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2009年8月20日 (木)

新型インフルエンザ、相次いで死亡例の報告

本日こういう話をするつもりではなかったのですが、予定を変更してまたもや新型インフルエンザの話題です。
さて、すでに御存知のように、先日沖縄で本邦初の死亡例があったと思ったところで、今度は相次いで二人目、三人目が亡くなったという報道が出ています。

実際問題として水面下に潜伏している死亡者数はもっと多いと思われるところですが、やはりこれは国内でも死者発生という報道が呼び水になって現場の意識がそちらに向き始めたということなんでしょうね。
今回亡くなった二人はいずれも高齢者ということで、従来若年者が主体と言われてきた新型患者像のメインストリームから少しばかり外れたところにあるようですが、こうした事例を見ますと新型とは思っていなかったあの症例ももしや…と心当たりの出てきた先生方も多いのではないでしょうか?
ともあれ、まずは二人目である神戸の事例から記事を拾い上げてみましょう。

新型インフル、国内2人目の死者 神戸の70代男性(2009年8月18日朝日新聞)

 神戸市は18日、新型の豚インフルエンザに感染した同市垂水区の男性(77)が同日早朝に入院先の病院で死亡した、と発表した。国内で新型インフルエンザ感染者の死者は、沖縄県の患者に次いで2人目。男性は糖尿病による腎不全で人工透析の治療を受けていた。急性気管支炎を起こし、持病の肺気腫が悪化したのが直接の死因。市は、新型インフルエンザが急性気管支炎を発症させた可能性があるとみている。

 市によると、男性は16日に38度の熱が出て、翌17日にかかりつけの市内の医療機関を受診。簡易検査では陰性だったが、せきなどの症状が重いため、午後1時ごろに別の市内の病院に入院。改めて簡易検査をしたところインフルエンザウイルスの陽性反応が出た。治療薬タミフルの処方を受けたが、翌18日早朝に容体が急変し、死亡した。

 市が男性から採取した検体をPCR検査(遺伝子検査)したところ、同日午後に新型インフルエンザに感染していたことが判明。男性は糖尿病で腎臓の働きが悪くなり、週に3回、人工透析の治療を受けていた上、もともと重い肺気腫があったという。現在のところ、家族や入院先での感染の報告はないという。
(略)

新型インフルエンザ:感染で肺気腫悪化か 入院翌日容体急変 神戸の死者、病院長語る(2009年8月19日毎日新聞)

 新型インフルエンザに感染し、死亡した神戸市の男性(77)が入院していた同市垂水区の総合病院の院長が毎日新聞の取材に応じた。入院当初、容体は落ち着いていたが、翌日に急変、死亡したという。院長は「亡くなられたのは残念だが、タミフルの投与など、できる限りの治療をした」と話した。一方、男性は個室に入院していたため他の患者との接触はなく、職員に新型インフルエンザの症状を訴える者もいないという。

 男性は高血圧と肺気腫、糖尿病の疾患があり、院長によると、週3回の透析治療を市内の別のかかりつけの医療機関で受けていた。今月17日午後、肺炎の疑いと診断され、院長が勤める病院に入院。微熱はあったものの、容体は安定していた。検査の結果、急性気管支炎と判明し、院長は「新型インフルエンザの可能性があるのでは」と疑ったという。

 同日の簡易検査でインフルエンザの陽性反応が出たため、神戸市保健所に連絡、「検体を取っておいてください」との指示を受けた。

 しかし男性は翌18日朝に容体が急変、死亡した。神戸市によると死因は急性気管支炎による肺気腫の悪化。院長は「感染で症状が悪化した可能性がある」と話した。腎疾患などの持病がある患者は、新型インフルエンザ感染で重症化の危険性があるとされ、感染予防の重要性が指摘されている。【米山淳】

