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2009年8月

2009年8月31日 (月)

自治体崩壊と自治体病院 泉佐野市のケース

大阪というところは近年財政的に非常に厳しい状況にあるということが全国的に知られるようになりましたが、府下の各自治体においても状況は深刻なようです。
先頃こうした記事が出ておりましたことを御存知の方も多いと思いますが、改めて紹介しておきましょう。

泉佐野市:自主的再建進める早期健全化団体へ /大阪(2009年8月26日毎日新聞)

 泉佐野市は25日、08年度決算概要を発表した。自治体財政健全化法の指標のうち、「連結実質赤字比率」が26・42%、総負債の割合「将来負担比率」が393・5%となり、自主的に再建を進める「早期健全化団体」基準を大幅に上回った。

 市によると、公立病院特例債によって市立泉佐野病院の資金不足を約25億円解消するなどしていた。早期健全化団体は、財政健全化計画が義務付けられる。9月1日開会の市議会に素案を示す予定といい、会見した新田谷修司市長は「市民への負担をなるべく求めないようにする」と述べた。【酒井雅浩】

「早期健全化団体」転落が確定  大阪・泉佐野市(2009年8月26日47ニュース)

 大阪府泉佐野市は26日までに、自治体財政健全化法で財政破綻寸前とされる「早期健全化団体」へ転落することが確定したと明らかにした。

 2008年度決算で、連結実質赤字比率が26・42%、総負債の割合を示す将来負担比率が393・5%となり、基準を上回ったため。

 市は財政健全化計画を策定し、来年9月までに実施状況を大阪府に報告することが義務付けられる。

 市は1994年に開港した関西空港関連の税収を見込み、86年から02年にかけ借入金約700億円を含む計約1420億円を使い病院建設や下水道整備事業などに先行投資。だがバブル崩壊で企業誘致が進まず、人口も伸び悩んだため、十分な税収が得られず財政が悪化した。

ニュースUP:泉佐野市、財政破綻へ「黄信号」=経済部・久田宏(2009年8月26日毎日新聞)

 ◇関空税収、甘かった読み

 全国的に自治体財政が困窮する中、大阪府泉佐野市が財政破綻(はたん)の「黄信号」にあたる早期健全化団体に転落することが確実になった。一層の歳出削減や収入確保が求められることになり、医療や福祉などの公共サービスの低下も懸念される。94年の関西国際空港開港を機に、一気に開発が進んだ泉佐野市の財政が破綻寸前にまで陥ったのはなぜなのか。76年から00年までの24年間にわたり泉佐野市長を務めた向江昇さん(75)の証言を基に振り返る。

 ■国際都市への夢

 「関空建設が泉佐野の財政に大きく影響した。泉佐野だけが赤字を増やした悪者になっているが、ほんまは国と大阪府にだまされたんですよ」。向江さんは開口一番、嘆いた。この背景を探るには、70年代までさかのぼる必要がある。

 74年当時、国の航空審議会は、大阪(伊丹)空港に次ぐ関西第2空港の候補地として「泉州沖が最適」と結論付け、国が関空建設に向けて動き出していた。しかし、泉佐野市も含めた周辺自治体は騒音公害を理由に空港建設に反対だった。

 その直後に市長に就任した向江さんは反対決議を掲げたまま、国、大阪府との協議開始を決断した。「環境問題さえクリアできれば、国家的プロジェクトによって投資も落ちるし、基盤整備もできる」というもくろみがあったからだ。(略)

 地元の空港計画案への了承(84年)をきっかけに、国と大阪府は泉佐野市と周辺の開発に乗り出した。大阪府は、関空と連絡橋で結ばれる海岸を「りんくうタウン」と名付けて埋め立て、民間に分譲する計画を立てた。時代はバブル経済の真っただ中で、大企業が旧財閥ごとにグループを組み、土地確保に動いた。計画通り進んだならば、高層ビル群がそびえ立つ国際都市が誕生するはずだった。

 一方、泉佐野市はりんくうタウンの下水道整備を担当し、遅れていた市内の下水道整備も本格化させた。自治体の借金である地方債の発行には国や府の許可が必要だったが、向江さんは「西日本の玄関都市として整備するため、起債はどんどん認められた」と証言する。泉佐野市は91年、空港関連の固定資産税として、当時の税収総額とほぼ同じ約100億円が新たな収入になると試算した。そして市立病院や市民ホールを相次いで建設してきた。87~99年度に投じられた空港関連事業費は1616億円に上り、うち779億円は地方債で賄った。その借金返済には、将来の空港関連収入を当てにしていた

 ■バブル崩壊で一変

 しかし、90年代に入ってバブル経済が崩壊し、事態が一変した。すでにビルの鉄筋が打ち込まれていたりんくうタウンからは、大企業が次々に撤退。空港関連の実際の固定資産税は、関空開港後の平均で年約70億円にとどまった。

 新設した市立病院は航空機事故を想定し、会議室も病室に転用できる高機能設備が整えられるなど、建設費はかさんだ。当時の泉佐野市と周辺自治体では高度医療を受診できる病院はなく、向江さんは「泉佐野市ばかりに関空の税収が入ると周辺から聞こえ、還元する意味合いもあった」と、赤字前提だったことを明かす。毎年度発生する赤字は市本体の会計から補う計画だったが、税収の伸び悩みがここにも影響した。
(略)
 00年の市長選で向江さんを制して当選した新田谷修司市長はその後、財政再建に取り組んできた。税収は、同じ人口規模の自治体に比べ豊かで普通会計は黒字だが、空港関連開発で生じた事業会計の赤字は大きく、08年度決算(速報値)の連結実質赤字は約54億3000万円で、連結実質赤字比率は基準値17・44%を上回る26・40%になる。9月に総務省に報告し、早期健全化団体として12月に財政健全化計画をまとめる。

 かくして、市民1人当たり約135万円の借金が残った。
(略)

いずれも破綻の要因として、市立病院云々にも言及していることに留意いただきたいのですが、元々泉佐野市の借金の根本原因としては空港関連のものが大半とされていますけれども、毎年確実に赤字を生み出すという点では病院の貢献も決して少ないものではないようです。
そもそも泉佐野市に限らず地方自治体にとって今や自治体立病院は毎年固定的な赤字を計上する(逆)打ち出の小槌状態となっていることは周知の通りですが、自治体病院にも色々な事情はあるとしても結局共通した問題点として非効率な運営をしているという事実は否定できないところだと思いますね。
病院経営が成立しないような僻地公立病院は最低限の社会保障としてそれなりの公費を投入する意味があるのかも知れませんが、他に幾らでも医療機関の存在する都市部での公立病院というものの存在意義は近年各地で問い直されているところで、まして「空港収入の見返りに赤字前提で豪華な病院を」と言われて今の時代納税者が納得するものでしょうか。

何より納税者の納得以前に現場スタッフが集まらなければ病院が成り立たないのは昨今の世情ですが、過大な設備投資の代償に待遇をけちっていると言われがちな公立病院は昨今医者からさっぱり人気がありません。
例えば昨年末に同じ大阪府下で松原市が経営不振に陥っている市立病院を廃止する決断を下したことは以前にも紹介しました通りですが、過去にたびたび取り上げさせていただきました阪南市立病院の崩壊問題も、元を正せば勤務状況が厳しい割に周辺民間病院に比べて格安の給与に常勤医が集団逃亡したという背景もあったと言います。
泉佐野市立病院もこうした自治体病院受難の時代の例外ではなく、むしろ以前から赤丸急上昇中の要注目病院として一部で話題になっていたわけですが、恐らく最初に大きな注目を受けた記事というものはこちらだったのではないかと記憶しています。

手術減、経営痛手 麻酔医確保に苦渋の厚遇 泉佐野病院(2008年2月20日朝日新聞)

 3500万円は正当な報酬なのか。大阪府泉佐野市の市立泉佐野病院が麻酔科の常勤医確保のために掲げた厚遇は、現状の労働環境では地域医療が守れなくなっている実態を浮かび上がらせた。ただ、全国最悪レベルの財政難にあえぐ市で、異例の高額報酬が論議を呼びそうだ。

 同病院には従来、奈良県立医科大が麻酔科医を派遣していたが、医局員の減少を理由に撤退。病院側は昨年度、国立循環器病センター(大阪府吹田市)から副院長を招き、その人脈で常勤医を確保していたが、以前より医師が1人減り、年間2千件前後の手術を担う麻酔科の過酷な労働が深刻になっていたという。

 運転資金の不足を示す同病院の不良債務は06年度末で約10億円。今年度はさらに数億円増える見込みで、1540億円もの借金を抱え、財政再生団体転落の危機にある市にとって、同病院の赤字減らしは喫緊の課題だ。

 同病院では現在、麻酔科医の負担を少なくするため、手術件数を大幅に減らしており、多くの救急搬送などに対応できない状況が続く。同病院事務局は「手術を減らせば収益悪化に直結する。麻酔科医が不在になり、さらに手術が少なくなれば病院経営に大きな痛手となる」と説明する。

 勤務医の報酬をめぐっては、三重県尾鷲市が05年、産科医を年5520万円で確保した例がある。林行雄・大阪大医学部付属病院教授(麻酔)は「激務や待遇面で大学でも麻酔科医が去っており、高額報酬で募集せざるを得ない事情は理解できる。だが、手術はチームで行うもので、麻酔科医だけの厚遇は感情的しこりが残りかねない。あくまで一時的対策と考えるべきだ」と話す。

「苦渋の厚遇」という記事のタイトルは偶然なのかも知れませんが、出したくないという嫌々な心情があまりに端的に表現されていて、まさに言い得て妙ですよね(苦笑)。
もともと公立病院などというところは総じて医師にとって働きやすい環境ではありませんけれども、かつては赤字の持ち出しになろうが査定で切られようが金銭の不安なく医師の信念に従って望ましい治療を追求できたという時代もあって、一部の突っ走ってしまうタイプの先生方には一定の人気を得ていた時代もありました。
ところが近年では赤字削減だ、財政改革だということで医者はもっと稼げとノルマばかり押し付けられる一方、そんな赤字医療などトンでもない、やめてくださいと医療行為に対する縛りばかりがきつくなってきているのは全国的な傾向のようですね。
麻酔科に限らず医療というものは日進月歩で常に新しい機材を入れていかなければ時代について行けませんが、医療の医の字も知らないくせに高給取りの事務から「赤字なんだからそんな高いものは買えません」「どうしても入れて欲しいなら必ず黒字に出来るという保証をしてもらわないと」などといちいち茶々入れされれば、それは医者の人気もやる気もなくなろうと言うものでしょう。

繰り返すようですが他に選択肢のない僻地はともかくとして、民間病院数多の都市部で何故大赤字を垂れ流しながら公立病院を維持しなければならないのか、今の時代その合理的な理由というものを為政者は明確にしていかなければならないように思いますが、胸を張ってこの病院が必要だと言える根拠があるならそう主張すればよいわけですよね。
大阪府としてもこうした自治体病院の現状には心を痛めていたということなのか、少し前には同市立病院を含めた泉州地域公立4病院の統合計画などというものを立ち上げたことは既にご承知の通りですが、賛成するにしても反対するにしても単なる既得権益維持を図っていると取られかねない言動ばかりというのはどうかと思われるところです。
例えば地域に根ざした医療などと言うのであれば、何をどうしようが医者もスタッフも数年で転勤になるような公立の施設より、地域に支持されなければ食っていくことが出来ない私立の施設の方がはるかに必至で努力している道理ですから、都市部公立病院問題を僻地におけるそれと同じ文脈で語ることには無理があると思うのですけれどもね。

大阪府:「地域医療できるか」 病院統合案、地元では戸惑いも 各自治体、反応割れる/大阪(2009年8月1日毎日新聞)

     大阪府が検討を始めた府立泉州救命救急センターと、泉佐野、貝塚、阪南3市立病院の経営統合。府は国の制度を活用し、自治体の枠を超えた地域医療の再整備を目指す。しかし地元では「地域に根ざした医療ができるのか」などの戸惑いの声が出ている。

     各病院とも赤字や医師不足を抱えているが、現地自治体は反応が分かれる。泉佐野市は「自治体が協力した医療体制による経費削減が不可欠」と歓迎。一方、3市の中で病院債務が少ない貝塚市は「各病院の債務は各市で解消しないと統合はできない」と困惑する。

     阪南市立病院では07年、医師不足から1年以上内科が休止した。阪南市社会福祉協議会の米原武雄会長は「経営統合で巨大病院になると、地域に根ざした医療が難しくなるのでは」と指摘する。

     一方、笹井康典・府健康医療部長は「独立行政法人で統合し、府も参画し、大学も支援する。公立病院改革のモデルになりうる」と自信を示し、全国で最大10カ所の医療圏域に上限各100億円が分配される国の制度の活用を目指す。【野田武、酒井雅浩、福田隆】

南部4病院統合:「府の案には乗れない」 阪南市長「入院機能残らなければ」 /大阪

 ◇阪南/貝塚/泉佐野市立病院などの統合

 阪南市の福山敏博市長は12日、府が阪南、貝塚、泉佐野3市立病院と府立泉州救命救急センター統合を表明したことについて、「入院機能が残らないのであれば、統合には乗れない」と述べた。府が先月末に示した案では、貝塚を北分院、泉佐野を南分院とし、阪南は入院を担わないとされていた。

 福山市長は同日の市議会特別委員会で、「将来的に統合を検討しなければならない。現185床の縮小はやむを得ないが、135床前後は確保するよう府に要望する」と答弁。終了後、病院を存続するためには国の地域医療再生計画に基づく交付金が不可欠と指摘し、「老朽化した施設の改築や医師確保にもつながる」と述べた。

 市は、市立病院について、「リハビリなど回復期医療を基本とした病院として役割分担する」との意見を同日、府に提出。今月末にも府と3市で意見をまとめ、国に提出するという。【酒井雅浩】

しかし福山市長、常勤も次々逃げていっているのに公立リハビリ病院化って、ますます医者にとっては魅力に乏しい病院になってきそうではありますけれども、大丈夫なんでしょうかね。
それはともかくとしても、「よその自治体病院の赤字までもってこられるのはかなわない」と言うのも本音だと思いますけれども(苦笑)、そうは言ってもどこの自治体でも大小の差こそあれ増え続ける赤字を抱えているという事情は同じであるわけです。
何より医者からの(他のスタッフからも?)信頼というものを多くの自治体病院が失っているわけですから、今さら真面目で真っ当な医療に回帰しようとしたところでまともな人間ほど行きたくないと敬遠するなんて状況(失礼)では現実的に無理ではないでしょうか。

個人的には今後も自治体病院が生き残っていくためには民業なら黒字の分野でも赤字になるというくらいの非効率性の改善はもうあきらめて、絶対に民間では出来そうにない部分にだけ特化して最低限の体制を維持することで、少しでも赤字額を減らしていくしかないとも思っています。
警察や消防が赤字だなんて誰も言わないのと同じで、公的サービスとしてしか成立しない領域であれば誰も病院の赤字を何とかしろとは言わないでしょうしね。
そして逆に医療側から考えてみても、そうした病院なりポストなりに対する需要というものも一定量はあるわけですから、程よく折り合うところを見いだしていくというのも大切なのではないですかね。

先日も管理分娩の話題で少しばかり取り上げさせていただきましたが、お産ということに関しては既に貝塚市民病院と市立泉佐野病院との間で役割分担が行われていて、体制強化と医師の過重労働回避のためのシステムが稼働してきているわけで、病院統合もやってみれば案外たいしたことはなかったという話になるかもですよ。
赤字解消といったことに関しては現状では統合しようが何をしようがおいそれとは難しいとも思いますけれども、何があっても他に患者の受け皿だけは存在するこうした都市部でまず統廃合をやってみるというのは、今後の自治体病院の行く末を占うモデルケースになり得るかとも思うんですけれどもね。
いずれにしても折から政権交代で医療政策も大きく変化していく可能性があるわけで、今まで病院統合と旗振りをしてきた厚労省の姿勢が大きく変化するといったことがあれば、この辺りの話もまた一から出直しになりかねないという可能性はあるわけなんですが…

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2009年8月30日 (日)

今日のぐり「お好み焼き月ちゃん」

先日こういう記事が出ていましたが、ご覧になったでしょうか。

日清食品、無人島でのサバイバル研修を再開(2009年8月17日産経ニュース)

 食品大手の日清食品ホールディングスは、26日から2泊3日で、グループ会社の若手管理職社員を対象にして、瀬戸内海の無人島で生活させる“サバイバル研修”を実施する。

 対象は、日清食品で7月に課長職に昇格した13人に、明星食品などグループ会社4社の管理職4人を加えた40歳前後の17人。

 この研修では「チキンラーメン」と水、小麦粉、ビニールシートしか持たされない。まきをひろって火をおこして手作りの道具で調理し、ビニールシートで寝泊まりするなどのサバイバル生活を強いられる。

 同社では若手管理職の心身を鍛えるため、平成15年からこの研修を開始。17年までは無人島で、18年から20年までは埼玉県の山中で研修を実施してきた。今回、研修効果を検証した結果、山中よりも条件がより過酷な無人島に研修場所を戻したという。

思わず「お前はよ○こ濱口か!」と突っ込みたくなるような話ですが、たまにはこういう経験も面白そうではありますけれどもね。
しかしサバイバルという割にはナイフなどを装備していないのが何ともなんですが、そのあたりは私物で賄っているということなんでしょうか。

最近では健康ブームもあってか、先進国の中でも(塩分摂取量はともかく)栄養学的にバランスも優れているとして日本人の食生活というものも結構海外からも注目されているようですね。
実際日本人の平均BMIはずいぶんと低い方ですから、ダイエットなどということを気にされる向きには「日本食=低カロリー、ヘルシー」というイメージも定着しつつあるようですね。
確かにエネルギーが炭水化物中心で低脂肪という点では太りにくいかも知れませんが、見るからにBMI30オーバーの丸々としたアメリカ人などが巨大などんぶりでうどんを食べていたりするのを見ると「ヘルシーって、いったいなに?」と思ってしまうのも確かではありますが…

まあそうした余談はともかくとして、これを機会にと日本政府としてもこういうことを言ってきているようですけれども、見え見えの商売気もさることながら、どうもいささかお役所仕事といった臭気が抜きがたい気がするのは自分だけでしょうか?

世界が認める日本の食といえば……?(2009年7月10日EXCITEニュース)

世界的な日本食ブームになって久しい。いまや海外で寿司屋を見かけることは珍しくないし、ラーメン屋や居酒屋も増えている。

ところで、もし海外の人に「代表的な日本食は?」と聞かれたら、いったい何を挙げるだろうか。

先日、農林水産省が「世界が認める日本の食150」を策定した。これは海外における日本食材の認知度を高め、輸出を促進していくことを狙いとしたもの。この結果がなかなか興味深い。

まず「日本食10選」では、多様な日本料理等の中から代表的な10種類が選ばれた。結果は以下のとおり。(1)みそ汁・すまし汁(うまみ・だし)、(2)すし・さしみ、(3)鉄板焼き・すきやき・しゃぶしゃぶ(肉料理)、(4)てんぷら、(5)精進料理・豆腐(野菜料理)、(6)ごはん・炊き込みごはん、(7)麺類、(8)フルーツ、(9)日本酒・焼酎、(10)日本茶+和菓子。

だいぶざっくりしたくくりである感も否めないが、確かにどれも日本を代表する味ではある。

一方、「加工食品40選」はより具体的だ。加工食品のうち、とくに輸出取引が容易なものから、海外の方々の味覚に合う商品をコンテストで選考。253品のエントリーから、40品が入選した。ちなみに輸出促進という目的をふまえ、賞味期限が4カ月以上であることなどが条件になっている。

一例をあげると、株式会社 紀文食品の「チーちく」、エスビー食品株式会社の「とろけるカレー(200g)」、日清オイリオグループ株式会社の「ヘルシーリセッタ(600gPET)」など。
(略)
日本食の人気と共に、いわゆる“なんちゃって日本食”も増えている昨今。いずれにせよ、海外に日本の食がPRされるのは好ましいことといえそうだ。
(古屋江美子)

なにかこう、10選と言って選ぶにしてももう少しセンスと言いますか庶民感覚をと言いますか、一応コース的に組み合わせを考えてみましたなんてことを言いたい気持ちは判るんですけどね…
もちろんこういう正当な?日本食の普及も重要なんでしょうが、同じ売るにしても売りたいものを売るよりは、やはり向こうの人間から自発的に人気が出てくるものを売る方がお互い幸せになれそうですよね。
近ごろではアニメや漫画をはじめとする日本初の文化が人気を博した結果、「この主人公が食っているものは一体何なんだ?」と日本人の食生活に興味を持つ人間も多いんだとか。
特にその方面で彼らが興味津々なのが日本の弁当なんだそうですが、確かにああいうスタイルの食事というものはあまり海外では見かけませんよね(中国文化圏をはじめとして冷や飯は断固として拒否!という国が多いのも事実なんですが…)。

【米国ブログ】箱に詰めただけの昼食ではない日本の「弁当」(2009年6月24日サーチナ)

  消費期限の迫った弁当などの見切り販売を制限したことで、セブン―イレブン・ジャパンが公正取引委員会から排除命令を受けた。食品廃棄の是非について注目が集まっているが、日本の弁当そのものは、多くの米国人から健康的な食文化として高く評価されている。

  日本在住の米国人ブロガーEricは、弁当について次のように記している。「『弁当』というのは『ボックスランチ(箱詰めされた昼食)』という意味だが、それだけでは正しく表現しきれていない。弁当にはカツや鶏のから揚げなどの主菜とごはん、そして漬物やポテトサラダ、キムチなど副菜がいくつか入っている。この組み合わせが非常に大切であって、日本では多くの色の食材が使われている食事はバランスがいいと考えられている。

  また日本の弁当箱を2つ持っているというブロガーJames Youngは、「日本の質素な弁当は素晴らしい。私たちも毎日健康的な弁当を作るべきだ」と述べ、弁当箱の選び方などを記すとともに「ピーナツバターを挟んだ不健康なサンドイッチはもうやめよう」と記している。(編集担当:松井望・山口幸治)

まあ、彼らのソウルフードとも言うべきピーナツバターサンドと比べて日本の弁当が質素かどうかは異論ありそうなところだとは思いますけれども、確かにカロリー的には質素と言えるかも知れないですかね。
海外でもニューヨークあたりでは日本式に毎日の弁当配送サービスまであるそうですが、邦人だけではなく向こうの人間にも広まってきているのでしょうか?

弁当と言えば少し前にも、日本の高校生の昼食風景が外国人に異常に受けていたという話がありましたけれども、最近ではさらに話が進んで韓国あたりではキャラ弁が大受けなんだとか(たしかに、そこまでやるかというものも多いですからねえ)。
最近では「弁当こそ日本の誇るべき文化だ!」なんて声まであるそうなんですが、いやはやそこまで言いますか?(まあおおむね好意的評価をいただいているという受け取り方でいいんでしょうが)。

「弁当に憧れる」 アニメで見る「NIPPON」、世界の「外から目線」(2009年08月27日ITmedia)

「bentoを女の子に作ってもらうのは最高の栄誉らしい」と騎士道物語の国の人は言った。ネットとアニメを通じて海外の人びとが知った日本文化への感想はさまざまだ。

 「礼儀を重んじる国民だ」「お弁当を作ってほしい」。アニメなどの日本のサブカルチャーに寄せられた海外のネットユーザーのコメントの数々……。現代日本の特異性をからかうものから、伝統文化や日本人の美徳を絶賛するものまで多種多様だ。動画投稿サイト「Youtube」(ユーチューブ)のコメントを集めた動画まで登場し、ニコニコ動画の「海外の反応シリーズ」はすでに1200件を超えた。ユーザーの間では「外からみた現代日本文化が分かる」と人気が集まっている。(宮原啓彰)

 ニコニコ動画に投稿された「海外オタクたちの名・珍言集(日本・日本人への意見編)」は、海外のアニメ好きがユーチューブや掲示板などに書き込んだ「アニメで知った日本文化への感想」を紹介している。

 例えば、日本のお弁当。学園モノのアニメでも定番の小道具だが、外国人には驚きと崇拝の対象となってしまう。「bento(弁当)にあこがれる。あの箱には夢と料理が入ってる」(オランダ)「いろんな料理がちょっとずつ入っててとってもキュート!」(米国)「bentoを(日本の)女の子に作ってもらうのは最高の栄誉だと聞いた」(フランス)。

 日本女性のこまやかな心遣いの結晶とも言える弁当は、日本が誇るべき文化だったのだ。

イタダキマス??

 「(アニメキャラは)なんて素晴らしい高校生活を送っているんだ。銃持ち込みのボディーチェックなんてないんだろうな」(米国)。日本の治安の良さや礼儀作法へ賛辞の声も。

 「イタダキマスとかゴチソウサマってなに?」(米国)「十字を切る食事前の祈りみたいなもの。ただし、神にじゃなくて食事前は食べる命に、食後は作ってくれた人へ感謝と懺悔(ざんげ)の言葉だ。彼らはそういう作法をとても大事にする」(フランス)
(略)
 アニメなどの動画の投稿は著作権を侵害している場合もあり問題視されていることを忘れてはならないが、「海外の反応シリーズ」タグに登録された動画は日々増え続け、なかには100万近い再生回数を誇るものもある。日本人ユーザーからは「弁当で日本のすごさを感じた」など自国の美点を再認識するコメントが書き込まれている。「日本人ほど海外の評価を気にする民族はない」といわれるが、外国人にはこの盛況ぶりもきっと“!?”に違いない。

ただし日本の食文化が広がってきたとはいえ、やはり受け入れられなかったり誤解されている部分というのも多々あるわけです。
生魚を食べる民族などと言われた時代が遠い昔のように寿司や刺身による魚の生食の広がりは今や全世界に及んでいますけれども、未だにノリなどは「カーボン紙が食えるか!」と拒否される方も多いようですよね(向こうのロール寿司は今もノリを表に出さないように巻いてる場合が多いですし)。
逆に日本人と言えば外国のものをなんでも日本風にアレンジしてしまうことが特徴でもありますけれども、これが向こうの人から見れば「俺たちの伝統ある食文化になんてことしやがる!?」と感じられる場合も多々あることでしょう。
たとえば日本の大衆イタリアンをイタリア人に食べさせてみましたという動画が流れていまして、これがなかなか面白いので紹介しておきます。

【参考】Saizeriya ranking by Italian(youtube動画)

意外なものが意外に受けていたりするのも面白いんですが、ミラノ風なんて名前がついていながら「ミラノにこんなものないぞ!」と断言されてしまうあたりは面白いですね。
しかしタラコスパ一つでここまで大騒ぎするとは意外と言いますかね…「非常に失礼ですよ」って怒られちゃってますが、日本人で言えばぐでんぐでんに茹で伸びした上にろくにしめてなくて生暖かい盛り蕎麦でも食わされてるような感覚なんですかね?
もちろんこういうものを「これが日本風のアレンジなんだ」と開き直るのもありなんでしょうが、やはりアレンジするならするでオリジナルに対する最低限の礼儀として、より良いものにアレンジしなければならないと思いますね。

イギリスを介して伝わった日本式カレーはインド人にもそれなりに好評だなんてことを言いますが、逆に海外の(自称)日本料理店ではダシも取っていないミソスープだとか、酢飯ではなく単なる白飯で握ってあるスシなんてものが平気で出てくる場合もあります。
先頃はこんな記事が出ていましたが、ビーフイーターなどと言われてきたイギリス人にもスシが広まってきているとはいえ、その実態はまだまだ一層の精進が必要という状態のようで、これは日本の外食産業にとっては意外なビジネスチャンスが転がっているかも、ですかね?

英国だってね、すし食えねえ(2009年8月13日Bloomberg)

 ニューヨークで生まれ、日本と英国で育った日本人シェフ、ジュン・タナカ氏(37)はすしをはしでつまみ、おもむろにテーブルに落としてその崩れ具合を確認した。

 英サンドイッチチェーン「プレタ・マンジェ」の握り固められたすしの落下テストを実施したタナカ氏。「見てごらん。まったく崩れもしない」と述べ、「これを口に入れなければならないのは、実際のところかなり気が重い」と評した。

 第3回「ブルームバーグ持ち帰りずし食べ比べ大会」はロンドンの高級レストラン「パール」の料理長を務めるタナカ氏が審査した。

 第1回大会で審査を務めた和食レストラン「ZUMA」のシェフ、遠藤和年氏は「恐ろしい」と心情を吐露。前回大会を担当したレストラン「Umu」の久保田一郎氏からは「このようなものをすしとして販売するのは礼儀に反する」とのコメントが飛び出した。今大会のタナカ氏は、大会始まって以来のマイナス得点を与えた。

 対象となったロンドン市内各店の持ち帰りすしに対するタナカ氏のコメントは以下の通り。得点は10点満点だ。

 ◆EAT:0点
 「サーモンの切り方が極めて不均等だ」「シャリと比べてネタが小さ過ぎる」「おいしくないだろうとは思っていたが、かなりひどい。固め過ぎていて重みがあり、極めて不快だ。いくら持ち帰りずしとはいえ、これはかなり悪い。一番悪いのはシャリだ。あまりにもぱさついていて、舌触りがひどい」

◆フェン・スシ:1点
 「少しだけだがここの方がいい。EATに比べてシャリに対するネタの割合がかなりましで、ネタの味を感じられる。しかしこれもまた、シャリを固め過ぎている。小さく握り固められていて重い。酢も足りない。かなりぼやけた味だ」

 ◆Itsu:0.5点
 「マグロの色が良くない。冷蔵庫から長い間出されていたかかなり古いのだろう。切り方は玄関の階段みたいだ。シャリも味が足りない。酢と砂糖のバランスがとれて、ちょうどいい味を出すことが大事だ。巻き物は中身のおかげで少しはましだがシャリはかなり乾いている」

 ◆K10:0.5点
 「トビコをまぶしているためその分風味があり、口当たりが良い。我慢できるレベルといえる。シャリはさほど固く握られていないので、口の中で少しは崩れる。ネタの切り方は上手とはいえない。マグロは新鮮ではない。サーモンはややましだ」

 ◆マークス・アンド・スペンサー:マイナス5点
 「これは何だろう」。タナカ氏は巻きずから赤ピーマンの一片を取り出し失笑した。「本当にケチだ。中身が何もないのは、資金繰りに困っているのだろうか」。タナカ氏はすしの中から調理済みのエビを取り出し「マヨネーズが入っている。恥ずかしいことだ。サーモンはかみちぎったような切り方だ。そして巻き物には実際には何も入っていない。このようなものは見たことがない。本当にひどい」

 ◆モシモシ:1点
 「見た目は大丈夫だ。ネタも乾いていないようだ。シャリが少ないようだが、これはよくある間違いだ。ネタの切り方にもう少し気配りがあったほうがよい。だが、ここのシャリも味がない。シャリというのは本当に難しい。あとちょっとの味付け、もうちょっと酢を加えればおいしくなる」

 ◆プレタ・マンジェ:0点
 「すべてに対して極めて悲観的な気持ちになってきたが、これを見てもらいたい。シャリの量が多く、信じられないほどコンパクトに固められている。もしかしたら落下テストで弾むかもしれない」。タナカ氏が試してみると、実際に弾んだ。「まったく崩れもしない。実際のところ、これを口に入れなければならないのはかなり気が重い。シャリは乾ききっている。マヨネーズがあれば食べられるだろうか。ケチャップもあったほうがいい。まったく何の味もしない」

 ◆ウェイトローズ:0.5点
 「シャリがあまりにも多過ぎる。落下テストをしたほうがいいだろうか。新しいすしの見せ方になるかもしれない。米粒は何粒落下するだろう。2粒落下すればポイントを加算しよう。シャリはほかの店ほど固く握られてはいないから、何とかいけそうだ」。ウェイトローズのすしとケンタッキーフライドチキン、マクドナルドから選べるとしたらどれを選ぶかと聞かれたら、「ファストフードに行くだろう。マクドナルドには15年も行っていない。昔の彼女が行きたいと言うからついて行ったのが最初で最後のマクドナルド経験だ。当然ながら彼女とはもう付き合っていない」

 ◆ワサビ:0点
 「もし落下テストをしたら、10粒くらいはご飯粒が崩れそうだ」(実際は1粒も落ちなかった)。(それからウナギを指し)「ウナギは好物だが、これはあまりにも薄く、しかも違う方向に切ってある。ネタが薄過ぎる。シャリの量は適度だが、ネタはもっと大きく切ってすしを覆うようにしなくてはならない。シャリはなんとかうまくいっているのに、今度はネタがまったくなっていない」(Richard Vines)

しかしまあ、日本人とは言っても向こう流の文化に染まってくるとこうまでブリっぽい率直さを示すようになってくるのかと、その面でも面白い記事ではありますけれども(苦笑)。
10点満点でトップが1点ですからね、ひと頃人気漫画をもじって「美味しんぼごっこ」なんてものが流行りましたけれども、実際にこういうことを迂闊に店頭でやると首絞められますよ(笑)。
ちなみに海外で外れ日本料理屋を見分けるノウハウというのが色々と言われているのですが、皆さんも自分なりのノウハウをお持ちであればご教示ください。

今日のぐり「お好み焼き月ちゃん」

お好み焼きと言えば関西風と広島風が有名ですが、それぞれに作り方が異なります。
クレープ状に焼いた小麦粉の薄皮の上に色々と具材を乗せて焼き上げるというやり方はもともと一銭洋食から発祥しているそうですが、関西でもかつてこのスタイルが存在していたものの今ではネギ焼きなど一部を除いて廃れてしまているのはご承知の通りです。
食べる側の感覚からすると関西風というのは時にテーブルの鉄板でわいわいと皆で焼くというのも楽しいものですが、それに比べると広島風の方では店の技を楽しむものという側面が強いでしょうかね。

広島市街地の片隅、住宅街の一角にあるこの店、内外装の見た目は非常に普通と言いますか、小綺麗にしているなというくらいでさほど特徴があるようにも見えません。
ちなみに広島風と言えばソースがカープ派かおたふく派かでまた色々とあるわけですが、こちらは表にはためくのぼりでも判る通りおたふく派のようですね。
周囲に駐車場と呼べるようなものはなさそうなんですが、通行量も少なそうですし短時間なら路駐オーケーという感じなんでしょうか?(とは言え、帰りに少し離れた場所で巡回中らしいパトカーも見かけましたが)

恐らく最もベーシックと思われるそば肉玉Wを注文しましたが、これが結構山盛りという感じでボリューム感があります。
さてこのそば玉肉、いわゆるモダン焼きなんですが、上に乗っている刻みネギが結構多めで目立つかなと言う感じで見た目はそう特殊な感じではありません。
そして表面の玉子の薄皮一枚の下はひたすらそば、そば、そばと焼きそばが充満している状態…このそばの下を探っていくとやがて豚肉に突き当たり、そしてその下にキャベツが隠れています。
すなわち下からキャベツ、肉、そばという構造になっているわけなんですが、ちょうどお好み焼きの上にオムそばが載っているという状態を想像いただければよいでしょうか。

この広島風お好み焼きにおける具材の積み重ね方の順番と言うのも店毎に異なっているわけですが、ここの場合順番よりもこのそばの状態が特徴なんでしょうか。
個人的に良く行く店ではある程度押さえつけた上でカリカリに焼いた低加水の細打ち麺ばかりでしたので、この店のようにほとんど(全く?)押さえつけていない状態のものはあまり食べたことがありませんでした。
このそば自体も比較的加水率高そうな麺をほとんど焼かずにぷりぷりの状態に保っていますから、まさしく焼きそばが載っているという感じではあるわけです。
正直お好み焼きとの一体感という点ではいささかどうなのかとも感じるのですが、これはこれで一皿で二つの味が楽しめるという感じなんでしょうか。

食べてみると上に乗っている多めの刻みネギがきいている感じで、これはこれでありかなと思う味です。
キャベツの刻み方などもまた店毎の特徴が出るところですが、ここの非常に細切りのキャベツはなかなか丁寧で、火の通りが均一になっているのは好印象ですね。
一口に広島風と言っても地域によっても店によっても流儀が違うわけで、それぞれの店主のこだわりを食べ比べるのも面白いところなんでしょうが、やや主流を外れたスタイルということになるのでしょうかね。
こうなるとほとんど好みの問題になってきますが、この店の場合は関西風などに慣れている人の方があるいは違和感なく入っていけるのかも知れません。

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2009年8月29日 (土)

流行のみならず情報も絶讚拡大中の新型インフルエンザ

総選挙前にもかかわらず表題の通りあちこちから情報が入ってきますが、何やら一部では再びパニックじみたことになってきている気配すらあるようです。
神奈川では他人の車を破損させた容疑者が新型に感染していると判った途端に釈放、なんていう笑い話のような話まで出ているようですが、沖縄などでは既に医療機関が破綻しかねない状況となっていて笑い話どころではないというところでしょうか。
今後総選挙が終わればますますインフルエンザにもマスコミの目が向きそうな状況にあって、これは全国的に流行が広がってくるとどうなるんだと懸念されるところですが、本格的大流行の前に慣らしをしているのだと前向きに捉えておくべきなのでしょうか。

新型インフルで救急外来急増 過剰反応に病院疲弊 /沖縄(2009年8月27日琉球新報)

 家族など身近な人に新型インフルエンザ感染者が出た場合に、事業所側が職員に対して罹患(りかん)していないという診断書の提出を求めたり、本人が感染し、完治した場合に「完治証明書」の提出を求めるなど「過剰反応」ともいえる事態が起きており、病院を訪れる人が急増している。患者の増加に伴い、救急病院を中心に医療機関はぎりぎりの対応に追われており「本来来るべきでない人に対応している余裕はない」(医療従事者)のが現状だ。また感染していない人が病院に行くことで感染の危険性が高まる側面もあり、県福祉保健部は「かかっていないという診断書自体出せないし、完治証明も必要ない。医療現場を疲弊させることはやめてほしい」と強く呼び掛けている。
 本島南部の病院では子どもが感染した親が夜間に来院し「(本人が)かかっていないという証明書」の提出を会社から求められたとして、咳(せき)などの呼吸器症状、発熱もないにもかかわらず「検査をしてほしい」と求める例があったという。同病院の看護師は「病院での待ち時間に感染する危険性の方が高い。症状のない人が病院に来るとかえって感染を拡大させる。どの病院も医師、看護師不足だ。救急のパンク状態が続けば医療の側が倒れてしまう。適切な受診を心掛けることが県民のできる最大の協力」と指摘する。
 県の宮里達也保健衛生統括監は「家族が感染し会社などに出勤するときにはマスクをして出ればいい。本人が感染した場合も熱が平熱に下がって2日たてば感染の心配はないので出勤可能だ」と説明する。
 重症例が出ていることから、軽症でも発熱するとすぐに救急に駆け込む例も少なくないという。宮里統括監は「息苦しそうにしている、水分が取れない、顔色が悪い、挙動がおかしいなどの症状があればすぐに救急にかかる必要がある。しかし発熱だけなら、インフルエンザではない可能性もあり、病院に行くことはかえって危険。水分を十分とって一晩休み、昼間にかかりつけ医を受診すること。それが本人のためにも社会のためにもなる」と適切な受診をあらためて呼び掛けた。

参考までに神戸市が新型の臨床経過についてレポートを出しているのですが、これで見ますと38度以上の発熱を来すのは最初の2日間くらいなもので、他の症状も概ね従来の季節型インフルエンザに比べて短期間で済んでいるのかなという印象があります。
こうしたデータを見ると一部で噂されている「新型は切れがいい」という話も首肯できるところなんですが、その一方でもともとこういう自然経過を辿る疾患なのだとすれば、果たして抗ウイルス薬が効いているのかどうかも判断しにくいところではありますよね。
さて、厚労省はこうした状況に対して医療機関の受け入れ拡大を求めているということなんですが、どうも沖縄での状況を見るとここでもゼロリスク症候群が蔓延していると言いますか、むしろ不要不急の受診抑制の呼びかけの方がずっと優先順位が高いのではないかという気がしてなりません。

新型インフル、夜間診療延長など要請へ 厚労省、医療機関に(2009年8月27日日経ネット)

 新型インフルエンザ対策で、厚生労働省は27日、感染した患者が急増した場合に対応するため、全国の医療機関に夜間診療時間の延長などの検討を緊急要請することを決めた。入院患者が増えた場合には、病室の定員を超過してでも患者を受け入れる体制の検討も求める。全国の人工呼吸器の台数や稼働状況などを調査して、大規模な流行に備える。

 週内にも都道府県や関係団体などに通知する方針。同省は感染率や重症化率などを盛り込んだ「流行シナリオ」も作成し、医療機関などに提供して対策に役立てる方針。感染した患者には同省のホームページで掲載している「自宅で療養する際の手引き」を周知、家族内の感染対策などを徹底して、感染拡大を防止することを求める。
(略)

いやしかし、「病室の定員を超過してでも患者を受け入れ」と言われても、これはどう解釈したものかと対応に迷う施設も多いのではないでしょうか。
一応この新型騒ぎで厚労省から定員超過に関する通達が出ていまして、新型絡みで定員超過しても災害等に準じて入院基本料の減額対象とはしないという一方で、廊下や処置室など病室以外に収容した場合には入院基本料は算定できないということになっているようです。
いずれにしても死に体の舛添大臣に同心してこんな危ない橋を渡ろうなんて医療機関も今どきそうはなかろうとは思いますが、うかつなことをやってしまって後で大幅赤字なんてことにならないようにご注意いただきたいところですね。

しかしまあ、さっそく某所ではこんな落書きが氾濫しているようですけれども(苦笑)、沖縄を見ても判るように外来患者殺到でひーひー言っている状況で、さらに定員を超えるような入院患者を引き受けたりするとどういう楽しいことになるかという想像力は働かなかったんでしょうかね。

13 名前: 名無しさん@十周年 [sage] 投稿日: 2009/08/27(木) 12:54:58 ID:HxUtyKVv0
8月27日、厚生労働大臣であった舛添要一は、自らが立てさせた会見所に医師たちを集め、
泣きながら次のように訓示した。

「諸君、担当医は、院長命に背き患者の診察を放棄した。
受け入れ態勢がないから医療は出来んと言って患者の診察を勝手に断りよった。
これが病院か。病院は受け入れ態勢がなくても受け入れをしなければならないのだ。
検査キットがない、やれタミフルがない、リレンザがないなどは診察を放棄する理由にならぬ。

(中略)

担当医には応召義務があるということを忘れちゃいかん。病院は公立である。市長が守って下さる…」

以下、訓示は一時間以上も続いたため、当直明け通常勤務後の残業の連続で、
抵抗力の落ちている医師がウイルスに罹り、
病気で抵抗力の落ちた入院患者および外来患者に伝染する事態となった。

一応フォローしておきますと、医療機関への支援に及び腰だった厚労省も先頃になってようやくこんな話を出してきたようで、一応は良い傾向であるとは評価しておきます。

新型インフル 全医療機関に整備費 厚労省方針 増床など半額補助(2009年8月26日東京新聞)

 新型インフルエンザの全国的な流行を受け、厚生労働省は二十五日、診察に必要な施設整備費の補助対象を、国内にある約六百の感染症指定医療機関から、一般の病院や診療所などすべての医療機関に拡大することを柱とする対策の強化案をまとめた。
(略)
 厚労省によると、施設費の補助対象拡大は、新型インフルエンザ対策の運用指針が六月、全医療機関で発熱患者の診療を行うよう改定されたことに沿った内容。

 医療機関から申請を受け、国が原則として必要経費の半分を負担する仕組み。補助を受けた医療機関は、重症化の恐れのある患者らを入院させるための病床を増やしたり、一般患者が院内感染しないよう間仕切りを設けるなどの改修工事を行ったりすることが義務付けられる。
(略)

しかし記事を見る限りではあくまで設備投資に関してのいつものような紐付き補助金だけで、人件費や感染防御のランニングコストの部分に関しては相変わらず 身銭を切れと言っているように聞こえるのですが、そのせいかさっそく日病協も突っ込みを入れようとしている様子ですね(しかしどうせなら大臣が替わってからにすれば 良いような気も…?)
このあたりはどの程度厚労省の笛に踊らされるかは各医療機関が主体的に判断し対応すればよいということなんでしょうが、今の医療機関に何であれ金のかかるこ とをボランティアでやれと言われて、おいそれとやれるほどの体力(もちろん気力も、ですが)が残っているかどうかですよね。

さて、このところ幾つか興味深いニュースが続いているのですが、まずは抗ウイルス薬関連の話題から始めてみましょう。
WHOなどではすでに健康で元気のいい軽症患者は抗ウイルス薬もなしで基本放置、その代わり重症化しそうな人は要慎重対応といった感じで患者対応を思い切って二極化してきている感があります。
患者数が激増すればリソース不足になってくるのは当然ですから戦力の集中は当然なのですが、そうなりますとハイリスク症例をきちんと見分ける目と言うものも現場の臨床家には要求されてくるでしょうね。
その中で妊婦はハイリスクであるということは確定した感がありますが、これとも関連して産科学会がこういうことを言ってきているのにも注目しておかなければなりません。

新型インフル、妊婦感染なら「ただちにタミフル投与」(2009年8月27日CBニュース)

 日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は8月25日、妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合、ただちにタミフルによる治療を開始することなどを勧める改訂版「妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A」をホームページ上で公表した。

 Q&Aは、5月に同学会が作成し、一般向けと医療関係者向けに分けてホームページに掲載。6月と8月上旬に内容の一部を改訂した。

 今回の改訂で第4版となる医療関係者向けのQ&Aでは、妊婦がインフルエンザ様症状(38度以上の発熱と急性呼吸器症状)を訴えた場合の対応について、世界保健機関(WHO)が「感染が疑われる場合には医師は確認検査結果を待たずに、ただちにタミフルを投与すべきとしている」と指摘。その上で、「発症後48時間以内のタミフル服用開始は重症化防止に最も有効」と妊婦に伝えるよう指示している。
 また、妊婦に感染が確認された場合は、ただちにタミフルによる治療を開始し、妊婦が患者と濃厚接触した場合は、予防的投与をすることを求めた。

 今回の改訂では、新たに「分娩前後に発症した場合の対応」にも言及。新生児も感染している可能性があるため、厳重に経過観察し、感染が疑われる場合には検査を行い、できるだけ早期に治療を開始するとしている。

 また感染した母親による授乳については、母乳を介した感染の可能性は現在のところ知られておらず、「母乳は安全と考えられる」とする一方で、直接授乳をするための条件として、▽タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用▽熱が下がって平熱▽咳や鼻水がほとんどない-が必要とした。
 この3条件を満たしていない場合には、「母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与える」としている。

今の時代特に妊産婦関連はうかつなことをすると大変なことになりかねないという時代ですから、こうして学会が公にこうしなさいとガイドラインを打ち出してくるのは非常に良いことだと思うのですが、問題は肝心のタミフルの添付文書にある文言との整合性ですよね。

1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。]

2. 授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]

妊婦に関しては命がかかっているものですからともかくとして、体調が悪いときには母乳を一時やめなさいくらいは指導しても社会的に許されるのではとも思うのですが、逆にこうまでして母乳を片時も休まず続けなければならないという根拠は何かしらあるのでしょうか。
何よりもし妊産婦がタミフルを使用し、その後子供さんに何らかの問題があった場合に、タミフルのせいなのかどうかすらも誰にも判らないわけなので、これは後になって地雷だったということになるかもと危惧が拭えないところですね。
好意的に解釈するならば、学会が一番ヤバそうなやり方を公認しておいてくれるというのであれば、大多数の先生方はその範囲内にとどまっているだろうという予想は立つわけですから、これはセーフティーネットとして敢えてこういうものを出してきたという解釈も出来るということなんでしょうか(産科学会の内情は知りませんけれども)。

続いて、先日も少しばかり取り上げました厚労省結核感染症課の福島靖正課長による「肺炎球菌ワクチンについては、国内で承認されているものは非常に副作用が強い」なる発言と関連して、さっそくクレームがついたという記事をご紹介しておきましょう。
と言いますか、実際にそういう危険なワクチンと言うのであれば、高齢者への使用を認めてきた厚労省の責任が問われかねないところなのですが、そうした認識はなかったということなんでしょうか?

厚労省課長発言を山形保険医協会が質す(2009年8月27日ロハス・メディカル)

 20日のインフルエンザワクチンに関する意見交換会で厚生労働省の福島靖正・結核感染症課長が「肺炎球菌ワクチンの副作用が非常に強い」と発言したと一部メディアで報じられたことに対して、山形県保険医協会が26日付で舛添要一厚生労働大臣宛に「発言の真意を質す」との要望書を送付した。(川口恭)

 この発言に関しては26日の大臣との意見交換会でも岩田健太郎・神戸大教授が「明白な誤り」と述べている。

 要望書で山形県保険医協会は
1、発言の根拠となった症例と人数、年度を示す
2、発言が報道と異なるのであればニュースの発信元に訂正を求め、民主党と国民に説明する
の2点を求めている。

福島氏の経歴を参照してみますと、熊本大学医学部を卒業後も臨床のキャリアというものはないようで、一貫して公衆衛生、医療行政といったものに携わってきた「プロ医系技官」とも呼ぶべき御方のようです。
こうした経歴をお持ちの方ですから一体何を根拠にこういう発言をしたのかと考えるよりは、一体何を目的にと考えた方がより状況を理解しやすいと思われますが、当然ながらそこには一体誰の意図を代弁してという疑問もセットでついてくるわけですよね。
この件に関しては更なる続報を待ちたいところですが、まさか「うっかり勘違いしていました」とも言わないでしょうからどういう答弁が出てくるのか、あるいはこの時期敢えて大臣宛にと言うことで最初から答えを期待しないパフォーマンスなのかという深読みも含めて、色々と楽しみではある話です。

さて再び話はかわって、先日にも取り上げましたようにこの27日に「誰にワクチンを打つのか」ということが厚労省主催の有識者による検討会で議論されまして、結局こういう結論になってきたようです。

持病ある人、妊婦ら最優先=輸入品は安全確認-新型インフルワクチンで医学会代表ら(2009年8月27日時事ドットコム)

 新型インフルエンザのワクチンをめぐり、厚生労働省は27日、日本透析医学会、日本産科婦人科学会など14医学会の代表者らによる意見交換会を開いた。参加者は、重症化するリスクが高い持病のある人と妊婦、医師、看護師を最優先にワクチンを接種するとの意見で大筋で一致。ほかに接種が必要な層として、乳幼児、高齢者、小中高生などが挙げられた
 厚労省はこれらの意見を踏まえ、来月中に接種の優先順位を決める見通し。
 こうした層は計約5300万人とされ、同省は全員を接種対象とするとの方針を表明。国内メーカーのワクチン生産量は年内で最大1700万人分のため、不足分は輸入を検討している。
 ただし、海外メーカーのワクチンは効き目を強めるため、国内では未承認の添加物を加えているものが多いことから、会合では「安全確認のための試験が必要」との声が相次いだ。また、政府専門家諮問委員会の尾身茂自治医大教授は、最優先とされる妊婦らに国産ワクチンを使うことを提言した。
 持病のない高齢者や小中高生がワクチンを接種する場合、輸入品となる可能性があり、尾身教授は「厳しい議論になる」と話した。

このあたり、ワクチンの有効性や安全性、そして輸入ワクチンの治験をどうするのかといった話が渦巻いているのですが、本日はさっぱりと割愛させていただきます。

さて、結局のところ確実に入手可能なワクチンとして国内生産分の千数百万人分を誰に使うのかという話しなんですが、基礎疾患のある人や妊婦、医療関係者を最優先にというある意味で常識的な線でまとめてきたようです。
問題はそれ以外に誰をというところなんですが、前回書きましたように重症化するとヤバい人々でありながらあるいはひょっとするとアメリカにならって切り捨てなのか?とも懸念された高齢者層に対しても、一応候補者としてリストアップはしてあるようですね。
しかし常識的に考えて全世界的な流行が起こっている現状で、日本に対して数千万人分のワクチンを緊急に輸出できるような海外のストックがあるようにも思えませんから、結局は「ワクチンが余ってくるようなら考えましょう(でもたぶん余らないけれど)」という何とも玉虫色の結論になったのかなという印象が拭えないところです。

ワクチンに関連してはもう一つ、輸入ワクチンの安全性保証とも関連する文脈において、舛添大臣がこんな発言をしていることにも注目しなければなりません。

ワクチン副作用なら「国が補償」 新型インフルで厚労相(2009年8月26日朝日新聞)

 新型の豚インフルエンザのワクチン接種で副作用による被害が生じた場合について、舛添厚生労働相は26日、国による補償制度を検討していることを明らかにした。多くの人に接種してもらえるよう促すための取り組みだ。

 厚労省は5300万人の接種を見込んでいる。ワクチン接種を巡る専門家との意見交換会で舛添氏は、「目の前の危機に対応する必要がある。特別立法も念頭に置いて作業したい」と述べた。

 ワクチンには公費負担で受けられる「定期接種」や「臨時接種」と、全額自己負担の「任意接種」がある。厚労省は、新型インフルワクチンは任意接種とする意向。任意接種で副作用が起きた場合は医薬品医療機器総合機構を通じて給付金が支払われるが、国が補償する接種の場合、死亡一時金などの金額が数倍になる場合がある。季節性インフルエンザのワクチンでは、副作用の頻度は、100万人に2人程度という報告がある。
(略)
 出席した日本産科婦人科学会の水上尚典・北大教授も、妊婦を優先対象とすべきだとしたうえで「補償制度を構築してほしい」と話した。

さすがに口は達者ながら、就任以来今ひとつ業績の実をあげるという点で影の薄かった舛添大臣としては、これはもし実現すればそれなりに評価に値する話だと思いますね。
問題は8月30日以降の新政権で前大臣のこの発言が顧みられる可能性がほとんどなかろうということなんですが、一応は官僚側の方でもこういうフォローアップするかのような発言が出ているようですから、選挙前のリップサービスに終わることなく政策の継続性ということを期待したいところです。
しかしこの村重政策官の話、よくよく読んでみますと「あれれ…?」な話でもあるようで(苦笑)、面白いのでかなりテーマから脱線気味かつ少しばかり長いのですが引用させていただきます。

新型インフル エビデンスないからこそオープンに議論を(2009年8月27日ロハス・メディカル)

新型インフル エビデンスないからこそオープンに議論を

村重直子・厚生労働省大臣政策室政策官インタビュー
(聞き手・川口恭)

――新型インフルエンザワクチンに関して、26日に舛添要一厚生労働大臣が予防接種法と感染症法の改正を口にしました

 日本の制度が不備なまま放置されていたのが、今回のワクチン輸入交渉の過程で明らかになってきました。そこを通常の手続きを踏んで直しては間に合わないところを大臣が決断してくださったと思います。このような政治決断は、官僚にはできません。

――不備と言いますと。

 最も大きなものは、ワクチンを製造するメーカーにとって日本で販売するのは、他の国で販売するのに比べてリスクが大きすぎるということです。そこが今回の輸入に関しても最大の課題でした。副作用が起きた際、故意でなければメーカーの責任は問う必要がなく、公的に補償するという国が多い中で、日本の場合はメーカーが裁判で訴えられて青天井の賠償を請求される可能性があります。

――メーカーの責任を問わない方が世界的には普通なんですか。

 専門的には無過失補償と言うのですが、誰に責任があるのかを問題にするのではなく、被害が出たら公的に救済される仕組みがあって、その救済を受けたらそれ以上の賠償を請求する権利は失われるのとセットになっているのが欧米では多いようです。その背景には、ワクチンが個人的な利害だけではなく、社会全体の利益のために接種するものという認識が一般に浸透しているので、被害が出たとしても、関係者に不当に責任を負わせることはできないし、それは社会全体のために犠牲になった人は社会全体で支えるのが当然という考え方があります。

 たとえば米国の場合、88年からそういう運用になっています。ワクチンの無過失補償には2種類あって、片方は普段の医療における被害を救済するものです。補償金の原資はワクチン1本あたり75セント上乗せされています。補償金を受け取ると裁判はできません。もう片方は、「公衆衛生上の危機」という定義なんですが、バイオテロなんかを想定したものです。炭そ菌とか新型インフルエンザとかが対象になっています。それに関しては、裁判に訴える道は最初からなくて、無過失補償一本です。まだ財源はないんですが、補償はするので1年以内に申請しなさいということは決まっています。実際に事が起きた後で、国会で議論するのだと思います。今回の新型インフルエンザであるH1N1に関しては、6月15日に後者の指定に追加されています。

 フランスの場合はワクチンにとどまらず、02年に医療全体への無過失補償が導入されています。それ以前はワクチンと輸血によるエイズだけは国が補償する仕組みでしたが、普通は、補償を受けるには患者側が訴訟をするしかなくて、訴訟では公立病院とプライベートの病院で額が違うとか南北格差があるとかだったようです。患者団体が補償を受ける権利をちゃんとしろと働きかけて制度ができたそうです。医療事故の場合は受け付ける身体障害の程度に下限があるようですが、ワクチンや公衆衛生上の危機に関することはわずかな障害でも補償されます。補償金を受け取る際には裁判をしないという契約書にサインする必要があります。

――日本の場合はどうなっているんですか。

 日本ではワクチンの副作用に対する救済策は、予防接種法の法定接種に対するものと任意接種に対するものと2通りに分かれ、法定接種の中でも努力義務の課されている1類と課されていない2類という2つの分類があります。金額はそれぞれですが、共通しているのは救済を受けた後に訴訟もできるということです。特に任意接種に対する救済は一般の医薬品副作用の救済と同じようにPMDA(独立行政法人・医薬品医療機器総合機構)が担っていますが、その給付の原資はメーカーの拠出金なので、メーカーからすると二重に負担を強いられることになり、他の国と比べて突出してリスクが高いことになってしまいます。

 この構造が、ドラッグラグ、ワクチンラグの原因の一つになっていることは紛れもない事実です。また、医療を国の成長産業として育てようという場合にも、間違いなくネックになっています。

――なぜ、他国と異なる状況が放置されてきたのですか。

 役人は、歴史上、薬害で国が訴えられたら必ず負けると思っているので、副作用と救済の問題は恐ろしくて議論すらできなかったということだと思います。19日の記者会見で、大臣がワクチンだってゼロリスクではないと言ってくださって、ようやくオープンに議論しましょうという土俵に乗ったところです。

――ワクチンにだってリスクはあるんだという認識が共有されれば、他国と同じような制度をつくれますか。

 そんなに簡単な話ではないと思います。ワクチン被害救済について議論するにはワクチンの副作用リスクと、病気で死ぬリスクとを天秤にかけて、その上で被害に遭ったらいくら払うかというのもオープンに国民が議論を尽くして決める必要があります。しかし今回に関しては、副作用リスクも、病気で死ぬリスクも未知です。参考にできるものとして、過去の季節性インフルではどうだったかとか、過去の新型ワクチンの副作用はどうだったかというデータを眺めながら手探りで進んでいくしかないのです。

 しかし、このように未知のものに対して判断を下すということを日本人は忌避してきたと思います。科学的根拠なんかないんですから、理念に立ち返って、最終的にはどれかひとつに決め打ちするしかありません。過去には米国でも、インフルエンザに対する新型ワクチンによる薬害が発生して、CDCの長官が更迭される出来事までありました。しかし、その経験を踏まえて先ほど説明したような無過失補償制度が成立しているわけです。未知のものに触れた際に、国民が喧々諤々の議論を重ねて、失敗からも学びながら少しずつ進歩してきたのだと思います。

――官僚らしからぬ発言のような気もしますが、その認識は省内に共有されていますか。

 とんでもない。ワクチンの被害救済に関しても私の調べた範囲のことは担当課に教えてあげたのに、とても嫌がって、技官はそれ以上は調べようとしませんでした。後で法令事務官に話したときは、関心を持っていただけたようですが。

――担当課に教えた。どういう立場なんですか?

 私の今の担当職は昨年3月にできたものです。大臣に直属して、ラインの仕事からは離れ、少し長い視点から厚生労働行政に必要なことを調べ、省内外から幅広く情報を集めて、必要なことがあれば担当課と相談するというものです。ラインの官僚が忙しすぎるのは事実なので、こういう立場の人間も必要だと思います。

――この問題に関心を持ったのは、いつからで、なぜですか。

 ワクチンメーカーとの交渉がどうなっているかは全然知りませんでした。7月ごろから、大勢にワクチン打つならば絶対に副作用が出るだろう、下手をすると薬害になるかもしれないということを考え、でも世界中どこの国でも同じ状況のはずだから、他の国ではどうしているんだろうかと疑問に思ったのです。

 8月も、この問題をずっと調べていた感じでしょうか。ただ先ほども言いましたように、調べたものを元に、担当課の医系技官や薬系技官にきちんと調べた方がよいとアドバイスしても、やっつけ仕事しかしてこないんです。ちょっと訳して、大臣に「日本とは状況が違う」とちょっとだけレクチャーしてお終いでした。サイトのURLまで教えたのに、見向きもされませんでした。部外からアドバイスされること、外国の事情を調べなさいと言われるのを、ものすごく嫌がります。おそらく忙しいのと英語が読めないのと重要性がわからないのと、理由は色々だと思います。技官の存在意義って何なんだろうと悲しくなります。

――そう言う村重先生も医系技官ですよね。

私は日米での臨床を経てから入省したので、ちょっと毛色が変わっていると思います。多くの医系技官が、大卒後すぐ、または見学程度の研修後に厚生労働省に就職し終身雇用を前提に2年毎に部署をローテーションするという人事制度なので、どの分野に関しても素人で、そのうえ法律のことも分からない、憲法感覚すらないから平気で人権侵害の政策を立案する、そういう状態になってしまっています。誰でもこのような人事制度に組み込まれたらそうなってしまうので、彼らもかわいそうなのです。

――ケチョンケチョンですね。

 こんな集団が、国の公衆衛生をリードしている、リードしているとも言えない状態ですが、これでは国民が非常に不幸だと思います。

 新型インフルエンザ対策にしても、何のためにやっているのか誰も分かってないんです。健康局長が省内の対策会議で「この対策で感染ピークを抑制することに何の意味があるのか」と尋ねた時に、その場に居合わせた20人ぐらいが誰も答えられませんでした。

 各国のインフルエンザ行動計画を眺めてみると、結構いい加減なものもあるのですけれど、米国だけはこれでもかというぐらいたくさんあります。その中の集大成的なCDCのものを見ると、対策の目的は、①医療機関を守る。予測されるピーク時には、医療ニーズが、医療機関の物的・人的資源を大きく上回ると明記されていますが、それでも、患者が押し寄せて重症患者に対応できないケースを少しでも減らすために少しでも患者ピークを抑制する。そのために学校閉鎖とか渡航自粛もするんだと書いてあります。次に②ワクチンが出てくるまでの時間を稼ぐ。ダイレクトに死亡リスクを下げられる可能性がある、最も有効なものはワクチンなので、それができるまで時間稼ぎとして対策をする、と書いてあります。もう一つ③死亡者数、感染者数を抑制するというのも書いてありますが、ただ3番目に関してはエビデンスがない話なので、彼らも掲げないわけにいかないという立場にあるのだろうと思います。

 いずれにしても、国民の命を守るという目的が明確だから多少の経済損失があったとしても、行政が介入するということに対して国民の合意が得られるんだと思います。翻って日本の厚生労働省は一体何をしているのでしょうか。結果が使い物にならない調査の命令や朝令暮改の通知を乱発して医療機関を疲弊させて、患者さんを受け入れる能力を落としているのですから、本末転倒としか言いようがありません。要は、何のために経済損失を出してまで対策をやっているのかという所が全く整理されていない。この国の公衆衛生を担っているはずの医系技官は勉強不足で、この期に及んで未だに何のために対策をしているのか分かっていない。国民として心底恐ろしいと思います。

――先生は何を目的に対策すべきと思いますか。

 国民の判断を仰ぐということです。今回は、判断の根拠となるエビデンスがほとんどありません。ですから、最後は理念優先とか、専門家による政治的判断にならざるを得ないのです。途中の議論経過やデータを説明せずに結論だけ示して、これに従えと言っても国民は絶対に納得しないと思います。何が分かっていて何が分からないのか、季節性インフルエンザや過去の事例におけるエビデンスを示し、どういう可能性があるのか、議論を全部つまびらかにするしかないと思います。分からないことは分からないし、今後も状況次第で変わりうるということまで含めて全部公開して、そのうえで議論して決めるしかないと思います。

――国民にそれだけの素地がありますか。

 あると思います。不確実であっても判断の材料となるエビデンスを医系技官があまり公開せず、報道もされていないのが問題です。もっと数字や事実を挙げながら、幅広く議論する必要があります。それに、「お上頼み」の発想から抜けない限り、道も開けません。

 これは医師を始めとする医療者に対しても言えることです。国に何とかしてくれというばかりで、それを疑問に思わない人もいます。薬剤師も看護師も同じです。そもそも日本での西洋医療が、明治政府が漢方医を排斥し蘭法医だけを医師として認めたところから始まっているので、お上に与えられた資格という意識が抜けないのかもしれません。もっと自律する必要があると思います。

 話が脱線気味ですが、この機会に言っておくと、お上に与えられた制度から自律しようという動きがあまりなかったから、医系技官が診療報酬を抑制して補助金を増やすという構造になってしまったんです。補助金なんて、そのうちいくらが患者のために使われたのかデータは一切出てきてません。執行率が低いものも多く、現場の医師たちは「補助金なんて使えない」ことをよく知っています。利権ができて医系技官が天下りするだけです。同じ金額を診療報酬に入れれば100%患者のもとへ届くのに、このデータを明らかにしたら国民はどう思うでしょう。

――その問題は、ロハス・メディカル誌でも最近取り扱いましたが、話が深いところまで来ましたね。

 新型インフルエンザに襲われたことは災難ですが、いずれ日本人が直面しなければならなかった問題と向き合う時が来たのだと覚悟を決めるしかないと思います。

 この覚悟が、すべての問題につながっています。たとえば、ドラッグラグを解消するには世界同時治験に参加することが必要です。でも、そうすると世界のどこにもデータがない段階から治験に参加することになるので、日本人は今までより大きなリスクを引き受けなければならなくなります。一時が万事そういう話で、覚悟はありますか、万が一に備えた受け皿を作っていますかという話をしなければならないのです。たとえ被害を受ける人の数が少なくても、それを見捨てるのではなく国民全体で支えるんだという意識が共有されない限り、いつまで経っても世界から遅れたままになります。

いやあ、以前からあちこちで言われてきたような話も散見されて、なかなか面白い指摘がてんこ盛りじゃないかと思うところですが、いいんですかね(苦笑)。
村重氏の場合どうも以前から色々と憤慨されることも多かったようで、折からのインフルエンザ問題もあって疲れてらっしゃるんでしょうかね。
まあどこの組織であっても内と外との間にはそれなりに線引きが存在するものですから、こういう異色の経歴をお持ちだということはそれだけでやりにくいところも多々あろうかと想像は出来るところですけれどもね。

厚労省の医系技官と言えば臨床経験もない医系とは名ばかりのプロ医系技官も多いわけですが、これは臨床経験豊富な医療現場の人材を拒否している厚労省のシステムにも大いに問題があるとは以前から指摘されているところです。
考えてみれば医療という高度の専門性を要求される分野において、現場の専門家の声が医療政策を決める側に届かないまま素人が話を進める状況になっているわけですから、これは国民にとって大いなる不利益ともなりかねない事態だという危機感をもっと早くに誰かが指摘していてもいいはずですよね。
政権の行方がどうなるのかは判りませんが、民主党は以前から医療重視、官僚制度改革なんてことを言っていますし、自民党ならまたぞろ舛添さんの留任でしょうからさすがに経験値は高まっているはずで、どちらに転んでも今よりはマシになるんじゃないかと期待はされるところです。
このあたりのシステムは是非とも早急に改善を図っていただきたいところだと思いますが、改革が成功するにしろ失敗するにしろせっかくですから過程も全てオープンにして議論をしていただきたいと思いますね。

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2009年8月28日 (金)

周産期医療の現状は医療崩壊の縮図か?

