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2009年8月31日 (月)

自治体崩壊と自治体病院 泉佐野市のケース

大阪というところは近年財政的に非常に厳しい状況にあるということが全国的に知られるようになりましたが、府下の各自治体においても状況は深刻なようです。
先頃こうした記事が出ておりましたことを御存知の方も多いと思いますが、改めて紹介しておきましょう。

泉佐野市:自主的再建進める早期健全化団体へ /大阪(2009年8月26日毎日新聞)

 泉佐野市は25日、08年度決算概要を発表した。自治体財政健全化法の指標のうち、「連結実質赤字比率」が26・42%、総負債の割合「将来負担比率」が393・5%となり、自主的に再建を進める「早期健全化団体」基準を大幅に上回った。

 市によると、公立病院特例債によって市立泉佐野病院の資金不足を約25億円解消するなどしていた。早期健全化団体は、財政健全化計画が義務付けられる。9月1日開会の市議会に素案を示す予定といい、会見した新田谷修司市長は「市民への負担をなるべく求めないようにする」と述べた。【酒井雅浩】

「早期健全化団体」転落が確定  大阪・泉佐野市(2009年8月26日47ニュース)

 大阪府泉佐野市は26日までに、自治体財政健全化法で財政破綻寸前とされる「早期健全化団体」へ転落することが確定したと明らかにした。

 2008年度決算で、連結実質赤字比率が26・42%、総負債の割合を示す将来負担比率が393・5%となり、基準を上回ったため。

 市は財政健全化計画を策定し、来年9月までに実施状況を大阪府に報告することが義務付けられる。

 市は1994年に開港した関西空港関連の税収を見込み、86年から02年にかけ借入金約700億円を含む計約1420億円を使い病院建設や下水道整備事業などに先行投資。だがバブル崩壊で企業誘致が進まず、人口も伸び悩んだため、十分な税収が得られず財政が悪化した。

ニュースUP:泉佐野市、財政破綻へ「黄信号」=経済部・久田宏(2009年8月26日毎日新聞)

 ◇関空税収、甘かった読み

 全国的に自治体財政が困窮する中、大阪府泉佐野市が財政破綻(はたん)の「黄信号」にあたる早期健全化団体に転落することが確実になった。一層の歳出削減や収入確保が求められることになり、医療や福祉などの公共サービスの低下も懸念される。94年の関西国際空港開港を機に、一気に開発が進んだ泉佐野市の財政が破綻寸前にまで陥ったのはなぜなのか。76年から00年までの24年間にわたり泉佐野市長を務めた向江昇さん(75)の証言を基に振り返る。

 ■国際都市への夢

 「関空建設が泉佐野の財政に大きく影響した。泉佐野だけが赤字を増やした悪者になっているが、ほんまは国と大阪府にだまされたんですよ」。向江さんは開口一番、嘆いた。この背景を探るには、70年代までさかのぼる必要がある。

 74年当時、国の航空審議会は、大阪(伊丹)空港に次ぐ関西第2空港の候補地として「泉州沖が最適」と結論付け、国が関空建設に向けて動き出していた。しかし、泉佐野市も含めた周辺自治体は騒音公害を理由に空港建設に反対だった。

 その直後に市長に就任した向江さんは反対決議を掲げたまま、国、大阪府との協議開始を決断した。「環境問題さえクリアできれば、国家的プロジェクトによって投資も落ちるし、基盤整備もできる」というもくろみがあったからだ。(略)

 地元の空港計画案への了承(84年)をきっかけに、国と大阪府は泉佐野市と周辺の開発に乗り出した。大阪府は、関空と連絡橋で結ばれる海岸を「りんくうタウン」と名付けて埋め立て、民間に分譲する計画を立てた。時代はバブル経済の真っただ中で、大企業が旧財閥ごとにグループを組み、土地確保に動いた。計画通り進んだならば、高層ビル群がそびえ立つ国際都市が誕生するはずだった。

 一方、泉佐野市はりんくうタウンの下水道整備を担当し、遅れていた市内の下水道整備も本格化させた。自治体の借金である地方債の発行には国や府の許可が必要だったが、向江さんは「西日本の玄関都市として整備するため、起債はどんどん認められた」と証言する。泉佐野市は91年、空港関連の固定資産税として、当時の税収総額とほぼ同じ約100億円が新たな収入になると試算した。そして市立病院や市民ホールを相次いで建設してきた。87~99年度に投じられた空港関連事業費は1616億円に上り、うち779億円は地方債で賄った。その借金返済には、将来の空港関連収入を当てにしていた