基礎疾患があるハイリスク患者、しかも透析患者であったといった点は沖縄の事例と似通ったものを感じますが、こちらも経過をみてみますと「当初は落ち着いていたが、途中で急変」という、やはり沖縄の症例と同様の状況であったようで、「新型は当初軽症に見えても途中で重症化する」という従来の知見を裏付けた形でしょうか。
さいわい早期に新型と疑って検査を行っていたということで抗ウイルス薬の治療も開始されていたということですが、これも沖縄の事例と同様に投与後に急変しているということは基礎疾患の増悪もあるのでしょうが、あるいはウイルスの耐性化などを示唆する現象なのかも早急な解析が望まれるところですよね。
本症例の場合は迅速かつ適切な対応もあって周囲への感染もなく済んだようですが、名古屋での三人目の死亡例ではいささかやっかいな状況になっていたようで、非常に教訓的な経過を辿った症例であるのかなという印象を受けるところです。

名古屋でも新型インフル死者 入院先6人感染疑い(2009年8月19日朝日新聞)

 名古屋市は19日、新型インフルエンザに感染した名古屋市の80歳代の女性が同日、入院先の病院で死亡したと発表した。国内で新型インフルエンザ感染者の死者は、沖縄県、神戸市に次いで3人目。女性は多発性骨髄腫、心不全を患っていた。重症肺炎を起こしたのが死因。市では、新型インフルエンザが肺炎を引き起こしたとみている。

 市によると、女性は13日に39度5分の熱が出て、救急外来を受診。15日にせきが激しくなるなど症状が悪化して個室に移動した。17日に簡易検査でA型インフルエンザと判明。18日にPCR検査(遺伝子検査)をしたところ、新型インフルに感染していたことが判明、19日午前1時半、死亡した。

 女性に海外渡航歴は無い。女性の入院先の病院では女性のほか、入院患者2人、治療にあたった研修医1人、看護師3人の計6人が新型インフルに感染した疑いがある。同病院では、病棟への新たな入院を中止している。女性は発症前は市内の介護施設に入居していたが、同施設の他の入居者からは症状を訴える人は出ていない。

 女性は多発性骨髄腫だったことから、細菌性の感染症の疑いがあったため、抗生剤の投与はしたが、タミフルは投与していなかった。市によると、入院から簡易検査を行ったのが4日後だったことについて病院側は「細菌性感染症を疑ったので簡易検査は遅くなった」と説明しているという。
(略)

当初は誤嚥性肺炎と判断=「簡易検査徹底したい」と病院-名古屋(2009年8月19日時事ドットコム)

 新型インフルエンザに感染した女性(81)が死亡した名古屋市の総合病院は19日、記者会見し、女性の症状を当初、「誤嚥(ごえん)性肺炎」とみていたことを明らかにした。結果的に対応が遅れ、副院長は「新型インフルエンザの可能性が低いと判断しても、今後は簡易検査を徹底したい」と話した。
 同病院は、女性と接触があったとみられる医師、看護師、入院患者の計6人のA型インフルエンザ陽性を確認。女性から感染が広がった可能性があるという。

こちらも基礎疾患が多彩な患者ですが、特に注目すべきは基礎疾患として多発性骨髄腫があるということです。
介護施設入所中ということであるいは積極的な治療は行われていなかったのかも知れませんが、当然ながら基礎的な免疫力は低下し如何先生であったと思われますし、そもそも日常的に誤嚥や発熱を繰り返していた可能性もあり、これはいわゆる地雷症例であったのかとも思わされるところですよね。
恐らく全国の施設で人知れず同様の隠れインフルエンザ症例が既に発生しているのではないかと思われますが、診断、治療の遅れもさることながら、当該施設のように院内感染を発症する危険性も多々あるわけですから、発熱患者は発熱部屋での管理を行うか、入院時にルーチンで迅速等最低限のチェックを行うことが医学的という以上に社会的に求められることになってきそうです。
今後涼しい季節になってきますと従来型インフルエンザやその他の季節性呼吸器感染症も当然に増えてくるでしょうから、特にベッドに余裕のない施設にとっては非常に頭の痛い状況になってくるでしょうし、そもそも発熱患者全例にルーチンで検査をするほど迅速キットの在庫があるかとも危惧されるところですよね。