少し前でしたが、こんな記事が出ていましたのを御存知でしょうか。

妊婦転送死亡:発生3年 「世の中、動いたと実感」遺族、産科医療改善望む /奈良(2009年8月11日毎日新聞)

 大淀町立大淀病院で06年、五條市の高崎実香さん(当時32歳)が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に受け入れを断られた末に死亡してから、16日で3年になる。この問題をきっかけに、産科医療の充実を求める声が高まり、衆院選でも各党がマニフェストなどで掲げている。夫晋輔さん(27)は「世の中が動いたと実感する。問題を風化させず、産科医療が少しずつ良くなってほしい」と話している。

 実香さんは06年8月8日未明、脳内出血のため意識不明となり、転送先の病院で帝王切開で長男奏太ちゃん(3)を出産し、8日後に亡くなった。遺族は「真実を知りたい」と、07年5月に主治医と大淀町を相手に損害賠償を求めて提訴し、大阪地裁で係争中だ。

 奏太ちゃんは会話ができるようになり、今春から保育園に通い始めた。晋輔さんは奏太ちゃんに、実香さんの死亡について少しずつ伝えている。いずれは「産科医療が良くなったと伝えたい」と話す。

 義父憲治さん(55)は、奏太ちゃんとお風呂に入る時に「私の子どもたちへ」(笠木透作詞・作曲)を一緒に歌っている。豊かな自然を子供たちに残せるかどうかを問う歌だが、憲治さんは「この子たちの世代に何か良い物を残したい」という思いも込める。晋輔さんとともに、大学の講義や市民向けのシンポジウムで体験を語り、医療の改善を訴え続ける。【高瀬浩平】

高崎さんも一連の奈良・大淀病院事件では一躍マスコミ界の寵児ともなった感があり、今やマスコミヲチャーにも医療ヲチャーにもすっかり有名になってしまったようですが、果たして現状は「産科医療が良くなった」と言えるものなのかどうか。
先頃の奈良産科医時間外手当訴訟では県知事自ら華々しいコメントをされて話題となりましたが、少し前の「勤務医 開業つれづれ日記」さんのところの記事なども読ませていただきますと、何やら先の大戦も最末期の状況を思い起こさせるような素晴ら…もとい、なかなか壮絶な状況だなとしか言い難い様子なんですけれども…

【参考】■「奈良戦線 余裕あり 産科医74人を酷使せよ」: 大幅追記あり(勤務医 開業つれづれ日記)

いずれにしてもこうした周辺状況も総合的に判断して現場はより社会環境に適合したシステムを構築していかなければならないわけですが、ことによるとそうした「カイゼン」が新たな火種になってくる場合もあり得るわけですよね。
先日もご紹介しました通り、福島医大で起きた帝王切開既往のある妊婦の子宮破裂に関連した、いわゆる「福島医大VBAC事件」に絡んで福島医大側では出産事故防止のため「今後は帝王切開の既往のある患者の自然分娩を取りやめる」という非常に根本的な改善策を実行に移してきたそうですが、これに関してこんな記事が出てきています。

県立医大病院:帝王切開経験者の自然分娩受け入れ中止 安全マニュアル作らず /福島

 ◇医療ミス訴訟、和解条件抵触も

 県立医大付属病院(福島市)で4月から、帝王切開経験者の自然分娩(ぶんべん)の受け付けをやめていたことが25日分かった。通常より子宮破裂などの危険が高い一方、産科医と婦人科医が計2人しかおらず、当直時の緊急の帝王切開ができないのが理由という。

 この分娩では95年、同市の幕田美江さん(42)が同病院で子宮破裂を起こし、帝王切開で出産した次女は脳性まひを負い00年に死亡した。幕田さん夫婦は、同病院のミスとして損害賠償を求めて提訴。今年2月に仙台高裁で和解した。

 条件にはインフォームドコンセントや、子宮破裂に速やかに対応できる体制を整えることなど再発防止マニュアルの作成が含まれた。結局作られず、同病院は「必要な医師の確保は当分先で、今は作る必要がないと判断した」と話した。

 夫の智広さん(43)は「和解したのは、今後は安全性が得られると信じたから。対策の検討もなくやめるのは改善とは言わない」と話している。今後、同病院の決定が和解条件に抵触しないか確認するという。【神保圭作】

まあ同医大側にも色々と言い分はあることでしょうが画竜点睛を欠いたと言いますか、「必要な医師の確保は当分先で、今は作る必要がないと判断した」云々はリスクマネージメントの観点からすると明らかに未熟な対応と非難されてしかるべきだと思いますね。
しかしここで「今後は安全性が得られると信じた」という言葉が出てきていますが、現実問題として100%の安全性などとても確保出来ない(そして恐らく、今後も未来永劫確保できるとも思えませんが)以上は、危険なことはやらないというのは至極真っ当かつ最も基本的な対応だと思いますけれどもね。
たとえばこれが他の業界だったらどうだったかと思えば、「安全も保証されていないのに業務再開!信じられない!人の命をモルモットにするな!」とワイドショーあたりにまた新たなネタを提供していただろうことは想像に難くないわけですからね。

もちろん一方で医療と言うものには安全性以上に大切な何かがあるのだという考え方も当然にあって良いことだと思いますが、福島医大側としても司法の場でこうした結論が出ている以上は求められている結果を出さないとそれこそ「和解条件に抵触」してしまうわけですから、彼ら自身が何をどう考えようが社会に求められている以上はやむを得ないところだと思います。
リスクを避けろと言うことは簡単ですが、その結果何が起こるのかということに関しても想像を及ばさなければならないだろうという点で、今回の事例は非常に教訓的な話題を提供してくれた何かしら象徴的なものだったように思われますが如何でしょうか。

さて、現状では患者側にも過剰なリスク回避の要求があり、一方で医療機関側にも過剰なリスク回避の姿勢が見られと、言わば相乗効果によって医療現場が日々100%の安全という幻想を(少なくとも表向きは)目指して疾走している部分は否めないように思いますね。
特に産科医療の場というものは、言葉は悪いですが今や院内のトラブルメーカー(失礼)と化しているといっても過言ではないくらいに様々なリスク要因渦巻く修羅場となっているようですが、クオリティを追求し過ぎればアクセスが低下するのが当然であって、100%を求めるならば100%が担保できない場合は受け入れられないということも同時に飲んでいただかなければならないわけです。

各医療機関が責任のもてる範囲でミスを起こさない診療に集中した結果、少なくとも受け入れた患者さん達に関しては今まで以上に慎重かつ丁寧な診療が行われかつてない安全性が担保されるようになったわけで、その意味ではまさに国民の求める通りの医療が実現しつつあるわけです。
しかし一方でただでさえ少ない医療資源が偏在する形となり総体としての受け入れ能力が低下するのはやむを得ないところですが、そうなりますと今度は「もっと受け入れを増やしてもらわなくては困る」という声が殺到することになり、もしや医療関係者も患者側もお互いストレスがたまる状況なのではないでしょうかね(苦笑)。
ちょうど産科救急と言うことに関連して、先頃国がこうしたことを言ってきていると報道されていましたが、これなどは国なりに質と量のバランスということに配慮してきているとも取れなくもない話ではありますよね。

総合周産期センター:「母体救命」要件に 整備指針改正(2009年8月14日毎日新聞)

 東京都内で08年に起きた妊婦死亡問題を受け、厚生労働省は周産期母子医療センターの整備指針の改正案をまとめた。96年の策定以来初の全面改正で、高度医療を担う総合センターの指定要件に、脳出血など産科以外の母体の救急疾患に対応する機能を追加する。一方、総合センターに準じる地域センターは要件を緩和し、参加医療機関数の増加を図る。受け入れ実績などの公表を求める規定も盛り込んでおり、14日に都道府県に案を示し、9月にも運用を開始する方針。【清水健二】

 周産期母子医療センターは全国に300施設以上あり、リスクの高い分娩(ぶんべん)などを受け持っている。しかし脳疾患や心疾患など産科以外の急病になった母体の救命に十分対応できないと指摘され、厚労省が専門家の意見などを基に、整備指針の見直しを検討していた。

 改正案では総合センターの役割に、危険の大きい妊娠に対する医療や高度な新生児医療と並んで「産科合併症以外の母体救急疾患への対応」を追加。救命救急センターの併設か、脳神経外科や心臓血管外科などを持つ医療機関との連携を義務付ける。確保に努める職員として、麻酔科医や臨床心理士、長期入院児の在宅療養などへの移行を円滑に進める「支援コーディネーター」を新たに挙げた。

 一方、地域センターは、なるべく多くの医療機関の参加を促すために指定要件を緩和する。産科を備えていなくても、NICU(新生児集中治療室)を持つ小児科病院なら指定可能とし、ベッド数に応じて下限が決まっていた看護師数も「必要な適当数」と改めた。

 3月に厚労省の有識者懇談会がまとめた報告書では、総合、地域の2分類を3~4分類にすることも提案されたが、指定要件を改めることで見送った。有識者懇が提案した「NICUの1.5倍増」は、そのまま整備目標に掲げられた。

 また、各都道府県に対し、10年度までに必要な周産期センター数や診療機能、医療従事者数などを明記した整備計画の策定を要求。各センターの対応可能な母体・胎児の条件や、受け入れ実績、死亡率などを住民に公表するよう求めた。

 【ことば】周産期母子医療センター

 周産期医療の高度化と集約化を目的に旧厚生省が96年から整備を始め、現在、都道府県に指定された総合センターが75施設、地域センターが約240施設ある。昨年10月、東京都内で脳出血を起こした妊婦の搬送先探しが難航し、出産後に死亡。病院側に脳出血の情報が十分に伝わっていなかったことや、NICUや医師の不足が原因とされる。今年3月には、都内の総合センターが労働基準法を守った当直体制が保てないなどとして指定返上を申し出た。産科医不足などを背景にした体制のほころびが問題化している。
(略)

周産期母子医療センターの指針改正案で事務連絡(2009年8月17日CBニュース)

 厚生労働省はこのほど、周産期医療体制整備指針の改正案について、都道府県に事務連絡を行った。総合周産期母子医療センターには、産科合併症以外の合併症をもつ妊婦への救急対応を求める一方、地域周産期母子医療センターでは認定要件から産科標榜を外すなど、一部要件が緩和される。

 周産期医療の在り方については、今年3月、厚生労働省の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」が、周産期母子医療センターの指定基準の見直しや、救急患者搬送体制の整備などを盛り込んだ最終報告書をまとめている。今回の指針改正案は、この報告書の内容をおおむね踏襲したもの。整備指針は「医療提供体制の確保に関する基本方針」の改正と併せて9月以降に発出する予定だが、都道府県などから問い合わせが多かったため、今回は暫定的に事務連絡を行ったという。

 改正案では、全国に75か所あり、リスクの高い妊娠に対する医療や高度な新生児医療などを担う「総合周産期母子医療センター」について、脳血管障害や心疾患、敗血症など、産科合併症以外の合併症をもつ妊婦の救急医療に対応できる体制づくりを求めている。また、麻酔科医や臨床心理士、長期入院児童の状態に応じた望ましい療育・療養環境への移行を図る「NICU入院児支援コーディネーター」の確保に努めることなども新たに追加された。

 また、全国に約230か所あり、比較的高度な周産期医療を担う「地域周産期母子医療センター」については、産科を備えていなくても、NICU(新生児集中治療管理室)があって都道府県が適当と判断した場合には、センターとして認定できるよう要件が緩和される。これまでは規定されていたNICUや GCU(回復期治療室)の看護師数についても、各センターが設定した必要な数が配置できればよいとされた。

 このほか、都道府県に対しては、医療機関や救急隊員からの要請を受け、妊婦や新生児の受け入れ医療機関などを調整する「搬送コーディネーター」を配置することが望ましいとされた。

要するに高度医療機関には何があっても対応できるような体制を構築するよう求める一方、下位の医療機関には要件を緩和して間口を広げていこうという話で、産科に限らず低次から高次までピラミッド状の体制構築を目指してきた日本の救急医療においてはごく真っ当な見解ではありますよね。
問題は一昔前ならば「それじゃ、うちは頑張って要件満たそうか」という施設が引く手あまただったろうとは思いますが、現状では「ああ、そうですか、それじゃうちは無理ですから指定返上しますね」と撤退してしまう施設が増えているだろうと想像されるところです。
例えば某所のカキコでもこんなものがありましたが、今や病院上層部が幾ら尻を叩こうが現場は単に負担が増すだけで何らの見返りもないことが明らかになってしまっているだけに、当のスタッフがついてくるものではないわけですよね。

113 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/08/15(土) 08:38:42 ID:2KCXEmPj0
総合周産期母子医療センター指定の大学病院産科婦人科勤務医師だけど
最近は手術室の運営正常化方針のため、定時手術が一件でも延長していると
17時になるやいなや、当直医のPHSに「現在手術対応中のため、緊急手術は
お受けできません。」という連絡が入る。ほぼ毎日。普通に考えて指定返上
だろうに。そもそもダルブセットアップ(30分以内のC/S)も不可だから、VBAC
なんて禁忌だろw

さて、どうなるんでしょうねこの通知は。
当然要件を満たさなければ既存の総合周産期医療センターも指定返上しなければならないと思われるところですが、果たして今後全国各地から指定返上のニュースが飛び込んでくるのか、あるいは施設要件に適応させようと無理をした挙げ句施設そのものが崩壊したなんてニュースが飛び込んでくるのか、いずれにしても楽しいことになりそうな予感なんですが。
患者さん達の要求、国からの通達と、いずれも個々に見ていればそれなりに話は判るのも確かなんですが、共通しているのはそれを受けて実際に動くであろう現場の人間に思いが及んでいないということではないかという気がします。

ちょうど社会保障政策は選挙の目玉と言うことで医療というものに関する言及も増えてきている時期ですけれども、本来なら目指すべきは「現場で苦労している医師の待遇改善」であったはずなのが、いつの間にか「医師数の増加」や「医療費増額」にすり替えられてしまっていることにはきちんと目を向けていなければならないですよね。
そして「言う通り数も増やして金も出したんだから文句はないはずだ。さっそく今まで以上に働いてもらうぞ」と現場スタッフの待遇はむしろ悪化し、更に医療崩壊が促進される、そんな最悪のシナリオすら想定できてしまうところではあるのですが。
まあそうなった場合においても、巧妙なすり替えを主導してきた人たちが何かしら責任を取るということだけは間違ってもなさそうですけれども。

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2009年8月27日 (木)

「バンキシャ」虚偽報道問題、その後の経過と新たな火種

先日も今までの経緯の概略をお伝えしました日テレ「バンキシャ」虚偽報道問題ですが、このたびようやく検証番組が放送されました。
まずは報道から引用してみましょう。

久保前社長が改めておわび=「バンキシャ!」誤報で検証特集-日テレ(2009年8月23日時事通信)

 日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」は23日、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の勧告に基づき、岐阜県庁裏金誤報問題の検証特集を放送し、誤報に至る経緯や再発防止策について説明した。
 冒頭、同問題で引責辞任した久保伸太郎前社長が、岐阜県庁や県民、視聴者に対し「重ねて深くおわび申し上げます」と頭を下げ、「報道局内の上司と部下との間の報告、連絡の在り方などについて基本中の基本をおろそかにしていた」と謝罪した。
 当時の責任者だった足立久男前報道局長、袴田直希前チーフプロデューサーも出演し、謝罪。放送日を大前提にした報道体制、不十分だった訂正放送などについて検証した。
 その上で、細川知正社長が「今回の勧告を真摯(しんし)に受け止め、報道番組全体を総点検し、信頼回復を目指します」と決意を述べた。 

日本テレビ:「バンキシャ!」誤報、社長らが番組内で謝罪(2009年8月23日毎日新聞)

 日本テレビは23日夜の報道番組「真相報道バンキシャ!」内で、岐阜県庁の裏金誤報問題を検証する内容を放送した。

24日未明放送の検証番組のダイジェスト版で、「検証特集『誤報はなぜおきたか』」と題して番組後半の約26分間をあてた。裏付け取材を欠いたことや訂正放送の不十分さなど5項目の問題点を挙げ、取材ディレクターらスタッフの証言を交えて検証。再発防止に向けた取り組みなどを紹介した。08年11月の放送時社長だった久保伸太郎相談役、細川知正・現社長らも登場した。最後には、制作スタッフと番組キャスターの福澤朗さん、菊川怜さんら約30人がカメラの前に整列し、「改めて深くおわびします」と頭を下げた。

日テレがバンキシャ虚報問題で検証報告書を公表(2009年8月24日産経新聞)

 報道番組「真相報道 バンキシャ!」の虚偽証言問題で、日本テレビは24日、社内の検証結果や再発防止策をまとめた報告書を同社や同番組のホームページで公表した。

 報告書は24ページにわたり、虚偽証言を報道した際の放送内容や取材経過、取材上の問題点、番組制作態勢の構造的な問題などを検証。再発防止に向けた研修の実施状況など、具体的な取り組みを記載した。

 一方、検証結果の内容を放送した23日夕の同番組の平均視聴率は関東地区11.0%、関西地区8.4%で、24日未明の検証番組は関東地区4.0%、関西地区5.2%だった。(ビデオリサーチ調べ)

さすがにわざわざ深夜枠を確保して放送した検証番組だけに、視聴率4~5%と予定通りの低視聴率だったようですね(苦笑)。
各メディアとも平素他業界の失点を執拗に追求する姿勢と比較すると、社長のクビまで飛んだにしては身内のネタはずいぶんと小さな扱いなんだなと思わされるところですが、そもそもこの問題の存在自体も知らないという人間も多かったかも知れませんから、ここでもそれなりに隠蔽工作?の実は上がっているということなんでしょうか。
ちなみに引責辞任した前社長の辞任会見と今回の謝罪会見の様子は動画にも出ているようですので紹介しておきますが、これを見て一般の視聴者がどう感じるかということでしょうか。

【動画】日テレ社長、「バンキシャ」問題(辞任報道)

【動画】真相報道バンキシャ! 090823 社長および福澤キャスター以下スタッフ謝罪(謝罪報道)

ちなみに記事中にもあります通り検証報告書なるものが公開されていますので、これも紹介しておきましょう。

【参考】「真相報道バンキシャ!」虚偽証言問題に関するお詫びと最終報告書公表のお知らせ (日テレプレスリリース)

この中で日テレ自身が取り上げている問題点として、以下のようなものがあるわけですね。

【問題点1】
インターネットの取材協力者・出演者募集サイトは、テレビ各局や雑誌社などが情報収集に活用しているが、「バンキシャ」では番組作りにあたり、これまでもこのサイトを度々利用していた。話題モノの体験者募集と同じ感覚で、事件取材の端緒をネット募集に頼ったことは、報道取材の手法として安易すぎたと言わざるを得ない。また、募集に際して「謝礼」は「応相談」と記載された。結果的に岐阜県の情報提供者に謝礼は支払われなかったが、謝礼の可能性を示して取材対象者を探す手法は、報道倫理の観点からも大きな問題があった

【問題点2】
情報提供者と最初に話したFアシスタントディレクターは「バンキシャ」に来てまだ1か月で、報道番組の取材経験はほとんどなかったが、その電話取材の結果が取材開始時の唯一の検討材料だった。重要な告発事案にも関わらず、メーンデスクや統括ディレクターは情報提供者に直接取材をしようとしなかった。また、前日に裏金を振り込んだという人物が、翌日にサイトに応募して告発したいと名乗り出たことに、誰も違和感を覚えないまま取材が始まった。

【問題点3】
岐阜県に対する質問は、いつ、どこで、誰が裏金を作ったというような具体的な内容は一切なく、回答しようのない漠然としたものだった。この段階では、「取材源の秘匿」の問題以前に、告発内容の基本的な事実すら把握できておらず、公正な取材とはいえなかった。また、反対当事者である県庁の取材に、大雑把な内容しか知らされていないアシスタントディレクター1人をあたらせるという取材姿勢にも問題があった。

【問題点4】
重要な告発事案であるにもかかわらず、十分な事前取材を行わなかった上、実名報道についての交渉は一切しないまま、インタビューの前から、モザイク処理など匿名を前提にした安易な取材が行われた。

【問題点5】
インタビューの最中、取材ディレクターは、200万円の裏金作りに加担した別の業者の名前や県が発注した工事の内容、裏金に関わっている他の業者や県職員の名前、車などを贈った県職員名など、証言の裏付けに必要な要素について、突っ込んだ質問をしていない。証言を報道するには、そうした裏付け取材が不可欠だという意識は、この時点ではほとんど見られなかった。また、いくつか疑問を感じる場面がありながら、深いこだわりを見せないままインタビューを続けた。この時の心境について、取材ディレクターは「事前リサーチを踏まえて(取材に値すると)本社にいるデスクらが判断して取材が決まった。本社にいるデスクからの指示だったので、疑う気持ちは余りなかった」と述べている。取材現場の判断で情報が真実かどうかを確認する姿勢が希薄だった。

【問題点6】
取材で情報提供者から入手した物を、裏金を証明するものとしての証拠価値があるかどうか、深く精査することはなかった。ネットバンクの入出金の仕組みや、入出金記録がどんなものかについても検証しなかったため、送金手数料の記載がないなどの不自然さには最後まで気づかなかった

【問題点7】
前回から1週間あったにもかかわらず、周辺取材や裏付け取材は一切行われないまま、報提供者側からの情報だけに基づいて再取材をしようとした。しかも、「取材源を守る」という理由から具体的な事実をほとんど明らかにしないまま、県庁側のコメントを取る取材姿勢は前回とほとんど変らなかった。

【問題点8】
裏金作りに関わった別の業者名など、新たに証言の裏付けをとるためのきっかけをつかみながら、確認を行う努力をしなかった。また、県職員が実在するかの確認のために職員名簿の入手すら自ら行わず、情報提供者側に提供させるという有様だった。架空工事の領収書などを受け取りながら、過去の受注実績も確認しなかった。また、証言の変遷や、偽造領収書とキャッシュカードの架空名義が同一だったことなどに強い疑いを持たず、情報提供者の弁解を鵜呑みにし、ウソを見抜く機会を逃した。

【問題点9】
オンエアの可否を議論した本社スタッフは、情報提供者から提供された証拠と証言内容だけの検討しか行わず、証言を裏付ける周辺取材や、関係者取材の必要性に思い至らなかった。そして、放送決定に関わった本社スタッフは、誰も情報提供者に直接、会っておらず、判断材料のほとんどはディレクターやアシスタントディレクター達が取材したものだった。独自の取材で、架空口座の届出住所が情報提供者の自宅住所であるという不自然さに気付きながら、現場スタッフから伝えられた情報提供者の言い訳を聞いて「そういうこともありうるのかな」と納得してしまった。また、たとえ架空名義の口座に実際に裏金が振り込まれていたとしても、その口座と岐阜県を結び付ける証拠は何もなかったにもかかわらず、その点については議論もされなかった

【問題点10】
今回の情報提供者がネットで応募してきた際、過去に同様の応募歴があるかどうかを確認していれば、証言の信用性を判断する際の一つの材料になっていたと考えられる。しかし、「バンキシャ」では、ネットを使った出演者や取材協力者の募集は度々行われており、同じ人物が様々なテーマに応募してくることへの危機意識もなく、過去の出演歴についての確認作業は行われていなかった

しかしまあ、こうしてみますと最初に放送ありきで、その目的にそって全ての取材活動は単なる番組制作のための作業として行われていたように思われる話ではあります。
証言の信用性や取材過程の不完全さなどもさることながら、現場の制作スタッフは怪しいと感じながらも期日に追われる中で「最終的には本社が判断するだろう」と考え、本社スタッフは「現場が出してきたものだから」とスルーすると、要するに同社内にはどこにも真実性を担保するためのチェック機構というものは存在していないという話になってきますかね。
これは何も番組制作から放送に至る過程に限った話ではなく、同番組の内容が虚偽と判明した後の訂正放送においてすら、このような不徹底が存在していたことにも同報告書が言及していることに注目すべきですね。

 しかし、日本テレビは本件訂正放送において、情報提供者が、岐阜県の裏金問題に関して証言した内容は虚偽であったと、証言を翻した事実を伝えただけで、真実ではない部分が具体的にどこであり、どこを取り消すのか、またどのように訂正するのかを視聴者に明確に示さなかった。さらに、岐阜県がこの情報提供者を偽計業務妨害罪で告訴した事実、また、彼が中津川市の公金詐欺事件で逮捕・起訴されている事実を併せて伝えた結果、真実ではない部分の訂正・取り消しという本来の訂正放送の目的が曖昧となり、情報提供者の悪質性をことさら強調していると受け取られかねないような内容となった。本件訂正放送は、放送の真実性に対する視聴者の信頼を得るとともに、真実に反する放送による被害を阻止・回復するという訂正放送の趣旨に照らして不適切であった。

 このように、本件訂正放送が不適切と言わざるを得ないものとなった背景には、放送当時において未だ原因究明が不十分であったことに加え、その時点では、情報提供者の巧妙な嘘に騙されてしまったという意識が作用していたことは否定できない。証言の裏付けを十分に行わないまま真実ではない放送をした責任はすべて日本テレビにあり、その結果、テレビが犯罪に利用されてしまったということに対する強い自省が足りなかった。

要するに自分たちは騙された、被害者であるという意識が先に立ち、自分たちが視聴者を騙した加害者であるという認識が欠けていたということですかね。
このあたりは従来から業界関係者が共通して言うところの「テレビなんて見ているのは馬鹿ばっかり」であって、その認識を前提に仕事をしているという意識の発露とも言うべきなのかも知れませんが、例えば当の日テレで編成部長を務める土屋敏男氏も糸井重里氏に対してこう語っています。

テレビという神の老後。 第11回 あなたは、消費者を信用できますか?(ほぼ日刊イトイ新聞)より抜粋

土屋     実は、ぼくら地上波のテレビをやっている人たちは、視聴者を、信じていないんですよ。
見ている人のことを、かなりものがわからない人だと想定して、その人たちにどう見せるかと工夫しているんです。

ものすごく悪い言い方をすると、もう、「馬鹿にどう見せるか」と、みんな絶対にクチには出さないけれども、どこかのところではみんながそう思っているようなフシがありますね。

糸井     あれだけの大きさのツールを持てば、誰でもそうなりますよね。

土屋     確かに、何百万人、何千万人と見てくださる中には、もちろん、そういう人たちも、いますよ。
その人たちも入れないと数にならないから、「その人たちまで含めて全員をダマすためには……」と、自分たちの持っている視聴者像を、どんどん、ものすごく友達にしたくないところに持っていってしまっている、というか。

確かに社会人口構成を考えるならば、メディアに限らず国民一般を相手にする場合に「一流大学卒で若くして最先端知的産業において年収○千万」なんて特殊な人たちをターゲットにやって商売になるわけがないのは当然で、実際そういう人たちはテレビなんてほとんど見ないわけですから、マーケッティングとしてはそれなりに真理を突いているというのは確かでしょう。
しかしだからといってしょせんテレビなんだから嘘をついていいとか、テレビごときに騙される方が悪いとかいった態度で仕事をしてもらっていいかと言えば、それもまた違うんだろうと言うことですよね。
今回の一連の騒動における日テレの姿勢について同じ報道業界ではどのように評価しているのか、社説で取り上げた中日新聞の記事から引用してみましょう。

【社説】誤報検証番組 信頼取り戻せるのか(2009年8月26日中日新聞)

 報道番組「真相報道バンキシャ!」の誤報問題で、日本テレビは二度にわたって検証番組を放送した。しかし、検証というには物足りない内容だった。これで視聴者の信頼を取り戻すのは難しい。
 「バンキシャ!」の誤報は昨年十一月に放送された。情報提供者として登場した元土木建設会社役員という男の「岐阜県の土木事務所が架空工事を発注して裏金をつくっている」という証言は、すべて作り話だった。
 放送倫理・番組向上機構(BPO)が検証番組を放送するよう勧告したため、日本テレビは二十三日夕方の「バンキシャ!」内で検証特集を、二十四日午前零時五十分からは検証番組を流した。
 まず、検証番組を未明に放送したことが理解できない。前日夕の検証特集とほとんど変わらず、再放送のようだった。特集に続いて検証番組を視聴した人はだまされた気分になったのではないか。
 内容も、検証としては物足りなかった。「裏付け取材を怠ったのは致命的ミス」「チームのコミュニケーションが欠けていた」との関係者による反省の弁はすでにBPOの勧告で指摘されている。
 男が示した「入出金記録」はどう見てもパソコンで作成されており、裏金の証拠といえるようなものではない。「情報源の秘匿」との主張も岐阜県側を取材しなかった理由にはならない。視聴者の疑問は取り払われていない
 取材力の不足とチェック機能の欠如があらためて確認されたが、これは制作会社とテレビ局の関係に起因する問題ではないのか。
 現場取材は制作会社に任されていたようだ。「放送日ありき」では時間や人員の制約から取材が不十分な場合も生じよう。だが、会社の経営を考えれば「できなかった」では済まされないはずだ。
 一方、テレビ局が制作されたものをしっかり点検する機会や能力がなかったらどうなるか。放送を決める最終検討会議に、取材した制作会社社員が欠席だったというのはその一端を示している。
 視聴率との関係ではどうだったのか。報道はドラマやバラエティーとは本質的に異なる。同じものさしで報道番組を作ってはいなかったか。
 謝礼の支払いをうかがわせて情報提供を呼び掛けた行為は報道のあるべき姿勢ではない。
 検証番組には制作会社を取り巻く環境や制作体制を問う場面はなかった。再度、検証番組を作って真相に踏み込んではどうか。

要するに落第というずいぶんと手厳しい指摘をいただいているようですが、新聞業界にしてもこの方面では他人事では全くないわけですから、これを以て他山の石としていただきたいところではありますけれどもね。

さて、今回の件でもひと頃大騒ぎしていたネット界隈での評判はどうなのかと気になるところなんですが、意外に評判がいいようです(苦笑)。
と言いますのも何しろ下には下がいるというのが共通認識ですから、これでも彼らにしてはよくやった!とむしろ讃える声の方が多いくらいな様子なんですよね。

374 名前:名無しさん@十周年[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 01:43:20 ID:7mgsVM9DO
いや、あれやっただけで随分マシだと思う。
TBSだったら絶対やらない。

386 名前:名無しさん@十周年[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 01:50:06 ID:O/pj5+xAO
TBS変態報道の時のがやばかったけどあいつら謝罪どころか箝口令までひいて未だに知らんぷりだからそういう意味では今回の謝罪はかなりマシだったと思う
しかし普通の民間の会社ならマスゴミから謝罪しろ!のフルボッコくらってその会社トップの何人かは何らかの処分を確実に受けるであろう事を思うとスッキリはできないな

407 名前:名無しさん@十周年[sage] 投稿日:2009/08/24(月) 02:09:09 ID:Tfmd6nDB0
謝罪が足りないって言ってる人もいるけど、
自分はどういう経緯があったのかよくわかってよかった。

正直気になったのはTBSの方がもっと悪質なことやってると思うんだけど、
どうしてBPOはTBSにはこういう検証番組作るように求めないんだろう。

456 名前:名無しさん@十周年[] 投稿日:2009/08/24(月) 08:06:49 ID:voJzUpdP0
十分かと言われたら不十分な所もあったが(ディレクターが顔を出さないとか)
最低でもこれぐらいはやらないとダメだよな。
TBSは見習えよ。特にみのもんた。

いやあ、大人気じゃないですかTBS(笑)。
まあ謝罪をしないよりはした方が良いのだろうし、どんな内容であれ検証をしないよりはした方がよいというのは当然なんですが、それを今後にどう活かすかということはまた全くの別問題でもあるわけでしてね。
日テレやTBSに限らず、またぞろ妙な特権意識を振りかざして「俺様が正義」なんてことをやっているとますます国民のメディア離れも進むだろうと思うところですが、さてこういう記事を読んでみますといっそマスコミ業界も開き直ったのかとも思えてしまうところなんですが…

メディア政策:新政権に望む 「表現・報道の自由」規制、デジタル社会、そして…(2009年8月24日毎日新聞)

 1999年から続いた自民、公明の連立政権下では、個人情報保護法の制定をはじめ、「表現・報道の自由」への規制が強まった。この約10年は、インターネットなど本格的なデジタル社会の到来で、新聞事業が大きく揺さぶられた時期とも重なる。衆院選(30日投・開票)で誕生する新政権に望むメディア政策について、ジャーナリストの原寿雄氏、服部孝章・立教大教授、音好宏・上智大教授の3人に聞いた。【臺宏士】

 ■新聞への公的支援論議を--ジャーナリスト・原寿雄氏

 インターネットの普及によって、読者離れと広告離れが深刻化し、いまのままでは日本の少なくない新聞が廃刊や経営規模の縮小を迫られるのは必至だ。不動産収入や映画製作への参加など本業以外をみても、新聞を支えてきた購読料と広告料に代わる収入源は見つからない

 米国ではより深刻で、1紙しか残らない地域も増えているようだ。インターネットは、オピニオンを飛躍的に発展させたが、その基礎となる「事実」は、自分の仕事や趣味の情報にとどまるというパーソナルメディアとしての限界がある。一方、新聞ジャーナリズムは、公器として権力の監視や社会正義の追求をはじめ公共的な情報をいち早く豊富に安価で提供してきた。恒常的で組織的な取材、調査・分析力。そして、特定の利害に左右されない道義性の高さを肩代わりできる媒体は、当面ほかに見当たらない。

 廃刊相次ぐ米国では公権力を監視する力が弱まりかねないという声が広がっている。連邦議会では、新聞の再編を容易にするための独占禁止法の緩和やNPO化による税制上の優遇措置などが論議され始めた。欧州では新聞の公共意識が強い。言論の独占を避け、多様性を重視する観点から、スウェーデンでは弱小新聞への助成策があり、仏では税制上の優遇に加え新成人への新聞の1年間の無料配布も打ち出した。

 民主主義社会ではジャーナリズムが不可欠だ。日本では社会文化政策として新聞ジャーナリズムの公的な支援論議はほとんどされてこなかったが、いまこそ始める時ではないか。再販制度や特殊指定制度は、新聞事業を維持するために、その意義が一層強まった。

 欧米の政策を参考にした税制上の優遇や、教育文化政策の一環として、ジャーナリズムの社会的な重要性を学ぶためのカリキュラムを強化したり、義務教育が修了する15歳を機に新聞の1年間無料配布を検討してもいい。年500億円で足りよう
(略)

 ■個人情報保護法、改正を--服部孝章・立教大教授

 自公政権の10年、報道機関については、個人情報保護法(03年成立)などメディア規制色の濃い法律が相次いで成立したことの影響が大きい。総務省が放送事業者に対し、法的根拠を欠いた行政指導を通じた番組内容への関与を繰り返したことも特筆される。一方、市民にとっては、「表現の自由」が軽視された。日の丸を国旗、君が代を国歌と定めた国旗・国歌法(99年成立)を受け、東京都が卒業式で起立しなかった教員を大量処分したのが一例だ。また、イラクへの自衛隊派遣に反対するビラを官舎に配布した市民が住居不法侵入の疑いで逮捕、長期拘置されたことも記憶に新しい。私有地であっても、ビラを投函(とうかん)するだけで逮捕するような公権力行使は慎重であるべきだ。
(略)
 今年に入り、週刊誌の報道に対し高額賠償判決が相次いだが、公人は反論の機会がある。一律に保護する必要があるのか疑問だ。公人側に対し、週刊誌の悪意の証明を求めるなど名誉棄損を認める基準を見直したらどうか
(略)
 ■課題多い日本版FCC--音好宏・上智大教授

 民主党が主張する放送行政を独立行政委員会が担当する仕組みは、検討に値すると思う。しかし相当な研究が必要だ。
(略)
 一方、これまでの放送政策の決定は、総務省が与党の党内手続きを尊重し、手厚く対応する形で進められてきた。しかし、新政権は、こうした不透明な政策決定プロセスを改めるべきだ。予算の承認を国会で得る必要があるNHKにとっては、こうしたシステムが、政府・与党に太い人脈を持つ政治部記者が幹部に起用されるという慣例を支えてきた。NHKと政治との関係、緊張性や透明性をどう確保するかが問われる。英国の公共放送BBCの政権との距離の取り方が評価されるが、政権が交代する政治風土ゆえに生まれた。

 04年夏に発覚した受信料着服問題に端を発し、受信料支払い拒否が広がった。その背景には、05年に表面化したNHK特集番組改変問題を含めて、政権与党との距離が近いのではないかというNHK不信があったと思う。予算や決算の承認、経営委員長の選任方法を含めた見直しは欠かせない。

 総務省が放送事業者に対する関与を強めたのは、93年に誕生した細川政権下。テレビ朝日の椿貞良報道局長の日本民間放送連盟の会合での発言が自民党から問題視され、放送人として初めて国会に証人喚問され、強い放送規制に道を開いた。放送の自由への未熟な理解が原因だ。新政権はそうした経験を踏まえて放送行政と向き合ってほしい。

いや、公費で新聞を買い上げろだの、個人が拒否しようが好き勝手にビラをまかせろだの、マスコミを訴える者には制限をかけろだの突っ込み所てんこ盛りなんですが、挙げ句の果てはかの椿事件を「放送の自由への未熟な理解」って…
要するにマスコミは一切他人に干渉を受けることはまかりならん、一方でマスコミは一切他人への干渉を邪魔されることもまかりならんという特権意識としか言いようのない話ですよね。
こういう理解の元に進められている「放送の自由」なるものについて、極めて重大な危惧を抱かずにはいられないところですが、さすがにこれには非難囂々だったのか、さっそくこんなコメントを発表しているようですね。

「苦境の新聞に公的支援を」 毎日の識者コメントに異論(2009年8月26日J-CASTニュース)

   ネットの普及で経営難になった新聞に公的支援が必要だと説く、毎日新聞の識者コメントが論議になっている。社会の公器としての役割の重要性が根拠に挙げられているが、なぜ新聞だけが企業の中で特別なのかとの異論も出ている。

「毎日新聞社の考えを表明したものではありません」

   読者離れや広告減収によって、日本でも「新聞崩壊」が現実味を増している。不況もあるが、ネット媒体の影響が大きいとされる。

   こうした状況をジャーナリズムの危機と捉え、新聞への公的支援を毎日新聞へのコメントで訴えたのが、元共同通信編集主幹のジャーナリスト、原寿雄氏だ。毎日では、2009年8月24日付記事で、「メディア政策:新政権に望む」として、3人の識者へインタビューしており、原氏はそのうちの1人だ。
(略)
   ネット上では、毎日が自らの利益になるようなコメントを紹介したため、反発する声も相次いでいる。これに対し、毎日新聞社の社長室広報担当は、「毎日新聞社の考えを表明したものではありません」とだけ回答している。公的支援についての自らの考えなどは明かさなかった。

なぜ新聞だけが特別視されるのか

   ジャーナリスト、原寿雄氏のコメントは、「新聞崩壊」が指摘される中で、日本でも、公的支援についての意見表明が出てきたことを示す。

   青山学院大の大石泰彦教授(メディア倫理法制)は、新聞への公的支援には賛成であるものの、現状での日本での導入には反対の立場だ。

    「フランスの考え方は、表現におけるメディアの自由ではなく、個人の自由ということです。個人の自由を最大化するために、メディアは国がコントロールすべきものと考えています。少数派に発言権を与えるために、弱い新聞を公的支援で助けるわけです。ところが、日本では、メディアの自由ばかりがまかり通っています

   フランスでは、公的支援については、一般人の反論権を認めること、新聞社内部での発言の自由が与えられていることが条件だという。これに対し、日本の新聞社では、こうした条件が満たされていないと指摘する。

    「明らかに、一般人の反論権を受け入れていません。トップが政権の大連立を唱えたら、それ以外の発言は許されない。意見は上層部で決め、トップが政治家と会うなど権力と癒着しています。日本の新聞は、公器ではなく私物になっているのですよ。記者クラブや社員の高給など、新聞社に特権があることも公的支援になじみませんね」

   ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、なぜ新聞だけが特別視されるのか理由がないと言う。

    「業界としてのマスメディアも必要ですから、それなら、出版社やテレビ・ラジオ局がなぜダメなのかということにもなります。確かに新聞がなくなると困ると思いますが、1~2社つぶれたからといって困ることはありません。むしろ持ち直すことだってあるわけですから。また、新聞は、金融機関への公的資金注入を批判していましたが、それとの矛盾をどうするのか、明確に説明できなければいけません」

   新聞社が公的支援を巡って政権政党と談合するようなら、メディアへの不信感が募っていい結果にならないとも指摘する。

    「新聞には、押し紙や特権的な再販制度、拡張団の暗躍など、超えなければならない問題が多すぎます。公的支援は一つの選択肢だとは思いますが、現状の問題点をクリアしないと難しいでしょうね」

しかしこうしてみますと山積する諸問題の存在もさることながら、要するに500億云々以外は毎日新聞の考え通りという理解でよろしいということなんですかね?>毎日新聞
余計に突っ込み所満載という気がしないでもないところですが、今の時代何でもこうやって国民の目が光っているわけですから、迂闊に本音を漏らすようなことはなされない方がよろしいかも知れないですよホント。

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2009年8月26日 (水)

遠ざかれば遠ざかるほど近づいてくる何か

少し前にこういう記事が出ていましたのを御存知でしょうか。

名前似た薬を誤点滴し死亡、医師を書類送検(2009年8月20日読売新聞)

 徳島県鳴門市の健康保険鳴門病院で昨年11月、入院していた男性患者(当時70歳)が、抗炎症剤と名称が類似している筋弛緩(しかん)剤を誤って点滴されて死亡した医療事故で、県警は20日、薬の投与を看護師らに指示した女性医師(37)(休職中)を業務上過失致死容疑で書類送検した。

 県警の任意の聴取に対し、女性医師は容疑を認めているという。

 県警の発表などによると、女性医師は昨年11月17日、肺気腫の疑いがあり、40度近い熱があった男性患者に解熱作用もある抗炎症剤「サクシゾン」を使うつもりだったが、筋弛緩剤「サクシン」200ミリ・グラムを薬剤師や看護師に指示して、投与。翌18日未明、薬物中毒により窒息死させた疑い。

 女性医師は、サクシゾンの投与を看護師や薬剤師に端末のパソコンを通して指示する際、「サクシ」と3文字を入力、変換。画面には「サクシン」が表示されたのに、確認を怠り、誤ったまま伝えたという。

 鳴門病院は、二つの薬剤を取り違わないように、約7年前からサクシゾンは置いていなかったが、この女性医師は昨年4月に着任し、事情を知らなかったという。

 一方、事故を受け、サクシンを製造販売している製薬会社は今年7月から商品名を「スキサメトニウム」と改めている

この件に関しては非常に教訓的な事例ということでネット上でもあちこちで取り上げられてきましたが、今までさんざん間違える間違えると言われ続けながらやっとメーカーも名称変更に重い腰を上げたかという印象が強い記事でもあります。
かつて手術場等での配管の誤接続がさんざん問題となって以来、送る気体の種類によってコネクターの形状が変えられ物理的に誤接続できなくするという対策が取られたことがありました。
最も多忙で時間的余裕がないだろう現場の最前線に判断をさせることをなるべく減らし、余裕のある後方領域でその分をカバーするという基本の徹底が重要であると、改めて考えさせられる事例ではありました。

さて、医療業界においても他業界と同様に日常的な事故の危険性が多々あるわけですが、これも他業界と同様に未だに事故発生ゼロを達成するという目標が達成されたことはなく、恐らく今後も達成されることはないでしょう。
特に医療業界の場合多くの事故は生命や健康に直結するという事態に至る可能性が高いことから国民の関心も高いと思いますが、しばしばこの点で問題になるのが「ゼロリスクを追及しすぎるとかえって利益に反する場合が多い」という事実であることは過去にも多くの方々が指摘してきた通りです。

登山をやめれば転落死の危険は減らせるでしょうが、多くの人間が錯綜しながら生活している現代社会においては、誰かの手放したリスクは消えるのではなく単に他の誰かに移動するだけという現象がしばしば起こります。
誰かが本来負うべきリスクを放棄するならば、それは負うべきではなかった誰かにリスクを負わせているというわけで、負わされる方もたまったものではありませんから何とかリスクを回避しようとする、その結果社会に妙な歪みが出てくるということは望ましいことではないですよね。
リスク回避を図るとすればそれは単なる転嫁ではなく社会の総体としてリスクを軽減する方向で行われなければならない、あるいは別の言葉で言えば、関係者全てがWin-Winの関係を結べるよう現場ではなく社会として工夫する必要があるわけです。
その意味で産科で始められた無過失補償制度などは大きな期待の寄せられるところないのですが、そのためにも医療関係者は元より国民一人一人の理解というものが欠かせないことは言うまでもないと思いますね。

医療事故への真摯な姿勢が国民の理解につながる(2009年8月22日CBニュース)

【第75回】 上田 茂さん(日本医療機能評価機構理事)

 今年1月1日からスタートした産科医療補償制度は、日本の医療における初めての「無過失補償制度」であると同時に、行われた診療行為について医学的評価を行い、再発防止策を提言するという「原因分析」の仕組みも取り入れている。日本医療機能評価機構で同制度の事業管理者として策定に携わった上田茂理事は、金銭の補償だけにとどまらず、原因を明らかにして、不幸な医療事故の再発防止につなげることを目的にしたこの制度へ医療界が真摯に取り組むことが、国民の医療に対する評価や理解につながることと考えている。医療界が注目する同制度にかける思いを聞いた。(津川一馬)

―産科医療補償制度の策定に至った背景を教えてください。
 日本の周産期死亡率や新生児死亡率では世界でもトップクラスの低さです。しかし、近年は産科に従事する若手の医師が大きく減少し、産科の病医院や助産所が次々に廃院するという事態に至っています。
 その要因はまず、産科医がハードワークであるということ。常に24時間の対応を求められます。もう一つは、訴訟の増加です。この問題がかなり産科医の負担になってきていました。

 こうした問題について、2003年頃から「訴訟の問題については無過失補償制度で」という動きが医療界の中で出てきました。これを受け、自民党政務調査会でも、まずは現行制度の中で無過失補償制度を早く立ち上げようという考えをまとめました。これにより、厚生労働省から日本医療機能評価機構に無過失補償制度について検討するよう要請があり、準備委員会を立ち上げ、一年間検討してきました。

―検討過程ではどのような課題があったのでしょう。
 今回の制度は、自民党の枠組みに沿って、補償対象を、分娩に関連して発症した重度の脳性まひに限定しています。その上で、「出生体重2000グラム以上かつ在胎週数33週以上」などの基準を設けました。ただ、先天性要因や未熟児の脳性まひを対象から外すことについては、疑問の声が上がりました。
 また、3000万円の補償金を得ることができる人と、そうでない人が出てくることで、障害者の格差を生むという指摘や、仕組みが複雑すぎるとの指摘もありました。

 私どもは、産科医療を守るという観点から制度設計しています。この守るというのは、「医師を守る」ことだけを意味しているのではありません。お産をする場所がなくなると困るのは妊産婦であり、国民です。国民にとっての産科医療を守ることでもあります。
 これまで挙げたような産科医療の問題を解決するには、この制度以外にも、いろいろな対策を考えないといけません。もちろん、この制度も産科医療を維持、発展させるためには必要なので、まずできるだけ早く立ち上げて、実際に運用する中で、課題があれば見直していくことが大事ではないかと考えています。そのため、この制度は遅くとも5年後に見直すことになっています。
(略)

―医療事故について「第三者委員会が調査する」とした死因究明制度をめぐる議論はなかなかまとまりませんが、それに先立って「原因分析」を実施することに難しさはありませんか。
 やはり、患者側との対立を招くことを医療側は懸念しています。この制度は、医療側に積極的に協力していただかない限り、なかなか広がりません。原因分析を行うに当たっては、きちっとした情報を分娩機関から提出してもらう必要があるからです。
 先駆的に医療事故補償制度を進めてきた国の一つであるスウェーデンでは、医療側から積極的に協力してもらえるような体制になっています。「No blame for doctors」、医療機関から提供された情報の中身については責めないという考え方があります。患者側からの苦情申し立てについては別の受け皿もありますが、この補償制度は、資料を出しやすく、そして協力しやすいように、という考え方の下で運営されています。

 一方、原因分析を行うに当たって、家族の意見を聞かないままでは、いくら専門家が作った報告書だといっても、受け入れていただけないのではないか、信頼されないのではないかと思います。
 原因分析委員会でも患者側の委員から、家族の意見を十分に聞くべきとの指摘があったため、医学的評価を行う前に、分娩機関からだけではなく、家族にも意見を求める仕組みになっています。

―原因分析のあり方を検討する原因分析委員会では、脳性まひ回避の可能性の記載について特に議論が白熱しました。
 行われた診療行為が、その時点において問題があったかなかったかという医学的評価は当然行います。ただ、脳性まひが回避できた可能性というものは、医学的評価では判断しづらいものなのです。
 医学的評価の結果は、家族にしっかりと伝えなくてはならないと思います。しかし、もう一つ重要なのが、どのように再発防止をするかという点です。
 往々にして、診療行為についての医学的評価と、再発防止のための改善事項が、整理されずに混同して書かれることがあります。大事なのは、原因を究明するための「診療行為が行われた時点での医学的評価」と、再発防止策を挙げるための「振り返った上での評価」を、明確に区別することです。

 診療行為を振り返り、「ベストの医療を行うためにはこうすべき」と記載することは、再発防止策として当然必要な要素です。一方、「診療行為が行われた時点での医学的評価」については、「医療行為には幅がある」ということを勘案しなくてはいけません。

 私は、医学的評価を厳しくすることで、まじめに医療に取り組む医師たちが委縮することは避けたいと思っています。
 幅のある診療行為において、ミスが出た時にどう評価するかについては、これから整理が必要だと思います。

―原因分析が医療裁判に与える影響をどのように考えていますか。
 今回の制度では、原因分析を行った後に、その結果を家族、分娩機関にフィードバックします。このことが逆に裁判につながるのではないか、あるいは補償金が入ることで裁判しやすくなるのではないかという意見は確かにあります。
 しかし、きちんと医学的な問題点についての評価をした報告書を家族に示すとともに、医療側も報告書の内容を真摯に受け止めて、再発防止策も進めるということであれば、家族にはご理解いただけるのではないでしょうか。この報告書を基に医療側と家族側が話し合うことで、裁判の前の段階で解決を図ることが可能になるのではないかと思っています。

 課題はこの原因分析報告書が評価されなくてはならないということです。
 現在、原因分析委員会を開き、評価方法について検討を進めていますが、ここには医師、助産師、有識者、弁護士、患者の代表が入っています。さらに、中心となって原因分析を行う6つの部会についても弁護士が参加することになっています。こうした透明性の高い原因分析を行うことで、信頼性を高めなくてはいけません。
(略)

―この制度で医療界がどう変わることを求めていますか。
 医療の評価や、原因分析を制度として行うのは初めてです。原因分析について、医療関係者は報告書が家族に渡されれば、かえって訴訟につながるのではなどと、いろいろ懸念されています。
 そういう中で、報告書の作成に当たって家族の意見を丁寧に聞く形で進めていますし、原因分析委員会には弁護士なども参加してもらっています。また、報告書を家族にフィードバックするとともに、個人情報方保護に十分配慮して公開することを検討しています。原因分析は医療側に負担をかけますが、こうした医療界のオープンな取り組みが、長い目で見た時に、国民の医療に対する評価や理解につながっていくのではないかと思っています。

記事中にもありますスウェーデンの医療補償制度につきましては以前にも取り上げてきたところですが、こうした制度が「医師などの医療要員と患者の間の信頼を強化するための基盤を創造」するのだとしたら関係者双方にとっての福音と呼ぶべきものですよね。
しかし残念ながら日本においては産科無過失補償制度も極めて限定的な運用が開始されたばかりであって、その他の診療科においてはこうした制度自体が存在していないわけで、現実問題として大きな影響が実際に現れ始めているのですね。

例えば以前から「医療訴訟激増の結果、処分を恐れて?副作用・合併症報告が激減している」という話題がありましたが、かつては心ある一部専門家の危惧であったものが、最近では一般紙においても取り上げられるようなネタになってきたわけですね。

【産科医解体新書】(50)なぜ減った日本人論文数(2009年8月18日産経新聞)

 医師の仕事の一つに、臨床で得た治療の成果や珍しい症例を論文にまとめて発表するという作業があります。こうした研究は臨床の合間にすることになります。世界のどの地域でも医師にはそういう役割が求められています。

 2003年から06年にかけ、臨床医学の論文数は世界的に7%増加しているというデータがあります。単に数が多ければよいものではありませんが、多ければ内容の優れた論文が発表される可能性も増えます。

 ところが、同じ期間の日本人の論文数を検証した人によると、増えているどころか10%ほど減少しているそうです。日本には医師が論文を書きたくても書けない、なんらかの原因が存在しているのかもしれません。

 日本では論文を“医師が偉くなるための手段”と思っている人も多いのですが、論文発表されることで、効果的な治療が臨床の場にフィードバックされ、日本の医療が発達する小さな礎になります。若い医師にとって、ベテラン医師の論文発表は臨床での生きた教材になります。

 一方、論文発表したことで同業者から厳しい指摘を受けることもあります

 医学の発達はものすごい速さで進んでいます。昨日までよいとされた治療法が今日には効果に乏しいと判明することもあります。論文発表で世界との差が開いていけば、日本の医療は独自の道を進むしかなくなります。

 海外からおいてきぼりにならないために、医師は論文を書く努力を怠ってはいけないのだと思います。ぼくも論文を書くための努力をしていますが、なかなか難しいのが現状です。

 もちろん、「ブログや新聞に原稿を書く暇があったら論文を書け」という意見もあると思いますが、僕一人が論文をせっせと書いたから日本人の論文数が増えるわけではありません。

 日本の医師が他の国の医師と同様に論文を書くためには何が必要なのか、社会全体で考える必要もあると思うのです。(産科医・ブロガー 田村正明)

田村先生も何か奥歯に物が挟まったようなことを書いているものだなと思うわけですが、もちろん責任追及のリスク云々ではなしに単に多忙のせいだとしても、こうした現象の意味というものは極めて大きなものがあるわけですよね。
ひと頃自動車会社のリコール隠しなんてことが社会問題になりましたが、もしもある日を境にして現場の修理工場から一切不具合の報告が上がってこないなんてことになったら社会がどうなるか、想像してみるとどうでしょうか。
リコールを隠すどころではなく不具合の存在すら知られず世の中でただ事故だけが発生していく、何より恐ろしいことはそうしたフィードバックがない以上、新型にモデルチェンジしようが相変わらず不具合はそのまま残ると思われるわけですから、何年経っても自動車の安全性などというものは何の進歩もないということになりかねないですよね。
それがどれほど恐ろしい社会をもたらすのかということが今ひとつピンと来ない方であっても、あるいはこういう話題であればもう少し身近なものとして感じられるのではないかと思うのですが、どうでしょうか?

8500万円支払いなどで和解 出産時医療ミス(2009年2月26日河北新報)

 出産時の医師らの不適切な対応で次女が脳性まひになり、4歳9カ月で死亡したとして、福島市の法科大学院研究生幕田智広さん(42)と妻の美江さん(42)が福島県立医大(福島市)に1億円の損害賠償を求めた訴訟は26日、医大が和解金8500万円を支払い、出産事故防止に向けた改善策を講じることで、仙台高裁で和解した。

 和解条項に盛り込まれた改善策は(1)妊婦やその夫から十分なインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を得る(2)切迫子宮破裂の兆候を認めた場合、速やかに緊急帝王切開を行う(3)原告の意見を聞いた上で、医師や看護師ら向けの要領や指針を半年以内に作成する―が内容。

 記者会見で、智広さんは「判決を得たかった気持ちもあるが、和解は医療の在り方を考えてもらう上で有意義だったと思う」と評価。美江さんも「前(再発防止)に進んでいくことができる。次女の死は無駄ではなかった」と語った。

福島医大病院取りやめ/帝王切開経験者の自然分娩(2009年8月25日福島民友ニュース)

 福島市の福島医大付属病院で1995(平成7)年、同市の幕田智広さん(43)と美江さん(42)夫妻の次女未風(みゅう)ちゃん=2000年3月に死亡=が仮死状態で生まれた件を受け、同病院が今年4月から、帝王切開の経験のある妊婦の自然分娩(ぶんべん)の取り扱いをやめていたことが24日、同医大などへの取材で分かった。
 幕田さん側が同医大に損害賠償を求めた訴訟が2月に和解、和解条件に同医大が再発防止策を講じることが盛り込まれていたため、これに対応する形で同医大が決定、幕田さんに同日報告した。

この症例、「福島医大VBAC事件」として非常に有名なものでして、「産科医療のこれから」さんでも過去に詳しく取り上げられた事例ですので、是非とも一度参照いただければと思います。

【参照】裁判は公正? ― VBACと30分ルールをめぐって 現場との乖離(産科医療のこれから)

お産というのは御存知の通り非常に力の入る大仕事で、それに耐えられるように子宮という臓器は非常に丈夫な筋肉の固まりで出来ています(焼き肉屋で言うコブクロというこりこりしたものが牛の子宮をさしますが、もっとも多くの場合あれも子宮本体ではなく脇についている卵管部分のことが多いようですね)。
帝王切開というものはこの子宮に切れ目を入れて胎児を取り出すという作業ですから、帝王切開を行った妊婦が今度は通常の経腟分娩(VBAC:帝王切開後経腟分娩)を行うと、出産時の負荷によってもしや子宮が裂けてしまう(子宮破裂)んじゃないかとは素人にも心配になってくるところです。
「産科医療のこれから」さんも詳しく解説していただいているように、実際かつては非常に危険なものであった時代もありますが、現代では安全性向上の研究もずいぶんと進んできているし、それぞれの合併症のリスクも具体的にこれくらいと明示できるようになっています。

一方でこのVBACというもの、むしろ現代においては医学的なリスク以上に訴訟リスクというものの方が大変なんじゃないかとも言えるような状況となっていて、実際この件に限らず行ったなら行ったで、また行わなかったなら行わなかったでよくトラブルとなるところではあります。
しかしいずれにしても大前提として「何かあっても対応できる施設で慎重に行うこと」ということは当然な話なのですが、これがそのあたりの緊急対応も出来かねる町医者レベルであればともかく、一般に「何かあったときに対応してくれるべき施設」である大学病院での話だと言うことが象徴的ですよね。
今の時代にあって大学病院でさえリスクマネージメントとして「危ないことは行わないようにしよう」という選択をしてしまう、今回のように社会的要求として対応を強いられるならば当然そういう結論になるしかないわけですが、では果たしてそれが患者にとっての利益になるのかということも考えなければならないでしょうね。

別に医療に限ったことではないと思いますが、今の時代どうもリスクというものを他人に丸投げするという行為が当たり前に行われるようになってきているのではないかと思います。
「リスクはあるけどやってみますか」という言葉の裏には、当然ながら一定の確率で何かが起こるリスクをあなたは背負い込まなければならないんですよという意味が込められているわけです。
しかしリスクには知らぬ顔をしてその行為によるベネフィットだけを手にすることが当たり前だと思っている、あるいはリスクに直面した場合に「こんなつもりじゃなかった、どうしてくれる」と承知したはずのリスクを相手に押し付けるという行為が続くようであれば、これはサービスを提供する側としても相手の利益ではなく、純粋にリスクを最小化することを目指して動くしかないですよね。

とりわけ病院の半数が赤字という時代、医療現場において今や訴訟や金銭と言ったリスクを抱え込むということは即破綻に直結する死活問題であって、たとえ気持ちの上で受けたくとも現実問題として無理という局面も多くなってきています。
利用者の側がリスクは嫌だと感じるように、提供者の側も同じことを考えているのだとすれば、医療現場における最もローリスクな結論は「危ないものには近づくな」という話になってくるわけですが、今の現場にまさしくそうした意識が滲透しつつあるように見えるのは何故か、負うべきリスクの放棄が結局誰の利益、不利益につながるのかを、利用者自身も知らなければなりません。

「“未管理妊婦”受け入れリスク」(2009年8月20日毎日放送VOICE)

「未管理妊婦」という言葉をご存知でしょうか。
妊娠してから1度も診察を受けないまま、いきなり出産の時を迎える妊婦のことなんですが、ほとんどの病院がトラブルを避けるため受け入れようとしません
そんな中、大阪にすべての妊婦を受け入れるという病院ができました。
そこでの密着取材を通じて、今の「妊婦」を取り巻く問題を取材しました。

~今年2月~

「がんばる時に、なるべく長くがんばろうか」
陣痛が始まって5時間が過ぎました。
「子宮内胎児死亡…。40週を越えているような…」
深刻な表情の医師。
保険に入ってない
「ソーシャルワーカーさんにも来てもらって」
当直日誌に残る、「未管理」・「自宅出産」の文字。
「育てる気がは?」
「ないと言ってる」
「授乳は?」
「していません」
すべての妊婦を受け入れる、日本初の画期的な診療を掲げる産婦人科。
しかし、日々妊婦と向き合う医師たちは、その異変を感じはじめています。

大阪府南部の貝塚市。
(略)
妊婦検診と婦人科は貝塚市民病院が、そしてお産はすべて市立泉佐野病院が担当します。
お産をひとつの施設に集約することで妊婦の受け入れ体制を強化し、産婦人科医の過重労働を少なくするのが狙いです。
(略)
公立病院から産婦人科がなくなりつつある中、地域医療を守るためにできた新たなシステムですが、今、妊婦の変化に危機感を抱いています。
『未払い』と『未管理』です。
(略)

<市立泉佐野病院・荻田和秀産婦人科部長>
「半分の方は泉州だけでなく、大阪市内から受け入れている」

その中で深刻なのが、一度も病院で検査を受けたことがない「未管理妊婦」の搬送です。
病院の取材を始めて2か月、その女性は運ばれてきました。

きのうの朝、破水なんだけど、本人はおしっこが出たと思っていたと」
「赤ちゃん?」
「2800。羊水は少ない。炎症が出ているのでしんどそう」

やって来たのは、30代の女性。
職場で破水し、別の病院から運ばれてきました。
陣痛がすでに始まっています。

女性は「未管理妊婦」。
妊娠何か月なのか、赤ちゃんの状態もまったくわかりません。

<医師>
「本人は妊娠はわからなかったと言っている。(結婚は)していない」

お腹の赤ちゃんと共に危険な状態で、すぐにお産の準備に入ります。
(略)
6時間後、男の子が産まれました。
しかし、泣き声が聞こえません。
仮死状態でした。
破水からしばらく放置していたため、汚染された羊水などを吸い込み、呼吸ができなかったようです。
(略)
なぜ、1度も検診を受けなかったのか。
その女性は、経済問題などをあげたといいます。

<医師>
「赤ちゃんは何も悪いわけじゃないし、次に同じことを繰り返さないでほしい」

普通に「おめでとう」と言えないお産は、医師も複雑です。
泉佐野病院には、こうした未管理の妊婦が去年だけでおよそ30人運ばれてきました。
なかには、分べんや入院費用を払わず赤ちゃんを置いて出て行く女性もいるといいます。
取材中、もう1人、自宅で出産したという未管理の妊婦が運ばれてきました。
お金がなく育児ができないという女性、病院の職員が面談を行います。

<職員>
「貯金は?」
<女性>
「全然なくて。働いてもいなかったので、全然ないんですけど。生活保護もらって、家を探そうかと」
<職員>
「生活保護は、働くことができない人がもらう制度」
<女性>
子どもとは別々でもいい。一緒にいると、子どもを見ていないといけないし、仕事も探せなくなる
<職員>
「自分に何ができるかを自覚してもらわないと。赤ちゃんが一番かわいそう」

結局、女性は赤ちゃんを乳児院に預けると言って退院していきました。
治療費の大半は親戚が支払ったといいます。
(略)
妊婦のたらい回しが社会問題となる中、すべての妊婦を受け入れる病院は今や貴重な存在です。
しかし、未管理妊婦の受け入れはリスクが大きい上、財政難に直面する公立病院にとって大きな負担です。

<市立泉佐野病院・荻田和秀産婦人科部長>
「トラブルに巻き込まれたくないという病院の気持ちもある程度は理解できる。1次救急のお産を受けられるのはある意味幸せ。大阪にも同じような拠点病院ができればいいが難しい部分もある。ただうちの施設が損をしているとは思わない」

「生まれ来る命を救う」のは、産婦人科医の使命。
今、その根本が揺らいでいます。

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2009年8月25日 (火)

社会保障政策マニフェスト、関係諸団体の評価は

いよいよこの週末に国政の選択が近づいて来まして、関係各者は非常に忙しい日々を送っているようですね。
しかしこのところは医療系団体なども各政党の公約に対してコメントを出してきていますが、見てみますとこの機に乗じて結構好きなことを言っている部分もあるようですね。
茨城県医師会が民主党支持を打ち出すなど、最近一部下部組織では自民党から民主党へと鞍替えしつつあるとも噂される日本医師会ではどういうことを言っているのかと、記事から拾ってみましょう。

【09衆院選】日本医師会 民主の公約、一部評価(2009年8月19日産経新聞)

 日本医師会の中川俊男常任理事は19日の記者会見で、自民、民主両党が衆院選マニフェスト(政権公約)で示している医療政策などについて、「社会保障費の削減は完全に撤回すべきだと考えているが、その点は民主党のほうが明確にしている」と述べ、民主党を一部評価する見解を示した。

 民主党が減税などの租税特別措置について「役割を終えたものは廃止」としている点に対しては「医療機関は公共性の高い業務を担っており、特別措置の延長を求める」と注文も付けた。

 また、中川理事は「民主党は書き過ぎ、自民党は書かな過ぎだ」と、自民党の踏み込み不足に苦言も呈した。

「自民党および民主党の政権公約に対する日本医師会の見解」(2009年8月21日日本医師会定例記者会見)

 中川俊男常任理事は、去る7月29日および8月5日の会見で、すでに自民党および民主党の政権公約に対する日本医師会の見解をそれぞれ述べているが、詳細版等が出そろったことを受けて、8月19日の定例記者会見で、あくまでも医療政策の立場から、両党の政権公約等を整理して示し、改めて日医の見解を公表した。

 まず、「社会保障費および医療費」については、社会保障費の年2,200億円削減を完全に撤回すべきであると重ねて主張し、「医療費は、先進諸国並みの水準に引き上げ、国民皆保険を堅持し、公的医療費の割合と給付割合は現行以上にすることを求める」とした。

 「診療報酬」については、両党が、救急や産科、入院に重点を置いていることに危惧を示し、国民、地域住民が安心できる安全で質の高い医療を提供するために、「地域医療の全体的な底上げが急務」であるとして、改めて、「診療報酬の大幅かつ全体的な引き上げを求める」と強調した。

 「レセプトオンライン化」については、自らオンライン請求することが当面困難な医療機関等に対して十分な配慮を求めた。さらに、患者情報のセキュリティー強化と、医療機関の負担への配慮に期待したいと述べた。

 「医師不足・偏在」に関しては、「日医が行った多角的な検討結果を踏まえると、医師数は中長期的に1.1~1.2倍にすることが妥当である。その前提条件として、1) 財源の確保、2) 医学部教育から臨床研修までの一貫した教育制度の確立、3) 医師養成数の継続的な見直しが必要である」と主張した。また、適正な医師養成数については、「結論が出ていない。医学部新設は慎重に検討すべき」とも述べた。

 「高齢者医療」については、両党とも、外来患者一部負担割合の引き下げに触れていることは評価したいとしたうえで、「高齢者医療は、保障の理念の下、医療費の9割を公費負担として、手厚く支えるべき。患者一部負担については、高齢者のみならず、若年世代の負担割合の軽減も必要である。また、一般医療保険については、まず被用者保険者間で保険料率を公平化し、そこで確保された財源をもって、国保・被用者保険間の財政調整を行うことを提案する」との考えを示した。

 「介護報酬」については、介護報酬の大幅な引き上げが必要であるが、利用者負担の引き上げにつながらないよう配慮を求めるとした。

 「療養病床」については、「日医の試算によると、2012年に必要な医療療養病床は26万床であり、また2025年には、医療療養病床34万床、新たな介護施設等18万人分が必要である」として、ぜひ必要な病床数を確保して欲しいと要望した。

 同常任理事は、その他、「外来管理加算」「社会保障番号・カード」「包括払い制度」「勤務医対策」「医療関係職種の業務分担」「医療提供体制」「消費税」「租税特別措置法」等の項目に触れたうえで、地域医療を再生しなければならないのは当然のことであるが、間違った方向に向かった場合、さらに医療崩壊が進むこともあり得ることから、今後も注視していきたいと結んだ。

ちょうど民主がマニフェストを書き足し書き足ししていたということもありますが、それにしても一応医療業界を代表する組織と見なされている日医だろうに結局何が言いたいんだ中川さんは、肝心なところで具体性がない話じゃないかと多くの人間が不満に感じる内容ではないでしょうか。
政治的に見れば過去の経緯から自民党を支持しておきたいが民主党と決別する気にもなれずやや迷いが出ているというところなんでしょうが、本音の部分で地域開業医優先を主張したい医師会として医療集約化を行う自民党支持一辺倒もどうなのかですよね。
自民党支持団体としては既に圧力団体としての政治力低下が著しいとも言われて久しい医師会ですが、さりとて民主に鞍替えと言ってもしがらみが邪魔しそうで、上層部としても頭を抱えているところではないでしょうか。

しかしマスコミの記事だけ見ていますとこの方達は銭金の話しか興味がないのかとも誤解?されかねないような内容ではあると思うのですが、今の時代「俺たちは特別なんだから金を出せ」と言ったところで納税者の多数派を占める非医療関係者がハイそうですかとお金を出してくれるわけもないわけで、こういう書き方をされてしまう日医というのも徳がないなとは思うところです。
金を出せなら出せで必要な金額は幾ら、その使い道はこれこれで結果として医療はこうなりますと言うビジョンを形ばかりでも示す責任があるはずですが、早い話が医療が大変だから金を出せと言いつつ医者の平均年収が今の○倍になれば離職者はいなくなりますよといったデータを彼らが持っているとも思えないわけですよね(そしておそらく、そんな単純な話ではないとも思うわけですが)。
リサーチとか得意そうには見えない医師会幹部の言動を見ていますとそうした話を出来る人材もいないのかもですが、一応世間からは医者の業界団体として見られているのですから、「俺たち医者の総意はこうなんです」とちょっとは胸を張って示せるものも用意しておかないとまずいんじゃないですか。
有権者に対しても為政者に対しても日医のアプローチのやり方というのは非常に稚拙に見えてしまうわけで、これだったら高い会費をむしられ続ける末端会員の皆さんもさぞ浮かばれないことだろうなとご同情申し上げるべきところでしょうか。

一方、少し搦め手からの話ではありますが、こちら国公立大学の医学部長会議からも各政党宛に要望書というものが出ているのですが、この際とばかりに何やらずいぶんと面白いことを言いだしているようですので紹介しておきましょう。

国立大学医学部長会議が自・民・公に要請書(2009年8月22日ロハス・メディカル)

 全国42の国立大学医学部首脳でつくる国立大学医学部長会議が常置委員会名で21日、自民、民主、公明の3党に要望書を出した。医師数増、国立大学医学部定員増、医学部教職員増、大学設置基準見直しと高等教育費増、大学病院の借入金解消などを要望している。(川口恭)

 要望の項目は以下の通り。
1)人口あたり医師数を国際水準まで引き上げる
  国立大学医学部入学定員を計画的に増員する
  医学部教育の質を維持するため学生あたりの医学部教職員数を国際水準まで増員
  定員増に見合った教育施設の整備、教育経費の措置をする
  大学設置基準を見直し、高等教育費を国際水準に増額する
2)メディカルスクール構想に反対
3)医学部に起点を置く研究医養成のための具体的施策を直ちに進める
4)国立大学全体で1兆30億円ある大学病院の借入金解消と運営費交付金の増額
5)低医療費政策を改め医療費を国際水準まで引き上げる
6)上の項目すべての実施。一部のみの実施はむしろ事態を悪化させる可能性がある

 要望書の提出・送付後に記者会見した常置委員長の安田和則・北海道大学大学院医学研究科長は、その趣旨について以下のように説明した。
「国立大学医学長会議は過去にも何度も政府に対して提言を行ってきた。しかし昨年や今年の施策を見ると医学部定員増のみが行われ教育の質の維持への措置はなされておらず、地域枠の導入で問題が複雑化するなど、提言の本質を理解していないのでないかと思わざるを得ない。一方で国政選挙に向けて各党からもマニフェストが出たが、どのマニフェストにも教育の質を維持するための措置を明言していない。このままでは質の高い医学教育は一気に瓦解し医療崩壊がさらに進むことになる。これを座視していることはできない、と今回提言を行い、その理解と実施を要望する」

 上にも述べられているように、要望に先立って「大学医学部の教育病院のあり方に関する検討委員会」で各党のマニフェスト内容を検討したという。そして特に自民党と民主党に関しては、評価も公表した。

国立大学という非常に限定的な立場に立っての提言ではあるのですが、ここではいくつか興味深いことを言っていますよね。
大学定員を増やし教職員数も増やし、その為の予算もつけるという一方で、メディカルスクールに関しては「最終的に育成される医師の質を考えることなく、医師数の増加のみを安易に企図するもの」と批判する立場に立っているようです。
そしてわざわざ「一部のみの実施はむしろ事態を悪化させる可能性がある」と断り書きを入れているのは、人が足りない、医者が足りないと叫び続けた挙げ句、いつの間にか医者を増やせば全てが解決するとばかりに医師数増>>医療費増という低待遇政策を容認する旗手に祭り上げられているメディカルスクール推進派の某大先生などを念頭に置いてのことなのでしょうか(苦笑)。

