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2009年8月10日 (月)

新型インフルエンザ、一向に終息するどころか…

夏も真っ盛りだというこの時期にもかかわらず、新型インフルエンザは相変わらず猛威をふるっているようです。
昨今では単に患者が出ましたではニュースにもなりませんが、この時期にインフルエンザの院内集団発生が当たり前に起こっているということには要注目ですかね。

新型インフル、県内2病院で集団発生 /愛媛(2009年08月08日愛媛新聞)

 県は7日、八幡浜、宇和島両保健所管内の2病院で新型インフルエンザ患者の集団発生を確認したと発表した。県内医療機関での新型患者の集団発生は初。発症者には入院患者が含まれ個室で療養中だが、重篤にはならず容体は安定しているという。風評被害が生じる恐れがあるとして、病院名は非公表。
 県によると、八幡浜保健所管内の病院で1~6日に入院していた50代男性と病院スタッフ2人、宇和島保健所管内の病院で2~6日に病院スタッフ9人に発熱などの症状が出た。簡易検査で6人が新型と同じA型陽性となり、県立衛生環境研究所が5人の検体をサンプリングで詳細(PCR)検査した結果、新型と確定した。スタッフはいずれも医師ではなく、自宅療養中。感染経路は不明。
 県は両病院に院内感染の拡大防止措置を徹底するよう要請した。今後、両保健所で疫学調査や保護観察を実施し、ほかに発症者がいないか調べる。

助産師が新型インフル 長野の病院、3人も疑い /長野(2009年8月9日産経新聞)

 長野県は9日、波田総合病院(同県波田町)の女性助産師1人が新型インフルエンザに感染し、ほかの女性助産師3人も感染の疑いが強いと発表した。

 4人は同じ病棟で入院患者のみを担当。患者やほかの病棟の医師、職員への感染は確認されていない。

 県によると、7日に30代助産師が熱とのどの痛みを訴え、詳細(PCR)検査で感染が確認された。4日からせきの症状が出始めた40代助産師も簡易検査で陽性となった。

 ほかの2人は簡易検査で陰性だったが、せきや熱の症状から感染の疑いが強いという。

国立感染症研究所からは7月25日以降発生件数の公表をやめてしまったようですが、有志によるインフルエンザ発症報告を集計したサイトがありまして、非常に興味深いのはひとたび底を打っていた発症件数が7月後半以降はぐっと上昇に転じているように見えることです。
通常この時期はインフルエンザの端境期になるわけですから、これは単に新型への関心が強く診断確定に回す例が多いというだけなのか、それとも実際に流行が広がってきているのか、果たしてどちらなのでしょうか。
さらに気になるのはこの時期大型イベントも多くなってきますが、それに伴ってもう一段の流行の加速があるのではないかという予測も出ていることです。

夏の行事で新型インフル広がる 若者集まり高リスク?(2009年8月7日朝日新聞)

 夏休みに入り、サマーキャンプや部活動の合宿などで、新型の豚インフルエンザに集団感染する例が続いている。学校に代わり、若者が集まる行事をきっかけに、広がっている形だ。夏本番で行事は増える一方、感染の広がりはおさまらず20代までの感染者は全体の8割を占め、専門家は注意を呼びかけている。

 川崎市では先月末、市が主催するぜんそくの小学4~6年生を対象にしたサマーキャンプで集団感染があった。ボランティアの大学生スタッフが発症、その後11人の小学生の感染が分かった。

 3泊4日の日程で八ケ岳を訪問。体を鍛え、友人をつくることを目的にしていたが、最終日のプログラムはほとんど中止になったという。

 ぜんそくは新型インフルで重症化しやすいとされる。市の担当者は「いまのところ重症例はなく軽快している」と話す。

 10人の生徒の感染が確認された千葉県の私立高校。症状のある人も含めると57人にのぼり、うち49人は長野県であったサマースクールに参加していたという。山梨県では、関東の七つの高校を集めた合同合宿で、高校生2人が感染。ほかに3人に感染の疑いがある。奈良県で開催中の高校総体でも、選手に感染の疑いがあり、出場を辞退する高校が続いている。

 海外の新型インフルエンザの報道などを翻訳し、ウェブサイトで公開する外岡立人(とのおか・たつひと)・元北海道小樽市保健所長によると、米国のサマーキャンプでも数百の感染例が確認された、との報告があるという。

 欧米では、こうした若者の集団感染が、夏休みが終わり、学校が始まった後に起きることの「前触れ」ととらえ注意が呼びかけられている。

 厚生労働省によると、6月上旬に1日30件程度だった感染者の報告は、7月に入り、日によって200件を超える日も。感染者は圧倒的に若者が多い。4986人の感染者(7月24日現在)のうち、10代2346人(47%)、10歳未満943人(19%)、20代874人(18%)。あわせると全体の8割を占める。(武田耕太)