死亡例もさることながら全国で集団発生事例が相次ぐという状況で、とりわけ沖縄県では更に重傷例が多発しているということからこの時期に警報まで発令されたということです。
もはやこの時期ほとんどのインフルエンザが新型ということですから、やはりこれは季節性とは異なる特異な流行パターンを呈していると考えてよさそうですよね。
こうなりますとどこまで医療機関側が対応できるかという話になってくるわけですが、いたずらに危機感をあおり立てるばかりで不要不急の患者が病院に殺到するという状況だけはなんとしても避けなければならないところで、そうした面でも行政や報道サイドの社会的責任というものも問われているのではないかと思いますね。

新型インフル 新たに3児が重症 沖縄県が警報発令(2009年8月19日琉球新報)

 沖縄県は19日、新型インフルエンザの重症患者が3人新たに確認されたと発表した。3人は中部在住の13歳女子、南部在住の11歳女児、同じく1歳11カ月男児。3人は入院して、人工呼吸器を付けるなど治療を受けている。男児は慢性呼吸器疾患があるという。
 また、インフルエンザ定点医療機関からの報告数が29・6となったことを受け、インフルエンザ警報を発令した。夏場の警報発令は初めて

患者増で報告遅れ 新型インフルで死亡者 /沖縄(2009年8月18日琉球新報)

 県内で新型インフルエンザに感染した患者が死亡した件で、重症化しやすい患者の入院報告が患者の死亡後となったことを問題視する見方に対し、医療従事者からは「通常の救急業務でもぎりぎり。それに新型が重なり、現場の業務負担は増えている」と現場の状況への理解を求める声が上がっている。また、医療機関に患者が押し寄せ、医療提供機能がまひしないようにするためにも、医療機関の適切な受診の仕方や感染拡大を防ぐ基本的な予防策、健康管理の重要性が指摘されている。

現場はぎりぎり
 現在、県内では新型インフルエンザがまん延していることから、A型陽性であっても特別な場合を除き、遺伝子(PCR)検査はせず、新型として扱っている。県内58の定点医療機関からの報告では第33週(3~9日)は1定点当たり20・4人と流行注意報が発令中だ。県立中部病院内科・感染症科の遠藤和郎医師は「支障を来さないように工夫はしているが、患者を診て報告、他機関との連携など、業務は大幅に増えている。それに対して人員が新たに配置されるわけではなく、どの医療機関も大変だ」と明かす。
 定点医療機関の一つ、愛聖クリニック(沖縄市)の中田安彦院長は「患者が殺到すれば目の前の患者の治療に追われ、報告は二の次になるのが現場」と指摘する。
 新型インフルエンザはしばらくまん延が続くと見られ、医療機関は長期化に備えた態勢に移行している。中部病院では検査キットやマスクなどの診療材料の効率的な利用に努めるほか、医療従事者自身が“息切れ”しないよう心がけている。

感染症はうつるもの
 中田院長は「まん延している現段階で感染源を追うことは無理。報道では『院内感染かどうか』も問題となったが、院内感染を防ぐ努力はしても100%なくすことは不可能というのが医療従事者の常識」と話す。
 今回の死亡例を受けて医療従事者は「インフルエンザで人は死亡する。問題は、いかに急速な感染拡大を防ぎ一人でも多くの県民を守るかだ」とする。そのために「かぜのような症状がある場合には人の集まる場所に行かない。学校や会社は休む。咳エチケットなどの感染予防策の徹底」「軽症で救急病院に行かない」「免疫力が下がるとインフルエンザにかかりやすいため、ワクチン接種で防げる他の感染症を防ぐ」―などを挙げている。(玉城江梨子)

新型インフル:「全国的な流行」寸前に 8月に入り急増(2009年8月18日毎日新聞)

 国内の新型インフルエンザ感染が全国的な流行水準にほぼ達していることが18日、国立感染症研究所の調べで分かった。今月3~9日に全国約4700の定点医療機関から4630人のインフルエンザ感染報告があり、1機関当たり平均0.99で、感染研が「流行」と判断する平均「1」に迫った。夏場では異例の多さで、舛添要一厚生労働相は19日に緊急会見し、国民に感染予防と冷静な対応を呼び掛ける。

