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2009年8月 4日 (火)

勝ち組と負け組、その差はどこから?

最近はようやく労基署も医療現場の違法労働状態の是正に動くようになってきたようで、全国あちこちからこうした是正勧告のニュースが流れてきます。
見ていただきますと判ります通り、およそ例外なく地域医療の中核たるを以て任じてきた公立病院であるというところに背景に横たわる問題が現れているように思えますね。

市立病院の残業代で是正勧告 砺波市が条例改正 /富山(2009年7月18日47ニュース)

 富山県の市立砺波総合病院が市の条例に沿って支払った医師らの残業代(割増賃金)について、砺波労働基準監督署が労働基準法に基づき「割り増しの基準となる月例給与に、本来算入すべき手当が含まれておらず、差額が未払い」として昨年10月、同病院に是正勧告していたことが18日、分かった。

 勧告を受けて砺波市は今年3月に条例を改正、4月に医師らに差額計約1200万円を払った。市から報告を受けた富山県が総務省に問い合わせると、同省は「ほかの自治体でも同様の例があった。労基法に従うように」と回答。県も月例給に手当を含めるよう条例施行規則を改定した。

 病院によると、勧告は昨年10月1日付で、医師の「地域手当」や「初任給調整手当」、放射線技師や看護師の「特殊勤務手当」などを月例給に算入するよう指摘。差額の残業代を昨年4月までさかのぼって支払うよう求めた。

 労基法では残業代算定の際、基準となる月例給から除外してよい賃金を「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」など7種に限定しており、それ以外の手当は算入する必要がある。

高松市民病院 協定結ばず医師に残業 /香川(2009年7月30日読売新聞)

労基署是正勧告 来月労組と締結へ

 高松市民病院が、労働基準法に基づく時間外労働協定を結ばずに医師31人に残業をさせていたとして、高松労働基準監督署から3月に是正勧告を受けていたことがわかった。病院側は、8月中に予定している市職員労働組合病院分会との定期交渉で、医師を含む新たな労使協定を結ぶとしている。

 病院によると、常勤医師46人のうち、管理職を除く31人に時間外手当を支払っていたが、残業時間の上限を設定した労使協定を結んでいなかった。2月に労基署の立ち入り調査があり、3月2日に是正勧告を受けた。31人の残業時間は月平均11・3時間(5月)で、医師を除く病院職員について、組合側と結んでいる現行協定の上限45時間を下回っていた。

 西尾裕樹事務長は「医師の多くが非管理職にあたるという認識が薄く、労使協定の対象外だと勘違いしていた」と釈明。今のところ協定による診療への影響はないとしているが、「今後医師不足が進み、残業が増えないよう医師確保に努める」としている。

坂出市立病院も結ばず/残業の労使協定 /香川(2009年8月1日四国新聞)

 高松市民病院が労使協定を結ばず医師に残業させていた問題で、坂出市立病院(香川県坂出市文京町、砂川正彦院長)でも、医師を含む全職員と残業に関する協定を結んでいなかったことが31日、市立病院への取材で分かった。残業代は支払われており、市立病院庶務課は「公務員であるため、協定自体が免除されると思っていた。認識不足。早急に対応したい」としている。

 市立病院によると、2月に坂出労働基準監督署から指摘を受けて判明。過重労働回避のため労働基準法で必要とされている残業の労使協定を、医師をはじめ、看護師や事務員、医療技術員らすべての職員が結んでいなかった。

 協定の対象となるのは162人。市立病院の2007年度決算統計によると、年間で計約1万9千時間の残業が発生し、およそ5890万円の残業代を支払っている。1人当たりの平均残業時間は医師や事務員が月15時間程度、看護師が同9時間程度という。

 同監督署からの指摘を受け、残業上限を月45時間以内などとする協定の素案は策定しており、8月中に協定締結に向けた組合交渉を予定している。

 一方、三豊観音寺市医師会が指定管理者として運営している西香川病院(高瀬町)も協定を結んでいなかったことが判明。同病院は「夜間の急患対応なども少なく、日直や宿直で対応できる」としている。

なるほど、残業時間は少ないので実際の影響はない、と…
ちなみにこの報道を受けた某所でのカキコの一例ですが。

215 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/01(土) 14:25:02 ID:WzEyQXdl0
>>213
おいらが勤めていた自治体病院。
赴任すると知らないうちに事務に自分の三文判があった。