しかし一応彼らも地域枠がヤバいという認識はあったのか(笑)と思わされるところですが、失礼ながらこういうことを言うほどに過去の国立大学の医学部教育が優れていたと胸を張って言えるという認識なのでしょうか?
国試予備校などと呼ばれるような一部大学は論外としても、到底時代に適合しているようにも思えない旧態依然の講座システムにろくに論文も書かず講義も出来ないような万年講師の先生が巣くっている一方、日夜診療と研究の両輪で活躍され教育にも熱意のある先生があり得ない待遇で飼い殺しにされていたりする。
そもそも教育という行為に対する評価が存在しない以上教官もやる気がなくなるのは仕方ないところですが、教育を云々するならまずそうした歪みの是正ということを自ら進める意思を示されてもいいと思うのですが。

スタッフ増と言いますが、医学部の学生教育などほとんどが座学であって100人程度を一人で相手するわけであって、それすらもいざとなれば外部講師による講義で十分という見方もありますし、最も人手の必要と思われる臨床実習などそもそも大学病院でやる必要すらないという考え方もあるわけで、そうすると何だ、単に新設ポストの要求かとも勘ぐられかねないところですよ。
ぶっちゃけ全国的に見て一番多くの医師免許所持者が遊んでいるのが大学なんですから、大学側は量的増大よりもむしろこの際に質的向上を図る一方、不要な部分をばっさり切り落として非効率な運営を改善するなど大胆な改革を行っていくことはもはや社会的責務とも思われるのですがね。

さて話は変わって、日本病院会など11団体でつくる「日本病院団体協議会(日病協)」もコメントを発表しています。
これもゆるい組織の性格上相変わらずと言いますかどっちつかずとも言えますが、案外現場の感覚としてはこの辺りが本音に近いということなのかも知れません(苦笑)。

自民は「不信」、民主は「不安」-日病協の小山議長(2009年8月13日CBニュース)

日本病院団体協議会(日病協)の小山信彌議長(日本私立医科大学協会病院部会担当理事)は8月12日、代表者会議後の記者会見で、自民、民主両党のマニフェストに対する意見を求められ、現時点では自民党に対しては「不信感」、民主党に対しては「不安感」があると答えた。

小山議長は、自民党に関しては「今までのいろいろな経緯から『本当にやってくれるのか』という不信感を持っているのは事実」とした。
また民主党に対しては、「非常に『耳障りのいい』ことをいっているが、『本当にやってくれるのかな。できるのかな』という不安的な要素が少しある」と述べた。
その上で「民主党なども中身を見ていくと、だんだん実質的になってきたかなと思うので、もう一回、(各党のマニフェストの)中身を見てみたいと思っている」とした。

小山議長はまた、「(12日に開かれた代表者会議の)議論の中では各党のマニフェストに対し、意見集約を行うような議論はされていない」とし、日病協全体として何らかの意思表明は行わない方針を示唆した。

これは日病協に限らずということなのでしょうが、どの政党が主導権を握ってもどうやら劇的な医療現場の改善は見込めない、実効性の欠如という点では大差はないというある種のあきらめにも似た感情が医療関係者の間にはまん延しているのかという気もしてきます。
こうした感覚は別に医療系団体に限った話でもないようで、各種のバックグラウンドを有する8団体が採点した自民、民主両党マニフェストの社会保障政策に対する採点結果でもいずれも50点前後と、決して高い点数がついているわけでもないのですね。
逆に医療関係者が悲観しているのに部外者が素晴らしい政策!これで日本の医療は完璧だ!などと激賞しているということであればそれはそれで怖いものがあったでしょうが、ある意味医療政策ということに関しては国民の皆さんもそれなりに冷静に見ているということなのかも知れません。

自民・民主のマニフェストを8団体が採点―検証大会(2009年8月10日CBニュース)

 8月30日投票の衆院選を前に、21世紀臨調が8月9日に開催した「政権公約検証大会」で、経済同友会やPHP総合研究所など8団体が、自由民主党と民主党のマニフェストを採点し、見解を述べた。8団体のうち、医療や介護を含めた「社会保障」について、自民党により高い点数を付けたのは2団体にとどまり、民主党は5団体だった。1団体は同点だった。

 8団体は、形式要件や内容に基づき「政権公約の総合評価」を100点満点で採点したほか、「政権公約の政策分野別評価」の10分野の1つとして、「少子高齢化への対応(年金・医療・介護等の社会保障制度改革)」についても採点した=表=。

 企業経営者が個人として参加している経済同友会(桜井正光代表幹事)は、自民党の社会保障政策を50点満点中10点としたのに対し、民主党を20点とした。両党のマニフェストがともに「党が考えるあるべき社会保障の全体像が、具体的に示されていない」と指摘。民主党に対しては「少子化対策の各施策の実施における時間軸が示されており、不十分ながら、一応の優先順位が提示されている点は評価できる」とした。

 1989年に結成された中央労働団体で、民主党の支持基盤の日本労働組合総連合会(連合、高木剛会長)は、自民党を100点満点中40点、民主党を70点とした。自民党が「将来にわたって国民にとって安心、信頼できるものになるよう、社会保障制度の一体見直しを進める」としていることについて、「具体的な内容がない」と指摘。民主党が「自公政権が続けてきた社会保障費2200億円の削減方針は撤回する」と明記したことを評価した。

 20-40歳の青年であれば個人の意思で入会でき、麻生太郎首相も会頭を務めたことがある日本青年会議所(安里繁信会頭)は、自民党を10点満点中6.4点、民主党を5点とした。自民党が「今後3年間で、特養、老健およびグループホームの約16万人分の整備を目標に取り組む」としていることについて、「具体的指数が盛り込まれたことは評価できる」とした。民主党については、「理念が最も良く反映されている」との認識を示した。

 松下幸之助氏を創設者とする民間シンクタンクのPHP総合研究所(江口克彦代表取締役社長)は、自民党を100点満点で62点、民主党を52点とした。民主党に対しては、「子どもや高齢者へのバラマキ政策が目立つ」として、「社会保障すべてを政府の役割とするのは疑問」とする一方、自民党に対しても「国民にある程度の負担を求める『中福祉・中負担』を掲げながらも、バラマキ色が強い」とした。

 非営利の言論機関である言論NPO(工藤泰志代表)は、自民党に400点満点中141点、民主党に146点を付けた。自民党が介護報酬の3%アップなどを盛り込んだことを評価しながらも、「医師不足に対して明確なビジョンと方針を明らかにしたわけではない」と指摘。民主党は、介護分野で「介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる」としていること以外に「明確な目標はない」としたが、医師不足対策として医学部定員の1.5倍増という数値目標を設定したことなどを評価した。

 三井住友フィナンシャルグループ傘下のシンクタンクである日本総合研究所(木本泰行社長)は、自民党のマニフェストは「国民の信頼を取り戻せる社会保障制度全体のグランドデザインが見えない」として、100点満点中51点とした。一方、民主党マニフェストは「具体的制度設計は未知数で、その傾向は医療に顕著」と指摘し、100点満点中52点とした。

 非営利独立・政策シンクタンクの構想日本(加藤秀樹代表)は、自民党を100点満点中41点、民主党を80点とした。自民党が、介護報酬の3%アップ改定や、介護職員の給料の月額1.5万円引き上げを明記したことを評価しながらも、高額療養制度の見直しに対しては「数値目標や工程については明記されなかった」とした。一方、民主党が、介護労働者の賃金の月額4万円引き上げや、「療養病床削減計画」の凍結を明記したことを評価する一方、「被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保健として一元的運用を図る」としていることに対し、「工程は明記されなかった」とした。

 研究者集団のチーム・ポリシーウォッチ(竹中平蔵代表)は、自民党マニフェストを「年金や医療はともかく、子育て支援については民主党に追随したバラマキという感は免れない」とし、100点満点中45点を付けた。一方、民主党マニフェストは「医療については、効率化という発想が欠如している」とし、自民党と同じ 45点を付けた。

 得点率の平均は、自民党が44.8%、民主党が53.3%と、いずれも5割前後にとどまった。減点理由としては、財源が不明確との指摘が、自民党に4団体、民主党に3団体と目立った。

ところで医師会に対抗すべき第二の団体とも目される「全国医師連盟(全医連)」は見たところ各党に質問状を出したきりではっきりした団体としてのコメントは出していないようなのですが、これはマニフェストに関しては各員自主的に判断すべしということなのでしょうか。
医師会に比肩するには今ひとつ知名度を(勢力も)高ね損ねている同団体としては、こういう機会にでかい話でもぶち上げるなりして社会的認知を高めていくべきだと思うのですが、国政選挙という下手すれば内部分裂を招きかねない対象に意見を示すほどには、まだ組織として成熟しきっていないということなんでしょうか(噂レベルでは色々と聞くところですが…)。

同団体の系列組織であって先頃その結成を紹介しました「医師の労働環境改善を目指す」団体である「全国医師ユニオン」などはちょうど先日代表のインタビューが出ていましたが、まず何を置いても医者の待遇改善をという話は非常に率直なものでいっそ清々しいほどですよね。

医師の労働環境を改善し、医療崩壊を打開したい-植山直人全国医師ユニオン代表インタビュー(2009年8月12日ロハス・メディカル)

この会長の先生がまた医学部を出てから経済学を修め、現在は老健施設長というある意味勝ち組の代表格みたいな人生を歩んでいらっしゃる方なんですが、医療系諸団体トップも天下国家百年の大計を論じるばかりでなく、こういう現場の率直な欲望をストレートに出すようなことを言ってくれれば末端会員からの支持も得られるかも知れませんけれども(苦笑)。
さて、いずれの政党が勝つにしても、結局のところ現場がどうなっていくのかということが問題となってくるわけですから、むしろ選挙後の状況変化にこそ要注目ということだと思いますが、良い方向にしろ悪い方向にしろこれを機会に大きく変わってくれるようだと色々と面白いんじゃないかと期待しているんですけどね。

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2009年8月24日 (月)

新型インフルエンザ、夏なのに流行期入り宣言

なんだそうですが、総選挙前でネタも多いこの時期にあっという間に各新聞の一面に復帰してしまいましたね(まだトップとまではいかないようですが)。
おかげさまでネタが豊富になっていいとも言えるのですが、どうも例によって未だ迷走中の部分も少なからずあるようで、ちょうど総選挙の結果次第で省庁トップを始め大幅な異動もありかねないという状況でこれは運用面でも大丈夫なのかと心配になってくるところではあります。
さらにこの時期に政府としてはあまりあって欲しくない(だろう)決断も迫られそうな勢いなんですが、ともあれ、まずは表題の件について記事を引用してみましょう。

新型インフル、1週間で11万人感染 感染研推計、「流行期」入り(2009年8月21日日経ネット)

 国立感染症研究所は21日、10~16日までの1週間で新たにインフルエンザに感染して医療機関を受診した患者数が全国で約11万人に達したとする推計を発表した。ほとんどが新型に感染しているとみている。約5千の定点観測の医療機関を受診した患者数は1医療機関当たり1.69人(患者数は計7750 人)で前週の0.99人から増加、流行期レベル(1.00人)を超えた。

インフルエンザ流行入り=夏に異例の感染拡大(2009年8月21日時事ドットコム)

 厚生労働省は21日、新型インフルエンザが全国的に流行入りしたと発表した。先週1週間で約11万人が感染したとみられ、夏休み後に学校が再開すればさらに広がる恐れがあるという。インフルエンザが夏に流行するのは、調査を始めた1981年以降初めて。
 同省は「大半の患者は軽症で済むが、持病のある人や妊婦は一部重篤化する可能性がある」とし、重症化リスクの高い人は早期に医療機関を受診するよう呼び掛けた。
 国立感染症研究所によると、インフルエンザ感染者は7月上旬から6週連続で増加。10日から16日までの1週間に、国に患者数を報告する全国約5000カ所の定点医療機関を受診した感染者は7750人で、ほとんどが新型とみられる。
 1カ所当たりでは前週の0.99人から1.69人に増加し、流行入りと判断される1人を超えた。
 季節性インフルエンザは例年11~12月に流行入りし、翌年1~2月に患者数が最大に達する。感染者は1シーズンで1000万人程度とみられており、ピーク時の1定点当たりの報告数(1週間)は少ない年で10人、多い年で50人程度となる。今回の報告数は例年の冬のピーク時よりは少ないが、今後さらに増加するとみられている。
 都道府県別では沖縄(29.60人)、奈良(2.96人)、滋賀(2.48人)、福島(2.45人)、東京(2.14人)、大阪(2.14人)、茨城(2.11人)、高知(2.10人)、埼玉(1.91人)、長野(1.83人)で感染が広がっている。

まだまだ暑さ厳しいこの時期の流行というものがどういう結果をもたらすのかはまだ判りかねるところがありますが、今のところ最大流行時よりは控えめということでもあり、現場のキャパシティーは何とかなっているという気配なのでしょうか。
しかし一方では院内感染の話題もあちこちから出てきていますが、もう少し感染リスクに対して医療従事者も慎重になっていかなければならないでしょうね。

新型インフル、医師ら10人集団感染 国立京都医療センター/京都(2009年8月22日京都新聞)

 京都市は22日、国立病院機構京都医療センター(伏見区)の医師と看護師、事務職員の計10人が新型インフルエンザに集団感染したと発表した。

 市によると、感染したのは21~45歳の医師8人、看護師1人、事務職員1人。全員快方に向かっている。14日にインフルエンザ患者を診察した医師2名のうち1名がPCR(詳細)検査で感染が確定し、21日までに10人の感染が分かった。
 センターには約560人が入院している。感染した場合、重症化の可能性がある一部の患者には予防のためタミフルを投与した。患者に感染症状はないという。

まあしかし、普通に考えてスタッフだけ選んで感染するというのも考えにくいところではあるんですが、実際にスタッフだけ感染していたということであればこれは感染経路がどういうことになっているのかには興味がありますよね。
患者を前にする診療の場では用心しているような人でも医局や詰め所、控え室では無防備になっているということは結構ありそうですから、一人が医局でゴホゴホやりはじめるとあっという間にスタッフ全滅ということにもなりかねません。
先行して院内感染を発症した施設においても独自の対策をとっているようですが、一口に疑わしきは隔離、休業と言ってもどこも余裕のない運用をしているわけですから、より多くのスタッフが一斉に罹患した場合にも同様の処置がとれるのかどうかは考えておかなければならないように思います。

集団インフルの大田原日赤 沈静化へ早期発見徹底 /栃木(2009年8月21日下野新聞)

 外科の看護師を中心に計11人が新型インフルエンザを発症した大田原赤十字病院(宮原保之院長)。感染拡大防止策が奏功し、発生から12日間で事態は終息した。発症した職員の早期発見や基礎疾患を持つ患者への対応など、新たな新型インフルエンザ対策の必要性が浮き彫りとなった。

 同院外科病棟では7日から11日にかけ、医師や患者ら計11人に感染が疑われる症状が表れた。遺伝子検査で2人の感染を確認。発症者のうち8人が外科の看護師だったため、ナースステーションで感染が広がった可能性が高いとみられている。

 同院によると、職員が不調を訴えたのは症状を感じてから2、3時間後。院内感染対策委員長の阿久津郁夫副院長は、「(感染拡大リスクを減らすため)症状を感じた職員がすぐ訴え出るよう周知すべきだった」と悔やむ。沈静化後、各科に早期発見を周知した。

 同院は発生後にさまざまな感染拡大防止策を講じた。立案の中心を担ったのは感染症対策の専門医ら。外科病棟の入転院を禁止し、発症した職員を1週間の就業停止に。発症者との濃厚接触者には抗インフルエンザ薬を予防投与した。

 感染拡大防止策が奏功し、18日には発症者が全員回復。外科病棟での規制を解除した。阿久津副院長は「専門医の存在や昨年策定した対応マニュアルが役立った」と分析する一方、外科病棟での緊急性が低い手術の延期措置などは「新たにマニュアルに加える必要がある」とした。

 県内ではこれまで重症感染者が出ていないが、沖縄県や愛知県で感染者の死亡例が出ている。死者はいずれも腎臓や血液に基礎疾患(持病等)を抱えていた。阿久津副院長は「幸い軽症者だけだったが、基礎疾患を抱える患者がいたら、と考えると怖い」と打ち明ける。

 同院は重症化しやすい傾向がある基礎疾患患者への対応も視野に入れ始めた。病状が安定している透析患者や呼吸器疾患患者らには薬を長期間処方し、通院回数を減らす診療体制を検討している。

 院内集団感染が疑われる事態で同院は外科病棟を事実上閉鎖する状況に陥った。だが阿久津副院長は「今後の対策に役立った部分も大きい」と振り返る。「飛沫感染するインフルエンザには、手の消毒やうがいなど基本対策が大切。対策を立てる上で役立った専門医の育成は、どこの医療機関でもできること」と総括した。

さて、例によってマスコミからは「動きが遅い!どうなっているんだ!」とお叱りを受けてばかりの(笑)政府厚労省ですが、対策を講じる上で現時点でも既に幾つかの問題点が明らかになってきています。

まず一つには先年来危ないの危なくないのと言いながら結局はっきりした結論が出ていない小児への抗ウイルス薬投与と異常行動の問題に絡む話ですが、特に新型の場合若年者に感染リスクが高いなんてことを言われている現状で、果たしてどうなんだということですよね。
先日以来小児のインフルエンザ脳症の症例が相次いで報告されるようになってきている一方、新型は最初軽症に見えても途中から急に増悪してしまうと言われるくらいですから、はたして抗ウイルス薬を積極投与すべきなのかどうかは判断に迷う臨床家の先生方も多いのではないかと思います。

小児科領域ではやはり危険性に目が行くということなのか、新型侮るべからずという論調からいずれ使用しましょうという流れになりそうですが、使うにしても既に耐性株出現が確認されているタミフルがいいのか、それともタミフル以上に異常行動が出るとも噂されるリレンザがいいのか、はたまた他剤を用いるべきなのか迷わしいところですよね。
その場合にもある程度学会なりが指針を出しておかないと、また後になって勝手な判断でこんな危ない薬を使ってと訴訟沙汰になりかねません時代ではありますから、早いところこのあたりの見解もまとめて公表していただく必要があると思います。
参考までに静岡県薬剤師会のHPからのリンクを張っておきますが、抗ウイルス薬を使用せずとも一定確率で異常行動は起こるわけですから、若年罹患者は全例要注意と考えて対応しておくという必要はあるでしょうね。

(参考)新型インフル、10歳代へのタミフル処方---現状では最も有効な治療法 自宅療養時は一人にさせない(静岡県薬剤師会HP)

インフル脳症の注意呼び掛けを―小児科学会が厚労省に要望(2009年8月20日CBニュース)

 日本小児科学会(横田俊平会長)はこのほど、厚生労働省にインフルエンザ脳症に関する要望書を提出した。新型インフルエンザによる小児のインフルエンザ脳症が報告されたことに関連して、秋や冬に脳症の発症数の増加が危惧されることや、解熱剤は必ずかかりつけ医に相談して用いることを国民に呼び掛けるよう求めている。

 国民への呼び掛けを要望したのは、▽「新型インフルエンザは軽症」との認識が拡がっているが、脳症重症例が国内で発生した▽夏にもかかわらず、小児の脳症例の報告が続いている▽秋・冬にかけて、幼児を中心に脳症の発症数の増加が危惧される▽意味不明の言動がみられるなどインフルエンザ脳症の早期症状を確認したら、医療機関を受診する▽ボルタレンなどの強い解熱剤は脳症の予後を悪化させるため、解熱剤は必ずかかりつけ医に相談して用いる―ことの5項目。

 また、臨床医に対し、「インフルエンザ脳症は、5類全数届出疾患『急性脳炎』に含まれるものとして届け出を行うこと」を再喚起することも求めた。

さてもう一つ、先日来お伝えしているように基礎疾患のある人間や、とりわけ妊婦がハイリスクであるという話や、海外からはメタボの人がヤバいんじゃないかなんて何とも身につまされる話も出てきている一方で、人から鳥への感染も確認されたと言うことですからまたぞろ強毒株出現の懸念も出てくるわけですよね。
国内でも早ければこの9月からワクチン供給開始という話が出ていますが、早くも流行入りということになりますと自前の生産分だけでは足りず、国外からの輸入も検討されているということです。
当然製法もロットも異なるわけですから効果が同じという保証はありませんし、副作用も違いが出てくる可能性があるわけですから、結局仕入れるにしろ放出するにしろ膨大な数に上るワクチンを質的にも量的にも誰がどうやって管理するのかという議論が必要になってきます。

まず入ってくる側の問題ですが、これは国が一度全量を管理して配布するという形になりそうですが、そうなりますとタミフル出荷のようにまたぞろ何か不手際でも起こって遅れでも出るんじゃないかと考えてしまうのは毒されすぎなんでしょうか(苦笑)。

<新型インフル>国がワクチンを一括買い上げへ(2009年8月21日毎日新聞)

 厚生労働省は21日、ワクチンメーカーから新型インフルエンザワクチンを一括購入する方針を固めた。

 国は現在、新型のワクチンは、妊婦など重症化の恐れが高い人への優先接種を検討している。年内に確保できるのは最大1700万人分で不足の恐れがある。このため、リスクの高い人に確実に接種するには国による管理が必要と判断した。一括購入の財源や、接種時に国民が負担するかどうかは今後詰める。

 毎年流行する季節性インフルエンザのワクチンは、医療機関が購入している。【江口一】

新型ワクチン輸入、「製造業者と交渉中」―厚労省(2009年8月21日CBニュース)

 民主党は8月21日、東京都内の党本部で「新型インフルエンザ対策本部」の第10回会合を開き、感染状況や政府の対応について、内閣官房、厚生労働省、文部科学省の各担当者からヒアリングを行った。この中で、厚労省側はワクチンの輸入について、「海外の製造業者と交渉中」としたが、確保できる数量の見通しなどは明らかにしなかった。また、購入の際の「国の一括購入」の可能性にも言及した。

 ワクチンの供給量について、舛添要一厚労相は約5300万人を接種対象者にしたい考えを示しており、当初、国内で約2500万人分を製造できると試算していた。しかし、新型ワクチンの増殖性が想定よりも低かったため、12月末まで製造しても生産量は1300-1700万人分になると下方修正した。このため、大部分を海外からの輸入に頼らざるを得ない状況となっている。ただ、ワクチンを輸入する場合、▽国内品との有効・安全性が異なる可能性がある▽国内品より供給時期が遅れる―などの問題がある。
 厚労省の担当者は製造業者について、「海外で承認が取れていない状況だが、日本に輸出するための量をある程度確保しつつ、承認を取得する努力をしている」と述べ、舛添厚労相の方針に基づいた量を確保するため、「現在、交渉中」とした。

 一方、インフルエンザの感染で高齢者が併発しやすい肺炎を予防する肺炎球菌ワクチンとの併用について、厚労省結核感染症課の福島靖正課長は、「肺炎球菌ワクチンについては、国内で承認されているものは非常に副作用が強い。患者の重症化や死亡のリスクを比較、考慮した上で、もう少し検討したい」と述べた。

ちなみに記事中にも出ております肺炎球菌ワクチンとの併用云々の話につきましては先日も京都の小児科医さんよりご紹介いただきましたこちら中日新聞の記事をご参照いただければと思います。

(参考)肺炎球菌ワクチン接種を 『死亡や重症化を抑制』/静岡(2009年8月20日中日新聞)

しかし素朴な疑問として福島課長の言う「肺炎球菌ワクチンについては、国内で承認されているものは非常に副作用が強い」とはどういうことでしょうかね?
すでに接種した人間にもう一度やると副反応が強く出るといった話はともかくとして、格別臨床的に副作用が強いワクチンという噂も聞きませんが、わざわざ「非常に強い」と釘を刺すようなコメントを入れているあたり、発言の裏に何かしらの意図が隠されているということなのでしょうか。
もともと国内では一生に一回だけとひどく制限の強い形でしぶしぶ使用を認めたような経緯があるだけに、厚労省としても本音の部分ではこれを契機に肺炎球菌ワクチンの使用量激増!なんてことになったら何かしら困るということなのか…なんてことは考えすぎでしょうかね。

さて、出す方の話題として相変わらず議論がまとまっていないのが、結局足りそうもないワクチンをまず誰に使うのがよいかということです。
ひと頃の強毒型を想定した新型インフルエンザの議論においては「まず医療関係者や警察、消防といった、不可欠な社会的インフラを担う人々から」という結論でまとまっていたように記憶するのですが、どうも毒性が想像していたよりだいぶ異なると言うことで話がまた迷走しているようなんですね。

新型インフルワクチン不足 大流行の時期に間に合わず?(2009年8月21日J-CASTニュース)

 これから秋冬にかけて、新型インフルエンザの大流行が心配されている中で、ワクチン不足が心配されている。日本で広く出回るのは11~12月になりそうだが、このころ新型インフルは流行の最中だと考えられ、予防には間に合いそうにない。さらに、ワクチンの数が足りないとなると今度は、誰にワクチンを接種するかも問題になってきた。

■ワクチンの数が足りず、接種の優先順位が問題に
(略)
 ワクチンの数が現実的に足りないとなると今度は、誰にワクチンを接種するかも問題となる。厚労省では8月20日、意見交換会を開き、ワクチン接種の優先順位について検討した。意見交換会に出席した専門家らの間では、医療従事者や持病のある人、妊婦、幼児への優先を求める声が多かったという。

 これに対して、新型インフルエンザに詳しい、けいゆう病院(神奈川県横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は、「(ワクチンは)世界的にいっても十分な数は間に合わないだろう」と指摘する。メーカーの生産能力の上限もあるが、安全性や有効性において万能というわけではない。頼りすぎるのもよくないだろう、とする。輸入するにしても、世界中で必要としているため、日本だけが買うわけにもいかない事情もある。

 くわえて、ワクチンが増産され、日本で広く出回るのは11~12月になりそうだ、とする。その頃には、新型インフルエンザは流行の最中だと考えられ、予防には少し遅い。
(略)

新型インフルワクチンの優先接種、誰を対象に?―厚労省が意見交換会(2009年8月20日CBニュース)

 厚生労働省は8月20日、「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」を開いた。新型インフルエンザワクチンの生産量が限られている中、誰に優先的に接種するかなどについて意見交換を行うことが目的。重症者や死者を減らすため、基礎疾患のあるハイリスク者や医療従事者などを優先接種の対象とすべきとの意見が出たが、患者数の多い若年者への接種の重要性を強調する参加者もいた。また、ワクチンの同時接種を積極的に進めるべきとの意見が相次いだ。

 上田博三健康局長は冒頭のあいさつで、国内の新型インフルの状況について、患者数の伸びが流行レベルに迫っており、重症者や死者も出ていると指摘。既に国内外のメーカーでワクチンの生産が進められているが、生産量には限りがあるため、「誰から接種していくかが大きな課題」と語った。
 その上で、政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会や予防接種に関する検討会の委員、病院関係者、医療倫理の専門家、患者団体の代表者などに意見を求めた。

■「ハイリスク者や医療従事者をターゲットに」
 医療倫理の専門家である東大医学系研究科の赤林朗教授は、「現時点では、接種目的を重症化予防と死者を減らすこととするのが最も妥当ではないか」と述べた。さらに、この目的を達成するためには、抵抗力の低い人と、こうした人に接触する機会の多い一部の医療従事者への優先接種が必要との考えを示した。
 政府の専門家諮問委員会の委員長である自治医科大の尾身茂教授も、「個人的には、死亡者をなるべく減らすことを最優先にすべきだと思う」と述べ、▽糖尿病患者などのハイリスク者▽重症化した人のケアにかかわる医療従事者▽ハイリスク者への接触機会が多い人―を優先接種のターゲットにすべきと語った。
 上田局長も、厚労省が6月19日に出した新型インフルエンザ対策の指針で、重症化防止を目標に掲げていると述べた。
 一方、日本患者会情報センターの栗山真理子代表は、ハイリスク者自身が、必ずしも「一番に接種をと願っているわけではない」と指摘。ハイリスク者の多くが不安を抱えているが、優先接種を強く主張するつもりはないと語った。ただ、「どこに正しい情報があり、それをどう使えばいいか。どうやって身を守っていけばいいか情報がほしい」と述べた。

 このほか赤林教授は、今回の新型インフルは当初想定されていた強毒型の鳥インフルエンザとは異なるため、「次世代の社会の継続」を目的として接種対象を設定するのは不適切との見方を示し、社会の継続を理由に子どもを優先接種のターゲットとするのは妥当ではないとした。また上田局長は、鳥インフルを想定した対策では「社会機能の維持」を重視していたが、今回の新型インフルの重症度は「季節性インフルエンザと同等程度」だとし、「社会機能の維持」は、接種の対象を検討する指標にはならないとした。

■「若年者への接種を」「感染拡大防止も重要」
 国立病院機構東京病院の永井英明・外来診療部長は、新型インフルの患者に占める若年者の割合が「圧倒的に多い」と強調し、優先的に接種すべきとの考えを示した。さらに、季節性インフルワクチンの接種が小学校で任意接種になってから「高齢者の死亡が増えた」と述べ、若年者への接種により感染拡大を減らすことが重要だと指摘。若年者の間で感染が拡大すると、若年者の入院でベッドが埋まり、重症化したハイリスク者が病院に入れなくなる可能性もあるとした。大阪市立大の廣田良夫教授も、重症化だけでなく、感染拡大の防止についても「考えておいたほうがいい」と指摘した。

 一方、国立感染症研究所感染症情報センターの多屋馨子室長は、「日本では、基礎疾患のある人や健康な小児などで重症例が出ていると聞いている」と述べ、妊婦や基礎疾患のある人、生後6か月から小学生以下の小児への接種が重要だと指摘。こうした患者を救う役割を果たす「最前線の医療従事者」も対象とすべきとの見方を示した。

■「ワクチンの同時接種を」
 季節性と新型インフルエンザのワクチンの同時接種を積極的に進めるべきとの意見も相次いだ。永井部長は、季節性と新型インフルの予防接種をそれぞれ2 回、別の日に行う場合、患者は医療機関に4回も足を運ぶことになり、現場の混乱にもつながると指摘。「同時接種が可能かどうかの議論も必要」と訴えた。
 多屋室長も、「日本では法律上、同時接種は可能だが、現実的にはあまり行われていないのが実情。状況を考えると、これはむしろ積極的に進めるべき」と述べた。また、優先順位を設定して接種を進める場合、「現在のような任意接種の枠組みでできるのか、疑問に思う」とも指摘した。

 意見交換会は8月27日にも開催される。学会の関係者などが参加する予定。厚労省では2回分の意見を資料にまとめ、ワクチン接種の在り方の検討材料にする方針だ。

<新型インフル>糖尿病患者らワクチン優先接種へ 厚労省(2009年8月20日毎日新聞)

 新型インフルエンザのワクチン接種を巡り、厚生労働省は20日、専門家らとの意見交換会を開き、妊婦や乳幼児、基礎疾患(ぜんそく、糖尿病、腎機能障害など)のある患者など重症化しやすい人に優先接種することで大筋合意した。患者を診る医療従事者も接種対象とする。関係学会などからも意見を聞いたうえで、政府が9月中に対象と優先順位を決め、10月下旬にも接種が始まる。

 ワクチンの接種対象について、政府は08年9月、警察や消防など社会機能の維持などに携わる97業種の従事者を5段階に分ける案を示していた。しかし、当時想定していたのは高病原性の鳥インフルエンザ由来だったため、現状に合った方針を改めて考えることになった。

 臨床の医師や患者代表らが参加した意見交換会では、ワクチン接種の第一の目的を、重症化や死亡の防止とすることで一致。そのため、重症化するリスクが高い層と、感染者と接触する医療従事者が、優先的な接種対象に挙がった。重症化しやすい基礎疾患の範囲は、27日に学会などが加わって議論する。

 一方、見解が割れたのが、現在入院患者の約6割を占める未成年者(乳幼児を除く)の扱い。「感染拡大防止が目的ではないので、感染しても数日で回復する人には必要ない」との意見の一方で、「未成年者の入院が相次げば医療機関がパンクする」との懸念も出た。また、子供と接触する機会が多い親や学校関係者、季節性ワクチンの接種を勧奨している65歳以上などに、配慮を求める声もあった。

 また、ワクチン接種の法令上の位置付けについて、厚労省の上田博三健康局長は、行政が勧奨しない任意接種が適当だとする考えを示した。
(略)

メディアによって微妙に報道のニュアンスも異なっているように感じられるのも興味深いんですが、CBニュースから意見交換会の状況を想像してみるに、予想されたものより軽症と言うだけにまだ何となく譲り合い精神を発揮する余裕もあるのかなという印象を受けるのは不幸中の幸いというところなんでしょうか。
しかし一方で重症化阻止、死亡者数を最小にといいながら、いくらか免疫が期待されるとはいえ罹患するとそれなりにヤバいことになるだろう高齢者の話が全く出てこないことには、何かしら関係者一同に暗黙の了解でもあるのかということなんでしょうかね。

このあたり一応アメリカのCDCからは勧告が出ていまして、まず妊婦・子供を最優先にということになっているのですが、実際問題として最もハイリスクかつ二人分の命に関わる妊婦と、脳症の危険もあり抗ウイルス薬使用もためらわれる部分がある小児とを優先するというのは間違った話ではないと思われます。
一方でさすがアメリカと言いますか、高齢者はばっさり切ってしまっているあたりは何とも言いかねるところではありますが、映画などでも見る通り向こうではこういった場合「女子供が先、年寄りは後」ということに一定の社会的コンセンサスがあるということなんでしょうか。

新型インフル予防接種、まず妊婦・子供…米勧告(2009年7月30日読売新聞)

 【ケネディ宇宙センター(米フロリダ州)=山田哲朗】米疾病対策センター(CDC)は29日、新型インフルエンザの予防接種に関する専門家会合を開き、妊婦や子供など5分類した高リスク集団に優先して接種する方針を米政府に勧告した。

 接種対象となるのは、〈1〉妊婦〈2〉6か月未満の乳児がいる家庭〈3〉医療従事者〈4〉6か月から24歳までの若年層〈5〉持病のある25~64歳の成人。接種対象者を合計すると、全米人口の約半分に当たる1億5900万人になる。

 妊婦は感染すると重症化しやすいことが分かり優先対象となった。乳児は直接、予防接種を打てないため、親など周囲に接種して本人への感染を防ぐ。高齢者は新型インフルに対して過去の免疫があると考えられるため後回しとなった。

日本ではおそらくワクチン入手量はとても全人口の半分なんてところまでいかないでしょうから、アメリカ以上にシビアに切り捨てられる人々が出てくるのでしょうね(その不満対策の意味もあって全量政府管理などと言いだしたのかも知れませんが)。
そうなりますと27日にも各学会で議論されるという「基礎疾患のある者」という範疇がどのようなところまで含まれるのかに興味がうつってくるわけですが、この場合数も多い(当然票も沢山持っている)高齢者に対する扱いをどうするのかといったあたりが、純医学的側面のみならず社会的な面からも最大の議論になりそうな気がするのですけれどもね。
まさか30日の投票日直前とも言うこの時期に政府としても「お年寄りはもともと新型にかかりにくいみたいだからワクチンなしで頑張ってね」なんて高齢者切り捨てとも取られかねないような結論を出されたくはないだろうと言うのも、正直なところなんじゃないかと思うのですが…

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2009年8月23日 (日)

今日のぐり「名代中華そば 山金(やまきん) 岡山店 」

世の中なかなかあり得ない偶然というものが時たま表沙汰になることがあって、いったいこれは何かしら超自然的な意思の力でも介在していたのかと思わされることがあります。
そんな中でもかな~りレア度の高そうな不思議物語を、こちら中国での出来事から引用してみましょう。

中国の腐敗幹部 ひょんなことで悪事が露呈 元愛人の密告も(2009年5月15日産経新聞)

 【北京=野口東秀】お茶の箱の底から預金残高が合計で200万元(1元は約14円)余りの通帳が-。中国メディアはこのほど、今年4月に党籍を剥奪(はくだつ)されたことが報告された河南省鄭州市の王治業・同市規律検査委員会書記の豪華な生活と、あっけない転落ぶりを伝えた。

 王書記は日本で言えば、地方都市の副市長クラスだが、自宅以外に別荘も所有していた。別荘の敷地には、プール、ゴルフ練習場、冷凍倉庫、人工滝なども造られていた。

 失脚の発端となったのは、2007年夏のある出来事。廃品回収のために住宅街を回っていた2人の農民がある家の前で警備員と口論をしたとき、家の中から出てきた中年女性が仲裁し、高級茶「鉄観音」をもらった。

 2人は廃品回収業者にこのお茶をプレゼント。廃品回収業者がお茶をいれた後、箱を壊したところ、底が二重になっており、8冊の通帳が隠されていたのだった。

 廃品業者は仲間を集め、王書記から50万元をゆすりとることを計画。交渉の結果、30万元で折り合ったが、取引場所の喫茶店では、王書記側から通報を受けた警官が待ちかまえており御用となった。

 この事件は地元で報道されなかった。しかし「腐敗権力者が警察力で逮捕させた」とうわさが広がり、国営新華社通信河南分社が取材し中央に報告。司法担当の周永康・政治局常務委員が調査を命じ、王被告の悪事が暴露されることになった。

 王書記は、土地転用などで約300万元、高利貸で126万元など違法な所得を得ていたという。

 王書記には別れた愛人がいた。元愛人は金銭を求めたが無視されたことから、捜査当局に王書記の悪行を密告。これが今回、調査が迅速に行われた要因となったいう。

え~と…もしかしてネタですか?
て言うか、絶対話作ってるだろjkと思えるようなどこからどこまでも斜め上なシナリオなんですが、これが事実だと言うのですから中国もブリに負けず劣らず侮り難しですよね。
というわけで、今日はこの中国という巨大なる国の嘘のようなホントの話を拾い集めてみましょう。

さて、金属資源高騰の折にひと頃日本でもマンホールの蓋が盗まれただのと話題になりましたが、広大な中国ともなりますといささかスケールも違ってくるようです。

脚盗まれ鉄塔倒壊、停電 中国広東省、16万人影響(2009年8月5日産経新聞)

 5日の中国国営新華社通信によると、中国広東省汕尾市で4日夜、高圧鉄塔が倒壊し広範囲に停電、約16万人に影響が出た。地元公安当局の調べで、鋼材を盗むために鉄塔の脚を切断したのが原因と判明した。

 鉄塔1基は四つの脚が金切りのこやガスバーナーで切断され倒れていたほか、別の2基は鉄塔に使われていた鋼材がすべて持ち去られていた。

 広東省では今年上半期(1~6月)で電力設備の窃盗被害が6670件に上った。前年同期と比べるとかなり減ったが、被害は依然として深刻だという。

ちょっwwwwww
使用中はやめろ!使用中はっ!!(笑)
しかしこれ、使っている鉄塔を切り倒すって感電の危険性だってあるでしょうに、中国の電力会社は「鉄塔付近で遊んではいけません」という広報が不足だったんじゃないですかね?

まあこのあたりですと明らかな犯罪行為ですからある意味原因と結果がわかりやすいんですが、中国というところは事故なのか人災なのかはっきりしない事件が多発するというお国柄でもあります。
こちらもよく似たニュースはたびたび漏れ聞こえてくるところですが、やはりこういう事件が多発しているということなんでしょうかね。

上海に続き成都でも!マンション傾き亀裂、隣の建物と接触寸前―四川省(2009年7月24日レコードチャイナ)

2009年7月23日、四川在線によると、17日夜、成都市は激しい雨に見舞われたが、その翌朝、市内の住宅街にあるマンションが大きく傾き、隣の建物と接触寸前となっており、壁や地面に亀裂が走っているのが見つかった。

マンションのある住民は起床後、窓を開けようとしたところ押しても引いても窓が開かないことに気づき、外を見てみると、隣の建物がにわかには信じがたいほど近くに迫っており、驚いたと話している。

この住宅街附近では別の建物の建設工事が行われているが、19日、工事現場に「付近のマンションの地面や壁、緑地帯に工事を原因とする亀裂が生じた」との公示が張り出された。施工業者が亀裂の修復を行うとともに、建物の管理会社が役所へ届け出たが、22日夜までに新たな亀裂が生じるなど、危険な状態が続いている。

施工業者は「建物の安全性が確認されたので、安心して欲しい」と話しているが、6月末に上海市で建設中の13階建てマンションが倒壊する事故が起きたこともあり、住人は不安な日々を送っており、中には早々に引っ越す人も出ているという。(翻訳・編集/岡田)

どこまで続く“ありえない”事故=今度は幹線道路が陥没―安徽省合肥市(2009年8月10日レコードチャイナ)

2009年8月8日、安徽省合肥市の長江中路と徽州大道の交差点で道路の陥没事故が発生した。タクシー1台と電動自転車2台が飲み込まれた。中国新聞社が伝えた。

長江中路、徽州大道は合肥市の南北、東西を貫く幹線道路。その交差点では2008年11月より地下道の建設が進められていた。すでに東西通路の二次覆工(トンネルの掘削面を覆う構造物の設置、鉄筋コンクリートなどが用いられる)は終了、南北通路の二次覆工が始まるところだった。8日朝、二次覆工のために地下の支柱を撤去したところ、午前10時半ごろから天井面の沈降が始まった。ただちに作業員の避難及び交差点の封鎖が行われた。午後1時10分、ついに道路が陥没した。負傷者はなかったものの、交差点に駐車していたタクシー1台、電動自転車2台が飲み込まれた。

支柱除去後まもなく合肥市の主要交差点に見るも無惨な大穴が開いたことで、施工業者である中鉄15局集団公司の責任は免れないところ。性急な工事が事故原因ではなかったのかと疑われるが、同社は全力で事故後の復旧作業を実施し、「予定通り、残り1カ月で工事を完成させる」とコメントしている。

最近中国では上海市のマンション倒壊、河北省石家荘市でのテレビ塔倒壊など建築物の不可解な事故が相次いでいる。(翻訳・編集/KT)

いやあ…記事中でもコメントがあるように、あちこちであり得ないような大災害が続発しているということなんでしょうが、当然ながら中国当局としても原因追及に必至という状況なのでしょう。
そんな中で幾つかの事例ではどうやら原因らしいものが明らかになってきているとも言うのですが、それこそ「知らなければ良かった」と思わされるような話も続出しているのだとか。
数年前には「調べてみたら鉄筋の代わりに竹を使っていた」なんて事例が明るみに出て大騒ぎになったことがありましたが、あり得ないような話はそれだけではないようなんですね。

<テレビ塔ポッキリ事故>図面不在!「作りながら考える」恐怖の実態が発覚―河北省石家荘市(2009年8月3日レコードチャイナ)

2009年8月3日、河北省石家荘市晋州市で建設中のテレビ塔がポッキリと折れた事件で、現在も詳しい事故原因が調査中だが、市政府の発表で、なんとこのプロジェクトには図面が存在していないことがわかった。京華時報の報道。  

今月23日、河北省石家荘市晋州市で、建設中のテレビ塔が高さ50メートルの地点で折れ、真っ二つとなる事故が起きた。塔は高さ187mで設計寿命は50年を想定、320万元(約4440万円)を投じていた。河北省建築科学院の調査によると、溶接やボルトによる連結が基準を満たしておらず強度が不十分で、市政府は「手抜き工事が事故原因」と発表していた。なお、当日は大雨と強風という悪天候で、風速は20m超を観測していた。

建築監督・管理会社の報告によると、もともと同社は基礎工事のみを請け負っていたが、発注元である市広播電視局からの執拗な依頼により、その後の工事も続行した。塔の設置工程について、同社は技術面で不適合であり、その点を再三にわたり申し出ていたという。

市政府報道官は、この建設プロジェクトにおいて、技術面で十分な資格を有した施工会社による図面の類が存在しておらず、建設作業は、溶接などの特殊技術を十分に持たない農村出身の出稼ぎ労働者らが多数を占める現場で、「模索しながら」進められていたと発表した。(翻訳・編集/愛玉)

いやあ、これは…なんともはや、恐怖という意外に言葉もないような実態なんですが…
しかし、色々と背景事情もあるのでしょうが、本当に素人が模索しながら曲がりなりにもテレビ塔を途中まででも組み上げたと言うことでしたら、それはそれで偉業と言うべきなのかも知れませんけれどもね。
あちらは日本と違ってそうそう地震もないのかも知れませんが、ずいぶんと恐ろしいことをやってしまえるパワーというのはある意味で驚嘆に値することなのかも知れません、が…

今日のぐり「名代中華そば 山金(やまきん) 岡山店 」

岡山市街地の中心部をやや外れた住宅街の裏通り沿いに位置するこの店、たまたま通りかかるというにはかなり無理のある場所ではありますね。
元々は県北にあった老舗ラーメン屋(県下で二番目に古いとか)の支店ということですが、新しく小綺麗ですが店構え自体は全く今風ではないあたりが何とも微妙な味がありますかね。
タコ焼きラーメンやら雑炊やら珍しいものもあるようなのですが、むしろ気になったのがラーメンに普通盛りと中盛りというのがあることなんですね。
これに加えて大盛も出来ますということなんですが、この順に値段が高くなっているようですから中盛り=やや多めということなんでしょうか?

今回は一番ベーシックな中華そばの普通盛りを頼んでみましたが、見た目は透明感のあるスープが印象的な古風な中華そばといったところでしょうか。
売り文句によれば「変わらぬ味を守り続けて50有余年」「鶏ガラと煮干し、しょうゆで作った淡く透き通ったスープは、和風ダシのような美味しさ」なんだそうですが、確かに今風の濃い味わいに慣れた舌からするとラーメンっぽくないと感じるほどのさっぱりさ加減でしょうか。
これに合わせてあるのがやや太めのもっちりした麺なんですが、トッピングの妙に分厚いチャーシューがあまり中華っぽくない風味なのと併せて、何かラーメンと言うより肉うどんでも食べているような印象もありますね。
シナチクはいささか食感がへたった風でもう一工夫欲しいかなという感じなんですが、逆にこのラーメンの中で中華っぽい食材にあまり存在感を主張しすぎてもらっても相性が悪いものなのかも知れません。

スープだけみると同じ県内の地ラーメンである笠岡ラーメンの中でもあっさり系として評価が高い「らーめん司」あたりにも通じるような後味を引かない潔さが持ち味なのかなという感じなんですが、麺やトッピングも込みでの全体の印象からも昭和っぽさ漂うのは良くも悪くもこの店の特徴なんでしょうかね。
ただ昭和も昭和でいいんですが、少しばかり昭和過ぎるプラスチックのレンゲなどはもう少し今風にまともなものを使っていただいても良かったような気がします。
本店の方は歴史的経緯もあって今もこのスタイルで受け入れられているということなんでしょうが、そうした下地のない人間がこのラーメンをいきなり食べるとどんなものなのか、それともこれはなにがしかのノスタルジー込みで味わうのが正しいということなのでしょうかね?

しかしタコ焼きラーメンって、この味の組み立てですと明石焼きみたいなものを狙ってるんでしょうか。
今回はちょっと手を出せませんでしたが、一度このあたりの変わり種メニューも試してみるのも面白そうではありますよね。
話好きそうなおば…もとい、おねえさん達がやっているお店ですので、そういう雰囲気が好きで昔風の中華そばを楽しみたいという向きにちょうどいいのでしょう。

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2009年8月22日 (土)

更なる斜め上方向にばく進中の人たち

先日はこんな記事が出ていましたが、ご覧になりましたでしょうか。
何かと話題のホリエモンこと堀江貴文氏らがパネリストとなって開催された「インターネットと選挙・政治を考える」シンポジウムの模様を伝える記事です。

「祭り起こせばいい」堀江貴文、ネットと政治を語る(2009年8月17日ASCII.jp)

 新聞に雑誌、テレビにラジオと、メディアと密接に関係してきた「政治」。今、その舞台はインターネットに移ろうとしている。
(略)
 そんな中、ネットと政治をとりまく日本の環境について専門家が話し合う、MIAU(インターネットユーザー協会)主宰のシンポジウム「インターネットと選挙・政治を考える」が14日、都内で開催された。

 パネリストは、小泉首相時代に官僚の立場から通信・放送改革を推し進めた慶応大学教授の岸博幸氏、アンケートや世論調査などに詳しい統計物理研究所の田村義保氏、「オバマ戦略のからくり」(アスキー新書)著者でアメリカの政治事情に詳しい田中愼一氏、そして自ら選挙に出馬した経験もある堀江貴文氏の4名。司会を務めたのはITジャーナリストの津田大介氏だ。
(略)
―― 始めはニコ割アンケート「ネット入り口調査」の結果について。ニコニコ動画ユーザーを対象に比例選挙区での支持政党に関するアンケートを実施したものです。

 40%が自民党、31%が民主党となり、新聞やテレビでの結果とはかなり異なっています。日経新聞によれば民主が43%、自民が26%でした。

 この結果がネットユーザーだけに偏っているというのはもちろんですが、一方で新聞はRDD(Random Digit Dialing)という、ランダムに固定電話をかける調査方法を採用しています。日中に固定電話に出られるのは主婦くらいで、若者は固定電話を持っていないケースも多いですね。

田村義保(以下「田村」) RDDは9ケタや10ケタの電話番号の下2ケタをランダムに発生させる方法です。固定電話を持っていない方は対象にしていませんが、それを新聞社が特に書くことはありませんね。

堀江貴文(以下「堀江」) なぜ固定電話(を対象に)しか調査をやらないんです? わざとですか?

田村 新聞社の論文によると、総務省が局番の一覧のリストを作っているんです。どの局番がどの地域に振られているか、それを参考に下2ケタだけをランダムにしている。ケータイの場合はそれが難しいんですよ。ただ、やはり世論調査で正しい日本人の支持率を割り出そうと思うと、年齢・地域・性別の分布が日本全体の縮図になってなければいけないんですが、それは保障されていない
(略)
堀江 インターネットと新聞で、なぜこんな結果が出ているんですか。そこが知りたいんですが。まったく逆じゃないですか。

田村 一般論でいうと新聞各社の調査を見てみると、5社分くらい見ると分かりやすいんですが、A新聞ではいつもB新聞より内閣支持率が低いというのがあるんですが、それがつねに一定なんですよ。

岸博幸(以下「岸」) 新聞を読む人も投票に行く人も、年齢層が高い。それが先ほどの固定電話の話につながります。アメリカを見ると4大ネットワーク局、日本で言うキー局の平均視聴者年齢が50歳なんです。新聞はもっと高い。それに比べるとネットはある種、世論の先行資料にになりうる。日本は高齢者中心の「シニア民主主義」なんですよね。若い人の世論と年がいった人の世論は違うのが当たり前の状況です。

田中愼一(以下「田中」) 日本ではまだマスメディアの影響が大きいと思っています。オバマ大統領の場合、自分をメディア化し、マスメディアが彼を追いかけるという状態を作った。日本の場合はまだマスメディアが作る世論が大きく、それは偏っているケースも多い。ネットの場合は「参画」が関わってくる。マスメディアが作る世論より、ネットが作る世論の方が偏りの少ないメディアになりやすいのでは。
(略)
岸 あえて反論すると、あまりネット幻想を持ってはいけないと思います。たとえば2007年2月に始まった「My Barack Obama.com」。このサイトの開設と同時に、全米でローカルグループというオバマ氏を応援する集まりが起こり、当選までの1年半で20万回はオフラインのイベントをやっていました。オバマ氏を応援したい人が情報交換をするためにネットを使ったというのが実態では。

堀江 ネットをうまく活用する、オバマが勝つ、そういったものが日本で起きそうにないのは、人口分布の違いだと思っています。アメリカは40歳未満の人の方が多い。一方の日本は40歳後半(以上が多い)。若い人の方が多いならネットを活用する人の方が多いのも分かる。日本だとそれはまずないだろうと。

田中 それはぼくも思いません。ただ、政策を訴える前に共通認識を作り上げるという、オバマの戦略的な発想は大きいと思っています。多様性の時代、自分たちが発信したメッセージは99%誤解されるという中で生きていますよね。

 そのとき、オバマはメッセージを訴える前に「CHANGE」という言葉を発信した。それを共通認識、共通の受け皿にした。「変わらなければいけない」というメッセージのもと、オバマの3つの弱点である「無名・黒人・実績なし」を強みに変えたんですよ。

―― あらかじめ支援者が登録しているメールマガジンに送ったりするんですよね、考えや主張を。

堀江 それが日本だと、支援者のように見えて、記者たちが見たりしているわけです。クローズドの有料トークイベントのためだけに言ったサービス発言を、雑誌とかに書いたりする。日本の場合はそれがあるから難しいですよね。
(略)
岸 このままだと、ネット選挙が開放されても変わらない。シニア民主主義で、自民・民主ともに間違えた政策ばかりをやっています。60代の「勝ち逃げ組」優位の政策ばかりを打っていて、そのツケは「選挙に来ない若者に回しましょう」ということになっている。インターネットで若者が怒れば状況は変えられると思っています。

―― さっきチラッと堀江さんと話していたときに「MIAUって何だ」と言われたんです。こうした活動をしているより、政治団体にしてしまったほうが早いと。

堀江 いくら政策提言みたいなことをやってもムリですよ。それより「投票行動を左右されるんだ」と言った途端に、巨大政党だって変わると思うんですよ。MIAUがインターネットユーザーの総意を代表する党として「祭り」を起こせばいいんですよ。献金を募って、実際に政党としての影響力を示せばいい。
(略)

ネットが一足飛びに政治を動かすようになるかと言えば、例えばお隣韓国のような状況が今すぐ日本に出来るかと言うとそれは恐らく無理だろうと多くの人は考えているだろうし、実際その通りなんだろうとは思います。
しかし一方でネットが政治を動かしてきたものを動かせるようになるかと言えば、これは程度の大小はともかくとしてそれなりに可能性はあるわけで、結果としていずれ間接的に政治を動かすということになってくるのかも知れませんね。
その意味では同じく大衆をターゲットとする存在として、既存のメディアに対抗してネットがどの程度の影響力をふるえるようになるのか、あるいはどの程度対抗できるのかということも要注目かと思うわけですが、最近どうもこの既存メディアというものが自滅気味なところがあるようなのですね。

すでに幾つかのメディアは破綻寸前だなどと噂にも流れる状況ですが、実態を見てみればそれは確かに売れなさそうだという話が多いで、売れないからレベルが下がるのか、レベルが下がったから売れないのかも既に判らないという状況になってきました。
特に今やマスコミお手の物とも言われる安易な捏造、歪曲報道の類は、こうしたネット時代にあってはすぐバレると判りきっているのに繰り返しているのですから、それは信用だの信頼だのという言葉とは縁遠くなってくるのも仕方がありません。
捏造報道ということでは最近の例としてこんなものを取り上げてみますが、一番気になるのは「彼らが何を考えてやっているのか意味不明」という点ではないかと思いますね。

コンビニ客、ビール瓶で強盗容疑者をKO(2009年8月15日読売新聞)

 小樽署は14日、小樽市桜2、無職伊藤和次容疑者(55)を強盗容疑の現行犯で逮捕したと発表した。発表では、同容疑者は同日午後3時25分頃、小樽市桜5、セブンイレブン小樽桜町店に押し入り、男性店長(31)に刃渡り約20センチの包丁を突きつけて脅し、現金3万円を奪った疑い。

同容疑者はそのまま逃走しようとしたが、たまたま店にいた男性客(26)が、購入しようと持っていたビールの大瓶で同容疑者の後頭部を殴りつけた。同容疑者はその場で倒れ込み、そのまま男性客が馬乗りになって取り押さえ、駆けつけた同署員に引き渡したという。

 調べに対し、伊藤容疑者は、包丁を自宅から持ち出したと供述しており、動機について「金がほしくてやった」などと話しているという。

これを見ますとどうも状況がよく理解しがたいと言いますか、逃げ出そうとした犯人をわざわざ殴りつけるとはずいぶんと余計な…もとい、思い切ったことをする客もいたものだなと思うようなニュースなんですが、どうもこの記事と現場の状況とはかなり違っていたようなんですね。
読売の記事にも登場する件の男性客(26)がこの報道に憤っていまして、一連の経緯を詳細に語ってくれているようなのですが、こちらを参照する限りではとうてい「逃げ出した犯人を殴りつけた」などという状況ではなかったようで、これならばむしろ動いて当然、よくやったと納得できるような状況であったようなのですね。
Fig01 Fig02

そうなりますと読売側はわざわざ不自然な状況を空想しながら記事にしたのかと疑問を抱くわけですが、同社が警察発表通りに書いただけと主張しているわりに、その警察発表とも異なる同社オリジナルの内容らしいのですね。

これは例によって例の如く得意技が発動してしまったということとしても、恐らく同社と全く縁もゆかりもないだろう小さな事件と男性客に対するこの意味不明な捏造に何の意味があるのかという疑問は誰しも感じるところではないでしょうか。
読売さんのフィクション作文能力の高さに反比例するかのようなロジック構成能力の低さはともかくとして、今後は裁判員制度も始まってくるわけですが、こうやってなんでもメディアが捏造してしまうと裁判員の皆さんもそれこそ間違った先入観をもって事件に臨んでしまうということもあるんじゃないでしょうかね?

他にも「何事もまず予断と先入観を以て接すべし」という彼らの姿勢がよく現れている話としてこんなものもありますが、思わず「お前はタ○リか!」と言いたくなるような話ではなりますよね。

清水義範のなごやキーワード事典:観覧車 どうせなら楽しいものを(2009年8月14日毎日新聞)

 愛知万博がもうじき開幕するという2005年のことだが、某新聞社からコメントを求められた。名古屋の出来事についてご意見をきかせてほしい、というのだ。

 そういうことが多々あるのである。名古屋で何か珍しいことがおこると、どうしてそうなるのか解説してくれと、新聞社は私に電話してくるのだ。そしてそのほとんどが、解説のしようもないような、おかしな事態についてである。つまり最初から、名古屋は変なところで、あきれて笑っちゃいますね、という内容のコメントを求めているのだ。

 たとえば、かなり前のことだが、愛知県の県の魚が海老(えび)に決まったのだが、それについてご意見を、ときかれた。そんなことにどう答えればいいのか。愛知県人は海老フライさえあれば生きていけるのだ、とでも言ってほしいのか。

 またある時は、中日ドラゴンズが優勝したからといってコメントを求めてきた。私は今はもうプロ野球には関心がないので、と断ろうとすると、そのことではなく、優勝を喜ぶあまり球場のネットに登って、手の指を失う大怪我(けが)をしたファンがいる、それをどう思うかときいた。お気の毒としか言いようがないではないか。

 その他、ナゴヤドームに雨がもったとか、駅ビルが新しくなったとか言っては私にコメントを求めてくるのだ。いちばん面くらったのは、大相撲の名古屋場所に限って見られることだが、千秋楽に、お客が土俵の俵を掘り出して持っていってしまうのだ、なんてことをきいた。相撲協会は別に構わないとしているのだが、そんなことがおこるのは名古屋だけである、どうしてなんでしょう、ときかれても答えようがない。名古屋人は、今そこにある持っていっていいものを見てしまえば、持っていかずにはおれないのだ、とでも言わせたいのだろうか。
(略)

さすがにこうなりますと最近の彼ら既存メディアのレベル低下ぶりは目に余ると考える人間は一人ならずいるようで、折からの不況もあって大手スポンサーが相次いで撤退しており、とうとう新聞よりもネットに金が流れているという状況になってきたようですね。
ようやくネットというもう一つの媒体も社会的に認知され始めたからなのでしょう、既存メディアと喧嘩しても食えるようになってきたせいか、そろそろあちこちから彼らに対する批判的意見が出てきているようです。

郷原信郎氏といえば元検察官から現在は大学教授として企業法務に関する提言などを行っている人物で、「コンプライアンスとは、単なる法令遵守ではなく、社会的要請に適応することである」という「フルセット・コンプライアンス論」を提唱していると言いますが、一連の小沢騒動などでも恣意的情報による世論操作ということには警鐘を鳴らしてきた人物です。
この連載「テレビ崩壊」第1回の梨元勝氏の内輪話もなかなか面白くて是非ご一読いただければと思うのですが、この第2回での先日もお伝えしました「バンキシャ!」虚偽報道問題に関する同氏のコメントからも、既存メディアの捏造ぶりに関する危機感というものが濃厚にうかがわれるところだと思いますね。

メディア報道は「思考停止」 テレビは特に目立つ(連載「テレビ崩壊」第2回/郷原信郎教授に聞く)(2009年8月16日J-CASTニュース)

   テレビの放送内容への信頼が揺らいでいる。虚偽証言を裏付けがないまま放送した「真相報道バンキシャ!」問題で2009年3月には、日本テレビの久保伸太郎社長(当時)が引責辞任した。「発掘!あるある大事典II」(フジテレビ系)の捏造問題も記憶に新しい。どこか構造的な問題があるのか。コンプライアンス(法令遵守)の第一人者で元東京地検特捜部検事の郷原信郎・名城大総合研究所教授に聞いた。

自身の疑惑になるとうやむやにしてしまう

――著書「思考停止社会」(講談社現代新書)の中で、章を立てて「思考停止するマスメディア」を取り上げています。その話の中心はテレビメディアです。

    郷原 マスメディアの思考停止が顕著なのがテレビです。「捏造」「隠ぺい」などの言葉を水戸黄門の「印籠」のように人々に提示し、当事者の反論を許さず「とにかくけしからん」という結論を押し付けています。短い言葉、それも口頭で伝える必要があるテレビは、特にこうした傾向があります。
       一方、ほかの企業には厳しく「捏造」などの疑惑の説明を求める彼らが、自身の疑惑になるとうやむやにしてしまう例もあります。新聞と違うのは、放送法の存在も関係しています。「真実ではない」と直接関係者から請求があれば、テレビ局は調査をし、真実でないことが分かれば訂正・取り消し放送をしなければなりません。権力の不当な介入を避けるために放送事業者側の自主的な対応を中心とする枠組みにしていること自体は正しい方向だと思います。しかし、実際には、この制度が逆に対応を歪めてしまっているのです。ここで、法にしたがって自主調査はするが、訂正放送は避けたい、そのためには、「真実ではない」とはっきり明らかにならなければよいということになります。そして、「情報源の秘匿」「報道の自由」を振りかざせば、放送内容が誤っているということを認めないですんでしまうのです。

――TBS「朝ズバッ!」の不二家に関する捏造疑惑を先の著書でも取り上げています。問題が起きていた頃、郷原さんは不二家の信頼回復対策会議の議長でした。TBSの対応の背景に、今言われたことが影響しているとお考えですか。

    郷原 典型的な例だと思います。私の主張は、簡単にいうとTBSはチョコしか製造していない不二家平塚工場でクッキーを回収して再利用をしているという、実態に反していてまったく信用できない証言を、ナレーションと組み合わせてチョコレート再利用証言にすり替えて証言映像を「捏造」して不二家を批判したということです。TBSは当初、こちらが映像のすり替えを指摘するまでは、チョコとクッキーの違いは把握していたと説明し、放送した証言は問題ないとしていたのに、すり替えが否定できなくなった途端にチョコとクッキーを混同していたと主張を変えました。捏造ではなく過失だという訳です。しかし、当初の説明からは、過失の主張は通りません。捏造は否定できないと思います。

――TBSの主張は、BPOの放送倫理検証委で認められた形です。

    郷原 身内の傷をなめ合うような組織では限界があるのでしょう。検証委は、TBSが自主調査で自浄能力を発揮しているのか、不二家側からの指摘に真摯に対応し、反省すべきは反省するという姿勢をとってきたのかをしっかりチェックするべきでした。個別事案を直接、検証委の役割が捜査機関のように事実解明することではないとしても、放送事業者が放送内容の真実性について自主的に誠実な対応をとったかどうかの検証は不可欠です。結局検証委がやったことは中途半端だったと思います。

――TBS固有の問題なのでしょうか。

    郷原 TBSが特にひどいと思いますが、根本的には、テレビ業界全体の問題です。関西テレビの「あるある」のケースでは、「捏造」問題への自主的対応は十分に行われたと言えますが、外部の指摘・調査で言い逃れができない状況に追い込まれていなかったら、あそこまでの対応はしなかったと思います。

間違ったときいかに誠実に検証できるかが問われる

――テレビ全体に共通する構造的な問題があるということでしょうか。

    郷原 そうです。まず「視聴率と利益を追及する」ことと、真実に迫り、誤った放送をしないこと、この二つが調和しなくなっているのではないでしょうか。広告減が進み、利益を上げるためには制作費を削る。つまり、真実に迫るための取材にあまり金をかけることができなくなる一方で、視聴率を取るために、面白さが求められる。世の中で実際に起きたことを単純化して、面白おかしく報じた方が視聴率を取れるということで、真実に反する放送が行われる恐れは一層大きくなっていくのです。視聴率をバックにした広告収入で成立している現在の経営形態を抜本的から考え直す必要があると思います。
       また、これはテレビに限りませんが、マスメディアは「報道は常に真実でなければならない」という建前を維持しようという「真実性のドグマ」にとらわれています。もちろん、真実に限りなく迫る努力を最大限すべきですが、結果的に間違ってしまうことは起こり得ます。報道の真実性について問題が指摘されたときに、いかに誠実に検証できるかが問われるのですが、建前を維持しようとするため、間違いの検証に消極的になっているのです。コンプライアンスを取材・報道に組み込むメディアは生き残り、そうでないところは淘汰される環境の実現が大切です。

――ではどうすればいいのでしょうか。

    郷原 難しい問題です。BPO検証委などはあてにならないし、さりとて何か組織を別につくれば解決する話でもありません。最後は、記者一人ひとりがプロフェッショナルとして恥じない公明正大さを持ちながら、互いにチェックし合っていくしかない気もします。会社側もそういう記者たちを尊重する組織であるべきでしょう。

――視聴者の信頼という観点から、テレビは今後も生き残ることができるでしょうか。

    郷原 何だかんだ言ってもテレビは視聴者に依然大きな影響力を持っています。テレビで物事が単純化され、世の中全体に一方的な見方が植え付けられると、それを是正することは困難です。しかし、インターネットの浸透もあって、その批判の前提が間違っていることが多いということに気付く人が増えています。現状のままではテレビに対する信頼が一層崩れていくことになりかねません。テレビ事業者が自主的に放送内容の真実性を確保するためのシステムを構築し、それがきちんと機能しているかどうかをチェックする制度を確立する必要があるでしょう。

どの業界であれ大きくなれば内部は一枚板などとは程遠い四分五裂の状態なのが普通でしょうし、彼らも彼らなりに言い訳のネタは用意しているのかも知れませんが、とりあえず彼ら自身が他業界に行ってきた批判(?)に比べればこの程度ははるかに良識的で大人しいレベルにとどまっているとは言えると思いますね。
既存メディアに自浄作用が欠如しているなどと言うこと自体は今に始まったことでもないのでしょうが、かつては自浄作用が欠如しているという判断の根拠となる事実すらメディアに乗らなければ誰も存在すら知らないという時代が久しく続いてきたわけです。
やはりここでも問題になるのは既存メディアによる情報の一極支配の危険性であって、その解消のためにもインターネットという批判的対立軸の機能が必要不可欠となってきた、ということでしょうか。

こうなりますと彼らも早く世間並みになってもらいたいとは国民の等しく求めて止まないところではないかと思うのですが、どうも状況はそう簡単に改善するというものでもなさそうで、と言うよりもむしろ更なる悪巧みをしている気配もあるようなんですね。
以前から度々登場いただいている佐々木氏がまたもこんな指摘をしていますが、いやはやここまで来ると我々としても彼らの面の皮の厚さを見誤っていたということになるのでしょうか。

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点 記者クラブを楯にして新聞を有料化しようと企てる人たち(2009年8月17日CNET Japan)

 元週刊現代編集長で、ついでに言えば元オーマイニュース編集長でもある元木昌彦氏の週刊誌は死なず (朝日新書)という新刊を読んだ。この中に、「ネットの影響を受けているのは新聞も同じである」として次のようなくだりがある。すこし長いが引用しよう。

     しばらく前に、朝比奈豊毎日新聞社長と若宮啓文朝日新聞元論説主幹と話す機会があった。私は、こうした人たちと会う時、必ず聞いてみることがある。それは「どの新聞社もネットを充実させればさせるほど紙の部数が落ち込んでいることで悩んでいる。ここら辺で、新聞社が”談合 ”して、情報(ニュース)はタダという風潮を断ち切り、有料化に踏み切ってはどうか」ということである。

     談合という言葉は刺激的すぎるが、要は、日本語という狭いマーケットの中で、バラバラに情報を垂れ流し合っていても、広告収入で採算をとるのは不可能に近い。「Yahoo!」など巨大ポータルサイトへのコンテンツ販売も、安く買い叩かれ、莫大なネットの維持費を穴埋めすることはできない。まだ、新聞討が体力のあるうちに有料化に踏み切らなければ、手遅れになりかねないからだ。

     両氏も同感だとして、朝比奈社長は、ドイツの新聞社が同じようなことをやろうとしたが、たった1社が反対したために、できなかったという話をしてくれた。1社でも「協定」を守らず、無科配信を続ければ有料化はできないとよくいわれるが、そんなことはない。新聞の6割方は発表ものだから、新聞社お家芸の「記者クラブからの締め出し」をすれば、その社には情報が入らなくなる。共同、時事通信が配信しなければ独自取材をしなければならず、採算面でも追い込まれる

 驚くべき話。あきれ果てて声も出ない。

新聞社は有料化を画策しているが……

 私は先月末に出した2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)という本で、新聞やテレビの垂直統合モデルはいまや終焉を迎えつつあって、メディアのコンテナプラットフォームはヤフーなどのニュースアグリゲーター(ニュース集約サイト)に移りつつあるということを書いた。

 この潮流に対抗するために、新聞のウェブサイトを有料化させようという動きは世界のあちこちで起きている。たとえばAP通信は自社の記事を引用した場合にはカネを払えよ、とブロガーたちに要求している。またメディア王ことルパート・マードックは、つい昨年までは「ウォールストリートジャーナルも有料モデルを捨てて無料化し、広告で稼ぐべきだ」と主張していたのが、リーマンショック以降の不況で広告収入が激減するに至って、「ニュースコーポレーションのすべてのテレビと新聞のコンテンツを1年以内にすべて有料にする」と言い出した。

 しかしこうした新聞業界側の対抗策が本当にうまくいくのかどうかといえば、かなり無理がある。特に英語圏にその傾向が強いと思うが、アグリゲーター側の力が圧倒的に強くなってしまっていて、「情報はまずヤフーやグーグルやAOLで見る」という人がネットでは大半。新聞社のウェブサイトのトップページはあまり読まれなくなっている。アグリゲーターでまず記事の見出しやサマリーをチェックして、それから新聞社のディープリンクをたどって本文記事を読む、というスタイルが定着してきている。日本でもそうなりつつある。そういう状況で、今さら新聞社側にプラットフォームを引き戻すのは難しい。

 さらに加えて、有料化はすべてのメディア企業が一丸となって実施しなければ不可能だ。たとえばデイヴィッド・カーはニューヨークタイムズに書いたコラムで、こうマードックの有料化戦略をバカにしている。

 「ふーん、わかった。じゃあおまえんとこのブックマークを消して、他のニュースサイトに移動しよう。そして新たにブックマークすればいい。マードック? 誰それ」

 AP通信の「おいブロガー、金払えよ」戦略に対しても、ロイター通信が「AP通信がそんなにリンクや引用されるのが嫌なら、ブロガーはロイターの記事にリンクするといいよ」と宣言している。

 そもそもメディア業界がこぞって有料化するというようなことをすれば、独占禁止法に抵触する可能性があるだろう。おまけにアメリカではいまや新聞業界に公的資金を注入するかどうかという議論になっている状況で、いまこのような愚挙を行えば、新聞業界が一気に完全崩壊に向かってなだれ落ちかねない。

 そういう瀬戸際の状況にあるということだ。

記者クラブを楯にしてビジネスを守るのか?