 感染研は「感染症サーベイランス(監視)」として、全国の定点医療機関から週ごとに患者数の報告を受けており、1機関当たりの感染報告が1週間で平均1以上あると、全国的な流行と判断している。例年、6~10月ごろの報告数は0.1未満が続くが、今年は7月から増加傾向になり、7月20~26日が0.28、同27日~8月2日が0.56に達していた。0.99となった同3~9日の推計受診患者は6万人に上る。それ以降も増えている可能性が高い。

 都道府県別では▽沖縄(20.36)▽奈良(1.85)▽大阪(1.80)▽東京(1.68)▽長崎(1.50)▽長野(1.44)の6都府県で既に平均1を超え、ほかに17府県が0.5以上。保健所の管内別では34都府県の139地域で1を超えているという。

 全国の地方衛生研究所で分析したウイルスの型は新型が約8割を占め、残りの大半はA香港型。感染研は、7月以降の感染者はほぼ全員が新型と推測している。

 一方、厚労省によると、新型の感染者の全数把握を中止した7月24日以降、今月9日現在で1066件の集団感染の報告があり、11日までに119人が入院している。厚労省は「夏休み明けに集団感染が起きないよう、特に学校で対策を徹底してほしい」と訴えている。【清水健二】

新型インフルエンザの定点当たり報告数を見てみますと今ひとつパターンが読み切れないところではあるのですが、先日も指摘しましたようにやはり南側の温暖な地域から広がっているという印象は拭えないところで、このあたりも何かしら新型特有の生物学的背景があるのかとも感じられるところではありますよね。
つい先日までは久しく沈黙を守っていたかに見える厚労省もさすがにこうした状況になりますと黙っているわけにもいかなくなったようですが、既に多くの関係者も「新型は夏になっても減らない、むしろ増えている」と警鐘を鳴らしてきた中で正直いささか動きが遅いのではないかという気もするところです。

新型インフル流行で対策を強化 厚労省、重症化防止など(2009年8月19日47ニュース)

 厚生労働省は19日、新型インフルエンザに感染し、今月12日から18日までの1週間に入院した患者は全国で計86人に上ると発表した。このうち重症化のリスクが高い基礎疾患(持病)がある人は死亡した3人を含む36人。医療・福祉施設などでの集団感染の発生件数は16日までの1週間で約660件に上り、7月下旬の調査開始からの総数が約1700件に達した。

 入院患者、集団感染とも増加が続いており、本格的流行が始まったとみられることから、同省は19日、糖尿病やぜんそくなどの基礎疾患がある患者の重症化防止のため、これまでの重症事例への対応をまとめた症例集を医療機関に配布するなど対策を強化することを決めた。

ワクチンの輸入の是非や接種の優先順位などについては、専門家や重症化の恐れがある患者団体の関係者らが参加する意見交換会を経て、具体的な対応を決定する構え。

 舛添要一厚労相は19日午前の会見で「本格的な流行が始まった」との認識を表明。6月の改定運用指針に基づき、重症患者の増加に対応できる病床数を確保するなど医療体制の整備を急ぐ。

 厚労省は、沖縄県宜野湾市の男性(57)らこれまでに亡くなった3人の患者に、慢性腎不全や肺気腫などの基礎疾患があったことを重視。こうした患者や妊婦、乳幼児の保護者に対し、インフルエンザのような症状が出た場合、早期に治療を受けるよう呼び掛けるとともに、医療機関には妊婦らに適切な情報提供を行うよう求めている。

厚労相、新型インフル「流行本格化」 対策実践呼びかけ(2009年8月19日朝日新聞)

 新型インフルエンザの感染者が全国的に急増している情勢を受け、舛添厚生労働相は19日午前、記者会見し、「本格的な流行が始まったと考えていい」と話した。そのうえで、このまま感染が拡大すれば医療機関で重症者対応ができなくなるとして、「感染の拡大防止には一人ひとりが対策を実践することにつきる」と呼びかけた。同日には名古屋市の80代女性が新型インフルエンザで亡くなり、国内の死者は3人となった。