超勤は事務が書いてくださるので一度も自分で書いたことはなかったw

「医者など医局から幾らでも送られてくるもの」と特権意識の上に趺坐をかき、長年にわたって労基法無視の違法労働を現場に強いてきた挙げ句のこの有様ですから同情の余地があるようには見えませんが、当然ながら今どきこうした地雷とも呼べる施設に自ら望んで赴任する医師などそう多くはありません。
一昔前であればそれこそ医局の強権でもって泣く泣く送られてきた医師もいたのでしょうが、今の時代そんなことを口にすれば「あ、そうですか、それじゃ医局やめますから」でおさらばというのが当たり前ですから、病院間で勝ち組、負け組の格差というものがかつて無いほどの勢いで絶讚拡大中ということなのですね。

当然ながら勝ち組となる病院にはそれなりの理由、負け組にもそれなりの理由というものがあるわけですが、特に今やほぼ例外なく赤字経営という公立病院においては金銭的待遇改善などもなかなか厳しいようで、そうなりますと別な面での求心力というものが求められてくるわけです。
そうした中で各地の自治体病院では折から統廃合の話が続いていますが、これらも言ってみれば規模拡大で院内の諸問題を改善しようとする試みとも言えるところですよね。

人が増えれば交代要員も取れる、規模拡大が出来れば患者増も期待でき経営も改善する、医療の効率も良くなるだろうし先端医療にも手を出しやすくなるだろうと良いことずくめのようにも聞こえる話ですが、気がついてみればこれが国の言うところの病院統廃合というものなのですから近年続く診療報酬削減は見事国策遂行として実りつつあるというところでしょうか。
しかし当然ながらそれに対して懸念の声もあるわけで、特にスポンサーである地域住民の声に対してどう応えるかと言った辺りは、これら自治体病院再編に伴う最大の問題とも言えるでしょう。

対馬の2病院統合 300床規模新設、市長が方針転換 /長崎(2009年7月31日長崎新聞)

 対馬市の財部市長は30日、国の地域医療再生臨時特例交付金(30億円)を活用して、県対馬いづはら病院(199床)と県中対馬病院(139床)の再編・統合に取り組む方針を明らかにした。両病院を運営する県病院企業団の提案を承認した形。医療設備の集約と医師確保による医療機能の充実が目的。300床規模の新病院の建設を目指す。

 財部市長は3月、市議会で、当面は再編・統合の検討は進めない考えを示していたが、同企業団が6月、交付金活用による統合・新築移転を提案。交付金を受け、方針を転換した。

 財部市長は30日の臨時市議会で「国の財政支援の施策の流れの中で、地域医療を担う病院施設の環境、それを支える財源的な問題を踏まえ、慎重に考えた結果」と説明した。 両病院が示した案は、新病院の建設費は65億円で、病床は299。敷地面積は約3万平方メートル。医療機器20億円、職員宿舎5億円を含めた総事業費は総額90億円になる見通し。

 医師数は32人程度で、医師数の増加や統合により▽専門医療の拡大や医療の質の向上▽看護師、放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師など医療従事者不足の緩和▽時間外の救急体制と、検診体制の強化▽診療室拡充による外来待ち時間の短縮▽医師の労働条件の緩和▽経営の効率化▽療養環境の整備▽研修医が希望しやすい体制-などが期待できるという。

 中対馬病院は築28年で老朽化し、10年以内に新築する必要がある一方、対馬いづはら病院も病床や医師が不足し、基幹病院としての責務が果たせないため再編・統合の必要性が指摘されていた。(略)

泉州地域の公立4病院を経営統合、大阪府が方針/大阪(2009年7月31日読売新聞)

赤字と医師不足に規模拡大で対抗

 大阪府は31日、病院医師数が減少傾向にある泉州地域(人口92万5000人)で、泉佐野市の府立泉州救命救急センター(30床)、貝塚市立貝塚病院(249床)、泉佐野市立泉佐野病院(348床)、阪南市立病院(185床)の公立4病院を、2013年度までに経営統合し、独立行政法人とする方針を明らかにした。すでに関係3市と協議を始めており、府は10月にも計画をまとめる方針。