 さて再び冒頭に紹介した元木氏の話に戻ろう。なんと驚くべきことにこの人は、記者クラブによる情報独占を楯にして、談合によってこの有料化戦略を成功させればいい、と主張しているのである。

 これはどういうことを意味するのか。たとえば具体的にシナリオを描けば、こういうことだ。

 被害者となるのは、まあどの新聞社でもいい。ウェブパーフェクトを掲げてソーシャルメディアやウェブの戦略を頑張っている産経新聞にしておこうか。

 ――朝日や読売、毎日、日経、そして共同通信と時事通信が、なぜか同じ日に突如として「ウェブサイトでの記事の有料化」を発表する。新聞価格の値上げと同じで、「これは談合ではありません。偶然同じ日に偶然発表しただけなんです。私たちもびっくりしましたよ、他の新聞社さんも同じことをするなんて」と言い張る。

 しかし産経は、ロイター通信と同じように「私たちは他の新聞社のような談合はいたしません。今後もウェブでは記事を無料で読んでいただけるようにサービスを続行します」と高らかに宣言する。ネットユーザーたちは、大喜びだ。だいたい新聞社の記事の大半は官庁や企業の発表モノだから、ニュースソースはひとつあれば十分。これからは産経の記事にリンクを張っていこう。

 ところが数週間後、国内すべての記者クラブで突然クラブ総会が招集され、その場で産経新聞は脱会を命じられる。理由ははっきりしない。「クラブの和を乱した」とか「ルールに反する行為があった」とかそんな名目だ。「違反行為」の明確な内容は決して明らかにされない。

 そうして産経新聞は独自のニュースソースによってオリジナルの記事を書くことしかできなくなり、発表モノを報じることはできなくなってしまう。この結果、ウェブ上では無料のニュースはごくわずかしかなくなってしまい、みんな新聞社の有料サービスに申し込まざるを得なくなる。これによって新聞社の有料モデルはついに成功を収めた。良かった、良かった。そして産経もついに音を上げて、産経ウェブとiza!を有料化することを条件に記者クラブへの復帰を認められることになったのだった。

 ――と、元木氏が提案しているのはこういうシナリオになるわけだ。

こんなバカげた話を書いている元雑誌編集者が、日本のメディア業界では「ネットのことがよくわかっていて、われわれの行き先を指し示すことができる数少ない人」として尊敬されているのである。だから日本のメディア業界は絶望的なのだ。

民主党の人たちは肝に銘じてほしい

 記者クラブを楯にして情報を有料化するなどというこの暗愚な戦略が実現したら、新聞社はカネが再び儲かるようになって良いのかもしれないが、しかしそれはわれわれ国民にとって良いメディア空間といえるのだろうか? もちろん答はいうまでもない。

 民主党は記者クラブ解体を検討しているという話もあるようだが、新聞社や出版社の一部で(しかも大手紙の社長や論説主幹も交えて)こういうバカげた企てが堂々と語られて、しかも書物にまで収められているという情けない状況を、民主党関係者はきちんと肝に銘じていてほしい。政治と有権者はきちんとダイレクトに直結するべきであって、このようなくだらない人たちに情報をフィルタリングさせるべきではない。

いやはや、人間一度坂道を転落し始めると落ちるところまで落ちると言いますか、もはや落ちているという自覚すらなくなってくるということなんでしょうか。
しかし昨今では世の中も殺伐として倫理が失われたとか治安も悪くなったなんてことを言いますけれども、それらを報道するマスコミ諸社としても大概の悪いこ とは「お前が言うな!」と言われそうで、あるいは戦々恐々としているんじゃないかとも…
いやいや、彼らにそんなかわいげがあるはずもないですかねぇ(苦笑)。

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2009年8月21日 (金)

国政選挙における医療政策 その二

今日は先日に続いて選挙関連の話題ということで、具体的な国政選挙の争点となるべき医療政策面についてみてみましょう。
選挙の争点は何も医療ばかりでもありませんが、今や国庫支出だけでも10兆円を越えるというくらいで、医療費というものは決して国政の中で占める割合の小さなものではなくなっています。
まずはロハス・メディカルの記事から主要二大政党の主張を拾い上げてみますが、いずれも非常に長文ですので後半の部分に限って引用してみたいと思います。

総選挙直前企画 各党の医療政策を聴く①自民党(2009年8月17日ロハス・メディカル)より抜粋

 18日の総選挙公示を前に、7月の東京都議選において議席を獲得し国会にも議席を持つ自民、民主、公明、共産各党(解散前の衆院議席数順)の医療政策担当者に話を聴いた。誰を医療政策担当者と見なすかは、各党本部の差配に従った。くしくも全員医師になった。全ての党に同じ質問を行い、回答は原則として編集せず、回答すべてを掲載した。

1回目は自民党の鴨下一郎・党社会保障制度調査会医療委員長(元環境大臣)。(聴き手・川口恭)
(略)
(現状とあるべき姿との間にあるギャップをどのように埋めますか)

 もう既に自民党、与党は、こういう意味で舵を切ってきているわけですから、評判は必ずしも良くなかったですけれども、高齢者医療制度を改めました。それからメタボリックシンドロームなどを含めた現役世代に対する特定健診、そういうようなものもやって、予防に力を入れようということも申してきました。

 これが、これから3年、5年経って成果が出始めると思います。それから高齢者医療というものは裏表で言えば、現役の人たちは健康保険の組合に入っていますけれども、リタイアすると国民保険に入ります。ですから圧倒的に国民保険が、特に医療ニーズの高い高齢者が加入する保険になってしまったので、国民保険として地域保険の中で支えきれなくなったということがあって、これを改めて高齢者医療だけ別の制度として今回立ち上げたわけです。ですから、これをより成熟したものにしていくというようなことが私たちの考えであるし、それをきちんとやっていけば間違いなく医療は支えきれると思っています。

(そのために必要な特にお金はどの程度で、どのように賄いますか)

 お金は、全体的に言えば、高齢者医療というものは、大枠で言うと30数兆円医療費がかかってますが、それの3分の1は高齢者医療です。ですから 10兆円強かかっているということですね。そして、そのお金を我々皆で支えているわけです。これは保険料と税金と窓口負担と、こういうようなことで支えているわけです。それについて今後どうするかという話で言えば、現役世代の保険料だけがどんどん上がってしまうというのもよろしくないし、さりとて高齢者が医療にかかる時に窓口負担が過重になるのもよくない。

 ですから、そのことについて我々は悩んだ末に、できるだけ医療費全体はお互いに気をつけてあまりかからないようにしていきたいねということが一つと、それと同時にイザ病気になった時には例えば高額医療費だとか何だとかの上限をできるだけ低くして低所得の方、低年金の方でも、きちんと高度な医療が受けられるような、そういう仕組みもビルドインしてきたわけです。

 加えてこの高齢者医療あるいは医療費全体で言えば30数兆円が年々1兆円ぐらいの規模でこれから増えていくだろうと言われています。それは国民の皆さんが悪いわけじゃなくて、世代が徐々に高齢化していくことが原因です。ですから我々も好むと好まざるとにかかわらず、医療費は増えていくということを織り込んでものを考えていかないといけない。で、その負担については、抑制するというようなことよりも、負担できるところは皆でお互いに負担し合おうよということに、ここ1、2年でなりました

 ですから、そういう意味においては、一つは現役世代が保険料としてどこまで負担できるのか、もう一つは公費あるいは税金というものに、より重きを置かざるを得なくなったと思っています。高齢者医療そのものが構造的にこれから増えていくわけだから、私たちの世代が70、80になるころまで20年くらいは、ですからそこまで至る前に、たとえば税の構造を変えて、産業の活力を落とさないである程度の負担を国民の皆さんにお願いするというと、高齢社会の中では、たとえばヨーロッパ諸国なんかの間接税中心の税構造にしていくというのは、これから必要なんだろうななあと思っています。

 ですから自民党のマニフェストの中に、景気が回復した後には間接税を、間接税というのは消費税を含めてですね、国民の皆さんにお願いする時期が早晩来る、と。これは、私は社会保障を中心に仕事してきた人間ですから、その消費税アップ分は100%社会保障、特に医療とか年金、そういうものの安心とか取得可能性というものに使うべきだと思っていますし、これからもそれは主張していこうと思っています。

(実現可能性はありますか)

 既に持続可能性を含めた医療制度改革は現在進行中ですから、実現はしてきているのですけれども、ただまあ、それについて色々な摩擦もあります。例えば、現役でまだ働いている75歳以上の高齢者の皆さんにとってみると、なんで自分たちは高齢者医療の中に入らなければいけないんだと、こういうような意識の方も高齢者の中にたくさんおいでですから、そういうような方々も大体30数万人おいでになるということですから、そういう方たちはもう一度前に所属していた会社あるいはそれぞれの共済、こういうものの中へもう一度戻っていただいて支え手の側に戻っていただくと、こういうようなことも変えて、少しずつ微調整している、こういうような所です。

 高齢者医療は、今の枠組みを崩さずに丁寧にそれぞれの言い分を伺って、調整すべき所はしていくと、負担の部分についても、そういうようなことを現在やっている最中ですから、実現できなかったということじゃなくて、実現はしたんだけれど色々とご不満が多い所があるので、それについてはできるだけご意見を聴いて、しっかりと対応していくというプロセスにおります。

総選挙直前企画 各党の医療政策を聴く②民主党(2009年8月17日ロハス・メディカル)より抜粋

 2回目は民主党の足立信也・党政調副会長(厚生労働担当)、元筑波大学臨床医学系外科助教授。(聴き手・熊田梨恵)
(略)
(現状とあるべき姿との間にあるギャップをどのように埋めますか)

 まず国民が健康に関心を持ち、健康管理に努めるというのがあるべき姿ですから、予防医学につながっていきます。ですが、予防医療は保険適用ではないところにギャップがあります。ある一定の確率で病気になりますから、そこで標準的医療が比較的安い自己負担で受けられることが必要です。ただ、保険間で格差がありますので、そこにもギャップがあります。そこで情報を公開し共有し、医療を受ける側と提供する側が同じ会議体で話し合っていけば「日本の医療はこれでいいのか」という話に必ずなってくるでしょう。国民の中でもやはりこれだけの医療を受けられるためには、それなりの税、保険の負担が必要という認識が生まれてくるはずです。そういう取り組みが必要だと思います。オープンに医療側の情報を流してもらい、国民がそれを目にして考えることが大事だと思います。

 日本の公的医療保険は、職業別に共済組合や健保組合、協会けんぽ、市町村国保と、それぞれに別な保険制度です。協会けんぽが8.2%、健保組合が 7.3%、共済組合が6.8%と保険料率に差がある上、同じ健保組合の中でも企業の大きさによって自己負担率に差があるという現状です。これでは国民皆保険と言いながらも不平等な制度設計ではないでしょうか。市町村国保は保険料の最低と最高で3倍以上の格差です。そういった事態をなくしていかないといけないと思います。

 医療人材、医師数、看護師数が欧米に比べて圧倒的に少ないという認識は与野党問わずやっと去年の後半にできたと思います。ただ、医療費をどれだけ上げるべきかという考えは、民主党はコンセンサスがありますが、自民党はバラバラだと思います。病院スタッフの中で一番数が多いのは特別な資格を持たない職員であり、世界共通ですが、診療報酬を2.7%下げた02年からどんどん数が減っています。その分を看護師が補い、さらにそれを医師が補うという悪循環に陥っています。つまり病院の総収入が減少したら資格を持っていない人を雇えなくなったということです。病院の総収入が減るとサービスが低下し、過重労働を招くということの表れで、これを上げなければいい医療が提供できないでしょう。

 もう一つの例です。社会保険病院は、その後の整理統合、売却を見据え、平成15-17年度の間、経営効率化を徹底的に図りました。その結果、17年度は 49社会保険病院の中で赤字はゼロでした。ところが平成18年度にマイナス3.16%の診療報酬改定があり、赤字の社会保険病院が一気に14に増えました。これは経営効率化を徹底した病院の総収入が減ってしまったら病院経営は不可能であることの一つの証明です。効率化や無駄を省くことは大事ですが、もう限界だという認識です。このため、診療報酬も含めて医療費を上げていく必要があるという結論が出てきます。

(そのために必要な特にお金はどの程度で、どのように賄いますか)

 日本の医療費は対GDP比8.1%ですが、これをOECD諸国の8.9%にまで可及的に速やかに到達させる必要があると思っています。ただ、その後医療費がどんどん増え続けるのではないかという心配がありますよね。では医療費がどうやって増えていくかというというのを考えてみます。人口動態統計と高齢化率と現在の受療実態から将来の診療実日数が推計され、それに技術革新係数をかけると将来の医療費が推計できます。技術革新係数はマッキンゼーによると 1.4%という数値と、デービット・カトラーの論文には1.0%という数値があります。これを高位と低位にして、この間に入るだろうと考えられます。仮に日本の総医療費対GDP比を2015年までに先進国平均の9.4%まで上げるとします。技術革新を除外した日本の医療費は2022-3年ぐらいがピークですから、2025年の推計が大事です。都道府県別70歳以上一人当たり医療費と人口10万人当たりの保健師の数の関連をみると逆相関していて、保健師の数が多いほど高齢者の医療費は低くなるという結果でした。長野県の高齢者医療費は平均よりさらに15%低くなっています。長野県では医師や保健師などによる地域保健活動が盛んですが、この長野モデルが日本の予防医療の一つの指標だと考えています。せめて長野県の2分の1の効果だとしても、2015年に 9.4%に引き上げても2025年には10.1%。技術革新係数を高位の1.4%で計算すると、2015年に9.4%まで引き上げても、2025年には 13.3%。低位だと11.3%です。各国の推計を見ると2025年に先進国は13-15%以上になりますから、日本は今一気に先進国並みに医療費を引き上げたとしても、保健活動、つまり予防医療に力を入れればそこまでいかないということになります。そのためには医療人材が必要です。医師需要誘発説ならびに医療費亡国論などはありえないということが分かってきます。

 仮に金額を大まかに言いますと、総医療費対GDP 比はOECD平均8.9%、日本は8.1%で0.8、総医療費で言うと4兆円です。現在の総医療費は41兆円で国民医療費は33兆円です。4兆円のうち国民医療費に相当する金額は3.2兆円です。国民医療費の35%が公費ですから、計算すると大体8-9000億円が予算として必要ということになりますよね。予算として先進諸国並みに9000億ぐらい必要だと思います。これは医療費に限定した総論であり、それをやろうというのが我々の考えです。

 民主党は無駄をなくすと言っていますし、国民もその事に期待しています。これがどういうことかを見てみますと、国の一般会計と特別会計を合わせた純粋な歳出は206兆円です。昨年まで公共関係事業費や防衛関係事業費など「事業別」に出されています。「事業別」とは各省庁の各局が「○○事業」としてやっているものです。いくつもやっているので同じ事業の中に施設費や人件費が重複して入っています。民主党は企業会計と同じように「『目別』で出してほしい」と要請を続け、昨年9月に財務省から「目別」の歳出が提出されました。今まで政府与党側は206兆円の80%を占める国債費、社会保障関係費、地方交付税交付金は"聖域"で削れない部分だと言っていましたが、目別に見直すと、相当するのは65.5%でした。つまりダブっていたということです。残りの 34.5%、71兆円には再考の余地があるということです。これだけ削れる対象が出てきたということです。ここで無駄な事業はないのかという話になり、「事業仕分け」をやりました。その結果、7000億円のうち1800億円は削除できる、26%はできるということが分りました。87事業だけに絞ったのですべてがそうとは言えませんが、26%の半分でもできれば12-3兆円は出てきます。10%でも7.1兆円です。無駄遣いの捻出で9.1兆円、この他を加えて4年後には16.8兆円を出せると考えています。

 これは個人的な考えですが、医療分野における財源はさらに捻出できます。まず、国民医療費33兆円の20%が企業負担の保険料ですね。非正規雇用を解消して正規雇用とし、せめて以前の25%のレベルに戻すことです。被用者保険の保険料率を8.2%に統一することで9300億円の収入増になります。小泉構造改革以降、年収200万円以下の層と、年収2000万円以上の層の2極が増えました。しかし、現在の被用者保険も国民健康保険も年間収入、所得の上限が低く設定されており、それ以上の収入、所得の方の保険料は増えません。上限を現在の5割増し程度にするだけで5000億円近い収入増が見込めます。高額療養費の1%の定率部分を廃止して現状の上位所得者のさらに上位の所得者を設定することや、たばこ税の増税など、トータルで少なくとも数兆円は出るだろうと私は考えています。

(実現可能性はありますか)

 16.8兆円を捻出することについては、強毒性のインフルエンザが国内で蔓延するなどよほどのことがない限り、実現可能だと考えています。それ以降は先ほど言ったような、国民全体の認識が変わることが必要です。「がん対策推進協議会」がモデルになると思いますが、代表者が集まって日本の医療について「こういう方向性がいい」、「こうしたい」というように話し合っていけば、おのずとそうなっていくでしょう。今回新しく設置された消費者庁には、庁を監視する委員会ができました。これも我々が主張していたことでしたが、医療についてもこういうものができていけばいいと思っています。そうすれば中医協の役割も変わってきます。医療に関する制度は国民による議論の中で決められ、PDCAによってさらに変更されていくという方向が本来の民主主義だと思っています。

民主の足立氏がずいぶんと熱く語っているのはいいのですが、何やら見てきたような別世界の話を真実らしく語っているようにも見えるのが少し気になりますかね…
両者に共通するのは基本的に医療費抑制政策は(多少温度差はありますが)見直すという方針であるということ、一方で医療費増額に対する歯止めの一つとして予防医学の重要性というものを強調しているということでしょうか。

いずれにしても金銭的な負担の増加は避けられないとして、その負担する主体を誰に置くかというのが両党の最大の差違で、間接税を中心に国民に広く負担をと言う自民党に対して、民主党は支出の見直しと企業負担保険料の増額でという主張でしょうか。
もっとも最近の政治の状況を見ますと各党とも必ずしも一枚板という感じでもないですから、いざとなるとこれが単に一議員の個人的意見ということでそっくり反故にされかねない危険性すら必ずしも否定できないところだとも思いますが(苦笑)。

そしてもう一点気になることは、確かに両党とも医療費増額、そしてその財源の捻出ということには気を使っているのは判るのですが、では今の医療現場の抱える問題とは金を出せば全てが解決することなのかという点に関してあまり言及がないことです。
例えば近年では医師不足だと大騒ぎされているせいか医師給与の相場というものは一部でトンでもないことになっているとも言いますが、いくら「3000万も出せば大学の助教授クラスが飛んでくる」などと嘯いてみたところで一年で逃げられているという現実があるわけですよね。
世間がバブルだのなんだのと浮かれていた中で実に四半世紀に渡って横ばいで据え置かれてきた勤務医の給与は、近年の不況と医療費削減政策の中で逆にじりじりと上昇傾向に転じていたという現実がありますが、国の支出としての医療費と現場スタッフの待遇やモラール(志気)とが必ずしも相関していないことは現在の勤務医の士気低下ぶりを見ても明らかではないかと思います。

となりますと、医療崩壊を云々するのであればこの現場志気を如何に引き上げられるのかという点にかかってくるとも言えるわけですが、そうした観点からするといずれの政党の主張も物足りないのではという懸念はあるところですよね。
ただ一応この面で擁護をしておくとすれば、必ずしもこれが正解という解決策がある問題であるのか、あるいはそうした解決策が存在していたとして実現可能性があるのかどうかも不明であることもまた事実だろうということです。
いずれにしても各党とも医療費を今より増やすような口ぶりではありますが、少なくとも無制限に出すつもりはない、あるいは増額とは別な一面における減額、抑制とセットであろうということはうかがわれる内容というところでしょうか。

さて、医療費の国庫支出ということに関して救急医療などは恐らく増やさざるを得ない、その一方で代わりにどこを削るかとなった場合に、年々進む人口高齢化とも絡めて増え続ける高齢者医療費の抑制が議論に登らないわけにはいきません。
先頃出ました2008年度の集計では75歳以上の後期高齢者に要した医療費総額は11兆円余りで、これは概ね医療費全体の1/3といったところとなっていますが、実際問題として歳を取れば基礎疾患も増え、亡くなる寸前が一番医療費がかかるだろうと考えるなら高齢者が若年者より医療費がかかるのは当然とも言えます。
例の後期高齢者医療制度なるものの導入でどうもこのあたりで迂闊なことを喋ると袋だたきになってしまうような状況ですが、医療費支出という観点からは後期高齢者の医療費というものが大きな争点となっているのも確かなのであって、このあたりに対する議論は決して避けて通るわけにもいかないと思いますけれどもね。

崩壊へと向かう医療制度問題の全体像を語れる政党の不在(2009年08月17日週刊ダイヤモンド)

徐々に崩壊しつつある日本の医療制度

 妊婦のたらいまわし事件や、増加し続ける高齢者の医療費など、最近医療にまつわる問題を耳にすることが増えてきたように感じます。かつては国民皆保険制度に守られ、世界でも最も安心な医療体制が整っていると言われた日本の医療制度も、今やこのままでは限界を迎えつつある証拠と言えるでしょう。医療の提供体制の問題と、医療費を支える仕組みの、両面の見直しが急務であり、今回はこれら両面について触れてみたいと思います。

 医療の担い手不足に対する方策は、医学部定員の増加によって医療の担い手を増やすことと、切り下げが続いていた診療報酬を再び増加させ、医者の報酬を増加させることに尽きるようです。

 民主党は、医学部定員を1.5倍に増やすことを掲げています。いつの時点と比べてなのか不明瞭ですが、2009年でおよそ8500人であったことを考えると4000人以上増員することになると思われます。また、地域医療を支えている医療機関に対して、診療報酬を増額することも謳っています。

 対する自民党は、医学部定員を600人程度増加させることと、救急医療と産科に対して重点的に診療報酬のプラス改定を行うとしています。医者の数自身を急増させるのではなく、重点医療の報酬を引き上げることによって、必要とされる救急医療や産科のなり手を増やそうという意図が感じられます。

 しかし、日本の歳出について考えると、医療費支出の国庫負担を含む社会保障関係費は年々増加しています。この背景にあるのが高齢化する社会でで、高齢化に伴う医療費負担の影響を真っ先に受けたのが、国民皆保険制度の一翼を担う健康保険でした。

 それでは、昨年議論を呼び、選挙戦でも焦点の一つになっている「後期高齢者医療制度」について見てみることにしましょう。

争点となる「後期高齢者医療制度」とは?

 2008年に老人保健を支える健康保険制度として「後期高齢者医療制度」がスタートしました。昨年制度がスタートする前後には、「姥捨て山法案」や「老人切り捨て」と批判されることもありましたが、「後期高齢者医療制度」について再度振り返ってみましょう。

「後期高齢者医療制度」とは、75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)の人が、全員加入となる健康保険制度のことです。この健康保険の保険料は高齢者自らが負担することになり、その負担額は地域によっても異なりますが、平均して月6000円程度とされています。現役世代の3倍かかるともいわれる老人医療の保険制度において、1割をこの高齢者からの保険料で賄い、4割を各健康保険組合からの「支援金」で、残りの5割を公庫で支えることとなったのです。

 では、この制度が始まる前に実施されていた「老人保健制度」はどうだったのでしょうか。現行制度との最大の違いは、高齢者は、現役世代の自営業者やフリーランサーも加入している国民健康保険に加入をするか、現役世代として働いている子供の健康保険に対して「扶養親族」として加入する(この場合、保険料は無料)ことになっていました。そして、老人医療費を捻出するために、現役世代が加入しているこれらの健康保険から、老人保健拠出金として5割を捻出し、残り5割を公庫負担とすることで支えていました。

 しかし、本来は加入者自身の現役世代の医療を支えるはずの健康保険において、この老人保健拠出基金部分が拡大し続け、支出の2割以上にも上る健康保険組合も現れるほどでした。そして、1999年には、健康保険組合による、老人保健拠出金の不払い運動が起きるまでに至ったのです。その結果、当時3割負担だった公庫負担を5割に引き上げ、さらに10年の議論を経て、現役世代の健康保険から高齢者の医療費を独立させた「後期高齢者医療制度」が誕生した、という流れだったのです。

 上のグラフのように、現在でも健康保険組合の財政は厳しい状況が続いており、国の財政の厳しさと合わせて、医療制度改革を考えた際に、常に財源の問題が持ち上がるのも頷けます。以下、「後期高齢者医療制度」に対する各党の主張を見てみたいと思います。

「後期高齢者医療制度」に対する各党の主張は?

 民主党は、この「後期高齢者医療制度」を廃止して、以前の状況に戻すと主張しています。しかも、政策INDEXの中で、若年負担率は現行をおおむね維持するとしていますから、これからも高齢者の数が増えていくことをふまえれば、相当な額の公庫負担が生じることになります。そして、民主党はそのための所要額を8500億円と見積もっており、税金(国庫)で負担するとしています。要するに、高齢者自身の保険料を高齢者に負担してもらうのではなく、税として広く社会全体で負っていくということです。

 自民党は、基本的には「後期高齢者医療制度」を継続する予定です。そのうえで窓口負担の上限を半減する、保険料の軽減措置を継続する、75歳以上のサラリーマンは現役の制度に加入し続けられるようにする、等々の緩和措置を取ろうとしているようです。1999年の「不払い運動」の結果生まれた制度であることを踏まえれば、同党の主張は当然のものであるといえるでしょう。

 民主党、自民党の最大の差異は、高齢者自身による保険料負担を求めるか否かであるといえます。ただ、これは現役世代の加入する健康保険と公庫からの負担の合計を、9割にするか10割にするかの差でしかないとも言えます。

 上のグラフのような傾向は今後も続き、高齢者比率は上昇の一途を辿ることは誰の目にも明らかです。そして、このままでは、いずれは「老人保険料の引き上げ」、「公庫負担の引き上げ」か「老人医療の質の切り下げ」を選択しなければならなくなるのは必至とも言えるでしょう。

 今回のマニフェストを見ると、目先の保険制度の話の良し悪しにのみ終始していて、「老齢期の医療はどうあるべきで、それは誰がどう支えるべきなのか」といった全体像を語る政党が不在なのが、非常に残念でなりません。明日から本格的に始まる選挙戦の中で、議論が進展することを期待して、注目して行きたいと思います。

しかしのっけから「医師の報酬を増加させることにつきる」などといいながら、実際の政策を見てみれば医師数増加>>医療費増加でどうみても医師報酬が増えるわけはないあたりに突っ込めよとも思うわけですけれどもね。
ついでに医療費を増やすといっても例によって政策誘導的にあっちを増やし、こっちは減額式ですから、特に疲弊著しい勤務医の待遇が金銭的にすら(実際にはほぼ無理でしょうが)改善するとも思えない話なんですが(その対策として開業医を締め上げて逃げ場をなくすなんて話に至っては…)
本稿の目的でも記事のテーマでもないのであまり突っ込みたくないのですが、ジャーナリストの皆さんもいい加減政党広報の丸写しで目先の議論に終始するのではなくて、もう少し自分の頭で考えて吟味するということを習慣づけて行った方がいいんじゃないでしょうか?

それはそれとして、この後期高齢者医療制度と健康保険との絡みについては以前にも紹介しましたところですが、金銭面を離れて高齢者医療の問題で考えてみるべきことに、特に超高齢者に関連してくる終末期医療の取り扱いということがあるのではないかとも思いますね。
その昔の小児科の警句に「子供は小さな大人ではない」という言葉がありましたが、小児の特殊性をなるほどそういうものかと納得するのであれば「高齢者は年齢の高い大人ではない」ということもまた納得していただく必要があるのではないでしょうか?
代謝であるとか生物学的な差違ももちろんなのですが、人文的な意味においても高齢者は少なくとも小児と同程度には違った存在であるのだと言う認識は身近に経験してみれば容易に理解出来ることだと思うのですが、どうも昨今の核家族化の影響かこの辺りの経験値が極めて乏しい人々も増えてきているように感じられるところです。

管理人などが危惧するのは現場を知らない人間ほど「姥捨て山制度断固粉砕!」「命の切り捨てを許すな!」などという普遍的な(いわば、反論し難い)言葉によって、高齢者医療というある意味で特殊な医療をミスリードしているという傾向があるのではないかということなのですね。
医療業界内部に限らずとも最後まで身近に老親を看取った人々であればそれなりに内心語るべきことはあろうかと思うのですが、臨終間際になって初めて顔を出したような遠い親戚の「なんでこんなになるまで放っておいたんですか!出来るだけのことをしてください!」なんて大声の方が力を持っていたりする、それはやはりおかしいんじゃないかと言うことですよ。
甚だしきは年老いた我が親を遠い故郷に放置した挙げ句、介護を押し付けた身内とも絶縁状態になったとも言われる割に介護経験者を名乗って本まで出版し、「自分が始めからみていたらこんなことにはならなかった」と嘯いたという方が厚労大臣にまで出世したという事例がありましたが、そんな人の語る高齢者医療政策を中身以前の問題として信用できますか?

救急だの医学部定員だのといった議論もそうですが、こういう機会にこそ現場の実情を知っている人間がもっと声をあげていかないことには、政治家も評論家もマスコミも無関係な他人はみんな銭金の話ばかりで、気がついたらホントの関係者は誰も望んでいない妙なシステムが出来上がっていたということになりかねないですよ。

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2009年8月20日 (木)

新型インフルエンザ、相次いで死亡例の報告

本日こういう話をするつもりではなかったのですが、予定を変更してまたもや新型インフルエンザの話題です。
さて、すでに御存知のように、先日沖縄で本邦初の死亡例があったと思ったところで、今度は相次いで二人目、三人目が亡くなったという報道が出ています。

実際問題として水面下に潜伏している死亡者数はもっと多いと思われるところですが、やはりこれは国内でも死者発生という報道が呼び水になって現場の意識がそちらに向き始めたということなんでしょうね。
今回亡くなった二人はいずれも高齢者ということで、従来若年者が主体と言われてきた新型患者像のメインストリームから少しばかり外れたところにあるようですが、こうした事例を見ますと新型とは思っていなかったあの症例ももしや…と心当たりの出てきた先生方も多いのではないでしょうか?
ともあれ、まずは二人目である神戸の事例から記事を拾い上げてみましょう。

新型インフル、国内2人目の死者 神戸の70代男性(2009年8月18日朝日新聞)

 神戸市は18日、新型の豚インフルエンザに感染した同市垂水区の男性(77)が同日早朝に入院先の病院で死亡した、と発表した。国内で新型インフルエンザ感染者の死者は、沖縄県の患者に次いで2人目。男性は糖尿病による腎不全で人工透析の治療を受けていた。急性気管支炎を起こし、持病の肺気腫が悪化したのが直接の死因。市は、新型インフルエンザが急性気管支炎を発症させた可能性があるとみている。

 市によると、男性は16日に38度の熱が出て、翌17日にかかりつけの市内の医療機関を受診。簡易検査では陰性だったが、せきなどの症状が重いため、午後1時ごろに別の市内の病院に入院。改めて簡易検査をしたところインフルエンザウイルスの陽性反応が出た。治療薬タミフルの処方を受けたが、翌18日早朝に容体が急変し、死亡した。

 市が男性から採取した検体をPCR検査(遺伝子検査)したところ、同日午後に新型インフルエンザに感染していたことが判明。男性は糖尿病で腎臓の働きが悪くなり、週に3回、人工透析の治療を受けていた上、もともと重い肺気腫があったという。現在のところ、家族や入院先での感染の報告はないという。
(略)

新型インフルエンザ:感染で肺気腫悪化か 入院翌日容体急変 神戸の死者、病院長語る(2009年8月19日毎日新聞)

 新型インフルエンザに感染し、死亡した神戸市の男性(77)が入院していた同市垂水区の総合病院の院長が毎日新聞の取材に応じた。入院当初、容体は落ち着いていたが、翌日に急変、死亡したという。院長は「亡くなられたのは残念だが、タミフルの投与など、できる限りの治療をした」と話した。一方、男性は個室に入院していたため他の患者との接触はなく、職員に新型インフルエンザの症状を訴える者もいないという。

 男性は高血圧と肺気腫、糖尿病の疾患があり、院長によると、週3回の透析治療を市内の別のかかりつけの医療機関で受けていた。今月17日午後、肺炎の疑いと診断され、院長が勤める病院に入院。微熱はあったものの、容体は安定していた。検査の結果、急性気管支炎と判明し、院長は「新型インフルエンザの可能性があるのでは」と疑ったという。

 同日の簡易検査でインフルエンザの陽性反応が出たため、神戸市保健所に連絡、「検体を取っておいてください」との指示を受けた。

 しかし男性は翌18日朝に容体が急変、死亡した。神戸市によると死因は急性気管支炎による肺気腫の悪化。院長は「感染で症状が悪化した可能性がある」と話した。腎疾患などの持病がある患者は、新型インフルエンザ感染で重症化の危険性があるとされ、感染予防の重要性が指摘されている。【米山淳】

基礎疾患があるハイリスク患者、しかも透析患者であったといった点は沖縄の事例と似通ったものを感じますが、こちらも経過をみてみますと「当初は落ち着いていたが、途中で急変」という、やはり沖縄の症例と同様の状況であったようで、「新型は当初軽症に見えても途中で重症化する」という従来の知見を裏付けた形でしょうか。
さいわい早期に新型と疑って検査を行っていたということで抗ウイルス薬の治療も開始されていたということですが、これも沖縄の事例と同様に投与後に急変しているということは基礎疾患の増悪もあるのでしょうが、あるいはウイルスの耐性化などを示唆する現象なのかも早急な解析が望まれるところですよね。
本症例の場合は迅速かつ適切な対応もあって周囲への感染もなく済んだようですが、名古屋での三人目の死亡例ではいささかやっかいな状況になっていたようで、非常に教訓的な経過を辿った症例であるのかなという印象を受けるところです。

名古屋でも新型インフル死者 入院先6人感染疑い(2009年8月19日朝日新聞)

 名古屋市は19日、新型インフルエンザに感染した名古屋市の80歳代の女性が同日、入院先の病院で死亡したと発表した。国内で新型インフルエンザ感染者の死者は、沖縄県、神戸市に次いで3人目。女性は多発性骨髄腫、心不全を患っていた。重症肺炎を起こしたのが死因。市では、新型インフルエンザが肺炎を引き起こしたとみている。

 市によると、女性は13日に39度5分の熱が出て、救急外来を受診。15日にせきが激しくなるなど症状が悪化して個室に移動した。17日に簡易検査でA型インフルエンザと判明。18日にPCR検査(遺伝子検査)をしたところ、新型インフルに感染していたことが判明、19日午前1時半、死亡した。

 女性に海外渡航歴は無い。女性の入院先の病院では女性のほか、入院患者2人、治療にあたった研修医1人、看護師3人の計6人が新型インフルに感染した疑いがある。同病院では、病棟への新たな入院を中止している。女性は発症前は市内の介護施設に入居していたが、同施設の他の入居者からは症状を訴える人は出ていない。

 女性は多発性骨髄腫だったことから、細菌性の感染症の疑いがあったため、抗生剤の投与はしたが、タミフルは投与していなかった。市によると、入院から簡易検査を行ったのが4日後だったことについて病院側は「細菌性感染症を疑ったので簡易検査は遅くなった」と説明しているという。
(略)

当初は誤嚥性肺炎と判断=「簡易検査徹底したい」と病院-名古屋(2009年8月19日時事ドットコム)

 新型インフルエンザに感染した女性(81)が死亡した名古屋市の総合病院は19日、記者会見し、女性の症状を当初、「誤嚥(ごえん)性肺炎」とみていたことを明らかにした。結果的に対応が遅れ、副院長は「新型インフルエンザの可能性が低いと判断しても、今後は簡易検査を徹底したい」と話した。
 同病院は、女性と接触があったとみられる医師、看護師、入院患者の計6人のA型インフルエンザ陽性を確認。女性から感染が広がった可能性があるという。

こちらも基礎疾患が多彩な患者ですが、特に注目すべきは基礎疾患として多発性骨髄腫があるということです。
介護施設入所中ということであるいは積極的な治療は行われていなかったのかも知れませんが、当然ながら基礎的な免疫力は低下し如何先生であったと思われますし、そもそも日常的に誤嚥や発熱を繰り返していた可能性もあり、これはいわゆる地雷症例であったのかとも思わされるところですよね。
恐らく全国の施設で人知れず同様の隠れインフルエンザ症例が既に発生しているのではないかと思われますが、診断、治療の遅れもさることながら、当該施設のように院内感染を発症する危険性も多々あるわけですから、発熱患者は発熱部屋での管理を行うか、入院時にルーチンで迅速等最低限のチェックを行うことが医学的という以上に社会的に求められることになってきそうです。
今後涼しい季節になってきますと従来型インフルエンザやその他の季節性呼吸器感染症も当然に増えてくるでしょうから、特にベッドに余裕のない施設にとっては非常に頭の痛い状況になってくるでしょうし、そもそも発熱患者全例にルーチンで検査をするほど迅速キットの在庫があるかとも危惧されるところですよね。

死亡例もさることながら全国で集団発生事例が相次ぐという状況で、とりわけ沖縄県では更に重傷例が多発しているということからこの時期に警報まで発令されたということです。
もはやこの時期ほとんどのインフルエンザが新型ということですから、やはりこれは季節性とは異なる特異な流行パターンを呈していると考えてよさそうですよね。
こうなりますとどこまで医療機関側が対応できるかという話になってくるわけですが、いたずらに危機感をあおり立てるばかりで不要不急の患者が病院に殺到するという状況だけはなんとしても避けなければならないところで、そうした面でも行政や報道サイドの社会的責任というものも問われているのではないかと思いますね。

新型インフル 新たに3児が重症 沖縄県が警報発令(2009年8月19日琉球新報)

 沖縄県は19日、新型インフルエンザの重症患者が3人新たに確認されたと発表した。3人は中部在住の13歳女子、南部在住の11歳女児、同じく1歳11カ月男児。3人は入院して、人工呼吸器を付けるなど治療を受けている。男児は慢性呼吸器疾患があるという。
 また、インフルエンザ定点医療機関からの報告数が29・6となったことを受け、インフルエンザ警報を発令した。夏場の警報発令は初めて

患者増で報告遅れ 新型インフルで死亡者 /沖縄(2009年8月18日琉球新報)

 県内で新型インフルエンザに感染した患者が死亡した件で、重症化しやすい患者の入院報告が患者の死亡後となったことを問題視する見方に対し、医療従事者からは「通常の救急業務でもぎりぎり。それに新型が重なり、現場の業務負担は増えている」と現場の状況への理解を求める声が上がっている。また、医療機関に患者が押し寄せ、医療提供機能がまひしないようにするためにも、医療機関の適切な受診の仕方や感染拡大を防ぐ基本的な予防策、健康管理の重要性が指摘されている。

現場はぎりぎり
 現在、県内では新型インフルエンザがまん延していることから、A型陽性であっても特別な場合を除き、遺伝子(PCR)検査はせず、新型として扱っている。県内58の定点医療機関からの報告では第33週(3~9日)は1定点当たり20・4人と流行注意報が発令中だ。県立中部病院内科・感染症科の遠藤和郎医師は「支障を来さないように工夫はしているが、患者を診て報告、他機関との連携など、業務は大幅に増えている。それに対して人員が新たに配置されるわけではなく、どの医療機関も大変だ」と明かす。
 定点医療機関の一つ、愛聖クリニック(沖縄市)の中田安彦院長は「患者が殺到すれば目の前の患者の治療に追われ、報告は二の次になるのが現場」と指摘する。
 新型インフルエンザはしばらくまん延が続くと見られ、医療機関は長期化に備えた態勢に移行している。中部病院では検査キットやマスクなどの診療材料の効率的な利用に努めるほか、医療従事者自身が“息切れ”しないよう心がけている。

感染症はうつるもの
 中田院長は「まん延している現段階で感染源を追うことは無理。報道では『院内感染かどうか』も問題となったが、院内感染を防ぐ努力はしても100%なくすことは不可能というのが医療従事者の常識」と話す。
 今回の死亡例を受けて医療従事者は「インフルエンザで人は死亡する。問題は、いかに急速な感染拡大を防ぎ一人でも多くの県民を守るかだ」とする。そのために「かぜのような症状がある場合には人の集まる場所に行かない。学校や会社は休む。咳エチケットなどの感染予防策の徹底」「軽症で救急病院に行かない」「免疫力が下がるとインフルエンザにかかりやすいため、ワクチン接種で防げる他の感染症を防ぐ」―などを挙げている。(玉城江梨子)

新型インフル:「全国的な流行」寸前に 8月に入り急増(2009年8月18日毎日新聞)

 国内の新型インフルエンザ感染が全国的な流行水準にほぼ達していることが18日、国立感染症研究所の調べで分かった。今月3~9日に全国約4700の定点医療機関から4630人のインフルエンザ感染報告があり、1機関当たり平均0.99で、感染研が「流行」と判断する平均「1」に迫った。夏場では異例の多さで、舛添要一厚生労働相は19日に緊急会見し、国民に感染予防と冷静な対応を呼び掛ける。

 感染研は「感染症サーベイランス(監視)」として、全国の定点医療機関から週ごとに患者数の報告を受けており、1機関当たりの感染報告が1週間で平均1以上あると、全国的な流行と判断している。例年、6~10月ごろの報告数は0.1未満が続くが、今年は7月から増加傾向になり、7月20~26日が0.28、同27日~8月2日が0.56に達していた。0.99となった同3~9日の推計受診患者は6万人に上る。それ以降も増えている可能性が高い。

 都道府県別では▽沖縄(20.36)▽奈良(1.85)▽大阪(1.80)▽東京(1.68)▽長崎(1.50)▽長野(1.44)の6都府県で既に平均1を超え、ほかに17府県が0.5以上。保健所の管内別では34都府県の139地域で1を超えているという。

 全国の地方衛生研究所で分析したウイルスの型は新型が約8割を占め、残りの大半はA香港型。感染研は、7月以降の感染者はほぼ全員が新型と推測している。

 一方、厚労省によると、新型の感染者の全数把握を中止した7月24日以降、今月9日現在で1066件の集団感染の報告があり、11日までに119人が入院している。厚労省は「夏休み明けに集団感染が起きないよう、特に学校で対策を徹底してほしい」と訴えている。【清水健二】

新型インフルエンザの定点当たり報告数を見てみますと今ひとつパターンが読み切れないところではあるのですが、先日も指摘しましたようにやはり南側の温暖な地域から広がっているという印象は拭えないところで、このあたりも何かしら新型特有の生物学的背景があるのかとも感じられるところではありますよね。
つい先日までは久しく沈黙を守っていたかに見える厚労省もさすがにこうした状況になりますと黙っているわけにもいかなくなったようですが、既に多くの関係者も「新型は夏になっても減らない、むしろ増えている」と警鐘を鳴らしてきた中で正直いささか動きが遅いのではないかという気もするところです。

新型インフル流行で対策を強化 厚労省、重症化防止など(2009年8月19日47ニュース)

 厚生労働省は19日、新型インフルエンザに感染し、今月12日から18日までの1週間に入院した患者は全国で計86人に上ると発表した。このうち重症化のリスクが高い基礎疾患(持病)がある人は死亡した3人を含む36人。医療・福祉施設などでの集団感染の発生件数は16日までの1週間で約660件に上り、7月下旬の調査開始からの総数が約1700件に達した。

 入院患者、集団感染とも増加が続いており、本格的流行が始まったとみられることから、同省は19日、糖尿病やぜんそくなどの基礎疾患がある患者の重症化防止のため、これまでの重症事例への対応をまとめた症例集を医療機関に配布するなど対策を強化することを決めた。

ワクチンの輸入の是非や接種の優先順位などについては、専門家や重症化の恐れがある患者団体の関係者らが参加する意見交換会を経て、具体的な対応を決定する構え。

 舛添要一厚労相は19日午前の会見で「本格的な流行が始まった」との認識を表明。6月の改定運用指針に基づき、重症患者の増加に対応できる病床数を確保するなど医療体制の整備を急ぐ。

 厚労省は、沖縄県宜野湾市の男性(57)らこれまでに亡くなった3人の患者に、慢性腎不全や肺気腫などの基礎疾患があったことを重視。こうした患者や妊婦、乳幼児の保護者に対し、インフルエンザのような症状が出た場合、早期に治療を受けるよう呼び掛けるとともに、医療機関には妊婦らに適切な情報提供を行うよう求めている。

厚労相、新型インフル「流行本格化」 対策実践呼びかけ(2009年8月19日朝日新聞)

 新型インフルエンザの感染者が全国的に急増している情勢を受け、舛添厚生労働相は19日午前、記者会見し、「本格的な流行が始まったと考えていい」と話した。そのうえで、このまま感染が拡大すれば医療機関で重症者対応ができなくなるとして、「感染の拡大防止には一人ひとりが対策を実践することにつきる」と呼びかけた。同日には名古屋市の80代女性が新型インフルエンザで亡くなり、国内の死者は3人となった。

 舛添氏は、流行の本格化は秋以降としていた従来の予想に反し、真夏でも感染が拡大していることについて、「私も予想できなかったことだ」と説明。「夏休み中なのに増えている。9月になって学校が再開されると感染が急激に拡大する危険性があると思う」と述べ、医療機関の負担増大に懸念を表明した。

 また、「病原性が低いということで、皆さんも忘れてしまっている」と「国民全体の慢心」が感染拡大の原因にもなっていると指摘した。舛添氏は「新しいウイルスへの警戒を解いてはいけない。感染は自分が止める、という気持ちが大事だ」と話し、手洗いやうがいの励行などを呼びかけた。

 新型インフルでは、慢性呼吸器疾患や慢性心疾患などの基礎疾患がある患者や、妊婦、乳幼児が感染すると重症化する危険性が高いとされる。舛添氏はこうした人たちに対して、「早期の受診、治療を心がけて欲しい」と語った。厚労省は今後、重症化した事例の概要を説明した症例集を作成し、各地の医療機関に配布する予定。
(略)

しかしまあ、久しく沈黙を守っていた舛添大臣の「病原性が低いということで、皆さんも忘れてしまっている」は良かったですかね(苦笑)。
さすがに素人の大臣にインフルエンザの流行まで予想していただこうとは誰も考えもつかなかったことだと思いますが(苦笑)、さてこの状況でどのような対応をしていくのが良いのでしょうか。

一つ気になることは、マスコミが果たして正しく状況を理解しているのかということでしょうか。
大臣の会見においては「基礎疾患がある患者や、妊婦、乳幼児」については「早期の受診、治療を心がけて欲しい」と呼びかけているわけですが、言葉が一人歩きして「軽症でも侮ってはならないと聞いた。少しでも風邪っぽく感じたら病院へ行かなければ」と皆が殺到するという状況だけはなんとしても避けなければならないわけです。
そうした視点で記事を見ると非常に紛らわしい表現だなとも感じられるわけですが、ここは誤解を避けるためにもきちんとした報道をしていただきたいところですよね。

公衆衛生学的観点から見ると、現段階および近い将来に感染しそうな層というのは小児や学生、若年者といった活動性が高く集団行動の多い人々であると思われますが、これらはかつてのインフルエンザ学童接種などからも判るように社会における流行の入り口になると予想される人々でもあるわけです。
流行を起こさないということは既に現実的ではなさそうですが、これらの人々の間で発生するだろう患者増加のカーブをなるべく緩やかにし、社会的医学的に対応できるキャパシティーの範囲内にとどめつつ静かに流行が広がっていくという状況にもっていくことが当面の目標となるでしょうね。
その意味では夏に流行が発生するという現象は新型の感染力の強さを示すものでもありますが、同時に冬と比べれば人間側の抵抗力も高いだろうと予想されるわけですから、社会集団における緩やかなワクチネーションという意味では決して悲観する状況ではないと思いますね。

個人レベルで見ますと基礎疾患もなく全身状態も良好な軽症患者が無闇に人前に出歩くなということに尽きるわけですが、未だに勘違いされているのが以前から何度か取り上げてきましたマスク着用ということの意味です。
患者から周囲の人々へは飛沫を介してウイルスがうつっていくわけですが、これは直接口や鼻から体内に入っていくというよりは患者からの飛沫が付着したものを触った手指などから食事等の機会を通じて感染する場合が多いとされています。
要するにマスクとはあくまで患者側が周囲にうつさないために使用するものであって、健常者側が感染防御を行うには半端にマスクをするよりも繰り返しの手洗いやうがい、洗顔といった行為で付着したウイルスを洗い流す方が有用であって、特に何日も使っているような汚染されたマスクを触った手で飯を食うなど自ら病気を呼び込んでいるようなものとも言えるわけです。

タミフルなどの抗ウイルス薬も特にハイリスク症例では積極的な使用が求められていますが、問題はこれら抗ウイルス薬とはウイルスを無くする薬ではなく、細胞内で増えたウイルスがそれ以上細胞から外へと出て行かなくするための薬であるということです。
インフルエンザの場合病院にかかるような症状が出てきた段階では既にウイルス増殖のピークは過ぎているとも言われますから、この時点で薬を飲み始めたところで鼻粘膜などにたっぷりと付着している増えきったウイルスは当分そのままでそこにあるわけですね(実際発症後10日~2週間後くらいまでウイルスが検出されますが、ただし検出されると感染力を持っているは別問題です)。
一昔前の対症療法だけで自然な回復を待っていた時代であれば熱が引いてくればそうそう人にうつすようなウイルスは残っていないだろうと考えられていたわけですが、抗ウイルス薬であっさりと1日2日で解熱したという場合に残ったウイルスがいつまで感染力を保持しているかは未だはっきりしたデータはないようです(御存知の方がいらっしゃれば御一報ください)。
こうした事情からも薬を飲んで楽になったからとすぐに出歩くのではなく、少なくとも抗ウイルス薬を飲み終える5日間くらいは人前に出ることなく大人しくしているのが良かろうと思うわけですが、現場の臨床家の先生方も単に目の前の患者の治療のみならず公衆衛生学的な視点からの患者指導にも同様に行っていただきたいところですよね。

なんにしろこうした大規模な流行を引き起こす感染症というものは一人一人がどうこうというだけにとどまらず、集団としてどのように対応するかという点が何よりも重要になってきます。
日本人はわりあい規律というものを重んじる民族だと世界的には見なされているようですが、日本人もこれだけ頑張っているんだぞと世界に示すにはいい機会であるのかも知れないと、前向きに捉えておくのがよいのでしょうかね。

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2009年8月19日 (水)

国政選挙における医療政策 その一

いよいよ国政の今後を占う選挙戦が始まりまして、当然ながら各党の政策に注目が集まるところですが、今回は中でも医療政策を中心に注目してみましょう。

さて、現今の状況を反映してか国民も医療・介護をはじめとする社会保障政策には特に関心が高いようなのですが、政策そのものよりもむしろ政策を解説する各メディア等の言説の法が興味深いようにも感じられますね。
昨今の医療崩壊問題に関してはどの政党が政権を担当するよりも状況が改善するかどうかということが問題なのでしょうが、今のところ確実にと言えるようなビジョンを打ち出してきた政党はないようで、国民の間にも漠然とした不安が広がっているのではないでしょうか。
特に地方版などではこの際とばかりに地域医療の現状に立脚した恨み節混じりの声数多という感じになっているようですが、試みにいくつかを拾い上げてみましょう。

痛む・09年衆院選:暮らしと改革の今/3 地域医療崩壊 /岩手(2009年8月7日毎日新聞)

◇医師、住民我慢続く
(略)
 県立医療機関で働く勤務医の流出に歯止めがかからない。07年度末460人いた常勤医は08年度末474人に増えた。だが、今年度は6月1日現在454人まで落ち込んだ。県医療局は「過酷な勤務状況の解消が急務だ」と言う。

 「見通しが全く見えなかった」。外科医の菊池信太郎さん(55)は、04年に過酷な勤務と人が増えない状況から、山田病院を辞めた一人だ。今は、盛岡市内で開業している。

 岩手医大から山田病院に移った90年当時、既に人手不足で、5人の常勤医のうち外科医は菊池さん1人だけだった。大学病院では4人で行う手術を一人で行った。手術後は患者・家族への説明や病理検査用の標本作り。激務の果て、00年10月に出血性十二指腸潰瘍(かいよう)で倒れた。回復後も医師が増員される見込みはなく、退職を選んだ。

 菊池さんは嘆く。「問題点が長年指摘されながら、なぜ逆の(悪い)方向に向かったのか」。指摘されていたのは、医師増加に伴う医療費増加を見越して国が進めた医学部の定員減。さらに、04年に始まった自由に研修先を選べる新研修医制度が、追い打ちをかけた。研修医が都市部で好待遇の病院に集中したため、研修医不足となった大学病院が地方の派遣先から医師を引き揚げ、地方は一層状況が悪くなった。
(略)

この国のすがた:09解散・総選挙/4 医師不足 /鳥取(2009年8月7日毎日新聞)

◇「根本的な改革を」
 地方の医師不足が深刻化している。鳥取市立病院は昨年9月末、小児科の休診に追い込まれた。昨年6月から民間の医師紹介業者に登録したり、岡山大医学部などに派遣要請をしてきたが、今もめどが立っていない。

 勤務していた2人の小児科医は、同市内の県立中央病院に集約された。国は「拠点病院への集約化・重点化」の構想を描いている。医師の派遣元の鳥取大付属病院の豊島良太院長は「2人体制では負担が重く、疲弊を招く。医師の集中はやむを得ない」と判断した。

 ところが今年2月、拠点病院さえも医師不足を理由に地域医療が崩壊しかねない事態が起きた。鳥取大付属病院の救急医4人全員が辞職を表明したのだ。多すぎる当直といった過大な負担が理由だった。

 県外からも医師を集め体制強化を図って何とか救急救命機能は維持した。一方、8月からは「時間外診療特別料金」を導入して、患者の他病院への拡散を図っている。夜間などに救命救急センターで受診し、軽症で入院の必要がなかった患者には一律5250円を負担してもらう仕組み。不要な受診を抑制し、医師の負担軽減を狙っている。特別料金を知らずに受診した患者が納得せずに、現場が混乱する恐れもある。

 山間部の医師不足はより深刻だが、智頭病院では、地域一丸となって地域医療の崩壊を防ごうという取り組みが進められている。小児科の大谷恭一医師は鳥取市より東南部の公立病院では唯一の小児科医だ。多忙を極める中、大谷医師が重視しているのは、家庭でできる予防や看護の浸透。うがいの仕方、適切な水分のとり方といった基本的な予防策をちらしやホームページで伝えてきた。患者側にも“コンビニ受診”はやめようという意識が浸透しつつある。
(略)
 しかし、家庭での予防や検査抑制は病院経営にとってはマイナス。大谷医師は「経営面を考えると、真に患者と向き合う小児科医療はナンセンス。民間でなく町直轄だからできる」と言う。頼りの町財政は火の車だ。
(略)
 厚労省は5月、研修医の募集定員について人口などに応じて都道府県ごとに上限を定め、医師の少ない県に加算することを決めた。「地方の大学病院への研修医回帰を図る」としているが、上限枠は研修医の受け入れ実績が反映される。県医療政策課は「過去の実績がない地方が切り捨てられる」と危機感を募らせる。

 医師確保に奔走する鳥取市立病院の武田行雄事務局長は言う。「小手先の政策では何も変わらない。診療報酬の改善とか、根本的な改革をしてくれないと地方に医師は残らない」【宇多川はるか】

医療 争点の現場で 小児科医足りない /広島(2009年8月14日読売新聞)

(略)
 県内で、小児科医や産科医不足が解消されない。県医療政策課によると、県内の小児科医数は2006年で、15歳未満の子ども10万人当たり152・4人。隣県の岡山県(222・9人)、島根県(242・9人)だけでなく、全国平均(177・9人)も下回り、全国で36位だった。医師不足には様々な要因があるが、舟入病院の兵藤純夫副院長は「新臨床研修制度の導入が決定的だった」と指摘する。
(略)
 県は小児科医の負担を減らそうと、急病時の相談に応じる「こどもの救急電話相談」を05年度に開設したが、めざましい効果は上がっていない。県医療政策課は「県単独でできることは限られている」とし、兵藤副院長も「臨床研修制度を改め、若い医師が意欲を持って働ける環境を作らなければ」と求める。

 今年4月、JA府中総合病院(府中市)で常勤の小児科医が不在となり、医師の補充ができなかった。このため、同病院は現在、尾道市の病院から非常勤医師の派遣を受けている。

 外来はこれまで通り行っているが、入院や夜間救急には対応できず、府中市の子どもが夜間に小児科を受診するには、福山市へ出なければならない。府中総合病院の担当者はこう打ち明ける。「地域のために常勤医を確保するのが一番だけれど、今は、どこの病院も医師不足に悩んでいる。簡単にはいかない」
(略)

争点を追う:09衆院選/8止 地域医療 /奈良(2009年8月13日毎日新聞)

◇公的7病院で産科休診 慢性的な人手不足「365日、1人では無理」
 昨年2月、桜井市の済生会中和病院に県立医大から一通の通知が届いた。「産婦人科医を県立三室病院(三郷町)に異動させる。後任人事はない」という内容だった。当時、同病院の常勤産婦人科医は2人。「24時間365日呼び出される産科は、とても1人では務まらない。休診せざるを得なかった」。杉本勉・総務課長(当時)は振り返る。
(略)
 1人の医師の異動や退職が休診につながる不安定な状態。05年以降、町立大淀病院や県立五條病院など七つの公的病院で産科の休診が相次いだ。厚生労働省によると、県内の産婦人科医数は02年の99人から06年は87人に減少。人口10万人当たり6・2人で全国平均を下回る。

 県内で受け入れ可能な分べん数は昨年1万2144人で、出生数を1164人上回るため、県は「産科医が足りないわけではない」と強調する。ただ、民間の産科病院長は「公的病院には分べんだけでなく、産科の2次3次救急の役割がある。それを果たしていないことも問題だ」と指摘する。

 県は08年5月、県立医大病院(橿原市)に、高度な母子医療を提供する総合周産期母子医療センターを整備した。しかし、新生児集中治療室(NICU)の31床のうち、運用しているのは25床にとどまる。県立奈良病院(奈良市)では、今年4月から69床が休床になった。いずれも看護師不足が原因だ。慢性的な人手不足で、地域医療の現場は危機にひんしている。【阿部亮介】

政治の課題・府内の現場から:09衆院選・京都/1 医療 /京都(2009年8月11日毎日新聞)

 ◇産科医確保めど立たず 南丹圏、常勤医1人産休で分娩数制限
 ◇「国の取り組み」が不可欠

 亀岡市、南丹市、京丹波町の南丹医療圏で、中核病院「公立南丹病院」(南丹市八木町)の産婦人科が今月、常勤医1人の産休入りに伴い分娩(ぶんべん)数の制限を始めた。3人の常勤医でこなしていた月40件前後を、里帰り出産を中心に10件程度削減。年内の予約は既に埋まっている。
(略)
 同病院は常勤医の産休に備えて今冬から府立医大や府当局に補充派遣を要請してきたが、めどは立たない。このままでは、外来を止めないと緊急手術ができない。1人月10日前後だった当直は非常勤医の助けを借りても12~13回になる。「これでは残る常勤医2人ももたない」と西田勇人事務局長は言う。

 「以前は医局に頼めば良かったが、今はそこに人がいない」と、ある自治体の医療担当職員。新臨床研修制度で研修先を選べるようになったのが大きな要因だ。産科医相手の医療過誤訴訟の多さも背景にある。「現場の苦労で維持されていて、1人がやめれば崩れる所は他にも少なくない」

 西田事務局長は「訴訟を起こされても医師に負担がかからない体制も必要。医師確保は一病院では無理。国として考えてもらわないと」と話した。
(略)

いやあ、こうまで恨み節が連なるといっそ見事と言いたくなるほどですが、ここまで国の医療政策に不平不満がいっぱいという一方で、「こんなに医者が逃げていくって、ひょっとしてボクらも何か間違ったことしてたんじゃないの?」という視点が一つもなさそうなところにも注目しておきたいですね。
確かにここ数年、明らかに状況に対して後手に回っていることからも政治の無為無策(あるいは意図してのものなのでしょうか?)も問題なのは確かでしょうが、一方で崩壊する医療という現実に直面する地域住民が全くの被害者であるのかと言えばそうも言い切れないところにこの問題の根深さがあります。
医者が逃げていくと言いますが、逃げていく先にあって自分たちにないものは何なのか、一体何が嫌で逃げ出していったのかという考察がなければ、「新臨床研修制度によって地方の医者が都市部に集まり」などと今さらな結論しか出ず永久に真相にはほど遠いところを彷徨うしかないわけですよね。
そうした背景事情を考えてみるための材料として、こちらの記事などを見てみましょう。

選択:争点 ’09衆院選/4止 医療 /宮城(2009年8月16日毎日新聞)

◇欠ける医師定住の視点

 サイレンの音がやみ、救急車が登米市立佐沼病院(300床)に到着した。午前5時半。患者は目まいで自ら119番した1人暮らしの60代女性。1階の救急診察室を太陽が照らし始めた中、看護師2人が診療用ベッドを用意。当直室にいた内科医、千葉正典さん(50)が眠気をこらえながら診察を始めた。「手足はしびれませんか」

 女性は軽い自律神経失調の可能性があると診断され、目まい止めの点滴が施された。夜間の救急外来は本来、入院が必要な重症患者に対応するのが目的だ。「昼間の外来に来てほしいけれど、1人暮らしだから不安なので、すぐに救急車を呼んでしまう」と千葉さんはため息をついた。

 登米市は県内で最も厳しい医師不足にあえぐ。人口10万人当たりの医師数(06年末)は106人で仙台市の3分の1程度。市の中核病院の佐沼病院では千葉さんが赴任した04年以降、23人いた医師が開業や多忙などを理由に17人に減った。しわ寄せは残った医師に行き、当直の頻度は月2回以上に増えた。

 当直は通常勤務終了後、午後5時15分から翌日午前8時半まで。当直明けも通常通り夕方まで勤務する。この日の当直では仮眠しようとしても午後11時20分、午前0時55分、3時、5時半、6時50分と傷病者が来る度に起こされた。深夜に発熱で来院した50代の男性は前日に発熱していた。「どうして昼に来ないの。医者の身にもなってよ」と声を荒らげた。この日は当直中に診察した19人全員が入院の必要はなかった

 千葉さんは休日、最新医療技術を学ぶため仙台や東京での勉強会に出席することも多い。帰宅後も入院患者の容体が悪化すれば呼び出される。3歳の娘や妻と過ごす時間の確保に悩む日々だ。

 医師の過大な負担に支えられている地域医療だけに、医師不足は市民の生活水準まで悪化させる。佐沼病院は06年5月に小児科、07年9月に産婦人科で、いずれも入院患者受け入れと救急外来を休止した。常勤医が確保できなくなったためだ。市民は休日・夜間に危険性が高い分娩(ぶんべん)や子供の病気の場合、石巻や大崎市内の病院を利用しなければならない。

 衆院選のマニフェストでは各党とも医師数の増員でほぼ一致している。自民党は医学部の定員増、民主党も医師養成数を1・5倍にすると訴える。

 千葉さんは単に医師を増やすだけではなく、地方に定住させるためには職住環境の改善が不可欠と主張する。だが、行政側から熱意は伝わってこないという。「市の職員と地域医療について話し合ってもほとんど発言がない」。政権政党には地方行政機関を動かし、機能させる地域医療政策の推進を期待している。【比嘉洋】=おわり

住民の無節操な受診態度が医療現場の疲弊を招いているという前半と、突然行政の問題にすり替えられているように見える後半で文脈が支離滅裂という気がしないでもないんですが、うがった見方をすれば経営が厳しい毎日さんとしては間違っても購買者批判と取られかねない内容は書けないということなんでしょうか?(苦笑)
しかしこの記事、うわ~千葉先生そないきついこと言うてはったら市内におられんようになりますやん!なんて心配になってくるところですが、実はこの千葉先生はそんなヤワな先生と違います。
同市のHPには電子会議室が設置されているあたりは今どきなかなか偉いものだなと思うわけですが、病院移転の提案に端を発し「なぜ当市にはまともな総合病院もないのか!」と熱い議論を交わされている最中に登場された千葉先生、こちらでも実名で登場され熱心に主張をされているのですね。
ここでの議論自体も医療現場に対するありがちな誤解も含めて、地域医療に関する全国共通の問題としてなかなか面白いものですので、少し長くなりますが引用させていただきます。

登米市電子会議室「病院問題について」スレッドより抜粋

Re: 病院問題について ( No.4 )
名前: 一般人

    病院問題については、私もひとことお邪魔させていただきます。

    私は、現在婦人科の病気を患っています。
    お恥ずかしい話をさせていただきますが、月のものの時には、激痛どころの騒ぎではない状態です。
    それ以外でも、毎日下腹部は痛みます。
(略)
    まだ、古川だから近いじゃないか、そう思われるかもしれません。
    しかし、痛みを抱えながら家族のものがいないとき、自分で運転をしていくのは恐ろしいものがあります。

    もし、佐沼病院に常勤でお医者さんが居てくれたら・・・。
    そう思えるだけでも安心すると思います。
    たらいまわしにされた、そんな感じを受けています

    産婦人科も、小児科もないような総合病院なんて、考えられますか???
    内科だけあればいいんですか??
    もっともっと、登米市を元気にしたいのであれば、まずは医療を充実させるべきだと思います。

医療を充実させて損なことはなにもないはずです。

病院問題について ( No.5 )
名前: はっぱ

    3月に私の叔母が脳出血で急逝しました。

    佐沼で倒れて佐沼病院に救急車で運ばれ、CTを撮りここでは無理なので大崎市民病院で手術といわれました。
(略)
    そしてそこの医師に一言
    “佐沼に脳外科があれば助かったのにね・・・”といわれました。

    改めて登米市の医療問題は深刻だと感じました。

    助かるべく命が医療問題のため失われていく・・・うちの叔母だけではないと思います。

Re: 病院問題について ( No.6 )
名前: 社会人一年生

    われわれが布施市長を選んだ最大の理由は医療問題(佐沼病院を中心とする病院の連携および機能向上)と福祉介護の充実にあったはず!!だが改善されることはなく悪化する一方だ。少なくても救急医療チームの編成や、開頭手術を行える医師の常在などが必要だと思う。

Re: 病院問題について ( No.7 )
名前: ぷぅ

    そう言えば、病院の医師も、登米市には総合病院がないのが不思議だって言っていました。これだけの面積、人口があるのにないのがおかしいと。
    働くきっかけとして、勤務条件だと思うんだけど、やりがいもだけど、収入の面で合わないんじゃないのかなって思うんですよね。やっぱり、そこは人間。給料が高い病院で働きたいですよね。医師が増えないのは、給料が安すぎるのではないのかな?
    日赤に、最近入院して手術を受けたんですけど、医師と少し話をして、労働条件とか聞くと結構過酷なんですよね。土日関係なく出勤して診察とかあるんですよね。そういう面をしると、見合った報酬なのではないかと思うんですよね。でも、日赤で受けることになったのは、登米市圏内で受け入れられる病院がなく、紹介状を書いてもらったんですけどね。
    少しでも、近くで、家族や患者個人負担を軽減することを、考えたら、医師を増やしてほしいですよね。

Re: 病院問題について ( No.8 )
名前: 佐沼にいたことがあるものより

    市立病院の累積赤字をご存知ですか。平成18年度時点でで80億ですよ。いまやっている菅野美穂が主演していうる仮想のつぶれそうな公立病院の赤字がたしか43億の設定です。いまの佐沼病院には、お金をもらっても、私は医師として赴任する勇気がありません。こわくていけないのです。それに、いまの医療機器では開業医レベル以上のことはできない可能性がたかいとおもいます。医師の評判を聞いたかぎりでは、同僚として一緒にはたらける自身がありません。もちろんうわさどおりではなくいい医師もいるのでしょうが。今回病床をかなり削ったようですが、給与を上げても、医師は集まりません。最近は医師の傾向も変わって、お金で集まる傾向にはありますが、医師免許をもっていても、使えない医師を頭数だけそろえてもだめです。根本的に出直しても、医療設備がそろってないと、医師はあつまりません。もう再建は難しいように思えます。診療所にするなりして、重症、救急はは大崎や石巻、県立循環器呼吸器病センターにお願いするというのが、方法のひとつかと思います。県立循環器呼吸器病センターの医療設備は東北でも有数の医療機器がそろっているのをみなさんはご存知ですか。もう、聴診器一本で診療するなら、病院は大きな病院はいらないのです。いい医者をあつめ、ちゃんとした病院にするには、まずは、研修医があつまるような病院を目指さないとだめだとおもいます。市の開業医が毎週外来をやっていたり、入院をおかない先生がいたり、医療設備がととのってない病院に、いったいなにを期待するのですか。私は医師として、上記の状況を踏まえたときに、市民のみなさんが佐沼病院に何を期待されるのかわかりません。診療所にするなら、開業医とおなじなので、不要ということも考えられます。財政的に佐沼病院のために第2の夕張にならないことを祈ってます。

考えるヒントを少し ( No.11 )
名前: 千葉正典

 佐沼病院の内科で仕事をしている千葉です。
 初めてメールします。反響があっても時間がないのでお返事はしません。ただ一言だけ。あしからず。
 佐沼病院の中身の議論とこれまでの累積赤字の議論は分けたほうがいいと思います。
 医師不足問題は医師の人事を決める大学の事情など、いろんな要素が関わり今に至っています。
自治体ではどうしようもない部分もあります。これに関しては医療従事者と行政の連携が重要で、
今後の課題です。ただ、どんな科であれ医師一人体制では、入院患者を持つので365日仕事をしなくてはなりません。
長続きしないので複数人数の医師を呼べるかを考えてください。
 赤字について、、、たとえば市役所や各支所は何か黒字を出しているんでしょうか?市立の公園は?図書館は?
 合併で職員が増え、各課が適正な人数なのか問われず、行政や市民サービス部門の人件費が何も言われない一方で、
病院の中を走り回って市民の命を守ろうと頑張る佐沼病院が、つまり医療サービス部門だけが赤字と騒がれるのでしょうか?
 私立病院ではカットされる不採算医療部門を税金で赤字を出しながらするから、市民は安心なのでは?
夜間救急は十分不採算部門ですが全科やめられますか?もちろん、無駄をなくす努力は大切で、現在も努力中です。
 自治体の心意気を見せる様な議論をお願いしますね。
なお、私、2年前に広報とめ(カラー版)に「こちら地域医療連携室」というタイトルで文を書いているのですが
あまり利用されなかったんだなと残念に思っています。行政の単なるポーズだったんだなと。(個人的意見でした)

ん・・・ ( No.12 )
名前: はっぱ

    あの~・・・

    私は医療に関わる仕事もしているわけではないし、難しいことは分からないのですが・・・

    どうのこうのでなくて、佐沼に脳外科がないために1人の助かるべく命が助からなかったんです。

田舎だから、赤字だから仕方ないんでしょうか???
    人間の命ってそんなに簡単なものなんでしょうか?