 舛添氏は、流行の本格化は秋以降としていた従来の予想に反し、真夏でも感染が拡大していることについて、「私も予想できなかったことだ」と説明。「夏休み中なのに増えている。9月になって学校が再開されると感染が急激に拡大する危険性があると思う」と述べ、医療機関の負担増大に懸念を表明した。

 また、「病原性が低いということで、皆さんも忘れてしまっている」と「国民全体の慢心」が感染拡大の原因にもなっていると指摘した。舛添氏は「新しいウイルスへの警戒を解いてはいけない。感染は自分が止める、という気持ちが大事だ」と話し、手洗いやうがいの励行などを呼びかけた。

 新型インフルでは、慢性呼吸器疾患や慢性心疾患などの基礎疾患がある患者や、妊婦、乳幼児が感染すると重症化する危険性が高いとされる。舛添氏はこうした人たちに対して、「早期の受診、治療を心がけて欲しい」と語った。厚労省は今後、重症化した事例の概要を説明した症例集を作成し、各地の医療機関に配布する予定。
(略)

しかしまあ、久しく沈黙を守っていた舛添大臣の「病原性が低いということで、皆さんも忘れてしまっている」は良かったですかね(苦笑)。
さすがに素人の大臣にインフルエンザの流行まで予想していただこうとは誰も考えもつかなかったことだと思いますが(苦笑)、さてこの状況でどのような対応をしていくのが良いのでしょうか。

一つ気になることは、マスコミが果たして正しく状況を理解しているのかということでしょうか。
大臣の会見においては「基礎疾患がある患者や、妊婦、乳幼児」については「早期の受診、治療を心がけて欲しい」と呼びかけているわけですが、言葉が一人歩きして「軽症でも侮ってはならないと聞いた。少しでも風邪っぽく感じたら病院へ行かなければ」と皆が殺到するという状況だけはなんとしても避けなければならないわけです。
そうした視点で記事を見ると非常に紛らわしい表現だなとも感じられるわけですが、ここは誤解を避けるためにもきちんとした報道をしていただきたいところですよね。

公衆衛生学的観点から見ると、現段階および近い将来に感染しそうな層というのは小児や学生、若年者といった活動性が高く集団行動の多い人々であると思われますが、これらはかつてのインフルエンザ学童接種などからも判るように社会における流行の入り口になると予想される人々でもあるわけです。
流行を起こさないということは既に現実的ではなさそうですが、これらの人々の間で発生するだろう患者増加のカーブをなるべく緩やかにし、社会的医学的に対応できるキャパシティーの範囲内にとどめつつ静かに流行が広がっていくという状況にもっていくことが当面の目標となるでしょうね。
その意味では夏に流行が発生するという現象は新型の感染力の強さを示すものでもありますが、同時に冬と比べれば人間側の抵抗力も高いだろうと予想されるわけですから、社会集団における緩やかなワクチネーションという意味では決して悲観する状況ではないと思いますね。

個人レベルで見ますと基礎疾患もなく全身状態も良好な軽症患者が無闇に人前に出歩くなということに尽きるわけですが、未だに勘違いされているのが以前から何度か取り上げてきましたマスク着用ということの意味です。
患者から周囲の人々へは飛沫を介してウイルスがうつっていくわけですが、これは直接口や鼻から体内に入っていくというよりは患者からの飛沫が付着したものを触った手指などから食事等の機会を通じて感染する場合が多いとされています。
要するにマスクとはあくまで患者側が周囲にうつさないために使用するものであって、健常者側が感染防御を行うには半端にマスクをするよりも繰り返しの手洗いやうがい、洗顔といった行為で付着したウイルスを洗い流す方が有用であって、特に何日も使っているような汚染されたマスクを触った手で飯を食うなど自ら病気を呼び込んでいるようなものとも言えるわけです。