 同地域は人口10万人当たりの医師数が186・1人で、全国平均(217・5人)を下回る慢性的な医師不足状態に陥っている。

 公立病院の赤字が膨らむ一方、医師不足で一部診療科が休止に追い込まれるなど、地域の中核医療機関である公立病院で医療機能の低下が進んでいることから、経営統合による規模拡大で対抗する狙いだ。

 橋下徹知事は「経営統合して一体運用するという方向性を目指す。(関係者と)話し合いをして、調整を進めたい」と話した。

大阪府:「地域医療できるか」 病院統合案、地元では戸惑いも 各自治体、反応割れる/大阪(2009年8月1日毎日新聞)

 大阪府が検討を始めた府立泉州救命救急センターと、泉佐野、貝塚、阪南3市立病院の経営統合。府は国の制度を活用し、自治体の枠を超えた地域医療の再整備を目指す。しかし地元では「地域に根ざした医療ができるのか」などの戸惑いの声が出ている。

 各病院とも赤字や医師不足を抱えているが、現地自治体は反応が分かれる。泉佐野市は「自治体が協力した医療体制による経費削減が不可欠」と歓迎。一方、3市の中で病院債務が少ない貝塚市は「各病院の債務は各市で解消しないと統合はできない」と困惑する。

 阪南市立病院では07年、医師不足から1年以上内科が休止した。阪南市社会福祉協議会の米原武雄会長は「経営統合で巨大病院になると、地域に根ざした医療が難しくなるのでは」と指摘する。

 一方、笹井康典・府健康医療部長は「独立行政法人で統合し、府も参画し、大学も支援する。公立病院改革のモデルになりうる」と自信を示し、全国で最大10カ所の医療圏域に上限各100億円が分配される国の制度の活用を目指す。【野田武、酒井雅浩、福田隆】

住民との間の調整については気長に自治体担当者がしていただけばよろしいし、経営なり人材募集なりの状況が改善するのかどうかも計画をすすめる自治体の担当者が考えるべき話だと思いますが、そもそも医療に逆風どころではないこの時代にあって勝ち組と呼ばれるとは一体どういうことなのでしょうか?
医療業界の現場に精通している人間であれば実際やるやらないは別として「こういうことをやっていればそれは儲かるだろうな」という病院経営のイメージはそれなりに持っているのではないかと思いますが、診療報酬制度やスタッフの望むところといったものを勘案すれば、人を集め儲けを出す(赤字を減らす)ための方法論というものはある程度決まってきます。
ところがこれを外部から客観的分析というものを行ってみますと、どうも現場の実感と少なからずずれてくるようなのですね。

県内黒字病院に共通点 浜松医大の特任教授が調査/静岡(2009年7月25日静岡新聞)

 病院経営が一段と厳しさを増す中、投書に対する回答を公開して利用者に対するマーケティングに力を入れたり、患者の在院日数を最適な期間で運用したりしている病院が「黒字病院」の取り組みに共通していることが、浜松医科大医学部地域医療学講座の山岡泰治特任教授(49)が実施したアンケート調査で明らかになった。
 アンケートは医師不足対策や病院経営の改善に向けた課題を研究するため、県内の一般病床を持つ98病院を対象に今年2~5月にかけて無記名方式で行った。54%に当たる53病院から回答を得た。
 調査項目は▽重視する経営指標▽経営改善策▽患者の満足度向上への取り組み▽医師の出身地・出身大学▽診療科別の常勤医師数―など。決算に関する項目は設けなかったが、「純利益」を数値目標に掲げている11病院を「黒字病院」として扱った。
 「黒字病院」が経営面で重要視している取り組みとして、(1)平均在院日数や薬品使用効率の適正化(2)経営に関する意思決定スピードの迅速化(3)投書に対する回答の公開(4)患者満足度向上に関する委員会の設置―などが共通項目として浮き彫りとなった。
 回答した全病院の経営指標では病床利用率、1日平均入院患者数、入院患者単価、経営改善策では中期経営計画策定と進捗(ちょく)確認、経営目標値設定と進捗確認、他病院との連携強化、患者満足度向上では投書箱の設置、診療予約制の導入、質問への丁寧な対応―がそれぞれ上位3位を占めた。
 このほか、勤務医の出身地では静岡県が32・7%でトップ、次いで東京都10・6%、愛知県8・8%、神奈川県5%の順だった。
 山岡特任教授は「黒字病院は、病院完結型でなく他病院や診療所との連携など地域完結型の医療で経営改善を進めている」と指摘。「医師の県外依存率も高い。地域医療を守る観点から全国への情報発信や、病院と行政、地域住民の連携の在り方をより研究していきたい」と話している。

皆さんこの調査を見てどう思われましたか?
この調査項目で果たして黒字化への道標が浮き彫りになってくると思いますでしょうか?
皆さんの施設は明日からこの結果を参考に黒字化を目指せるでしょうか?