    私は脳外科が欲しいとは一言も言ってません。助かるべく命が助からない状態では何とかすべきではないのでしょうか?と言いたかっただけです。

    赤字の自治体は助かるべく人間が医療が進んでいないために亡くなるのは仕方ないんでしょうか?

Re: 病院問題について ( No.14 )
名前: 佐沼にいたことがあるものより

    それは、仙台にいようと東京にいようと同じ事です。すぐに病院にいける人と都市部でも佐沼から古川の30分以上かかるひとも多くありません。仙台の救急隊の病院到着は全国でもワースト、、、に入るくらいです。脳外科がいたら助かっていたとどのえらい先生がいったのかわかりませんが、そんなことは言えることではありません。もしかしたら脳外科医がいて搬送がはやければたすかったかもしれない、ということではないでしょうか。仙台でも小児科、産婦人科などどんどん救急から撤退しています。それらの科が近くにあれば助かったという人も仙台でも東京でも多くいると思います。それでもいろいろな病院で救急が成り立たなくなっているのは、日本の医療制度が、破たんしかかっているのです。命は何よりも重しと奇麗事をいってもどうしようもない日本の医療の状況になってきているのを考えていただいたほうがいいと思います。あなたは救急も含めた医療がどのくらいお金がかかるか考えたことがありますか。ひとつの考えとして登米市でもっとも早急に突然の不慮の死を避けるには、突然死を起こす人の何%かの人を救う除細動器を多くすることです。学校にひとつではなく、学校のいろいろなところ、町のいろいろなところに除細動器をおけば、佐沼病院で人が足りなくて入院患者や救急を診れない医者を一人雇う1年分の給料で約80台近くの除細動器がおけるのです。これは一例ですが、医者、看護婦、その他の医療スタッフ、高度な医療機器などなど、登米市の財政でまかなって、第二の夕張になって、診療所しかなくなるよりも、除細動器や近隣の救急体制にお金をかけて、早く高度医療を受けられるようにしたほうが、登米市民のためだと思います。

Re: 病院問題について ( No.16 )
名前: 佐沼にいたことがあるものより

    千葉先生には失礼ですが登米市民の救急医療は行うには、古川、石巻へのお願いして、その分、登米市立佐沼病院を縮小したほうが多くの市民が高度医療の恩恵を受けることができ助かると思います。先生が一生懸命なさっている高度医療機器を要さない医療は、登米市の開業医の先生にお願いしても大丈夫だと思います。現に登米市立病院の外来は登米市で開業している先生がやっている科があるではありませんか。入院をもたずに、外来を市内の開業医の先生にお願いする税金はなんなのですか。患者さんは直接その開業医の先生をおとずれるのと何がちがうのですか。

Re: 病院問題について ( No.17 )
名前: 佐沼にいたことがあるものより

    赤字の自治体が、、、ということがありますが、いま、赤字ではない自治体のほうが少なくて、医療だけではなく、他の分野でも東京の一人勝ちだとおもいます。東京と地方県庁所在地の医療格差は、かなりある分野で大きいのかもしれません。東京にいれば助かったのに、仙台にいたので助からなかったという場合も多くあると思います。どのようにして、できるだけ多くの登米市民を救うかということを、考えていただければと思うのです。救命救急を要する高度医療に医者の数だけではなく、それに付随する莫大な投資が必要であるということを少し登米市の財政状況を加味して考えていただければと思うのです。
    自分の家族であれば、救急の場合、救命隊がすぐに来てくれて、30分で古川や石巻に早く搬送してもらったほうがいいと個人的に考えてしまうので、かなりきつい表現になって申し訳ありませんでした。お許しください。

Re: 病院問題について ( No.18 )
名前: 隊長

    久しぶりに掲示板を見ました。
    病院問題で皆さん真剣に考えてるなと思いながら読ませてもらいました。
    私も『佐沼にいたことあるもの』さんと同じように考えています。
    財政が破綻してはどうにもなりません。このままの病院の赤字が続けば登米市本体が倒れてしまうのではないでしょうか。
    病院も病院間競争に勝ち残らければならに時代でしょう。
    佐沼病院を仮に全ての機能を持つ総合病院にしたとしても【新たにかなりの財政負担がかかるのではないでしょうか】近隣の病院との競争には勝てないと思います。そうであれば今以上の財政負担を登米市は負わなければならない。
    そうなった場合間違いなく登米市は夕張と同じ状態になります。それだけは避けなければなりません。幸い登米市の周りにはそれなりの病院があります。そことの連携を今以上に考える実現して行くことを市当局は真剣に考えてもらいたいと思っております。

千葉先生の「自治体の心意気を見せる様な議論をお願いします」も良かったですが、ある意味でこの地域医療の問題、国レベルにおける医療政策問題と規模の差こそあれ似たような部分も多々あるわけですよね。
一方では命は金銭に換えられないといいながら、その一方で医療費は高すぎると主張し現場に対しては一方的に制約を課す、そうした構図は国と地方とを問わず全く共通ではないでしょうか。
そして行政のそうした態度を辿っていけば、結局は「最近税金高すぎるぞ!もっと行政の無駄を削れ!」と主張する有権者の声に行き着くわけですから、なんのことはない税金として出資した分に相応の医療を今になって還元されているに過ぎないとも言える話なのです。

医療に金を出さないのがケシカランだとか、新臨床研修制度なんてさっさとやめてしまえとか、確かにお上に文句を言っているだけなら楽で良いのですが、それでは地方行政は、そして地域住民は自ら称するような単なる国政の被害者であるのかと言えば、必ずしも異論無しとしない方々も多いのではないでしょうか。
現実問題として乏しい財源やマンパワーの中でも頑張って地域医療を行っている自治体病院はあるし、ど田舎にありながら研修医をはじめスタッフを集めている人気病院もあるわけで、他方では医者が働きやすいようにという住民の自主的な働きかけが実って新たに医者を集めることに成功した地域もあるわけです。
しかもそうした自治体が財政的に豊かであるとか、地域住民がお金持ちばかりであるとか、あるいは激務に見合って(苦笑)医者の給料が際だって良いとか言うわけでもないのだという事実をまず認識すべきでしょう。

同じような前提条件で出発したはずなのに勝ち組と負け組が何故生じたのかを理解した上で、まずは「じゃあ、自分たちは何故勝ち組になれなかったのか?」と問い直すところから始めなければ永久にそこから脱することなどできないでしょうね。
その点で国と比べて地方は財政規模も小さくあまり大きなことは出来ないとネガティブに捉えられがちですが、こと医療というものに関してはこれを長所に置き換えることも可能だと思います。
何故なら医者という人種は世間の平均値と比べるとお馬鹿で単純でスポ根人間が多いですから(苦笑)、幾ら激務で安月給だろうが「心意気」を見せれば頑張ってしまうという一面が未だに結構あるからです。

所帯が小さく互いの顔が見えるということはすなわち地域住民の行動が(言説ではなく)直接的に医療スタッフの心情に訴えかけることも可能であるということで、これがすなわち全国津々浦々に至るまで医師不足という時代にあって、地域の民度が医者を集めるという可能性に他なりません。
そのためには何よりも前掲の記事中に登場するような疲弊しながらも地域医療を支え続ける千葉先生はじめ諸先生方の目に、昼夜を問わず病院に押し寄せる地域住民の姿が被害者として映っているのかどうかも一度考え直してみる必要があるんじゃないかと思いますし、単なるクレクレ君でいる限り今いる医者すらいずれ逃げ出すことを覚悟しなければならないでしょうね。
医療崩壊という身近な現象に対して国や自治体が何とかしろと叫んでいるばかりではなく、自分自身の問題として考えてみるきっかけとして、例えば住民有志が交代で毎夜の自治体病院の当直につき合ってみるなんてところから始めてみるのも色々と面白い発見があるかも知れませんね(笑)。

その意味では今度の選挙も医療問題を我が事として考える上でちょうど良い機会なのかも知れませんが、余計な話でいささか長くなりましたので残りは次回以降に回すことにさせていただきます。

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2009年8月18日 (火)

医療の世界には不正が沢山?

最近医療業界絡みで不正の話題が数多く報道されているのですが、そのほとんどが不正労働行為絡みの労基法違反に対する指導といった内容でした。
ところがこのところ少しばかり毛色の違う不正も幾つか報じられていまして、これは政策の焦点として医療費増額を云々されているこのタイミングで何かしら意味でもある現象なのかと見ているところです。
それぞれに面白い話ではあるのですが、特に大きな話題となったのがこちら東京医大茨城医療センターの一件でしょうか。

東京医大茨城センター、不正請求問題で立ち入り(2009年8月13日読売新聞)

 東京医科大(東京都新宿区)が運営する「茨城医療センター」(茨城県阿見町)が診療報酬を不正請求したとされる問題で、厚生労働省関東信越厚生局が立ち入り調査を始めたことが、13日分かった。

 同センターは昨年4月以降の診療報酬の請求で「不適切な算定があった」と、7月21日に発表し、計約1億2000万円の返還を検討している。

 関東信越厚生局によると、同センターは「不適切な算定」の発表直前、同局の茨城事務所(水戸市)に「基準適応の辞退届」を提出。これを受け、厚生局が今月に入り、立ち入り調査を開始した。

 不正請求が確認されれば、市区町村や患者などに診療報酬を返還するよう指示する。悪質性が高いとされれば、保険医療機関の指定や、保険医登録の取り消し処分の可能性もある

 同局医療指導課は、「調査をしているのは事実だが、調査中であり、公表できることはない」と話した。

診療報酬請求:東京医大前センター長が不正指示の疑い(2009年8月13日毎日新聞)

 東京医科大学茨城医療センター(茨城県阿見町)で、今年5月までの約1年間に診療報酬計1億1870万円の過大請求があり、前センター長の松岡健・同大理事が不正を指示していた疑いが強いことが、大学の内部調査で判明した。厚生労働省は立ち入り調査を行い、事実関係を調べている。

 センターによると、昨年4月以降に届け出た3種類の加算制度で不正な算定があった。勤務医の負担を軽減するため、一定の医療事務補助員を置けば報酬が加算される制度では、松岡理事の指示で専従の事務補助員として7人を登録し、配置基準を満たしたように見せかけ、約1350万円を受給したという。実際は事務員の名義を借りただけで実態はなかった。松岡理事は7月24日付で「世間をお騒がせした」としてセンター長を辞職している。

 センターは先月21日、「算定が不適切だった」として計1億1870万円の不正受給があったことを公表したが、松岡理事は毎日新聞の取材に「担当の理解不足が原因」と自身の関与を否定していた。小林正貴・センター長職務代理補佐は「おかしいとは感じていた。再発防止に努めたい」としている。センターは保険者に不正分の返還手続きをとる。【八田浩輔、橋口正】

診療報酬2万人分不正に請求 東京医大茨城医療センター(2009年8月13日朝日新聞)

 東京医科大学付属の総合病院、茨城医療センター(茨城県阿見町)が、センター長の松岡健・同大学理事の指示で診療報酬の不正請求を繰り返していた疑いがあることが、同大学の内部調査でわかった。総額1億1870万円の診療報酬を不正に請求していたといい、厚生労働省関東信越厚生局が立ち入り調査を始めた。

 松岡理事は7月24日付でセンター長を辞任した。医療費は患者が1割から3割を負担し、残りは国民健康保険や社会保険などから医療機関に診療報酬が支払われる。不正請求があったのは昨年4月~今年5月とされ、同大学側は、この間に入院した患者や高度医療を受けた通院患者ら延べ2万人以上が、不正請求に連動して高い医療費を負担させられたとみて、患者らへの返還手続きと、関係者の責任追及を進めるという。

 大学側によると、不正請求は、病院の患者数を減らして勤務医の負担を軽減するなどの目的で昨年4月の診療報酬改定で導入された、三つの制度を悪用して行われた。

 例えば、一定期間に退院した患者のうち、治癒した人と別の医療機関に紹介した人の合計が40%を超えると、病院は通常より高い診療報酬を請求できる。同センターは実際は5.6%と適用外だったのに、43.4%と基準を上回っているように装い、昨年4月1日から今年3月31日まで9111万3千円の報酬を不正に受領していた。

 ほかの二つの制度でも虚偽の数字や架空の職員名を使うなどして、本来は適用されない加算制度を申請していたという。

 今年2月、千葉・茨城の私立医科大学付属病院長会議のアンケートで、新たな加算制度を採用している病院が少ないのに同センターの加算請求が際だっていることが表面化。松岡理事は3月、一部の利用だけ辞退し、ほかは不正請求を続けるよう指示していた。5月、内部告発が大学本部にあり発覚した。

 同センターは7月21日に診療報酬請求が不適切だったと公表したが、松岡理事は朝日新聞の取材に「計算間違いや担当職員の勘違い」と説明し、不正ではないと否定。その後は大学を通じた取材に回答していない。内部調査の進展を受け、同センターは「松岡氏が申請した数字の根拠がどこにも見あたらなかった。全容解明と再発防止に全力を尽くす」とコメントした。(沢伸也、吉野慶祐)

最近は医師数から看護師数から何でも診療報酬に差がつく時代ですから、どこの病院でも何とか上の基準に合わせようと人集めに四苦八苦しているようですが、求職者数多の事務補助員の水増しというのはあまり聞いたことがない話ですかねえ。
紹介率などの件でも全く根拠無く数字を操作していたということなんですが、逆に最近こうした大学病院系では電子化率が高いでしょうに、そういう恣意的な数字を出すのもかえって大変なんじゃないかという気がするところですが。
一応は理事の個人的犯罪ということで話をつけようとしているように見えますが、普通理事あたりがこういう細々した数字合わせの作業を直接やるとも思えませんから、発覚の契機となった内部告発云々という話もそのあたりの関係者から出ているということなんでしょうね。

しかし発覚の経緯の一つとして「新たな加算制度を採用している病院が少ないのに同センターの加算請求が際だっていることが表面化」というのは良かったですね。
「病院の患者数を減らして勤務医の負担を軽減するなどの目的で昨年4月の診療報酬改定で導入された、三つの制度を悪用」といいつつ、その実態は現場では全く利用困難な国のなんちゃって改善策であることがこれ以上ない形で明らかになってしまったわけですから、これは笑うべきところなんでしょうか?
いずれにしても「申請した数字の根拠がどこにも見あたらなかった」というほどのあからさまな捏造ということであれば同情の余地なき悪質な故意犯というしかありませんから、さっさと保険医療機関指定の取り消し処分なりと下さないことには法のよって立つべきところが問われるというものでしょう。

もう一つ、社会的影響という点ではずっと大きそうなこちらの話題なども紹介してみましょう。

差額ベッド料誤徴収 返却総額780万、県立中央病院(2009年07月22日日本海新聞)

 鳥取市江津の県立中央病院(武田倬院長)で、手術後に整形外科病棟の個室を利用した入院患者に対し、本来必要のない差額ベッド料を請求するミスがあり、差額代の返還を順次始めていることが21日分かった。判明したのは、同院が電子カルテを導入した2006年2月から08年12月までの入院患者565人で、返却総額は約780万円に上る。

 昨年11月定例県議会で県議からの指摘を受け、県病院局などが調査していた。ほかの病棟や県立厚生病院(倉吉市)ではミスはなかった。

 厚生労働省の通知では、救急患者や術後患者など医師が診療上、個室管理が必要と認める場合については、差額ベッド料は請求できない。

 整形外科病棟では、個室料の取り扱い基準が徹底されておらず、長年、誤った認識のまま個室料(1日4200円)を請求し患者の同意書も取っていた。多い人では入院6日分25200円が不正に請求された。06年以前のミスについては、カルテが残っておらず調査不能という。

 ミス発覚を受け、同院では今年2月、個室管理について医師が指示するチェックシステムを導入。「再発防止につなげたい」と反省している。

さすが県立病院だけに、医師のチェックシステムで再発防止につなげたいって、ここでも医者に丸投げで責任回避という素晴らしいシステムが早速導入されましたか(苦笑)。
差額ベッド料問題も古くて新しい話題ですが、これなど何も知らない人が見れば「当たり前」だと思えても、実は意外に影響が大きなニュースというところですよね。

この件については何故昔からこうまで揉めるかといえば、通常の保険診療においては極めて例外的に混合診療(的なもの)が認められている部分であるからですよね。
要するに病院側としては経営厳しい折の儲けのことはもちろん、こういう料金は色々と患者をコントロールするのにも使える部分もあるわけですが、どうも現場の当事者も患者側もしっかりシステムを理解していないで適当にやってきた部分が多くてトラブルの元になっているようです。

厚労省の見解によれば差額ベッドの料金とはごく大雑把にいって「患者が自ら差額料金部屋への入室を希望したときのみ徴収可能」ということになっていますが、このことについてこちらのサイトなどにも色々と書いてあるものを一部引用してみましょう。

厚生省から出された通達にはこう書かれています。

「特別の療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意(注:ココが重要です)に基づいて行なわれる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと」

そして、患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合についてもキッチリ規定されています。

1)同意書による同意の確認を行なっていない場合
(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む)
(略)

2)患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合

例:
救急患者、手術後患者等であって、症状が重篤なため安静を必要とするもの、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者。
免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者。
集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者

解説:
そのまんまですが…治療上の必要があって個室等に入る場合は差額ベッドはいらないんですよ。

3)病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合

例:
MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者
(略)
「ベッドが空いていないので個室でもいいですか?」などと言われて、差額ベッド料金を払わされるケースが結構多いわけですが、これも本来は払う必要がありません。
長くなってしまいましたが、要するにほとんどの場合は差額ベッド料金なんて払う必要がないんです。

おっしゃる通り条文を厳密に解釈するとほとんどの場合払う必要がないというのも確かなんですが、一方で患者が押し寄せる病院(急性期基幹病院やいわゆるブランド病院など)ほど常時ほぼ満床というのが今の医療現場の状況でもあるわけですよね。
当然別料金が必要な部屋ほど空きが出やすいわけですが、差額ベッド代は払う必要はないから払いませんと主張するのも患者の自由ですし、高いお金を出しても病気を治したいというほど熱心な患者さんを優先して入院させるのも病院の自由ということです。
今後は担当医が「医学的な都合か、患者側の都合か」を判定して決めていくということになるのでしょうが、一昔前のように「本来なら差額ベッド代をもらうべきところだけど、可愛そうだからおまけしてあげようか」なんて心得違いをして病院に損害を与えるような医者はこれからの時代、経営的要請からもますます減っていきそうな気配ではありますよね。

差額ベッドに限らず例えば民間の医療保険請求などもしばしば未払いなどでトラブるところですが、医者という人種はどうもこのあたりの金銭絡みの系統だったトレーニングを受ける機会に欠けてきたという歴史的経緯があって、他人の金銭的損失にも無関心なきらいがあるようです。
むしろ「金銭で医療に差をつけるのは悪いことだ」といった主張を民間病院においてさえ堂々と行う先生方も結構いらっしゃるようで、それはそれで志としては立派だと思いますが、本来つけるべき差をつけないことで被った損害を誰がかぶっているのかと言えば、当の先生ではないことが問題ですよね。
金勘定が得意な医者と言えば何かしら悪いことのように思われるかも知れませんが、公定価格の保険診療がほとんどという日本の医療において国がこれ以上医療費は出さないと言っているわけですから、同じお金を使って少しの患者しか救えない人と、より多くの患者が救える医者と、どちらが社会に貢献出来るのかということも考えなければなりません。

正しい金銭感覚を身につけ活用できるということは医療に限らず何ら恥ずべきこととは思えませんし、今からの時代に医療に関わろうという若手の先生方には最低限要求されるスキルでもあると思いますね。

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2009年8月17日 (月)

新型インフルエンザ、国内初死亡例の報告

いずれそうした日が来るのはほぼ確実視されていた一方で、むしろ罹患者数や発生状況を考えるとずいぶんと遅かったかなという印象を与えるのが表題の件です。
ちょうど盆休み真っ盛りというタイミングでこういう症例が出てくるのも不思議な感じがしないでもないですが、とりあえず確認された国内初死亡例ということで、それなりに注目されているようですね。
終戦記念日だの何だので必ずしもトップニュース扱いとはならなかったようですが、主要各紙とも一面扱いで取り上げているようで、まずは地元紙からの第一報を取り上げてみましょう。

新インフル死者 国内初 宜野湾市の57歳男性(2009年8月16日沖縄タイムス)

 県は15日、新型インフルエンザで宜野湾市在住の男性(57)が死亡したと発表した。新型インフルエンザによる死亡が確認されたのは国内で初めて。県によると男性の周囲にインフルエンザの症状がある人はおらず、感染源は不明。男性は過去に心筋梗塞の治療歴があり、慢性腎不全で透析治療中だった。

 男性は今月9日にのどの痛みと咳の症状が出た。翌10日、通院する医療機関で透析中に37度台の発熱があったが簡易検査ではA型陰性。12日に再び透析治療中、熱が39度台まで上昇し、簡易検査でA型陽性が判明。タミフルを投薬したが全身状態の悪化で、別の医療機関に入院。入院先では14日未明に意識混濁。いったん回復したが15日午前1時半に心停止し、同午前6時54分に死亡が確認された。

 県は男性の死亡後に詳細(PCR)検査を行い同日午後4時ごろ、新型インフルエンザ陽性が確認された。

 県は同日午後5時から記者会見を開き、男性の死亡原因について「心疾患や慢性腎不全の合併の上、新型インフルエンザに罹患したため」との見解を発表した。一方、「インフルエンザは健康な人の多くにとっては一過性の病気である」とし県民の冷静な対応を呼びかけた。

新型インフル県内で死者 国内初、57歳男性(2009年8月16日琉球新報)

 県は15日、宜野湾市在住の新型インフルエンザに感染した患者の男性(57)が同日朝、入院先の中部徳洲会病院(沖縄市)で死亡したと発表した。国内では5月に初の感染者が確認されて以来、死亡者は初めて。男性は心筋梗塞(こうそく)の治療歴があり、慢性腎不全のため、中部保健所管内の透析医療機関で透析治療を受けていた。県によると男性の死因は、肺炎を引き起こしたことによる敗血症。感染源については不明。周囲にインフルエンザ症状のある人や渡航歴のある人はいないという。
 インフルエンザは健康な人には一過性の病気だが、ぜんそく、心疾患、腎疾患、糖尿病などの基礎疾患のある人や、乳幼児、妊婦では重症化することがあると言われている。
 国の指針では重症化しやすい患者の入院については保健所に報告し、優先的にPCR検査を実施するとしているが、中部徳洲会病院が県に報告したのは男性の死亡後だった。
 男性は9日からのどの痛みやせきの風邪症状があり、10日に透析を受けた際に簡易検査を実施。そのときは陰性だったが12日の透析中に体温が39度まで上昇し、簡易検査でA型陽性が判明した。全身状態がよくないため同日、中部徳洲会病院に入院し、14日に意識レベルが低下し、15日朝死亡した。
 死亡後、緊急で遺伝子を調べるPCR検査を実施し新型インフルエンザ陽性が確認された。
(略)

◆国立研で検体調査へ 舛添厚労相
 舛添要一厚生労働相は15日、新型インフルエンザに感染した宜野湾市の男性が死亡したことを受けて、那覇空港で記者会見し「患者の検体を国立感染症研究所でウイルス変異が起きていないか確認する」と述べた。
 国内初の死亡者が出たことについて、哀悼の意を表した上で「今後全国的、大規模に患者が増える可能性がある。医療態勢やワクチン整備などの対策を充実させたい」と表明、国民に冷静な対応、手洗いやうがいの励行など感染拡大防止策の徹底を呼び掛けた。舛添氏は、衆院選応援のため同日来県し、17日まで滞在する。

<死亡男性容体経緯>
 【入院前】
 9日 午後、のどの痛みとせきの症状が出るが自宅で経過観察をする。
 10日 中部の医療機関で人工透析。前日の症状に加え、37度台の熱があったためインフルエンザ簡易検査を行ったがA型陰性。解熱剤を処方。
 12日 同じ医療機関で人工透析を受けた際に食欲低下と悪心、おう吐を訴える。受診時に発熱はなかったが、透析中に39度まで上昇。簡易検査でA型陽性を示す。透析後タミフルを投薬した。胸部写真で心陰影の拡大が見られ、全身状態も良くないため同医療機関が中部徳州会病院を紹介した。
 【入院後】
 12日夕 中部徳州会病院来院時は38・8度で、強い全身けん怠感や筋肉痛、悪心、呼吸苦を認めたため入院。
 14日 未明に意識レベルが低下し、肝機能障害と血小板が減少。意識レベルは一度改善するも、夕方から呼吸苦が強くなった。胸部XP撮影でバタフライ陰影の像が見られたため、うっ血心不全を疑い透析。
 15日 循環不全となり、午前1時半に心臓が停止。心肺蘇生で一度は心拍再開するも同6時54分、死亡が確認された。
 県は緊急にPCR検査を行い、午後4時ごろ新型インフルエンザ陽性であったことを確認した。

<県の会見一問一答>
 15日に開かれた記者会見の主なやりとりは次の通り。
 ―直接的な死因は。
 「死亡診断書によると敗血症性ショック。新型インフルエンザから起因した肺炎で引き起こされたとみられる」
 ―透析をしていたが、透析医療機関での院内感染の可能性は。
 「今の時点ではそういう情報は得ていない。感染源は不明だ」
 ―同機関のA型陽性患者の有無は。
 「把握してない。見込みが甘いと指摘されればそうかもしれない」
 ―新型インフルエンザ患者ではないかと疑ったのはいつか。県に報告があったのはいつか。
 「病院側は入院時から新型インフルエンザ患者だろうと見ていた。中部保健所に報告があったのは(患者死亡後の)15日午前9時前後だ」
 ―県としてはどの時点で、男性について把握したかったか。
 「7月24日施行の感染症法で入院患者の県への報告が求められている。入院は12日夕だったので、13日には連絡を受けるべきだったと考える」
 ―連絡が不徹底だったことについて。
 「改善の必要がある。連絡を徹底するよう(各病院に)呼び掛けていく」

発症後3日目頃まで目立った発熱がない(服薬で修飾されている可能性はありますが)、初期にはむしろ消化器症状が目立つなど、ここでも新型に関してよくいわれるところの「典型的高熱を呈する症例はむしろ少ない」「1~2割の患者には消化器症状が出現」といった特徴をよく示しているようです。
記事中にも概略が掲載されていますが、参考までに沖縄県当局から厚労省経由で出されております資料から当該症例の経過を引用してみましょう。

厚生労働省 新型インフルエンザに関する報道発表資料 新型インフルエンザ患者の死亡例について(2009年8月15日沖縄県)

1 患者概要
・中部保健所管内市町村在住 50代 男性
・基礎疾患有り(過去に心筋梗塞治療歴あり。現在、慢性腎不全のため透析中)

2 感染源
 不明。周囲にインフルエンザ様症状のある人はなし。

3 経緯
【入院前の経過】
 8月9日  午後から咽頭痛と咳の症状出現。自宅で経過観察。
 8月10日  中部保健所管内透析医療機関で透析。その際に上記感冒と37度台の熱があり、簡易
       検査をしたところA型陰性。解熱剤を処方。
 8月12日  透析日。食欲低下と悪心・嘔吐の訴えあり。受診時には発熱はなかったものの、透析中
       に39度まで上昇。簡易検査でA型陽性。透析後、タミフルを投薬。胸部写真で心陰影の
       拡大がみられ、また全身状態が良くないため中部保健所管内医療機閲ヘ紹介。

【入院後の経過】
 8月12日  18:55中部保健所管内医療機関受診。来院時、38.8度の熱。全身俗怠感強く、筋肉痛、
       悪心、労作時呼吸苦を認めたため入院冶療となった。
 8月13日  著変なく経過
 8月14日  未明に意識レベルの低下がみられ、肝機能障害と血小板減少が見られた。意識レベルは
       いったん改善するが、夕方から呼吸苦の増強が見られた。胸部XP撮影したところ、バ
       タフライ陰影の像がみられたため、うっ血性心不全を疑い、透析を行った。透析後、バ
       タフライ陰影は若干よくなるも、8月15日になってから循環不全となり、午前1時半に
       心停止し、心肺蘇生で一旦は心拍再開するも6時54分死亡された。

【本日(8月15日)】
 緊急でPCR検査を行い、午後4時頃新型インフルエンザ陽性であったことが確認された。

こうして見ますと単なる腎不全ではなく心筋梗塞既往もあった患者さんで、感染を契機として心不全増悪を来したものと思われますが、8月14日以降意識レベル低下、肝機能障害、血小板減少、心不全増悪とイベントが相次いで来ているのが世にいう「新型は途中から急に重症化する」というものなのでしょうか。
確かに従来型の季節性インフルエンザでも死亡例が出ることはあるわけですが、どうもそうした症例ともいささか経過が異なっている印象を受けるのは自分だけでしょうか?(剖検を行っているかどうかははっきりしませんが)
また、現時点で治療上はさほど意味のあることではないと思われますが、新型か否か確定診断に回す決断をしたのが死亡後ということは後々外野から突っ込みを受けるのではないかなとも思われるところですね。

さて、全国紙等においてもこの件は報道されていますが、冷静な対応を呼びかけつつ今後更なる感染拡大は必至であるとも報じる一方で、早速にも病院や県当局の不手際に対して非をならす向きもあるようですね。

新型インフル国内初の死者、57歳の慢性腎不全患者(2009年8月15日読売新聞)

 厚生労働省と沖縄県は15日、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)に感染した患者が、国内で初めて死亡したと発表した。
(略)
 厚労省は「ウイルスが強毒化したわけではない」とし、慢性疾患の人や妊婦、乳幼児は重症化の危険性が高いとして注意を呼びかけている。発表によると、男性の死因は肺炎による敗血症性ショック死。慢性腎不全などで免疫力が低下し、新型インフルエンザが重症化したとみられる。
(略)
 同病院は死亡後、保健所に「新型インフルエンザの可能性がある」と連絡。遺伝子検査で、同日午後4時頃、感染が確認された。男性は両親と3人暮らしで、8年前に心筋梗塞(こうそく)で手術した経験があるほか、慢性腎不全のため通院して透析を受けていた。家族の感染は確認されていないという。

 新型の国内感染者は、先月24日に5000人を超えたが、厚労省が同日、調査対象を集団感染や重症者などに絞ったため、感染者の総数は把握できていない。

新型インフル:国内初の死者 沖縄の57歳男性(2009年8月15日毎日新聞)

 沖縄県は15日、新型インフルエンザに感染した宜野湾市の男性(57)が同日朝、入院先の沖縄市内の病院で死亡したと発表した。男性は慢性腎不全で人工透析を受けており、心筋梗塞(こうそく)の治療歴もあった。死因は新型インフルエンザから肺炎を起こしたことによる敗血症性ショックだった。新型インフルエンザ患者の死亡は国内初。
(略)
 感染症法施行規則は入院患者で重症者がいる場合、保健所に連絡すると定めているが、病院が通報したのは死亡後だった。また厚生労働省の指針では、重症者や基礎疾患がある患者にはすぐにPCR(遺伝子)検査をするよう定めているが、今回は死亡後のPCR検査で感染が確認された。【三森輝久、川名壮志】

 ◇毎週全国で2万~3万人の患者発生か
(略)
 日本では、カナダの研修から帰国した高校生ら3人の感染が5月9日に初めて確認された。7月24日までに報告された感染者数は4986人。その後、国は患者数の把握をやめているが、毎週全国で2万~3万人の患者が発生しているとみられる

 ◇糖尿病やぜんそく患者など高リスク

 日本で、新型インフルエンザ患者で初めて死者が出た。亡くなった男性のように人工透析を受ける患者は国内で約26万人いる。妊婦、糖尿病やぜんそく患者も重症化しやすい。重症者の半数以上はこうした疾患を持つ患者や妊婦だ。社会全体で感染を広げない取り組みが求められる。

 多くの人は症状がなかったり軽症だが、患者が増えれば重症者が増えるのは避けられない。世界で新型と確認された患者の10%が入院している。致死率は確認例の0.45%で、毎年流行する季節性インフルエンザの0.1%未満より高い。大半の人に免疫がない新型インフルエンザは、3年以内に国民の8割が感染すると予測する専門家もいる。

 季節性インフルエンザでも、合併症を含めると年間1万人が国内で亡くなっている。季節性、新型ともインフルエンザを軽視してはならない。岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長は「重症化リスクの高い人は持病の治療をしっかり続けてほしい。一人一人が予防に取り組まなければならない」と訴える。早期発見と早期治療に加え、手洗いやワクチン接種、流行時に人込みを避けるなどの予防を徹底したい。【江口一】

【新型インフル】舛添厚労相、感染拡大防止徹底呼び掛け(2009年8月15日産経新聞)

 新型インフルエンザで国内初の死者が出たことを受けて、舛添要一厚労相は15日、那覇空港で記者会見し「今後全国的、大規模に患者が増える可能性もある。医療態勢やワクチン整備などの対策を充実させたい」と表明、国民に対しても冷静な対応や手洗いやうがいの励行など、感染拡大防止策の徹底を呼び掛けた。

 その上で「想像だが現在日本の患者数はほぼ5万人で、統計学的には5人ぐらい死者が出てもおかしくない状況にある」と指摘。「基本的な対策は変わらないが、腎臓疾患など基礎疾患を持っている人や妊婦は注意してほしい」と述べた。

 また舛添厚労相は、死亡した男性の検体を国立感染症研究所に送り、ウイルスに変異がないか検査する考えを示した。

 舛添厚労相は同日、衆院選の応援のため沖縄入りした。

新型インフル冷静対応を…強毒化なしの見解(2009年8月15日読売新聞)

 新型インフルエンザによる国内初の死亡が15日、沖縄県内で確認された。

 厚生労働省は「新型インフルエンザの病原性が強毒化したものではない」との見解を示しているが、今回の場合、感染が確認されたのは患者の死亡後で、病院と自治体などとの連絡体制には課題も残した。専門家は「これを機に危機感を新たにし、感染の拡大防止に力を入れるべきだ」と指摘している。

 慢性腎不全のため透析治療中の男性(57)が、新型インフルエンザに感染して死亡したことが確認された沖縄県。15日午後5時から那覇市の同県庁で開かれた記者会見では、全国初のケースという事態に、同県の担当者たちは一様にこわばった表情だった。

 宮里達也・保健衛生統括監は、持病を抱えた男性の抵抗力が弱まっていたことが病状を深刻にさせたとの見方を示し、「不安をあおることは好ましくない」と語った。

 男性が透析を受けていた沖縄県内の病院では、12日の段階で、男性が新型インフルエンザに感染した可能性があることを把握していたが、入院先の沖縄市内の総合病院が保健所に報告したのは、男性が15日午前6時54分に死亡してから約2時間後だった。

 厚生労働省は、新型インフルエンザが重症化する恐れがあるため、慢性疾患などを持つ患者に感染の疑いが出た場合、早めに保健所で確認の検査をするよう各地の医療機関に呼びかけている。この点について、宮里統括監は「県(保健所)に報告すれば結果が変わったわけではない」と述べ、「今後は病院との連絡の徹底を図りたい」と話した

 一方、衆院選立候補予定者の応援のため沖縄入りしていた舛添厚生労働相は15日夜、記者団に対し、「ウイルスの病原性が変化したとは考えていない」と語り、冷静な対応を呼びかけた。

国内では少なくとも数千、おそらく数万単位の患者が既に発生しているだろうと見積もられていますが、北米での報告から類推すれば舛添大臣でもありませんが「すでに何人か亡くなっていても全くおかしくない」という状況であるはずなのですね。
ところが今回の症例に至るまで数ヶ月間、相当数の患者が出ているにも関わらず死亡例の報告がなかったことは、一つには発症早期からのタミフル使用が非常に多いという日本の特殊事情も関係しているのかも知れません。
その一方でかねていわれてきたことですが、発祥地であるメキシコから離れるに従ってどうもウイルスの病原性が弱まってきているのではないか?という旧来からの疑問もまた思い出されるところではありますよね(ただしこの説に関しては今のところ科学的根拠は提示されていません)。

さて一方で、先日もお伝えしましたが、このところ新型インフルエンザの流行は勢いを増しているのは確かですが、それでもまだ本格的な流行というには程遠い状況です。
北海道などでも人工呼吸器を装着した小児の重症化症例などが出ているようで、今や全国各地で重症化例が相次ぐという状況ですし、当然ながら近い将来第二、第三の死亡例も出るでしょうが、それでもまだまだ流行というほどではないという状況なのですね。
ところが国内でも例外的に、この時期すでに流行が起こっているのではないかと思われている地域が沖縄であって、実は今回の死亡例が出る以前から沖縄という地域においては他地域に先駆けて新型流行の兆しが見えているのかな、という注目されるべき状況にあったのですね。

沖縄で季節外れのインフル流行、大半が新型(2009年8月14日CBニュース)

 季節外れのインフルエンザが沖縄で流行している。県感染症情報センターの集計によると、県内の定点当たり報告数は7月下旬から増えており、8月3-9日には20.36人と、流行開始の指標となる定点当たり報告数「1.0」を大幅に上回っている

 集計によると、3-9日に58の定点医療機関からあったインフルエンザの報告数は1181人で、定点当たり報告数は20.36人と20人を超えた。

 前週の7月27日-8月2日には684人の報告があり、定点当たり報告数は11.79人と10人を超えた。このため県は6日、インフルエンザ流行注意報 を発令。現在も注意報は継続している。7月27日-8月2日に報告があった684人の内訳は、A型500人、B型49人、不明135人で、県は「A型イン フルエンザと診断された95%以上が新型インフルエンザ」と発表している。

 県の担当者は今後の対応について、「(新型インフルは)弱毒性なので、今のところ通常と同じ体制を取っていく」としている。

インフルエンザ、流行目前=新型、夏でも感染拡大か(2009年8月15日時事ドットコム)

 インフルエンザの患者がこの夏急増しており、全国的に流行入り目前となっていることが15日までに、国立感染症研究所(感染研)のまとめで分かった。ほ とんどが今春登場した新型とみられ、季節性インフルエンザに比べて感染力が強く、夏にも感染が広がる恐れがあることが確認された格好だ。
 中でも沖縄県では感染が拡大しており、慢性腎不全を患っていた男性(57)が同日、新型インフルエンザに感染し死亡した。
 感染研によると、7月27日から8月2日までの週に約4800カ所の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者は2655人で、1カ所あたり0.56人。4週連続で増え続けており、今後1人を超えると流行入りとみなされる。
 沖縄県は11.79人と、流行の本格化が警戒されるレベルに達した。「医療機関には年末年始並みに患者が殺到している」と、同県の糸数公結核感染症班班長。「検査で判明する95%以上が新型」という。
 一般にインフルエンザウイルスは高温や湿気に弱い。夏でも患者は発生するものの、大規模な流行になることはまずなかった。沖縄では夏に流行入りした年も あったが、今回は大阪府内でも定点当たりの報告数が10人を超えた地域があるなど、全国的に流行入りする恐れがあるのが特徴だ。
 感染研のまとめでは患者は10代が約4割、5~9歳が約2割を占め、児童生徒が中心。沖縄に次いで患者が多い大阪府の担当者によると、学校が休みでも部 活やキャンプなど課外活動での集団感染がみられる。「夏の間に落ち着くことは期待できず、学校が始まった時が心配だ」と話す。

全国に先駆けての沖縄での流行、これは単に沖縄の先生方が診断に熱心なのか、あるいは実際に沖縄に他地域に先駆けての本格的な流行が起こりつつあるのか、いずれによるものなのでしょうか。
御存知のようにインフルエンザというものはやや低温の環境を好むこともあってか、原則的に暑い時期にはあまり流行せず、寒い地方から流行が始まり寒い地方に最後まで流行が残っているという状況が例年であれば一般的であるわけです。
今回新型に限って全く逆に南国沖縄から流行が起こっているということは、何かしら社会的要因に基づくものなのか、あるいは何らかのウイルスの生物学的性質の変化によるものなのか、どちらなのでしょうね。

勝手にドラマチックな空想を働かせてみれば、日本に入ってきた新型ウイルスの中から、さらに沖縄でもう一段別な変異が起こってきているという可能性も考えられなくはないかなというところでしょうか(繰り返すようですが、ウイルスの毒性が変化しているという根拠は全くありません)。
いずれにしても今後の対策のためにも、野次馬的興味の上からも(笑)、早急にウイルスに対する生物学的な検証は行っていただきたいところだと思いますね。
何にしろこういう事態になってきたわけですから、またしばらくは新型インフルエンザ関連の話題が相次いで出てきそうな気配ではあり、引き続き注意をして見守っていかなければならないところでしょう。

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2009年8月16日 (日)

今日のぐり「菊寿し」

夏も真っ盛りで頭上からは太陽エネルギーがさんさんと降り注いできています。
こういう時期になりますと生き物にとっては良い季節ということなのかも知れませんが、あちこちから生き物絡みで「ちょっとそれはどうよ?」という話題が伝えられてきているのですね。
まずはこちら、市民ならずともびっくりは確実という話題からご紹介しましょう。

電柱のてっぺんから…竹! 福知山 住民もびっくり(2009年8月11日京都新聞)

 京都府福知山市三和町大原の国道173号で、道路脇の電柱のてっぺんに竹がはえ、緑の葉を繁らせている。住民たちは、不思議な生え方に驚きつつ、生命力の強さに感心し、興味深く見守っている。

 竹は、中が空洞になっている金属製の電柱(直径約11センチ)の中を伸び、高さ約7メートルの頂上から葉を出している。近くの小林八重乃さんは「自動車の運転中に見つけた。最初は何かのおまじないかと思った」と話す。
 福知山市都市緑化植物園は「竹は土中など暗いところでも成長し、光を感じてから葉を伸ばす。さまざまな条件が重なった起こった現象でしょう」と解説するが「電柱の中を伸びて、その上部で葉を広げたという竹は聞いたことがない」と話している。

電柱から竹と聞いて何となく古くさい木の電柱なのかとイメージしていたのですが、リンク先の写真を見てもこれは金属製の電柱なんですね。
まあ考えてみれば木の中を竹が育つというのもおかしな話ですが、金属のてっぺんから竹というのはこれは輪をかけて不思議な光景です。
こういうのもしかし、根性のある竹とでもいうべきなんでしょうか?

お次は非常に喜ぶべきことではあるのですが、想像すると何やら激しく嫌な感じのする話題です。

明石タコ豊漁、例年の2倍「海底タコだらけ」(2009年8月1日読売新聞)

 兵庫県明石市がマダコの豊漁に沸いている。暖冬で春先の水温が高かったためとみられ、漁獲量は例年の2倍、1日で100匹以上つり上げる太公望もいる。

 マダコ漁は7月上旬から今月中旬がピークで、価格も2~3割安くなっており、この夏は食卓でも本場の<明石タコ>が楽しめそうだ。

 「タコ安いよっ」。明石港近くの魚の棚商店街。活(いけ)タコが入ったトロ箱の前で鮮魚店主が威勢のいい声を張り上げた。「県外のお客さんは明石のタコを目当てに来てくれる。不況の中、豊漁はありがたい」。鮮魚店「魚利」の大東利通さん(40)は笑顔を見せた。

 明石海峡の速い潮流にもまれた明石タコは身が締まって味がいいと人気が高く、例年は1匹(1キロ)あたり平均1500円の値が付くが、今年は400~300円ほど安くなっている。

 東二見漁協の漁師(43)は「いつもの年なら1日200キロも揚がれば豊漁だが、今年は400キロの日もある。海の底はタコだらけだ」と驚く。乗り合いの釣り船を運航する名田秀行さん(43)も「100匹以上釣る人もいる。客足も例年より3~4割いい」と話す。一方、「不漁よりはいいが、もうけが減るので……」と複雑な心境をのぞかせる漁師もいる。

 兵庫県水産技術センターの五利江重昭主任研究員(48)は「暖冬で、1月以降、明石海峡の水温が例年より1度近く高い9度後半で推移し、タコの子が生き残りやすい環境になったのだろう」と分析している。

いや、まあ、明石のタコは確かに有名なんですが、海の底がタコだらけという光景はあまり想像したくないですね。
といいますか、釣り船で出てタコを百匹以上釣ったところで後の始末に困るんじゃないかという気もするところなんですが…

お次は笑うべきというのか、いささか情けないというのか、何とも微妙なお話です。

株式投資コンテストに出場のオウム、人間押しのけ3位に 韓国(2009年08月08日AFP)

韓国で開かれた投資コンテストに出場したパプアニューギニア生まれのオウムが人間のライバルたちをしのぐ好成績を収めて3位に入賞した。コンテスト主催者が7日明らかにした。

 このコンテストは韓国のオンライン金融情報提供企業、パックスネット(PAXNet)が5日までの6週間にわたり開催したもの。人間の投資家10人とともに韓国語でイチゴを意味する「ダルギ(Ddalgi)」という名前の5歳の雌のオウムも出場した。

 各出場者は6000万ウォン(約480万円)相当のサイバーマネーでスタートし、毎回1000万ウォン(約80万円)相当の株式取引を行った。人間の投資家たちは自分の好きな銘柄を選ぶことができたが、ダルギはサムスン電子(Samsung Electronics)など優良30銘柄を表すボールをくちばしで無作為に選んだ。

 人間の投資家はコンテスト期間中に平均190回の取引を行い、その大半は中小企業の株だった。一方、ダルギには7回だけ株を売買する機会が与えられた。

 その結果、ダルギは投資収益率13.7%を記録し、1位の64.4%、2位の21.4%に次ぐ3位という驚くべき好成績を収めた。人間の投資家の平均投資収益率は4.6%のマイナスだった。

 パックスネットのChung Yeon-Dae氏は「優良株に長期投資するのが安全で効果的だということを証明している」と語っている。

要するにランダムにやったという程度の意味なんでしょうが、こうしてみるとやはり投資もハイリスクハイリターンを狙うと結局ハズレが大きくなるということでしょうか。
想像するにオウムに負けるというのは人間としてずいぶんと恥ずかしいことではなかったかという気もするところですが、それでも恥をかいた程度で済めばまだよいとも言える話がこちらです。

福岡競艇場、レース中にワニガメ泳ぐ(2009年8月4日読売新聞)

 3日午後3時頃、福岡市中央区那の津の福岡競艇場で、レース開催中にコースを泳いでいた大型のカメが捕獲された

 男性清掃員が見つけ、福岡県警博多臨港署に届けた。北米原産のワニガメとみられるという。

 同署によると、体長約60センチ。ワニガメは淡水に生息する世界最大のカメで、カミツキガメほどどう猛でないが、かむ力は強く、動物愛護法で人に危害を加える恐れのある「特定動物」に指定されている。

 福岡競艇場は那珂川の河口にあり、同署は、処分に困って捨てられたワニガメが上流から迷い込んだ可能性があるとみている。

ちなみにワニガメというのは世界最大の淡水亀なんだそうで、どれくらい大きくなるのかと言いますと、こちらの写真は「伊豆アンディランド」に飼われているワニガメなんだそうなんですが…
死ぬ!こんなのに噛まれたら死にますて絶対に!
いやあ、人間思いがけないところに思いがけない危険が迫っているものだということを実感しますね。

今日のぐり「菊寿し」

倉敷駅から駅前通りを少し南方向に進んだ美観地区のほど近く、表通りから少し路地を入ったところにある店です。
場所柄、店構えともいかにも「知る人ぞ知る」という感じなんですが、寿司通にはなかなかの名店と評判の店なのですね。
ちなみにお店自体はそれなりに遅い時間までやっていますが、二階の座敷は少し早めの時間に閉めてしまうのだとか。

この日はお任せで適当に出してもらったのですが、刺身の盛り合わせに鱧の湯引き、握り寿司に土瓶蒸しといったところが出てきました。
角の立った刺身はなかなか食感とうま味のバランスも良い感じで、握りと合わせてネタのバランスも考えてあるようですね。
季節ネタの鱧は梅肉が少しきつく感じて苦手だったのですが、この日はちょうど塩梅よい加減で美味しくいただけました。
土瓶蒸しはまだ少し早いかなと少なからず意外だったのですが、リッチではないもののさっぱりとした味わいはそれなりに楽しめるものです。

少し気になったのは握りなんですが、ネタは今風の大振りなもので鮮度も味も十分合格点を与えられますが、問題はシャリ。
明らかにネタとのバランスを崩していそうなほど小さいんですが、以前に来たときにはこんなことはなかったんですけどね。
連れの腹具合の加減もあって少し控えめにしていただいたということなのかも知れませんが、寿司としてはやや物足りない感じでしょうか。
ちなみにシメに玉子なども頼んでみたんですが、ここの玉子はなかなかいけますね(玉子のうまい寿司屋は個人的に好印象なのです)。

全般的にはネタの選び方をみても昨今多いとにかく口にうまいものを出しておけばという感じから一歩距離を置いて、しみじみうまいという感じで好感が持てます。
ところでこの店、寿司屋によくあるパターンで価格表示がいま三つばかり曖昧なところもあるものですから、どうも高い、高そうという声が多いようです。
内容を考えるとむしろ割安と言ってもいいと思うのですが、まあ確かに地域性を考えると高い部類に入る店なんですかね。
たまには真っ当なうまい寿司を食ってみたいと思った時には、行ってみて間違いのない店かなという感じでしょうか。

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2009年8月15日 (土)

にわかに賑やかになってきた新型インフルエンザ関連の話題

夏真っ盛りというこの時期ですが、このところ全国各地から新型インフルエンザの話題が相次いでいます。
そうは言っても既に個別発生などではネタになりませんからいずれも集団発生例で、こうなりますとどれだけ流行しているのかという話ですよね。
こういう時期にインフルエンザがこれだけ猛威をふるうということも異例ですが、そろそろ新型絡みの重傷例も散見され始めているようです。
しかし未だに「院内での発生は考えていなかった」などと、この期に及んでずいぶんとのんびりした方もいらっしゃるのですねえ…

看護師2人が新型インフル 大田原赤十字病院院内感染の可能性 /栃木(2009年8月12日読売新聞)

 大田原赤十字病院(大田原市)は11日、外科病棟の看護師2人が新型インフルエンザに感染したと発表した。外科病棟内ではほかに、医師、看護師、薬剤師ら職員8人と入院患者1人から、簡易検査でA型ウイルスの陽性反応が確認されており、院内感染とみられる。症状は軽く、いずれも快方に向かっている。
(略)
 市役所で記者会見した同病院の宮原保之院長は、「院内での発生は考えていなかった。数日で感染が広がり、足元をすくわれたようだ。感染が拡大しないよう、封じ込めに力を注ぎたい」と話した。

青森で新型インフル12人感染か/青森(2009年8月13日東奥日報)

 青森市は12日、同市浪岡の知的障害者更生施設で新型インフルエンザに感染したとみられる患者数が7日以降、確定者を含めて12人に上り、集団発生したと発表した。市保健所は、施設利用者とその家族以外の接触者が少ないことから、感染拡大の可能性は低いとみている。
(略)
 利用者の家族で80代の患者が市内の病院に入院しているが、容体は安定している。重症化が懸念される知的障害者は自宅療養で、快方に向かっているという。施設は16日まで休業する。
 市保健所保健予防課の石岡義文課長は「感染源の特定でなく、感染の広がりを防ぐことに重点を移す。利用者と家族には外出を自粛するよう求めた」と話した。

笠間の障害者施設 12人が感染の疑い 新型インフル/茨城(2009年8月13日東京新聞)

 県は十二日、笠間市の障害者支援施設「佐白の館」で、入所者計十二人が新型インフルエンザに集団感染した疑いがあると発表した。
 県によると、集団感染の可能性があるのは十九~五十七歳の男女。十二人は施設で生活していて七日以降、感染が広がり十日に詳細(PCR)検査して感染を確認した。
 同施設は入所施設のため、休業はせず感染した人を別室に隔離して拡大を防ぐという。 (沢田佳孝)

看護師が新型インフル感染…院内感染の可能性も /福島(2009年8月12日スポーツ報知)

 福島県いわき市などは12日、社団医療法人養生会「かしま病院」(同市)の20代の女性看護師が新型インフルエンザに感染したほか、70代の男性入院患者と20代~40代の看護師ら職員11人の計12人に感染の疑いがあると発表した。病院は院内感染した可能性が高いとみているが、いずれも回復に向かっている。
(略)

【新型インフル】重度障害の男性が感染 大阪の施設/大阪(2009年8月13日産経新聞)

 大阪府は13日、同府枚方市の重症心身障害児施設「枚方療育園」に入所する重度障害者の男性(29)が新型インフルエンザに感染し、人工呼吸器を使用していると発表した。容体は回復に向かっており、命に別条はないという。
 大阪府や施設によると、男性は脳性まひで慢性の呼吸障害がある。以前から呼吸管理のため呼吸器を使うことがあり、同園は「感染によって症状が重篤化したとはみていない」としている。
 男性は10日に39.2度の発熱があり呼吸器を装着。12日に新型感染が確認された。13日に熱は37度に下がったが、呼吸器は使用している。
 この施設では入所者と職員ら計7人が新型に感染しており、発症者を隔離するなどの措置を取った。

しかし大阪と言えば先日の呼吸器装着に至った小児の症例でも大阪市健康福祉局の発表でわざわざ新型インフルエンザによる重症患者ではないなどと断り書きをしていたことをお伝えしたところですが、あの界隈では新型インフルエンザ感染が重篤化すると困る事情でもあるのでしょうか?
それはともかくとして、関西圏では今や高校野球の真っ盛りで、あちらでも選手が感染したなどという事例が話題になっているようですが、季節外れの感染が再拡大しているといっても専門家に言わせれば「まだまだ」だということなんですね。

高校球児にも拡大 新型インフル感染者増のなぜ(2009年8月13日産経新聞)

 夏休みに入っても、新型インフルエンザの国内感染者増加に歯止めがかからない。国が自治体に全感染者の報告を求めることをやめた7月24日以降も、サマーキャンプや部活動などで集団感染が相次いで報告されている。通常なら夏には増加しないはずのインフルエンザ。専門家らは「冬を考えると、いまの状況は『流行』にはあたらない」と警告している。

 一般にインフルエンザウイルスは湿気や高温に弱いとされる。例年の季節性インフルの流行も、1~2月ごろにピークを迎え、暖かくなる5月の連休明けには収束している。

 しかし、新型インフルは5月上旬に国内初の感染者が報告されて以降、兵庫、大阪両府県を中心に感染が拡大。同月下旬にいったん減少したものの、6月に入ると再び増加に転じた

 7月24日以降は政府の方針転換で全数把握をやめたため、正確な感染者数は不明だが、国内感染は6000人に迫っていると推測されている。学校が夏休みに入ってからも、高校野球で甲子園出場を決めた天理高校(奈良県)、大阪市主催のサマーキャンプ、早稲田大応援部……。全国高校総合体育大会(インターハイ)では、岡山、埼玉、沖縄の女子バレーボール部代表が、集団感染のため欠場を余儀なくされた。

 真夏にもかかわらず、感染者の報告が減らないのはなぜか――。国立感染症研究所の岡部信彦感染症情報センター長は「増えているように見えるだけで、一般的なインフルエンザの広がり方を考えると、現在のような1週間で数千人という規模の増加は増えているうちに入らない」と指摘する。

 季節性インフルでもピーク時の感染者は1週間に100万人を超す。多くの人が免疫を持たない新型では感染者はさらに増えると想定され、「本格的な流行時と比較したら、現在の感染拡大はわずかな変化にすぎない」(岡部センター長)。北里大医学部の和田耕治助教(公衆衛生)も「現状は火種がくすぶりながら全国に広がっている状態。感染者が急増するのは秋以降だろう」と分析する。

 新型が弱毒性であることもあり、厚労省も「現状はまだ大騒ぎする事態ではない」としているが、油断は禁物だ。感染者が増えれば、それだけ重症化しやすい妊婦やぜんそくなどの基礎疾患を持つ人に感染が及ぶ可能性が高まる。11日には、茨城県の男児(4)がインフルエンザ脳症を発症し、意識不明におちいっている。

 感染研が全国5000カ所の医療機関で行っているインフルエンザの定点観測で、感染者の報告数が4週連続で増加していることも気がかりだ。7月5 日までの1週間では、医療機関1カ所当たりの感染報告数は0.16人だったが、以降4週連続で増え続け、8月2日までの1週間では0.56人にまで増加。その大半が新型とみられている。

 和田助教は「本格的な流行となれば国民の10人に2人が感染し自宅待機する。企業などはそうした事態でも、通常業務を遂行できるよう備えておくことが大切だ」と呼びかけている。

要するにこの程度ではまだまだ序の口という話なんですが、通常この時期にはあまり念頭に置かないだろうインフルエンザという可能性も疑いつつ、臨床家の先生方は日常診療に当たらなければならないのは確かでしょうね。
しかし世間ではひと頃のパニックを通り過ぎて沈静化してきているのかと思っていましたが、どうも実際に患者が増えてくるとやはり医療現場もオーバーフローしてくるものらしく、これでは本物の大流行に入った時にはどうなるのかと心配されるところです。
本当の大流行になってくるとそうそう厳密な対策も現実問題取れなくなるんじゃないかと思いますが、以前から小児科などでやっているような来院の段階から患者を分けるといったこまめな対策を一般外来にも取り入れていくには良い機会なのかも知れません。

インフル患者殺到 県内医療機関/救急3~4時間待ち /沖縄(2009年08月11日沖縄タイムス)

 県がインフルエンザ注意報を発令するなど再び、インフルエンザが県内で流行している。医療機関でも発熱などによる外来者数やインフルエンザの患者が増加。9日には救急外来のある医療機関には、1日で約200人が訪れ、対応に追われた。

 南風原町にある県立南部医療センター・こども医療センターには、8、9の2日間で発熱などの症状を訴える外来患者329人が訪れた。土日で一般病院の休みと重なったこともあるが待ち時間は3、4時間にもなった。週明けの10日も午後4時ごろまで68人が診察に訪れた。

 午後から仕事を休み、5カ月になる長男の診察に訪れた母親(27)は、「診察から薬の受け取りまで約2時間かかった。保育園でも流行しており心配したが、インフルエンザではなかった」とホッとした様子。

 同病院の上原幸祐事務部長は「救急外来で対応しているが、あまりにも多い。土日の対応改善を検討している」と話す。

 那覇市の赤十字病院でも9日までの1週間で95人の外来があったという。対策として待合室は、インフルエンザとみられる患者とそれ以外の席を分けるなど配慮している。担当者は「この時期、こんなに発生したことはなかった」と驚く。

 県医務課のまとめでは7月27日~8月2日の間、684人のインフルエンザ患者が発生。うち500人がA型で新型の可能性が高いという。同課の糸数公班長は「保育園でも広がっており、仕事にも影響する。学校が始まるとさらに拡大する可能性がある」と指摘。うがい・手洗いの徹底に加え、医療機関で受診する際は、マスク着用を呼び掛けた。

沖縄のような小さな県でたかだか一週間に500人からの新型患者が出ているとすれば、どう考えても全国の患者が6000人なんて水準にとどまるはずもないわけですが、そこは突っ込んではいけないところなんでしょうね(苦笑)。
ところでこうした状況になると当然のことながら重症化する症例も出てくるわけですが、先日の大阪の初重症化症例報告以後、各地でぽつぽつとそうした報告が出てくるようになりました。
確定診断に積極的に回さないという話になった以上、どこかの病院などで実際にはそうと診断されないまま重症化している患者もいるんじゃないかと思うのですが、とりあえず今のところは小児症例が中心というのはやはり感染症慣れした小児科の先生の見立てが優れているということなのでしょうか。

新型インフル、茨城の4歳児が急性脳症で重症/茨城(2009年8月11日読売新聞)

 茨城県は11日、新型インフルエンザ感染が確認された県南部の男児(4)が、急性脳症(インフルエンザ脳症)を発症し、集中治療室(ICU)で治療を受けていると発表した。

 呼吸状態が不安定で、人工呼吸器を装着しているという。厚生労働省によると、新型インフルエンザでこうした重症患者の確認は初めて。

 県によると、男児は9日朝から、せきなどの症状があり、10日朝には38・5度の発熱があった。午後になって、けいれん発作や意識障害が出たため、救急車で病院に搬送された。11日の検査結果で、新型インフルエンザ陽性と確定され、ICUで治療中。男児や家族に渡航歴はないという。

【新型インフル】宮崎で中2がインフルエンザ脳症/宮崎(2009年8月14日産経新聞)

 宮崎市は14日、市内の中学2年の男子生徒(14)が新型インフルエンザに感染し、インフルエンザ脳症になったと発表した。入院中だが、回復傾向という。

 市によると、男子生徒は11日に鼻水やせきなどが出て、翌日近くの診療所で受診。風邪薬を処方されたが、13日早朝に40度台の発熱とけいれん症状が出たため、別の病院に入院した。新型インフルエンザと判明し、治療薬リレンザを服用した。

 既にけいれんは治まり、熱も38度台に下がったという。

新型インフル、肺炎の男児が重症化 人工呼吸器装着/福島(2009年8月13日朝日新聞)

 関東地方から福島県内に帰省中に肺炎と診断された小学生男児が新型インフルエンザに感染していることが確認されたと、同県が13日、発表した。男児は重症で自分で呼吸できず、人工呼吸器を装着して治療中という。新型インフルに感染した場合にリスクが高くなるぜんそくなどの持病があるかは不明。

 県医療看護課によると、男児は9日、家族と一緒に県内に帰省。11日午後に発熱し、インフルエンザの簡易検査を受けたが陰性だった。再び発熱したため別の医療機関を受診して肺炎と診断され、同日夜にそのまま入院した。

 12日に詳しい検査で新型インフルエンザへの感染が判明。同日夜、呼吸が困難になるなど症状が悪化したため、人工呼吸器を使った治療を開始した。

非常におもしろいなと思うのは、公式の推計でも少なくとも数千、実数では恐らく万のオーダーに達するであろう患者が既に出ているにも関わらず、未だ新型インフルエンザによる死亡例というものの報告がなく、重傷例ですらこの程度にとどまっているということです。
北米での例を考えるとこれだけの感染者が出ているならばもっと数多くの重症者が出ていてしかるべきだし、死者の何人かも出ていてもおかしくないんですが、これは日本における感染事情が特殊であるということなのか、それとも拾い切れていない症例が多数隠れているということなのか、果たしてどちらなのでしょうかね?

新型に関して言えば初期には一見軽症に見えても突然重症化する症例があるということが言われていますから、「とりあえずタミフル」という日本の医療事情が案外重症化防止に奏功しているのではないかという可能性もあるでしょう。
一方で典型的なインフルエンザ様症状を呈する患者はむしろ少数派であるとも言いますから、新型と知られないまま重症化、あるいは死亡にまで至っている患者が全国あちこちに実はいるのかも知れませんよね。

幸いにも重症化する症例について言えば発症から日数が経っていても抗ウイルス薬は有効であると言うことですから、おかしな経過を辿る症例についてはまず疑ってみるということが必要になってくるのかも知れません。
問題はしかし前述の報道などでも見受けられるように、疑って新型と確定診断をしたところであまりメリットがないばかりか、むしろデメリットが多すぎるという現場が現状では結構沢山ありそうなことなんですが、このあたりにも適切なインセンティブの設定というものが今後必要になってくるところなんでしょうね。

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2009年8月14日 (金)

今どき猿でも反省するという時代に

本日まずは、最近ちょっとケッサクだった話を紹介しておきましょう。

洛書き帳:「逆取材させてください」… /京都(2009年8月8日毎日新聞)

 「逆取材させてください」。先日、インタビューした映画監督からそう言われ、写真を撮られました。一瞬、意味が分からず「ボーッ」としてしまいましたが、詳しく話を聞いたところ、取材を受けた各社の記者をカメラに収めているのだそうです▼写真を撮られる瞬間、少しだけ心がざわつきました。それは撮られることに抵抗があった訳ではなく、私が仕事でさまざまな人へカメラを向けることで、相手に多大な精神的負担をかけていたかもしれないと考えたからです▼自分が被写体になり、そのことに気づくことができました。そして、相手にきちんと配慮した上で、取材をしようと思いを新たにしました。【小川信】

いやあ、逆取材とは何とも角の立たない言い方でGJですね。
それは今どき毎日新聞あたりに取材されるなんて言われたら、証拠の写真くらいは残しておかないとトンでもないことになりますよホント。

それはともかく、先日は例の台湾問題でNHKを8300人が訴えたという話をご紹介しましたが、その後さらに問題は拡大しているようです。

パイワン人も提訴、原告1万人突破 NHK台湾特集訴訟(2009年8月12日産経新聞)

 NHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの“一等国”」に出演した台湾人などから番組内容に歪曲(わいきょく)があったと批判が相次いでいる問題で、出演した台湾少数民族のパイワン人らが番組で、民族の誇りを傷付けられたとして、NHKを相手取った集団訴訟に原告として加わることが11日、分かった。原告数は提訴後も増え続け、1万人を突破した。

 訴訟に参加するのは、台湾南部のクスクス村のパイワン人出演者ら4人。番組では、1910年に開催された日英博覧会の写真に「人間動物園」の文字をかぶせ、《イギリスやフランスは博覧会などで植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人を展示する「人間動物園」と呼ばれました》などとするナレーションを、パイワン人へのインタビューとともに放送。「日本政府がパイワン人の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」(訴状)と批判が出ていた。

 関係者によると、訴訟に加わるパイワン人4人のうち、2人は番組に出演。インタビューの際、「人間動物園」に関する十分な説明を受けておらず、単に写真を見て懐かしいと涙ながらに語ったシーンが歪曲されて伝えられたとしている。残る2人のうち1人は親戚(しんせき)が日英博覧会に実際に参加して、それが今でも自分たちの誇りであるにもかかわらずNHKに「人間動物園」とおとしめられ、名誉を傷付けられたとしている。もう1人はパイワン人の地元名士となる元郷長で、番組でパイワン人の名誉と誇りを傷付けられた-としている。

これはしかし、直接の当事者が否定してしまった場合に裁判所がどういう事実認定を行うのか興味がわくところですね。
これだけの国際問題になっているわけですから、法廷においては是非とも詳細な事情を明らかにしていただきたいと願っている人も多いのではないでしょうか。

さて、少し古い話になりましたが、日テレでこういう問題があったことをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。

「バンキシャ!」でウソ証言 県が建設業者の男を告訴(2009年3月2日サンスポ)

 昨年11月に放送された日本テレビ系の番組「真相報道 バンキシャ!」で、岐阜県の裏金問題をめぐる建設業者の男の証言がウソだったことが判明。同局関係者らが県側に謝罪していたことが1日、分かった。県は同日、偽計業務妨害罪で男を県警に告訴したと発表。また、同番組は同日の放送で事実関係や経緯を説明し、誤りがあったことを公にした。

記事本文の続き 日本テレビの人気アナウンサーだった福澤朗(あきら)氏(45)と女優の菊川怜(31)をキャスターに据え、2002年に始まった同局系の看板番組で不祥事が起きた。

 岐阜県や同局によると、問題があったのは昨年11月23日に放映された「バンキシャ!」の自治体裏金問題特集。出演した建設業者の男が、架空工事による県土木事務所の裏金づくりに協力し、県職員に200万円を送金したなどと証言した。

 岐阜県では2006年、約17億円に上る県庁の裏金問題が発覚。懲戒免職の8人を含め、職員約4400人が処分されたほか、内部調査担当の総務部長や懲戒免職となった職員が自殺するなど、県全体が激震した。

 「裏金づくりがまだ行われていることが事実なら、重大な問題と受け止めた」と県秘書広報課総括監の武藤鉄広氏(56)。そこで県は、2008年度発注の公共工事などで不正経理の有無を独自に調査。その結果、建設業者の証言内容が虚偽だったと断定した。

 県によると、2月18日付で日本テレビ側に報道内容の確認と謝罪報道を要請。翌19日には、建設業者を偽計業務妨害罪で県警に告訴した。日本テレビと地元中京テレビの両局関係者は27日に県庁を訪れ、放送に誤りがあったと謝罪したという。

 「バンキシャ!」は1日の放送で、福澤キャスターが経緯を説明。建設業者に再取材したところ、裏金づくりの証拠とした銀行の送金記録は改ざんしたもので、『岐阜県庁側に裏金を送金した事実はなかった』と証言を翻したと釈明。誤報だったことを認めて「視聴者や岐阜県庁、岐阜県議会の皆さんに大変ご迷惑をお掛けしました」と頭を下げた。

 同番組によると、建設業者は放送の2カ月後、別の岐阜県内の公金横領事件の共犯として逮捕、起訴されたという。

さて、この件について先日判決が出たということなのですね。

日テレ「バンキシャ!」虚偽証言被告に有罪 岐阜地裁多治見支部(2009年7月23日産経新聞)

 日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」の取材に対し、岐阜県の裏金をめぐる虚偽の証言をして県の業務を妨害したなどとして業務妨害と詐欺の罪に問われた同県中津川市、元建設会社役員蒲保広被告(58)に、岐阜地裁多治見支部(溝口理佳裁判官)は23日、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。

 検察側は「被告は報酬欲しさに取材を受け、騒動が起きることを十分認識。県の業務を妨げ、県民が受けるべき行政サービスが行われなかった」と主張。弁護側は行政サービスが提供されなかったというのは抽象的として酌量を求めてきた。

 論告によると、蒲被告は昨年11月、「県の土木事務所は裏金づくりを行っている」などと番組担当者に架空の裏金問題を証言。虚偽内容を報じさせた。また昨年までに、中津川市の元職員と共謀、市から請け負った下水道工事の代金を水増し請求するなどして、公金をだまし取ったとされる。

この件に関しては日テレ社長が引責辞任するという騒動に発展しましたが、調べれば調べるほど興味深い事実が明らかになってくるというなかなか面白い事件です。
嘘の証言をしたという件の建設会社役員はネットを通じて取材協力者として応募してきたというのですが、同じ人間がテレビ朝日にも別件で登場していたばかりか、過去にも日テレに別件で出ていたというのですから、経歴を見てみれば明らかに「プロ証言者」ですよね。
こういうプロが存在していること自体に普段からヤラセは当たり前という番組作りをしていて感覚が麻痺しているのかも知れませんが、そもそも全くチェック体制すら存在していなかったという時点で何をもって真実と信ずるのかという姿勢が問われるところではないでしょうか。

日テレ虚偽報道、ネット依存の情報収集が裏目に(2009年3月24日産経新聞)

 日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」が虚偽の証言に基づいて岐阜県に裏金があると報じた問題で24日、日テレの社内調査による中間報告書が公表され、虚偽証言をした元建設会社役員、蒲(がま)保広容疑者(58)=偽計業務妨害の疑いで逮捕=が4年前にも別のテーマで同番組に出演していたことが分かった。2回ともインターネットの取材協力者募集サイトを通じて出演していたが、番組スタッフは過去の応募歴を確認しておらず、ずさんな取材過程が浮き彫りになった。

 報告書や同局によると、蒲容疑者は平成17年3月の同番組で、バイアグラ購入者の1人として座談会形式で出演し、日テレ側は出演費1万円(税別)と交通費を支払った。報告書は「過去の応募歴を確認していれば、証言の信用性を判断する材料になった」と指摘した。

 今回の報道では、番組スタッフがインターネットのサイトに不正経理の情報提供を書き込んでいた。久保伸太郎相談役=社長を引責辞任=は同日の会見で、「裏金作りにかかわった人をネットで募集しており、情報ツールの使い方を明らかに誤った」「2回目と分かっていたら、どういう人物か確認できた。情報の蓄積と活用がなっていなかった」と苦渋をにじませた。

 証言者への出演費について久保相談役は「テレビでは全身を映すリスクを負わせる側面もある」と説明し、一定の理解を求めた。ただ、同局はサイトで情報を募集する際、謝礼を「応相談」としており、報告書は「謝礼の可能性を示した取材は、報道倫理の観点から大きな問題」とした。
(略)

自転車操業、現場は「手足」…バンキシャ!虚報を糾弾(2009年7月30日産経新聞)

 「いろいろ取材しているようだが、実際はほとんど一歩も根拠の収集に向かわなかった」。日本テレビ「バンキシャ!」の虚偽報道について、BPO検証委が30日に示した勧告は、安易な取材方法についてだけでなく、放送日程に追われる“自転車操業”の実態や取材者の責任感の欠如など、報道番組のありようを厳しく批判した。

 「1週間では十分な取材ができないテーマでも、何とかその週に放送することが求められていた」「放送日に合わせて無理やり取材を間に合わせる」…。勧告は、虚報の根本的な原因として、取材の過密スケジュールを挙げた。

 問題となった裏金報道の場合、情報収集を始めたのが昨年11月3日。当初の放送予定は6日後の9日だったという。結局、放送は23日となったが、その2週間も、「情報源の特定につながる」などと、情報提供者以外の裏付け取材には動かなかった。勧告は「真実と信じるに足る根拠」を取材する意志がみられなかった、と糾弾した。

 取材チームの判断力や責任感の欠如も指摘された。勧告によると、現場に赴いた番組スタッフは、「幹部スタッフが取り上げると決めたからには、情報提供者の信用性はすでに判断されている」と思いこんでいたという。取材現場に真偽の判断が委ねられていなかったことも、虚報の一因になったとみられる。

 東京工科大学の碓井広義教授(メディア論)は「問題の背景について勧告は、日テレ社員が『頭脳』で外部スタッフが『手足』という役割分担のせいだったかもしれないと表現している。幹部スタッフである『頭脳』も、現場で動いていれば問題は起きなかったということだろう」と指摘する。
(略)
 一方、記者会見した検証委の服部孝章委員は「決してバンキシャだけの特殊な事例ではない。これまで委員会が扱ったいくつもの事例に同種の傾向がみられる」と述べ、報道機関が真摯(しんし)に問題を受け止めるべきだと強調した。
(略)

ま、誰もここだけの特殊な問題だなどとは思っていないと思いますけれどもね。
さて、記事中にもありますように放送倫理・番組向上機構(BPO)から勧告を受けたと言うものの、民放連の方では結局日テレ側に何らの処分も下さないと決めたそうで、普段から他業界にさんざん自浄だの何だのと大きなことを言っているわりにはずいぶんと身内に甘いんだなとも思われるところではあります。
しかしそれ以上に問題なのが当事者の日テレで、一応は反省の体を示して検証番組をやりますということにしているらしいのですが、その実態というのがこんな感じらしいんですね。

深夜のアノ枠で本当にいいのか?検証「バンキシャ」(2009年8月3日ZAKZAK)

 「真相報道バンキシャ!」の虚偽証言報道をめぐり、BPO(放送倫理・番組向上機構)から、最も重い「勧告」を受けた日本テレビ。肝心の検証番組は、最も目立たない日曜深夜に放送することを決めた。多くのサラリーマンが翌朝に出勤を控えた時間帯で、いったい誰が見るの?