タミフルなどの抗ウイルス薬も特にハイリスク症例では積極的な使用が求められていますが、問題はこれら抗ウイルス薬とはウイルスを無くする薬ではなく、細胞内で増えたウイルスがそれ以上細胞から外へと出て行かなくするための薬であるということです。
インフルエンザの場合病院にかかるような症状が出てきた段階では既にウイルス増殖のピークは過ぎているとも言われますから、この時点で薬を飲み始めたところで鼻粘膜などにたっぷりと付着している増えきったウイルスは当分そのままでそこにあるわけですね(実際発症後10日~2週間後くらいまでウイルスが検出されますが、ただし検出されると感染力を持っているは別問題です)。
一昔前の対症療法だけで自然な回復を待っていた時代であれば熱が引いてくればそうそう人にうつすようなウイルスは残っていないだろうと考えられていたわけですが、抗ウイルス薬であっさりと1日2日で解熱したという場合に残ったウイルスがいつまで感染力を保持しているかは未だはっきりしたデータはないようです(御存知の方がいらっしゃれば御一報ください)。
こうした事情からも薬を飲んで楽になったからとすぐに出歩くのではなく、少なくとも抗ウイルス薬を飲み終える5日間くらいは人前に出ることなく大人しくしているのが良かろうと思うわけですが、現場の臨床家の先生方も単に目の前の患者の治療のみならず公衆衛生学的な視点からの患者指導にも同様に行っていただきたいところですよね。

なんにしろこうした大規模な流行を引き起こす感染症というものは一人一人がどうこうというだけにとどまらず、集団としてどのように対応するかという点が何よりも重要になってきます。
日本人はわりあい規律というものを重んじる民族だと世界的には見なされているようですが、日本人もこれだけ頑張っているんだぞと世界に示すにはいい機会であるのかも知れないと、前向きに捉えておくのがよいのでしょうかね。

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コメント

管理人様

いつもまとめていただき勉強させていただいています。

2点だけ

1.肺炎球菌ワクチン接種を 『死亡や重症化を抑制』
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20090820/CK2009082002000191.html

2.青木先生のブロクからですが、厚生労働省の症例を一般には公開しない方向?
どんどんずれていく新型インフル議論
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/b7796ef4bc3cc04106a781a6f288d782
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090820AT1G1902L19082009.html

投稿: 京都の小児科医 | 2009年8月21日 (金) 02時45分

まあ冊子配るよりwebで公開しろってのも確かにそうなんですが、事実としてそういうの全く駄目って先生方も未だに結構いらっしゃるのも問題で、特に初診に関わるような方々の教育ってのは難しいところがありますよ。

しかし候補の人も仮にも国政に関わろうってんですから、こういうのは勘弁して欲しいです。
今の時期A型ならほぼ全例新型ですし、発症後2~3日じゃ確実にウイルス残ってると思いますが…

小泉進次郎氏「世襲判断は有権者」 ライバル横粂氏は「脆弱な世襲候補より雑草魂を」(2009年8月18日読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090818-00000541-san-pol
(略)
 民主新人で弁護士の横粂勝仁氏(27)は午前9時45分から、横須賀市内の神社で必勝祈願後、境内で支持者ら約90人を前に出陣式にのぞみ、「晴れて衆院議員候補者になれた。生活を守っていこうといえることが、うれしくてたまりません」と語った。

 落下傘候補の横粂氏は15日夕に39・3度の高熱が出てインフルエンザA型と診断されたが、タミフルを服用するなどして回復したという。新型かどうかの判定検査は行っていない。

 横粂氏は「脆弱(ぜいじやく)な世襲候補より、私のような雑草魂が政治を変える」と話し、インフルエンザをうつさないため初めて白手袋姿で遊説に出かけた。

投稿: 管理人nobu | 2009年8月21日 (金) 12時02分

管理人様

ありがとうございます。

web公開についての議論はあるかも知れませんが。。。

横粂勝仁氏について無茶だと思いました。

投稿: 京都の小児科医 | 2009年8月21日 (金) 16時46分

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