明らかに流行が再加速していると読める話ですが、こうなりますと若年者から親世代への感染の波及も気になってくるところで、一昔前の予防接種の根拠であった「学校は集団感染の入り口である」なんてロジックが復活するかも?ですかね。
一方で先日は新型インフルエンザに伴い人工呼吸器を使用したという小児の症例が明らかになり、幸いにもこちらはその後回復したようですが、今まであまり表に出てこなかった重症例ということで注目されるところです。

新型インフル、初の人工呼吸器 大阪の6歳、回復し退院 /大阪(2009年8月6日朝日新聞)

 大阪市は5日、市内在住の小学1年の男児(6)が新型インフルエンザに感染して入院し、一時気管内挿管による人工呼吸を行ったと発表した。市によると、新型インフルエンザで人工呼吸器を使った事例は初めてだが「重症事例ではない」としている。男児は回復し、5日退院した。

 市によると、男児は7月26日に38度の熱を出して入院。翌27日、たんが詰まって空気が通らない無気肺により呼吸状態が悪化したため、人工呼吸を開始。30日には管を抜き、人工呼吸を中止した。

ところでこの件で少しばかり気になるのは記事中でも触れられていますが、大阪市から当該症例の病状経過が公表されているのですが、そこにこんな記載があることです。

新型インフルエンザ患者の人工呼吸器使用症例について(2009年8月5日大阪市健康福祉局)

 大阪市において平成21年7月27日のPCR検査により翌7月28日に新型インフルエンザの感染が確認された患者について、人工呼吸器を使用した症例が確認されましたのでお知らせします。

【患者概要】

 年齢:6歳
 性別:男児
 基礎疾患:なし(乳児喘息の既往あり)

【経緯】

 7月25日 咳嗽あり。
 7月26日 38.0℃の発熱。近医を受診し、左の無気肺を認めたため、入院。抗菌薬の処方開始。
 7月27日 インフルエンザ迅速簡易検査にてA陽性。PCR検査実施。タミフル投与開始。
       無気肺により呼吸状態が増悪したため気管内挿管にて人工呼吸及び酸素投与を開始し、転院。
       抗菌薬は中止。
 7月28日 PCR検査の結果、新型インフルエンザ患者と確定。
 7月30日 抜管(人工呼吸中止)。
 8月  1日 酸素投与終了。解熱。タミフル終了。
 8月  5日 食事量の回復が得られたため退院。

 ※ 本症例については、喀痰の貯留・気管支閉塞による無気肺であり、新型インフルエンザによる重症患者ではありません。

もともと喘息の既往もあるところへ新型インフルエンザを発症し無気肺を来した症例ということですが、わざわざ末尾に「新型インフルエンザによる重症患者ではありません」云々と書き添えてあるのは意味があることなのでしょうか。
治療当事者である担当医なりがそう言ったのか、あるいは行政当局者が書き足したのかはっきりしませんが、こうした症例の場合どこまでが原疾患によるものでありどこからが合併症によるものであるなどと明確な線引きが出来るものでもないのが普通ですよね。
世界的に重症化云々という議論に関しても病状の重大性や予後による分類によるものであって、決してウイルスによって一時的に引き起こされる病態のみを対象とした議論ではないように思うのですが、敢えてこういう定義を持ち出してくるのは何かしら根拠があることなのか、興味を引かれるところです。

一方で先日もお伝えしました通り、妊婦がハイリスクであるということは学会が主体となって広く周知徹底され始めているようで、「疑い症例は抗ウイルス薬使用を」というかなり前がかりな方針が採られつつあるようです。
このあたりはむしろ、ひと頃(今も?)世間に広くまん延している「とにかく妊婦は薬を使うな」という偏見?との戦いこそが正念場と言えるのかも知れませんが、今の時代ですと予防接種の副作用問題などと同様に何かあった場合に誰がどう責任を負うのかという議論もまた必要なところではあるかも知れませんね。
「統計的に抗ウイルス治療を行った方が行わなかった場合よりも明らかに有害性が少ない」と言う主張によって被害者救済的判決を回避できるほど、未だ日本人の認識は成熟していないのではないかと危惧されるところですから、現場の個々の判断で良かれと思ってやるのではなく、国や学会などの公的な権威付けに基づいて行動しておくことが無難ではあるでしょう。
その意味で今回産科学会が文書としてこうして明確な対応の指針を出してきたことは評価できるのではないかと思います。

妊婦の新型インフル、産科婦人科学会が対応方法を改訂(2009年8月7日日経BP)

感染確認の検査結果を待たずに抗インフルエンザ薬投与開始を勧告

 妊婦には早期からの抗インフルエンザ薬の投与を推奨する―。日本産科婦人科学会は8月4日、妊婦が新型インフルエンザ(H1N1)に感染した際の対応Q&Aの改訂版を発表した。改訂版では「妊婦は重症化しやすいことが明らかとなった」と明記している。