 問題の番組は昨年11月20日に放送。「岐阜県の土木事務所が裏金づくりをしている」などと元建設会社役員が匿名で証言したが、後に虚偽の証言だったことが分かった。

 BPOは、“裏金口座”の届け出住所が証言者の自宅住所と同じことに取材スタッフが気付いていたのにもかかわらず、証言を虚偽と疑わなかった点を問題視。虚偽を見破る最大のチャンスを逃し、証言を鵜呑みにして放送した点を非難した。

 さらに、福澤朗キャスターが番組冒頭で1枚のキャッシュカードを手にして「『バンキシャ』のスクープです」と切り出し、「ある自治体の裏金が入っている口座のキャッシュカードの実物です」と誇らしげにアピールした演出も問題視。

 キャッシュカードが番組の中で一度も登場することがないことから、「何の意味もない」と断じ、「番組制作上の安直さ、粗雑さが現れている」と厳しく指摘した。

 “裏金口座”の届け出住所をめぐる問題を日テレはスタッフへのヒアリング調査で把握していたが、これまで公表していなかった。日テレの戸垣直コンプライアンス推進室長は「取捨選択の結果、報告しませんでした。隠蔽の意図はありません」と釈明した。

 キャッシュカードを使った演出については、細川知正社長は「ご指摘のとおりだと思う」と非を認めた。

 日テレでは、8月16日午後6時放送の「バンキシャ!」で検証内容をまとめたものを放送し、さらに同日深夜0時50分から、検証特番を全国ネットで放送する。

 放送業界への信頼を揺るがす前代未聞の不祥事の検証特番を深夜に放送することについて、報道陣から疑問の声があがったが、細川社長は「普段から硬派なドキュメンタリーを放送している枠。ふさわしくないとは考えていない」と語った。果たして視聴者に誠意は伝わるか-。

蛙の面に何とやらと言いますが、いったい本当に反省する気があるんですかね、この人達は?
あちらこちらでマスコミにやられたと被害の声が絶えない昨今、こういう人たちに取材される立場ともなればそれこそ録音録画も完備でやっておかなければ、後でどんなことになるやらわかりませんですよ。

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2009年8月13日 (木)

それは確かに言うのはタダ、ですが…

総選挙も近づいてきましたが、今や国民にとって最大の関心事は医療や年金といった社会保障政策であるという話もあります。
各党ともそれぞれの立場から色々と工夫を凝らしているのは判るのですが、何しろこうまで込み入った問題だけに「これをやっておけば万事解決」というバラ色のアイデアなどと言うものはないわけですよね。
最終的に医療というものをどのように位置付けていくのかといったビジョンも確かめながら、それぞれの政策を見据えていくべきかという気がしますが、そうした目で見るとますます各党とも帯に短したすきに長しの感が拭えないところがありますかね。

マニフェスト点検「医療」…勤務医疲弊、解決策は(2009年8月9日読売新聞)

 医師不足や救急など国民の命に直接かかわる医療問題について、自民、民主両党とも、医師の増員や診療報酬の引き上げなど積極的な施策を公約に掲げている。

 実現性はどうか。医療の崩壊は食い止められるのか。
(略)
 救急をはじめとした医療危機の根幹にあるのが医師不足問題だ。人口1000人当たり医師数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3・1人に対し、日本は2・1人と少ない。自民、民主両党とも医師数増加を公約に掲げる

 ただし、医学部に入った学生が一人前の医師になるには研修も含め最低8年かかる。指導教官を増やしたり、校舎を増築したりするなどの整備も不可欠で、実現までの課題は多い。

 そもそも日本の医師は10年前より約15%増えている。だが激務の外科、産科医は10%前後も減少。岩手の例のように、地域によっては内科医も足りないなど「偏在」の問題も大きい。

 済生会栗橋病院(埼玉県栗橋町)の本田宏副院長は「医師不足が深刻な地方での対策が両党とも明確でない。地域で必要な医師数を算出し、それに応じた医師を育てる仕組みを作る必要がある」と注文をつける。

 また両党とも、救急や産科などに医療費を手厚く配分することなどで、地域医療を整備するとしている。

 政府はこれまで、医療費を含む社会保障費の伸びを毎年2200億円削減する抑制策をとってきた。診療報酬も本体と薬価部分を合わせた全体で02年度からマイナス改定が続いている。

 これについて民主党は「地域医療の崩壊に拍車をかけた」と批判。GDP(国内総生産)比で8・2%の我が国の医療費を、OECD平均(8・9%)まで引き上げるとする。

 一方、政府も今年6月の「経済財政改革の基本方針2009(骨太の方針09)」で、来年度の社会保障費の抑制方針を撤回。自民党は公約で診療報酬を来年度プラス改定するとした。

 増える医療費を、だれがどう負担するのか。具体化に向けた課題も多い。(医療情報部 坂上博、高梨ゆき子、山崎光祥)

またここでも本田大先生の御登場ですか(苦笑)。
そういえば「医師強制配置論」をぶち上げた読売さんとは主義主張的にも相通じるところがありますかね?
大先生にしても済生会辺りで吼えていないで、自ら医師不足著しい僻地診療に率先して従事するくらいのことをやってみればご発言に説得力も増しそうな気がしますけれどもねえ…

ま、それはともかくとして、このように医療政策というものがネタになると言うことになりますと各方面でも当然注目するようになってきます。
マスコミなども「医療ネタは売れる」とばかり取り上げる機会が増えたのはその一例ですが、以前からお伝えしてきた通り読売新聞松下政経塾などを初めとして各方面からの医療政策提言なるものも盛んになってきているようなのですね。
今日もまた幾つかのネタ…もとい、政策提言を紹介しておきますが、共通するキーワードは「発送の転換」ということになるのでしょうか?
しかしその実態はと言えば、結局真っ先に転換するべきは誰かということにもなりかねないわけですが…

発想の転換で医療の「バリュー」面に着目を-財務総合政策研究所(2009年8月10日CBニュース)

 財務総合政策研究所の「持続可能な医療サービスと制度基盤に関する研究会」(座長=貝塚啓明・東大金融教育研究センター長)はこのほど、昨年12月から今年3月までの議論の成果を報告書にまとめた。このうち「病院経営が抱える諸問題」と題して一章を執筆した亀田隆明・医療法人鉄蕉会亀田総合病院理事長は、医師や看護師の絶対的不足など医療の供給体制の問題や医療費抑制政策による不採算経営などを指摘。問題解決のためには、医療を「コスト」の面からとらえるだけでなく、「バリュー」としての側面にも目を向けるといった発想の転換が必要だと強調している。

同研究会は「国民にとっても、関係者にとっても安心のできる医療サービス供給体制」と「適切な費用負担の下での持続可能な医療保険制度」について検討することが目的。昨年12月から今年3月までに4回の会合が開かれ、現状分析や諸外国との比較を基に議論した。
 同研究会のメンバーは、貝塚座長をはじめ、大森正博・お茶の水女子大大学院人間文化創成科学研究科准教授、上昌広・東大医科学研究所特任准教授ら計9人。

 報告書は第7章まであり、▽高齢化と医療需要の変化(第1章)▽医療関係者の論文(第2-4章)▽医療制度分析(第5-7章)-の3部構成。同研究会のメンバーが検討結果を踏まえ、分担執筆している。

 このうち、上氏は「医療現場の諸問題」の章の中で、病院の医師不足の原因は長時間勤務や非正規雇用の拡大などにあると指摘。また、看護師や薬剤師などのコメディカルも不足しているが、医療費削減による事務職員などの雇用の減少から、事務作業を医師や看護師で担わざるを得ないとして、こうした現状を問題視している。さらに、医療費削減により生じた問題に対して「診療報酬ではなく補助金や基金の設立で対応する手段では、医療現場は荒廃する」とした。

 大森氏は「日本の医療制度の問題点と医療制度改革の方向性について」と題して執筆。「日本の医療制度は社会経済の変化に十分に対応できていない」と指摘した上で、限られた資源の中で増加する医療費に対応するための「プライマリ・ケア医療制度や専門医制度の導入」や、「公的医療保険制度の積立方式への移行を検討する必要性」などについて論じている。
(略)

報告書につきましては同研究所HPからダウンロード出来るのですが、まあ、その…「発想の転換」も「バリュー」もよろしいんですが、言っている内容は昔懐かしい雰囲気の漂う重箱の隅突きに終始しているのが何とも素敵で、しょせん過去ログまとめなおしに過ぎないにしてももう少し言葉を飾れよ!と言いたくなるところではあります。
同研究所HPから「持続可能な医療サービスと制度基盤に関する研究会」のメンバーを見てみますとこんな感じなのですが、確かにこのいつものメンバーで今さら画期的なアイデアを出せと言う方が期待薄ではありますし、そもそも一般的な現場の感覚から遠すぎますかね。

・座長
      貝塚 啓明       東京大学金融教育研究センター長

・メンバー
      大森 正博       お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科准教授
        折茂 賢一郎   社団法人地域医療振興協会 西吾妻福祉病院管理者
        上 昌広       東京大学医科学研究所特任准教授
        亀田 隆明       医療法人鉄蕉会 亀田総合病院理事長
        富田 俊基       中央大学法学部教授
        府川 哲夫       国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部長
        松田 学       財務総合政策研究所客員研究員
      横山 禎徳       株式会社イグレック代表取締役

要するに言っていることは金がないからもっと工夫して何とか乗り切ろうよ!という話なんですが、まさにその背景にあるのは財政負担の軽減という視点しかないのだろうなと考えてみれば、なるほど財務総合政策研究所というのは財務省傘下の研究所ですから当然の話ではあるわけです。
「日本の医療制度は社会経済の変化に十分に対応できていない」と仰いますが、一番変化に対応できていないのは論者の頭の中身なんじゃないかという気もしないでもないんですが、これも最初に結論ありきではやむなしということなのでしょうか。
いやはや、こうまで古色蒼然な話題ばかり並べられると正直あまりツッコミを入れる気力も涌いてこないところです。

あまりに気乗りしない話ですのでもう一つ紹介してみますが、こちらの方がもう少し突っ込み甲斐がありそうに思えますね。

医療は成長分野、「崩壊」一辺倒からの転換を(2009年8月10日CBニュース)

【第73回】小野崎耕平さん(特定非営利法人日本医療政策機構 副事務局長)

 日本医療政策機構の小野崎耕平さんは、安定財源をどう確保するかの議論を欠いたまま、単に医療費の増額を求める声が高まっていることに、かねてから違和感を抱いている。国民の関心が医療に向かっている今こそ財源確保の道筋を付け、「医療=崩壊=暗い話」という見方から、「医療=成長の源=夢のある話」へと方向転換すべきというのが、小野崎さんの考え方だ。同機構の世論調査では、医師など医療従事者に対する国民の信頼度が高いことが分かっており、小野崎さんは「医療の成長ビジョンを発信すれば、政治家も国民も耳を傾ける」と期待している。(兼松昭夫)
(略)
■ヘルスケア分野は数少ない成長分野
 これまで日本が幸運だったのは、医療技術や公衆衛生の進歩と経済成長のカーブが、見事に一致していたことです。ところが、こうした幸運な時代は1980 年代には終わりを告げます。この時期に入ると経済成長は陰りを見せ、国の成長が鈍化したのです。日本の医療界にとっても、これは大きなターニングポイントになりました。

―国の成長が止まった最大の原因は、急激な高齢化でしょうか。
 経済成長が止まった要因はさまざまで、ここで論じ尽くすことはできませんが、医療・社会保障という視点で見れば、公的な社会保障への依存度が高まったのに、それを裏打ちしてきた経済成長が止まってしまった、そして国の収入が減ってしまったことが何よりも大きいでしょう。(略)
 医療費など社会保障費の伸びの抑制をめぐる現在の議論の背景には、こうした状況があります。官僚が悪意から社会保障の伸びを抑制しているという論調もありますが、それは違うでしょう。こうした歴史的な背景があり、やむにやまれずそういう世論になった側面があることも、医療界は認識すべきです。

―小野崎さんは、医療や介護などのヘルスケアは、数少ない成長分野だと主張されています。
 これらが低成長時代の日本における数少ない成長分野であることは明らかです。例えば雇用面でも顕著です。建設業では、雇用がこの10年間で660万人から540万人へと、約2割減少しました。それに対して医療・介護分野では、440万人から610万人へと約3割も増えました。雇用をけん引してきたサービス業の雇用増加分の、実に7割近くはヘルスケアによるものです。
(略)
 ヘルスケア分野でも、医療や介護の「崩壊」など暗いトピックばかりが目に付きますが、明るい兆しもたくさんあります。もちろん、医師不足などの問題を解消するための対策は直ちに講じるべきですが、その一方で、客観的に見ると、ヘルスケアは数少ない成長分野、夢が語れる分野だということも認識する必要があるでしょう。

―医療界には、他分野から医療財源を持ってくるべきだという主張があります。
 心情としては理解できますが、事はそう単純ではありません。(略)
 「医療は大切だ」と言われれば、誰も反論できません。しかし医療と同じように、大切な政策分野もたくさんあります。例えば経済政策は、ヘルスケアにとっても非常に大切です。一つは、経済成長による財源確保という視点。そしてもう一つは、雇用・経済情勢が健康に与える影響の視点です。景気や所得が健康に大きな影響を与えることが、社会疫学の研究からも分かっています。ミクロ的にも、景気が悪くなると経済力の弱い層を中心に、受診抑制が増えることが示唆されています。言い換えると、国民の暮らしや安全を守る上では、医療をはじめとするいろいろな政策オプションがある。これらの社会政策全体を幅広くとらえた上で財源について考えないと、バランスを欠いた議論に陥る恐れがあります。それは、医療への世論からの支持を結果的に弱めてしまいます。

■医療界は今こそ前向きな議論を
 最近気になるのは、国による成長戦略や財源論を欠いたまま、「とにかく医療への配分を増やせ」と主張する声が多いことです。衆院選に向けた各党のマニフェストを見ても、こうした印象を強く受けます。政治は世論に敏感にならざるを得ない宿命がある以上、ある程度仕方ないでしょう。先程も話しましたが、公的な社会保障への依存度がこれだけ高まると、安定財源をどう確保するかの議論が不可欠になります。だけど、こうしたことは政治家の立場からは非常に言いにくいわけです。
 実際、わたしたち(日本医療政策機構)の世論調査では、「政党・国会議員」や「厚生労働省」「マスメディア」「医師会」など、今の医療政策決定に大きな影響力を持つ人たちへの国民の信頼度が、非常に低いことが分かりました。こうなると、この人たちが何を言っても国民は支持しないわけです。以前、舛添要一厚生労働相が、「ここまで行政に信用がない現状では、何もできない」という主旨の発言をされていましたが、その通りなのです。
 これに対して「薬剤師」「看護師」「医師」に対する信頼度はいずれも9割を超え、上位3位を占めました。これは驚くべきことで、とても希望が持てる結果です。何だかんだ言って、現場で活躍する医療のプロたちは、国民の信頼を得ているのです。そうなると、これらの医療従事者が果たせる役割はとても大きくなります。「医療成長」のビジョンを発信し、安定財源確保の必要性を訴えれば、国民も耳を傾けるはずです。
 一方で危惧するのは、「崩壊、崩壊」と言い立てたり、「医療がいちばん。他はどうでもいい」といった内向きな議論に終始したりしていると、せっかく獲得した世論からの支持を失ってしまう恐れがあることです。世論もマスメディアも本当に怖い。あっという間に離れます。わたしは、おそらくここ1、2年が勝負ではないかと考えています。医療界は、医療への関心が高い今こそ、財源確保のめどを付け、より信頼を高めるための改革を進め、そして何より、明るい夢を語る前向きな議論に方向転換すべきです。

医療・介護領域=成長産業という視点は個人的に同意するところなのですが、その財源の担保として経済成長を求めるという発想は今の時代にどうなんでしょうかね?
俗に医療費30兆円と言いますが、そのうち国庫からの負担は10兆円程度にすぎない一方で公共事業費は40兆円、これはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの6カ国全部の公共事業費を足しての約30兆円をも上回る金額と言います。
あるいはこういう試算があることを御存知でしょうか。

公共事業1兆円による経済波及効果(2兆8091億円)、雇用効果(20万6710人)

社会保障1兆円による経済波及効果(5兆4328億円)、雇用効果(58万3126人)

前述の記事中でも今や医療・介護領域は建設業をも上回る雇用の場となっていることが示されていますが、国庫負担の費用対効果という観点から見た場合でも社会保障は公共事業に比べて少ない出費で大きな経済効果と雇用効果が見込めるという、非常にお徳でエコロ(?)な産業であるとも言えるわけですね。
要するに医療・介護領域に対して金を出すことは多少無理をしても十分後から元が取れる、少なくとも先行き不透明な他の産業に金を出すよりはるかに安全確実な出資先であり非常に手堅い買い物であるのに、当の医療・介護業界は「ここ1、2年が勝負」くらい今まさに崩壊の瀬戸際になるわけです。
この状況で財源をどうするかの議論が必要などと悠長に主張されているのは大地震で死傷者続出の状況下で「しかし救援活動の財源にも議論が」などと言っているようなもので、今を逃せば買い逃すというのであれば女房を質に入れても買いというくらいの見切りがあってもいいと思いますけれどもね。

ちなみにこの小野崎耕平氏と言えば法学部卒業後渡米して公衆衛生で学位を取り、製薬会社に勤務した後で国政選挙に打って出たというなかなか面白い経歴をお持ちのようですね。
氏の所属する日本医療政策機構と言えば先日も紹介させていただきましたが、そのバックグラウンドを見てみればなるほど…と思えるような提言ばかり繰り返されているのは、ある意味判りやすいのは確かなんですがねえ(苦笑)。
いずれにしても医療を成長産業として見込むためにはその大前提として、国による強力な総量規制が行われなければという条件が必要になると思いますが、結局のところ医療費は財源の範囲内でという議論に終始している同氏こそ最も医療を国の将来を支えていく成長産業と見なしていないということなのかも知れません。

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2009年8月12日 (水)

誰のためにもならないなら避けた方が得

最近はモンスターだのクレーマーだのと色々な方面で賑やかなようですが、当然ながら医療業界においても例外とはしません。
一説には「患者様などと呼び始めたころから医療現場のモンスターが増えた」などという話もあるようですが、いずれにしても医療従事者のみならず大多数の善良な一般患者にとっても迷惑な話ですよね。
最近ではようやく職員一人一人の場当たり的対応ではなく、組織として系統だった対策を取ろうという動きが医療機関にも広まっているようで、各地で講習会なども開かれるようになりました。

問題患者への対処法探る 医療従事者らが岡山で検討会 /岡山(2009年7月26日山陽新聞)

 医師らに暴言を吐いたり暴力で危害を加える問題患者(モンスターペイシェント)への対策を研究する「問題患者等対応検討会」(MPA)が24日夜、岡山市北区鹿田町の岡山大病院で開かれ、実例に基づくロールプレイ(役割劇)を通して的確な対処法のあり方を探った。

 県警組織犯罪対策1課員と弁護士が問題患者役となり、同病院など4医療機関の職員が対応。県内外の医療従事者約350人が見学した。

 外来診察の待ち時間が長い、医療ミスで障害が残った―などと言いがかりを付け、高額の慰謝料を要求する問題患者役に対し、職員らは毅然(きぜん)とした態度をとったり、相手のペースに合わせないなどの対応で臨んだ。

 県警担当者や弁護士は、相手を挑発し過ぎない▽凶器となるボールペンを置かない▽室内では出入り口側に座る―などの注意点を紹介。MPAの森定理会長(川崎医科大付属病院)は「善良な患者を守るためにも、多くの医療機関に周知徹底を図りたい」と話した。

ことが医療業界に限った話でもないということであれば、その対策においても先進する他業界の知恵を拝借するのが賢いやり方ですよね。
実際にこうした問題は特定業界だけではなく、暴力団対策などと同様に国民全てに関わることとしてきちんと対応していかなければならないことだと思いますが、そのためにもまずは正しい知識を世間的にも周知徹底していかなければならないところでしょう。
その一方でクレーマーという存在自体も人によって定義が様々なところがあって議論がややこしくなっている部分もありますが、実際問題としてその背景が複雑化しているのも事実のようです。

「モンスタークレーマー」会社、学校、病院、個人…標的にされたらどうする?(2009年8月6日プレジデント)

■常軌を逸した誹謗中傷は「偽計業務妨害罪」になる

 わが国で企業や公的機関へのゆきすぎたクレーム行動が一般に広く問題視されるようになったのは約15年ほど前からのこと。
 そもそも正当なクレームは、企業経営を改善し活性化するための貴重な情報源となる。ところが、この時期から客観的にはとても正当とはいえない悪質なクレームが増え始めた。さらに「東芝クレーマー事件」によってインターネットの影響力が広く知れ渡り、同事件が起きた1999年ごろからは、インターネットを最大限活用して苦情の中身を社会に広めようとするクレーマーが出現。こうした事態への対処に企業側は頭を抱えているのが実情である。

 かつても製品の不具合、サービス不良などを理由に企業へ因縁をつけるタイプの悪質クレーマーは存在した。いわば暴力的背景を持ったクレーマーだ。
 一方、近年問題なのは、製品の不具合など苦情の入り口は同じでも、そこから非難の方向を変えて、企業の社会的姿勢などを声高に追及するタイプのクレーマーである。苦情の前提と要求の内容には著しい差があったり、苦情の相談がなかったりするからモンスタークレーマーといってもいい。背景に「我こそは正義」という思い込みがあるため、大変対応しにくい相手である。
 というのは、暴力的背景を持ったクレーマーの場合、直接的には金銭を要求していなくても、要求の内容はわかりやすい。これに対して、“新種”であるモンスタークレーマーは、正義を述べ立てることによる自己陶酔や憂さ晴らしといった、別の動機によって行動している。そのため、例えばモンスタークレーマーに金銭の提供を申し出たりすると、逆に相手の態度を硬化させ、問題を長引かせることにつながりかねない。「対応しにくい」というのは、このことだ。

 モンスタークレーマーの標的は企業だけではない。“被害”はいまや自治体や国の機関、学校、病院、さらには芸能人や政治家といった個人にまで広がっている。また、“クレーム慣れ”しているはずの企業でも、消費者相談室などの専門部署ではなく現場の個人が標的になることがある。誰もがクレーマー被害に遭う危険があるのだ。
 2007年からは、実社会での知識・経験が豊富で、学生運動にも関わった団塊世代が続々と退職している。彼らのごく一部が、ゆがんだ正義感をふりかざすモンスタークレーマーと化して、現役サラリーマンを苦しめているという現実も見逃せない。
 電話やネットを通じた「情報による攻撃」は、暴力をともなう物理的な攻撃よりも効果的に人を打ちのめすものである。たとえ専門的な訓練を受けたクレーム担当者であっても、モンスタークレーマーからの執拗な攻撃を受ければ「心が壊れてしまう」といわれている。通常業務を抱えた一般社員ならなおさらだ。

 常軌を逸したクレーム電話が続いたり、ネット上の誹謗中傷がやまなかったりしたときは、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたるケースもあるので刑事告訴といった対応も可能である。ただ、弁護士に相談しても、弁護士は告訴や損害賠償といった法的解決を想定しがちだが、それは対策のごく一部。私が推奨したいのは定期的に「対モンスタークレーマー訓練」を行うことだ。
 クレーマー役の社員が営業や総務、支店などの窓口にシナリオどおりのクレーム電話をかける。それだけでも役に立つ。防災訓練と同じで、一見芝居に見えても、事前にやるべきことや進むべき道筋がわかっていると、モンスタークレーマーの不意の襲来にも冷静に対処できる。備えあれば憂いなしであり、まずは心の備えが重要だ。
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升田 純 弁護士
ますだ・じゅん○1950年、島根県生まれ。74年京都大学法学部卒。77年裁判官に任官、97年弁護士登録、2004年より中央大学法科大学院教授。『モンスタークレーマー対策の実務と法』(共著)、『実務民事訴訟法』など著書多数。

記事中にもありますが「団塊世代の一部がゆがんだ正義感をふりかざしクレーマーに」云々の部分、実体験として心当たりのある方々も多いのではないでしょうか(苦笑)。
まあこのあたりも極めて線引きが難しいところであって、一般に通用しない価値観を大上段に振りかざすという点では一部マスコミなどが盛んに擁護する社会的少数派とどう違うのか?という考え方もあるわけですから、結局は行動で区別するしかなさそうです。
「こりゃおかしいぞ」と思って抗議なりクレームなりをするところまでは誰にでもあり得ることで、そこから先をどうするのかというあたりでクレーマーか否かを判断していくしかないわけですが、それこそご意見箱などで普段から「健全なクレーム」を積極的に引き出していくことがむしろ鑑別と予防に有用なのかも知れませんね。

一方で記事中にも触れられている通り、古典的な「ゆすり・たかり」的意図といった(自覚的な)悪意でもってクレーマー化している人間というのは実はそれほど多いものではなく、むしろ本人達は自分の正義を疑っていないという点にこれらの対処の難しさがあります。
金品や便宜を要求するということはそこに利を求めているわけで、逆に言えば割に合わないと感じれば手を引くという損得勘定が働いているということですが、正義派クレーマーにはそうした打算がありませんから相手から拒絶され続けてしまうと「これで終わり」という引っ込みの付け所が本人にも見いだせなくなる場合があるわけですね。
時々新聞沙汰になる「トラブルがこじれて病院内で刃傷沙汰に及び」云々の傷害事件などもそうした背景を秘めている場合が結構あるんじゃないかと思うのですが、少しでもクレーマーを減らすためにはトラブルとなる以前の段階で事態の進行を防ぐということになろうかと思います。

特に医療という現場は唯一合法的に他人を傷つけて良いとされる場所でトラブルのネタは幾らでも転がっているわけですから、何がどうあってもトラブルに持ち込むという筋金入りの方々はともかくとして、意思疎通可能な方々とは可能な限りモンスター化以前の段階で解決していかななければ、トラブルの種など尽きるはずがありません。
その意味で医療事故などは対処次第で後々どうにでも転がる一大転機ともなりかねないだけに、ADRや無過失補償制度など使える手段は何でも積極的に活用することで早期から強力に正しい問題解決を行っていくべきですよね。
これは何も医療従事者の保身といった話ばかりではなく、医療側と患者側が対立してみたところでほとんどの場合どちらの利益にもならないばかりではなく、昨今ではそうした対立の構図につけ込もうとするケシカラン輩すら出没しているからということもあるのです。

組長に賠償金返還を命令 岡山、「横取り」主張の女性勝訴(2009年7月31日47ニュース)

 医療事故の賠償金を暴力団組長に不当な理由で横取りされたとして、岡山市の女性(19)が、返還を求めた訴訟で、岡山地裁は31日、組長に請求全額の約4800万円を支払うよう命じた。

 女性は0歳の時の医療事故で脳に障害を負い、現在も寝たきり状態。法定代理人の両親が提訴していた。

 次田和明裁判官は判決理由で「本来原告が受け取るはずの賠償金なのに、法律上の原因がないことを知り尽くしていながら受け取った」と指摘した。

 判決などによると、組長は女性の親類の知人で、医療事故をめぐる病院との示談交渉のため弁護士を紹介。1998年、病院側が過失を認め、5700万円が支払われたが、うち5000万円を組長が一時的に預かった。

 母親はその後組長に返還を要求したが、以前に生活費を用立てたことなどを理由に、197万円しか返されなかった。

 女性の母親は「娘の苦痛に対するお金を横取りするなんて、仁義のかけらもない」と訴えていた。

先日は病院が食いものにされる時代だという話をしたところですが、患者側も同様に食いものにされかねない時代だという認識を持っていなければならない時代だということです。
病院の待合室で弁護士が待っていて、暗い顔で診察室から出てきた患者に近寄ってきては「何かお悩みのことがありましたら相談にのりましょうか」とささやきかける…なんて笑い話?がありましたが、笑い事ではなく他人に乗っかって一儲けしようと待ちかまえている人間が手段を選ぶはずもないのは当然ですよね。

そこで重要になってくるのが医療側と患者側の間に存在する様々な溝をいかに解消していくかですが、クレーマー云々以前の段階でしばしば指摘されるのが両者の間の情報格差の問題で、ささいな誤解が巡り巡って大きなトラブルになっていく根本原因の一つではないかとも言われるところです。
以前にも救急崩壊に関する独創的見解を少しばかり紹介させていただいた九大医療システム学講座の信友浩一先生ですが、さすがこの方面でも造詣が深いご様子でこんな試みをなされているようですね。

患者と医師をつなぐ「医療決断サポーター」―九大大学院が養成(2009年8月4日CBニュース)

九大大学院医療システム学教室では、患者と医師の橋渡し役を担う「医療決断サポーター」の養成に力を入れている。看護師らが医療メディエーションや、医療訴訟と患者の権利などについて学び、受講時間が6割以上に達し、最終レポートを提出した受講者には修了書が発行される。

医療決断サポーターの対象は、看護師や社会福祉士など国家資格を持つ人。同教室では2004年12月に「第1回医療決断サポーター養成講座」を開催。これまでに約300人のサポーターが輩出している。8月末から始まる5回目の養成講座は定員40人で、10月までに8日間開く。

第三者として患者のインフォームド・コンセントの場に立ち会い、治療方針の「決断」を支援する。業務内容はメディカルソーシャルワーカー、いわゆる「医療コンシェルジュ」などと重なる部分もあるが、「紛争解決」までは想定していない。同教室では、「治療決定の段階で、患者と医師の間できちんと話し合いができていれば、紛争にまで至らないのではないか」と期待している。

ちなみに募集要項によるとこの医療決断サポーターとはこんなものなのだそうです。

医療決断サポーター(支援員)とは?

インターネットの普及などにより、わたしたちは医療情報に関しても多くの情報を持つようになってきました。また、医療界においては、医師からの一方的な説明への患者の同意ではなく、相互が参加する意思決定である、“真の”インフォームドコンセントを得るべきだと言われ始めています。このように医療を取り巻く状況が変化している昨今、良好な医師-患者関係の構築が求められています。

「医療決断サポーター(支援員)」とは、インフォームドコンセントの場に第三者として立ち会い、医師の説明を適切な形でサポートし、患者の疾患や治療に関する理解を助け、不安を取り除き、治療方針決定への参加を促します。これにより、より良好な医師-患者関係を促進し、病院は患者が安心・納得できる医療を提供することが可能となります。

思い切り細かいことを省いて言えば、医療現場における解説係とでも言うべきものになるのでしょうか。
信友先生の講座HPではこの医療決断サポーターというシステムに関して色々と記述があり読んでいて面白いなとも思うのですが、先生ら自身が考える問題点として以下のようなものが挙げられています。

3・医療決断サポーターの課題

①最も課題となるのは、先に述べたように医療決断サポーターが、患者の代理で医療を誘導してはならないということです。倫理的な問題でありますが、ここをどうクリアしていくかは、現状では個人の自覚に任せるしかありません。

②次に現実的な課題として資格や待遇の問題です。継続的なシステムの確立のために、医療費の中にコーディネーションにかかる費用をいかに捻出するか、現在の保険点数制度では課題が残ります。誰が経費を負担するのか、医療機関か患者か、あるいは保険者か。負担する者に肩入れするのは仕方が無いので、中立性をどう保つかが問題となります。

③法律的な課題もあります。医療決断サポーターの法的立場や、個人情報に対する守秘義務をいかに担保するか。記録の方法やその保管についても、今後の検討が必要となります。ただし、医師と患者の二者だけでは、問題があることも従来指摘されており、何らかの形で骨髄移植の際の弁護士立会いのように、第三者が介在することが望まれています。医療現場に全て弁護士が介入するのも現実的ではなく、例えそうであるとしても、むしろお互いの不信感をあおることにもなりかねません。紛争予防というネガティブな面からではなく、あくまでも良好な相互理解のための医療決断サポーターと考えます。

信友先生はこのように三つの課題を挙げていますが、それ以前の問題としてそもそも医療における説明という行為自体の持つ意味をどう考えているのかという点が多くの臨床家の疑問を抱くところではないでしょうか。
同じ疾患を説明させても医師によって何に力点を置くかは異なり、内科と外科では全く見解が違っているといったことは日常臨床の場で当たり前に遭遇することですが、要するにそれだけ「患者の人生に関わる意思決定は説明者の舌先三寸(失礼)にかかっている」という現実があるわけですね。

よく医療被害者団体なる方々がリピーター医師なるものを問題視していますが、どこの職場であれ大抵は実際に手を動かす人間よりも舌先を動かす人間の方がずっと多いわけですから、現実的な問題として受けた説明内容の不備による患者選択権の侵害といった問題の方がはるかに大きい(そして、気付かれにくい)とも予想されるところです。
好成績を挙げている治療が実は極めて苦痛が大きく「先生もう勘弁してくれ」と患者が泣いて頼んでいるといった事例はしばしばあることですが、そうした教科書に載っていない現場の実情を知らないサポーターに患者がどう説明するのか、半端な知識に基づいた説明の結果普通ならあり得ないような選択がなされるのではないか。
何気ない一言によって全てをぶち壊しにされた経験を持つベテラン臨床医ともなればそうした不安は幾らでも出てくるところではないかと思いますし、そんな怖さを知っているからこそ「実際の治療は下っ端に任せても患者説明だけは自分でやる」という大先生が未だに多いわけですよね(あれはあれで患者側からすると不評のようですが…)。

信友先生の意図はともかくとして、医療決断サポーターは患者から信頼されるのは無論のこと、何よりもまず医者をはじめとする医療従事者から信頼される存在とならなければならないでしょうね。
そのために必要なのは信友先生のような素晴らしい学者先生としてのキャリアを持つ方々ではなく、やはり真っ当な臨床家としてのキャリアを持つ経験豊かな教育陣がしっかりとした教育を行う必要があるのではないかという気がします。
そうなりますと、そんなベテラン指導医クラスにそれだけの労力をかけさせるくらいであれば大増員されるとも噂される研修医に真っ当な教育をする方がはるかに大事なんじゃないかといった話になってきがちなものですから、未だにこの種のサポートシステムで誰にも満足されるようなものが出来上がったためしがないわけです(苦笑)。

人材を育てるのもまた人材だとすると、結局人材不足というのはそれを解消するのも一苦労というわけで、医学部定員を大幅に増やせば医師不足が解消するなんて単純な話でもないでしょうから、人材貧乏は一攫千金など夢見ずに気長にやるしかないということなんでしょうか。
しかしなんと言いますか、最終的にはここでも「みんな貧乏が悪いんや!」という結論になるんでしょうかね?(苦笑)

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2009年8月11日 (火)

為にするIT化では誰のためかと痛くもない腹を探られそうで

最近では医療分野でもIT化なんてことが盛んに言われていますが、先日またこういう話が出ていましたのを御存知でしょうか。

最寄りの診療所をリアルタイムで 名古屋大が検索システム(2009年8月6日47ニュース)

 休日や夜間に軽症患者の来院が相次ぎ、大病院の救急部門がパンクするのを防ごうと、名古屋大はすぐに受診できる最寄りの診療所を、患者らがインターネットで検索できるシステムを開発、名古屋市医師会が7月から導入している。

 名古屋大によると、リアルタイムの検索システムは初めてという。

 システムは病院情報データベース「ホスピタルナビ」。登録した医師の携帯電話に毎日メールを送信。医師はその日、正規の診療時間以外で診察可能な時間帯を返信する。こうした情報をまとめ、ホームページで提供している。

 患者ら利用者はホスピタルナビのホームページの「夜間休日診療所を探す」欄から「内科」「外科」「産科」「小児科」の4科で名古屋市内の診療所を検索できる。

 現在登録しているのは約90の診療所で、医師会は今後、登録者を増やす予定。

 医師会の細川秀一救急委員会委員長は「医師が診察時間後も、別の仕事などで診療所にいる時間をリアルタイムで患者に提供できる。大変便利」と話す。開発した名古屋大の杉浦伸一准教授は「登録者をどのように増やすかなど課題は多いが、名古屋市でうまくいけば全国でも生かせる」と期待している。

いやしかし素朴な疑問として、これはリアルタイムのシステムと言うのでしょうか…?どうも私などとはずいぶんと言葉の感覚に相違があるような気がするところですけれども。
まあ、メール送信に協力してくださる先生方が大勢見つかるといいねという話ではありますけれが、「登録者をどのように増やすかなど課題は多い」って部分、多すぎるだろjkと。
逆に言えばこういうシステムに登録してせっせと毎日メールを送り返すような先生方ってのはどういう先生なのかと言うことなんですが、素晴らしく献身的な情熱あふれた方々に違いないんでしょうねきっと?

まあそれはともかく、最近では例のレセプトオンライン請求問題にも見られるように「IT化への抵抗勢力断固粉砕!」なんて声が巷間満ちあふれているようにも見えます。
個人的には色々と面白い道具というのを使ってみるのは好きな方だと自認していますが、世の中には逆にハイテクだのITだのと聞けば裸足で逃げ出すというタイプの方々も結構大勢いらっしゃいますよね。
医者という人種にも世間と同様に色々な人がいて、それこそSE顔負けの知識と技能を持っている人からパワーポイント一つ満足に使えない人まで様々なわけですが、そうしたバラバラであるという状況が医療現場の電子化ということに対する大きな障壁の一つとなっています。

電子カルテを導入したはいいがキーボードでの入力に四苦八苦、マウスの操作もおぼつかないという方々にとってはそれだけで業務効率が何分の一かに激減する原因となるわけですが、残念ながら今の医療業界にはPCが使えないからと医者のクビを切れるほど人材に余裕のある施設はそうそうないということですよね。
そうであるなら使えないシステムをわざわざ導入することは業務を非効率にし、労働生産性を低下させる行為に他ならないわけで、病院の半数が赤字ともいう厳しい経営環境の中で到底許されることではないわけですが、何故か導入コストがどうとかいう議論ばかりでそういう話はあまり表向きの話題にのぼってきません。
今どき私はPCも満足に使えませんと公表してしまうような真似が出来るか!ということなのかも知れませんが、医者という人種は神の手などと驕り高ぶったことばかり言わずにもっともっと「自分はこんなことも出来ないんだ」とさらけ出してもいいんじゃないかと思うんですけれどもね。

それはともかく、電子化に対するもう一つの大きな障壁として、現在の医療用電子システム・機材そのものにも大きな問題があります。
カルテをぱらぱらめくって過去の経過をみるという作業は臨床の現場で極めて頻回に行われる行為ですが、この「ぱらぱら眺める」という作業を電子カルテ上で快適に行えるほどのレスポンスを未だ実現しているシステムはないようです。
病院に導入される端末などどう考えても最先端・最高性能には程遠いショボい性能しか持っていないのが普通ですし、システム自体も時間に追われたやっつけ仕事でろくに煮詰まってもいないのが通り相場ですから、過当競争でレベルアップしてきたテレビゲームに慣れた世代にとっては使うこと自体が多大なストレスという場合も多々あるわけです。

さらにもう一つ、大抵の場合もっとも大きな問題となるのがどんなシステムであれ結局扱うのは人間であって、現場の人間の感情に訴えかけないシステムは歓迎されるはずがないということもあるでしょう。
効率化と言えば聞こえは良いですが要するに今まで以上の仕事をしろということであって、今でさえ過重労働を強いられているのに一向に報われていないと感じている人間にとって「もっと働けるだろう」と言われる事ほど腹立たしいことはないというのも素朴な人間感情ですよね。
特に大学病院や公立病院をはじめとして医師のモラール(志気)が低下しまくっている施設は少なくないですから、わざわざ手間暇をかけてまで自分で自分の首を絞めるようなシステムに協力しようという酔狂な人間などそうそういないということです。
ちなみに今回のニュースに対する某所での反応などを引用してみれば何故どこもうまくいっていないかがよく判るかと思いますね。

627 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/07(金) 14:52:24 ID:o9oqclH20
>>603
初めてじゃねぇぞ

数年前から全国のいろんなところでやられてた

どこも、まともに、残ってないけどな!

うちの医師会もおれが中心でやったが
1-2年で補助金うちきり

そして、会員が入力しないため、電話で情報収集せざる得なくなりやめた

628 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/07(金) 15:04:02 ID:nwG5+fuk0
名大の救急って自爆するのが伝統なんだよなw

629 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/08/07(金) 15:06:28 ID:hiSZaLux0
>>627
まっ、そんなもん打ち込んでる暇があったら、
飯でも喰うわな。

630 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/07(金) 15:41:03 ID:rxryhH1S0
俺様が医者になったころ、関東のある地方都市にもあったぞ。
診療所の受付時間以降は自動的に事務が「受け入れ不可」にしてたな。

結局、電話帳の広告ページ以上の情報は得られなくて、あっという間に、
誰も使わなくなった。

もしや、これは、「やるやる詐欺」か「救急利権」ですかね・・・・

631 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/07(金) 15:44:33 ID:wzPCt13G0
>>603
IT利権のネタは尽きませんなあwwwwwwwww あほくさ。

632 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/07(金) 15:49:24 ID:YvFcQJpP0
はげど
単なる利権あさりですよ

こういう議論を見ているとかなり極論に思えるところですが本質的には非常にシンプルな話であって、誰でも仕事が楽になるツールであれば喜んで導入する、逆にただ面倒なだけのものであれば嫌がるという当たり前の現象が起こっているに過ぎないわけですね。
救急搬送先を迷わず探せるようなシステムを導入したいのなら迷わなくなって仕事が楽になる救急隊が音頭をとってやるのが筋だし、保険請求をオンラインでしたいのであればオンライン請求で仕事が楽になる保険者側が主体にならなければならない、ところがそれを最も導入のメリットの乏しい上に最も多忙な医療機関側にコストと手間を負担させて押し付けるところから話がおかしくなるのです。
素晴らしいシステムを医療現場に導入させたいのであれば難しい言葉は必要ではなくて、単にそのシステムを導入すればこんなに仕事が楽になるんですよと言うことを疑いなく示しさえすれば黙っていても皆競って導入に動くわけで、導入が進まないというのは要するに世間で当たり前にやっているプレゼンすら出来ていないということの証明でしょう。

ところで前述のように近ごろではIT利権なんて言葉もあるくらいで、今や医療業界も他業界から参入者多数で草刈り場状態とも側聞します。
不景気が当分続き先行き暗い日本の産業界において確実な成長産業などとそうそうない訳ですが、今や世間の風は医療費増額へ向かって吹いているという判断がその背景にあるのでしょうか、今までにはなかったような新しいビジネスが医療業界においても広がっていると言います。
先頃では開業医がコンサルタント会社のカモになっているなんて話題もありましたが、こうした事例も今や珍しいものでもないようで、せっかく開業したのにクリニックをたたんでまた勤務医に出戻りなどという話も昨今少なくありません。
無論業者も全てが悪というわけでもないのは当然ですが、世間知らずなどと揶揄されてきた従来型の医者達にとってはそれなりに過ごしにくい世の中になってきたということを良く自覚していかなければならないとは言えるのでしょう。

その意味で面白いなと思ったのが先日ロハス・メディカルさんで取り上げていたこんな話題なんですが、例え悪意がなかろうともうっかり「経営改善」なんてうたい文句に踊らされてしまうと色々な意味で後が大変なことになるかも知れないという非常に教訓的な話でもあるようですね。

診療報酬の不正請求、コンサル会社が悪い?(2009年7月28日ロハス・メディカル)

 「経営支援ツール」などを謳い文句にしたソフトを通じて診療報酬の不正請求に手を貸すコンサルティング会社などに対し、厚生労働省が調査のメスを入れようとしている。(新井裕充)

 中央社会保険医療協議会(中医協)のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)は7月24日、厚労省が示した「平成21年度DPC評価分科会における特別調査(案)」を了承した。

 この調査は、DPC(入院費の包括払い)を導入している病院の中から、不適切な請求方法をしている病院を選び出すために実施する。選ばれた病院は厚労省に呼び出され、あれこれと追及される。

 名目上は、厚生労働大臣の諮問機関である中医協の調査専門組織(DPC評価分科会)がヒアリングを実施するという形式を取る。しかし実際には、「問題のあるDPC病院」を厚労省が選定するため、実質は厚労省主導のヒアリング調査。

 このヒアリングは、毎年秋に行われている。DPC評価分科会の委員らが「3日以内の再入院がこんなに多いのはなぜか」などと各病院の院長らに厳しい質問を浴びせる。"厚労省の代理人"とも言うべき医療関係者が、臨床現場の医師らを叩く。

 これは、見ていてあまり気分の良いものではない。「厚労省の医療事故調査委員会ができたら、こんな風になるのだろうか」などと、ふと思ってしまう。

 今回、厚労省から呼び出しがかかる可能性があるのは、①特定の診断群分類で診療内容が他の医療機関と比べ大きく異なる ②後発医薬品等の薬剤の使用状況が他の医療機関と比べ大きく異なる ③DPC導入前と導入後で、診療内容が大きく変化した ④データの質に関して確認が必要であると思われる─のいずれかに該当する病院。

 調査案によると、すべて「病院」が対象になっている。このため、委員から「データの構築やコーディングでは『ベンダー』がかなり大きく関与している」、「勝手に(診療報酬が高くなる)『アップコーディング』をしちゃうようなソフトを作っているので、ぜひ調べていただきたい」などの意見が出た

 現在、DPCを導入している病院は1500を突破し、急激な拡大を続けている。この立役者として、DPCデータを作成するソフトを販売する「経営コンサルティング会社」が挙げられることがある。
 よく聞くケースは、DPC病院に自社のソフトを導入させ、保守・管理から経営支援まで幅広くサポート。同じソフトを導入している病院と自院のデータを比較する「ベンチマーク」によって、経営の効率化が図れるようアドバイスしてくれる。これならば問題は少ない。

 ところが、コンサル会社などが提供するDPC用のソフトには、より高い診療報酬が得られるように「診断群分類」を選び出してくれる機能が付いているものもある。このため、同分科会の委員らは、ソフトを提供する会社もヒアリングしないとDPCの不正請求の実態が明らかにならないことを指摘する。
 しかし、このようなソフトが広く流通していることはもっと前から知られていることであり、「何を今さら」という唐突感がある。なぜ、こんなことを突然言い出したのだろうか。

 昨日の記事(E・Fファイルの統合)でも触れたが、厚労省は、医療機関の情報システムに深く関与する狙いがあるのだろう。今後は、厚労省の「お墨付きソフト」を全国のDPC病院に導入することもあり得る
 ただ、これが医療の標準化や透明化につながるかどうかは疑問があるが、医療機関のコスト調査を進める上では効果を発揮するように思える。
 今年度のコスト調査分科会でも、ソフト開発の話題が出た。もし、DPC病院を対象とするソフト販売などで多額の利益を生み出したら、それはどのような団体を通じて、どこに還流されるのだろうか─。
(略)

管理人のように頭の回転の悪い人間は厚労省のエリートさん達になると色々と創意工夫をこらしていらっしゃるんだなあといつも感心するのですが、DPC導入などもあってこのところ急速に進んでいる医療の統制化というのは確かに大きなビジネスチャンスではありますよね。
厚労省が自らの省勢拡大につながるはずの医療業界に対して妙に冷たいのは医者ら国家資格職に実権を握られている医療業界には天下り利権のうま味が乏しいからだ、なんて噂がひと頃盛んに流れていましたけれども、天下り団体である病院機能評価機構などを初めとして最近では風向きも変わってきているのではないかとも思われます。
最終的に国民の利益に還元されるというのであれば業界から役人に多少のみかじめ料が流れるのもやむなきところかなとも思うわけですが、病院機能評価の実際などを見ても判ります通りあまりにあからさまな斜め上方向の疾走というのもどうなのよ?と思えてしまうところではありますよね。

何にしろお上にしろどこの業界にしろ利権を追求するのもよろしいですが、昨今では「儲けすぎることは悪である」みたいな世間の目もあるようですし、あまりやりすぎていると世の中いつまでも甘い話ばかり転がっているわけでもないと思うんですけどね。

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2009年8月10日 (月)

新型インフルエンザ、一向に終息するどころか…

夏も真っ盛りだというこの時期にもかかわらず、新型インフルエンザは相変わらず猛威をふるっているようです。
昨今では単に患者が出ましたではニュースにもなりませんが、この時期にインフルエンザの院内集団発生が当たり前に起こっているということには要注目ですかね。

新型インフル、県内2病院で集団発生 /愛媛(2009年08月08日愛媛新聞)

 県は7日、八幡浜、宇和島両保健所管内の2病院で新型インフルエンザ患者の集団発生を確認したと発表した。県内医療機関での新型患者の集団発生は初。発症者には入院患者が含まれ個室で療養中だが、重篤にはならず容体は安定しているという。風評被害が生じる恐れがあるとして、病院名は非公表。
 県によると、八幡浜保健所管内の病院で1~6日に入院していた50代男性と病院スタッフ2人、宇和島保健所管内の病院で2~6日に病院スタッフ9人に発熱などの症状が出た。簡易検査で6人が新型と同じA型陽性となり、県立衛生環境研究所が5人の検体をサンプリングで詳細(PCR)検査した結果、新型と確定した。スタッフはいずれも医師ではなく、自宅療養中。感染経路は不明。
 県は両病院に院内感染の拡大防止措置を徹底するよう要請した。今後、両保健所で疫学調査や保護観察を実施し、ほかに発症者がいないか調べる。

助産師が新型インフル 長野の病院、3人も疑い /長野(2009年8月9日産経新聞)

 長野県は9日、波田総合病院(同県波田町)の女性助産師1人が新型インフルエンザに感染し、ほかの女性助産師3人も感染の疑いが強いと発表した。

 4人は同じ病棟で入院患者のみを担当。患者やほかの病棟の医師、職員への感染は確認されていない。

 県によると、7日に30代助産師が熱とのどの痛みを訴え、詳細(PCR)検査で感染が確認された。4日からせきの症状が出始めた40代助産師も簡易検査で陽性となった。

 ほかの2人は簡易検査で陰性だったが、せきや熱の症状から感染の疑いが強いという。

国立感染症研究所からは7月25日以降発生件数の公表をやめてしまったようですが、有志によるインフルエンザ発症報告を集計したサイトがありまして、非常に興味深いのはひとたび底を打っていた発症件数が7月後半以降はぐっと上昇に転じているように見えることです。
通常この時期はインフルエンザの端境期になるわけですから、これは単に新型への関心が強く診断確定に回す例が多いというだけなのか、それとも実際に流行が広がってきているのか、果たしてどちらなのでしょうか。
さらに気になるのはこの時期大型イベントも多くなってきますが、それに伴ってもう一段の流行の加速があるのではないかという予測も出ていることです。

夏の行事で新型インフル広がる 若者集まり高リスク?(2009年8月7日朝日新聞)

 夏休みに入り、サマーキャンプや部活動の合宿などで、新型の豚インフルエンザに集団感染する例が続いている。学校に代わり、若者が集まる行事をきっかけに、広がっている形だ。夏本番で行事は増える一方、感染の広がりはおさまらず20代までの感染者は全体の8割を占め、専門家は注意を呼びかけている。

 川崎市では先月末、市が主催するぜんそくの小学4~6年生を対象にしたサマーキャンプで集団感染があった。ボランティアの大学生スタッフが発症、その後11人の小学生の感染が分かった。

 3泊4日の日程で八ケ岳を訪問。体を鍛え、友人をつくることを目的にしていたが、最終日のプログラムはほとんど中止になったという。

 ぜんそくは新型インフルで重症化しやすいとされる。市の担当者は「いまのところ重症例はなく軽快している」と話す。

 10人の生徒の感染が確認された千葉県の私立高校。症状のある人も含めると57人にのぼり、うち49人は長野県であったサマースクールに参加していたという。山梨県では、関東の七つの高校を集めた合同合宿で、高校生2人が感染。ほかに3人に感染の疑いがある。奈良県で開催中の高校総体でも、選手に感染の疑いがあり、出場を辞退する高校が続いている。

 海外の新型インフルエンザの報道などを翻訳し、ウェブサイトで公開する外岡立人(とのおか・たつひと)・元北海道小樽市保健所長によると、米国のサマーキャンプでも数百の感染例が確認された、との報告があるという。

 欧米では、こうした若者の集団感染が、夏休みが終わり、学校が始まった後に起きることの「前触れ」ととらえ注意が呼びかけられている。

 厚生労働省によると、6月上旬に1日30件程度だった感染者の報告は、7月に入り、日によって200件を超える日も。感染者は圧倒的に若者が多い。4986人の感染者(7月24日現在)のうち、10代2346人(47%)、10歳未満943人(19%)、20代874人(18%)。あわせると全体の8割を占める。(武田耕太)

明らかに流行が再加速していると読める話ですが、こうなりますと若年者から親世代への感染の波及も気になってくるところで、一昔前の予防接種の根拠であった「学校は集団感染の入り口である」なんてロジックが復活するかも?ですかね。
一方で先日は新型インフルエンザに伴い人工呼吸器を使用したという小児の症例が明らかになり、幸いにもこちらはその後回復したようですが、今まであまり表に出てこなかった重症例ということで注目されるところです。

新型インフル、初の人工呼吸器 大阪の6歳、回復し退院 /大阪(2009年8月6日朝日新聞)

 大阪市は5日、市内在住の小学1年の男児(6)が新型インフルエンザに感染して入院し、一時気管内挿管による人工呼吸を行ったと発表した。市によると、新型インフルエンザで人工呼吸器を使った事例は初めてだが「重症事例ではない」としている。男児は回復し、5日退院した。

 市によると、男児は7月26日に38度の熱を出して入院。翌27日、たんが詰まって空気が通らない無気肺により呼吸状態が悪化したため、人工呼吸を開始。30日には管を抜き、人工呼吸を中止した。

ところでこの件で少しばかり気になるのは記事中でも触れられていますが、大阪市から当該症例の病状経過が公表されているのですが、そこにこんな記載があることです。

新型インフルエンザ患者の人工呼吸器使用症例について(2009年8月5日大阪市健康福祉局)

 大阪市において平成21年7月27日のPCR検査により翌7月28日に新型インフルエンザの感染が確認された患者について、人工呼吸器を使用した症例が確認されましたのでお知らせします。

【患者概要】

 年齢:6歳
 性別:男児
 基礎疾患:なし(乳児喘息の既往あり)

【経緯】

 7月25日 咳嗽あり。
 7月26日 38.0℃の発熱。近医を受診し、左の無気肺を認めたため、入院。抗菌薬の処方開始。
 7月27日 インフルエンザ迅速簡易検査にてA陽性。PCR検査実施。タミフル投与開始。
       無気肺により呼吸状態が増悪したため気管内挿管にて人工呼吸及び酸素投与を開始し、転院。
       抗菌薬は中止。
 7月28日 PCR検査の結果、新型インフルエンザ患者と確定。
 7月30日 抜管(人工呼吸中止)。
 8月  1日 酸素投与終了。解熱。タミフル終了。
 8月  5日 食事量の回復が得られたため退院。

 ※ 本症例については、喀痰の貯留・気管支閉塞による無気肺であり、新型インフルエンザによる重症患者ではありません。

もともと喘息の既往もあるところへ新型インフルエンザを発症し無気肺を来した症例ということですが、わざわざ末尾に「新型インフルエンザによる重症患者ではありません」云々と書き添えてあるのは意味があることなのでしょうか。
治療当事者である担当医なりがそう言ったのか、あるいは行政当局者が書き足したのかはっきりしませんが、こうした症例の場合どこまでが原疾患によるものでありどこからが合併症によるものであるなどと明確な線引きが出来るものでもないのが普通ですよね。
世界的に重症化云々という議論に関しても病状の重大性や予後による分類によるものであって、決してウイルスによって一時的に引き起こされる病態のみを対象とした議論ではないように思うのですが、敢えてこういう定義を持ち出してくるのは何かしら根拠があることなのか、興味を引かれるところです。

一方で先日もお伝えしました通り、妊婦がハイリスクであるということは学会が主体となって広く周知徹底され始めているようで、「疑い症例は抗ウイルス薬使用を」というかなり前がかりな方針が採られつつあるようです。
このあたりはむしろ、ひと頃(今も?)世間に広くまん延している「とにかく妊婦は薬を使うな」という偏見?との戦いこそが正念場と言えるのかも知れませんが、今の時代ですと予防接種の副作用問題などと同様に何かあった場合に誰がどう責任を負うのかという議論もまた必要なところではあるかも知れませんね。
「統計的に抗ウイルス治療を行った方が行わなかった場合よりも明らかに有害性が少ない」と言う主張によって被害者救済的判決を回避できるほど、未だ日本人の認識は成熟していないのではないかと危惧されるところですから、現場の個々の判断で良かれと思ってやるのではなく、国や学会などの公的な権威付けに基づいて行動しておくことが無難ではあるでしょう。
その意味で今回産科学会が文書としてこうして明確な対応の指針を出してきたことは評価できるのではないかと思います。

妊婦の新型インフル、産科婦人科学会が対応方法を改訂(2009年8月7日日経BP)

感染確認の検査結果を待たずに抗インフルエンザ薬投与開始を勧告

 妊婦には早期からの抗インフルエンザ薬の投与を推奨する―。日本産科婦人科学会は8月4日、妊婦が新型インフルエンザ(H1N1)に感染した際の対応Q&Aの改訂版を発表した。改訂版では「妊婦は重症化しやすいことが明らかとなった」と明記している。

 新たなQ&Aは、7月29日にLancet誌電子版に掲載された米疾病対策センター(CDC)の報告(「妊婦の新型インフル感染疑いには早期治療が重要」)と、世界保健機関(WHO)の7月31日の勧告(「Pandemic influenza in pregnant women」)に基づいて改訂された。

 改訂前は、妊婦もしくは褥婦が新型インフルエンザに感染した場合、非妊婦に比べて重症化しやすいかどうかについて、「データは不十分だが、季節性インフルエンザと同様であると推定されている」という表現にとどまっていた。今回のLancet誌の論文掲載を受け、改訂版では、「妊婦は重症化しやすいことが明らかとなった」と明記している。

「妊婦は重症化しやすい」新型で注意喚起(2009年8月7日CBニュース)

 日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は8月7日までに、同学会が作成した「妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応 Q&A」を一部改訂した。この中で、「妊婦は重症化しやすいことが明らかになりました」と注意喚起し、タミフルなどの抗インフルエンザ薬の状況に応じた早期服用や予防的服用を勧めるよう医療関係者に求めている。

 同学会では5月19日付で、Q&Aを一般向けと医療関係者向けに分けてそれぞれホームページに掲載。厚生労働省の新型インフルエンザへの指針改定に伴い、6月19日付で一部を改訂した。

 今回の改訂は8月4日付。医療関係者向けのQ&Aでは、妊婦がインフルエンザ様症状(38度以上の発熱と急性呼吸器症状)を訴えた場合の対応について、「産婦人科への直接受診は避けさせ、地域の一般病院へあらかじめ電話をしての早期受診を勧める」としている。
 また、WHOが「感染が疑われる場合には確認検査結果を待たず、早期のタミフル投与開始を勧めている」として、抗インフルエンザ薬の早期服用が重症化防止に効果があると妊婦や家族に伝えるよう求めた
 さらに、妊婦への感染が確認された場合は抗インフルエンザ薬の早期服用を、患者と濃厚接触した場合は予防的服用を勧めることとしている。

 抗インフルエンザ薬の胎児への影響については、「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との2007年の米国疾病予防局ガイドラインの記載を紹介した上で、服用による利益が「可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられている」とした。

ところでこの事とも関連してくる話ですが、市中医療機関で使用されている迅速診断キットの新型に対する感度の検証が最近ようやく明らかになってきています。
もともと発症初期は非常に感度が低く見逃しが多いということはよく知られた事実でしたが、どうも新型に関しては全般的にキットの感度が従来型よりも劣るらしいという、あまりありがたくない話のようですね。

簡易検査は信頼性不十分 新型インフルで米調査(2009年8月7日47ニュース)

 【ワシントン共同】インフルエンザの感染の有無を見極めるために広く用いられている簡易検査は、H1N1型の新型インフルエンザ患者を見落とす可能性が高いとの調査報告を米疾病対策センター(CDC)が6日、まとめた。

 CDCは、簡易検査で陰性でも、感染していないと確認されたわけではないとしており、より精度の高い検査法の開発が課題となりそうだ。

 CDCは4~5月に集めた新型や季節性のインフルエンザ患者ののどの粘膜など65の検体を用いて、米国で使われている3種類の簡易検査キットの有効性を調査。実際には新型に感染していてもキットで陽性と判定される可能性は40~69%と低いことが分かった。季節性インフルエンザの場合は、80%以上と高い割合で陽性と判定された。

 新型インフルエンザの確定診断には通常、詳細(PCR)検査をする必要がある。だが、可能な施設が少ない上、検査に時間がかかるため、感染の疑いを早期に見極めるのに、簡易検査キットが使われる。今回の調査対象のキットが日本で用いられているかは不明だが、抗体反応を利用する同様の仕組みのキットが日本を含め世界各地で用いられている。

こうなりますとスクリーニングレベルにおいて迅速診断に頼り切りというわけにもいかず、そして何より新型ではいわゆるインフルエンザ様症状を呈さない患者も多いわけですから、現場の臨床家としてはどこで抗ウイルス治療を開始すべきかという点で更に悩ましいところではないかとも思われます。
しかし今のところ明らかなリスク要因のない軽症患者に対して全例に抗ウイルス薬の投与がすすめられているわけではないのですから、重症患者に対しては診断確定を待たずに積極的な治療を早期から開始する一方で、軽症者に対しては投薬よりも自宅安静等のまん延防止策を中心とした対応を行っていくのが正しいように思えますね。
何にしろ早ければ9月からワクチンの供給が始まるとも言いますが、漫然とした画一的な投薬によって冬本番となった頃に肝心の治療手段が残されていなかった、などということにならないように、エヴィデンスと公衆衛生学的観点に基づいた節度ある対応というものが求められるところでしょう。

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2009年8月 9日 (日)

今日のぐり「讃岐うどん なか浦」

世の中には「いったいこれは何の役に立つんだ?」と思えるものは数限りなくあるわけですが、時折見かける意味不明の調査というものの存在意義がどこにあるのかまさに意味不明ですよね。
何かしらああしたものの結果によって世の中に変化でもあるのかとも思えず、そもそも何を期待して調査しているのかもはっきりしません。
今日はそうした「だから何?」としか言いようがない調査報告の数々を紹介してみましょう。

スライムとクリボーはどっちが強いのか!? ついに判明!(2990年4月24日ガジェット通信)

『ドラゴンクエスト』シリーズの代表的なモンスターといえば、最弱の強さを誇るスライムだ。そして、『スーパマリオ』シリーズの最弱モンスターといえば、ただ歩いているだけのクリボー。どちらも人気のあるモンスターキャラクターだが、もし戦ったとしたらどっちが強いの?

どちらも違うメーカーから発売されているのでバトルの実現は難しいかもしれないが、世間の人たちはどっちが強いと思っているのだろうか? ということで、「スライムとクリボーはどっちが強いと思いますか?」というアンケートを2000人に実施! ついに強者が決定した! その結果は以下の通り。

1位 スライムが強い 459票 (45.9%)
2位 クリボーが強い 378票 (37.8%)
3位 どっちも同レベルの強さ 163票 (16.3%)

ななな、ななんと! 世間の人たちはクリボーよりも、スライムが強いと思っているようだ。確かに、クリボーは踏まれると一瞬でやられてしまうが、スライムはダメージを与えても何度も攻撃をしかけてくる。では、アンケートに答えてくれた皆さんのコメントをいくつかご紹介しよう。

・クリボーはマリオを一撃で倒せる
・横方向からの防御力を考慮してクリボーに入れた
・接触しただけで死んでしまう印象が強いので、クリボーかな
・スライムはLV99まで上がればしゃくねつのほのおを使えるぞ
・ジャンプ着地点の5mm前にいるクリボーは鬼畜
・スライムに負けたことはあまりないがクリボーにはしょっちゅうやられてる
・クリボーをバカにするやつはクリボーに泣くって田舎のばあちゃんに聞いた
・横からならクリボーが強い。上からならクリボーは弱い

ほかにも「クリボーは一撃でマリオを倒せるが、自身も一撃で倒されることを忘れちゃいけない。つまりドラクエ基準に直すとHP1。……しまった、するとマリオはHP2ということか」や「重要なことに気付いた。最近のドラクエを見ると、スライムはジャンプして攻撃をしている。つまりクリボーにとってスライムは天敵」、「クリボーをバカにするやつはクリボーに泣くって田舎のばあちゃんに聞いた」などのコメントがあった。

ま、まあ…個人的な見解として、そうまで弱小を誇るクリボーに文字通り鎧袖一触でやられてしまう主役の髭親父というのもどうなのよ?と思えてしまうところではあるんですが…
このあたりは別にどちらが最弱であろうがどうでもいいような話とも言えますが、時にどうでもよさそうなランキングが恐ろしい結果を招いてしまうこともあるわけですよね。
下手をすると全国の御当地自慢さんに喧嘩を売るようなことにもなりかねない恐ろしい調査結果がこちらです。

あまり気にかけたことのない都道府県はどこ? 3000人アンケート結果 (2009年5月21日ガジェット通信)

3000人のインターネットユーザーを対象に、「自分とは無縁だと思う都道府県はどこ?」というアンケートを実施! つまり、「自分とは無縁で、たぶん一生用事がないと思う都道府県、興味のない都道府県、どうでもいい都道府県、気にかけたこともない都道府県」を教えていただきました。

確かに、日常生活をするうえで、あまり注目しなかったり、会話に出てこなかったり、特に気にかけない都道府県ってありますよね。その結果は以下の通りです(多くの人が気にかけていない都道府県ほど上位になります)。

47位 神奈川県
46位 静岡県
45位 奈良県

15位 岐阜県
14位 群馬県
13位 石川県
12位 岩手県
11位 宮崎県
10位 山形県
9位 福島県
8位 鳥取県
7位 山口県
6位 大分県
5位 栃木県
4位 徳島県

3位 佐賀県
2位 福井県
1位 島根県

自分とは無縁だと思う都道府県、堂々の1位は島根県という結果に! 確かに、島根県といわれて思い浮かぶものがないです……(失礼)。いろいろと調べてみると、世界遺産の石見銀山遺跡があったり、けっこうすごい県のようです。しかし、島根県庁は「日本一どこにあるか知られていない県」であることを自覚しているようで、『リメンバーしまね』プロジェクトを開催しています。アンケート参加者の声は以下の通り。

・福島はマジで用事がない。島根は出雲大社と石見銀山くらいか
・山口県の位置が思い出せなくて、すみません一票入れてしまいました
・本当にどうでも良い県は多分アンケートですら答えてもらえない気がする
・栃木って一体何があるんだろう
・親戚も居ないし、転勤もないんで多分九州には一生縁がないと思う
・鳥取は良いところです。おばあちゃんの故郷です
・ほとんど印象がない石川県にいれた
・島根県に何があるか知りたい
・石川県は松井秀喜の出身地だぞ!
・正直、名前だけ知っててどこにあるのかわからない県がけっこうある
・西日本出身だから秋田や山形は縁がなさそうだ

ほかにも「大分ごめ~ん。いままで大分のこと何にも考えてこなかったぁ……。今『信長の野望』やってるんだけど、今すぐ大分と同盟むすぶよ。絶対に攻めないよ。一緒に天下とろうね!」「『桃太郎電鉄』が好きだったからどの県もなんとなくイメージできるが目的地駅にならない県は印象が薄いな」「ご多分にもれず、島根と福井で迷ったが、地味すぎて逆に存在感を感じ始め、ギリギリで和歌山にした。実際考えても、和歌山に対して全く何ひとつ浮かばないなぁ~。在住の人、ごめんね」などの意見がありました。

関東で唯一トップ10にランクインしたのは栃木県です。東京都と同じ関東でありながら、ひっそりと自分自身をアピールすることなく存在している栃木県。天皇家がゆっくりとしたいときに行くのが栃木県・那須の御用邸。確かに、栃木県の奥地ならばゆっくりできそうですね。知事として有名な東国原英夫(元・そのまんま東)氏がアピールしている宮崎県が上位にあったのは驚きでした。

う~む、さすがに上位県ともなりますといずれも丙丁つけがたいものがありますが…
最近は何でも戦国ブームなんだそうですが、ああいうもので御当地の名将なんてものが有名になりますとつられて土地も有名になるということがあるんでしょうね。
しかし島根と言えば最近では考古学的な発見も相次いでいて日本文化発祥の地の一つとも言えるようなところですが、そういえば古代日本史上重要な佐賀や宮崎といったあたりも結構上位に出てきていますね。
やはりこれも学校での歴史教育があまりうまく行っていないということの証拠ということになるのでしょうか?

