務として(1)市は市民の「健康長寿」のため総合的な施策を実施(2)市民はかかりつけ医を持ち、安易な夜間・休日の受診を控える(3)医療機関は患者に適切な説明を行い信頼関係を醸成―などの努力目標を定めている。

 市地域医療対策室は「県北部での医療崩壊のイメージをぬぐい去り、医療や健康長寿を守っていくことをアピールして、今後の施策につなげていきたい」としている。

ちなみに記事中にある奈良の同様の条例云々とは「ならの地域医療を守り育てる条例」のことで、本年6月の県議会で全会一致で可決されたものです。
こちらも制定までに一悶着あったようですが、こうした経緯なども全て込みで全国の医療関係者は見ているのだという認識も持っておいていただいた方が良いようには思いますね。

奈良県議会「ならの地域医療を守り育てる条例」を全会一致で可決/奈良(2009年6月26日Dailumotion)

2009年6月26日開催の奈良県議会で厚生委員会(自民・井岡正徳委員長)が提案、19日の委員会で反対していた共産党委員が一部修正を条件に賛成にまわり、全会一致で可決された。

条例は前文と6条からなり、目的を「地域医療の基本理念を定め、県の責務を明らかにし、県と県民、医師らが協働して地域医療を守り育てる」とうたう。県内で相次いだ医療をめぐるトラブルを受け、県議会も何らかの姿勢を示す必要があるとして、昨年9月から作業を進めていた。県民の努力義務については、委員会の検討資料で「急を要さないのに時間外に受診する患者の増加(コンビニ受診)」「患者の集中による小児輪番病院の疲弊」と指摘されていた。

委員会では賛否は分かれ、今井光子議員(共産)は、県内の医療機能の低下は県の行政に責任があるとして、「県民の努力義務は実態にそぐわない。病気になりたくてなっている人はいない」と条例案に反対。高柳忠夫議員(民主)は、賛成しながらも「義務が一人歩きしないような担保が必要」と注文を付けていた。

この条例は20日以内に施行される。県議会としては初めての委員会提案で、全国都道府県議会議長会によると、成立すれば医療の議員提案としては全国初とのこと。

実際のところは奈良の条文を見ていただいても単なる決意表明といったところで、未だ受ける側のロジックだけを書き立てている段階ですから実効性はともかくという話なんですが、ようやく自治体が条例というレベルで主体的に動き始めたことの意味はそれなりに大きいかと思いますね。
「国が」「医局が」と他人任せにするばかりだった地方自治体も主体的に医療に関わるようになってくるとなれば、今までのように「医者などいくらでもやってくる」と使い捨てにしているばかりではどうしようもないことに気付かざるを得ないでしょう。
いずれにしても医療従事者が逃げ出す一方では何をどう宣言してみたところで話にならないわけですから、まずは医療従事者に対してどうアピールしていくかということを戦略の根幹に据えてみるのも良いだろうし、何よりそうした現場中心の目線こそが今まで自治体病院に最も欠けていたところなんじゃないかとも思うわけです。

どうせ地域のイメージ向上が目的ということであればいっそターゲットを絞って、「我が街は医療従事者の好感度ナンバーワン都市を目指します!」くらいのことをぶち上げ、全国から「おっ、あそこは何か違うぞ」と医療従事者が先を争い集まってくる街を目指してみるというのはどうでしょうかね。
研修医マッチングの競争率全国一位だとか、病院スタッフの満足度全国一位だとか、そういったところを実際に目指してみようかという話になれば、あちらからもこちらからも長年現場に山積する問題が自然に浮かび上がってくるんじゃないでしょうか。
これを機会にそんなところまで意識改革出来たと言うのであれば、形ばかりの改革プランなどよりはるかに実効性あるものになりそうにも思えますけれどもね。

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