 新たなQ&Aは、7月29日にLancet誌電子版に掲載された米疾病対策センター(CDC)の報告(「妊婦の新型インフル感染疑いには早期治療が重要」)と、世界保健機関(WHO)の7月31日の勧告(「Pandemic influenza in pregnant women」)に基づいて改訂された。

 改訂前は、妊婦もしくは褥婦が新型インフルエンザに感染した場合、非妊婦に比べて重症化しやすいかどうかについて、「データは不十分だが、季節性インフルエンザと同様であると推定されている」という表現にとどまっていた。今回のLancet誌の論文掲載を受け、改訂版では、「妊婦は重症化しやすいことが明らかとなった」と明記している。

「妊婦は重症化しやすい」新型で注意喚起(2009年8月7日CBニュース)

 日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は8月7日までに、同学会が作成した「妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応 Q&A」を一部改訂した。この中で、「妊婦は重症化しやすいことが明らかになりました」と注意喚起し、タミフルなどの抗インフルエンザ薬の状況に応じた早期服用や予防的服用を勧めるよう医療関係者に求めている。

 同学会では5月19日付で、Q&Aを一般向けと医療関係者向けに分けてそれぞれホームページに掲載。厚生労働省の新型インフルエンザへの指針改定に伴い、6月19日付で一部を改訂した。

 今回の改訂は8月4日付。医療関係者向けのQ&Aでは、妊婦がインフルエンザ様症状(38度以上の発熱と急性呼吸器症状)を訴えた場合の対応について、「産婦人科への直接受診は避けさせ、地域の一般病院へあらかじめ電話をしての早期受診を勧める」としている。
 また、WHOが「感染が疑われる場合には確認検査結果を待たず、早期のタミフル投与開始を勧めている」として、抗インフルエンザ薬の早期服用が重症化防止に効果があると妊婦や家族に伝えるよう求めた
 さらに、妊婦への感染が確認された場合は抗インフルエンザ薬の早期服用を、患者と濃厚接触した場合は予防的服用を勧めることとしている。

 抗インフルエンザ薬の胎児への影響については、「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との2007年の米国疾病予防局ガイドラインの記載を紹介した上で、服用による利益が「可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられている」とした。

ところでこの事とも関連してくる話ですが、市中医療機関で使用されている迅速診断キットの新型に対する感度の検証が最近ようやく明らかになってきています。
もともと発症初期は非常に感度が低く見逃しが多いということはよく知られた事実でしたが、どうも新型に関しては全般的にキットの感度が従来型よりも劣るらしいという、あまりありがたくない話のようですね。

簡易検査は信頼性不十分 新型インフルで米調査(2009年8月7日47ニュース)

 【ワシントン共同】インフルエンザの感染の有無を見極めるために広く用いられている簡易検査は、H1N1型の新型インフルエンザ患者を見落とす可能性が高いとの調査報告を米疾病対策センター(CDC)が6日、まとめた。

 CDCは、簡易検査で陰性でも、感染していないと確認されたわけではないとしており、より精度の高い検査法の開発が課題となりそうだ。

 CDCは4~5月に集めた新型や季節性のインフルエンザ患者ののどの粘膜など65の検体を用いて、米国で使われている3種類の簡易検査キットの有効性を調査。実際には新型に感染していてもキットで陽性と判定される可能性は40~69%と低いことが分かった。季節性インフルエンザの場合は、80%以上と高い割合で陽性と判定された。

 新型インフルエンザの確定診断には通常、詳細(PCR)検査をする必要がある。だが、可能な施設が少ない上、検査に時間がかかるため、感染の疑いを早期に見極めるのに、簡易検査キットが使われる。今回の調査対象のキットが日本で用いられているかは不明だが、抗体反応を利用する同様の仕組みのキットが日本を含め世界各地で用いられている。

こうなりますとスクリーニングレベルにおいて迅速診断に頼り切りというわけにもいかず、そして何より新型ではいわゆるインフルエンザ様症状を呈さない患者も多いわけですから、現場の臨床家としてはどこで抗ウイルス治療を開始すべきかという点で更に悩ましいところではないかとも思われます。
しかし今のところ明らかなリスク要因のない軽症患者に対して全例に抗ウイルス薬の投与がすすめられているわけではないのですから、重症患者に対しては診断確定を待たずに積極的な治療を早期から開始する一方で、軽症者に対しては投薬よりも自宅安静等のまん延防止策を中心とした対応を行っていくのが正しいように思えますね。
何にしろ早ければ9月からワクチンの供給が始まるとも言いますが、漫然とした画一的な投薬によって冬本番となった頃に肝心の治療手段が残されていなかった、などということにならないように、エヴィデンスと公衆衛生学的観点に基づいた節度ある対応というものが求められるところでしょう。

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