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2009年7月16日 (木)

地域医療も進むべき道を誤ると大変なことに?

先日唐突にこんな記事が出ていましたがご覧になったでしょうか?
割合と記事になるのも珍しい類の話でもあり、続報と込みで紹介してみましょう。

6医師業者から接待 静岡市立清水病院 処分検討(2009年7月13日)

 静岡市立清水病院(清水区)の診療科長ら複数の医師が取引業者から接待を受けているなどとする内部告発を受けて、市職員法令順守推進委員会は13日までに、診療科長らから事情を聴き、「接待などがあった」との見方を固めた。市は、市職員倫理規則などに基づき、診療科長ら接待を受けていたとされる医師6人に対する処分を検討している。
 同委員会の調査で、診療科長は埼玉県内の総合病院で4月から毎週土曜に外来診療を行い、報酬を得ていたことも明らかになったとされる。市は、兼業を禁止する地方公務員法に違反しているとして、この診療科長については、減給などの懲戒処分とする方針。
 市によると、診療科長ら医師6人は4月中旬と5月初旬の2回、市内の飲食店で、医薬品や医療機器の購入契約を結んでいるメーカー2社からそれぞれ、1人あたり2万円前後の飲食の接待を受けたという。
 医師らは「業者との懇親会という認識で参加したが、医療機器や医薬品の選定や購入で便宜を図ったことはない」と説明しているという。

清水病院接待で診療科長を減給処分 静岡市(2009年7月14日静岡新聞)

 静岡市は13日、市立清水病院(清水区)の診療科長ら複数の医師が取引業者から接待を受けているなどとする内部告発を受けた調査の結果、「接待などがあった」として、市職員倫理規則などに基づき、同日付で40代男性の診療科長を減給(10分の1)3カ月の懲戒処分としたと発表した。
 同じ診療科の男性医師5人については、「診療科長に誘われて参加した」などの理由で口頭注意とした。管理監督責任を問い、病院局長と病院長を訓告、病院事務局長を厳重注意とした。
 市によると、診療科長ら医師6人は4月14日、清水区内の飲食店で、退職する医師の送別会を兼ねた懇親会を開催。医薬品メーカーの担当者から1人あたり約1万7000円の接待を受けた。5月1日には葵区の飲食店で、医療機器メーカーの担当者から1人あたり約2万5000円の接待を受けた。
 市は、接待を機に両メーカーからの製品購入実績の増加傾向が見られなかったことなどから、「医療機器や医薬品の選定や購入で便宜を図っていることは確認できなかった」としている。診療科長はさらに、清水病院に採用された4月から毎週土曜、兼業を禁止する地方公務員法に違反し、埼玉県内の総合病院で外来診療のアルバイトを行い、6月までに計71万5000円の報酬を得ていたことも明らかになった。
 診療科長は「以前勤務していた病院でもアルバイトが黙認され、業者との懇親会もやっていたので、安易に続けてしまった」と話しているという。
 病院長は「市職員全体の信用を著しく傷つけた。職員に対する指導を徹底し、再発防止に努める」とのコメントを出した。

今どき業者と癒着で挙げられるとはずいぶんと時代がかった先生なのかとも思うところですが、気になるのは内部告発なるものが処分の端緒となっていることです。
内部告発と言うくらいですから職場の同僚なりがたれ込んだのかと思うところですが、この告発の文書が関係諸団体と併せてかの有名な「静岡市立清水病院から被害をなくす会」にも届けられていたというのですね。
同会ではさっそく喜び勇んでその文書を公表したというわけでこちらにリンクを引用しておきますが、こういう実名バリバリの文書を躊躇なく公にしてしまうあたりが「我慢しないで声を上げましょう」を信条とする同会の真骨頂ではあるのかなと、いつものことながらこの方々の素晴らしい行動力には感心するしかありません。

内部告発文書 平成21年6月25日(2009年6月27日静岡市立清水病院から被害をなくす会HPニュース)

ちなみに同病院のHPを見てみますと7月1日付けで外来診療担当が変更になっているようですが以前とどう違うのかはっきりせず、とりあえず件の先生を初め他の医師に関してもそのまま診療は継続しているようです。

告発文書の日付が25日、そこから発送の日数などを考えても公立病院にしては妙に早い処分だったなという印象なんですが、全国に向けて当の文書が公開されているわけですから、さすがお役所仕事とは言っても知らぬ存ぜぬで放置は出来なかったと言うことなのでしょう。
その意味で素早い動きで隠蔽工作の余地すら与えなかった同会のお手柄と言うべきだと思いますが、同会の主張する「問題を起こした関係者の異動」「責任をはっきりさせる」といった点で清水病院の抱える構造的問題の解決を図っていく上でも、やはり関係者はこうした市民の厳しい視線を自覚していかなければなりません。
件の科長先生にしても既に他病院でバイト診療を行っていたと言うくらいなのですから、いつまでも地位に恋々とされるよりは自ら厳然と身を処し後進に範を示すということも必要ではないでしょうか?