 ■バブル崩壊で一変

 しかし、90年代に入ってバブル経済が崩壊し、事態が一変した。すでにビルの鉄筋が打ち込まれていたりんくうタウンからは、大企業が次々に撤退。空港関連の実際の固定資産税は、関空開港後の平均で年約70億円にとどまった。

 新設した市立病院は航空機事故を想定し、会議室も病室に転用できる高機能設備が整えられるなど、建設費はかさんだ。当時の泉佐野市と周辺自治体では高度医療を受診できる病院はなく、向江さんは「泉佐野市ばかりに関空の税収が入ると周辺から聞こえ、還元する意味合いもあった」と、赤字前提だったことを明かす。毎年度発生する赤字は市本体の会計から補う計画だったが、税収の伸び悩みがここにも影響した。
(略)
 00年の市長選で向江さんを制して当選した新田谷修司市長はその後、財政再建に取り組んできた。税収は、同じ人口規模の自治体に比べ豊かで普通会計は黒字だが、空港関連開発で生じた事業会計の赤字は大きく、08年度決算(速報値)の連結実質赤字は約54億3000万円で、連結実質赤字比率は基準値17・44%を上回る26・40%になる。9月に総務省に報告し、早期健全化団体として12月に財政健全化計画をまとめる。

 かくして、市民1人当たり約135万円の借金が残った。
(略)

いずれも破綻の要因として、市立病院云々にも言及していることに留意いただきたいのですが、元々泉佐野市の借金の根本原因としては空港関連のものが大半とされていますけれども、毎年確実に赤字を生み出すという点では病院の貢献も決して少ないものではないようです。
そもそも泉佐野市に限らず地方自治体にとって今や自治体立病院は毎年固定的な赤字を計上する(逆)打ち出の小槌状態となっていることは周知の通りですが、自治体病院にも色々な事情はあるとしても結局共通した問題点として非効率な運営をしているという事実は否定できないところだと思いますね。
病院経営が成立しないような僻地公立病院は最低限の社会保障としてそれなりの公費を投入する意味があるのかも知れませんが、他に幾らでも医療機関の存在する都市部での公立病院というものの存在意義は近年各地で問い直されているところで、まして「空港収入の見返りに赤字前提で豪華な病院を」と言われて今の時代納税者が納得するものでしょうか。

何より納税者の納得以前に現場スタッフが集まらなければ病院が成り立たないのは昨今の世情ですが、過大な設備投資の代償に待遇をけちっていると言われがちな公立病院は昨今医者からさっぱり人気がありません。
例えば昨年末に同じ大阪府下で松原市が経営不振に陥っている市立病院を廃止する決断を下したことは以前にも紹介しました通りですが、過去にたびたび取り上げさせていただきました阪南市立病院の崩壊問題も、元を正せば勤務状況が厳しい割に周辺民間病院に比べて格安の給与に常勤医が集団逃亡したという背景もあったと言います。
泉佐野市立病院もこうした自治体病院受難の時代の例外ではなく、むしろ以前から赤丸急上昇中の要注目病院として一部で話題になっていたわけですが、恐らく最初に大きな注目を受けた記事というものはこちらだったのではないかと記憶しています。

手術減、経営痛手 麻酔医確保に苦渋の厚遇 泉佐野病院(2008年2月20日朝日新聞)

 3500万円は正当な報酬なのか。大阪府泉佐野市の市立泉佐野病院が麻酔科の常勤医確保のために掲げた厚遇は、現状の労働環境では地域医療が守れなくなっている実態を浮かび上がらせた。ただ、全国最悪レベルの財政難にあえぐ市で、異例の高額報酬が論議を呼びそうだ。

 同病院には従来、奈良県立医科大が麻酔科医を派遣していたが、医局員の減少を理由に撤退。病院側は昨年度、国立循環器病センター(大阪府吹田市)から副院長を招き、その人脈で常勤医を確保していたが、以前より医師が1人減り、年間2千件前後の手術を担う麻酔科の過酷な労働が深刻になっていたという。

 運転資金の不足を示す同病院の不良債務は06年度末で約10億円。今年度はさらに数億円増える見込みで、1540億円もの借金を抱え、財政再生団体転落の危機にある市にとって、同病院の赤字減らしは喫緊の課題だ。