お次はいささか何と評価するべきかよく判らない話です。

<パソコン>危険度は「バックアップとらずにPC作業」>「小学生を自宅に1人で放置」(2009年6月30日毎日新聞)

 ネットユーザーは「バックアップをとらないままパソコン(PC)作業をする」ことは「小学生を1人で自宅に放置
する」ことよりも危険だと考えていることがセキュリティー大手シマンテックの調査で分かった。データを損失した経
験者のうち、4割は全く復元できなかったといい、その痛い経験がもとになっているようだ。

 調査は5月、パソコンを私的に使っている10~60代の男女1000人を対象にウェブで実施した。パソコンを
1日に2時間以上使う人が8割を占めている。

 「小学生を1人で~」「シートベルトをしないで運転」など日常の危険な行動と、PC操作での危険度合いをそれ
ぞれ最高7点で採点した平均は、「シートベルト~」が5.89点で、「誰か分からないメールを開封」(5.87点)
と同レベル。また、「バックアップをとらずに作業」は4.95点で、「保険に入らずに海外旅行に行く」(5.29点)
より低かったが、「小学生を1人で自宅に放置」(4.88点)より高い結果だった。
(略)

ど田舎の僻地に行きますと、結構小学生の子供が牛や猫と留守番をしていると言う光景に遭遇することがありますから、微妙にどの程度の危険性なのか判りにくいところがありますが…
しかしこのあたりの話であれば「あ~あるある」ですむような話なんですが、こちらくらいになりますとあまりあって欲しくないような背景事情が読み取れてくるのが嫌ですよね。

売春婦は政府役人より信頼できる、中国アンケート調査 (2009年08月05日AFP)

中国では、売春婦は政府役人や科学者よりも「信頼できる」と考えられている。同国の雑誌「インサイト・チャイナ(Insight China)」(電子版)が4日、こうした調査結果を発表した。

 この調査は、同誌が6月と7月、オンライン・アンケートを実施し、さまざまな職業について「信頼できるか」を答えてもらったもの。3376人の回答者のうち、「売春婦」が信頼できると回答した人は7.9%で、農民、宗教関係者に次ぐ第3位にランクインした。

 4位は兵士、5位は学生で、科学者や教師、政府役人は下位にランクイン。最下位は不動産業者、秘書、芸能人、映画監督などの顔ぶれとなった。

 この調査結果について、4日の国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)は社説で、「国家のエリートたちも絡んだ数々のスキャンダルが連日報道されていることを考えれば、この結果はまだましだ。少なくとも(政府役人や科学者は)最下位には入らなかった」と述べている。

う~む、あまり日本では売春婦の信用度ということが問われることもないので今ひとつピンと来ないところがありますが、色々と汚職の話は漏れ聞こえてくるところからも信用はないということなんでしょうかね。
しかし科学者なるものが低位なのもアレなんですが、世間的に科学者なるものがそうまでイメージが悪いのか、たまたま彼の国でのイメージが悪いということなのか、果たしてどっちなんでしょうね?
そして最下位に秘書などが入ってくるというのもお国柄なのでしょうか?なんともまあ、これじゃまともに商売も出来そうにないんですが…

今日のぐり「讃岐うどん なか浦」

その方面に少しでも興味がある人間なら「知らなきゃもぐり」とまでいう店であれば、まずは一定の水準には達しているんだろうとお墨付きを得たように思えるのは自然ですよね。
倉敷市外から南に進んだ水島工業地帯の近く、有名な老舗ラーメン屋「百万両」と同じ通りに面した老舗のうどん屋がこちら「なか浦」です。
ちなみにここで修行した方々があちこちでうどん屋を開いていたりもするそうで、以前にも御邪魔した「天の」なんかもそのうちの一つなんだとか。
また伝え聞くところによると「岡山県内で一番沢山のうどん玉が出る店」なんだそうですが、うどん屋ってそういう統計を公表してるものなんですかね…?

ちなみにここ、そこそこ広めの駐車場ながら狭い&始終満車状態で非常に駐車はしにくいです(店舗横の駐車場以外にも停めるところはあるとも聞きますが…)。
この日は夕方近い時間帯でそろそろ客足も引いてきている頃のはずなんですが、結構店内はいい感じでお客が入っているようですからさすが伝説的な大人気店というところでしょうか。
それはともかくこの店、見たところ看板にもどこにも店の名前が書いてないんですね…店名については漢字で「中浦」と表示してあるサイトもあるんですが、今回は一番多い表記で「なか浦」としてみました。

メニューは至ってシンプルでぶっかけも釜上げもありませんが、ちなみにちゃんと”湯だめ”と表示してあるのはこういう店では良心的だと思いますね。
そして目につくのが値段が安いこと!ベーシックなメニューは軒並み200円台からとなっていて、なるほどこの価格帯は確かに「讃岐」っぽさがムンムンしてきてます。
とりあえずこの日はシンプルに「ざる」を注文してみたのですが、右手で注文を取ると左手で渡すという感じで一瞬で出てきたのにはちょっとびっくりしましたね。

当然ながら茹で置きなんですが、見た目はややくたびれ気味かな?という印象は隠せないものの、それなりに丁寧に扱っている肌合いの艶やかなうどんという感じでしょうか。
「天の」もかなり柔らかめなうどんの店でしたが、師匠筋というこちらはそれに輪をかけたかというくらいに柔らかめなうどんで、噛んでいくと感じられるコシも「しこしこ」というより「ぷりぷり」という感じで、ちょっと出来の良いワンタンなどにも通じるような独特の食感です。
やわらかいということで有名な伊勢うどんなどは茹で時間の長さでああいうことになるという話ですが、ここいらあたりの流派では標準状態から柔らかめだがコシはあるという感じで、これはこれで店の個性だと思いますね。

このうどんに合わせるダシはかなり甘めなんですが、これも途中から付け合わせの薬味などを加えていくとなかなか良い感じで麺との相性も悪くないというところですかね。
一枚の分量が少なめなのも「らしい」ところで、これはやはり好みのうどんを二つ三つと食べ比べてみるというのが正しい楽しみ方なのでしょう(ちなみに湯だめの方はもっと量が多いということですが)。
今回に関していえば時間帯が悪かったのかやはり茹で置きの影響は隠せないかなというところがあって、おそらく開店直後の時間帯に訪れてみるとずいぶんと印象が違うのではないかなとも思わされるところですかね。

何にしろこの界隈は前述の「百万両」や「喜楽園」などのような安くて有名なラーメン屋の激戦地帯という印象があったのですが、こういう店を見るとうどん屋においてもなかなか侮れないものがありそうですよね。
硬めのうどんが好きという向きには正直おすすめできませんが、単純に値段だけを考えてみても下手なセルフの店などで腹をふくらませるよりはこっちの方がよほどいいのかな、と言う勘定もできそうです。
もっとも、昼飯時にはとても混雑するようですから、行列覚悟ということになりそうですけれども。

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2009年8月 8日 (土)

それはこういうことをやっていれば当然に

まずは本日最初のネタはこちら旬の話題から、皆さんも御存知の通り今この瞬間もものすご~く入れ食い状態という話です。

◆ スッキリ!! 酒井法子にテリー呼びかけ 「子どものため」「闘ったとみせて」(2009年8月5日J-CASTニュース)

<テレビウォッチ>女優の酒井法子(38)が、10歳の息子とともに失踪していることがわかった。おととい(8月3日)夫のサーファー、高相祐一容疑者(41)が覚せい剤所持で逮捕されていて、その直後から連絡がとれなくなったという。
(略)
   テリー伊藤は、「スポーツ紙は各紙一面ですよ。これではかえって出てきにくくなる。画面に出る必要はない。電話でいいから連絡してほしい」といった。

    「子どもも10歳なら判断力があるし、事態をどう伝えているか。考えられるのは友人宅、あるいはホテルの可能性もある」

   おおたわ史絵も、「覚せい剤は夫個人の責任。酒井が、自分が何とかできたんではないかと責任を感じる必要はない。薬物というのはそんなことで太刀打ちできるものではない」といったが、本人に伝わったかどうか。

   番組はここで延々と結婚のいきさつなどを並べたが、これではますます酒井を追いつめているようなもの。

   テリーは、「酒井さん、気持ちをしっかり持ってほしい。子どもさんのため、将来のためですよ。お母さんはこうやって闘ったとみせてやってほしい。出てくる必要はないですよ」。まあ、出て来たくてもできないだろう。

   一方、麻薬取締法違反で逮捕された押尾学(31)はこの日朝、三田署から身柄を送検されたが、これも実況中継するやら大騒ぎ。テレビの宿命とはいえ、あらためて「何を基準に動いているのか」と聞きたくなる。

何を基準にかと言えば視聴率が取れるかどうかという答えになるのでしょうが、テリーあたりに励まされても酒井さんも正直対処に困るところではなかろうかとご同情申し上げるところです。
しかしどこのチャンネルを回してもずっと同じような内容を垂れ流しているあたりオリジナリティの欠片もないかなと思うところですが、当然ながらそういう評価軸が唯一至高の行動原理ということになりますとこういう話になってくるのもまた当たり前ということですよね。

【酒井法子逮捕状】TBSが特別番組放送へ(2009年8月7日産経新聞)

 酒井法子容疑者に覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕状が出たことを受け、TBSは7日、同日午後4時45分から午後5時50分まで報道特別番組「酒井法子容疑者に逮捕状」(仮称)を放送する。

 同じ時間帯で本来、放送予定だった時代劇「水戸黄門」は10日に延期される。

酒井容疑者、クラブで奇行…衣服を脱ぎ捨て踊り狂い(2009年8月7日夕刊フジ)

 覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕状を取られた酒井法子容疑者は清純派で売り出し、「のりピー語」などで不思議系アイドルの先駆けとなった。だが、表向きのイメージとは裏腹に激しいダンスミュージックを愛し、薬物常習者が集まる「薬箱」と呼ばれるクラブでも10年ほど前から数々の奇行が目撃されていた。「野外イベントで酩酊(めいてい)状態だった」との証言もある。

 「サンバイザーに大きなサングラス、ダサいジャンパーを着てニヤニヤしながら踊っている女がいたので近づいたら、のりピーだった」と語るのはダンスミュージック愛好家の男性。男性は2000年ごろ、都内で行われたゴアテクノというダンスミュージックのパーティーに参加した。「周囲はジャンキー(薬物常習者)ばかり。こんなマイナーなイベントに、のりピーのような大物がいるので驚いた」と振り返る。

 また、別の目撃者は「2004年に岐阜の山中で行われたイベントで見かけた。フラフラするぐらいの酩酊状態で何か大声で叫んでいた。護衛のような中年男性が数人、取り巻いていた。このイベントは、出演者が薬物所持で逮捕されるようなほど乱れたものだった」という。

 都内のクラブに詳しい音楽ライターは「歌舞伎町や渋谷、六本木の通称『薬箱』と呼ばれるジャンキーの集まるクラブでは、VIPルームで酒井容疑者を見たという目撃情報が多数ある」と語る。酒井容疑者を知る飲食店経営者も「彼女はテクノ系の電子音楽『サイケトランス』の愛好者だった」と言い、音楽愛好家の中では有名な存在だったようだ。

 また、ある芸能関係者は「10年ほど前、六本木のクラブで異様にハイな状態になり、衣服を脱ぎ捨てて踊り狂っているのを見た。『ブリブリにキメてるな』と仲間と話したのを覚えている」と話す。

 こうした酒井容疑者の実態を知る音楽愛好家らは、酒井容疑者が失踪したとの一報を聞いて、「解毒(薬物反応を除去すること)のため逃げ回っているな」と語り合っていたという。

て言うか、いくら無節操がウリのワイドショーにしてもお前ら手のひらかえしすぎだろjkと。
ひとたび動き始めると毎度毎度「そんなことはずっと以前から有名だった!」なんて話がさらっと出てくるあたり、さすが骨までしゃぶらせたらかの業界の人達の右に出る者はないと感心するしかありませんが(苦笑)、さすがにこれは見苦しかったですかね。
ま、渦中の酒井さん自身もそういう業界のロジックに乗って世に出た方でしょうから、最後の最後までおつき合いいただくというのもまた筋ということではあるのかも知れませんけれどもね。

さて話はかわって、先日とあるところでこんな調査が出ていましたが、ご覧になりましたでしょうか。

【Web】Q:どの媒体信じる? 4割弱が「ネット」(2009年7月30日産経新聞)

 「政治や選挙に関する情報でどの媒体を信用しますか」という質問に対し、「ネット」と答えた人が最多で39・3%、次いで「新聞」が25・4%、「テレビ」が16・0%だった。

 「ネット上の情報で今回の総選挙にあたり参考にしたいものは」という質問に対しては「ニュースサイト」が36・0%、掲示板やSNS、ブログなど「一般ユーザーからの情報」が29・9%で、政党や政治家のサイトを大きく上回った。

ちなみにこの調査はニコニコ動画調べなんだそうですが、この種の調査と言えば誰が誰を対象に調べるかによって結果が劇的に変化するものですから、あくまで参考として捉えておくべきであることは言うまでもありません。
しかし趣味領域に限らず選挙など「まじめ」な分野に関しても、今やネットの影響力は軽視できないものがあるということは言えそうですよね。
そうなりますと今話題の総選挙についてどうなんだと言う話なんですが、こちらネットで絶讚炎上中とも噂される総選挙絡みの話題を取り上げてみましょう。

とくダネ!@窃盗も麻生自民のせい? (2009年7月30日ブログ記事)より抜粋

 とくダネ!といえば、全力で民主党応援、自民批判の偏向ぶりで有名ですが、今日のオープニングトークはメガトン級の”はあ?”モノでした。

 笠井アナが、空き巣の話をし始めて、紹介したのがこのニュース↓。

■空き巣68回 容疑の女送検 愛媛(産経新聞)

 『空き巣を狙って盗みを繰り返したとして、愛媛県警西条西署は28日までに、窃盗容疑などで西条市小松町の無職、中本美香容疑者(26)を逮捕、松山地検西条支部に送検した。同署の調べに対し、「借金返済のために犯行を決意し、返済後はマイホーム購入資金を得るため犯行を繰り返した」などと供述しているという。

 同署の調べでは、中本容疑者は平成20年5月~21年2月、西条、今治両市内で無施錠の民家に68回にわたって侵入し、現金約134万円と貴金属類363点を盗んだ疑い。同署は今年2月に住居侵入未遂容疑で中本容疑者を逮捕、総額計約2350万円相当の被害が裏付けられ、28日に最終送致した。』

 26歳の主婦が、夫と子供が出勤と登園で留守になる昼間に、パート代わりに空き巣やっていたんだそうです。

 で・・・、笠井アナがこのニュースのコメントで

 ”犯罪に同情する訳じゃないんですけど・・・、「マイホーム資金を貯めたかった」なんて動機を知ると、僕なんかはこういうニュース見て、もし年末に解散選挙があったなら、子供手当てがでていたら、こんなことしなかったんじゃないかと思ってしまうんですよね・・・”(大意)

 と言い出すんですよ。

 マイホーム資金が欲しいからって、他人の家に空き巣に入って手っ取り早く金を得るなんて、選挙云々関係ナシに、この主婦の頭の構造がおかしいだけ、まともなモラルがないだけだと思いますが、なんでそれまで「年末に解散しなかった」批判に持って行けるのでしょう?!

 いくら擁護にしたって無理がありすぎだと思いますが。

 よくまあこんなレベルでアナウンサーが務まるものだと口あんぐり。

 笠井アナは、まさに”キング・オブ・マスゴミ”認定です。

いや、まあ、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いなんてことを言いますから、味噌もクソも一緒という感覚で電波ゆんゆんさせていらっしゃるのも番組のカラーなのかなとは思うところですけれども、しかしさすが信頼度最低メディアは伊達ではないというところでしょうか?
それでもこの件でネット上があっさり炎上してしまったことでも判りますように、今や既存マスメディアの内容は検証しながらでなければ鑑賞に堪えるものではないという新たな常識が次第に定着しつつあるということも言えようかと思いますね。

その傍証となるべき話がこちらなんですが、先日は「持ち込みのフリップは内容がチェックできないから責任が持てない」と何故か選挙期間中の各政党のフリップ持ち込みを禁止したテレビ朝日の話題です。
そこまで言うのであるからには平素からさぞや素晴らしい内部チェックシステムが稼働しているのだろうと想像されるところですが、その実態の一端を示すのがこちらです(苦笑)。

「朝まで生テレビ!」データ数値と角度の怪!(ウェブ記事)より抜粋

11月29日、テレビ朝日系で放映された「朝まで生テレビ!」。
今回のテーマは 「激論!これでいいのか日本!~歴史認識・北朝鮮・安全保障~」でした。

議論の内容については、各パネリストや司会にそれぞれの考えもあるでしょうから触れません。

しかし!番組最後に出された視聴者アンケートの円グラフだけは別です。

美術さんの勘違いやデータ引用元の選択ミスでは済まされないほどの、不思議な角度の円グラフフリップ。
ここではその「意図的」にすら感じられる「アンケート」結果に関して、画像をまじえ確認したいと思います。

ということで以下実際の検証作業が入っているわけですが、ここではごく簡単に概略だけ紹介しておきます。
質問の内容は「日朝国交正常化交渉は今後どうすべきだと思いますか?」というもので、「朝生」ですから当然リアルタイムで電話での集計を行い結果を出したわけですよね。
一応番組中で公表された結果を文字にして書き出してみますと、こんな感じになったそうですから、これを正しいデータとしましょう。

無条件に進める
 3.2%

現在の前提条件を崩さずに慎重に進める
 29.3%

金正日政権との交渉はやめる
 45.7%

これを見ますと無条件に進めるという意見はわずか3%ほどだったということなんですけれども、実際にオンエアされたグラフがこちらなんですがお分かりになるでしょうか?
青色の「無条件に進める」が黄色の「現在の前提条件を崩さずに慎重に進める」とほぼ同じ大きさに描かれていて、どう見ても3%やそこらじゃありませんよこれは!

いやあ、これ何の気無しに見ていましたら絶対見た目に騙されてしまうところだと思うんですが、まさかテレ朝が騙そうとしたというわけじゃないですよね??
ここではこれ以上紹介しませんが、リンク先のサイトには「何故こんな奇妙なグラフがオンエアされたのか」を追求しているうちに見つかってしまった思いがけない真相というものがありまして、単純にグラフ作成をミスってましたなどというレベルの話ではないことが丸わかりとなっているのが極めて興味深いですね。
いったいテレ朝内部の状況はどうなっていて、どこを目指して迷走しているというのでしょうか?

ネットという新たな対立軸の興隆に伴って、既存マスメディアは大きく対応が割れているとも言います。
この春には朝日新聞がネット掲示板に対して大規模な妨害行為を仕掛けてきたという事例が話題になりましたが、一方ではネットを積極的に活用しようという姿勢を示し始めているメディアもあるわけですね。
こちらなどネット発の話題が一般紙に還元されたという話なのですが、情報の速報性において既存メディアはネットに並ばれるどころか、既に後追いとなりつつあるのではないかとも思われて興味深いところです。

異例! 産経新聞に女子大生のブログ炎上ニュースが掲載される(2009年7月30日ガジェット通信)

産経新聞が7月30日(木曜日)から掲載スタートした “Web面” をご存知だろうか? インターネット上で話題になっていることや事件・騒動などを掲載する、大手新聞社としては画期的な紙面である。週に1度の掲載で、毎週木曜日の朝刊に掲載される。

そんな産経新聞のWeb面に、ブログの炎上記事が掲載されている。内容は、彼氏の家の前に車を駐車して通報された女子大生が、ブログで仕返し(犯罪行為)を暴露したというもの。この女子大生の彼氏が通報者の車に醤油かけて仕返ししたことをブログで告白したのである。

このことは『2ちゃんねる』やインターネットニュースサイトで大きな話題となっていたが、刑事事件に発展していない一般人ブログの炎上が大手新聞社の紙面に掲載されるのは異例中の異例である。産経新聞としては、非常識この上ない女子大生とその彼氏の行動を “ある意味事件” と考えたのだろう。

女子大生は自身のブログで「今日だりんの部屋の前に車停めといたら通報された。ホントにちょっとの間だし塀にビタ付けして絶対邪魔にならないとこに置いといたのに」、「だりん様、抜け駆けして夜中にそいつの車に上から醤油ぶっかけたそうです! しかも性格が悪いのが、車が錆びるように醤油の中にたっぷりと塩を混ぜたらしいw やーいやーい」、「まぁ完全な逆恨みだけど世の中こうゆう人間もいるんだから善人ぶって余計なことはしないべきだよ、オバハン。トラブルの原因だよ」と書き込みしていた。

産経新聞はこのことに対し、「2ちゃんねるなどでしばらく祭りが続いた」と掲載している。今後は自分のブログに何かを書くとき、新聞の記事として掲載される可能性があることを念頭に置きつつ、書かなくてはならないかもしれない。

いずれにしてもこの不景気な時代、マスコミ各社も軒並み減収減益という状況が続いていますから、久しく以前からそろそろ危ないとの噂はささやかれていたところではありました。
特に収入の鍵となる広告収入の多寡は経営にも大きな影響を与えると思われるところですが、例の毎日新聞変態報道事件以来「メディアが世論を怖がり始めた」などとも言われるのは、今まで自分自身への抗議など意に介さなかった彼らが、スポンサーへの抗議には意外なほど脆弱であったということが広く知られてしまった故でもあるでしょう。

その意味で今やようやく市民はメディアに対しても介入する能力を手にし始めたということが言えるわけですが、自分たちの手によって変えていかなければならないのは何も政治だけでもないだろうということを我々自身もまた認識しなければならないということなのでしょうね。
悪貨が良貨を駆逐したなどということにならないよう、メディアも適切な取捨選択が必要になってきたということでしょう。

在京民放キー局、広告悪化で4社減収(2009年8月5日読売新聞)

 在京民放キー局5社の2009年4~6月期連結決算が5日、出そろった。

 長引く景気後退の影響で主力の広告収入が減少したため、売上高はTBSホールディングスを除く4社で減収となった。税引き後利益でも、フジ・メディア・ホールディングス、TBS、テレビ朝日の3社が前年同期実績から5割以上減らす大幅な減益だった。

 広告収入は、景気に左右されやすいスポット広告だけでなく、番組スポンサーから得られるタイム広告も全社で前年同期比2けた減となった。自動車、電機、金融を中心に大手企業が固定費を削減する方針を打ち出したことが影響した。

 一方、日本テレビは番組制作費の削減などで大幅増益となった。生放送を増やして番組の編集費用などを節約できたという。

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2009年8月 7日 (金)

Пролетарии всех стран, соединяйтесь!

最近は選挙を睨んで社会保障政策というものも一つの争点になっていまして、各党ともそれぞれに工夫をこらした公約なりを掲げてきているようです。
ところがその背後では地味に医療費削減のための作業もまた進んでいるということを、果たしてどれだけの皆さんが御存知でしょうか?
本日まずはこちらの話題からご紹介しましょう。

医師の給与、コスト調査で切り下げか ─ 中医協分科会(2009年7月14日ロハス・メディカル)

 診療科別の収支調査について2回にわたってお伝えしたが、あと1回だけお付き合い願いたい。結論から言えば、政権交代しない限り医療崩壊の流れは食い止められないだろうとの思いを強くした。(新井裕充)

 「病院運営に掛かるコストを診療報酬改定に反映させる」─。

 一見もっともらしく聞こえる中医協の「医療機関のコスト調査分科会」は年1回のペースで開催されている。昨年は6月13日、今年は7月10日に開催された。

 コスト調査の研究グループのトップは池上直己・慶應義塾大医学部教授。昨年の会議では、池上教授の調査・研究の成果を約30分にわたって委員らが"ご静聴"した後、意見交換に入った。委員らが、「階梯式配賦法」「特殊原価調査」「等価係数」など、池上教授独自の専門用語に目を白黒させていたのが印象的だった。

 前回会議のまとめとして、池上教授は「実用可能な段階になった」と自信を見せ、委員らもこれに賛同した。その後、昨年10月に調査を実施し、その結果を発表したのが今年の会議となる。

 調査対象は、事務体制が整っている127のDPC病院。調査によると、深刻な医師不足が指摘される「産婦人科」が昨年と同様に黒字という結果。「入院が黒字で外来は赤字」という結果も前回の結果と同じだった。今後は調査を簡素化して、より多くの病院が参加できるように改良するという。

 その狙いは何か─。

 今回のコスト調査と似た会議として、「医療機関の未収金問題に関する検討会」がある。これは、未収金問題に苦しむ病院団体が厚生労働省にお願いして設置させた会議。

 ところが、何らかの法的な措置を講じるような検討が進むかと思いきや、「病院は回収努力せよ」と戒める内容で議論は終始一貫した。報告書をまとめた会議では、病院関係者からブーイングの声が上がった。病院団体が描いた当初の狙い通りに行かない、そんな会議だった。

 では、今回の医療機関のコスト調査はどうか。設置の端緒は違うものの内容は似ている。委員の中には、「エビデンスに基づく診療報酬改定」を主張し、今回の調査がさらに進むことを要望した病院団体の幹部もいる。しかし、これはあまりにも楽観的に過ぎないか。

 病院運営の中では、総務や経理の事務職員など診療報酬の点数が付かない非収益部門がある。また、救急医療のように収益につながる患者が何人来るか分からないのにスタッフを待機させ、設備を稼働させておくコストが掛かる部門がある。そこで、このようなコストを診療報酬で補填するため、厚生労働省がこのようなコスト調査をしている──

 などと、病院団体の委員は考えているのだろうか。むしろ逆ではないだろうか。「コストを把握し、無駄なコストがあれば診療報酬を引き下げる」というのが真の狙いではないだろうか─。

 もし、客観的なエビデンスに基づく診療報酬改定を考えるなら、「外来が赤字」という結果を踏まえ、「外来管理加算」の見直しに大きく舵を切るはずだが、そんな気配はない。むしろ、「入院が黒字」ということを強調して、「入院基本料」の引き上げ主張をけん制しているようにも見える。

 同分科会で、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)は次のように指摘した。
 「同じような調査をフランスでやっている。フランスの場合には、いわゆる『標準給与表』というのがある。医師、看護師、いろいろな事務職について。そういうものに基づいて『標準原価』みたいなものを計算していく。『標準原価』を計算することによって、国レベルでの診療報酬の決定にも寄与している」

 これに対して、池上教授は「単なる標準値」を使うのではなく、「等価係数」という標準値を使うことを強調した。これらの発言から今後の流れを先読みすれば、医師や看護師らの人件費計算の基礎となる「等価係数」をまずDPC病院に導入するのだろう。

 2010年度から導入される「新たな機能評価係数」によってDPC病院の地域偏在を解消する流れをつくる一方、医師の診療科偏在は「診療報酬の偏り」を是正することで解消していこうという狙いかもしれない。

 その結果、「医療機関のコストを適切に反映してほしい」という病院関係者の願いとは逆の方向に進むだろう。これまでの厚生労働省のさまざまな会議を見る限り、厚労省は「医療機関の機能分化と連携」という名の下に、中小規模の民間病院群を減らしたいように思える。

 最初に描く青写真がある。確保したい予算要求の分野が先にある。「天下り先の確保」というのは言い過ぎかもしれないが、最初に決めたゴールを支えるための資料を作るため、質問項目などを工夫している。厚生労働省の調査結果を見るたび、そう感じる。

 ここはもう、政権交代をして現在の厚生労働省の主要部局のトップを入れ替え、御用学者だらけの審議会の在り方を大胆に見直さないと、医療崩壊の流れは食い止められないのではないか。
(略)

診療科の収支調査、狙いは医師人件費の実態把握?(2009年8月4日ロハス・メディカル)

 医療機関のコスト調査について、中医協・基本問題小委員会の診療側委員からは疑問点や質問が出されたが、支払側委員は前回調査よりも好意的に受け入れた。コスト調査が医療費抑制ツールの1つになるからだろう。(新井裕充)

 厚生労働省が主導する医療機関のコスト調査は当初、来年4月の2010年度診療報酬改定から実施するとの見方もあったが、7月29日の中医協・基本問題小委員会で見送られた。コスト調査のデータが診療報酬改定に反映されるのは、早くても2012年度改定からになる。

 診療報酬と病院の運営コストとの関係をめぐっては、「診療報酬とコストが対応していない」「エビデンスに基づく診療報酬改定が行われていない」との声をよく聞く。
 このような声が診療側委員から出れば、「コストを診療報酬できちんと評価してほしい」という意味。例えば、ベッドサイドで患者の悩みや相談に乗ることなど、診療報酬が支払われない行為がたくさんある。

 しかし、厚労省や支払い側委員が「診療報酬のエビデンス」などのフレーズを口にするときは、「コストをカットして適正化を図れ」という意味になる。つまり、厚労省が検討を進めているコスト調査は、病院団体などが求める「コストを反映した診療報酬改定」とは正反対。支払い根拠が不明確な点数を洗い出して診療報酬を切り詰める医療費抑制ツールの1つでしかない。

 このコスト調査の最大のキモは「階梯式配賦法」という計算手法。パッと聞いただけではイメージ不能な難解用語だが、それも作戦の1つかもしれない。きっと、一部の者にしか分からない方が都合がいいのだろう。

 調査を実施した中医協分科会の資料によると、「階梯式配賦法」とは、病院の診療科や部署(病棟、外来診療室、手術室、医事課等)を「入院部門」「外来部門」「中央診療部門」「補助・管理部門」の4部門に分け、そのうち「補助・管理部門」「中央診療部門」の収益・費用を段階的に「入院部門」「外来部門」の各診療科に配分するという。

 分かるような、分からないような......。

 例えば、総務や経理の担当者など収入を生まない職員もいるし、手術室の維持・管理に掛かる費用がどの診療科の費用に対応するのか明確ではない。そこで、病院全体の費用をいったん4つの部門に割り振り、「入院部門」「外来部門」の各診療科に配分する。しかし、今回の調査からは、この途中経過が見えない。

 いや、見えないようにするのがミソなのかもしれない。配分ルール(階梯式配賦法)を変えれば収支は変わる。配分のやり方次第で、政策的かつ恣意的に一定の傾向度を示すデータを演出することができる。

 コスト調査分科会が2008年度の調査結果を報告した同日の基本問題小委員会では、各委員がさまざまな反応を見せたが、診療側委員は一様に配分の問題を指摘した。

 藤原淳委員(日本医師会常任理事)は、「(階梯式配賦法という費用)配分の方式が良かったかどうか。例えば、『中央診療部門』などの配賦によって、外来と入院のニュアンスも相当変わってくる」と指摘。西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「とりあえず手法としては確立した」と評価しながらも、「まだまだ配賦の問題などいろいろあると思う」とくぎを刺した。

 山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、「もしデータがあれば途中経過をお示しいただけないものか」と求めたが、もちろん却下された。
(略)

要するに医療費は増やすのではない、配分の仕方を変えるのだということなのでしょうが、そうなりますと増える方はともかく減る方にとっては大問題で、ここに世に言う「抵抗勢力」が一丁上がりということなのですね。
そして現在その抵抗勢力候補の一番手となっているのが従来さんざん濡れ手で粟の美味しい目をしてきたと国にもマスコミにも国民にも思われている(らしい)開業医、そしてその開業医の主義主張を代弁する存在と見なされている日本医師会という組織で、このところ同会幹部の内心には相当な焦りもあるのではないかとも推測されるところです。

近ごろでは与野党を挙げて「開業医への支払いを勤務医へ回せ」の大合唱で足許に火がついてきているのは判りますが、近年では医師会の求心力が長年低下の一途を辿っているなどとも噂される折、今まで開業医の利権擁護を行ってきたこの皆さんはここに来て医者よ開業医と勤務医の垣根を越えて団結せよなんて妙に虫の良いことをことを盛んに唱えていらっしゃるようですね。

私もひとこと 山口県医師会長 藤原淳(平成18年2月20日日医ニュース)

 時代の移り変わりと共に“お医者様”から“様”がとれて,“患者様”に移ったくらい,国民の意識も医師の地位も変わってきた.しかし,勤務医と開業医との意識差は旧態依然であり,埋まったとはいいがたい
 多くの勤務医は,開業した途端,百八十度近く意識転換を迫られる.現実には医師としての矜持もかなぐり捨てる思いで,飛び込んでいかざるを得ない世界である.
 今,勤務医は,より専門化し,また,医療訴訟の問題もあり,いっそう守備範囲が狭くなってきている.新医師臨床研修制度も軌道に乗りつつあるように見えるが,まだ未知数である.
 医師が真に一般社会を意識するようになった時,初めて医療制度や選挙についても真剣に考えることになる.勤務医の過重労働問題,医療事故発生等の問題も,勤務医自ら発信していくなかで初めて医師会の存在に気付く.大同団結といっても,日々の生活に根差した共通の目的意識が芽生えなければ難しい
 医師会も変革を必要としているが,勤務医,開業医は,同じ医師として不連続ではないはずだ.医療界として社会に対し,共に責任ある提言をしていくことが,今ほど求められている時代はない.

まあ何と言いますか、これ自体はどこぞの半島北部地域の国営放送が国民に呼びかけているお題目のようなもので、そうしたものが末端の心に響くかどうかは言説の内容ではなく平素の行動による人望人徳のなせる業ではないかなとも思うところです。
自分が苦しい時に他人に汗をかかせるならせめて組織序列上も真っ当に扱ってもらわなければやっていられないというのも人間の偽らざる心情であって、特に「勤務医は出世できない」などと黙されている団体であればなおさら被差別集団から注がれる視線も厳しくなろうというものです。
そこで改めて問われるのが彼らの言う大同団結の中には本当に勤務医も含んでいるのか、その場合に開業医と勤務医を果たして同等に扱っているのかということであり、同時に彼ら日医幹部を仰ぎ見る(ということになっているんでしょうかね、一応…)末端臨床医の視野の中に彼ら幹部の姿がどう映し出されているかということですよね。

その点では先日の消化器外科学会総会における出月康夫先生の講演で、医療崩壊という現象に関して「特に日本医師会に大変大きな責任がある」と名指しで批判していたことなども勤務医側の雰囲気を表しているのかも知れませんが、もちろん医師会とてしおらしく黙って打たれるだけの無抵抗主義者ではありません。
近ごろでは日本医師会常任理事をされているという前述の藤原先生ですが、先頃の中医協ではこんなやり取りがあったそうで、さすがに「大同団結といっても、日々の生活に根差した共通の目的意識が芽生えなければ難しい」とまで看破していらっしゃる方だけに、いったん共通項がないと見切るや喧嘩を売るにも躊躇はないということですかね。

「病院勤務医、本当に逃げ出すほど忙しい?」-日医・藤原常任理事(2009年8月5日CBニュース)

 日本医師会の藤原淳常任理事は8月5日、委員として出席した中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬基本問題小委員会(委員長=遠藤久夫・学習院大教授)で、「病院の勤務医師が本当に逃げ出すほど忙しくなっているのか」と発言した。これに対し、全日本病院協会の西澤寛俊会長は、「実際の現場を見て発言してほしい」と不快感をあらわにした。

 基本小委では、病院勤務医支援が実際に勤務医の負担軽減につながったかなど、前回の改定後に検討を継続することになっていた項目の審議状況を厚生労働省が報告した。

 藤原委員は、中医協の検証部会が昨年度に実施した調査で明らかになった、医師1人が1日に診る外来診察患者数が平均28.0人(医師責任者は32.6 人)、担当入院患者数が10.9人、1か月当たり当直回数が2.78回(同1.61回)などのデータを挙げ、「ここだけの状況を見てみると、病院の勤務医師が本当に逃げ出すほど忙しくなっているのかどうか。多少疑問を感じる」と述べた。
 また、「開業医が今、激減している状況がある」と述べ、それが「地域医療全体の疲弊にもつながる」と指摘。中医協で対策を話し合う必要があるとの認識を示した。

 これに対し西澤委員は、「『勤務医が果たして、いわれるように大変なのか』という発言。これに関しては認識を改めてもらいたい」「疑いがあるなら、実際の病院を紹介する」と述べ、現場を見て発言するよう求めた
 藤原委員は「データが出たから、それに対してコメントしただけ」「勤務医に対してわたしは理解しているつもりなので、誤解のないように。開業医の立場から言っているのではない」などと釈明した。

またぞろ医師会理事ともあろう御方が「勤務医に対してわたしは理解しているつもり」だの「開業医の立場から言っているのではない」だのと余計なことを言わなければいいのにと思うのですが、言わずにはいられなかったと言うところに焦りが表れているのでしょうか。
ちなみに氏の母校のHPには各界で活躍するOBとしてきっちり同氏の名前が出ているようですから縁が切れているわけでもないのでしょうが、ひるがえって同氏の山口県医師会長就任時の記事によればこんなことを書いてあります。

昭和十八年山口県の出身.昭和四十三岡山大医学部を卒業,現在山口市で内・胃・循環器科医院を開設.県医専務理事・副会長を経て,平成十六年現職に就任.六十歳.

地方医師会から始まって日医で幹部にまで登り詰めるくらいですからお仕事も出来るんだと思いますが、一人の医師としては出身地方で内科医院を開業なんて見たところすごく普通っぽい感じですよね。
そこで全くの蛇足ながら、この程度なら忙しいうちにも入らないとも言わんばかりのコメントを出されるほどの仕事ぶりとはどんなものなのかと、山口県内で内科、胃腸科、循環器科を開業されている藤原先生をあちこち探し歩いておりましたら、某建築会社に診療所のリフォームを依頼された折りのコメントにわざわざ御本人が(写真付きで!)登場していらっしゃるようなのですね。

藤原内科さま(某建築会社HPより)

20年間病院勤務をした後、山口市で開業することになりました。長く県外におりましたので、地元の建設会社についてはよく知りませんでしたが、銀行から『信頼のおける会社』とご紹介いただき、○○さんにお願いすることにしました。

最初は外来だけでの開業だったのですが、患者さんから『入院施設を』との要望が強く、2年後に病棟を増築しました。その後、通所リハビリテーション施設と療養病床を増築しましたので、計3回○○さんにお願いしたことになります。○○さんとのお付き合いは20年になりますが、アフターフォローもきちんとしており、安心できます。

以後延々と(建築会社の施工例のページに何故こんなものが?と思うほどの情熱で)同先生の地域診療にかける熱い思いを語っていただいているようなのですが、いやあ、どこからどう見ても筋金入りの開業医先生ですよね(苦笑)。
特にこの「山口県医師会の会長もされている院長の藤原先生」なるキャプションのつけられた誇らしげなお写真が何とも素敵なのですが、素朴な疑問ながらこうして医師会幹部としての大仕事をしながらでも片手間に出来ちゃうくらいに開業医のお仕事ってお暇…もとい、ものすごい切れ者でいらっしゃるということなのでしょうかね?
しかもよくよく見れば同社で同じく施工例として紹介されている御近所の某医院もご親戚とかで、同社とは父上である先代院長以来のつき合いと言うことですから、これはご親族をあげて先祖代々地域に根付いた開業医の家系ということになるわけでしょうかね?

さて藤原先生、つまるところ先生の御主張としましては「ボクらの若い頃はねえ…」といういつもの繰り言でFAということなのでしょうか?
開業医の先生が日医幹部として開業医の立場を代弁することは何らやましいものでも何でもないでしょうが、一応公的には開業医と勤務医の大同団結をみたいな能書きを垂れる組織の幹部が敢えて喧嘩を売るような言動を公の場で弄してみせるのであれば、その意図は何かと痛くもない(?)腹を探られるのは当然であるとはご理解いただけますよね。
まして医者がお医者様と呼ばれていたなどと言うような四半世紀以上も前の先史時代のおぼろげな記憶を頼りに「勤務医に対してわたしは地解しているつもり」などと弁解してみせるとは、日進月歩の変革著しい医療現場においては馬車しか知らない人間が新幹線を云々するかのような暴挙に等しいとも感じる人間も多々あるのではないでしょうか。
失礼ながらそんなカビの生えた認識しかない御身で先生方日医幹部が国と折衝を繰り広げてきたからこそ、今日のような医療崩壊とも呼ばれる国民的危機が顕在化する一方で医療現場が青息吐息の状況に追い込まれたとはお考えになりませんでしょうか?

ところで、先生の仰るところの「共通の目的意識」とは具体的にどのようなものだとお考えなのでしょうか?
いずれお暇な折にでも是非ご教示いただけるなら、今日日の医師会活動に注目している全国医療従事者にとっても意思決定に当たって幸いこれに過ぎたるはないと思うのですが。

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2009年8月 6日 (木)

人手不足への処方箋は

本日まずはこちら、時間外救急の患者が減ってきたという話題をご紹介しましょう。

夜間・休日患者、2割減 広島県内の小児救急3病院/広島(2009年7月16日中国新聞)

▽軽症来院自粛の傾向

 広島県内の小児救急医療拠点病院3施設を夜間や休日に利用する患者が減っている。2008年度の患者数はピーク時より約2割減った。病院側は、保護者の仕事の都合で夜間に来院する「コンビニ受診」の自粛などが理由とみている。

 舟入病院(広島市中区)の時間外患者数は04年度が5万2257人でピークだった。07年度に5万人台を割り、減少傾向が顕著に。08年度は4万1603人で、04年度より20・4%減った。兵藤純夫副院長は「相次ぐ小児科の閉鎖などで医師不足を知った保護者が、軽症での来院を控えてくれた結果ではないか」とみる。

 同じく拠点病院のJA尾道総合病院(尾道市)は08年度が8268人と、ピークの06年度を20・3%下回った。三次中央病院(三次市)は6571人で05年度から26・1%減った。

 三次中央病院の小野厚・小児科医長は「当初はコンビニ感覚で来る人もいたが、市の広報などで啓発を続けた効果が出た」とみる。

 舟入病院は08年度も一晩当たり81・1人が受診。医師3、4人が交代で診療するが、勤務時間を大幅に超えるケースも目立つという。兵藤副院長は「患者数は減ったが、態勢が苦しい状態はまだ改善されていない」と説明する。

 広島市の育児支援グループ「子育ておたがいさま~ズ」の金子留里代表(48)は「核家族や共働きが増えて、時間外診療に頼らざるを得ない保護者も多い。患者に時間外診療の自粛を呼び掛けるばかりでなく、診療時間の延長なども考えてほしい」と求めている。(衣川圭)

このような記事を見ますと医師不足問題もようやく一般社会に滲透してきたようにも思いますが、普段病院と縁のない人ほどなかなか実感が湧かないということもあるようです。
しかし医療はもやは医療業界内部でのみ支えられるものではなく、住民も単なる医療の利用者ではなく医療を支えるものとしての役割が期待されてきている時代であって、他人任せで「医者を増やせ。時間外診療を充実しろ」などと叫んでいるばかりでは身近な医療を維持することなど出来ません。
近ごろでは市民を対象に勉強会のようなことを始めている地域も増えてきているようですが、こうした住民自身のサポートが地域医療の延命につながってくるということであれば回り回って利用者の利益として還元できるという話ですよね。

市民らが医師不足の実態学ぶ /島根(2009年7月28日中国新聞)

 「医療問題と地域医療を考える市民の集い」が26日、江津市の石央地場産業振興センターであった。約300人が集まり、シンポジウムで行政担当者や病院幹部らから医師不足の実態と市民の役割などを学んだ。市議らの呼びかけでつくった実行委(委員長・市連合自治協議会の瀬頭竜平副会長)が初めて開いた。

 竹内俊介浜田保健所長は、病院勤務医が診療説明や書類作成業務に追われ、時間外受診の増加で労働負荷が増している実情を報告。小笠原隆・市民生部長も、医師不足のため市の法定小児健診に島根大から応援を仰いでいる窮状を説明した。県市の対策には地元着任予定の医学生、看護学生向けの県市の奨学金新設もあり、2人は「制度PRで志願者増を」と呼びかけた。

 市内唯一の総合病院済生会江津総合病院の西尾聡事務部長は、17診療科のうち脳神経外科など5科に常勤医がおらず、4月には看護師不足で療養病棟を閉鎖したことをあらためて説明。近く医師1人採用にメドが立ったことも報告した。

島根もいわゆる僻地が広大という土地柄ですから、地域医療の維持ということに関してはなかなか苦労が絶えないようですね。
いずれにしても医療崩壊という現象がここまで進行した段階で、ようやく住民自体に意識改革の兆しが見られるようになったのは良い傾向ですよね。
もちろん住民との二人三脚でうまくいったという兵庫県丹波市のような事例は例外中の例外であるのも事実で、大部分は言っている側からこうしてオチがついてしまうという哀しい状況にあるのも確かではあるのですが…

外科医3人全員退職へ 大田市立病院、救急機能低下を懸念 /島根(2009年8月5日中国新聞)

 島根県の石見地方東部の拠点病院である大田市立病院(339床)で、3人の外科医師が全員、来春までに退職することが4日、分かった。現時点で補充見通しはなく、人口4万人の市で唯一の救急病院としての機能低下も危ぶまれている

 3人を派遣してきた広島大医学部の第1外科が、所属する医師の激減などに伴い、引き揚げの意向を伝えた。1人は9月末、残る2人も来年3月末で退職する予定だ。

 同病院の外科の常勤医師はピーク時の2003年度、6人いた。だが、派遣元の広島大第1外科の入局者が年平均10人だったのが、ここ4年は同2・5人と激減。開業や内科転向も相次ぎ、計120人いた医局員が5年で約20人減り、派遣が難しくなったという。

 背景には、新卒医師が研修先を自由に選べるようになった04年度からの臨床研修制度がある。東京の大病院などが人気の半面、地方の大学や、外科や産婦人科など勤務のハードな診療科では志望者が減った。

 さらに大田市立病院では、内視鏡検査のできる専門医が不在となった08年度から人間ドックも中止し、手術の必要な患者が減った事情もある。第1外科の末田泰二郎教授は「医局員が減る中、腕を磨けない病院に若い医師を派遣する余裕はない」と説明する。

 竹腰創一市長は「救急医療もきわめて厳しくなる。一自治体の努力では限界だ」とし、「松江や出雲に偏在する外科医を石見にも回してもらうよう大学や県に働き掛けるとともに、国にも臨床研修制度の根本的な見直しを求めていく」と話している。(馬場洋太)

ま、典型的な崩壊のドミノという感じでしょうか…ご愁傷様です。
こんな風に見ていきますと今の時代スタッフが足りている施設なんてあるのか?とも思えるほどなんですが、意外にも最近こんな記事が出ていたのをご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

医師、看護師とも「充足」の病院は8割強(2009年8月3日CBニュース)

 厚生労働省はこのほど、2007年度の医療法第25条に基づく立ち入り検査の結果を公表した。それによると、医療法に規定された医師と看護師の標準数を共に充足している病院は85.4%で、前年度から2.1ポイント増加した。

 これは、病院が医療法で規定された人員や構造設備を持ち、それを適正に管理しているかについて検査するもので、今回は全国の8268病院を対象に実施した。

 それによると、医療法に規定された医師の標準数を満たしている病院は86.9%で、前年度から1.9ポイント増加した。
 地域別に見ると、「北海道・東北」70.6%、「関東」91.7%、「北陸・甲信越」82.1%、「東海」91.0%、「近畿」95.3%、「中国」87.0%、「四国」84.4%、「九州」88.9%となっており、全地域で前年度よりも増加した。
 病床規模別では、200床未満の病院で80%台だったのに対し、200床以上では90%を超えており、特に500床以上では97.7%に上っている

 また、看護師(准看護師を含む)については98.8%で、前年度から0.3ポイント増加した。
 地域別に見ると、「北海道・東北」98.4%、「関東」97.5%、「北陸・甲信越」98.3%、「東海」98.8%、「近畿」98.9%、「中国」99.6%、「四国」99.8%、「九州」99.7%で、「北陸・甲信越」を除き軒並み前年度よりも増加した。
 病床規模別では、「50-99床」「200-299床」が98.3%で最も低かった一方、「500床以上」は100%だった。

 また、医師と看護師の充足率が共に100%以上の病院は85.4%で、前年度から2.1ポイント増加した。一方、共に100%未満だった病院は0.4%だった。
 病床規模別では、共に100%以上の病院は、「99床以下」81.1%、「100-199床」85.6%、「200-299床」88.0%、「300-399床」90.2%、「400-499床」89.3%、「500床以上」97.5%だった。

 また、調査項目全体で最も適合率の低い項目は「医師数」(86.9%)で、「職員の健康管理」(87.1%)、「患者の相談に応じる体制」(92.6%)、「薬剤師数」「安全管理の指針整備」(共に92.8%)も低かった。

え?8割が医師充足なんて嘘だろ?と思ってよく見ましたら、「医療法の規定を充足する病院」ですか…
まあ何て言いますか、記事中にも中小病院ほど充足率が低いとあるように、確かに法定の医師定数というものも僻地病院の「足切りライン」やらで未だにそれなりに活用されているのも確かですけどね。
しかし今どきまともな急性期の病院における医師定数なんてものは、通勤ラッシュの朝の駅でホームに積み残しが出るかどうか程度には医師充足の目安になるというシロモノですからねえ…
この程度の最低限ラインも守れない病院というものは今の時代、もはや要求される最低限度のレベルすらクリアしていないとも言えるわけですが、実際には大学出研究やっているだけの週一非常勤まで勘定に入れた「なんちゃって定数充足病院」を厳しく取り締まってしまうと地域医療は大騒ぎになってしまうというのも現実なんだろうと思います。

前振りが長くなりましたが今日の本題はここからでして、要するに今の時代当たり前のことを当たり前にやっているだけでは田舎病院が優秀な人材を集めることなど出来ないということなんですね。
医師不足、看護師不足という話は実は今や全世界的問題となってきているわけですが、どうも日本の病院は「綺麗な官舎を建てました!」とか「研修に行ってもいいです!」なんてありきたりな売り文句しか出てこないことに物足りなさを感じている人も多いのではないでしょうか?
いくら日本人が真面目だと言われていようが、もう少し面白みのある話でなければ今どきの人間にとっては有り難みがないということではないでしょうか。

その意味では少し前に話題になった「赴任してくれたら馬を差し上げます!」という遠野市のアイデアなども斬新で良いとは思うのですが、一般論として馬に魅力を感じてやってくる人間がどれほどいるのかと考えれば、もう少し広く一般的にアピールできる求人の条件というものを考えなければならないということなのです。
そこで広く世界に目を向ければ、もっと大胆かつ有効性が高いんじゃないかと思われるアイデアを提示している病院もあるのですね。

病院側が看護婦に 『無料の豊胸手術』 を提案!?(2009年5月26日ロケットニュース24)

東ヨーロッパの国チェコ共和国は看護師不足に苦しんでいる。チェコは去年だけで 1,200人ほどの看護婦たちが低賃金のためドイツやイギリスなど西ヨーロッパ国々に行き海外で就職している状態にある。

そんな中、なんとか看護婦らを引き止めようと病院側が提案しているのが『無料の豊胸手術プレゼント』である。26日、現地メディアの報道によれば、『最近、チェコ共和国の病院が、新しい看護師を雇用するため、もしくは既存の看護師をつかまえて置くための契約や再契約のときに新たなギフトを提案している』と報道した。

地方の病院看護婦として働いている 31歳女性はインタビューで『再契約を控えて病院側から無料のドイツ語講義もしくは5週間の休暇または胸手術を含んだ無料の整形手術の中で選択することを提案された』と語っている。最終的には2千600ユーロ相当の無料豊胸手術と脂肪吸引手術を受けることにして、病院側と再契約した。

これらは、チェコ共和国の病院の看護師求人難を反映しており、現地メディアは『このように、看護師不足で運営が困難なチェコ共和国の病院では看護師への整形手術をギフトとして提案する病院が増えている』と伝えている。

この方法に女性団体は非難しているが、病院や看護師たちのほとんどはこのインセンティブを歓迎しているとしている。ある病院の関係者は「無料の手術を契約条件として提示した後、看護師の志願者が10 %増加した」とし、 「看護師の賃金のアップはよりも、むしろコストが下がった」と語った。

これは…いやあ、なんたる画期的アイデアでしょうか。
我々日本人もやるからにはここまでぶっ飛ばなければネタにならないということですよ(苦笑)。
しかも意外にスタッフ募集の効果のみならずコスト面でも有利、しかも患者増という副次的効果も期待できるんじゃないかという…いやまあ、とにかく強烈に話題になりそうな話ではありますから、病院広告が制限されている日本では広報的効果もありそうですよね。。

しかし問題は記事中にもある通り、日本でやるとすればチェコ以上に「性の商品化だ!」などと女性団体の非難というものを覚悟しなければならないという諸刃の剣であるところなんですが…
ここはやはり、その道の先達として何かと声望の高い某大先生あたりに先頭を切っての弾避けとしてご協力いただくべきところですかね(苦笑)。

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2009年8月 5日 (水)

周産期救急医療、色々と興味深い事実も判明してきて…?

不肖管理人は存じ上げなかったのですが、別所哲也氏なる人物が「できちゃった婚」ならぬ「生まれちゃった婚」をしたというのが最近ちょっとしたニュースになっているようです。
しかし御本人の言葉をよくよく聞いてみると、ずいぶんと大変な状況ではなかったのかなと推測されるような話のようで、まず今日はこちら記事から引用してみましょう。

「あと30分遅ければ命が…」別所哲也、結婚&長女誕生報告会見の主な一問一答 (2009年08月03日eltha)

 俳優の別所哲也が 3日、都内で結婚会見を開き、20年来の付き合いを実らせて日系アメリカ人女性とのアラフォー婚と第1子誕生を報告。現在、集中治療室で一生懸命に生きる長女の誕生を喜ぶ一方、早産の緊急事態で受け入れ先の病院がなかなか確保できず「あと30分遅かったら命がなかった」という危機に直面したことを明かし、医療体制向上を願った。下記は主な一問一答。
(略)
――子供ができたと知ったのは?
それはずいぶん前。彼女が40代前半だったので大事にしようと思って、安定期の確認を取ってからご報告しようと思ってた。自分の思いを込めて育てていけるもう1つの命が彼女と共にあるというのは感極まった感じ。

――予定より早く生まれてしまったが大丈夫ですか?
7月16日の夕方に腹痛が始まりました。低体重の新生児。1100グラムぐらい。行きつけの病院にNICU(新生児集中治療室)が無くて、都内の2ヶ所の病院で受け入れを拒否された。でも、幸いにも行きつけの病院が献身的にしていただいて、都内の病院に受け入れてもらえました。「あと30分遅かったら命がなかった」と言われた。すぐ帝王切開して産まれて、自立呼吸して、今もそこで一生懸命頑張ってる。医師、看護師の皆さんがヘトヘトになるまで頑張ってると実感しましたし、もっとそういう施設が(増えて)、安心して子供が産まれるようになればと思った。

――赤ちゃんはもう抱いた?
まだ抱けなくて。保育器の中に入ってるので、手を入れて触って声掛けてる。ホントに真っ赤なんですね、赤ちゃんって。血の通った命を見つめて、これから自分も頑張らないとなと思った。凄く美人だと思う、もうすでに。
(略)

高齢妊娠で早産とずいぶんと大変な経験をされたことだと言葉の端々から感じられるところですが、実はこうした妊娠に関わるトラブルは思っているよりもずっと多いらしいのですね。
例えば流産と言えば概ね妊娠六回に一回くらいの頻度で起こるといった話を聞かれたことがあるかと思いますが、流産の確率が15%とすれば二回の妊娠で約3割、三回の妊娠で約半数近くの女性が流産を経験するということになります。
さらに50人に一人くらいは流産二回以上の経験があってもおかしくないということになりますが、こうなりますと何か問題でもあるのか?と心配になってくるところで、実際に流産を繰り返すなど妊娠に関わる悩みを抱えている方と言うのはずいぶんと多いという話なんですよね。

妊娠女性の41%が流産経験 「不育症」は8万人 (2009年8月2日47ニュース)

 妊娠したことがある女性の41%は流産の経験があり、流産や死産を繰り返して出産に至らない「不育症」の患者は年間約8万人いるとの研究結果を、厚生労働省研究班が2日までにまとめた。

 名古屋市立大の杉浦真弓教授(産婦人科)と鈴木貞夫講師(公衆衛生学)らが、一般の女性を対象にしたアンケートを基に計算した。産婦人科を受診した人などに偏らず、不育症の発生に関して行われた調査は初。

 杉浦教授は「流産は一般に思われているより頻繁に起きている。不育症の患者のうち多くは出産できる可能性があるので、積極的に検査や治療を受けてほしい」と話している。

 教授らは、2007年2月からの1年間に、愛知県岡崎市で健康診断を受けた35~79歳の女性のうち503人から回答を得た。妊娠経験がある458人中、流産したことがあったのは190人(41・5%)。2回以上で「不育症」とみられるのは28人(6・1%)、3回以上の「習慣流産」は7人(1・5%)いた。

 国内の年間出生数は約110万人で、一般的な流産率は15%とされ、研究班は年間妊娠数を約129万人と推定、不育症患者は約7万9千人と算出した。

 杉浦教授によると、流産の大半は、自然現象として一定の割合で起きる胎児の染色体異常が原因。通常、流産時に胎児の検査までしないため「原因不明」とされることが多いが、次回以降の妊娠で出産できる可能性がある。抗リン脂質抗体症候群という、胎盤に血栓をつくる自己抗体の異常が原因なら、薬でコントロールできるという。

 杉浦教授は「流産を繰り返すと精神的にも疲れ、あきらめてしまう人も多いが、原因が分かれば次の妊娠に臨む気持ちが持てる」と指摘。ただ、一部の検査や薬は保険の対象外で自己負担になるといった問題がある。

特に最近では高年齢出産ということも当たり前に増えてきている状況ですが、当然ながら妊娠・出産に関してこれらは大きなリスク要因となるわけですから、産科医療の進歩に反して妊婦側の条件は年々悪くなってきているということも言えるでしょう。
こういうことになりますと冒頭の別所氏の例を見るまでもなく妊婦さん絡みの救急搬送って結構多いのでは?と気になるところですが、実際のところ救急の現場では搬送に難渋すること少なからざるという状況にあるという話がこちらの記事です。

現場滞在30分以上の搬送、周産期ケースで多く(2009年7月31日ロハス・メディカル)

 消防庁が昨年度に実施した救急搬送に関する全国調査によると、救急隊から医療機関に4回以上受け入れ照会を行っていたケースについて、周産期の搬送は重症や小児の場合と比べて、現場に30分以上滞在しているケースが多い傾向があった。(熊田梨恵)

 (略)昨年度に消防庁が実施した救急受け入れの実態調査で、照会回数が4回以上だったケースと、現場滞在時が30分以上だったケースについて、それぞれの割合を都道府県別に出して相関を示した。搬送ケースを▽重症以上(計53万132件)▽産科・周産期(4万542件)▽小児(35万9557件)-に分けた。

 グラフ内に点で示されているのが各都道府県。4回以上照会を行っている場合、周産期の搬送では現場に30分以上滞在しているケースが、小児や重症の場合に比べて多いことが分かる。

単純に考えても妊婦の救急と言えば母体と子供という二人分を相手することになるわけですから、その分通常の医療よりもマンパワーも必要とするだろうということは誰しも予想できるところですよね。
問題はそうしたマンパワーの集約に24時間応えられる施設というものが必ずしも多くない、むしろ年々減っているという現状にあるところで、ひと頃妊婦たらい回しなどとマスコミが大騒ぎした状況も蓋を開けてみれば「顧客側の求める水準が高くなるほど、対応できる施設は減っていく」という、医療業界に限らない当たり前の現象の裏返しにしかすぎないわけです。
冒頭の別所氏の話は美談かも知れませんが、同時に自らの幸運というものも噛みしめるべきこれは一例であったかも知れないということですね。

さて、今春に消防法が改正されまして、各都道府県には患者の容体や地域の医療機関の数に応じて搬送先の候補をあらかじめ決めておき、公表することなどが義務づけられたことは既に御存知のところかと思います。
この改正消防法施行が10月からということなんですが、これに向けて都道府県に示す国のガイドラインというものの策定作業が始まってきているのですね。

搬送・受け入れルールの医療機関リスト、重症度や特殊性などで整理を―消防庁・厚労省(2009年7月30日ロハス・メディカル)

 今年4月に改正した消防法で都道府県に救急搬送と受け入れのルール作りが義務付けられたことを受け、総務省消防庁と厚生労働省は7月30日、都道府県がルール策定時に参考にするためのガイドラインづくりの作業に入った。ルールの中で作る搬送先医療機関の一覧について、患者の重症度などによる緊急性や、妊産婦や小児といった特殊性などの項目に分けてリストアップすることが提案された。(熊田梨恵)

 両省は「傷病者の搬送及び受け入れの実施基準等に関する検討会作業部会」(部会長=有賀徹・昭和大病院副院長)の初会合を開催した。都道府県にガイドラインを通知するため、改正消防法が施行する10月末までには議論をまとめる。

 会合中に事務局は、都道府県が搬送・受け入れルールを策定する時に作る、搬送先医療機関リストのイメージ図を提示。患者の状況に応じて選べるようにリストアップする医療機関の一覧は、次の項目で整理することを提案した。

▽緊急性...緊急的な医療の提供等が、特に生命や予後に影響を及ぼすもの(重篤、致死的な疾患、重症度・緊急度が高い症状・主訴など)
▽特殊性...小児や妊産婦など、特殊性を考慮して整理すべき項目(小児科、産婦人科など診療科別)
▽地域性...搬送に時間がかかる傷病など、地域で必要な項目(開放骨折など搬送に時間のかかる傷病、精神疾患や急性アルコール中毒など傷病者に背景がある場合)

 会合の中で横田順一朗委員(市立堺病院副院長)は、自ら作成した救急隊が使用する「消化器疾患救急トリアージシート&救急活動票(案)」を資料として提出。救急隊が現場で患者の状況を評価するトリアージのルールが示されており、通常使っている救急活動記録票と合わせた形で使えるものだ。横田委員は「あまり細かい事を言うと地域のリソースが偏在している中でかえって混乱を招く」と述べた上で、疾患別などによる患者の状況評価を国のガイドラインで示し、評価によって決められる搬送先はそれぞれの地域で決めるのがよいとした。このシートを活用して、救急隊が疑った傷病と医療機関での診断についてのマッチングを行い、地域の医療提供体制の向上につなげることも求めた。
 また、玉作秀二氏(金岡利明委員・金沢市消防局警課救急救助担当課長の代理)は、「医療機関がリストを作っていただくことはありがたい。ただ、受け入れ側がしっかり受けていただけるかどうか」と懸念を示した。

搬送・受け入れ実施基準のガイドライン作りが本格化(2009年8月3日CBニュース)

 総務省消防庁と厚生労働省はこのほど、「傷病者の搬送及び受入れの実施基準等に関する検討会作業部会」の初会合を開き、傷病者の搬送・受け入れの実施基準を各都道府県が策定するためのガイドライン作りを本格的に開始した。

 今年5月に公布された改正消防法では、救急搬送の際に搬送先医療機関が速やかに決まらない場合があることや、救急隊が現場に到着してから傷病者を病院に収容するまでの時間が延びていることを踏まえ、都道府県に傷病者の搬送・受け入れの実施基準を策定する協議会の設置を義務付けている。
(略)
 初会合では、傷病者の状況に応じた適切な医療が行われる医療機関のリストの策定について、事務局側が「緊急性」「特殊性」「地域性」の3つの観点から傷病者の状況を整理することを提案した。「緊急性」では、緊急的な医療の提供などが特に生命や予後に影響を及ぼすものとして、脳疾患や心疾患など「致死的な疾患」、意識障害や呼吸困難など「重症度・緊急度が高い症状・主訴」、心肺機能停止など「重篤」についてまとめる。また、「特殊性」については小児科や産婦人科など診療科別に、「地域性」では地域の中で特に搬送に時間がかかっている傷病などについてまとめる。

 ガイドラインについては、改正消防法が施行される10月末までに策定する予定だ。

とにかくこの件に関しては、関係諸方面の思惑が入り乱れてなかなか面白いことになっているのかなと言う気配がコメントの端々からも伺えるところで、さらに実際にはこれに現場当事者の思惑というものも関係してきますから、これは一筋縄ではいかない話にはなりそうですけれどもね。
ま、中央側でのアイデアはともかくとして、結局のところ末端レベルでどう実施していくのかということが問題だとすると、あまり精緻を極める実現性の乏しい理想論に傾いてもらっても困るというのが都道府県側の本音であるかも知れませんけれどもね。

その意味では逆に現場からのフィードバックの解析ということが非常に重要な示唆を与えるのではないかと思うのですが、周産期医療関連で言いますと少し前に東京都で「重症妊婦は全て受け入れ」をうたう「スーパー総合周産期母子医療センター」なるものが導入されたという話題は既に御存知のところかと思います。
「看板をつけかえただけで実態は変わらない」とか「全て受け入れるのは重症妊婦だけということが徹底されていない」とか当初色々と言われていたようですが、このスーパー総合運用を通じて得られたデータというものがなかなか面白い話になっているようなので紹介しておきましょう。

まずは蓋を開けてみると意外な結果に…という、ある意味では非常に興味深い話がこちらです。

スーパー総合周産期センター、実質は1件-システムの本質は「意識向上」?(2009年8月1日ロハス・メディカル)

 救命処置が必要な妊婦を24時間体制で必ず受け入れる「スーパー総合周産期センター」のシステムが東京都で開始してからの約4か月で、スーパー総合の受け入れに該当する重症の妊婦の搬送ケースは9件あった。このうち8件は近隣のセンターが受け入れることができており、他のセンターでの受け入れが不可能なために" 最後の砦"としてスーパー総合が受け入れたのは1件のみ。関係者からは、スーパー総合があることによる安心感などが他の医療機関に影響し、他のセンターの受け入れがうまくいっているとの声が上がっている。(熊田梨恵)
 資料は都が7月29日に開いた周産期医療協議会(座長=岡井崇・昭和大教授)で公表した。

 スーパー総合周産期センターのシステムでは、119番通報を受けた救急隊が患者の状況を確認し、脳や心臓に疾患があるなどスーパー総合での受け入れに該当する重篤な状態だと判断した場合、「スーパー」事案として各消防本部に連絡する。日赤医療センター(渋谷区)、昭和大病院(品川区)、日大医学部附属板橋病院(板橋区)の3つのスーパー総合が輪番で受け入れ態勢を敷いているが、近隣の総合や地域の周産期母子医療センターでの受け入れが可能になれば、そこに優先して運ばれる。つまり、妊婦がスーパー総合での受け入れに該当する重症ケースで、スーパー総合システムが稼働して消防本部や医療機関が動いたとしても、すべてスーパー総合に運ばれるわけではない。

 システムが稼働した3月25日から7月28日までの間、スーパー総合での受け入れに該当する重症ケースは9件発生。システムは稼働したが、8件は近隣のセンターで受け入れられていた。どこも受け入れることができず、"最後の砦"としてスーパー総合が受け入れたのは、5月に起こった硬膜下出血が疑われた30代の妊婦の転院搬送だった。
 都によると、これ以外にも患者が自ら病院に来たケースなどでも、スーパー総合の受け入れに該当する重症ケースは8件あったという。
 会合中、委員は資料を元にシステムについて意見交換した。

■「意識の高まりで受け入れられている」
 意見交換で伊藤博人委員(東京消防庁救急部救急医務課長)は、「この制度ができるまでは受けていただく病院がなかなか決まらなかった。このシステムが動き出し、(救急隊が)病院に連絡すると、最終的な(受け入れ)場所が確保されているということで安心され、受けられる、ということだと思う。時間的に早く収容されるイメージがある」と感想を述べた。
 都福祉保健局の飯田真美医療政策部事業推進担当課長は、「(救急隊は)まずは直近の周産期センターにかけていただいているのが現状。そこがだめだったら『スーパーで』ということ。大体1回か2回のトライで決まっている」と述べた。

 吉井栄一郎委員(都福祉保健局医療政策部長)は、8件が近隣の病院で受け入れられていたことについて、「直近(の場所)で入ったものもシステムとして機能したと考えてもらいたい」と述べた。
 丹正勝久委員(日本大医学部教授)は「スーパーのシステムを作ったことで、スーパーに入っていないセンターの意識も少し高まったのでは。このネットワークの機構がうまく動いたというよりは、意識が高まったことでスーパーの患者の受け入れもうまくいったと考えて、これらは別個に考えて話していかないといけないのでは」と、システムを検証する際に注意すべきとした。
 岡井座長はこれに対し、「『意識』もある意味システム下にあるもので、それに乗ってくれたというのもある。そういう整理がないと普通の母体搬送と同じになってしまう。忙しくても『スーパーがあるなら頑張ろう』とやってくれているところもある。今までだったらあった、(救急隊からの受け入れ照会時に)『もうちょっと当たってみてだめだったらもう一回電話下さい』というのは減っている」と述べた。

■オーバートリアージは「許容範囲」
 岡井座長は、中等症のケースが3件あったことを指摘し、「3例がオーバートリアージになる。9分の3なので許容範囲。これぐらいはしょうがないだろう」と述べた。「問題はアンダートリアージ。常位胎盤早期剥離も重症以上のものと規定しているので、1次医療機関が『それほど重症じゃない』と思ってスーパーのシステムに乗せないで、普通の母体搬送でと考えていたら意外と重症だったと。受け取った側が『これは重症だからスーパーでよかったじゃないか』という報告がいくつかされているということ」と、システムは稼働しなかったが重症だったケースがあったことを指摘。スーパー総合に搬送される前の段階で妊婦を診ている医療機関との連携の必要性を強調した。

■「新生児のスーパーシステムを」
 宇賀直樹委員(東邦大医学部教授)は、スーパー総合が妊婦の救命を目的としていることについて「新生児からするとうらやましい。『スーパー胎児救命』とか、一部でもいいから見習って『こういう患者ならどこか受けるよ』というのがあれば残念な症例が少なくなる」と述べた。
 岡井座長はこれに対し、「新生児のシステムがあった方がいいなら作った方がいいかもしれない」と、前向きな見方を示した。9件の中で胎児が死亡していたケースがあったことを指摘し、「今後検討していきましょう」と述べた。

 このほか、楠田聡委員(東京女子医科大教授)はスーパー総合での受け入れに該当するケースが、患者が自ら来院したケースも含めて17件あったことについて、「ほぼ予想に近い数字。ただ、スーパーの宣伝や広報がうまくいっていない」と述べ、システムを今以上に周知していく必要性を指摘した。

色々と読み解くことは出来る話ではあると思うのですが、まずスーパー総合の受け入れ件数が案外少なかったという話に関しては、もともと東京都下では全国でも周産期医療機関が整備されている地域であって、逆に「妊婦たらい回し」という状況は極めて例外的であったからこそ新聞沙汰になったのだという考えは出来るかと思いますね。
ただしその内容を見てみると興味深いのが「スーパー総合が出来てから受け入れがスムーズに進むようになった」という話ですが、これは現場の人間にしてみれば「いざとなれば引受先がある」という意識があるとないとでは全く心理的にも物理的にも状況は変わってくるだろうとは想像できるところです。

逆に言えば、周産期に限らず救急医療を整備する上で重要なのは身近な地域の病院にいつでも医者がいるというようなことではなく、どんな時でもいざとなったら重症患者を引き受けてくれる高次救急医療センターが機能しているかどうかであるという推測もなり立ってくるわけですよね。
この辺りはかねて医療機関集約化に向けて論を進めてきた方々にとってはなかなか使いでのあるデータが取れたんじゃないかとも思える話なんですが、同時に高次救急医療センターには常時受け入れの余力がある程度に受診制限をかける必要があるだろう点にも留意しなければならないでしょうね。

一方で、スーパー総合になってもやはり助産所からの搬送というのはあるんだなという話題がこちらなんですが、これも見てみるとなかなか興味深い話ではありますよね。

「まず助産所の嘱託医との連携を」-スーパー総合、助産所からの搬送ケース(2009年8月2日ロハス・メディカル)

 助産所での分娩を希望する妊婦がいる一方で、医師がいない助産所での分娩は一定のリスクを抱えることにもなる。都のスーパー総合周産期センターでの受け入れが必要になったケースでも、助産所からの搬送があった。(熊田梨恵)

 助産所では医師がいなくても、正常分娩であれば助産師がお産を取り扱うことができる。助産師単独では医療行為を行えないため、助産所には嘱託産科医と嘱託医療機関との連携が義務付けられている。ただ、助産所と医療機関の在り方は助産所によって差があるとの声がある。綿密な連携の下、医療が必要になった妊婦が適切に医療機関を受診できているケースもあれば、連携がうまくいっておらず、大量出血や胎児仮死など重症な状態になってから周産期母子医療センターに搬送されるようなケースもあると言われる。

 日本産科婦人科医会の報告書によると、2005年にあった助産所からの搬送301件(うち54件は新生児搬送)の中で、救命処置が必要だったなどの重傷ケースが29.9%あった。妊婦が死亡したり後遺症が残ったりする状態になったのは9.7%。新生児搬送で救命処置が必要だったのは26.0%あり、死亡や後遺症が残る状態などになったのは26.4%だった。嘱託医を介さない搬送が約8割を占めた。

 関東圏の周産期母子医療センターの産婦人科医は自身が経験したケースを語る。「助産所で破水して全開した後ほとんど一日放置されていて、胎児仮死になって運ばれてきたケースがあった。羊水もどろどろの状態で、緊急帝王切開したが赤ちゃんは脳性麻痺になった。なぜそうなる前に連絡しなかったのか。こういうケースは表に出ないので、最後に受けたセンターが患者や家族からも悪者にされてしまう。助産所のリスクについて妊婦に知らせていくべきだと思うし、妊婦も『自然のお産』というような"助産所信仰"に惑わされないで責任を持って自分の出産を考えてほしい。助産所もきちんとしているところはあるのだから、もっと情報開示して透明化されてほしい」と話す。

 国立成育医療センター周産期診療部の久保隆彦産科医長は「多量出血で助産所からセンターに搬送されるというようなことはよくあることで、どんな状況でもリスクはある。日本の妊産婦は250人に1人は死亡に至る可能性がある。これは国際的に見ても低い割合で、日本のお産はとても安全。だが、それを高いと捉えるか低いと捉えるかは本人次第」と話す。

 都が7月29日に開いた周産期医療協議会(座長=岡井崇・昭和大教授)では、「スーパー総合周産期センター」での受け入れに該当する搬送が、システム開始以来9件あったことが報告され、その中で多量出血による助産所からの搬送ケースがあった。これについての委員のやりとりをご紹介する。

[山村節子委員(日本助産師会東京都支部支部長)]
8の症例に関してですけども、搬送までの時間帯が55分程度で一番長いんですね。しかも直近に入っているにもかかわらず長くかかっているということ。すみません、私も把握していなかったんですけども、よく会員から言われるのは、総合周産期に電話すると、よく『嘱託医、または嘱託医療機関からの方もう一回電話を下さい』と言われるという、大変無駄なことをやらされていて時間がかなりかかっているということがあるのですが、この事例に関してはどうだったのかということです」

[杉本充弘委員(日本赤十字社医療センター産科部長)]
この事例はシステムというより助産所がガイドラインを遵守していなかったということで問題にさせていただきたいと思っていたケース。むしろ嘱託医と全く連絡も取っていなかった。連絡を取らずに独断で子宮収縮剤の点滴をされたりしていて、搬送されているんですね。事例そのものが低位胎盤ということでリスクのあるケース。かつ、嘱託医と連絡を取らないで、いろんな処置をして、出血のコントロールができないということで連絡を受けている。ガイドラインを遵守しているということであれば、連絡を受けてから嘱託医というもっとその以前に嘱託医との連携が当然あってしかるべきだった。この症例は全くなかったということで、あとで助産師会方で、むしろ内部で検討して頂きたいなというふうに思っています。

[岡井座長]
それはそれでいいんだけど、それとこの55分かかったということと関係あるの?