現代の医療においては医者の意思がどうとか、住民の意向がどうとか言うことでは駄目で、地域と医療機関が密接かつ良好な関係を築いた上で最適効率での医療を行っていかなければ、厳しい医療環境の中でまともな病院経営など行えるものではありません。
地域から信用も信頼もされていない医療機関に大勢の医者を集めたところでそれは人的資源の浪費というしかないですし、医者集めの目処すら立たない中で地域の都合だけで立派なハコモノだけを建てたところで「仏作って魂入れず」どころか貴重な血税の浪費でしかないわけです。
ところが全国を見回してみると清水病院以外にも妙な心得違いをしているとしか思えない話が少なからずあるようなんですが、最近また突っ走ってるなと目についたのがこちら千葉からの話題です。

<地域医療センター構想>経営形態など了承--東金市、九十九里町 /千葉(2009年7月14日毎日新聞)

 東金市と九十九里町が計画する「地域医療センター」の検討協議会が13日東金市役所で開かれ、医療、経営両分野で中間報告があった。センターの経営形態は、新設病院としては全国初となる「公営企業型一般地方独立行政法人」とすることを了承。施設は県と2市町が整え、経営は独立行政法人が担う。

 また、センターの役割を救命救急を軸とする「山武長生夷隅医療圏」の中核病院と位置付け、22の診療科目に対応して56人の常勤医を置くことも明らかにした。病床数は、認可された314床のうち294を一般、20を救命救急(うち10床は集中治療病床)とする。開院は2013年を想定しているが段階的な開院を目指し、フルオープンまでの期間を当初の5年以内から3年以内に変更することも了承した。【吉村建二】

常勤医56人、千葉大が確保へ 東金・九十九里の地域医療センター(2009年7月14日読売新聞)

 東金市と九十九里町は13日、2013年度の開設を目指す地域医療センターの第3回検討協議会(会長=平沢博之・千葉大名誉教授)を開き、22の診療科に配置する常勤医師を計56人とし、原則として千葉大の医局に確保してもらうことを決めた。千葉大はセンターの医師確保で大きな責任を負う形となる。

 平沢会長は会合で「千葉大医学部の教授会で、医師確保について『最大限努力する』と約束してもらっている。それを心の支えにしている」と語った。

以前からこの地域医療センターの構想が出ては消え消えてはまた出るを繰り返しているのですが、もともとあった東金病院に上乗せする形で東金市、大網白里町、九十九里町の三市町が設立する施設という形で県と千葉大に全面協力を依頼した結果、一応の結論を得たということです。
千葉大に対しては医師派遣の見返りとしてセンター長のポスト等人事面で大きな権限を与えるということのようなのですが、一度崩壊しかけた常勤10人そこそこの東金病院を元にして50人の施設を作ろうなどと、ただでさえ一県一医大で人手不足が顕著な千葉大にとても出来た話ではないと憂慮する声数多な状況なのも当然ですよね。

その点でよくよく記事を見てみますと、千葉大の方では「最大限努力する」ことを約束したと言うだけで、実は56人の医師を提供しますなどということは一言も言っていないし約束もしていないようなんですね。
このことを関係者一同敢えて誰も触れずにいるように思えてならないことなんですが、この点で検討協議会会長であり千葉大名誉教授である平沢氏は次のような心強いコメントを出しているようです。

東金・九十九里地域医療センター 経営は独立行政法人で(2009年03月18日読売新聞)