「平均在院日数や薬品使用効率の適正化」などはもちろん当然に重要な話ではあるのですが、今の時代急性期医療を担当する病院でこれらを重視しないところはむしろ見つける方が困難で、交通事故防止の方策として「安全運転」と答えるのと同じくらいに重要な項目ではないかと思いますね。
「経営に関する意思決定スピードの迅速化」と言えば、これはおそらく病院上層部の指導力ということが大きく関わってくるところでしょうが、この辺りこそまさしく公立病院を負け組たらしめている最大要因の一つではあるのかも知れませんから、確かにこれもお説ごもっともとも言える内容ではあるでしょう。

そうなると注目されるのが「投書に対する回答の公開」「患者満足度向上に関する委員会の設置」といったあたりなのですが、これらをどう解釈するべきなのかということですよね。
この点で興味深いのが、現場で働くスタッフにとって長居したくないだろう「聖地」とも呼ばれるような病院では、おおよそ地域住民からの投書も盛んなところなのかなという印象があることです。
あるいは経営的にうまく行っているようにも見えないあんなところこんなところが実はウハウハであったということなのでしょうか(苦笑)。

まあそうした話はともかくとしても、そもそも黒字病院(というのも少し無理がある調査に思えますが)と赤字病院でやっている診療内容も違うでしょうし、まさしく利益率に直結する項目のはずなのですが、どうもそのあたりの検証をされている気配が見えませんよね。
スタッフの給与・待遇なども顧客満足度に直結する現場スタッフの志気に大いに関わるものですが、そのあたりの検討もどうも行われていないようにも思えるのも不思議です。

黒字病院は医師の県外依存率も高いと言いますが、普通に考えてあちこちから医者を集める力がある、あるいは医者が集まってくるほど魅力ある病院が黒字であるということは、やはり従来からの定説であるところの「経営改善のためにはまず医者が集められるかどうか」が間接的に立証されているとも読める話です。
となれば、何故医者が集まる、医者が逃げるという病院の差が出てくるのか、そのあたりの事情を詳しく検証し解明していくことが、経営改善の秘密を探る上で非常に大きなテーマとなってくるのではないかと思うのですが、何やら原因と結果を取り違えたかのような議論に終始しているように思えますよね。

失礼ながらなんともピンぼけ気味な調査だなと思って件の山岡先生のことを調べてみましたところが、驚いたことに医療業界関係者でも何でもなくて中部電力からの出向職員なんだそうです。
そもそもこの浜松医大地域医療学講座は「中部電力による寄附講座として、医師不足が深刻化している静岡県中東遠地域を中心に医療事情を調べ、集団災害に対応する専門家の確保と安定した医療サービスの提供を目指す新たな研究チームとして開設」されたんだそうですが、失礼ながらもう少し現場の状況に踏み込まれた方が調査の実をあげられるのではないかと思います。
確かに業界の特殊性を主張するばかりで世間並みということに疎かった医療業界の過去を振り返ってみれば外部の目線の導入というのは重要ですが、外部の目線とモノを知らない無知とは必ずしも同一ではないはずですからね。

見たところ各病院の事務系に回答させることを想定したような項目が並んでいるのがその大きな原因かと思えるのですが、現場で手を動かしている人間に聞いてみればずいぶんと違った、そして何より面白そうな話も沢山出てきたんじゃないかとも思えるのですけれどもね(苦笑)。
ま、このデータを根拠として「集団災害に対応する専門家の確保と安定した医療サービスの提供を目指すために、全医療機関は患者からの投書をもっと大々的に取り扱うべきである」なんて素敵な主張を始められた日には、またぞろ新たな伝説として本「ぐり研」で大々的に取り上げさせていただきたいとは思うところですが(笑)。

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