 同病院では現在、麻酔科医の負担を少なくするため、手術件数を大幅に減らしており、多くの救急搬送などに対応できない状況が続く。同病院事務局は「手術を減らせば収益悪化に直結する。麻酔科医が不在になり、さらに手術が少なくなれば病院経営に大きな痛手となる」と説明する。

 勤務医の報酬をめぐっては、三重県尾鷲市が05年、産科医を年5520万円で確保した例がある。林行雄・大阪大医学部付属病院教授(麻酔)は「激務や待遇面で大学でも麻酔科医が去っており、高額報酬で募集せざるを得ない事情は理解できる。だが、手術はチームで行うもので、麻酔科医だけの厚遇は感情的しこりが残りかねない。あくまで一時的対策と考えるべきだ」と話す。

「苦渋の厚遇」という記事のタイトルは偶然なのかも知れませんが、出したくないという嫌々な心情があまりに端的に表現されていて、まさに言い得て妙ですよね(苦笑)。
もともと公立病院などというところは総じて医師にとって働きやすい環境ではありませんけれども、かつては赤字の持ち出しになろうが査定で切られようが金銭の不安なく医師の信念に従って望ましい治療を追求できたという時代もあって、一部の突っ走ってしまうタイプの先生方には一定の人気を得ていた時代もありました。
ところが近年では赤字削減だ、財政改革だということで医者はもっと稼げとノルマばかり押し付けられる一方、そんな赤字医療などトンでもない、やめてくださいと医療行為に対する縛りばかりがきつくなってきているのは全国的な傾向のようですね。
麻酔科に限らず医療というものは日進月歩で常に新しい機材を入れていかなければ時代について行けませんが、医療の医の字も知らないくせに高給取りの事務から「赤字なんだからそんな高いものは買えません」「どうしても入れて欲しいなら必ず黒字に出来るという保証をしてもらわないと」などといちいち茶々入れされれば、それは医者の人気もやる気もなくなろうと言うものでしょう。

繰り返すようですが他に選択肢のない僻地はともかくとして、民間病院数多の都市部で何故大赤字を垂れ流しながら公立病院を維持しなければならないのか、今の時代その合理的な理由というものを為政者は明確にしていかなければならないように思いますが、胸を張ってこの病院が必要だと言える根拠があるならそう主張すればよいわけですよね。
大阪府としてもこうした自治体病院の現状には心を痛めていたということなのか、少し前には同市立病院を含めた泉州地域公立4病院の統合計画などというものを立ち上げたことは既にご承知の通りですが、賛成するにしても反対するにしても単なる既得権益維持を図っていると取られかねない言動ばかりというのはどうかと思われるところです。
例えば地域に根ざした医療などと言うのであれば、何をどうしようが医者もスタッフも数年で転勤になるような公立の施設より、地域に支持されなければ食っていくことが出来ない私立の施設の方がはるかに必至で努力している道理ですから、都市部公立病院問題を僻地におけるそれと同じ文脈で語ることには無理があると思うのですけれどもね。

大阪府:「地域医療できるか」 病院統合案、地元では戸惑いも 各自治体、反応割れる/大阪(2009年8月1日毎日新聞)

     大阪府が検討を始めた府立泉州救命救急センターと、泉佐野、貝塚、阪南3市立病院の経営統合。府は国の制度を活用し、自治体の枠を超えた地域医療の再整備を目指す。しかし地元では「地域に根ざした医療ができるのか」などの戸惑いの声が出ている。

     各病院とも赤字や医師不足を抱えているが、現地自治体は反応が分かれる。泉佐野市は「自治体が協力した医療体制による経費削減が不可欠」と歓迎。一方、3市の中で病院債務が少ない貝塚市は「各病院の債務は各市で解消しないと統合はできない」と困惑する。

     阪南市立病院では07年、医師不足から1年以上内科が休止した。阪南市社会福祉協議会の米原武雄会長は「経営統合で巨大病院になると、地域に根ざした医療が難しくなるのでは」と指摘する。

     一方、笹井康典・府健康医療部長は「独立行政法人で統合し、府も参画し、大学も支援する。公立病院改革のモデルになりうる」と自信を示し、全国で最大10カ所の医療圏域に上限各100億円が分配される国の制度の活用を目指す。【野田武、酒井雅浩、福田隆】

南部4病院統合:「府の案には乗れない」 阪南市長「入院機能残らなければ」 /大阪

 ◇阪南/貝塚/泉佐野市立病院などの統合

 阪南市の福山敏博市長は12日、府が阪南、貝塚、泉佐野3市立病院と府立泉州救命救急センター統合を表明したことについて、「入院機能が残らないのであれば、統合には乗れない」と述べた。府が先月末に示した案では、貝塚を北分院、泉佐野を南分院とし、阪南は入院を担わないとされていた。