 東金市と九十九里町が開設を予定している地域医療センターの第2回検討協議会(会長=平沢博之・千葉大名誉教授)が17日、東金市役所で開かれ、経営主体を地方独立行政法人の非公務員型とし、2009年度中に発足させる方針を決めた。公設公営に比べ、職員の給与や人事が弾力的に運用できるなどのメリットがあるという。
 診療科目は、当初計画の17科に代謝内分泌科、心臓血管外科、精神科などを加え、22科とすることで合意した。314床とした病床数に関しても、自立的な経営を可能にするため、運営開始から3~5年かけて、段階的に増やす方針を確認した。平沢会長は協議会終了後に記者会見し、医師確保の見通しについて、「県立東金病院や千葉大から確保できると考えている。(医師数が)増えることもあると思われるが、そもそも(計画の)50人という数字も決まっていたわけではない」と述べた。東金病院が行っている地域医療の継続性に関しては、「すべては引き継げない」と明言した。

いやいやいや!「県立東金病院や千葉大から確保できると考えている」だの「そもそも(計画の)50人という数字も決まっていたわけではない」だのってあなた、今どき引退したロートル名誉教授の鶴の一声でぽんと50人も医者を出してくれる大学がどこにありますか?
これだけでも十分突っ込み所満載なんですが、会長自身が「東金病院が行っている地域医療の継続性に関しては、「すべては引き継げない」と明言した。」などと言い切ってしまっているあたりについてはもはや「このオッサンもしかして○○てるのか?」とも思えるような話です(ちなみに言えば東金病院は地域医療で名を売ってきた施設でもあります)。

元々の話の流れとして既存の東金病院が老朽化している、それならこれを母胎に新病院を作ろうと言う話ですから、当然東金病院のスタッフも引き継いだ上でその業務も新施設において発展的に継続していくものだと誰しも考えるところじゃないですか?
ところが東金病院がなくなり新病院が出来てみれば、以前は当たり前に受けられていた地域医療業務がいつの間にか消えていたということになると言うのであれば、それは早晩地域住民から「詐欺だ!」なんて声が挙がるだろうことは想像に難くないですよね。

そもそもこのセンター構想自体が、県の支援を大前提に辛うじて成立するというレベルの話で、今どきそれだけの財政的裏付けもないハコモノ行政を他人の財布を当てにして進めるというのも如何なものかと思われるところです。
いや失礼ながら、話をうかがった限りにおいてもあまりに計画がずさんすぎて、21世紀の医療事情をまともに検討した上での話とは到底思えないんですが。
さて、こういう適当な計画で確実に損をせず儲けているのが誰かということを考えていくと、表看板の裏側に潜んだ推進勢力の正体も見えてくるということなんですかねえ?

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コメント

清水病院の内部の人間です。
何時もブログ楽しみに見させていただきます。
「静岡市立清水病院から被害をなくす会」は現時点で清水区民には相手にされていません。
 清水病院は静岡市の街中から少し離れたところにあり、基本的には清水区内の田舎の人たちに信用されてきています。
ブログの中にある「いい医療従事者と患者さんたちの関係」ができている地域だと思います。
ま、全国的にはまた名を上げてしまいましたが。
みんないい加減にしてほしいと思っていると思います。
 

投稿: | 2009年7月16日 (木) 17時28分

内部情報ありがとうございます。
最近はこういう記事が世間受けするそうですから、いろいろと大変ですね(苦笑)。

仰るとおり、大変だと大騒ぎしている施設でも実際に利用する多くの顧客との関係は良好という場合が多いものです(ま、マズいと思う店に通うという人も少ないのも道理ですが)。
そして深夜にどうでもいいようなことで救急車を呼んでやってくるような人なども、ある意味で一番病院を信用しているんじゃないかという言い方も出来ると思いますね。
一部のためにする人々はともかくとして、医療機関に関わる多くの人々は基本的に「楽になりたい」「楽にしてあげたい」という善意の元で相互関係を築いているんだろうと今でも思います。
問題は今の医療を取り巻く情勢が、単純に善意に基づく関係であればそれでよしというほど単純なものではなくなってきていることだと思いますね。

「金のことなど考えるな。患者を治すことだけ考えろ」なんてハッパかける指導医が一昔前には結構いましたが、「いや医者も少しは金の事も考えてくれ」という時代にあってどのような医療を目指すべきなのか。
少なくともそれは単なる患者と医療従事者との善隣関係だけではなくて、例えば地域行政の理解とバックアップがあるかだとか、住民に医療を守り育てる自律的精神が根付いているかだとか、医療従事者がその地域独自の実情に対してフレキシブルに最善の医療を選択できるかといった点まで含んでいないと社会的には通用しない。
それはどちらかというと従来の医療の範疇と言うよりも、他業界で新工場を建てて市場に打って出るといった場合の話に近いものになるのかも知れません。