[杉本委員]
その前に、低位胎盤の診断を受けている連携病院が間に入っている。そこが受けていただけないということで総合の方に連絡をして、そこで出血が止まらないということで、色々細かいことは聞かないで『スーパー』で来て下さいということで。出血量としては1200CCを超えるところまではカウントできていたというようなケースだったということ。

[岡井座長]
中等症だったんだよね。

[杉本委員]
そう、中等症。そういうことで55分の中に連携医療機関との連絡というようなことが入っている。

[岡井座長]
間に入っている、うん。

[杉本委員]
そういうことの時間と考えていただきたい。

[岡井座長]
最初の連絡の時点では「スーパー」という話にはならなかったと。

[杉本委員]
そう、出血ですから探しているうちにだんだん出血が多くなって重症化していったと。そういうケースです。

[岡井座長]
途中で変わっていくということがありますからね。それほど重症と思わなかったのに、目の前でどんどん悪くなっていくというケースがありますからね。

いやしかし、助産師会の山村節子委員もクレームを入れたつもりが、うっかりこれは地雷を踏んじゃいましたかね(苦笑)。
これも全くの余談かつ脱線ですけれども、山村委員ら助産師さんらも産科医不足のこの時代に色々頑張っていらっしゃるようで結構なんですが、最近例の産科無過失補償制度絡みで助産師業界も色々と大変らしいですね。
補償制度では詳細な事例の検討をするということで当然出産に関わる記録もきちんと残さなければならないわけですが、「とてもそんなことまでやっていられない」とこれを機に廃業をするという開業助産師さんも結構多いようで、どこの業界でも上から押し付けられる書類仕事は年々増える一方で大変なのは共通だなと思われる話でしょうか。

それはともかく、助産所の抱える問題点につきましては、以前にも「今どき新生児破傷風?産褥熱??」だとか「助産所からの搬送ってハイリスク?」などといった興味深い話題を幾つか紹介させていただいたところではありますが、本症例などはその典型例の一つにも取り上げてもいいくらいな話に思えますよね。
ただむしろ問題になるのはリスクがあること自体ではなく、利用する上で当然受け入れるべきリスクを利用者自身が受け入れられていないという点にあるように思いますね。

例えば車にしても小さな軽自動車よりは大きな高級車の方が何となくぶつかった時にも安全なんだろうなと言う感覚はドライバーなら誰でも持っているだろうと思いますが、車一台買うともなれば必要なコストと求めるベネフィットということを勘案しながら、各人がそれぞれの責任で何を買うかという選択を行っているわけです。
ひと頃話題になった中国産食材などでも同様で、相応に危険性は高いのかも知れませんが安くて品物も豊富にあるのも事実ですから、それと承知し納得の上で利用するのであればこれは個人の選択の自由というものですよね。

同様にお産にしても助産所で産もうが産科医の元で産もうがこれも自分の判断で好きにして良いはずでしょうし、その選択の結果のリスクについても自分の判断の結果として各人が引き受けるべき性質のものであるとも言えるでしょう。
ところが何故か自己選択とそれに伴うリスクの甘受という過程がすっぽり抜け落ちてしまって、いつの間にか「最後に受けたセンターが患者や家族からも悪者にされて」しまうという現実があるのならば、考えてみればこれもずいぶんと妙な話だなという気もするところではあります。

国民皆保険制度というものは色々と世界に誇るべき良い点も沢山あるでしょうが、その一方で良くも悪くも皆保険制度に慣れてしまった挙げ句に、医療提供者も医療利用者もどこか感覚がいびつになってしまったのかも知れないですかね。
「医療の常識は世間の非常識」なんてことをいつ頃からか言われてきたものでしたが、考えてみれば「保険で切られるから治療を打ち切る?!医者が金のことなど考えるな!」なんて指導医に叱られたなんて話もずいぶんと非常識なのは確かですけれども、そんな医療を受ける側が「ルール違反なんて許せない!保険診療で認められる範囲でやれ!」なんて抗議したという話も聞かないわけですよね。
そこにある常識の欠如というものは果たして医療を提供する側に限った問題であったのか、あるいは医療を受ける側にも何かしらの他ではあり得ない非常識というものがなかったのか、こうした産科救急の話題の中にもなかなか示唆に富む話が沢山隠されているようにも思えます。

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2009年8月 4日 (火)

勝ち組と負け組、その差はどこから?

最近はようやく労基署も医療現場の違法労働状態の是正に動くようになってきたようで、全国あちこちからこうした是正勧告のニュースが流れてきます。
見ていただきますと判ります通り、およそ例外なく地域医療の中核たるを以て任じてきた公立病院であるというところに背景に横たわる問題が現れているように思えますね。

市立病院の残業代で是正勧告 砺波市が条例改正 /富山(2009年7月18日47ニュース)

 富山県の市立砺波総合病院が市の条例に沿って支払った医師らの残業代(割増賃金)について、砺波労働基準監督署が労働基準法に基づき「割り増しの基準となる月例給与に、本来算入すべき手当が含まれておらず、差額が未払い」として昨年10月、同病院に是正勧告していたことが18日、分かった。

 勧告を受けて砺波市は今年3月に条例を改正、4月に医師らに差額計約1200万円を払った。市から報告を受けた富山県が総務省に問い合わせると、同省は「ほかの自治体でも同様の例があった。労基法に従うように」と回答。県も月例給に手当を含めるよう条例施行規則を改定した。

 病院によると、勧告は昨年10月1日付で、医師の「地域手当」や「初任給調整手当」、放射線技師や看護師の「特殊勤務手当」などを月例給に算入するよう指摘。差額の残業代を昨年4月までさかのぼって支払うよう求めた。

 労基法では残業代算定の際、基準となる月例給から除外してよい賃金を「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」など7種に限定しており、それ以外の手当は算入する必要がある。

高松市民病院 協定結ばず医師に残業 /香川(2009年7月30日読売新聞)

労基署是正勧告 来月労組と締結へ

 高松市民病院が、労働基準法に基づく時間外労働協定を結ばずに医師31人に残業をさせていたとして、高松労働基準監督署から3月に是正勧告を受けていたことがわかった。病院側は、8月中に予定している市職員労働組合病院分会との定期交渉で、医師を含む新たな労使協定を結ぶとしている。

 病院によると、常勤医師46人のうち、管理職を除く31人に時間外手当を支払っていたが、残業時間の上限を設定した労使協定を結んでいなかった。2月に労基署の立ち入り調査があり、3月2日に是正勧告を受けた。31人の残業時間は月平均11・3時間(5月)で、医師を除く病院職員について、組合側と結んでいる現行協定の上限45時間を下回っていた。

 西尾裕樹事務長は「医師の多くが非管理職にあたるという認識が薄く、労使協定の対象外だと勘違いしていた」と釈明。今のところ協定による診療への影響はないとしているが、「今後医師不足が進み、残業が増えないよう医師確保に努める」としている。

坂出市立病院も結ばず/残業の労使協定 /香川(2009年8月1日四国新聞)

 高松市民病院が労使協定を結ばず医師に残業させていた問題で、坂出市立病院(香川県坂出市文京町、砂川正彦院長)でも、医師を含む全職員と残業に関する協定を結んでいなかったことが31日、市立病院への取材で分かった。残業代は支払われており、市立病院庶務課は「公務員であるため、協定自体が免除されると思っていた。認識不足。早急に対応したい」としている。

 市立病院によると、2月に坂出労働基準監督署から指摘を受けて判明。過重労働回避のため労働基準法で必要とされている残業の労使協定を、医師をはじめ、看護師や事務員、医療技術員らすべての職員が結んでいなかった。

 協定の対象となるのは162人。市立病院の2007年度決算統計によると、年間で計約1万9千時間の残業が発生し、およそ5890万円の残業代を支払っている。1人当たりの平均残業時間は医師や事務員が月15時間程度、看護師が同9時間程度という。

 同監督署からの指摘を受け、残業上限を月45時間以内などとする協定の素案は策定しており、8月中に協定締結に向けた組合交渉を予定している。

 一方、三豊観音寺市医師会が指定管理者として運営している西香川病院(高瀬町)も協定を結んでいなかったことが判明。同病院は「夜間の急患対応なども少なく、日直や宿直で対応できる」としている。

なるほど、残業時間は少ないので実際の影響はない、と…
ちなみにこの報道を受けた某所でのカキコの一例ですが。

215 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/08/01(土) 14:25:02 ID:WzEyQXdl0
>>213
おいらが勤めていた自治体病院。
赴任すると知らないうちに事務に自分の三文判があった。

超勤は事務が書いてくださるので一度も自分で書いたことはなかったw

「医者など医局から幾らでも送られてくるもの」と特権意識の上に趺坐をかき、長年にわたって労基法無視の違法労働を現場に強いてきた挙げ句のこの有様ですから同情の余地があるようには見えませんが、当然ながら今どきこうした地雷とも呼べる施設に自ら望んで赴任する医師などそう多くはありません。
一昔前であればそれこそ医局の強権でもって泣く泣く送られてきた医師もいたのでしょうが、今の時代そんなことを口にすれば「あ、そうですか、それじゃ医局やめますから」でおさらばというのが当たり前ですから、病院間で勝ち組、負け組の格差というものがかつて無いほどの勢いで絶讚拡大中ということなのですね。

当然ながら勝ち組となる病院にはそれなりの理由、負け組にもそれなりの理由というものがあるわけですが、特に今やほぼ例外なく赤字経営という公立病院においては金銭的待遇改善などもなかなか厳しいようで、そうなりますと別な面での求心力というものが求められてくるわけです。
そうした中で各地の自治体病院では折から統廃合の話が続いていますが、これらも言ってみれば規模拡大で院内の諸問題を改善しようとする試みとも言えるところですよね。

人が増えれば交代要員も取れる、規模拡大が出来れば患者増も期待でき経営も改善する、医療の効率も良くなるだろうし先端医療にも手を出しやすくなるだろうと良いことずくめのようにも聞こえる話ですが、気がついてみればこれが国の言うところの病院統廃合というものなのですから近年続く診療報酬削減は見事国策遂行として実りつつあるというところでしょうか。
しかし当然ながらそれに対して懸念の声もあるわけで、特にスポンサーである地域住民の声に対してどう応えるかと言った辺りは、これら自治体病院再編に伴う最大の問題とも言えるでしょう。

対馬の2病院統合 300床規模新設、市長が方針転換 /長崎(2009年7月31日長崎新聞)

 対馬市の財部市長は30日、国の地域医療再生臨時特例交付金(30億円)を活用して、県対馬いづはら病院(199床)と県中対馬病院(139床)の再編・統合に取り組む方針を明らかにした。両病院を運営する県病院企業団の提案を承認した形。医療設備の集約と医師確保による医療機能の充実が目的。300床規模の新病院の建設を目指す。

 財部市長は3月、市議会で、当面は再編・統合の検討は進めない考えを示していたが、同企業団が6月、交付金活用による統合・新築移転を提案。交付金を受け、方針を転換した。

 財部市長は30日の臨時市議会で「国の財政支援の施策の流れの中で、地域医療を担う病院施設の環境、それを支える財源的な問題を踏まえ、慎重に考えた結果」と説明した。 両病院が示した案は、新病院の建設費は65億円で、病床は299。敷地面積は約3万平方メートル。医療機器20億円、職員宿舎5億円を含めた総事業費は総額90億円になる見通し。

 医師数は32人程度で、医師数の増加や統合により▽専門医療の拡大や医療の質の向上▽看護師、放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師など医療従事者不足の緩和▽時間外の救急体制と、検診体制の強化▽診療室拡充による外来待ち時間の短縮▽医師の労働条件の緩和▽経営の効率化▽療養環境の整備▽研修医が希望しやすい体制-などが期待できるという。

 中対馬病院は築28年で老朽化し、10年以内に新築する必要がある一方、対馬いづはら病院も病床や医師が不足し、基幹病院としての責務が果たせないため再編・統合の必要性が指摘されていた。(略)

泉州地域の公立4病院を経営統合、大阪府が方針/大阪(2009年7月31日読売新聞)

赤字と医師不足に規模拡大で対抗

 大阪府は31日、病院医師数が減少傾向にある泉州地域(人口92万5000人)で、泉佐野市の府立泉州救命救急センター(30床)、貝塚市立貝塚病院(249床)、泉佐野市立泉佐野病院(348床)、阪南市立病院(185床)の公立4病院を、2013年度までに経営統合し、独立行政法人とする方針を明らかにした。すでに関係3市と協議を始めており、府は10月にも計画をまとめる方針。

 同地域は人口10万人当たりの医師数が186・1人で、全国平均(217・5人)を下回る慢性的な医師不足状態に陥っている。

 公立病院の赤字が膨らむ一方、医師不足で一部診療科が休止に追い込まれるなど、地域の中核医療機関である公立病院で医療機能の低下が進んでいることから、経営統合による規模拡大で対抗する狙いだ。

 橋下徹知事は「経営統合して一体運用するという方向性を目指す。(関係者と)話し合いをして、調整を進めたい」と話した。

大阪府:「地域医療できるか」 病院統合案、地元では戸惑いも 各自治体、反応割れる/大阪(2009年8月1日毎日新聞)

 大阪府が検討を始めた府立泉州救命救急センターと、泉佐野、貝塚、阪南3市立病院の経営統合。府は国の制度を活用し、自治体の枠を超えた地域医療の再整備を目指す。しかし地元では「地域に根ざした医療ができるのか」などの戸惑いの声が出ている。

 各病院とも赤字や医師不足を抱えているが、現地自治体は反応が分かれる。泉佐野市は「自治体が協力した医療体制による経費削減が不可欠」と歓迎。一方、3市の中で病院債務が少ない貝塚市は「各病院の債務は各市で解消しないと統合はできない」と困惑する。

 阪南市立病院では07年、医師不足から1年以上内科が休止した。阪南市社会福祉協議会の米原武雄会長は「経営統合で巨大病院になると、地域に根ざした医療が難しくなるのでは」と指摘する。

 一方、笹井康典・府健康医療部長は「独立行政法人で統合し、府も参画し、大学も支援する。公立病院改革のモデルになりうる」と自信を示し、全国で最大10カ所の医療圏域に上限各100億円が分配される国の制度の活用を目指す。【野田武、酒井雅浩、福田隆】

住民との間の調整については気長に自治体担当者がしていただけばよろしいし、経営なり人材募集なりの状況が改善するのかどうかも計画をすすめる自治体の担当者が考えるべき話だと思いますが、そもそも医療に逆風どころではないこの時代にあって勝ち組と呼ばれるとは一体どういうことなのでしょうか?
医療業界の現場に精通している人間であれば実際やるやらないは別として「こういうことをやっていればそれは儲かるだろうな」という病院経営のイメージはそれなりに持っているのではないかと思いますが、診療報酬制度やスタッフの望むところといったものを勘案すれば、人を集め儲けを出す(赤字を減らす)ための方法論というものはある程度決まってきます。
ところがこれを外部から客観的分析というものを行ってみますと、どうも現場の実感と少なからずずれてくるようなのですね。

県内黒字病院に共通点 浜松医大の特任教授が調査/静岡(2009年7月25日静岡新聞)

 病院経営が一段と厳しさを増す中、投書に対する回答を公開して利用者に対するマーケティングに力を入れたり、患者の在院日数を最適な期間で運用したりしている病院が「黒字病院」の取り組みに共通していることが、浜松医科大医学部地域医療学講座の山岡泰治特任教授(49)が実施したアンケート調査で明らかになった。
 アンケートは医師不足対策や病院経営の改善に向けた課題を研究するため、県内の一般病床を持つ98病院を対象に今年2~5月にかけて無記名方式で行った。54%に当たる53病院から回答を得た。
 調査項目は▽重視する経営指標▽経営改善策▽患者の満足度向上への取り組み▽医師の出身地・出身大学▽診療科別の常勤医師数―など。決算に関する項目は設けなかったが、「純利益」を数値目標に掲げている11病院を「黒字病院」として扱った。
 「黒字病院」が経営面で重要視している取り組みとして、(1)平均在院日数や薬品使用効率の適正化(2)経営に関する意思決定スピードの迅速化(3)投書に対する回答の公開(4)患者満足度向上に関する委員会の設置―などが共通項目として浮き彫りとなった。
 回答した全病院の経営指標では病床利用率、1日平均入院患者数、入院患者単価、経営改善策では中期経営計画策定と進捗(ちょく)確認、経営目標値設定と進捗確認、他病院との連携強化、患者満足度向上では投書箱の設置、診療予約制の導入、質問への丁寧な対応―がそれぞれ上位3位を占めた。
 このほか、勤務医の出身地では静岡県が32・7%でトップ、次いで東京都10・6%、愛知県8・8%、神奈川県5%の順だった。
 山岡特任教授は「黒字病院は、病院完結型でなく他病院や診療所との連携など地域完結型の医療で経営改善を進めている」と指摘。「医師の県外依存率も高い。地域医療を守る観点から全国への情報発信や、病院と行政、地域住民の連携の在り方をより研究していきたい」と話している。

皆さんこの調査を見てどう思われましたか?
この調査項目で果たして黒字化への道標が浮き彫りになってくると思いますでしょうか?
皆さんの施設は明日からこの結果を参考に黒字化を目指せるでしょうか?

「平均在院日数や薬品使用効率の適正化」などはもちろん当然に重要な話ではあるのですが、今の時代急性期医療を担当する病院でこれらを重視しないところはむしろ見つける方が困難で、交通事故防止の方策として「安全運転」と答えるのと同じくらいに重要な項目ではないかと思いますね。
「経営に関する意思決定スピードの迅速化」と言えば、これはおそらく病院上層部の指導力ということが大きく関わってくるところでしょうが、この辺りこそまさしく公立病院を負け組たらしめている最大要因の一つではあるのかも知れませんから、確かにこれもお説ごもっともとも言える内容ではあるでしょう。

そうなると注目されるのが「投書に対する回答の公開」「患者満足度向上に関する委員会の設置」といったあたりなのですが、これらをどう解釈するべきなのかということですよね。
この点で興味深いのが、現場で働くスタッフにとって長居したくないだろう「聖地」とも呼ばれるような病院では、おおよそ地域住民からの投書も盛んなところなのかなという印象があることです。
あるいは経営的にうまく行っているようにも見えないあんなところこんなところが実はウハウハであったということなのでしょうか(苦笑)。

まあそうした話はともかくとしても、そもそも黒字病院(というのも少し無理がある調査に思えますが)と赤字病院でやっている診療内容も違うでしょうし、まさしく利益率に直結する項目のはずなのですが、どうもそのあたりの検証をされている気配が見えませんよね。
スタッフの給与・待遇なども顧客満足度に直結する現場スタッフの志気に大いに関わるものですが、そのあたりの検討もどうも行われていないようにも思えるのも不思議です。

黒字病院は医師の県外依存率も高いと言いますが、普通に考えてあちこちから医者を集める力がある、あるいは医者が集まってくるほど魅力ある病院が黒字であるということは、やはり従来からの定説であるところの「経営改善のためにはまず医者が集められるかどうか」が間接的に立証されているとも読める話です。
となれば、何故医者が集まる、医者が逃げるという病院の差が出てくるのか、そのあたりの事情を詳しく検証し解明していくことが、経営改善の秘密を探る上で非常に大きなテーマとなってくるのではないかと思うのですが、何やら原因と結果を取り違えたかのような議論に終始しているように思えますよね。

失礼ながらなんともピンぼけ気味な調査だなと思って件の山岡先生のことを調べてみましたところが、驚いたことに医療業界関係者でも何でもなくて中部電力からの出向職員なんだそうです。
そもそもこの浜松医大地域医療学講座は「中部電力による寄附講座として、医師不足が深刻化している静岡県中東遠地域を中心に医療事情を調べ、集団災害に対応する専門家の確保と安定した医療サービスの提供を目指す新たな研究チームとして開設」されたんだそうですが、失礼ながらもう少し現場の状況に踏み込まれた方が調査の実をあげられるのではないかと思います。
確かに業界の特殊性を主張するばかりで世間並みということに疎かった医療業界の過去を振り返ってみれば外部の目線の導入というのは重要ですが、外部の目線とモノを知らない無知とは必ずしも同一ではないはずですからね。

見たところ各病院の事務系に回答させることを想定したような項目が並んでいるのがその大きな原因かと思えるのですが、現場で手を動かしている人間に聞いてみればずいぶんと違った、そして何より面白そうな話も沢山出てきたんじゃないかとも思えるのですけれどもね(苦笑)。
ま、このデータを根拠として「集団災害に対応する専門家の確保と安定した医療サービスの提供を目指すために、全医療機関は患者からの投書をもっと大々的に取り扱うべきである」なんて素敵な主張を始められた日には、またぞろ新たな伝説として本「ぐり研」で大々的に取り上げさせていただきたいとは思うところですが(笑)。

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2009年8月 3日 (月)

新型インフルエンザ関連続報

…なんですが、最近ではなかなか景気の良い話が多くて、これはどこまで信用したものかと思えるような話まで聞こえてくるところです。
まずはその最たる話題から紹介していきましょう。

新型インフル10億人超も 重症者や死者数減が課題(2009年7月27日47ニュース)

 【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)のフクダ事務局長補代理は29日、共同通信と会見し、新型インフルエンザの世界の感染者数について、今後2年以内に世界人口の20~40%程度と、10億人を超える水準まで拡大する可能性があるとの見方を示した。世界の感染者数は現時点までに15万人超が確認されている。

 WHOは6月時点で既に新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)を宣言。当面は感染拡大が続くのは確実なため、今後は「重症者や死者の発生を減らせるかどうかが最も重要だ」との認識を表明した。

 多くの国で新学期を迎える9月以降に流行が一段と加速する懸念に関連し「学校閉鎖などが適切な場合もある」と指摘。閉鎖により一時的に感染者の伸びを抑えることで地域の医療機関の負担を軽減できるなど一定の条件がそろえば「賢明な策になり得る」とした。

 WHOのインフルエンザ対策の最高責任者を務めるフクダ氏が、新型インフルエンザ発生後に日本の報道機関の単独会見に応じたのは初めて。

 感染拡大の予想についてフクダ氏は「20世紀に起こったパンデミックでは人口の3分の1かそれ以上が1年で感染した」と指摘した。

 また、米疾病対策センター(CDC)が、2年で同国の人口の最大40%が感染すると推計したと報道されていることに関連し、「国や地域によって最終的な姿にはばらつきがあるだろうが、20%であれ40%であれ、高い比率であることに違いはない。パンデミック状態の場合には、多数の人の感染が予想される」と述べた。

10億と言う数字は単独の感染症としてはまさにちょっとしたものなんですが、これがこれだけの短期間に発生するともなればなかなか穏やかな話ではありません。
いずれにしてもこういう規模の話ともなると隔離と封じ込めだのPCRによる確定診断だのという話があまりに非現実的なのは明らかなのであって、コストの面でも手間の面でももう少し別な形での社会防衛というものを考えていかなければならないのは確かでしょう。
さて、国内でもそろそろ孤発症例というものはニュースにもならない時代であって、このようなひと頃ならそれなりに話題になりそうな話が当たり前のようにさらっと出てくるようになってきたのは興味深いですね。

新型インフル 国内初の院内感染確認…大阪・貝塚(2009年7月29日読売新聞)

 大阪府貝塚市の水間病院は28日、新型インフルエンザの院内感染により、入院患者2人が発症したと発表した。同じ病棟内でほかに入院患者8人、医師や看護師ら職員6人からA型ウイルスの陽性反応が確認されており、府は新型インフルエンザに感染した疑いがあるとみて感染ルートを調べている。感染患者はいずれも快方に向かっている。厚生労働省によると、新型インフルエンザの院内感染が確認されたのは国内初

 府と病院の説明では、新型インフルエンザに感染した患者2人は40歳代と50歳代の男性。2人は25、26日に38度前後の発熱や倦怠(けんたい)感などを訴え、簡易検査でA型ウイルスの陽性反応があった。府立公衆衛生研究所が検査し、新型インフルエンザの感染が判明した。

 同病院はこの2人を含む感染した入院患者10人に対して治療薬タミフルを投与、職員6人は自宅で療養中。河崎建人(たつひと)院長は28日の記者会見で「手洗いなどを徹底していたつもりだったが、責任を感じている。他の入院患者の外出や面会を制限し、感染が広がらないよう対策を取りたい」と述べた。

本巣の老人施設で新型インフル集団感染 /岐阜(2009年07月29日岐阜新聞)

 県は28日、本巣市佐原の介護老人保健施設「根尾川ガーデン」の介護職員2人が新型インフルエンザに感染した、と発表した。ほかに入所者1人と介護職員3人も同様の症状があり、県は集団感染とみている。

 患者6人の容体は安定しており、介護職員はそれぞれ自宅で、入所者は施設の個室で療養しているという。

世が世ならそれなりに騒ぎになってもよさそうなネタではあるかとも思うんですが、幸いにも日本人の特性として流行が初期のフィーバー期を過ぎてこういうフェーズになってきますとすっかり話を脳内スルーする習慣がありますから、結果として良い感じで冷静な対応というものが出来ているのではないかという気がします。
全世界で10億も患者が出るなどと言っている病気で施設や院内にいれば感染を逃れられるというのも無理がある話ですから、今後はいかにハイリスク患者へのまん延を阻止するかという現実的な対策に移行していかなければならないでしょうね。
その点では従来からインフルエンザ流行期の発熱患者の対応に関しては施設間でやや方針に混乱が見られるところがありましたが、こういうことを機会にそれなりの定型的方法論というものが普及していくということになればかえって良いことではないのかなという気もしています。

一方では今回の新型に関しては在来型と色々と違う側面があるらしいということは以前から指摘されてきているところですが、特に気になるのがどのような症例が重症化しているのかということではないかと思います。
こちらCDCのレポートで見ましてもやはり比較的若年者、健常人と、従来の季節性インフルエンザの「身体の弱った人間がヤバイ」という話とは明らかに異なった傾向が見て取れるということのようですね。
そして特に最近問題になってきているのが妊婦というのが大きなリスクファクターなんじゃないかという話題です。

新型インフルエンザ情報(2009年7月30日NHK)

■感染者 短期間に重症化の例も

新型インフルエンザで300人以上の死者が出ているアメリカでは、20代から50代を中心に肺の中でウイルスが増殖するウイルス性肺炎のため死亡するケースが多く、中にはわずか3日間で重症化した患者もいることがアメリカのCDC=疾病対策センターの分析でわかりました。

大多数は軽症で済んでいるものの専門家は、注意が必要だと呼びかけています。

これは、アメリカのCDC=疾病対策センターで、新型インフルエンザを担当しているティム・ウエキ医師がNHKのインタビューに答えて明らかにしたものです。

アメリカでは、これまで4万3000人以上が新型インフルエンザに感染したと確認され、ほとんどの人は軽症で済んでいますが、302人が死亡しています。

CDCの分析によりますと死者の多くは、ぜんそくなどの基礎疾患を持つ20代から50代の比較的若い世代が中心で、中には基礎疾患が見つからない健康な人も亡くなっています

死亡の主な原因は、インフルエンザウイルスが直接肺に入って増殖するウイルス性肺炎で、治療が難しく、致死率の高い鳥インフルエンザH5N1型の症状と似ているということです。

さらに患者の中には、発症後2日程度は症状が軽かったものの、3日目に突然悪化し始め重症の肺炎になるケースが出ていることもわかってきました。

重症化する人の割合は全体で見れば少ないもののウエキ医師は、「患者の中に急速に症状が悪化する人がいるので、重症化の兆候を見つけて早期に治療する医療体制を作ることが重要だ。こうした患者の治療をどう進めるべきか世界的に情報交換を進める必要がある」と話しています。

■新型インフル 妊婦重症化傾向

ことし4月からの2か月間に、アメリカで新型インフルエンザに感染し死亡した妊娠中の女性は6人で、全体の10%以上に上り、重症となって入院する割合も一般の人より高いとみられることが、CDC=疾病対策センターなどの調査でわかりました。

これは、アメリカのCDC=疾病対策センターとアメリカ各州の保健当局などのグループが医学雑誌の「ランセット」で発表したものです。

それによりますと、4月中旬から2か月の間に、アメリカで新型インフルエンザに感染して死亡したのは45人でしたが、このうち13%に当たる6人が妊娠中の女性でした。

また、流行が始まった4月中旬からの1か月間を見ると、感染が報告された妊娠中の女性は34人で、このうち32%に当たる11人が入院していて、入院の割合も一般の人より高くなるとみられることがわかりました。

研究グループでは、データは流行初期の限られたものではあるものの、妊娠中の女性が新型インフルエンザに感染した場合、深刻な症状を引き起こすおそれがあり、死亡例の中に妊娠した女性が多いのは、懸念される事態だとしています。 そして、感染した場合には、早期に治療を受けることが必要だとしています。

妊婦関連の話題としては一方でこういう話も流れてきているのですが、新型絡みの胎内感染の確認は初めてということになるでしょうか。

新型インフル、タイで胎児への母子感染を確認(2009年7月28日ロイター)

 [バンコク 28日 ロイター] タイの保健当局は28日、25日に誕生した新生児が、母親の胎内で新型インフルエンザ(H1N1型)に感染していたことが確認されたと発表した。

 発表によると、妊娠7カ月だった母親は新型インフルエンザへの感染が確認されたことから、帝王切開を受けて出産したが、新生児も同様に感染していた

 医師によると、新生児の容体は安定しているが、母親は症状が重いという。病院では、新生児がどのように感染したか調べている。

妊娠中のインフルエンザに関しては「妊娠期のインフルエンザ感染とそれに付随する高熱は、胎児に先天異常及び早産のようなリスクを与える」とも言われますが、具体的にはっきりしたエヴィデンスに欠けるところがあるようで、胎児奇形等の発生についてはあまり肯定的なデータはないという見解が恐らく一般的ではないかと思われます。
逆に言えば従来型の場合は抗ウイルス薬を使うか使わないかというくらいでしか議論される余地のない状況ですから、こういう帝切をするしないといった大騒ぎになることもなく、胎児感染の評価もさほど積極的にされてきてはいないようですね(ちなみに大騒ぎになった鳥インフルエンザについては症例数が少ないですが重症型ですから、このあたりの検証もされているようです)。
それよりは妊娠に伴う母体の変化(つわりに伴う脱水傾向や、腹部の圧迫による呼吸機能低下など)が重症化に悪影響を及ぼしているのではないかと懸念されるところ大であったのですが、ウイルス性肺炎等のリスクとは別にそれらの懸念は新型にも共通する問題のようですね。

新型インフル、妊婦は重症化に注意を 米報告(2009年8月2日CNN)

ジョージア州アトランタ(CNN) 米国内での新型インフルエンザ(H1N1型)の症例で、妊婦の症状が重くなるケースが目立つとの報告が発表され、米疾病対策センター(CDC)の医師らが改めて注意を呼び掛けている。

CDCの産婦人科医、デニース・ジェイミーソン博士らがまとめた報告によると、米国内で4月15日から6月16日までの間に報告された新型インフルエンザによる死者45人のうち、6人が妊婦だった。6人とも感染前は健康だったが、ウイルス性肺炎を起こし、呼吸困難に陥ったという。

また、CDCがこれまでに調べた新型インフルエンザによる死者266人のうち、6%に当たる15人が妊婦だった。妊娠している女性が米人口に占める割合は、平均1%前後とされる。

さらに、新型インフルエンザと診断されて入院する率は、妊婦の場合、一般の患者の4倍に上ることも明らかになった。ただし、同じ症状を示していても妊婦の患者には医師がより注意深く対処するため、入院の指示が出やすいとの傾向も背景にある。

ジェイミーソン博士は、妊婦の症状が重くなりがちな原因として、「大きくなった子宮が横隔膜を押し上げ肺を圧迫するため、呼吸障害を起こしやすいこと」「妊娠中は胎児を『異物』とみなさないよう、免疫機能が抑制されること」を挙げる。ただ、妊婦がほかのグループに比べ新型インフルエンザにかかりやすいとは言い切れず、「予防のために日常生活を変える必要まではない」という。

同博士は一方で、妊婦が感染した場合は「早急に抗ウイルス剤を投与すべきだ」と主張。胎児への影響を懸念して抗ウイルス剤の処方を控える医師もいるが、「この場合は、投与による利点がリスクを上回ることが分かっている」と強調した。

今ひとつ歯切れの悪い話ですが、こうなりますと妊婦に対する新型のリスクに関しては従来型の延長線上にある問題に加え、何かしら新型に特有の問題があるのかといったあたりも明確にしていただきたいところですよね。
国立感染症研究所からの情報によれば既に4月の時点でCDCから妊婦への新型インフルエンザ感染症例が報告されていますが、このリポートにこのような記述が含まれています。

3人の妊婦での新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染-アメリカ合衆国 2009年4月-5月 (国立感染症研究所感染症情報センター)より抜粋    

 新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染の合併症に対して誰が最もリスクが高いのかを決定するにはデータが不十分であるが、季節性インフルエンザの流行(2,3)および過去のインフルエンザのパンデミック(4,5)においては、一般的に、妊娠していない女性と比べて妊婦はインフルエンザに関連する罹患および死亡のリスクが高いことが知られている。合併症のリスクの増大は、妊娠中に発生するいくつかの生理的変化に関連があると考えられており、それには心血管、呼吸器及び免疫系の変化などがある(7)。喘息のような慢性疾患のある妊婦はインフルエンザに関連する合併症のリスクが特に高い(2)。妊婦はインフルエンザの合併症のリスクが高いので、予防接種実施諮問委員会及びアメリカ産婦人科学会は女性に対して3価の不活化インフルエンザワクチン接種を推奨している (8)。

 循環している新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害抗ウイルス薬のオセルタミビル及びザナミビルに感受性がある(1)。外来患者におけるプラセボを対象とした無作為試験では、これらの薬剤を発症から48時間以内に開始すれば、季節性インフルエンザの重症度と症状のある期間を低下させ、また限られた季節性インフルエンザの入院患者間の観察研究データではあるものの、発症後48時間を過ぎてから服薬開始した時でさえ、オセルタミビルが死亡を減らすことを示している(8)。さらに、オセルタミビル及びザナミビルはインフルエンザに曝露したのちすぐに使う場合、高い発症予防効果がある(8)。妊娠中にこれらの薬剤を使用した場合の安全性または有効性に関しては、限られた情報しかない(9,10)。しかしながら、利用可能な限られた情報及び知られている妊娠中のインフルエンザ合併症のリスクを勘案して、胎児への潜在的なリスクよりもこの新型ウイルスに対して期待される抗ウイルス薬治療の効果による利益の方が上回るであろう。したがって、CDCの暫定的手引きは、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染が確定、疑いが濃厚、疑わしい妊婦は、5日間の抗ウイルス薬治療**を受けるべきであるとしている。

こちらも新型の詳細はまだ判らないが取りあえず妊婦の患者には抗ウイルス薬を使っとけという話なんですが、そうなりますと気になってくるのが例の副作用関連の話題です。
折も折、ちょうどこの時期にこんな記事が出てきているようなんですが、結局のところどうするかという話になってきますと国内的には「患者の状態等を総合的に判断し、利益が危険性を上回ると判断される場合に処方」なんて例によって例の如くな玉虫色の結論になりそうで、またぞろ現場臨床家の先生方には頭の痛いところなんじゃないかという気がするところです。

服用者の半数で副作用発現(2009年8月2日CNN)

ロンドン(CNN) インフルエンザ治療薬として知られる「タミフル」を服用した子供のうち半数以上が、吐き気や悪夢といった副作用を訴えたことが、英健康保護局(HPA)の調査で明らかになった。

HPAは今年に入ってからインフルエンザが流行した、ロンドンの3学校と南西部の1学校の生徒248人を対象に調査した。

このうち、77%がタミフルを服用。服用した生徒のうち、51%が何らかの副作用と見られる症状を訴えていた。症状の内訳は吐き気などが31.2%、頭痛が24.3%、腹痛が21.1%だった。

また、別の生徒群を対象にした別調査でも、半数以上が副作用を訴えていた。この調査では、29%が吐き気を訴えていた。

また、調査全体から、タミフルを服用した生徒の約5人に1人に相当する18%が、意識がぼやけたり、目まい、睡眠障害を起こしたりするなど、神経・精神的な面で副作用を起こしていたという。

日本でも、タミフルを服用した子供の異常行動が報道されている。日本の厚生労働省は6月、タミフルと異常行動の因果関係は不明としながらも、10代への使用制限を適当とする報告をまとめている。

新型が疾患として一般化してきてひと頃の過剰反応が消えてきたことは良い傾向だと思いますが、それだけ日常臨床の場で遭遇する機会も増えたとも言えるわけです。
その時になって大騒ぎしなくても良いように、現場の臨床家は随時最新の知見へのアップデートを心がけておかなければならないのでしょうね。

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2009年8月 2日 (日)

今日のぐり「麺処ど男」

今日はちょっとそれありえへんやろという話題を幾つか紹介してみましょう。
まずはライトにこちらの話題などいってみましょう。

美しすぎる女刑務官が不当解雇?(2009年7月16日ロケットニュース24)

とても美しくてセクシーだという理由?で『刑務官』という職業を失ったある女性が話題になっている。

前刑務官だったAmitjo Kajla さん(22)はイギリスのブリンズフォード (Brinsford)刑務所で刑務官として働いていたが、同僚らから眠れなくなるほどの侮辱を受けその結果、刑務官を辞めたという。一体どんな屈辱を受けていたのだろうか。

当時の同僚は「彼女が過度に化粧を濃くしたりタイトな服を着るなど容貌に過度に気を遣い、囚人らを刺激した。」と指摘し、また彼女の当時の上司は「彼女は囚人らの隣の席で話すなど危険を自ら招いていた」と指摘した。

しかし当の本人はこれにブチギレ!彼女は雇用安定委員会に告訴状を伝達して不当な解雇にあったとしそれに相当な代価を補償しろと刑務所を提訴している。彼女は「当時の同僚が私を皮肉り人格の侵害をした。また休み時間に囚人らと話を交わしたという理由で自身をバカな幼い女(Stupid Little Girl)と卑下した」と話しているという。

なお、収監者らは彼女を見る時ごとに「miss Kajla! とてもセクシーだ~」と感嘆の声をあげ度々騒動になっていたようだ。

最近は何でも「美人過ぎる」とか形容詞をつけるのが流行なのかも知れませんが、これは確かに美人ですよね。
しかしイタリア人と言えば女性と見れば取りあえず声をかけるのは義務と考えているなんて噂がありますが、あまりやりすぎると良い迷惑であったということでしょうか。

同じく外国からのセクシーネタではこういうのもありました。

NZ航空、機内ビデオに客室乗務員が「裸」で登場(2009年7月2日産経新聞)

 ニュージーランド航空は、機内で流す「安全ガイド」を乗客に確実に見てもらうための新たな試みを始めている。

 国内線のボーイング737型機で流されるビデオには、操縦士と客室乗務員が裸にボディーペイントという姿で登場する。しかし、安全に関するメッセージについては、慎重なカメラアングルによって上品に保たれている。

 実際のビデオは動画共有サイトのユーチューブ上(http://youtube.com/watch?v=7-Mq9HAE62Y)で見ることができる。(ロイター)

ちなみに件のビデオなるものを拝見したんですが、正直裸でいる意味がわからんというか…やはりこのあたりがセンスの違いということなんでしょうかね?
一方でこちらはちょっとばかり感動的とも言える話題でしょうか。

自宅から1900キロ…行方不明のテリア犬、9年ぶりに飼い主へ 豪州(2009年7月31日産経新聞)

 AP通信などによると、豪州メルボルンにある王立動物虐待防止協会は29日、メスのテリア犬を保護した。

 職員が首輪に付けられたマイクロチップの記録を調べたところ、このテリア犬は11歳になる「ムフィ」で、9年前にブリスベーン市内で行方不明になっていたことが判明。同協会は飼い主に連絡を取り、帰還の手続きを進めている。

 飼い主の自宅から、ムフィが保護された場所までは約1200マイル(約1920キロ)。9年間にわたる豪州大陸放浪の終焉を迎えたムフィは協会施設内で毛布にくるまれ、飼い主の到着を心待ちにしている。

しかしよく見るとこの犬、9年間ひたすら自宅から遠ざかっていたということも言えるわけで、単に○○ているのでなければよほど家に帰りたくない事情でもあったのかと…あれ?これって感動話なんでしたよね?
さて、お次はあの伝説は本当だったのか(笑)という話題を一ついってみましょう。

「カレー作り」も哲学 都城高専教授、リポートで単位認定(2009年07月28日宮崎日々新聞)

 無届け兼業を4年余り続けていた都城市の都城工業高等専門学校(三村洋史校長)の50代男性教授が成績評価でも同校に改善を求められていた問題で、授業とは関係のないカレーの作り方のリポートで「哲学」の単位を認定していたことが27日までに分かった。

 三村校長は「授業の理解度が評価に反映されていなかった」としている。無届け兼業については、同校は同日、戒告処分とした。

 成績評価については今年5月中旬、国立高等専門学校機構(東京)に告発があり、同校の特別教務委員会が男性教授の担当した「哲学」と「社会学」について調査した。

いや、「答えがわからなければ取りあえず何でも書いておいた方がよい」とはしばしば噂に聞くところですが、これは通った方の学生もびっくりしたのではないでしょうか。
しかし実際にこういうことをやってしまうと、やはり教員の方も怒られてしまうものなのだなということが今回新たに判明した事実でしょうか(苦笑)。

さて、次の二題は一見するとカレーによく似た…という話ですが、これはちょっと取り扱いにご注意いただきたいところですかね。

肥だめに落ちた男性を老人が救出! 糞尿を飲みながらも人命救助(2009年3月8日ロケットニュース24)

中国で、肥だめ(糞尿を貯蔵する池や穴)に転落し、糞尿で溺れていた男性を救出した老人が英雄となっている。肥だめの周辺を清掃していた男性が、糞尿で足を滑らせ肥だめに転落。そのようすをみていた野次馬は多くいたものの、溺れている場所が場所だけに、誰ひとりとして助けようとはしなかったという。しかし、ひとりの老人が何の抵抗もなく肥だめに飛び込んだのだ。

このニュースを伝えた中国のニュースサイト『網易新聞』は、老人は糞尿を飲みながらも転落した男性をかつぎ、なんとか一命を取りとめたと報じている。救援隊もいたものの、場所が場所だけに、スムーズに男性を助けようとはしなかったらしい。

さらに、この騒動がインターネットで中国中に伝わるやいなや、多くの中国人民が老人を英雄視。この老人をたたえるイラストまで掲載され、多くの掲示板やブログ、インターネットニュースサイトに転載されている(執筆者も容認)。このことについて、中国の青島に在住の中国人・呂さんに電話インタビューをして、中国でのフィーバーぶりを聞いてみた。

「あのうんこの老人はありえないよ! うんこだらけになって人を助けるなんてありえない! 人命が関係していることなので笑っていいのかどうかわからないけど、助かったんだし笑っていいと思ってる! 中国でのパターンでいくと、この老人は来週にもテレビに出ることになるだろうね。こんなキャラクターほっとくわけがない(笑)」。

とにかく、しばらくはこの老人、中国で英雄として過ごすことになりそうだ。溺れた男性も、ウンよく助かってなによりである。

いやいやいや!それありえへんし!絶対!
それはもうね、ここまで身体張って英雄の一つにもならないというのであればそれは嘘ですよ。
いやしかし、人間ってこういう瀬戸際の瞬間に至ってもやはり理性って働いてしまうものなんですねえ…

ところでこちら、お隣韓国からこんな伝統文化の紹介なんですが…

韓国伝統の人糞酒『トンスル』とはどんな酒なのか(2009年07月31日ロケットニュース24)

韓国は中華に勝るとも劣らないグルメの国である。豚肉がメインの焼肉は非常に肉厚でタレもパンチがあり美味しい。日本人も大好きな冷麺は本場韓国の味にかなうものはないだろう。韓国のお酒であるマッコリも「日本酒はきついけどこれなら飲める」と、日本人女性に大人気である。

しかし、韓国には伝統的な料理やお酒がまだまだたくさんあることをご存知だろうか? そのひとつが、健康に良いとされている人糞をふんだんに含んだ韓国伝統のお酒『トンスル』である。『トンスル』には人糞が豊富に含まれており、人糞なくして『トンスル』は成立しない。

伝統的な『トンスル』の作り方は簡単で、焼酎を適量入れた竹筒を“くみ取り式便所”からロープで排泄物タンク(便壷)に入れ、人糞に漬けるというもの。長時間漬ければ漬けるほど良い『トンスル』ができるとされているが、そのあたりの製法は地方や個々の家によって違うという。

けっこう現代の韓国でも愛飲されているようで、韓国に嫁いだ日本人女性のブログでは「トンスルってご存知ですか? 韓国語でそのまま “うんこ酒” なんですが。まぁ “うんち酒” でも “ババ酒” でも “大便酒” でもええんやけど。このうんこ酒。いわゆる漢方の一つなんだそうです」と、嫁ぎ先で『トンスル』に出会ったことを報告している。やはり人糞には抵抗があったようで、「ウンコさんを酒に混ぜて飲むなんて。いくらなんでも」と困惑した経験が書かれていた。

『トンスル』には解熱作用や解毒作用があるらしく、特に韓国の田舎のほうではよく愛飲されているようである。日本でも尿療法というものがあるし、古代ギリシャでは歯の痛みを止めるために幼児の尿で口をうがいしたという記録が残っているが、人糞となると日本人が飲むにはハードルが高いお酒となりそうである。

いやハードルが高いとかどうとか言うレベルではなくそれはね、やはりご遠慮し申し上げたいところではあるんですが…
しかし伝統文化と言いますが、これ現代韓国でも一般的に流通しているということですから、うっかりするとどこかで口にしていたりも…?
う~む、なかなかこれは恐ろしい話という感じなんですが、やはり人間なんでも慣れというものが大事だということなんですかね?

最後はこれも昔から言われているところの一つの伝説なんですが、本当かどうかはともかくとしてもあまりにケッサクなので紹介しておきます。

京都名物“ぶぶ漬け”(2004年5月27日ブログ記事)より抜粋

これは友人が体験した話で、別に京都の人間全てがこういった人ではないということを前置きしつつ、「ぶぶ漬け」という単語が出てきたら「帰っておくれやす」と読み替えていただけると、より楽しめるかと思います

それは、友人Aが京都に旅行したときの時の話である

そのAには、京都に行ったら寄ろうと心に決めていた料理屋があった
ガイドブックに載るほどの有名店で、各界の著名人も多数出入りする店である

しかしAは、京都についての知識をそれなりに持っていたので
その店に入るのをためらっていた

なぜなら、京都の有名店、いや京都の料理屋は大概が「一見さんお断り」の店だと聞いていたからだ(※一見さん→誰からの紹介もなく、初めて店を訪れる客)

普通の料理屋でも「一見さんお断り」だという噂があるのに、果たしてその有名店に入れるのだろうか?
Aはビクビクしながらも、その有名店に足を踏み入れることにした
ダメでもともと!断られたら断られたでしょうがない
まずは、その店に行ってみよう
断られたら諦めよう、それでいいじゃないか
とにかく行かずに諦めるなんて悔いだけは残したくない

Aは勇気をふりしぼり、単身その店ののれんをくぐった

女将「おいでやすー」

A「あのー、はじめてなんですけど、食事できますでしょうか?」

女将は、オドオドしながら標準語で問いかける客に一瞬怪訝そうな表情をしたが
すぐに笑顔でこう答えた

「どうぞ、入っておくれやす~」

友人は、あまりにアッサリと店に招き入れる女将に多少面食らったものの
憧れの名店で食事できる喜びと、店に入れた安堵感で有頂天だった

「一見さんお断り」なんて、ただの都市伝説だったんだ~

おしぼりで手を拭きながら、友人はウットリとそんなことを考えていた

そして、まずは店員にビールを注文することに
緊張で乾いていた喉を、まずはビールで潤したかった

京都の有名店での食事。あれも食べたい、これも食べたい
何を食べようか迷う友人の所に、ビールを注文した店員とすれ違いに別の店員がやってきた

あれ、この店員は何をしに来たんだろう?食事の注文を取りに来たのかな?
そんなことをボンヤリ思った友人の目の前に置かれたのは…

京都名物ぶぶ漬け!

その、あまりにも早い登場にAは面食らった
まだビールも出てないのにぶぶ漬け!
座って5分も経たずにぶぶ漬け!
問答無用でぶぶ漬け!

あまりの衝撃と屈辱に言葉を失ったAは
箸に手をつけることなく、席を立ちフラフラと店の出口へ向かった
その背中に女将からの声が響く

「あら?お客はん、もうお帰りどすか~?」

とか「お代は結構どす~、おおきに~」

そんな台詞が、Aの背中に向かって投げかけられたそうな

女将の顔は見なかったが、Aにはわかったという
Aの背中を見ながらニタァーッと笑う、鬼か、はたまた化け狐の如く顔のゆがんだ女将の笑顔が、友人にはハッキリと見えていたそうな

フラフラと店を出たAは、その足でチェーン店のファミレスへ行き
京都の「一見さんお断り」と「ぶぶ漬け」の恐ろしさを振り返りつつ
あんな回りくどいことせず、最初から入店を断れよ!とくだを巻きながらビールを飲み散らかしたとさ。チャンチャン

実はここから友人A氏の「逆襲」がまたケッサクなんですが、しかしホントにこういうことってあるんでしょうかね?(何となく洒落臭い感じも受けるところですが)
ちなみにこの記事についてこんなツッコミも入っているわけですが、これを見ても記事の内容自体が「あり得ない嘘」という話ではないように取れるのはなんだかなあ、と…
で、実際のところはどうなんですか?

今日のぐり「麺処ど男」

ここもたまたま通りがかってみますと、何やらいつの間にか見慣れない店が出来ていました。
以前にこの場所には別なラーメン屋があったような気もするのですが、潰れたということなんでしょうかね?
店名もさることながら、「がっつんとんこつしょうゆ」だの「元気にやっとります」だの、何やら看板を見るだけでも汗臭そうな気配が漂ってきそうでなかなか素敵です。
しかし店内に足を踏み入れてみますと意外や意外(?)、(壁の怪しい書き込みから目線を外していれば)案外ごくありきたりのラーメン屋っぽい雰囲気だったのはちょっと残念でしたかね。

ちょうど昼食時だったんですが、それなりに広い店内はテーブル席はほぼ満席、少し待つかカウンター席に入るかといった感じでそこそこ繁盛している様子です。
少しばかり気になったのがここのメニューなんですが、トッピングの違い以外にやたらとラーメンの種類が多いようで、これは一体どういう仕組みになっているのかと見入ったまましばらく考え込んでしまいました。
解読してみるとどうもスープがとんこつと魚系の2種類あって、それぞれ単独あるいはダブルスープとして使っている、これに醤油、味噌、塩といったタレの種類別や香味油の有無などを組み合わせて多種多様なラーメンを作り上げているようなんですが、それぞれが意味不明な(失礼)名前がついていたりするので余計に判りにくいです。
とりあえず一番人気という「赤ど男(なぜ素直に醤油とんこつではいけないのか…)」を頼んでみましたが、この界隈を出歩いているようなおよそ非ラヲタ中心の客層に対してこれは企業戦略として正直どうなのかなと危惧するところではありますよね。

味からするととこの界隈でいうとんこつ醤油というよりはとんこつに近い印象のラーメンなんですが、トッピングにキクラゲなどが入っている一方でメンマも乗っていたりと、ややどこのラーメンなのか判らないようなあたりがオリジナリティーということなんでしょうか?
このスープはCa溶け出してそうといいますか粉っぽいといいますか、例えていえば福山市内で塩ラーメンのうまい店と定評のある「匠」のとんこつしぼりをやや薄くした感じで、それなりに好みは別れそうなというところでしょうか(自分としては嫌いでないですが)。
http://r.tabelog.com/hiroshima/A3403/A340301/34001203/
見た目と違って意外に繊細なつくりといいますか、全般にネガティブな部分は巧妙に抑えられているラーメンかなという印象で、麺の茹で加減やスープとの相性も悪くないんですが、この味の組み立てでしたら醤油よりも塩にした方が良かったかも知れないですね。

ところでこのラーメンは見込みで茹でていたのか?と思うような早さで出てきましたが、厨房の中を見ていますと麺茹でが終わった後は一人一杯という感じでやたらとマンパワー集約型の作業をしているようで、これなら確かに最短時間で出てくるんだろうなと感じさせられる状況です。
そういえばフロアの方も結構顧客を始終見ている様子でなかなか心配りが出来ているのは好印象なんですが、今は開店直後でこれだけ手間暇をかけて回していられるとして、将来大繁盛するようなことになるとよほど注意をしておかないとサービス低下だと言われかねないのは要注意ですかね。
いずれにしても見た目の印象とは色々な意味でかなり印象の異なって意外に侮れない店という感じなんですが、こういう良い方に裏切られるということでしたら誰しも歓迎というところではないでしょうか。

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2009年8月 1日 (土)

またまたやってしまったいつもの人たち

国政選挙の論戦もいよいよ本格化してきましたが、国民に選択の材料を与えるメディアとしては特定政党や候補に肩入れするというのはどうかと思われるところです。
その点で先日は何かしら癒着の構造でもあるのかとも思われる話題を紹介してきたところですが、一般メディアでもようやく報道されているようです。

国会議員の説明ボード、テレ朝が自粛要請(2009年7月30日読売新聞)

 テレビ朝日は主要政党に対し、番組に出演する国会議員が主張の要点を記したフリップを持ち込まぬよう要請していたことが、29日分かった。

 同社は「公平性を期すための措置」と説明している。

 自粛要請は、自民、民主、公明、共産、社民、国民新の6党に対し、文書で行われた。少なくとも8月30日の総選挙終了までは実施するという。同社広報部は「事実上の選挙期間に入り、公平性に関して慎重な対応が求められる。各党の主張はあるだろうが、持ち込まれたフリップをすべてチェックできず、内容に責任が持てないため」と理由を説明している。

 19日放送の同社報道番組「サンデープロジェクト」で、自民党の細田博之幹事長が、民主党の子ども手当政策について、持ち込んだフリップを使って批判したが、民主党は22日、「フリップの内容に誤りがあった」とする抗議文を自民党と同社に送った。同社広報部は、「フリップの使用自粛要請は、民主党の抗議があったからではなく、あくまでも自主的な判断」としている。

 この措置に対し、民主党は「テレビ局の判断で、コメントする立場にない」とする一方、自民党は「視聴者にとって分かりやすい議論を行う上で、政策のフリップは大変役に立つ。テレビ朝日の措置は残念」と反発している。

いやあ、どう言い訳するか楽しみだったんですが、そう来ましたか…って、理由にもなってないやんけ!(苦笑)

それに加えて、別件ではこういう話題もあるのですね。

麻生首相失言報道に疑問の声(2009年7月29日ココログニュース)

麻生首相が高齢者に対して不適切な発言をしたとして報道されていた問題で、ネット上にも批判的なコメントが殺到しているが、一部にはこの問題でマスコミ報道の在り方を問う声が強まっている。

麻生首相は25日、仙台市内の講演で高齢者について「働くことしか才能がない」と発言。この発言をマスコミ各社が取り上げ、野党議員が「差別的」などと強く批判する場面などが報じられた。このような報道を受け、ネット上にも「働くことしか才能がない…普通には出てこない言葉だ。本音だ」「さすがにこれは許せない」などといった批判的なコメントが数多く寄せられている。

しかし、一部のネットユーザーからは失言報道自体が不当なものだという声が上がっている。動画投稿サイトには麻生首相が行った過去の講演を収録した音声がアップロードされ、そこでは麻生首相が高齢者について同じ発言をしていた。ところが、話全体としては日本の高齢者を称賛するもので、「働くことしか才能がない」発言時にも会場には笑い声が響いていた

この動画を見たネットユーザーからは、「(首相は)よく働くなぁとほめてるだけ」「これは場の雰囲気も伝えないと誤解される」などと、文脈や笑い声をカットして伝えたマスコミ報道に対する批判の声が上がっている。選挙前の大事な時期でもあり、影響を心配する人もいるようだ。(秋井貴彦)

問題となっているのが伊勢原青年会議所設立30周年記念講演「麻生太郎のこれからの日本【2008.2.17】」の内容なのですが、その発言要旨がこちらで、報道内容と比較していただくのも一興かと思いますね。
ちなみに有志がネット上に当日の講演の様子をアップしているのですが、これをどう感じるかも主観の問題と言うところながら、まあこのレベルで「言葉狩り」をしていたのでは日本もずいぶんと口を動かすのに不自由な社会になりそうだなというところでしょうか(しかしテレビと違って麻生さん、マスコミがいない場所ではけっこう話が面白いですね)。

しかし最近はマスコミが一生懸命言葉のモンタージュを行ってもこうして原典がすぐ出てきてしまうあたり、彼らも仕事がやりにくくなっているんじゃないかと他人事ながら心配になってきますが、そういえば最近はずいぶんと経営も厳しいらしいですよねえ…
ちなみに、政治家に向かって「差別発言許すまじ!」と激高する彼らの人権感覚がよく表れているのがこちらの話題なんですが、これもネット時代であるからこそこうして話題にもなった話とも言えるでしょう。

【トレビアン動画】マスコミの「これだから千葉なんだよ」発言にネット騒然!(2009年07月24日トレビアンニュース)

千葉団地殺人事件の仲田敬行容疑者(28)が千葉北署に送検される際、日本テレビ ニュースZEROの生放送で信じられない言葉がお茶の間に流された。
報道陣が一斉にカメラを向け仲田容疑者をとらえようと構える中、なかなか撮影できずにいたある報道陣の中から「これだから千葉なんだよ」という捨て台詞を吐く場面があったのだ。
その報道陣はニュースZEROの放送には映ってはいないのだが、罵倒音声は生放送中にきっちりと流れてしまった。

この一連の流れ、何かに似ていると思ったら大宮での鉄道マニアカメラマンに似ているような……。

確かにシャッターチャンスは報道にとって撮り逃すと二度と撮れないというくらい貴重なものだ。
カメラを少し触ったことがある人なら、シャッターチャンスを逃した時の無念の経験もあるだろう。

しかし、上記の仲田容疑者の件も鉄道マニアの件もカメラマンが勝手に撮影していることで、取材イベントではないということを念頭に置いて欲しいものだ。
むしろ撮れる保証のない行為なわけで、「撮れなくて当たり前」くらいの心構えで望んで欲しい。
犯人の送検は、“囲み取材”や“フォトセッション”ではない。
どうしても犯人に取材したければ『月刊創』のようにアポを取って取材すれば良いだけだ。

今回の報道陣がとった身勝手な発言を受けてネット上では以下のような意見が出ている。

・要するにショーかなんかと勘違いしてる馬鹿ってことか
・マスコミの傲慢がよく表れたいい中継でした。
・イイ写真を撮れなかった腹いせに千葉県民を侮辱っすかw

と、マスコミのモラルの低さを語っている。

撮りたいものを撮れない苛立ちは分からないでも無いが、この悪態は失礼極まりない。また、どこの取材陣かは不明のままだ。
更に言うと「これだから千葉なんだよ」の“これだから”の意味がわからないのだが……。

これだから千葉なんだよ(48秒あたり)

※どこの報道記者の発言かは不明のままです。

「これだから千葉なんだよ」って、すみません自分にも意味判らないんですけど誰か解説してもらえませんかね…?
ま、実際に取材体験というものを持っている人に言わせると色々と楽しい思い出には事欠かないらしくて、最近ではあんな話こんな話など結構あちこちで情報が流れてきているわけですが、「マスコミ様は何をやっても許される」という彼らの傲慢は多くの実体験を有する人々の共有するところのようですね。
そのあたりの特権意識がうかがえる話というのも幾らでも見つかってくるわけですが、最近報道されたものとしてこちらの記事などどうでしょうか?

TBS「キミハ・ブレイク」収録で深夜に打ち上げ花火 警視庁が注意(2009年7月28日産経新聞)

 TBSが東京都葛飾区の河川敷で深夜、バラエティー番組の収録中に花火を打ち上げて騒音を出したとして、警視庁亀有署と本田消防署から注意を受けていたことが28日、わかった。

 TBSや亀有署によると、同局は17日午後10時45分ごろから約5分間、荒川河川敷でバラエティー番組「キミハ・ブレイク」の収録中に花火数十発を打ち上げた。直後から「花火の音がうるさい」と苦情の110番通報が4~5件寄せられた。

 TBSは同署や本田消防署に対して、「同日午後8時~9時に花火を打ち上げる」と届けていた。番組のディレクターが両署に「収録が長引いた。ご迷惑をかけてすみません」と謝罪し、両署は注意と再発防止を指導した。

 TBS広報部は「住民の方々にご迷惑をおかけした。ディレクターも反省している」とコメントしている。

いや収録が長引いたとか何とかいう以前に、夜中の11時近くになっていきなり数十発の花火を打ち上げて大騒ぎなんてされたら、それはよほど心の広い住民でも腹立ちますよ普通?
自分たちの都合だけで勝手なことをやるなどとひとこと非常識、としか言えない話なんですが、こういうことをするテレビ局がまたどこぞの海岸あたりに中継車を繰り出して「深夜の花火打ち上げで地域住民が迷惑を被っています。観光客の良識が求められますね」なんてしたり顔で喋っていたりするのも考えてみると、ずいぶんと間抜けな話ではありますよね。

それでもこのくらいなら所詮一時の迷惑だと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、さすが天下のNHKともなれば長年にわたって素晴らしい成果を発揮してくれているようで、こちらの記事なども紹介してみましょう。

米科学誌、中国・核実験でウイグル人数十万人が死亡した可能性(2009年7月30日産経新聞)

 米国で最も人気の高い科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」7月号が、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で中国当局が実施した40数回の核爆発実験の放射能により、数十万ものウイグル住民が死亡した可能性があるとする記事を掲載した。

 記事は、ウイグル人医師のアニワル・トヒティ氏と札幌医科大教授で物理学者の高田純氏の合同調査結果を基礎に書かれたもの。高田教授は同自治区のシルクロード紀行番組を長年、放映したNHKの核実験無視の姿勢を非難している。

 「サイエンティフィック・アメリカン」7月号は、「中国の核実験は多数の人を殺し、次世代を運命づけたのか」「中国が40年にわたり核爆弾を爆発させたことで、放射能の雲は住民の上を覆った」という見出しの記事を掲載した。

 同記事はまず、トヒティ医師が新疆ウイグル自治区で1973年の子供時代、3日間、空が黒くなり、土砂のような雨が降ったのを目撃し、後年、それが核爆発の結果だったことを認識したと指摘。その上で「シルクロード上のロプノル実験場における、1964年から96年までの40数回の核爆発による放射能の結果、数十万の住民が死んだ可能性がある」と報じた。

 記事はさらに、現在、英国やトルコを拠点にウイグル人の放射能被害を研究するトヒティ医師が、高田教授と「ロプノル・プロジェクト」という共同研究を進めているとし、高田教授の「新疆ウイグル地区で放射能汚染のために19万4千人が死亡し、120万人が白血病などを病んだ」という算定を伝えた。

 「サイエンティフィック・アメリカン」は米国だけでなく国際的評価が高く、同誌が今回、事実として正面から伝えた「シルクロードの核汚染」は、それを否定してきた中国政府にも厳しい詰問となる。

 また、高田教授はNHKが長年、シルクロードの番組を放映し、多数の日本人観光客に核汚染が明白な地域を訪問させながら、核爆発については一切、沈黙してきたとして今年4月、公開質問状の形で抗議した。

NHK側は、「(放射能汚染についての)認識は放送当時も現在も持っていない」と回答したというが、今回の米国の科学雑誌の記事は、高田教授側の研究の成果や意見に国際的認知を与えたこととなる。(ワシントン 古森義久)

高田教授の調査結果を報じる記事がこちらなんですが、それによると「同自治区のウイグル人ら19万人が急死したほか、急性の放射線障害など甚大な影響を受けた被害者は129万人に達する」ばかりでなく「被害はシルクロード周辺を訪れた日本人観光客27万人にも及んでいる恐れがある」のだそうで、これは事実とすれば穏やかではありません。
高田教授自身はこの件でNHKに抗議する怒りのコメントを発表していますが、長年にわたって同地域で「世界初の潜入取材」を行ったというNHKがこの問題に関して全く知り得なかったというのは少し考えがたいところではありますよね(一方で本当に何も知らなかったとすれば彼らの取材能力が問われるところですが…)
このNHKの取材に関しては「NHK取材班は受信料で購入した高価な機材を故意に中国国内置き忘れ、『回収できない』という不可解な理由からそれらを中国側に譲渡するという形でワイロを送った」などという話もあるようですが、やはりこれは取材の見返りに目をつぶるべきでないところに目をつぶったということ、なんですかね?

いやはや、マスメディアによってこうして日々国民は危険にさらされているというわけなのでしょうか。怖い怖い…

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