 福山市長は同日の市議会特別委員会で、「将来的に統合を検討しなければならない。現185床の縮小はやむを得ないが、135床前後は確保するよう府に要望する」と答弁。終了後、病院を存続するためには国の地域医療再生計画に基づく交付金が不可欠と指摘し、「老朽化した施設の改築や医師確保にもつながる」と述べた。

 市は、市立病院について、「リハビリなど回復期医療を基本とした病院として役割分担する」との意見を同日、府に提出。今月末にも府と3市で意見をまとめ、国に提出するという。【酒井雅浩】

しかし福山市長、常勤も次々逃げていっているのに公立リハビリ病院化って、ますます医者にとっては魅力に乏しい病院になってきそうではありますけれども、大丈夫なんでしょうかね。
それはともかくとしても、「よその自治体病院の赤字までもってこられるのはかなわない」と言うのも本音だと思いますけれども(苦笑)、そうは言ってもどこの自治体でも大小の差こそあれ増え続ける赤字を抱えているという事情は同じであるわけです。
何より医者からの(他のスタッフからも?)信頼というものを多くの自治体病院が失っているわけですから、今さら真面目で真っ当な医療に回帰しようとしたところでまともな人間ほど行きたくないと敬遠するなんて状況(失礼)では現実的に無理ではないでしょうか。

個人的には今後も自治体病院が生き残っていくためには民業なら黒字の分野でも赤字になるというくらいの非効率性の改善はもうあきらめて、絶対に民間では出来そうにない部分にだけ特化して最低限の体制を維持することで、少しでも赤字額を減らしていくしかないとも思っています。
警察や消防が赤字だなんて誰も言わないのと同じで、公的サービスとしてしか成立しない領域であれば誰も病院の赤字を何とかしろとは言わないでしょうしね。
そして逆に医療側から考えてみても、そうした病院なりポストなりに対する需要というものも一定量はあるわけですから、程よく折り合うところを見いだしていくというのも大切なのではないですかね。

先日も管理分娩の話題で少しばかり取り上げさせていただきましたが、お産ということに関しては既に貝塚市民病院と市立泉佐野病院との間で役割分担が行われていて、体制強化と医師の過重労働回避のためのシステムが稼働してきているわけで、病院統合もやってみれば案外たいしたことはなかったという話になるかもですよ。
赤字解消といったことに関しては現状では統合しようが何をしようがおいそれとは難しいとも思いますけれども、何があっても他に患者の受け皿だけは存在するこうした都市部でまず統廃合をやってみるというのは、今後の自治体病院の行く末を占うモデルケースになり得るかとも思うんですけれどもね。
いずれにしても折から政権交代で医療政策も大きく変化していく可能性があるわけで、今まで病院統合と旗振りをしてきた厚労省の姿勢が大きく変化するといったことがあれば、この辺りの話もまた一から出直しになりかねないという可能性はあるわけなんですが…

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コメント

「医療の医の字も知らないくせに高給取りの事務」のリンク先のレスでは事務方トップ=経営トップ=特別職の病院事業管理者とされていますが、泉佐野市立病院のHPをみるとその職に就いておられる方は一応医師のようです。

そのスレッドの他のレスに別の根拠があるのかもしれませんが、現状のリンクですと誤解を受けかねませんのでコメントさせていただきました。

まあ、この病院の給与の平均が他の自治体病院より医師は低く、事務が高いのは間違いないようですけどね。
http://www.city.izumisano.osaka.jp/section/jinji/H20-kohyo-last.pdf

投稿: bob | 2009年8月31日 (月) 13時18分

補足ありがとうございます。
最近魚拓がバスターさんにはじかれるので、リンク張るのにもいささか苦労しています…

投稿: 管理人nobu | 2009年9月 1日 (火) 14時42分

週刊ダイヤモンド 頼れる病院 消える病院の資料によると

人件費率
市立泉佐野病院 50%~60%未満
阪南市立病院 80%以上

だそうです。
50-60%ならマシな方ですが、50%にならないと経営は厳しいですね。

投稿: ないかい | 2009年9月 1日 (火) 18時11分

ところがそういう当たり前の改善が出来ている公立病院が果たしてあるのかと言われれば…

投稿: 管理人nobu | 2009年9月 3日 (木) 11時32分

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