よい関係とは何かを考える大前提として、そもそも今の時代における「よい医療」とは何かを、言葉の定義にまで立ち返って考え直すことが求められている時代だと思います。
その機会としては、何を守り何を切り捨てるかの判断を強いられる今の状況は、あんがい患者にとっても医療従事者にとってもよいきっかけではあるのかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2009年7月17日 (金) 11時32分

いつもながらの本質を突いた内容に敬服しています。

行政と大学がいよいよ危険な賭けに打って出ました。

昨日の新聞記事からです。

引き続き今後も、全国からのあたたかい眼を山武に注いでください。

平成21年10月21日

心ある東金の住民より

地域医療センター計画了承 東金市・九十九里町の検討協

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20091019-OYT8T01236.htm

 東金市と九十九里町は19日、2014年度に開設を目指す地域医療センターの検討協議会(会長=平沢博之・千葉大名誉教授)を開き、重篤な3次の救急患者を24時間・365日受け入れ、入院が必要な2次救急医療にも対応する同センターの事業計画案を了承した。両市町は12月中に病院開設申請を県に提出し、併せて地方独立行政法人化の手続きも進める方針だ。

 事業計画案によると、同センターは併設する救命救急センターの20床を含む計314床。脳卒中や急性心筋梗塞(こうそく)などの重篤救急患者に対応するため、脳神経外科、心臓血管外科、循環器内科など22科を置き、計56人の常勤医師を千葉大から確保する。医師、病床数は段階的に増やし、3年目の16年度からフル稼働する。

 センター経営の収支推計では、開設当初の14、15年度は計9億円近い資金不足が生じるが、その後は単年度ごとに黒字に転じると計算。20年度以降は全収入の約1割に当たる約8億円の黒字が毎年出て、開設から10年間で計46億1800万円の内部留保が積み上がるとした。ただ、この日の協議会で、積算根拠に関する説明や質疑はなかった。

 県は同センターの建築費などで、両市町に85億6000万円の財政支援を表明している。協議会で両市町は、開設前に購入する医療機器の費用負担が重荷になるとして、支援の前倒しを県に求めたのに対し、戸谷久子・県健康福祉部長は「一部の前倒しは考えられなくはない」と前向きに応じる考えを示した。

 事業計画案が了承されたことを受け、東金市の志賀直温市長は「救急を軸として地域医療でも中核的な施設として対応できる計画をつくっていただいた。14年度当初の開設を少しでも前倒しできるようにしたい」と語った。

◆経営リスク検証が不可欠

 今回のセンター計画の特徴は、建物から医師まですべてをゼロからそろえることにある。県が財政支援するとはいえ、両市町は建築費などで100億円以上の借金を背負う。3年目から黒字に転じると説明するが、医師や看護師らスタッフの充足が大前提となる。

 3次を含む24時間・365日の救急医療態勢を組むが、県内のある救急専門医は「常勤医師56人では当直などの負担が重く、仮に集まっても疲弊して逃げ出すだろう」と指摘する。

 「医師1人で約1億円の収入」と言われる。医師不足による減収分は両市町の財政を直撃するが、研修医の集まりぶりなどから、千葉大に医師確保を依存する計画には、不安や危惧(きぐ)の念を示す医療関係者は絶えない。

 収支推計の根拠は、地域の医療ニーズを基にはじき出した数字ではない。一部の医療関係者が「多すぎる」と指摘している外来患者数は、その推計を2割下回るだけで、10年間で積み上がるとされる約46億円の内部留保がほぼ吹き飛ぶ計算だ。

 給与費も、医師らスタッフが充足する4年目以降、医業収入に対する比率は51%。これは民間病院並みの優良経営で、70%台が平均の公立病院の現状を考えると、にわかに信じがたい。

 今回の事業計画案の作成には県も関与している。協議会でリスクに言及がなかったのは不可解だ。両市町は事業計画案が抱える課題も、住民にきちんと説明しなければならない。議会の検証作業が不可欠なのは言うまでもない。(赤津良太)

(2009年10月20日 読売新聞)

投稿: 東金市民 | 2009年10月21日 (水) 07時04分

最近総論的ネタばかりで手一杯で、地域の各論がすっぽり抜け落ち気味で申し訳ないです。
銚子市民なども面白い話が多いのですが…

投稿: 管理人nobu | 2009年10月21日 (水) 21時19分

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